(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】医療診断支援装置、医療診断支援装置の制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/00 20060101AFI20240501BHJP
【FI】
A61B5/00 G
(21)【出願番号】P 2020103441
(22)【出願日】2020-06-16
【審査請求日】2023-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 諒一
(72)【発明者】
【氏名】笠井 聡
【審査官】増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-513727(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0323064(US,A1)
【文献】特開2020-060857(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00-5/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各患者の複数の生体情報を取得する取得部と、
前記取得部により取得された各前記患者の複数の生体情報から、学習済みの識別機器を用いて、疾患およびその罹患可能性を推定する推定部と、
前記推定部により推定された各前記患者の前記疾患およびその罹患可能性を出力部に出力する制御部と、
前記推定部により推定された各前記疾患の罹患可能性に基づいて、各前記疾患のリスク度を算出する算出部と、を備え、
前記算出部は、
算出した各前記患者の各前記疾患のリスク度から、各前記患者に対して使用が推奨されるモダリティのリストを算出する、
医療診断支援装置。
【請求項2】
前記算出部は、
各前記患者の前記疾患の前記リスク度から、各前記患者に対する総合リスク度を算出する、
請求項
1に記載の医療診断支援装置。
【請求項3】
前記算出部は、
複数の患者の前記総合リスク度から、前記複数の患者に対するトリアージを実行する、
請求項
2に記載の医療診断支援装置。
【請求項4】
各患者の複数の生体情報を取得するステップと、
各前記患者の複数の生体情報から、学習済みの識別機器を用いて、疾患およびその罹患可能性を推定するステップと、
各前記患者の前記疾患およびその罹患可能性を出力部に出力するステップと、
推定された各前記疾患の罹患可能性に基づいて、各前記疾患のリスク度を算出する算出ステップと、を実行し、
さらに前記算出ステップでは、
算出した各前記患者の各前記疾患のリスク度から、各前記患者に対して使用が推奨されるモダリティのリストを算出する、
医療診断支援装置の制御方法。
【請求項5】
コンピュータに、
各患者の複数の生体情報を取得する工程、
各前記患者の複数の生体情報から、学習済みの識別機器を用いて、疾患およびその疾患可能性を推定する工程、
各前記患者の疾患およびその罹患可能性を出力部に出力する工程、
推定された各前記疾患の罹患可能性に基づいて、各前記疾患のリスク度を算出する算出工程、を実行させ、
さらに前記算出工程では、
算出した各前記患者の各前記疾患のリスク度から、各前記患者に対して使用が推奨されるモダリティのリストを算出する、
ことを実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療診断支援装置、医療診断支援装置の制御方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
傷病者の緊急度を判断する装置として、AI(Artifical Intelligence)を利用し、ドローンにより撮像した撮像画像の特徴から傷病者の緊急度を判断するトリアージの補完装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、救助が必要とされる複数の救助対象者の中から、身体が危険な状態であることを示す危険度を各救助対象者毎に算出して、救助の優先順位を決定する救助計画提示システムに関する装置も開示されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-192029号公報
