(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】車両用ストラット式サスペンション
(51)【国際特許分類】
B60G 11/16 20060101AFI20240501BHJP
B60G 15/07 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
B60G11/16
B60G15/07
(21)【出願番号】P 2020099245
(22)【出願日】2020-06-08
【審査請求日】2023-05-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【氏名又は名称】鈴木 大介
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【氏名又は名称】飛田 高介
(72)【発明者】
【氏名】関野 直規
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-008063(JP,A)
【文献】特開2000-266102(JP,A)
【文献】特開2014-185658(JP,A)
【文献】特開2014-062560(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0189441(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60G 11/16
B60G 15/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車輪と車体とをつなぐ上下方向にわたり配置され、該車輪の振動を減衰するストラットシリンダーと、
前記ストラットシリンダーの周囲に設けられ前記車輪からの入力を吸収するスプリングと、
前記ストラットシリンダーに取付けられ前記スプリングの上端を保持するアッパースプリングシートと、
前記スプリングの内側で前記ストラットシリンダーの周囲を覆う円筒状のダストカバーとを備えた車両用ストラット式サスペンションにおいて、
当該車両用ストラット式サスペンションはさらに、
前記ダストカバーの内側に位置し前記アッパースプリングシートとともに前記ダストカバーの上端部を挟むバンプストッパと、
前記ダストカバーを前記ストラットシリンダーに保持する円環状の保持部材とを備え、
前記ダストカバーの外周面には、内側に凹んだ溝部が一周にわたって形成されていて、
前記保持部材は、
前記スプリングと前記アッパースプリングシートとに挟まれる円環部と、
前記円環部から下方に延び前記ダストカバーの溝部に係止される1つ以上の係止部とを有
し、
前記アッパースプリングシートは、
下方が開放され上方に凸の円錐台形状または円筒形状であり前記ダストカバーを介して前記バンプストッパを受けるストッパ受け部と、
前記ストッパ受け部の外側に連続し下方に凹んだ環状溝と、
前記環状溝の外側に連続し前記保持部材の円環部を介して前記スプリングを受けるスプリング受け部とを有し、
前記保持部材は、前記円環部に連続し前記アッパースプリングシートの下側で前記環状溝に沿って下方に張り出したフランジを有し、該フランジの下端から下方に前記係止部が延びていて、
前記アッパースプリングシートはさらに、前記環状溝の底部に沿って等間隔に設けられた複数の第1貫通孔を有し、
前記第1貫通孔の数は、前記保持部材の係止部の数の倍であることを特徴とする車両用ストラット式サスペンション。
【請求項2】
車両の車輪と車体とをつなぐ上下方向にわたり配置され、該車輪の振動を減衰するストラットシリンダーと、
前記ストラットシリンダーの周囲に設けられ前記車輪からの入力を吸収するスプリングと、
前記ストラットシリンダーに取付けられ前記スプリングの上端を保持するアッパースプリングシートと、
前記スプリングの内側で前記ストラットシリンダーの周囲を覆う円筒状のダストカバーとを備えた車両用ストラット式サスペンションにおいて、
当該車両用ストラット式サスペンションはさらに、
前記ダストカバーの内側に位置し前記アッパースプリングシートとともに前記ダストカバーの上端部を挟むバンプストッパと、
前記ダストカバーを前記ストラットシリンダーに保持する円環状の保持部材とを備え、
前記ダストカバーの外周面には、内側に凹んだ溝部が一周にわたって形成されていて、
前記保持部材は、
前記スプリングと前記アッパースプリングシートとに挟まれる円環部と、
前記円環部から下方に延び前記ダストカバーの溝部に係止される1つ以上の係止部とを有し、
前記アッパースプリングシートは、
下方が開放され上方に凸の円錐台形状または円筒形状であり前記ダストカバーを介して前記バンプストッパを受けるストッパ受け部と、
前記ストッパ受け部の外側に連続し下方に凹んだ環状溝と、
前記環状溝の外側に連続し前記保持部材の円環部を介して前記スプリングを受けるスプリング受け部とを有し、
前記保持部材は、前記円環部に連続し前記アッパースプリングシートの下側で前記環状溝に沿って下方に張り出したフランジを有し、該フランジの下端から下方に前記係止部が延びていて、
前記保持部材の係止部は、前記フランジの下端から下方に延びる円筒形状の本体と、該本体の内周面に一周にわたって設けられ内側に向かって突出し前記ダストカバーの溝部に係止される突出部とを有
し、
前記アッパースプリングシートはさらに、前記環状溝の底部に形成され上方に凹んだ複数の凹部と、該複数の凹部の間に形成された複数の第2貫通孔とを有し、
