(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】検査装置、画像形成システム、検査方法、および検査プログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 21/892 20060101AFI20240501BHJP
B41J 29/393 20060101ALI20240501BHJP
B41J 29/38 20060101ALI20240501BHJP
B41F 33/00 20060101ALN20240501BHJP
【FI】
G01N21/892 A
B41J29/393 105
B41J29/38
B41F33/00 280
(21)【出願番号】P 2020093313
(22)【出願日】2020-05-28
【審査請求日】2023-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】仲野 達矢
【審査官】清水 靖記
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-220782(JP,A)
【文献】特開2017-188713(JP,A)
【文献】特開2005-217932(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84 - G01N 21/958
B41J 29/00 - B41J 29/70
B41F 33/00 - B41F 33/18
G03G 21/00 - G03G 21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷物の品質検査を行う検査装置において、
原稿画像を取得する画像取得部と、
前記原稿画像に基づいて透明素材の一面に印刷画像が形成された前記印刷物を、前記一面と反対の他面側から読み取る第1読取部と、
前記原稿画像と、前記第1読取部による読取画像とに基づいて、前記印刷物の異常を検知する異常検知部と、
前記透明素材に関する情報を取得する素材情報取得部と、
前記素材情報取得部で取得された情報に基づいて、前記原稿画像の画素値を補正する画素値補正部と、を有し、
前記素材情報取得部は、前記透明素材の色味に関する情報を取得し、
前記画素値補正部は、前記透明素材の色味に応じて、前記読取画像の画素値を補正する、検査装置。
【請求項2】
印刷物の品質検査を行う検査装置において、
原稿画像を取得する画像取得部と、
前記原稿画像に基づいて透明素材の一面に印刷画像が形成された前記印刷物を、前記一面と反対の他面側から読み取る第1読取部と、
前記原稿画像と、前記第1読取部による読取画像とに基づいて、前記印刷物の異常を検知する異常検知部と、を有
し、
前記異常検知部は、
前記原稿画像および前記読取画像のいずれか一方を鏡面反転した反転画像と、他方の画像とについて、対応する画素位置の画素値を比較するか、または前記原稿画像と前記読取画像とについて、鏡面対称な画素位置の画素値を比較することにより、前記印刷物が異常であるか否かを判断する、検査装置。
【請求項3】
印刷物の品質検査を行う検査装置において、
原稿画像を取得する画像取得部と、
前記原稿画像に基づいて透明素材の一面に印刷画像が形成された前記印刷物を、前記一面と反対の他面側から読み取る第1読取部と、
前記原稿画像と、前記第1読取部による読取画像とに基づいて、前記印刷物の異常を検知する異常検知部と、
前記透明素材に関する情報を取得する素材情報取得部と、
前記素材情報取得部で取得された情報に基づいて、所定の検査基準を調整する検査基準調整部と、を有し、
前記素材情報取得部は、前記透明素材の坪量または厚みに関する情報を取得し、
前記検査基準調整部は、前記坪量または厚みに応じて、前記所定の検査基準を調整し、
前記異常検知部は、
前記原稿画像と前記読取画像との比較結果が前記所定の検査基準を満たす場合に、前記印刷物が正常であると判断する一方で、前記比較結果が前記所定の検査基準を満たさない場合に、前記印刷物が異常であると判断する、検査装置。
【請求項4】
前記透明素材は、シート状または板状の素材である、請求項1
~3のいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項5】
前記印刷画像上に透け防止画像が形成されているか否かを判定する透け防止判定部と、
前記印刷画像を前記印刷物の印刷面側から読み取る第2読取部と、をさらに有し、
前記異常検知部は、
前記透け防止判定部によって、前記印刷画像上に透け防止画像が形成されていると判定された場合、前記原稿画像と、前記第1読取部による読取画像とに基づいて、前記印刷物の異常を検知する一方で、
前記透け防止判定部によって、前記印刷画像上に透け防止画像が形成されていないと判定された場合、前記原稿画像と、前記第2読取部による読取画像とに基づいて、前記印刷物の異常を検知する、請求項
1に記載の検査装置。
【請求項6】
前記所定の検査基準は、前記印刷物の品質検査の検知項目の基準であり、
前記検査基準調整部は、
前記透明素材の坪量または厚みが、各々に対応する所定の閾値を超えている場合、前記検知項目と、当該検知項目についての許容レベルの入力を受け付け、
前記異常検知部は、
前記原稿画像と前記読取画像とに基づいて前記検知項目の検知レベルを算出し、前記検知レベルが、前記検査基準調整部によって受け付けられた前記許容レベルを満たす場合に、前記印刷物は正常であると判断する一方、前記許容レベルを満たさない場合に、前記印刷画像は異常であると判断する、請求項
3に記載の検査装置。
【請求項7】
原稿画像に基づいて透明素材の一面に画像を形成し、印刷物として出力する画像形成装置と、
前記印刷物の品質を検査する、請求項1~
6のいずれか1項に記載の検査装置と、
前記画像形成装置によって出力された前記印刷物を前記検査装置に搬送する用紙搬送装置と、を有する画像形成システム。
【請求項8】
印刷物の品質検査を行う検査装置の検査方法であって、
原稿画像を取得するステップ(a)と、
前記原稿画像に基づいて透明素材の一面に印刷画像が形成された前記印刷物を、前記一面と反対の他面側から第1読取部によって読み取るステップ(b)と、
前記透明素材に関する情報を取得するステップ(c)と、
前記ステップ(c)において取得された情報に基づいて、前記原稿画像の画素値を補正するステップ(d)と、
前記原稿画像と、前記第1読取部による読取画像とに基づいて、前記印刷物の異常を検知するステップ(
e)と、を有
し、