【文献】特開2018-129075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、撮像画像(写真)から疾病の程度を判定しているため、疾病者の緊急度を判断することが難しかった。また、特許文献2では、救助対象者の危険度に応じて、救助の優先順位を決定しているため、救助対象者を早期に救助する必要があるか否か緊急度を認識することができなかった。
【0005】
そこで、本発明は、AIを利用して、複数のバイタル情報から各疾病の疾患可能性を算出することにより、診断フローの改善や、患者や疾病に優先順位を割り当てて診断支援を行うことができる、医療診断支援装置、医療診断支援装置の制御方法およびプログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明の上記課題は、下記の構成により解決される。
(1)各患者の複数の生体情報を取得する取得部と、
前記取得部により取得された各前記患者の複数の生体情報から、学習済みの識別機器を用いて、疾患およびその罹患可能性を推定する推定部と、
前記推定部により推定された各前記患者の前記疾患およびその罹患可能性を出力部に出力する制御部と、
前記推定部により推定された各前記疾患の罹患可能性に基づいて、各前記疾患のリスク度を算出する算出部と、を備え、
前記算出部は、
算出した各前記患者の各前記疾患のリスク度から、各前記患者に対して使用が推奨されるモダリティのリストを算出する、
医療診断支援装置。
【0008】
(2)前記算出部は、
各前記患者の前記疾患の前記リスク度から、各前記患者に対する総合リスク度を算出する、
(1)に記載の医療診断支援装置。
【0009】
(3)前記算出部は、
複数の患者の前記総合リスク度から、前記複数の患者に対するトリアージを実行する、
(2)に記載の医療診断支援装置。
【0011】
(4)各患者の複数の生体情報を取得するステップと、
各前記患者の複数の生体情報から、学習済みの識別機器を用いて、疾患およびその罹患可能性を推定するステップと、
各前記患者の前記疾患およびその罹患可能性を出力部に出力するステップと、
推定された各前記疾患の罹患可能性に基づいて、各前記疾患のリスク度を算出する算出ステップと、を実行し、
さらに前記算出ステップでは、
算出した各前記患者の各前記疾患のリスク度から、各前記患者に対して使用が推奨されるモダリティのリストを算出する、
医療診断支援装置の制御方法。
【0012】
(5)コンピュータに、
各患者の複数の生体情報を取得する工程、
各前記患者の複数の生体情報から、学習済みの識別機器を用いて、疾患およびその疾患可能性を推定する工程、
各前記患者の疾患およびその罹患可能性を出力部に出力する工程、
推定された各前記疾患の罹患可能性に基づいて、各前記疾患のリスク度を算出する算出工程、を実行させ、
さらに前記算出工程では、
算出した各前記患者の各前記疾患のリスク度から、各前記患者に対して使用が推奨されるモダリティのリストを算出する、
ことを実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、対象者の疾患とその罹患可能性を把握することにより、病気の見逃しを早期に防止することができるとともに、救急現場等で検査対象者が溢れている状況において、優先的に診断すべき対象者を抽出することができる。
【0014】
これにより、患者1人1人の予後の改善に期待することができ、医療費削減や患者QOL(Quality Of Life)を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1A】第1の実施形態に係る医療診断支援装置の構成例を説明する図である。
【
図1B】第1の実施形態に係る医療診断支援装置のCPUの構成を示した機能ブロック図である。
【
図2】第1の実施形態に係る医療診断支援装置の動作を示したフローチャートである。
【
図3】ある患者の疾患とその可能性とから、疾患ごとのリスク度を算出した説明図である。
【
図4】複数の患者の総合リスク度から、複数の患者に対するトリアージが実行された結果を示した説明図である
【
図5】第2の実施形態に係る医療診断支援装置が、各患者に対して使用が推奨されるモダリティのリストを算出する処理を示したフローチャートである。
【
図6】第3の実施形態に係る医療診断支援装置の動作を示したフローチャートである。
【
図7】医療診断支援装置の学習済みモデルの学習方法の処理を示したフローチャートである。
【
