(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】制動制御装置
(51)【国際特許分類】
B60T 7/12 20060101AFI20240501BHJP
B60T 8/17 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
B60T7/12 A
B60T8/17 B
(21)【出願番号】P 2020130299
(22)【出願日】2020-07-31
【審査請求日】2023-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100174713
【氏名又は名称】瀧川 彰人
(72)【発明者】
【氏名】丸山 将来
【審査官】山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-010960(JP,A)
【文献】特開2014-218158(JP,A)
【文献】特開2014-144719(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 7/12-8/1769
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が停車状態であるか否かを判定する判定部と、
前記車両の停車状態を維持するために必要な停車維持制動力を設定する設定部と、
前記判定部により前記車両が停車状態であることが判定されており、かつ、前記車両の停車状態において付与されている実制動力が前記設定部により設定されている前記停車維持制動力よりも大きい場合に、前記車両のドライバ及び他の装置の少なくとも一方により要求されている要求制動力にかかわらず、前記実制動力を前記停車維持制動力に向けて減少させる停車維持制御を実行する制御部と、
を備え
、
前記設定部は、前記停車維持制御において、前記要求制動力と前記停車維持制動力との差が所定値以上となった場合に、前記停車維持制動力を前記要求制動力に向けて増大させる、制動制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記停車維持制御において、前記実制動力を前記停車維持制動力まで漸減させる、請求項1に記載の制動制御装置。
【請求項3】
前記設定部は、前記停車維持制御において、前記要求制動力の増大に伴って前記停車維持制動力を増大させる際に、前記要求制動力の増大速度よりも小さい増大速度で前記停車維持制動力を増大させる、請求項
1又は2に記載の制動制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記車両の発進の蓋然性が高い場合に、前記停車維持制御を終了する、請求項
1~3の何れか一項に記載の制動制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
制動制御装置として、例えば特開2009-274490号公報には、通常の制動において液圧勾配制限制御を実行し、緊急制動において液圧勾配制限制御での制限を緩和させる装置が開示されている。これにより、通常の制動時に油圧脈動による異音発生が抑制され、緊急制動時の応答性も確保される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記文献では、制動開始から停車までの制御が開示されているが、車両が停車した後(例えば車速が0になった後)の制御については開示されていない。上記制動制御装置には、停車状態における制動力の制御について改良の余地がある。
【0005】
本発明の目的は、停車状態における車輪への過剰な制動力の付与を抑制することができる制動制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の制動制御装置は、車両が停車状態であるか否かを判定する判定部と、前記車両の停車状態を維持するために必要な停車維持制動力を設定する設定部と、前記判定部により前記車両が停車状態であることが判定されており、かつ、前記車両の停車状態において付与されている実制動力が前記設定部により設定されている前記停車維持制動力よりも大きい場合に、前記車両のドライバ及び他の装置の少なくとも一方により要求されている要求制動力にかかわらず、前記実制動力を前記停車維持制動力に向けて減少させる停車維持制御を実行する制御部と、を備え、前記設定部は、前記停車維持制御において、前記要求制動力と前記停車維持制動力との差が所定値以上となった場合に、前記停車維持制動力を前記要求制動力に向けて増大させる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、車両が停車した後、停車維持制御により、実制動力が停車維持制動力に向けて減少する。