前記ステップ(c)においては、前記透明素材の色味に関する情報を取得し、
前記ステップ(d)においては、前記透明素材の色味に応じて、前記読取画像の画素値を補正する、検査方法。
【請求項9】
印刷物の品質検査を行う検査装置の検査方法であって、
原稿画像を取得するステップ(a)と、
前記原稿画像に基づいて透明素材の一面に印刷画像が形成された前記印刷物を、前記一面と反対の他面側から第1読取部によって読み取るステップ(b)と、
前記原稿画像と、前記第1読取部による読取画像とに基づいて、前記印刷物の異常を検知するステップ(c)と、を有
し、
前記ステップ(c)では、
前記原稿画像および前記読取画像のいずれか一方を鏡面反転した反転画像と、他方の画像とについて、対応する画素位置の画素値を比較するか、または前記原稿画像と前記読取画像とについて、鏡面対称な画素位置の画素値を比較することにより、前記印刷物が異常であるか否かを判断する、検査方法。
【請求項10】
前記ステップ(c)では、
前記原稿画像と前記読取画像との比較結果が所定の検査基準を満たす場合に、前記印刷物が正常であると判断する一方で、前記比較結果が前記所定の検査基準を満たさない場合に、前記印刷物が異常であると判断する、請求項
9に記載の検査方法。
【請求項11】
前記透明素材は、シート状または板状の素材である、請求項
8~10のいずれか1項に記載の検査方法。
【請求項12】
請求項
8~11のいずれか1項に記載の検査方法に含まれる処理を、コンピューターに実行させるための検査プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査装置、画像形成システム、検査方法、および検査プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
原稿画像を印刷した印刷物の品質を検査(以下、「検品」ともいう)する検査装置において、印刷物の印刷面をスキャンしたスキャン画像と原稿画像とを比較することにより自動的に検査を行う自動検査技術が知られている。このような自動検査技術によれば、ユーザーが印刷物の印刷面の汚れやシワ等を目視で確認して品質を検査する手間を省けるため、とくに大量の印刷を行うプロダクションプリンティングの現場において省人化に貢献している。
【0003】
また、近年、プロダクションプリンティングの分野では、透明素材(例えば、透明なシート等)に印刷する機会が増加している。透明素材に対する印刷には、「表刷り」および「裏刷り」がある。「表刷り」は、通常の用紙に対する印刷と同様に、例えば、透明素材の表面に原稿画像を印刷し、印刷画像を透明素材の表面(印刷面)から見ることを想定した印刷である。これに対して、「裏刷り」は、透明素材の裏面に、原稿画像を鏡面反転(左右反転)させて印刷し、印刷画像を透明シートの表面側(印刷面と反対側)から見ることを想定した印刷である。裏刷りされた印刷画像は、透明素材を介して見ることになるので、印刷画像に透明素材によるツヤが付加されるとともに印刷面の摩耗や汚染等を防止できる。透明素材の裏刷りに関する技術として、例えば、下記特許文献1の技術が知られている。
【0004】
しかし、裏刷りでは、例えば印刷画像が単色である場合等、印刷画像の層が薄い場合、印刷画像を通して、透明素材の向こう側にある物(背景)が透けて見えることがありうる。例えば、印刷物の向こう側に壁がある場合、印刷画像を通して背景が透けて、壁の模様により印刷画像の見え方が変わる場合がある。背景が透けて見えることが好ましくない場合、印刷画像上に、透け防止画像(例えば、白のベタ画像)を重ねて形成することで、透けを防止する方法がある。これにより、印刷物を透明素材の表面から見た場合、印刷画像の上に透け防止画像が形成されているため、背景からの光が遮断され、背景が透けて見えることが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、透け防止画像が形成された印刷物を検査する場合、従来の検査装置では、透け防止画像がスキャンされ、透け防止画像を読み取ることになるため、適切に検査を実施することができないという問題がある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、透け防止画像が形成された印刷物を検査する場合でも適切に検査を実施できる検査装置、画像形成システム、検査方法、および検査プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的は、下記の手段によって達成される。
【0009】
(1)印刷物の品質検査を行う検査装置において、原稿画像を取得する画像取得部と、前記原稿画像に基づいて透明素材の一面に印刷画像が形成された前記印刷物を、前記一面と反対の他面側から読み取る第1読取部と、前記原稿画像と、前記第1読取部による読取画像とに基づいて、前記印刷物の異常を検知する異常検知部と、前記透明素材に関する情報を取得する素材情報取得部と、前記素材情報取得部で取得された情報に基づいて、前記原稿画像の画素値を補正する画素値補正部と、を有し、前記素材情報取得部は、前記透明素材の色味に関する情報を取得し、前記画素値補正部は、前記透明素材の色味に応じて、前記読取画像の画素値を補正する、検査装置。
(2)印刷物の品質検査を行う検査装置において、原稿画像を取得する画像取得部と、前記原稿画像に基づいて透明素材の一面に印刷画像が形成された前記印刷物を、前記一面と反対の他面側から読み取る第1読取部と、前記原稿画像と、前記第1読取部による読取画像とに基づいて、前記印刷物の異常を検知する異常検知部と、を有し、前記異常検知部は、前記原稿画像および前記読取画像のいずれか一方を鏡面反転した反転画像と、他方の画像とについて、対応する画素位置の画素値を比較するか、または前記原稿画像と前記読取画像とについて、鏡面対称な画素位置の画素値を比較することにより、前記印刷物が異常であるか否かを判断する、検査装置。
(3)印刷物の品質検査を行う検査装置において、原稿画像を取得する画像取得部と、前記原稿画像に基づいて透明素材の一面に印刷画像が形成された前記印刷物を、前記一面と反対の他面側から読み取る第1読取部と、前記原稿画像と、前記第1読取部による読取画像とに基づいて、前記印刷物の異常を検知する異常検知部と、前記透明素材に関する情報を取得する素材情報取得部と、前記素材情報取得部で取得された情報に基づいて、所定の検査基準を調整する検査基準調整部と、を有し、前記素材情報取得部は、前記透明素材の坪量または厚みに関する情報を取得し、前記検査基準調整部は、前記坪量または厚みに応じて、前記所定の検査基準を調整し、前記異常検知部は、前記原稿画像と前記読取画像との比較結果が前記所定の検査基準を満たす場合に、前記印刷物が正常であると判断する一方で、前記比較結果が前記所定の検査基準を満たさない場合に、前記印刷物が異常であると判断する、検査装置。