図8】予め準備された生体情報の例を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明を実現するための一例であり、本発明が適用される装置の構成や各種条件によって適宜修正又は変更されるべきものであり、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。また、後述する各実施形態の一部を適宜組み合わせて構成してもよい。なお、同一の部材については同一の符号を付し、説明を適宜省略する。
【0017】
<第1の実施形態>
[医療診断支援装置全体の構成]
図1Aは、第1の実施形態に係る医療診断支援装置100の構成例を説明する図である。第1の実施形態に係る医療診断支援装置100は、CPU101、操作受付部102、学習済みモデル103、出力部104、表示部105、ROM(Read Only Memory)106、RAM(Random Access Memory)107、及び、外部記憶装置108を備えて構成されている。外部記憶装置108は、疾患推定プログラム109を含んで構成されている。
【0018】
図1Aに示されるように、CPU101は、医療診断支援装置100の全体を統括して制御する演算処理装置である。CPU101は、ROM106や外部記憶装置108に格納されたプログラムを実行することにより、各種の制御を行う。CPU101は、例えば、外部記憶装置108に格納された疾患推定プログラム109を実行することにより、
図1Bに示す、取得部111、推定部112、制御部113、及び算出部114を実現する。
【0019】
図1Bは、第1の実施形態に係る医療診断支援装置100のCPU101の構成を示した機能ブロック図である。
【0020】
取得部111は、各患者の複数の生体情報(バイタルデータ)を取得する機能を有している。バイタルデータとは、例えば、年齢、性別、血圧、呼吸数、脈拍、心電図、体温、酸素飽和度、既往歴、喫煙歴、訪問目的、訪問方法などの情報のことである。取得部111は、例えば、測定結果を自動で取得したり、ユーザからの入力により手動で取得する。
【0021】
推定部112は、取得部111により取得された各患者の複数の生体情報から、学習済みモデル(学習済みの識別機器)103を用いて、疾患およびその罹患可能性を推定する機能を有している。推定部112は、例えば、各患者ごとに、疾患とその罹患可能性を、脳動脈瘤:60%、糖尿病:55%、喘息:40%、肺がん:30%、骨折:25%、気胸:10%、結石:3%、等と推定する。
【0022】
制御部113は、推定部112により推定された各患者の疾患およびその罹患可能性を出力部104に出力する機能を有している。
【0023】
算出部114は、各疾患の罹患可能性に基づいて、各疾患のリスク度を算出する機能を有している。算出部114は、各疾患のリスク度(スコア)に従って、総合リスク度を算出することもできる。なお、リスク度とは、危険度又は緊急度の両方の意味を包含する、早急に処置を必要とする度合いを示すものである。
【0024】
なお、本実施形態では、CPU101は、医療診断支援装置100の全体を統括して制御しているが、医療診断支援装置100の全体を制御する代わりに、例えば、複数のハードウェアが処理を分担することにより、医療診断支援装置100の全体を制御してもよい。
【0025】
操作受付部102は、患者情報や患者生体情報の入力を受ける。操作受付部102は、例えば、ユーザからの各種操作を受け付ける、キーボード、マウス、各種スイッチ、ボタン、タッチパネル等の操作部材から構成される。
【0026】
学習済みモデル103は、事前学習済みの識別器を含んで構成され、各種パラメータを記憶し、保存する。学習済みモデル103の詳細については、後述する。
【0027】
出力部104は、疾患およびその罹患可能性を表示部105に出力する。出力部104は、例えば、医師などが使用する診察用の端末により構成される。
【0028】
表示部105は、疾患およびその罹患可能性を表示する。表示部105は、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プリンタ等の表示デバイス、又は、表示するためのソフトウエア(ビューワ)で構成される。
【0029】
ROM106は、例えば、医療診断支援装置100を制御する制御プログラムを格納する。
RAM107は、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)により構成され、CPU101が制御プログラムや疾患推定プログラム109を実行するために必要なデータや画像データを一時的に記憶するワーキングメモリとして機能する。