前記保持部材はさらに、前記フランジの内側面から内側に突出していて前記アッパースプリングシートの凹部に対応する位置に形成された複数の凸部と、該複数の凸部の間のうち前記アッパースプリングシートの第2貫通孔に対応する位置に形成された複数の第3貫通孔とを有し、
前記保持部材の第3貫通孔の周方向に沿った幅は、前記アッパースプリングシートの第2貫通孔の周方向に沿った幅より大きいことを特徴とす
る車両用ストラット式サスペンション。
【請求項3】
前記突出部は、前記本体の内周面に上下に離間して2段に形成されていて、前記ダストカバーの溝部を含む凹凸形状と噛み合うように嵌合することを特徴とする請求項
2に記載の車両用ストラット式サスペンション。
【請求項4】
前記ダストカバーの外周面にはさらに、上下方向に延びる縦リブが形成されていて、
前記保持部材の係止部の本体の内周面には、前記縦リブに対応する位置に、上下方向に延び外側に凹んだ縦溝が形成されていることを特徴とする請求項
2または3に記載の車両用ストラット式サスペンション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ストラット式サスペンションに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用ストラット式サスペンションは、例えばストラットシリンダー(ショックアブソーバー)と、スプリングと、ダストカバーとを備える。ストラットシリンダーは、車両の車輪と車体とをつなぐ上下方向にわたり配置され、車輪の振動を減衰する。スプリングは、ストラットシリンダーの周囲に設けられていて車輪からの入力を吸収する。ダストカバーは、スプリングの内側でストラットシリンダーの周囲を覆う円筒状の部材であり、ストラットシリンダーに外部からダストや水が浸入することを防止している。
【0003】
特許文献1には、ストラットダンパのダストカバー取付構造が記載されている。このダストカバー取付構造は、上スプリングシートと、バンプラバー(バンプストッパ)とを備える。上スプリングシートは、ストラットダンパのピストンロッドの周囲に設置されていて、スプリングの上端を保持する。バンプラバーは、ピストンロッドの外周に挿着されていて、ダストカバーの内側に位置している。
【0004】
特許文献1のダストカバー取付構造では、上スプリングシートとバンプラバーとの間でダストカバーの上端部を挟み込むことにより、ダストカバーの上端部と上スプリングシートとの間に隙間が生じることを回避している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし特許文献1のダストカバー取付構造では、ストラットダンパのストロークなどに伴ってバンプストッパが劣化して変形し、バンプストッパとピストンロッドとの保持力が低下することで、ダストカバーが下方にずれる可能性がある。ダストカバーが下方にずれると、ダストカバーの上端部と上スプリングシートの間には隙間が生じてしまう。このような場合、この隙間を通ってストラットシリンダー内にダストや水が浸入する可能性が高く、ストラットダンパの不具合の原因となり得る。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑み、ストラットシリンダーに外部からダストや水が浸入することを防止できる車両用ストラット式サスペンションを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明にかかる車両用ストラット式サスペンションの代表的な構成は、車両の車輪と車体とをつなぐ上下方向にわたり配置され、車輪の振動を減衰するストラットシリンダーと、ストラットシリンダーの周囲に設けられ車輪からの入力を吸収するスプリングと、ストラットシリンダーに取付けられスプリングの上端を保持するアッパースプリングシートと、スプリングの内側でストラットシリンダーの周囲を覆う円筒状のダストカバーとを備えた車両用ストラット式サスペンションにおいて、車両用ストラット式サスペンションはさらに、ダストカバーの内側に位置しアッパースプリングシートとともにダストカバーの上端部を挟むバンプストッパと、ダストカバーをストラットシリンダーに保持する円環状の保持部材とを備え、ダストカバーの外周面には、内側に凹んだ溝部が一周にわたって形成されていて、保持部材は、スプリングとアッパースプリングシートとに挟まれる円環部と、円環部から下方に延びダストカバーの溝部に係止される1つ以上の係止部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ストラットシリンダーに外部からダストや水が浸入することを防止できる車両用ストラット式サスペンションを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1実施例に係る車両用ストラット式サスペンションが適用された車両の一部を概略的に示す図である。
【
図2】
図1の車両用ストラット式サスペンションの要部を示す図である。
【
図3】
図2の車両用ストラット式サスペンションの各部材を組み付ける様子を示す図である。
【
図4】
図3の車両用ストラット式サスペンションの各部材を組み付けた状態を示す図である。
【
図5】
図2の車両用ストラット式サスペンションの一部を示す図である。
【
図6】本発明の第2実施例に係る車両用ストラット式サスペンションの要部を示す図である。
【
図7】
図6の車両用ストラット式サスペンションの各部材を組み付ける様子を示す図である。
【
図10】
図7(b)のアッパースプリングシートを示す図である。
【
図11】
図7(b)の組み付けられた状態のダストカバーと保持部材を示す図である。
【