【0010】
(4)前記透明素材は、シート状または板状の素材である、請求項(1)~(3)のいずれか1つに記載の検査装置。
【0011】
(5)前記印刷画像上に透け防止画像が形成されているか否かを判定する透け防止判定部と、前記印刷画像を前記印刷物の印刷面側から読み取る第2読取部と、をさらに有し、前記異常検知部は、前記透け防止判定部によって、前記印刷画像上に透け防止画像が形成されていると判定された場合、前記原稿画像と、前記第1読取部による読取画像とに基づいて、前記印刷物の異常を検知する一方で、前記透け防止判定部によって、前記印刷画像上に透け防止画像が形成されていないと判定された場合、前記原稿画像と、前記第2読取部による読取画像とに基づいて、前記印刷物の異常を検知する、上記(1)に記載の検査装置。
【0014】
(6)前記所定の検査基準は、前記印刷物の品質検査の検知項目の基準であり、前記検査基準調整部は、前記透明素材の坪量または厚みが、各々に対応する所定の閾値を超えている場合、前記検知項目と、当該検知項目についての許容レベルの入力を受け付け、前記異常検知部は、前記原稿画像と前記読取画像とに基づいて前記検知項目の検知レベルを算出し、前記検知レベルが、前記検査基準調整部によって受け付けられた前記許容レベルを満たす場合に、前記印刷物は正常であると判断する一方、前記許容レベルを満たさない場合に、前記印刷画像は異常であると判断する、上記(3)に記載の検査装置。
【0016】
(7)原稿画像に基づいて透明素材の一面に画像を形成し、印刷物として出力する画像形成装置と、前記印刷物の品質を検査する、上記(1)~(6)のいずれか1つに記載の検査装置と、前記画像形成装置によって出力された前記印刷物を前記検査装置に搬送する用紙搬送装置と、を有する画像形成システム。
【0017】
(8)印刷物の品質検査を行う検査装置の検査方法であって、原稿画像を取得するステップ(a)と、前記原稿画像に基づいて透明素材の一面に印刷画像が形成された前記印刷物を、前記一面と反対の他面側から第1読取部によって読み取るステップ(b)と、前記透明素材に関する情報を取得するステップ(c)と、前記ステップ(c)において取得された情報に基づいて、前記原稿画像の画素値を補正するステップ(d)と、前記原稿画像と、前記第1読取部による読取画像とに基づいて、前記印刷物の異常を検知するステップ(e)と、を有し、前記ステップ(c)においては、前記透明素材の色味に関する情報を取得し、前記ステップ(d)においては、前記透明素材の色味に応じて、前記読取画像の画素値を補正する、検査方法。
(9)印刷物の品質検査を行う検査装置の検査方法であって、原稿画像を取得するステップ(a)と、前記原稿画像に基づいて透明素材の一面に印刷画像が形成された前記印刷物を、前記一面と反対の他面側から第1読取部によって読み取るステップ(b)と、前記原稿画像と、前記第1読取部による読取画像とに基づいて、前記印刷物の異常を検知するステップ(c)と、を有し、前記ステップ(c)では、前記原稿画像および前記読取画像のいずれか一方を鏡面反転した反転画像と、他方の画像とについて、対応する画素位置の画素値を比較するか、または前記原稿画像と前記読取画像とについて、鏡面対称な画素位置の画素値を比較することにより、前記印刷物が異常であるか否かを判断する、検査方法。
【0018】
(10)前記ステップ(c)では、前記原稿画像と前記読取画像との比較結果が所定の検査基準を満たす場合に、前記印刷物が正常であると判断する一方で、前記比較結果が前記所定の検査基準を満たさない場合に、前記印刷物が異常であると判断する、上記(9)に記載の検査方法。
(11)前記透明素材は、シート状または板状の素材である、上記(8)~(10)のいずれか1つに記載の検査方法。
【0021】
(12)上記(8)~(11)のいずれか1項に記載の検査方法に含まれる処理を、コンピューターに実行させるための検査プログラム。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、裏刷りされた印刷物の印刷面と反対の他面側から読み取った読取画像と、原稿画像とを比較して、印刷物の検品を実施するので、透け防止画像が形成された印刷物の品質を検査する場合でも適切に検査を実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】一実施形態の画像形成システムの概略断面図である。
【
図2】
図1に示す画像形成システムの概略ブロック図である。
【
図3】
図2に示す画像形成装置の制御部の構成を示す概略ブロック図である。
【
図4】
図2に示す検査装置の制御部の構成を示す概略ブロック図である。
【
図5】画像形成システムの印刷動作を例示する模式図である。
【
図6】検査装置における検査方法の処理手順を例示するフローチャートである。
【
図7】透け防止画像を形成しない場合の検査方法を説明するための模式図である。
【
図8】
図6のフローチャートにおいて裏刷りされた印刷物の検品の処理手順を例示するサブルーチンフローチャートである。
【
図9】透明シートの色味に応じて原稿画像の画素値を補正することを説明する模式図である。
【
図10】印刷物の品質検査に関する設定画面を例示する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0025】
<画像形成システム100>
図1は一実施形態の画像形成システム100の概略断面図であり、
図2は
図1に示す画像形成システム100の概略ブロック図である。また、
図3は
図2に示す画像形成装置300の制御部380の構成を示す概略ブロック図であり、
図4は
図2に示す検査装置500の制御部540の構成を示す概略ブロック図である。
【0026】
図1に示すように、本実施形態の画像形成システム100は、X方向(用紙搬送方向)に沿って直列に接続された給紙装置200、画像形成装置300、用紙搬送装置400、検査装置500、後処理装置600、およびクライアント端末700を有する。なお、
図1に示す画像形成システム100の構成は一例であり、画像形成システム100に含まれる装置の種類および台数は
図1に示す例に限定されない。
【0027】