【0030】
外部記憶装置108は、例えば、ハードディスクドライブにより構成され、算出部114で算出された各患者の疾患のリスク度を記憶する。
【0031】
[医療診断支援装置の動作]
次に、上記構成からなる医療診断支援装置100の動作について、
図1A及び
図1Bを参照しながら、フローチャートを用いて説明する。
【0032】
図2は、第1の実施形態に係る医療診断支援装置100の動作を示したフローチャートである。
【0033】
まず、医療診断支援装置100のCPU101は、取得部111において、各患者の複数の生体情報を取得する(ステップS001)。取得部111は、例えば、患者情報と、各患者の患者生体情報(バイタルデータ)の入力を受け付ける。なお、CPU101は、各患者の複数の生体情報を取得する際、各患者の測定結果を自動で取得してもよく、また、操作受付部102からの入力を受け付けてもよい。
【0034】
医療診断支援装置100のCPU101は、推定部112において、取得部111により取得された各患者の複数の生体情報から、学習済みモデル103を用いて、患者ごとに1以上の疾患およびその罹患可能性を推定する(ステップS003)。
【0035】
医療診断支援装置100のCPU101は、算出部114において、各疾患の罹患可能性に基づいて、各疾患のリスク度を算出する(ステップS005)。この場合、CPU101は、算出部114において、患者ごとに、各疾患の優先スコアと罹患可能性(単に、可能性ともいう。)とから、リスク度を算出する。
【0036】
図3は、ある患者(例えば、Cさん)の疾患とその可能性とから、疾患ごとのリスク度を算出した説明図である。
図3に示すように、横軸には、「優先スコア」、「可能性」、「リスク度」の欄が設けられ、縦軸には、「脳卒中」、「脳動脈瘤」、「骨折」、「肺がん」、「糖尿病」などが設けられている。
【0037】
優先スコアは、既定値として決まっている外部データである。この優先スコアは、例えば、国の基準があればその値を採用することができ、また、医師の権限や病院等の規定に従って、任意に編集することもできる。また、この優先スコアは病院ごとの優先順位、感染症の流行などに応じて可変にすることができる。
【0038】
可能性は、推定部112において、推定された各疾患の罹患可能性を示している。また、リスク度は、優先スコアとその疾患の可能性とを用いて計算することで算出される値である。なお、本実施形態において、この値は、優先スコアとその疾患の可能性とを積算した値を用いて説明するが、本実施形態はこれに限定されるものではなく、優先スコアと疾患の可能性以外に、年齢や性別、血圧等の生体情報を用いて補正することもでき、優先スコアとその疾患可能性を利用して計算できる値であれば、種々の手法を取ることができる。
【0039】
図3に示すCさんの場合、「脳卒中」については、優先スコアの「100」と、可能性の「0.8」とを積算し、リスク度が「80」と算出されている。同様に、「脳動脈瘤」については、優先スコアの「90」と、可能性の「0.6」とを積算し、リスク度が「54」と算出されている。「骨折」については、優先スコアの「60」と、可能性の「0.2」とを積算し、リスク度が「12」と算出されている。「肺がん」については、優先スコアの「90」と、可能性の「0.2」とを積算し、リスク度が「18」と算出されている。「糖尿病」については、優先スコアの「20」と、可能性の「0.4」とを積算し、リスク度が「8」と算出されている。なお、本実施形態では、算出部114は、「リスク度」を算出するだけでなく、重症度の高い疾患が出力された場合に、その疾患が出力された理由や詳細が表示させてもいい。
【0040】
図2のフローチャートに戻り、医療診断支援装置100のCPU101は、算出部114において、各患者の疾患のリスク度から、各患者に対する総合リスク度を算出する(ステップS007)。
【0041】
この場合、算出部114は、各患者ごとに、各疾患ごとのリスク度の合計を算出し、患者ごとに総合リスク度を算出する。例えば、
図3のCさんの場合、算出部114は、脳卒中のリスク度「80」と、脳動脈瘤のリスク度「54」と、骨折のリスク度「12」と、肺がんのリスク度「18」と、糖尿病のリスク度「8」などを加算し、総合リスク度「172」と算出する。
【0042】