図12】
図7の各部材を組み付けた状態での内部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施の形態に係る車両用ストラット式サスペンションの代表的な構成は、車両の車輪と車体とをつなぐ上下方向にわたり配置され、車輪の振動を減衰するストラットシリンダーと、ストラットシリンダーの周囲に設けられ車輪からの入力を吸収するスプリングと、ストラットシリンダーに取付けられスプリングの上端を保持するアッパースプリングシートと、スプリングの内側でストラットシリンダーの周囲を覆う円筒状のダストカバーとを備えた車両用ストラット式サスペンションにおいて、車両用ストラット式サスペンションはさらに、ダストカバーの内側に位置しアッパースプリングシートとともにダストカバーの上端部を挟むバンプストッパと、ダストカバーをストラットシリンダーに保持する円環状の保持部材とを備え、ダストカバーの外周面には、内側に凹んだ溝部が一周にわたって形成されていて、保持部材は、スプリングとアッパースプリングシートとに挟まれる円環部と、円環部から下方に延びダストカバーの溝部に係止される1つ以上の係止部とを有することを特徴とする。
【0012】
上記構成では、アッパースプリングシートとバンプストッパとでダストカバーの上端部が挟まれていて、さらに、保持部材の円環部から下方に延びる1つ以上の係止部によって、ダストカバーの外周面に形成された溝部が係止されている。また、保持部材では、スプリングとアッパースプリングシートとで円環部が挟まれているため、アッパースプリングシートに対する係止部の位置が固定される。
【0013】
このため、ダストカバーは、車両用ストラット式サスペンションのストロークによっても、下方にずれることがなく、ダストカバーの上端部とアッパースプリングシートとの間に隙間が生じない。したがって、このような隙間を通って外部からストラットシリンダーにダストや水が浸入することを防止できる。
【0014】
上記のアッパースプリングシートは、下方が開放され上方に凸の円錐台形状または円筒形状でありダストカバーを介してバンプストッパを受けるストッパ受け部と、ストッパ受け部の外側に連続し下方に凹んだ環状溝と、環状溝の外側に連続し保持部材の円環部を介してスプリングを受けるスプリング受け部とを有し、保持部材は、円環部に連続しアッパースプリングシートの下側で環状溝に沿って下方に張り出したフランジを有し、フランジの下端から下方に係止部が延びている。
【0015】
これにより、アッパースプリングシートの環状溝に沿うように保持部材にフランジを形成したので、アッパースプリングシートを保持部材に組み付ける組付け作業での位置決め精度が向上し、組み付けの作業性も向上する。また、アッパースプリングシートに対する保持部材の位置決め精度が向上することで、保持部材の係止部の位置が安定し、ダストカバーの溝部との係止も安定する。さらに、保持部材にフランジを形成することで、保持部材自体の剛性や強度が向上する。このため、車両用ストラット式サスペンションの作動時での振動などに対する耐久性が向上する。
【0016】
上記の保持部材の係止部は、円環部の周囲に等間隔に少なくとも3つ設けられていて、係止部の各々は、フランジの下端から下方に延びる矩形片状の本体と、本体の下端から上側に向かうほど内側に膨出しダストカバーの溝部に係止される爪とを有する。
【0017】
このように保持部材では、係止部が矩形片状の本体の下端に形成された爪を有するので、ダストカバーの溝部に係止部を確実に係止できる。また保持部材は、円環部の周囲に等間隔に少なくとも3つの係止部を設けたので、係止部によってダストカバーをバランスよく保持できる。このため保持部材では、1つの係止部に荷重が集中することを回避し、ダストカバーの脱落を防止できる。
【0018】
上記のアッパースプリングシートはさらに、環状溝の底部に沿って等間隔に設けられた複数の第1貫通孔を有し、第1貫通孔の数は、保持部材の係止部の数の倍である。
【0019】
これにより、アッパースプリングシートを保持部材に組み付けた状態であっても、アッパースプリングシートの第1貫通孔のいくつかは、保持部材の係止部と重ならない。このため、アッパースプリングシートの上側から水が浸入した場合、アッパースプリングシートの第1貫通孔のうち係止部に重ならない第1貫通孔から、係止部に阻害されることなく、水を外部に確実に排水できる。
【0020】
上記の保持部材の係止部は、フランジの下端から下方に延びる円筒形状の本体と、本体の内周面に一周にわたって設けられ内側に向かって突出しダストカバーの溝部に係止される突出部とを有する。
【0021】
このように保持部材では、係止部の本体を円筒形状に形成することで、係止部の剛性が高くなり、耐久性を向上させることができる。また、保持部材の係止部は、円筒形状の本体の内周面に一周にわたって突出部を設けている。このため、係止部の突出部は、円筒状のダストカバーの外周面に一周にわたって形成された溝部と一周にわたって係止される。したがって、保持部材の係止部とダストカバーの溝部とがシール構造となり、ダストや水などが外部から浸入することを防止できる。
【0022】
上記の突出部は、本体の内周面に上下に離間して2段に形成されていて、ダストカバーの溝部を含む凹凸形状と噛み合うように嵌合する。これにより、保持部材の係止部の2段に形成された突出部と、ダストカバーの溝部を含む凹凸形状とがラビリンス構造となり、より確実なシール性能を得ることができる。
【0023】