<給紙装置200>
給紙装置200は、画像形成装置300の指示に応じて、画像形成装置300に記録材を供給する。
図1、
図2に示すように、給紙装置200は、給紙部210、用紙搬送部220、通信部230、および制御部240を有する。給紙部210、用紙搬送部220、通信部230、および制御部240は、内部バス201により相互に通信可能に接続されている。
【0028】
給紙部210は、少なくとも1つの給紙トレイを備え、印刷に使用される記録材としての透明素材(例えば、透明シート)を収容する。「透明」には、完全な透明と半透明(色付き透明等)を含む。透明シート(以下、単に「シート」ともいう)は、例えば、透明な樹脂製のシート(フィルム)でありうる。また、本実施形態では、シートは、絵柄等を有しない、すなわち無地であることを想定している。給紙トレイに収容されているシートは、用紙搬送部220の搬送路に沿って複数の搬送ローラー対により画像形成装置300に1枚ずつ供給される。
【0029】
通信部230は、画像形成装置300との間で制御信号やデータのやり取りを行う。制御部240は、給紙部210、用紙搬送部220、および通信部230を制御する。
【0030】
<画像形成装置300>
画像形成装置300は、ネットワークを通じて外部のクライアント端末700からPDL(Page Description Language)形式の印刷データおよび印刷設定データを含む印刷ジョブを受信し、これに基づいてシートに画像を印刷する。クライアント端末700は、例えばパーソナルコンピューター、タブレット端末、スマートフォン等でありうる。印刷設定データには、ページ数、部数、記録材の種類(透明シート、用紙等)、サイズ、坪量、検品機能の設定、表刷り/裏刷りの設定、透け防止画像の設定等に関する情報が含まれる。
【0031】
画像形成装置300は、画像処理部310、画像形成部320、給紙部330、用紙搬送部340、定着部350、通信部360、操作表示部370、および制御部380を有する。これらの構成要素は、内部バス301により相互に通信可能に接続されている。
【0032】
画像処理部310は、通信部360により受信された印刷ジョブに含まれる印刷設定情報および印刷データに基づいて、印刷画像データを生成する。生成された印刷画像データは、画像形成部320に送信される。
【0033】
画像形成部320は、帯電、露光、現像、および転写の各工程を含む電子写真方式等の周知の作像プロセスを用いて、印刷画像データに基づいて画像をシート上に形成する。画像形成部320は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)、およびホワイト(W)の色ごとに、像担持体としての感光体ドラムおよびその周囲に配置された帯電部、光書込部、現像装置、および転写部を有して構成される。
【0034】
各感光体ドラムには、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)、およびホワイト(W)のトナー像が形成される。トナー像は、順次重ね合わされて転写部の中間転写ベルト321に1次転写される。中間転写ベルト321に1次転写されたトナー像は、シートへ2次転写される。
【0035】
本実施形態では、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)のトナーは、溶融性に優れ、低温度かつ短時間で溶融するシャープメルト性を有するトナーであることが好ましい。シャープメルト性を有するトナーは、混色し易く、複写によって得られる画像の色再現範囲が広いため、原稿に忠実なカラー画像が得られる。
【0036】
このようなシャープメルト性のトナーは、例えば、ポリエステル樹脂、またはスチレン-アクリル系樹脂のような結着樹脂に着色材等を加えて、公知の粉砕製法、または重合製法により製造されうる。
【0037】
一方、ホワイトトナーについては、結着樹脂の貯蔵弾性率が、カラートナーの結着樹脂の軟化温度において、カラートナーの結着樹脂の貯蔵弾性率の5~100倍、好ましくは10~100倍の値に設定される。貯蔵弾性率が5倍よりも小さく、カラートナーの結着樹脂に近い場合、定着時にホワイトトナーが溶融してカラートナーとの混色を起こし、再現すべきカラー画像の色が白色を帯びて、画質の低下を起こす可能性がある。さらに、ホワイト画像が、カラー画像と独立した層とならず、透け防止画像としての役割が果たせなくなる。一方、結着樹脂の貯蔵弾性率が100倍以上の高弾性になると、ホワイトトナーをシートに定着するための加熱量が多くなるので、カラートナーの溶け過ぎの状態を招く可能性がある。その結果、いわゆる高温オフセットが生じるおそれがある。これを避けるためには、100倍以下とする必要がある。
【0038】
ホワイトトナーの結着樹脂の種類としては、上記の貯蔵弾性率の条件を満足する中で、ポリエステル系樹脂、スチレンアクリル系樹脂等の公知のトナー用結着樹脂から適宜選択すればよい。さらに、ホワイトトナーの顔料としては酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、アルミナ、炭酸カルシウム等の1つ以上の材料を用いればよい。また、必要に応じて荷電制御剤等の帯電付加剤を添加してもよい。
【0039】
給紙部330は、シートを画像形成部320に供給する。給紙部330は、複数の給紙トレイを有し、各々の給紙トレイには、例えばA4サイズやA3サイズ等のサイズの異なるシートが収納されうる。
【0040】
用紙搬送部340は、搬送路および複数の搬送ローラー対を有し、画像形成装置300内において用紙を搬送する。また、用紙搬送部340は、用紙反転部および循環搬送部を備えており、定着がなされたシートの表裏を反転して排出したり、あるいはシートの両面に画像を形成したりすることができる。
【0041】
定着部350は、シートに形成されたトナー画像を定着する。定着部350は、内部にヒーターが配置された中空の加熱ローラーと、加熱ローラーに対向する加圧ローラーとを備える。加熱ローラーおよび加圧ローラーは、ヒーターにより所定温度(例えば100℃以上)に制御され、シートに加熱・加圧処理を施し、トナー画像を定着する。
【0042】
画像が定着されたシートは、排紙部(不図示)を通じて用紙搬送装置400に供給される。
【0043】
通信部360は、ネットワークを経由して、例えば、クライアント端末700に接続し、印刷ジョブ等のデータを送受信する。
【0044】