医療診断支援装置100のCPU101は、算出部114によって算出された各患者に対する総合リスク度を出力部104に出力する。出力部104は、各患者に対する総合リスク度を表示部105に表示する(ステップS009)。この場合、CPU101の算出部114は、複数の患者の総合リスク度から、複数の患者に対するトリアージを実行し、表示部105にトリアージした結果を表示させて、医療診断支援装置100の処理を終了する。
【0043】
なお、トリアージとは、患者の重症度に応じて、治療の優先度を決定し、選別することをいう。
【0044】
図4は、複数の患者の総合リスク度から、複数の患者に対するトリアージが実行された結果を示した説明図である。CPU101は、算出部114においてトリアージを実行することにより、総合リスク度の高い順に患者を表示させることができる。
【0045】
図4に示すように、例えば、患者の名前ごとに総合リスク度と使用モダリティの欄が設けられ、名前の欄には、総合リスク度の高い順に、4名の患者が表示されている。具体的には、総合リスク度の高い順に従い、Cさんは総合リスク度が「172」、Bさんは総合リスク度が「135」、Dさんは総合リスク度が「96」、Aさんは総合リスク度が「47」と表示されている。
【0046】
これにより、医療従事者は、総合リスク度の高いCさんから順に、診察や処置の優先順位を決定することができる。また、医療診断支援装置100は、医療従事者が患者名を選択することにより、選択された患者の疾患と罹患可能性とを表示し、疾患ごとのリスク度を算出した説明図(例えば、
図3参照)を表示させてもよい。
【0047】
なお、使用モダリティの欄には、各患者が使用する予定のモダリティが表示されている。使用モダリティについては、第2の実施形態において説明する。
【0048】
以上説明したように、第1の実施形態に係る医療診断支援装置100のCPU101は、取得部111と、推定部112と、制御部113と、算出部114とを備えて構成されている。CPU101は、推定部112において、取得部111により取得された各患者の複数の生体情報から、学習済みモデル103を用いて、疾患およびその罹患可能性を推定する。また、CPU101は、算出部114において、各疾患の罹患可能性に基づいて、各疾患のリスク度を算出し、各患者の疾患のリスク度から、各患者に対する総合リスク度を算出する。
【0049】
これにより、第1の実施形態に係る医療診断支援装置100は、対象者の疾患とその罹患可能性を把握することにより、病気の見逃しを早期に防止することができるとともに、救急現場等で検査対象者が溢れている状況において、優先的に診断すべき対象者を抽出することができる。
【0050】
更に、第1の実施形態に係る医療診断支援装置100は、患者1人1人の予後の改善を期待することができ、医療費削減や患者QOLを向上させることができる。
【0051】
<第2の実施形態>
第2の実施形態に係る医療診断支援装置100のCPU101は、算出部114において、各患者の各疾患のリスク度から、各患者に対して使用が推奨されるモダリティ(以下、これを使用モダリティともいう。)のリストを算出する。なお、この使用モダリティには、第1の実施形態における患者が使用する予定のモダリティの意味も含んでいる。
【0052】
第2の実施形態に係る医療診断支援装置100のCPU101によれば、各患者に対して使用モダリティのリストを表示することができるので、医師や看護師等の医療従事者は、患者の検査や処置の優先順位を決定することができる。
【0053】
[医療診断支援装置の動作]
次に、第2の実施形態に係る医療診断支援装置100の動作について、
図5に示すフローチャートを用いて説明する。なお、第2の実施形態に係る医療診断支援装置100の動作において、
図2に示した第1の実施形態に係る医療診断支援装置100の動作と同一の動作については、同一の符号を付し、説明を適宜、省略する。
【0054】
図5は、第2の実施形態に係る医療診断支援装置100が、各患者に対して使用が推奨されるモダリティのリストを算出する処理を示したフローチャートである。
【0055】
まず、
図5に示すステップS001及びステップS003では、
図2に示すステップS001及びステップS003と、同様の処理を行う。
【0056】
次に、医療診断支援装置100のCPU101は、算出部114において、各疾患の罹患可能性に基づいて、各疾患のリスク度を算出し、各患者の各疾患のリスク度から、各患者に対して使用モダリティのリストを算出する(ステップS101)。