上記のアッパースプリングシートはさらに、環状溝の底部に形成され上方に凹んだ複数の凹部と、複数の凹部の間に形成された複数の第2貫通孔とを有し、保持部材はさらに、フランジの内側面から内側に突出していてアッパースプリングシートの凹部に対応する位置に形成された複数の凸部と、複数の凸部の間のうちアッパースプリングシートの第2貫通孔に対応する位置に形成された複数の第3貫通孔とを有し、保持部材の第3貫通孔の周方向に沿った幅は、アッパースプリングシートの第2貫通孔の周方向に沿った幅より大きい。
【0024】
これにより、アッパースプリングシートの複数の凹部および保持部材の複数の凸部を目印にすることで、アッパースプリングシートを保持部材に組み付けるときの位置合わせが容易となり、組み付け性を向上させることができる。また、アッパースプリングシートの複数の凹部と保持部材の複数の凸部との位置合わせを行うことで、アッパースプリングシートの第2貫通孔と保持部材の第3貫通孔との位置合わせも容易かつ確実に行うことができ、排水性を確保できる。一例として第2貫通孔を下側に開口し、第3貫通孔を外側に開口した場合においては、アッパースプリングシートの上側から浸入した水は、アッパースプリングシートの第2貫通孔から下方に流れ落ち、さらに第2貫通孔よりも周方向に沿った幅が大きい保持部材の第3貫通孔により確実に受け止められて外側に流れることにより外部に排水される。
【0025】
上記のダストカバーの外周面にはさらに、上下方向に延びる縦リブが形成されていて、保持部材の係止部の本体の内周面には、縦リブに対応する位置に、上下方向に延び外側に凹んだ縦溝が形成されている。
【0026】
このように、ダストカバーの外周面に縦リブを形成し、保持部材の内周面に縦リブに対応する縦溝を形成したので、ダストカバーおよび保持部材の上下方向の剛性が向上し、さらにダストカバーに対する保持部材の軸周りの回転を防止できる。また、ダストカバーに保持部材を組み付けるとき、縦リブと縦溝が上方方向のガイドとなるため、組み付けの作業性も向上する。
【実施例】
【0027】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施例について詳細に説明する。かかる実施例に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0028】
図1は、本発明の第1実施例に係る車両用ストラット式サスペンション100が適用された車両102の一部を概略的に示す図である。なお
図1では、車両用ストラット式サスペンション100の下部のみを示している。
図2は、
図1の車両用ストラット式サスペンション100の要部を示す図である。
【0029】
車両用ストラット式サスペンション100は、ストラットシリンダー104とスプリング106とを備える。ストラットシリンダー104は、上下方向にわたる部材であって、車両102の右前輪などの車輪108と
図2に鎖線で示す車体としてのストラットタワー110とをつなぐとともに、車輪108の振動を減衰している。ストラットシリンダー104の下部は、
図1に示す車輪側取付部材112を介して車輪108に取付けられている。またストラットシリンダー104の上部は、
図2に示す固定ボルト114および固定ナット116を含む車体側取付部材118を介してストラットタワー110に取付けられている。
【0030】
スプリング106は、ストラットシリンダー104の周囲に設けられていて車輪108からの入力を吸収する。スプリング106の下端は、ストラットシリンダー104に取付けられたスプリングシート120に保持されている。なお
図1には、ラックバー(不図示)の端部に接続されたタイロッド122も示している。
【0031】
車両用ストラット式サスペンション100は、
図2に示すストラットサポート124と、アッパースプリングシート126と、ダストカバー128と、バンプストッパ130と、保持部材132とを備える。ストラットサポート124は、ストラットシリンダー104のシリンダシャフト134の周囲に取付けられ、シリンダシャフト134の上部を支持する。
【0032】
アッパースプリングシート126は、シリンダシャフト134に取付けられスプリング106の上端136を保持する。なおストラットサポート124とアッパースプリングシート126の間にはベアリング138が配置されている。ダストカバー128は、スプリング106の内側でシリンダシャフト134の周囲を覆う円筒状の部材である。バンプストッパ130は、ダストカバー128の内側に位置していて、アッパースプリングシート126とともにダストカバー128の上端部140を挟んでいる。保持部材132は、円環状の部材であって、ダストカバー128をシリンダシャフト134に保持する。また保持部材132の硬度は、ダストカバー128の硬度よりも高い。
【0033】
図3は、
図2の車両用ストラット式サスペンション100の各部材を組み付ける様子を示す図である。
図3(a)は、ダストカバー128に保持部材132を組み付ける前の状態を示している。
図3(b)は、組み付けられたダストカバー128および保持部材132に上方からアッパースプリングシート126を組み付ける前の状態を示している。
【0034】
保持部材132は、
図3(a)に示す円環部142と、フランジ144と、複数(ここでは3つ)の係止部146、148、150とを有する。円環部142は、
図2に示すようにスプリング106の上端136とアッパースプリングシート126とに挟まれる部位である。フランジ144は、円環部142に連続しアッパースプリングシート126の下側で下方に張り出している。
【0035】
係止部146、148、150は、
図3(a)に示すように円環部142の周囲に等間隔に設けられていて、さらにフランジ144の下端152(