操作表示部370は、入力部および出力部を有する。入力部は、例えば、キーボード、ボタン、およびタッチパネルを備え、キーボードによる文字入力、各種設定、印刷開始ボタンによる印刷開始の指示等の各種指示(入力)をユーザーが行うために利用される。また、出力部は、ディスプレイを備え、印刷ジョブの実施状況等を、ユーザーに提示するために使用される。
【0045】
制御部380は、画像処理部310、画像形成部320、給紙部330、用紙搬送部340、定着部350、通信部360、および操作表示部370を制御する。
図3に示すように、制御部380は、CPU381、補助記憶装置382、RAM383、およびROM384を有する。
【0046】
CPU381は、画像形成装置用の制御プログラムを実行し、様々な機能を実現する。上記制御プログラムは、補助記憶装置382に記憶されており、CPU381によって実行される際に、RAM383にロードされる。補助記憶装置382は、例えば、ハードディスクドライブ、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリー等の大容量の記憶装置を備える。RAM383には、CPU381の実行に伴う演算結果等が格納される。ROM384には、各種のパラメーター、各種プログラム等が記憶されている。
【0047】
<用紙搬送装置400>
用紙搬送装置400は、制御部380の指示に応じて、画像形成装置300から供給されたシートを、そのまま、あるいは表裏を反転して検査装置500に搬送する。用紙搬送装置400は、用紙搬送部410、通信部420、および制御部430を有する。これらの構成要素は、内部バス401により相互に通信可能に接続されている。用紙搬送部410は、シートを搬送するための搬送路と、複数の搬送ローラー対とを有する。また、用紙搬送部410は、表裏を反転するための用紙反転部411を有する。通信部420は、制御部430と画像形成装置300との間で制御信号やデータのやり取りを行う。制御部430は、用紙搬送部410および通信部420を制御する。
【0048】
<検査装置500>
検査装置500は、制御部380の指示に応じて、用紙搬送装置400から搬送されたシートに印刷された印刷画像の品質を検査する。検査装置500は、用紙搬送部510、画像読取部520、通信部530、および制御部540を有する。これらの構成要素は、内部バス501により相互に通信可能に接続されている。
【0049】
用紙搬送部510は、搬送路および複数の搬送ローラー対を備え、画像形成装置300から供給されたシートを搬送路に沿って後処理装置600へ向けて搬送する。
【0050】
画像読取部520は、用紙搬送部510の搬送路を挟んで下側および上側に設置されたインラインセンサー(以下、「スキャナー」という)521,522を有する。下側スキャナー521および上側スキャナー522は、それぞれ第1読取部および第2読取部として機能し、制御部540の指示に応じてそれぞれ独立に動作可能に構成されている。
【0051】
下側スキャナー521は、搬送路を搬送される印刷物(画像形成装置300によって印刷画像が形成されたシート)の下面を読み取る。すなわち、下側スキャナー521は、裏刷りされた印刷物の(表面に形成された)印刷画像を、印刷物のシートを通して、シートの裏面側から読み取る。また、上側スキャナー522は、搬送路を搬送される印刷物の上面を読み取る。すなわち、上側スキャナー522は、裏刷りされた印刷物の印刷画像を、印刷物の印刷面側(表面側)から読み取る。スキャナー521,522によって読み取られたスキャナー画像(読取画像)のデータは、それぞれ制御部540に送信される。
【0052】
通信部530は、制御部540と画像形成装置300との間で制御信号やデータのやり取りを行う。
【0053】
制御部540は、用紙搬送部510、画像読取部520、および通信部530を制御する。
図4に示すように、制御部540は、CPU541、補助記憶装置542、RAM543、およびROM544を有する。
【0054】
CPU541は、検査プログラムを実行し、様々な機能を実現する。検査プログラムは、補助記憶装置542に記憶されており、CPU541によって実行される際に、RAM543にロードされる。補助記憶装置542は、例えば、ハードディスクドライブ、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリー等の大容量の記憶装置を備える。RAM543には、CPU541の実行に伴う演算結果等が格納される。ROM544には、各種のパラメーター、各種プログラム等が記憶されている。
【0055】
本実施形態では、制御部540は、制御部380から原稿画像を取得する画像取得部として機能する。また、制御部540は、異常検知部として機能し、原稿画像と、下側スキャナー521または上側スキャナー522によるスキャン画像(読取画像)とに基づいて、印刷物の異常を検知する。印刷物が異常であるとは、印刷物が汚れ、シワ、スジ、ホタル等を有する状態を意味する。より具体的には、異常検知部は、原稿画像を鏡面反転(中心軸に対して左右反転)した反転画像と、スキャン画像とについて、対応する画素位置の画素値を比較することにより、印刷物が異常であるか否かを判断する。
【0056】
また、異常検知部は、原稿画像と読取画像との比較結果が所定の検査基準を満たすか否かに応じて印刷物が異常であるか否かを判断するように構成することもできる。異常検知部は、比較結果が所定の検査基準を満たす場合、印刷物が正常であると判断し、比較結果が所定の検査基準を満たさない場合、印刷物が異常であると判断する。所定の検査基準は、原稿画像とスキャン画像との比較結果に基づいて、印刷物が異常であるか否かを判断する際の判断基準である。印刷物の異常検知の具体な方法については後述する。
【0057】
また、制御部540は、透明素材に関する情報を取得する素材情報取得部として機能する。素材情報取得部は、例えば、シートのサイズ、坪量、および色味情報を、印刷設定情報から取得する。また、制御部540は、素材情報取得部で取得された情報に基づいて、所定の検査基準を調整する検査基準調整部として機能する。検査基準調整部は、シートの坪量または厚みに関する情報を取得し、坪量または厚みに応じて、所定の検査基準を調整する。所定の検査基準の調整の具体例については後述する。さらに、制御部540は、素材情報取得部で取得された色味情報に基づいて、原稿画像の画素値を補正する画素値補正部として機能する。原稿画像の画素値の変更についても後述する。
【0058】
<後処理装置600>