【0057】
例えば、
図3を参照すると、脳卒中の可能性や脳動脈瘤の可能性から、使用が推奨されるモダリティとして「MRI(Magnetic Resonance Imaging)」が決定され、また、骨折の可能性から、使用が推奨されるモダリティとして「CT(Computed Tomography)」が決定される。また、肺がんの可能性から、使用が推奨されるモダリティとして「X線」が決定され、また、糖尿病の可能性から、使用が推奨されるモダリティとして「US(UltraSonography)」が決定される。
【0058】
これにより、ステップS009では、
図4で示したように、患者ごとに使用モダリティを表示することができる。また、
図4では、罹患可能性から使用モダリティが推奨される比率に応じて指標を表示しており、例えば、使用モダリティとしてMRIが選択(使用)される可能性が高いことを示している。
【0059】
以上説明したように、第2の実施形態に係る医療診断支援装置100のCPU101は、算出部114において、各患者の各疾患のリスク度から、各患者に対して使用が推奨されるモダリティのリストを算出する。
【0060】
これにより、第2の実施形態に係る医療診断支援装置100のCPU101は、各患者に対して使用モダリティのリストを表示することができるので、医師や看護師等の医療従事者は、患者の検査や処置の優先順位を決定することができる。
【0061】
<第3の実施形態>
第3の実施形態に係る医療診断支援装置100のCPU101は、第1の実施形態に係る医療診断支援装置100の動作と、第2の実施形態に係る医療診断支援装置100の動作とを組み合わせて実行する。
【0062】
[医療診断支援装置の動作]
次に、第3の実施形態に係る医療診断支援装置100の動作について、
図6に示すフローチャートを用いて説明する。なお、第3の実施形態に係る医療診断支援装置100の動作は、
図2に示したフローチャートに、
図5に示したフローチャートのステップS101の処理を追加した処理と同一の処理を実行する。なお、同一の処理には同一の符号を付し、説明を適宜、省略する。
【0063】
図6は、第3の実施形態に係る医療診断支援装置100の動作を示したフローチャートである。
【0064】
第3の実施形態に係る医療診断支援装置100は、まず、取得部111において、各患者の複数の生体情報を取得する(ステップS001)。取得部111は、例えば、患者情報と、各患者の患者生体情報(バイタルデータ)の入力を受け付ける。
【0065】
医療診断支援装置100のCPU101は、推定部112において、取得部111により取得された各患者の複数の生体情報から、学習済みモデル103を用いて、患者ごとに1以上の疾患およびその罹患可能性を推定する(ステップS003)。
【0066】
医療診断支援装置100のCPU101は、算出部114において、各疾患の罹患可能性に基づいて、各疾患のリスク度を算出する(ステップS005)。CPU101は、算出部114において、患者ごとに、各疾患の優先スコアと罹患可能性(可能性)とから、リスク度を算出する。
【0067】
医療診断支援装置100のCPU101は、算出部114において、各患者の疾患のリスク度から、各患者に対する総合リスク度を算出する(ステップS007)。算出部114は、各患者ごとに、各疾患ごとのリスク度の合計を算出し、患者ごとに総合リスク度を算出する。
【0068】
また、医療診断支援装置100のCPU101は、算出部114において、各患者の総合リスク度から、各患者に対して使用モダリティのリストを算出(決定)する(ステップS101)。なお、各患者の各疾患のリスク度から使用モダリティを算出(決定)できる場合、算出部114は、各患者の各疾患のリスク度から使用モダリティを算出(決定)してもよい。
【0069】
医療診断支援装置100のCPU101は、算出部114によって算出された各患者に対する総合リスク度に従って、
図4に示したトリアージが実行された結果を表示部105に表示するとともに(ステップS009)、使用モダリティのリストを表示して、医療診断支援装置100の処理を終了する。
【0070】
以上説明したように、第3の実施形態に係る医療診断支援装置100のCPU101は、取得部111と、推定部112と、制御部113と、算出部114とを備えて構成されている。CPU101は、算出部114において、取得部111により取得された各患者の複数の生体情報から、学習済みモデル103を用いて、疾患およびその罹患可能性を推定する。CPU101は、各疾患の罹患可能性に基づいて、各疾患のリスク度を算出し、各患者の疾患のリスク度から、各患者に対する総合リスク度及び使用モダリティのリストを算出する。