したがって、本発明によれば、停車状態における車輪への過剰な制動力の付与を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態の制動制御装置を含む車両用制動装置の構成図である。
【
図2】本実施形態の停車維持制御の一例を示すフローチャートである。
【
図3】本実施形態の停車維持制御の一例を示すタイムチャートである。
【
図4】本実施形態の停車維持制御の別例を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。説明に用いる各図は概念図である。本実施形態の車両用制動装置100は、
図1に示すように、マスタシリンダ2と、液圧発生部3と、複数のホイールシリンダ4と、制動制御装置5と、を備えている。車両用制動装置100は、いわゆるバイワイヤ構成の制動装置である。バイワイヤ構成は、公知であるため、その一例を簡単に説明する。
【0010】
マスタシリンダ2は、ドライバのブレーキペダル21の操作に応じてブレーキ液を出力する装置である。マスタシリンダ2は、ブレーキ操作に応じて、ブレーキ液を、液圧発生部3を介してホイールシリンダ4に供給可能に構成されている。マスタシリンダ2には、図示略のシリンダとピストンによりマスタ室が形成されている。
【0011】
通常制御において、マスタシリンダ2のマスタ室と液圧発生部3とを接続する液路は、マスタカット弁22によって遮断されている。したがって、マスタシリンダ2のブレーキ液は、ブレーキ操作に応じて、シミュレータカット弁23を介してストロークシミュレータ24に供給される。ブレーキペダル21には、ストロークシミュレータ24によって反力(反力圧)が付与される。
【0012】
ブレーキペダル21の操作量は、ストロークセンサ25や、反力圧(踏力)を検出する圧力センサ26により検出される。なお、電源異常時には、各マスタカット弁22が開き、シミュレータカット弁23が閉じて、ブレーキペダル21の操作に応じてマスタシリンダ2のブレーキ液が液圧発生部3を介してホイールシリンダ4に供給される。
【0013】
液圧発生部3は、複数のホイールシリンダ4に液圧を発生させる装置である。液圧発生部3は、各ホイールシリンダ4を調圧可能に構成されている。液圧発生部3は、例えば、ESCアクチュエータ、アキュムレータを備える装置、又は電動シリンダを備える装置であってもよい。液圧発生部3には、マスタシリンダ2のリザーバ27からブレーキ液が供給される。制動制御装置5は、ブレーキペダル21の操作量又は他の装置からの制動要求に応じて、液圧発生部3を制御し、各ホイールシリンダの液圧を調整する。
【0014】
(制動制御装置)
制動制御装置5は、CPUやメモリ等を備えるブレーキECU(電子制御ユニット)である。制動制御装置5は、1つ又は複数のプロセッサを用いて各種制御を実行する。制動制御装置5は、取得部51と、制御部52と、判定部53と、設定部54と、を備えている。取得部51は、ドライバ及び他の装置の少なくとも一方から要求される要求制動力を取得する。取得部51は、ドライバからの制動要求、すなわちブレーキペダル21の操作量(ストロークセンサ25及び/又は圧力センサ26の検出値)に基づいて、要求制動力を演算する。また、取得部51は、例えば車両内の他のECUから送信された要求制動力を受信する。
【0015】
制御部52は、車両の車輪に付与する実制動力が要求制動力に追従するように実制動力を制御する。実制動力は、実際の制動力であり、検出又は推定されたホイールシリンダ4の液圧(以下「ホイール圧」という)に相関する値である。制御部52は、実制動力を、取得部51が取得した要求制動力に近づけるように、液圧発生部3を制御する。換言すると、制御部52は、ホイール圧を、取得部51が取得(演算)した目標ホイール圧に近づけるように、液圧発生部3を制御する。