後処理装置600は、制御部380の指示に応じて、検査装置500から供給された用紙を搬送または後処理し、画像形成システム100の外部に排出する。後処理装置600は、用紙搬送部610、後処理部620、排紙部630、通信部640、および制御部650を有する。これらの構成要素は、内部バス501により相互に通信可能に接続されている。
【0059】
用紙搬送部610は、搬送路および複数の搬送ローラー対を備え、検査装置500から供給された印刷物を搬送路に沿って搬送し、後処理部620または排紙部630に供給する。
【0060】
後処理部620は、搬送された印刷物に後処理を実施する。後処理としては、例えば、パンチ処理、断裁処理等が挙げられる。
【0061】
排紙部630は、排紙トレイおよび排紙ローラー対を備え、検査装置500から供給され、搬送路を搬送されたシートまたは後処理されたシートを排紙トレイに排紙する。
【0062】
通信部640は、制御部650と画像形成装置300との間で制御信号やデータのやり取りを行う。制御部650は、用紙搬送部610、後処理部620、排紙部630、および通信部640を制御する。
【0063】
<画像形成システムの100の印刷動作>
図5は、画像形成システム100の印刷動作を例示する模式図である。本実施形態では、ユーザーが、クライアント端末700において、例えば、文書作成ソフトウェアや描画ソフトウェアを使用して編集した原稿を画像形成装置300で印刷し、検査装置500で印刷物の品質を検査(検品)する場合について説明する。
【0064】
クライアント端末700のプリンタードライバーは、ユーザーによって編集された原稿の印刷ジョブを生成し、画像形成システム100に送信する。画像形成システム100は、通信部360を介して印刷ジョブを受信し、画像処理部310に伝達する。印刷ジョブは、印刷データとして、例えば「りんご」の原稿画像を含む。
【0065】
なお、
図5に示す例において、クライアント端末700のディスプレイには、裏刷りされる「りんご」の印刷面(裏面)側から見た場合の画像が表示されている。裏刷りでは、原稿画像の「りんご」をシートの裏面に印刷し、印刷物を印刷面と反対の面(表面)側から見ることを想定している。したがって、表面から見た印刷画像は、裏面側から見た印刷画像を鏡面反転した画像である。
【0066】
また、印刷ジョブの印刷設定情報は、一例として、下記の表1に示す情報を含む。なお、印刷設定情報は、ページ数や、部数等、他の情報についても含むが、ここでは記載を省略している。色味情報は、色味のYMCK値またはRGB値を含む。また、記録材が透明素材ではない場合は、表刷り/裏刷りの指定は、表刷りであるとして取り扱うことができる。また、印刷設定情報に、記録材の坪量に加えて記録材の厚さの項目を含むように構成してもよい。
【0067】
【0068】
制御部380は、印刷ジョブの印刷設定情報に応じて、画像形成システム100の各部を制御する。例えば、制御部380は、表1に示す印刷設定情報を取得した場合、A4サイズの透明シートに、ホワイト画像で透け防止して裏刷りするように、給紙装置200、画像処理部310、画像形成部320、用紙搬送部340、定着部350等を制御する。また、制御部380は、画像形成装置300から出力された印刷物を検品するように、用紙搬送装置400の制御部430、および検査装置500の制御部540に指示を出力する。より具体的には、以下のとおりである。
【0069】
給紙装置200は、制御部380の指示に応じて、シートを画像形成装置300に1枚ずつ供給する。画像形成装置300の画像処理部310は、印刷データをラスタライズ処理し、印刷画像データを生成し、画像形成部320は、印刷画像データに基づいて、各感光体ドラムにトナー像を形成し、中間転写ベルト221に、ホワイト画像(W)およびカラー画像(YMCK)をこの順に1次転写する。
【0070】
カラー画像は、原稿画像に対応し、ホワイト画像は、透け防止画像に対応する。カラー画像は、単色の層、または複数の単色の層が複数重ね合わされて形成されうる。中間転写ベルト221上に転写されたカラー画像およびホワイト画像は、給紙装置200から供給されたシートに2次転写され、定着部350においてカラー画像およびホワイト画像のトナー画像が定着される。
【0071】
画像形成装置300から排出された印刷物上には、カラー画像の層と透け防止画像の層とが、この順に形成されている。したがって、シートへの裏刷りで、原稿画像上に透け防止画像を形成した場合、印刷物を模様のある机の上に置いて、シート側(印刷面と反対側)から見ると、机上からの反射光が透け防止画像によって遮断される。これにより、刷物の背後にある机の模様が印刷画像の見え方に影響することを防止または抑制できる。
【0072】
なお、上述の例では、透け防止画像をホワイト画像とする場合について説明したが、透け防止画像は、ホワイト(白色)である場合に限定されず、例えば、ブラック(黒色)、ゴールド(金色)、シルバー(銀色)等の色であってもよい。ホワイト、ゴールド、シルバー等は、一般に特殊色(または特色)と呼ばれている。
【0073】
画像形成装置300から排出された印刷物は、用紙搬送装置400に供給される。用紙搬送装置400では、印刷物は表裏の向きがそのままで搬送され、検査装置500に供給される。
【0074】
<検査方法>
以下、
図5~
図10を参照して、本実施形態の検査装置500における印刷物の検査方法の処理手順について説明する。
図6は本実施形態の検査装置500における検査方法の処理手順を例示するフローチャートである。また、
図7は、透け防止画像を形成しない場合の検査方法を説明するための模式図である。また、
図8は、
図6のフローチャートにおいて裏刷りされた印刷物の検品の処理手順を例示するサブルーチンフローチャートである。なお、
図6のフローチャート、および
図8のサブルーチンフローチャートの処理は、制御部540のCPU541が検査プログラムを実行することにより実現される。また、
図9は透明シートの色味に応じて原稿画像の画素値を補正することを説明する模式図であり、
図10は印刷物の品質検査に関する設定画面を例示する模式図である。
【0075】
図6に示すように、まず、原稿画像および印刷設定情報を取得する(ステップS101)。制御部540は、画像形成装置300で印刷された印刷物について、対応する印刷画像データ(原稿画像)および印刷設定情報を制御部380から取得し、RAM543に保存する。なお、