【0071】
これにより、第1の実施形態に係る医療診断支援装置100は、対象者の疾患とその罹患可能性を把握することにより、処置すべき優先順位の高い患者を選別することができるともに、使用モダリティの手配も容易に行うことができるので、多くの患者を効率的に救助や処置することができる。
【0072】
次に、医療診断支援装置100の学習済みモデルの生成について説明する。
【0073】
[学習済みモデルの生成]
学習済みモデル103は、予め準備した生体情報(バイタルデータなど)を入力とし、出力を疾患可能性とした多数(i組個(iは例えば数千から十数万))のデータセットを学習サンプルデータとして用い、これにより機械学習する。学習器(不図示)としては、CPUおよびGPUのプロセッサを用いたスタンドアロンの高性能コンピュータ、又はクラウドコンピュータを用いることができる。
【0074】
なお、本実施形態において、学習器(不図示)は、パーセプトロンを組み合わせて構成したニューラルネットワークを用いた学習方法について、フローチャートを用いて説明するが、本実施形態はこれに限定されるものではなく、教師あり学習であれば、種種の手法を取ることができる。
【0075】
具体的には、学習器(不図示)には、ランダムフォレスト、サポートベクターマシン(SVM:Support Vector Machine)、ブースティング(Boosting)、ベイジアン(Bsysian)、ネットワーク線形判別法、及び非線形判別法等を適用することができる。
【0076】
[学習済みモデルの学習方法]
図7は、医療診断支援装置100の学習済みモデル103の学習方法の処理を示したフローチャートである。
【0077】
学習器(不図示)は、教師データである学習サンプルデータを読み込む。例えば、最初であれば1組目(生体情報、疾患可能性)の学習サンプルデータを読み込み、i回目であれば、i組目の学習サンプルデータを読み込む(ステップS201)。
【0078】
図8は、ある任意の患者Xについて、予め準備した生体情報(バイタルデータ)を示した説明図である。
図8に示すように、生体情報(バイタルデータ)は、例えば、年齢、性別、血圧、呼吸数、脈拍、心電図、体温、酸素飽和度、既往歴、喫煙歴、訪問目的、訪問方法、その他などの入力データと、脳動脈瘤、骨折、肺がん、糖尿病、その他などの教師データとから構成される。そして、学習済みモデル103は、これらの生体情報(バイタルデータ)を学習サンプルデータとして、順番に読み込む。
【0079】
学習器(不図示)は、読み込んだ学習サンプルデータのうち、入力データをニューラルネットワークに入力する(ステップS203)。
【0080】
学習器(不図示)は、ニューラルネットワークの推定結果、即ち、推定された疾患を、入力教師データと比較する(ステップS205)。
【0081】
学習器(不図示)は、比較結果からパラメータを調整する(ステップS207)。例えば、学習器(不図示)は、バックプロパゲーション(Back-propagation:誤差逆伝搬法)という処理を行うことにより、比較結果の誤差が小さくなるように、パラメータを調整し、更新する。
【0082】
学習器(不図示)は、1~i組目まで全データの全処理が完了した場合(ステップS209のYES)、ステップS211に進め、一方、全データの全処理が完了していない場合(ステップS209のNO)、ステップ201に戻り、次の学習サンプルデータを読み込み、ステップS201以下の処理を繰り返す。
【0083】
学習器(不図示)は、ステップS207までの処理で構築された学習済みモデル103を記憶し(ステップS211)、処理を終了する。
【0084】
これにより、第4の実施形態に係る医療診断支援装置100のCPU101は、推定部112において、取得部111により取得された各患者の複数の生体情報から、学習済みモデル103を用いて、疾患およびその罹患可能性を推定することができる。
【符号の説明】
【0085】
100 医療診断支援装置
101 CPU
102 操作受付部
103 学習済みモデル
104 出力部
105 表示部
106 ROM
107 RAM
108 外部記憶装置
109 疾患推定プログラム
111 取得部
112 推定部
113 制御部
114 算出部