図3(b)参照)から下方に延びている。ダストカバー128の外周面には、内側に凹んだ溝部154が一周にわたって形成されている。係止部146、148、150は、ダストカバー128の被係止部としての溝部154に係止されている。なお保持部132では、円環部142の周囲に等間隔に3つの係止部146、148、150を設けるようにしたが、これに限られず、2つあるいは4つ以上の係止部を設けてもよいし、円環部142の周囲に必ずしも等間隔に設けなくてもよい。
【0036】
アッパースプリングシート126は、
図3(b)に示すようにストッパ受け部156と、環状溝158と、スプリング受け部160とを有する。ストッパ受け部156は、下方が開放され上方に凸の円錐台形状または円筒形状を有し、
図2に示すように天面162においてダストカバー128の上端部140を介してバンプストッパ130の上端164を下方から受ける。環状溝158は、ストッパ受け部156の外側に連続し下方に凹んだ部位である。スプリング受け部160は、環状溝158の外側に連続した部位であって、保持部材132の円環部142を介してスプリング106の上端136を受ける。また
図2に示すように保持部材132のフランジ144は、アッパースプリングシート126の環状溝158に沿うように形成されている。
【0037】
図4は、
図3の車両用ストラット式サスペンション100の各部材を組み付けた状態を示す図である。
図4(a)は、
図3(b)に示す組み付けられたダストカバー128および保持部材132にアッパースプリングシート126を上方から組み付けた状態を示している。
図4(b)は、
図4(a)のダストカバー128、保持部材132およびアッパースプリングシート126が組み付けられた状態での、保持部材132の係止部148およびその周囲を示す図である。
【0038】
保持部材132の係止部148は、
図4(b)に示すようにフランジ144の下端152から下方に延びる矩形片状の本体166と、爪168とを有する。爪168は、本体166の下端170から上側に向かうほど内側に膨出していて、ダストカバー128の溝部154に係止される。なおここでは、係止部148を代表的に例示したが、他の係止部146、150も同様の形状を有する。また係止部146、148、150の下端、すなわち本体166の下端170は、
図2に示すようにバンプストッパ130の下端172よりも上側に位置している。さらにダストカバー128の溝部154よりも下側は、
図2に示すように蛇腹状に形成されている。
【0039】
図5は、
図2の車両用ストラット式サスペンション100の一部を示す図である。
図5(a)は、アッパースプリングシート126を上方から見た状態を示している。
図5(b)は、車両用ストラット式サスペンション100の機能などを説明する図である。
【0040】
アッパースプリングシート126は、
図5(a)に示すように複数(ここでは6つ)の第1貫通孔174a~174fを有する。これら第1貫通孔174a~174fは、環状溝158の底部176に沿って等間隔に設けられている。また第1貫通孔174a~174fの数は、保持部材132の3つの係止部146、148、150の数の倍である。
【0041】
車両用ストラット式サスペンション100では、
図5(b)に示すようにアッパースプリングシート126のストッパ受け部156の天面162とバンプストッパ130の上端164とで、ダストカバー128の上端部140が挟まれている。さらに、保持部材132の円環部142からフランジ144を介して下方に延びる3つの係止部146、148、150によって、ダストカバー128の外周面に形成された溝部154が係止されている。また、保持部材132の円環部142が、スプリング106(
図2参照)とアッパースプリングシート126とで挟まれているため、アッパースプリングシート126に対する係止部146、148、150の位置が固定される。
【0042】
このため車両用ストラット式サスペンション100では、作動時のストロークによっても、ダストカバー128が下方にずれることがなく、ダストカバー128の上端部140とアッパースプリングシート126との間に隙間が生じない。車両用ストラット式サスペンション100の作動時には、一例として
図5(b)の矢印Aに示すバンプ荷重に対して、ダストカバー128は、アッパースプリングシート126のストッパ受け部156の天面162に上端部140が突き当たることで位置が固定される。また、
図5(b)の矢印Bに示すリバウンド荷重に対して、ダストカバー128は、保持部材132の係止部146が溝部154に係止されることで位置が固定される。このため、車両用ストラット式サスペンション100では、上記隙間が生じないため、隙間を通って外部からストラットシリンダー104のシリンダシャフト134などにダストや水が浸入することを防止できる。
【0043】
また車両用ストラット式サスペンション100では、
図2に示すようにアッパースプリングシート126の環状溝158に沿うように保持部材132にフランジ144を形成している。このため、アッパースプリングシート126を保持部材132に組み付ける組付け作業での位置決め精度が向上し、組み付けの作業性も向上する。また、アッパースプリングシート126に対する保持部材132の位置決め精度が向上することにより、保持部材132の係止部146、148、150の位置が安定し、ダストカバー128の溝部154との係止も安定する。さらに、保持部材132にフランジ144を形成することで、保持部材132自体の剛性や強度が向上する。このため、車両用ストラット式サスペンション100の作動時での振動などに対する保持部材132の耐久性が向上する。