図5に示す例では、説明を簡略化するため図示を省略しているが、原稿画像および印刷設定情報は、制御部380から通信部530を介して、制御部540に伝達される。制御部540が取得する印刷設定情報には、例えば、記録材の種類、サイズ、坪量、色味情報、検品機能の設定、表刷り/裏刷りの設定、透け防止画像の設定等が含まれる。
【0076】
次に、検品機能がオンか否かを判断する(ステップS102)。制御部540は、検品機能がオフに設定されている場合(ステップS102:NO)、印刷物の品質検査の処理を行わず終了する(エンド)。
【0077】
一方、検品機能がオンに設定されている場合(ステップS102:YES)、透明な記録素材の裏刷りか否かを判断する(ステップS103)。制御部540は、記録材の種類が透明素材(例えば、透明シート)であり、かつ裏刷りに設定されている場合(ステップS103:YES)、さらに、透け防止画像が設定されているか否かを判断する(ステップS104)。制御部540は、透け防止判定部として機能し、透け防止画像が設定されているか否かを判断することで、印刷物の印刷画像上に透け防止画像が形成されているか否かを判定する。制御部540は、透け防止画像が設定されている場合(ステップS104:YES)、裏刷りされた印刷物に対する検品を実施する(ステップS105)。より具体的には、制御部540は、印刷物のシート側の面、すなわち印刷面の反対側の面(以下、「反対面」という)について品質検査を実施する。これは、
図5に示すように、印刷物の最上位の層に透け防止画像が形成されている場合、従来の検品で行われているように、印刷物の印刷面をスキャナーで読み取り、スキャン画像と原稿画像とを比較する方法では適切な検品を実施できないためである。すなわち、印刷画像が透け防止画像によっておおわれているため、印刷画像に汚れ等がある場合に検知できない。裏刷りされた印刷物に対する検品の詳細については後述する。
【0078】
一方、記録材の種類が透明素材ではない(例えば、普通紙等)か、または表刷りに設定されている場合(ステップS103:NO)、あるいは透け防止がオフに設定されている場合(ステップS104:NO)、通常の印刷物に対する検品を実施する(ステップS106)。例えば、
図7に示すように、制御部540は、上側スキャナー522によって、印刷画像を印刷物の印刷面側から読み取り、スキャン画像を原稿画像と比較する。
図7に示す例では、単色の「りんご」が透明シートに印刷された印刷物が画像形成装置300から出力され、上側スキャナー522のスキャン画像と、原稿画像とが比較される。
【0079】
印刷物の印刷画像が単色である場合、スキャン画像と原稿画像との比較は、スキャン画像と原稿画像とについて、画素位置が対応する画素の画素値が一致するか否かによって行われる。制御部540は、全画素について、スキャン画像と原稿画像の画素値が一致した場合、印刷物が正常であると判断する一方で、画素値が一致しない場合に、印刷物が異常であると判断する。なお、上側スキャナー522の読み取り特性や読み取り誤差等を考慮して、画素値の一致の程度に許容範囲が設定されうる。制御部540は、ステップS106の印刷物の検品の処理を実施後、印刷物の品質検査の処理を終了する(エンド)。
【0080】
<裏刷りされた印刷物に対する検査(ステップS105)の処理>
図8に示すように、まず、シートが色付きか否かを判断する(ステップS201)。シートが色付きである場合(S201:YES)、原稿画像の色合いを補正する(ステップS202)。本実施形態では、シートは無地であることを想定しているが、無色透明ではなく、全面に均一な色の付いたシートを使用してもよい。制御部540は、シートの色味情報に基づいて原稿画像の画素値を変更することにより、原稿画像の色合いを補正する。例えば、シートがシアンで色付けされている場合、原稿画像のシアンに対応する画素値が、シートの色の濃さに応じて変更される。例えば、
図9(A)に示すように、シートの色が薄い場合、原稿画像の画素値の補正を小さくする。一方、
図9(B)に示すように、シートの色が濃い場合、原稿画像の画素値の補正を大きくする。これにより、シートに色がついていても精度よく検品を実施できる。
【0081】
一方、シートが色付きではない場合(S201:NO)、原稿画像の色合いの補正を行わずに、ステップS203の処理に移行する。なお、画像が印刷されていないシートを、上側スキャナー522または下側スキャナー521により予め読み取り、シートの色の付き具合を測定した結果に基づいて、原稿画像の色合いを補正するように構成してもよい。
【0082】
次に、原稿画像を鏡面反転する(ステップS203)。制御部540は、原稿画像の中心軸について左右対称の位置にある画素を入れ替えることにより、原稿画像を鏡面反転した画像(以下、「反転画像」という)を生成する。
【0083】
次に、印刷画像を読み取る(ステップS204)。制御部540は、下側スキャナー521によって、印刷物のシート側、すなわち印刷面と反対側から印刷画像を読み取る。スキャン画像は、制御部540に送信される。
【0084】
次に、シートの厚みが所定の閾値よりも厚いか否かを判断する(ステップS205)。制御部540は、例えば、シートの坪量およびサイズに基づいて、シートの厚みを推定し、シートの厚みが所定の閾値よりも厚いか否かを判断する。所定の閾値は、とくに限定されるものではないが、例えば、0.1~1.5mm程度でありうる。なお、印刷設定情報にシートの厚みに関する情報が含まれている場合は、この情報を使用して判断してもよい。シートの厚みが所定の閾値よりも厚い場合、シートによる光の減衰や反射が大きくなるため、画像の読み取り精度が低くなる可能性がある。
【0085】
そこで、本実施形態では、シート厚みに応じて、印刷物の検品の実施方法を変更することができる。シートの厚みが所定の閾値よりも厚い場合(ステップS205:YES)、所定の検査基準で印刷物の検品を実施する(ステップS206)。一方、シートの厚みが所定の閾値以下である場合(ステップS205:NO)、反転画像と、下側スキャナー521のスキャン画像との比較結果に基づいて、印刷物が異常であるか否かを判断する。シートの厚みが所定の閾値以下である場合の検品の実施方法については後述する。
【0086】
シートの厚みが所定の閾値よりも厚い場合、所定の検査基準は、反転画像と、下側スキャナー521のスキャン画像との比較結果に基づいて、印刷物の汚れ、シワ、スジ、およびホタル等の検知項目を検知し、印刷物が異常であるか否かを判断する際の判断基準である。制御部540は、反転画像とスキャン画像との比較結果に基づいて検知項目の検知レベルを算出する。より具体的には、制御部540は、反転画像とスキャン画像との差分の画像に基づいて「汚れ」、「シワ」、「スジ」、および「ホタル」の検知項目について検知し、その程度を1~3のレベルに区分けする。