【0016】
判定部53は、車両が停車状態であるか否かを判定する。判定部53は、例えば、各車輪に設けられた車輪速度センサ61の検出結果に基づいて、車両が停車状態であるか否かを判定する。判定部53は、例えば、車速が0となった場合に車両が停車状態であると判定する。
【0017】
設定部54は、車両の停車状態を維持するために必要な停車維持制動力を設定する。設定部54は、例えば、予め演算された停車に必要な最小の制動力に、所定の値α(α≧0)を加えた制動力を初期の停車維持制動力として記憶している。設定部54は、車両の状態に応じて、初期の停車維持制動力を変更(補正)する。
【0018】
具体的に、設定部54は、例えば加速度センサ62からの検出結果に基づいて、停車時の路面勾配を演算する。設定部54は、停車時の路面勾配に応じて、停車維持制動力を設定する。設定部54は、路面勾配が大きいほど、停車維持制動力を増大させる。また、設定部54は、例えば、乗員や積荷などによる車重の変化に基づいて、停車維持制動力を設定する。設定部54は、車重が大きくなるほど、停車維持制動力を増大させる。このように、設定部54は、車両の状態(例えば路面勾配や車重)に応じて、停車維持制動力を設定する。
【0019】
また、設定部54には、例えば、ドライバによるブレーキペダル21の操作量(例えば踏力)と、停車維持制動力との関係(マップ)が予め設定されていてもよい。また、設定部54には、例えば、ブレーキペダル21の操作量に路面勾配による係数を乗算した値Bと、停車維持制動力との関係(マップ)が予め設定されていてもよい。このように、設定部54は、停車維持制動力の設定にあたり、「ブレーキ操作量」又は「ブレーキ操作量と車両状態(例えば路面勾配)」の入力によって停車維持制動力が出力されるマップを用いてもよい。マップでは、例えば、上記の演算値Bが大きくなるほど、停車維持制動力が大きくなるように設定される。
【0020】
(停車維持制御)
制御部52は、判定部53により車両が停車状態であることが判定されており、かつ、車両の停車状態において付与されている実制動力が設定部54により設定されている停車維持制動力よりも大きい場合に、車両のドライバ及び他の装置の少なくとも一方により要求されている要求制動力にかかわらず、実制動力を停車維持制動力に向けて減少させる停車維持制御を実行する。換言すると、制御部52は、所定の実行条件が満たされると、実制動力を停車維持制動力にすべく減少させる停車維持制御を開始する。
【0021】
さらに、制御部52は、停車維持制御において、実制動力を停車維持制動力まで漸減させる。換言すると、制御部52は、停車維持制御において、実制動力を停車維持制動力まで減少させるにあたり、実制動力の減少勾配(単位時間当たりの減少量)を所定勾配以下に設定する。所定勾配は、液圧制御におけるシステム負荷を考慮して予め設定されている。勾配は速度ともいえる。制御部52は、時間をかけて実制動力を減少させる。停車維持制御実行中、制御部52は、実制動力を要求制動力でなく停車維持制動力に近づけるように、液圧発生部3を制御する。
【0022】
停車維持制御の終了条件は、例えば、車両が発進したこと(車速>0)、アクセルペダル(図示略)が操作されたこと、又は車両の発進の蓋然性が高いことに設定されている。制御部52は、車両が発進したこと、アクセルペダルが操作されたこと、及び車両の発進の蓋然性が高いことの少なくとも1つが検出されたタイミングで、停車維持制御を終了する。
【0023】
本実施形態の制御部52は、車両の発進の蓋然性が高いか否かを判定する。制御部52は、例えば、ブレーキペダル21の操作が解除された場合に、車両の発進の蓋然性が高いと判定する。より具体的には、制御部52は、例えば、要求制動力又はストロークの減少勾配が所定勾配以上である場合や、要求制動力又はストロークが所定値以下である場合(例えば要求制動力が停車維持制動力未満となった場合)に、車両の発進の蓋然性が高いと判定する。
【0024】
また、制御部52は、例えば、自車両と前方車両との車間距離が所定値以上となった場合に、車両の発進の蓋然性が高いと判定してもよい。また、制御部52は、例えば、前方の信号情報が赤から青に変わった場合に、車両の発進の蓋然性が高いと判定してもよい。その他、制御部52は、例えば、ITS(高度道路交通システム)により受信した情報に基づいて、車両の発進の蓋然性が高いか否かを判定してもよい。