【0044】
また保持部材132では、係止部146、148、150が
図4(b)に示す矩形片状の本体166の下端170に形成された爪168を有するので、ダストカバー128の溝部154に係止部146、148、150を確実に係止できる。さらに保持部材132は、円環部142の周囲に等間隔に3つの係止部146、148、150を設けたので、係止部146、148、150によってダストカバー128をバランスよく保持できる。このため保持部材132では、係止部146、148、150のうちいずれか1つに荷重が集中することを回避し、ダストカバー128の脱落を防止できる。
【0045】
さらに車両用ストラット式サスペンション100では、アッパースプリングシート126の第1貫通孔174a~174f(
図5(a)参照)の数が、保持部材132の係止部146、148、150の数の倍である。これにより、アッパースプリングシート126を保持部材132に組み付けた状態であっても、アッパースプリングシート126の第1貫通孔174a~174fのいくつかは、保持部材132の係止部146、148、150と重ならない。
【0046】
ここでは、第1貫通孔174a、174c、174eが係止部146、148、150にそれぞれ重なるものの、第1貫通孔174b、174d、174fは、係止部146、148、150に重ならない。このため、
図5(b)に示すようにアッパースプリングシート126の上側から水が浸入した場合、係止部146、148、150に重ならない第1貫通孔174b、174d、174fから、係止部146、148、150に阻害されることなく、矢印Cに示すように水を外部に確実に排水できる。
【0047】
図6は、本発明の第2実施例に係る車両用ストラット式サスペンション100Aの要部を示す図である。車両用ストラット式サスペンション100Aは、アッパースプリングシート126A、ダストカバー128Aおよび保持部材132Aを備える点で、上記の車両用ストラット式サスペンション100と異なる。
【0048】
アッパースプリングシート126Aは、シリンダシャフト134に取付けられスプリング106の上端136を保持する。ダストカバー128Aは、スプリング106の内側でシリンダシャフト134の周囲を覆う円筒状の部材である。バンプストッパ130は、ダストカバー128Aの内側に位置していて、アッパースプリングシート126Aとともにダストカバー128Aの上端部140Aを挟んでいる。保持部材132Aは、円環状の部材であって、ダストカバー128Aをシリンダシャフト134に保持する。また保持部材132Aの硬度は、ダストカバー128Aの硬度よりも高い。
【0049】
図7は、
図6の車両用ストラット式サスペンション100Aの各部材を組み付ける様子を示す図である。
図7(a)は、ダストカバー128Aに保持部材132Aを組み付ける前の状態を示している。
図7(b)は、組み付けられたダストカバー128Aおよび保持部材132Aに上方からアッパースプリングシート126Aを組み付ける前の状態を示している。
【0050】
保持部材132Aは、
図7(a)に示す円環部142Aと、フランジ144Aと、係止部178とを有する。円環部142Aは、
図2に示すようにスプリング106の上端136とアッパースプリングシート126Aとに挟まれる部位である。フランジ144Aは、円環部142Aに連続しアッパースプリングシート126Aの下側で下方に張り出している。
【0051】
図8は、
図7(a)のダストカバー128Aを示す図である。
図8(a)は、ダストカバー128Aの斜視図である。
図8(b)は、ダストカバー128Aを上方から見た状態を示す図である。
図9は、
図7(a)の保持部材132Aを示す図である。
図9(a)は、保持部材132Aの内周面の一部を示す斜視図である。
図9(b)は、保持部材132Aを下方から見た状態を示す図である。
【0052】
ダストカバー128Aの外周面には、
図8(a)に示すように内側に凹んだ溝部154Aが一周にわたって形成されていて、さらに複数(ここでは6つ)の上下方向に延びる縦リブ180a~180f(
図8(b)参照)が形成されている。また、ダストカバー128Aの外周面には、溝部154Aを含む凹凸形状が形成されている。
【0053】
保持部材132Aの係止部178は、
図9(a)に示すようにフランジ144Aの下端152Aから下方に延びる部位である。係止部178は、フランジ144Aの下端152Aから下方に延びる円筒形状の本体182と、突出部184、185とを有する。突出部184、185は、本体182の内周面に一周にわたって設けられ内側に向かって突出していて、互いに上下に離間して2段に形成されている。係止部178の突出部184、185は、
図6および
図7(b)に示すように、ダストカバー128Aの被係止部としての溝部154Aに係止されている。このとき、保持部材132Aの係止部178の2段に形成された突出部184、185は、ダストカバー128Aの溝部154Aを含む凹凸形状と噛み合うように嵌合する。そして、2段に形成された突出部184、185と、ダストカバー128Aの溝部154Aを含む凹凸形状とがラビリンス構造を形成する。また係止部178は、
図6に示すようにバンプストッパ130の下端172よりも上側に位置している。さらにダストカバー128Aの溝部154Aよりも下側は、
図6に示すように蛇腹状に形成されている。
【0054】
また
図9(a)に示すように、保持部材132Aの係止部178の本体182の内周面には、複数(ここでは6つ)の縦溝186a~186f(