【0087】
一方、制御部540は、検知項目と、その許容レベルとを受け付ける。
図10に示すように、ユーザーは、クライアント端末700上において、印刷物の品質検査に関する設定を行う。検知項目の設定は、「検知項目」にチェックを入力することにより行われる。また、許容レベルの設定は、検知項目に対応する「許容レベル」の欄にレベルを1~3の3段階で入力することにより行われる。レベル1は許容される程度が最も小さく、レベル3は許容される程度が最も大きい。検知項目には、例えば、「汚れ」、「シワ」、「スジ」、および「ホタル」が含まれる。設定された検知項目と、その許容レベルとは、制御部540に送信される。
【0088】
制御部540は、検知レベルが、許容レベルを満たす場合に、印刷物は正常であると判断する一方で、許容レベルを満たさない場合に、印刷画像は異常であると判断する。
図9に示す例では、「汚れ」、「スジ」、および「ホタル」の検知レベルが、それぞれ「1」、「2」、「3」以下である場合に、検知レベルが、許容レベルを満たすので、印刷物は正常であると判断される。
【0089】
なお、検知レベルおよび許容レベルの段階は3段階に限定されず、2段階や4段階以上であってもよい。
【0090】
このように、シートの厚みが所定の閾値よりも厚い場合であっても、検知項目について、ユーザーが所望する許容レベルで、印刷物の品質の検査を行うことができる。
【0091】
一方、シートの厚さが所定の閾値以下である場合(ステップS205:NO)、印刷物の検品を実施する(ステップS206)。制御部540は、反転画像と、下側スキャナー521のスキャン画像とについて、対応する画素位置の画素値を比較することにより、印刷画像が異常であるか否かを判断する。
【0092】
このように、
図6、
図8で示す処理では、原稿画像を取得し、原稿画像に基づいて透明素材の一面に印刷された印刷画像上に透け防止画像が形成されているか否かを判定する。そして、印刷画像上に透け防止画像が形成されていると判定された場合、印刷画像を、上記一面と反対の他面側から読み取り、原稿画像と、上記他面側から読み取ったスキャン画像とに基づいて、印刷物の異常を検知する。一方で、印刷画像上に透け防止画像が形成されていないと判定された場合、印刷画像を印刷物の印刷面側から読み取り、原稿画像と、印刷物の印刷面側から読み取ったスキャン画像とに基づいて、印刷物の異常を検知する。
【0093】
なお、上述した例では、原稿画像を鏡面反転した反転画像と、スキャン画像とを比較する場合について説明したが、このような場合に限定されず、スキャン画像を鏡面反転した反転画像と、原稿画像とを比較してもよい。あるいは、原稿画像とスキャン画像とについて、鏡面対称な画素位置の画素値を比較してもよい。
【0094】
以上で説明した本実施形態の検査装置500によれば、裏刷りされた印刷物の印刷面と反対の他面側から読み取ったスキャン画像と、原稿画像とを比較して、印刷物の検品を実施するので、透け防止画像が形成された印刷物の品質を検査する場合でも適切に検査を実施できる。
【0095】
以上のように、実施形態において、検査装置500、画像形成システム100、検査方法、および検査プログラムについて説明した。しかしながら、本発明は、その技術思想の範囲内において当業者が適宜に追加、変形、および省略することができることはいうまでもない。
【0096】
例えば、上述の実施形態では、透明素材として、シート状の素材を例示して説明したが、透明素材は板状の素材等であってもよい。
【0097】
また、上述の実施形態では、1次転写されたカラー画像およびホワイト画像をシートに2次転写し、これらをシートに同時に定着する場合について説明したが、本発明はこのような場合に限定されない。例えば、カラー画像を先にシート2次転写し、定着した後に、ホワイト画像をシートに2次転写し、定着するように構成してもよい。これにより、カラー画像とホワイト画像が混色することをより確実に防止できる。
【0098】
また、上述の実施形態では、検査装置500が制御部540を有し、制御部540が、印刷物が異常であるか否かを判断する場合について説明した。しかしながら、本発明はこのような場合に限定されず、画像形成装置300の制御部380が、印刷物が異常であるか否かを判断する役割を担うように構成してもよい。
【0099】
また、上述の実施形態では、用紙搬送装置400が、画像形成装置300から供給された印刷物を、表裏を反転せずにそのまま検査装置500に搬送し、検査装置500において、上側スキャナー522が印刷物の印刷面側を読み取り、下側スキャナー521が印刷物のシート側を読み取る場合について説明した。しかしながら、例えば、印刷画像上に透け防止画像が形成されていると判断される場合に、シートの表裏を反転するように用紙搬送装置400を構成することにより、検査装置500において、印刷物の印刷面側およびシート側にかかわらず、上側スキャナー522により読み取ることができる。これにより、下側スキャナー521の設置を省くことができる。
【0100】
また、検査プログラムは、USBメモリー、フレキシブルディスク、CD-ROM等のコンピューター読み取り可能な記録媒体によって提供されてもよいし、インターネット等のネットワークを介してオンラインで提供されてもよい。この場合、コンピューター読み取り可能な記録媒体に記録されたプログラムは、通常、メモリーやストレージ等に転送され記憶される。また、この検査プログラムは、例えば、単独のアプリケーション・ソフトウェアとして提供されてもよいし、サーバーの一機能としてその各装置のソフトウェアに組み込んでもよい。
【0101】
また、実施形態において検査プログラムにより実行される処理の一部または全部を回路等のハードウェアに置き換えて実行されうる。
【符号の説明】
【0102】
100 画像形成システム、
200 給紙装置、
210 給紙部、
220 用紙搬送部、
230 通信部、
240 制御部、
300 画像形成装置、
310 画像処理部、
320 画像形成部、
330 給紙部、
340 用紙搬送部、
350 定着部、
360 通信部、
370 操作表示部、
380 制御部、
400 用紙搬送装置、
410 用紙搬送部、
420 用紙反転部、
430 通信部、
440 制御部、
500 検査装置、
600 後処理装置、
700 クライアント端末。