【0025】
このように、制御部52は、例えば、要求制動力、ストローク、踏力、信号情報、車間距離、及びITS情報の少なくとも1つに基づいて、車両の発進の蓋然性が高いか否かを判定する。制御部52は、車両の発進の蓋然性が高い場合、停車維持制御を終了する。停車維持制御が終了すると、制御部52による制御は、通常の制御すなわち要求制動力に実制動力を追従させる制御に戻る。
まとめると、本実施形態の制動制御装置5は、車両が停車状態であるか否かを判定する判定部53と、車両の停車状態を維持するために必要な停車維持制動力を設定する設定部54と、停車状態において実制動力が停車維持制動力よりも大きい場合、停車維持制御を実行する制御部52と、を備えている。
【0026】
(停車維持制御の一例)
停車維持制御の一例を、
図2及び
図3を参照して説明する。
図2に示すように、判定部53により車両が停車状態であると判定された際(S101:Yes)、設定部54は停車維持制動力を設定する(S102)。続いて、制御部52は、実制動力が停車維持制動力より大きいか否かを判定する(S103)。実制動力が停車維持制動力より大きい場合(S103:Yes)、制御部52は停車維持制御を実行する(S104)。つまり、制御部52は、液圧発生部3を制御して、実制動力を停車維持制動力まで徐々に減少させる。そして、制御部52は、停車維持制御の終了条件が満たされた場合(S105:Yes)、停車維持制御を終了する(S106)。
【0027】
タイムチャートによれば、
図3に示すように、時間t0においてドライバがブレーキペダル21を踏み込み、要求制動力が増大し始める。時間t1において、車両が走行状態から停車状態に切り替わり、実制動力が停車維持制動力より大きいため、停車維持制御が実行される。つまり、車両が停車した時点(時間t1)から停車維持制御が開始される。
【0028】
時間t1~t2において、実制動力が所定の勾配で減少する。時間t2において、実制動力が停車維持制動力となり、以後停車維持制御が終了するまで(時間t2~t3)、実制動力が停車維持制動力で維持される。なお、
図3では、液圧発生部3の駆動に対して実制動力が遅延なく反応したと仮定して実制動力が表されている。
【0029】
(本実施形態の効果)
本実施形態によれば、車両が停車した後、停車維持制御により、実制動力が停車維持制動力に向けて減少する。したがって、本実施形態によれば、停車状態における車輪への過剰な制動力の付与を抑制することができる。つまり、本実施形態によれば、車両用制動装置100の省電力化が可能となる。停車維持制御によれば、例えばドライバが必要以上にブレーキペダル21を踏み込んだとしても、停車維持可能で相対的に小さな制動力まで実制動力を低減させることができる。本実施形態によれば、制動力(出力)の抑制により消費電力が低下し、高負荷作動シーンの減少によりシステムが保護される。停車維持制御は、停車時の省電力制御ともいえる。
【0030】
また、停車維持制御において実制動力が漸減されるため、急激な液圧変動による装置への負荷増大を抑制することができる。また、設定部54は、車両の状態に応じて停車維持制動力を設定(補正)する。これにより、より停車状態に応じた適切な停車維持制動力が設定される。
【0031】
また、本実施形態の停車維持制御は、車両の発進の蓋然性が高い場合に終了するように設定されている。これにより、例えばドライバによりアクセル操作がなされる前に、停車維持制御が解除され、車輪に要求制動力に応じた実制動力が付与される。したがって、ドライバは、停車維持制御を実行しない車両に近い感覚で車両を発進させることができる。
【0032】
(停車維持制御の別例)
設定部54は、停車維持制御において、要求制動力と停車維持制動力との差が所定値以上となった場合、停車維持制動力を要求制動力に向かって増大させる。また、設定部54は、要求制動力の増大に伴って停車維持制動力を増大する際、要求制動力の増大速度(増大勾配)よりも小さい増大速度(増大勾配)で停車維持制動力を増大させる。
【0033】
具体的に、