図9(b)参照)が形成されている。縦溝186a~186fは、上下方向に延び外側に凹んだ部位であり、
図8(b)に示すダストカバー128Aの縦リブ180a~180fに対応する位置に形成されている。
【0055】
図10は、
図7(b)のアッパースプリングシート126Aを示す図である。
図10(a)は、アッパースプリングシート126Aを上方から見た状態を示す図である。
図10(b)は、アッパースプリングシート126Aの斜視図である。
【0056】
アッパースプリングシート126Aは、
図7(b)および
図10に示すようにストッパ受け部156Aと、環状溝158Aと、スプリング受け部160Aとを有する。ストッパ受け部156Aは、
図7(b)に示すように下方が開放され上方に凸の円錐台形状または円筒形状を有する。ストッパ受け部156Aは、
図6に示すように天面162Aにおいてダストカバー128Aの上端部140Aを介してバンプストッパ130の上端164を下方から受ける。
【0057】
環状溝158Aは、ストッパ受け部156Aの外側に連続し下方に凹んだ部位である。スプリング受け部160Aは、環状溝158Aの外側に連続した部位であって、
図6に示すように保持部材132Aの円環部142Aを介してスプリング106の上端136を受ける。また保持部材132Aのフランジ144Aは、アッパースプリングシート126Aの環状溝158Aに沿うように形成されている。
【0058】
アッパースプリングシート126Aはさらに、
図10(a)に示すように複数(ここでは3つ)の凹部188a、188b、188cと、複数(ここでは3つ)の第2貫通孔190a、190b、190cとを有する。凹部188a、188b、188cは、
図10(b)に示すように環状溝158Aの底部176Aに形成され上方に凹んだ部位である。第2貫通孔190a、190b、190cは、凹部188a、188b、188cの間に形成されていて、下側に向けて開口している。
【0059】
図11は、
図7(b)の組み付けられた状態のダストカバー128Aと保持部材132Aを示す図である。
図11(a)は、ダストカバー128Aおよび保持部材132Aを上方から見た状態を示す図である。
図11(b)は、
図11(a)のダストカバー128Aおよび保持部材132Aの斜視図である。
【0060】
保持部材132Aはさらに、複数(ここでは3つ)の凸部192a、192b、192cと、複数(ここでは3つ)の第3貫通孔194a、194b、194cとを有する。凸部192a、192b、192cは、フランジ144Aの内側面から内側に突出していて、アッパースプリングシート126Aの凹部188a、188b、188cに対応する位置に形成されている。
【0061】
第3貫通孔194a、194b、194cは、凸部192a、192b、192cの間のうちアッパースプリングシート126Aの第2貫通孔190a、190b、190cに対応する位置に形成されていて、外側に向けて開口している。また、保持部材132Aの第3貫通孔194a、194b、194cの周方向に沿った幅寸法La(
図11(a)参照)は、アッパースプリングシート126Aの第2貫通孔190a、190b、190cの周方向に沿った幅寸法Lb(
図10(a)参照)より大きい。
【0062】
図12は、
図7の各部材を組み付けた状態での内部を示す図である。
図12(a)は、ダストカバー128A、保持部材132Aおよびアッパースプリングシート126Aを組み付けた状態を示す斜視図である。なお図中にはスプリング106も示している。
図12(b)は、
図12(a)の一部を拡大して示す図である。
【0063】
図12(a)に示すように、保持部材132Aの上側にアッパースプリングシート126Aが組付けられることにより、アッパースプリングシート126Aの第2貫通孔190bの下側には、保持部材132Aの第3貫通孔194bが位置している。このため、
図12(b)の矢印Dに示すように、アッパースプリングシート126Aの上側から浸入した水は、アッパースプリングシート126Aの下側に開口した第2貫通孔190bから下方に流れ落ちる。さらに浸入した水は、第2貫通孔190bよりも周方向に沿った幅が大きく、外側に開口した保持部材132Aの第3貫通孔194bにより確実に受け止められて外側に流れて外部に排水される。
【0064】
車両用ストラット式サスペンション100Aでは、
図6に示すようにアッパースプリングシート126Aのストッパ受け部156Aの天面162Aとバンプストッパ130の上端164とで、ダストカバー128Aの上端部140Aが挟まれている。さらに、保持部材132Aの円環部142Aからフランジ144Aを介して下方に延びる係止部178によって、ダストカバー128Aの外周面に形成された溝部154Aが係止されている。また、保持部材132Aの円環部142Aが、スプリング106とアッパースプリングシート126Aとで挟まれているため、アッパースプリングシート126Aに対する係止部178の位置が固定される。
【0065】
このため車両用ストラット式サスペンション100Aでは、作動時のストロークによっても、ダストカバー128Aが下方にずれることがなく、ダストカバー128Aの上端部140Aとアッパースプリングシート126Aとの間に隙間が生じない。このため、車両用ストラット式サスペンション100Aでは、このような隙間を通って外部からストラットシリンダー104のシリンダシャフト134などにダストや水が浸入することを防止できる。
【0066】
また車両用ストラット式サスペンション100Aでは、