図4に示すように、時間T0においてドライバがブレーキペダル21を踏み込み、要求制動力が増大し始める。時間T1において車両が停車状態となり、停車維持制御が開始される。時間T2において実制動力が停車維持制動力に到達する。時間T2~T3において実制動力が一定に維持される。この例では、時間T2以降も、しばらくの間、ドライバの踏力が増大し、要求制動力が増大している。設定部54は、要求制動力を取得しつづけ、要求制動力に応じて停車維持制動力を変更する。
【0034】
時間T3において、要求制動力と停車維持制動力との差が所定値以上となる。時間T3以降、例えば要求制動力と停車維持制動力との差が所定値未満となるまで、設定部54は、停車維持制動力を徐々に増大(漸増)させる。この際の停車維持制動力の増大速度は、要求制動力の増大速度より小さい値に設定される。時間T4において、両者の差が所定値未満となり、設定部54は停車維持制動力の増大を停止させる。時間T4~T5において、停車維持制御が一定となり、実制動力も一定となる。
【0035】
ドライバがブレーキペダル21から足を離し、時間T5において、制御部52は、要求制動力又はストロークの減少勾配が所定勾配以上であることを検出する。つまり、時間T5において、制御部52は、車両が発進する蓋然性が高いと判定し、停車維持制御を終了する。
【0036】
制御部52は、停車維持制御の終了後、実制動力を要求制動力に追従させるように制御する。これにより、
図4の例のように、実制動力が若干増大することもあり得る。ただし、停車維持制動力以上での実制動力の変動は、停車中の変動であるため、ドライバの運転感覚への影響は少ない。また、設定部54が時間T3~T4において停車維持制動力(すなわち実制動力)を増大させたことで、時間T5での実制動力と要求制動力との差を小さくすることができる。これにより、停車維持制御終了時の実制動力の急な増大が抑制される。
【0037】
その後、時間T6においてアクセルペダルが操作される際には、実制動力は要求制動力に応じて0となっている。なお、制御部52は、時間T5ではなく時間T6に停車維持制御を終了してもよい。この場合、アクセル操作時に実制動力が残る可能性がある。このため、時間T6よりも前の時間T5で停車維持制御が終了するほうが、ドライバの発進時の感覚としては、停車維持制御がない車両に近くなりやすい。
【0038】
(別例での効果)
図4の時間T3~T4のように、要求制動力と停車維持制動力との差が大きくなり過ぎないように設定部54が停車維持制動力を増大させることで、停車維持制御の終了後のホイール圧(実制動力)の急変制御を抑制することができる。これにより、液圧を急増させる制御によるシステム負荷の増大を抑制することができる。また、停車維持制動力の増大速度を要求制動力の増大速度より小さく設定することで、上記同様、液圧急増制御によるシステム負荷の増大が抑制される。
【0039】
<その他>
本発明は、上記実施形態に限られない。例えば、停車維持制御の開始は、車両状態が走行状態から停車状態に切り替わったときだけでなく、停車時以降(車両が停車状態にあるとき)であればよい。また、車両用制動装置100は、ドライバのブレーキ操作とは独立してホイール圧を調整することができるバイワイヤ構成であればよく、上記実施形態以外の公知のバイワイヤ構成であってもよい。
【0040】
マスタシリンダ2は、1つのピストン(1つのマスタ室)をもつシングルマスタシリンダであっても、2つのピストン(2つのマスタ室)をもつタンデム型マスタシリンダであってもよい。また、車両用制動装置100は、ポンプを含むブレーキ液供給装置がマスタシリンダのピストンを駆動する構成(サーボ構成)を含んでもよい。
【0041】
また、制動制御装置5の制御対象の制動力は、液圧による制動力に限らず、例えば電子機械ブレーキ(EMB)による制動力であってもよい。制動制御装置5は、制動力発生装置(例えば液圧発生部3又はEMB)を制御する。また、自動運転車両において、制動制御装置5は、他の装置からの制動要求、例えば自動運転に関係するECU又は制動制御装置5の他の機能からの制動要求に基づいて、各種制御を実行することができる。
【0042】
また、制御部52は、停車維持制御において、瞬間的に(パルス的に)実制動力を停車維持制動力まで減少させてもよい。また、停車維持制動力の増大速度(
図4の時間T3~T4参照)は、要求制動力の増大速度以下であってもよいし、要求制動力の増大速度以上であってもよい。
【符号の説明】
【0043】
5…制動制御装置、51…取得部、52…制御部、53…判定部、54…設定部。