図6に示すようにアッパースプリングシート126Aの環状溝158Aに沿うように保持部材132Aにフランジ144Aを形成している。このため、アッパースプリングシート126Aを保持部材132Aに組み付ける組付け作業での位置決め精度が向上し、組み付けの作業性も向上する。また、アッパースプリングシート126Aに対する保持部材132Aの位置決め精度が向上することにより、保持部材132Aの係止部178の位置が安定し、ダストカバー128Aの溝部154Aとの係止も安定する。さらに、保持部材132Aにフランジ144Aを形成することで、保持部材132A自体の剛性や強度が向上する。このため、車両用ストラット式サスペンション100Aの作動時での振動などに対する保持部材132Aの耐久性が向上する。
【0067】
さらに保持部材132Aでは、係止部178の本体182を円筒形状に形成することで、係止部178の剛性が高くなり、耐久性を向上させることができる。また、保持部材132Aの係止部178は、円筒形状の本体182の内周面に一周にわたって突出部184、185を設けている。このため、係止部178の突出部184、185は、円筒状のダストカバー128Aの外周面に一周にわたって形成された溝部154Aと一周にわたって係止される。したがって、車両用ストラット式サスペンション100Aでは、保持部材132Aの係止部178とダストカバー128Aの溝部154Aとがシール構造となり、ダストや水などが外部から浸入することを防止できる。
【0068】
また突出部184、185は、本体182の内周面に上下に離間して2段に形成されていて、ダストカバー128Aの溝部154Aを含む凹凸形状と噛み合うように嵌合する。このため、車両用ストラット式サスペンション100Aでは、保持部材132Aの係止部178の2段に形成された突出部184、185と、ダストカバー128Aの溝部154Aを含む凹凸形状とがラビリンス構造となり、より確実なシール性能を得ることができる。
【0069】
また車両用ストラット式サスペンション100Aでは、アッパースプリングシート126Aの凹部188a、188b、188cおよび保持部材132Aの凸部192a、192b、192cを目印にすることで、アッパースプリングシート126Aを保持部材132Aに組み付けるときの位置合わせが容易となり、組み付け性を向上させることができる。
【0070】
またアッパースプリングシート126Aの凹部188a、188b、188cと保持部材132Aの凸部192a、192b、192cとの位置合わせを行うことで、アッパースプリングシート126Aの第2貫通孔190a、190b、190cと保持部材132Aの第3貫通孔194a、194b、194cとの位置合わせも容易かつ確実に行うことができる。このため、車両用ストラット式サスペンション100Aでは、アッパースプリングシート126Aの上側から浸入した水が、第2貫通孔190a、190b、190cおよび第3貫通孔194a、194b、194cを通って外部に確実に排水される(
図12の矢印D参照)。
【0071】
さらに車両用ストラット式サスペンション100Aでは、ダストカバー128Aの外周面に縦リブ180a~180f(
図8(b)参照)を形成し、保持部材132Aの内周面に縦リブ180a~180fに対応する縦溝186a~186f(
図9(b)参照)を形成している。このため、ダストカバー128Aおよび保持部材132Aの上下方向の剛性が向上し、さらにダストカバー128Aに対する保持部材132Aの軸周りの回転を防止できる。また、ダストカバー128Aに保持部材132Aを組み付けるとき、縦リブ180a~180fと縦溝186a~186fが上方方向のガイドとなるため、組み付けの作業性も向上する。
【0072】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施例について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、車両用ストラット式サスペンションに利用することができる。
【符号の説明】
【0074】
100、100A…車両用ストラット式サスペンション、102…車両、104…ストラットシリンダー、106…スプリング、108…車輪、110…ストラットタワー、112…車輪側取付部材、114…固定ボルト、116…固定ナット、118…車体側取付部材、120…スプリングシート、122…タイロッド、124…ストラットサポート、126、126A…アッパースプリングシート、128、128A…ダストカバー、130…バンプストッパ、132、132A…保持部材、134…シリンダシャフト、136…スプリングの上端、138…ベアリング、140、140A…ダストカバーの上端部、142、142A…円環部、144、144A…フランジ、146、148、150、178…係止部、152、152A…フランジの下端、154、154A…溝部、156、156A…ストッパ受け部、158、158A…環状溝、160、160A…スプリング受け部、162、162A…ストッパ受け部の天面、164…バンプストッパの上端、166、182…係止部の本体、168…爪、170…本体の下端、172…パンプストッパの下端、174a、174b、174c、174d、174e、174f…第1貫通孔、176、176A…環状溝の底部、180a、180b、180c、180d、180e、180f…縦リブ、184、185…突出部、186a、186b、186c、186d、186e、186f…縦溝、188a、188b、188c…凹部、190a、190b、190c…第2貫通孔、192a、192b、192c…凸部、194a、194b、194c…第3貫通孔