(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】芯材の姿勢制御方法
(51)【国際特許分類】
E02D 5/34 20060101AFI20240501BHJP
E04G 21/02 20060101ALI20240501BHJP
E02D 7/00 20060101ALI20240501BHJP
E02D 29/045 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
E02D5/34 Z
E04G21/02 103Z
E02D7/00 A
E02D29/045 Z
(21)【出願番号】P 2020139309
(22)【出願日】2020-08-20
【審査請求日】2023-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒川 真
(72)【発明者】
【氏名】矢部 文生
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 剛
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-257152(JP,A)
【文献】特開2014-218862(JP,A)
【文献】特開平05-280051(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 5/34
E04G 21/02
E02D 7/00
E02D 29/045
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中孔に建て込まれた芯材をコンクリートで埋設する際に前記芯材の姿勢を制御する、芯材の姿勢制御方法であって、
前記芯材が建込まれた
前記地中孔に、所定の間隔で複数のトレミー管を配置する工程と、
複数の該トレミー管を介して前記地中孔にコンクリートを打設しつつ、該コンクリートの天端高さの均一性を監視する工程と、
天端高さが不均一となった場合に、複数の前記トレミー管各々で前記コンクリートの吐出条件を、前記コンクリートの天端高さが均一となるよう調整する工程とを備え、
前記芯材が、逆打ち工法に用いる構真柱であるとともに、
天端高さの均一性を監視するバランス検知センサが、
ひずみゲージであり、前記芯材の同一高さであって対向する位置に、対をなして設置されていることを特徴とする芯材の姿勢制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芯材が建込まれた地中孔にコンクリートを打設しつつ、芯材が鉛直姿勢を維持するよう制御する芯材の姿勢制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
先行して芯材を建込んだ地中孔にコンクリートを打設する先決め工法を採用して芯材の建込み工事を行う場合には、まず、鉛直状に建込まれた芯材の周囲に、複数のトレミー管を間隔を設けて配置する。こののち、トレミー管ごとの吐出量や打設速度が同程度となるように管理しつつ、地中孔中にコンクリートを打設する。
【0003】
しかし、コンクリートの打設作業が進行し、打設したコンクリートの天端が上昇するにつれて、芯材の周囲でコンクリートの天端高さに差を生じ、芯材の下端部近傍に作用する側圧が不均衡となる場合が多い。このような不均衡が生じた場合には、芯材の下端部近傍であって天端高さが大きい側に位置する側壁面がコンクリートに押圧された状態となり、鉛直姿勢であった芯材は傾斜する恐れを生じる。
【0004】
このため、コンクリートの打設作業時には、現場作業員がコンクリートの天端高さを複数個所で計測することにより芯材に作用する側圧の均衡状態を監視し、芯材が鉛直姿勢を保持するよう管理を行っている。ところが、コンクリートの天端高さは、錘を用いた検尺により計測する方法が一般的である。このため、計測作業が煩雑であるだけでなく、計測精度が計測者によって左右されやすく、熟練者の技能に頼らざるを得ないといった課題を生じていた。
【0005】
このような中、特許文献1には、トレミー管によるコンクリートの吐出位置を管理することによって、構真柱の姿勢を鉛直に保持しつつコンクリートを打設する方法が開示されている。具体的には、構真柱の下方に環状の誘導部材を取り付けるとともに、構真柱と誘導部材の間を貫通させた道糸を、構真柱の長手方向に延在させる。
【0006】
次に、これら構真柱と道糸とを杭孔に挿入したうえで、トレミー管を道糸に沿わせつつ杭孔に挿入し、先端が構真柱の下端部近傍であって柱芯に近づくよう誘導する。こうしてトレミー管の先端を構真柱の柱芯に寄せて配置したのち、コンクリートを吐出させつつトレミー管を徐々に引き上げることにより、杭孔内にコンクリートを打設する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述する特許文献1の方法は、トレミー管の先端を、構真柱の柱芯近傍に配置することにより、吐出されたコンクリートによって構真柱が一方向に押される現象を抑止し、構真柱の鉛直精度を極力確保する、というものである。
【0009】
しかし、誘導部材の設置や道糸に沿わせてトレミー管を配置する作業が煩雑であるとともに、道糸に沿わせて配置したトレミー管は、誘導部材近傍に生じる湾曲部でコンクリートの詰まりを生じやすい。また、トレミー管の先端が構真柱に近接していることから、この先端からコンクリートが例えば斜め下方に広がるように吐出された場合には、構真柱がその影響を受けてより傾斜しやすい状態となる。
【0010】
さらに、トレミー管を複数使用する場合には、これらを構真柱を挟んで配置しても各々から吐出されたコンクリートが干渉しあい、いずれかのトレミー管からコンクリートが吐出されにくくなるなどの不具合が起こりやすい。この場合、トレミー管各々から吐出されるコンクリートの打設量に差が生じるために、構真柱の姿勢が、より傾斜しやすい状態となる。
【0011】
本発明は、かかる課題に鑑みなされたものであって、その主な目的は、芯材が建込まれた状態の地中孔にコンクリートを打設しつつ、簡略な方法で迅速に芯材が鉛直姿勢を維持するよう制御することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
かかる目的を達成するため本発明の芯材の姿勢制御方法は、地中孔に建て込まれた芯材をコンクリートで埋設する際に前記芯材の姿勢を制御する、芯材の姿勢制御方法であって、前記芯材が建込まれた前記地中孔に、所定の間隔で複数のトレミー管を配置する工程と、複数の該トレミー管を介して前記地中孔にコンクリートを打設しつつ、該コンクリートの天端高さの均一性を監視する工程と、天端高さが不均一となった場合に、複数の前記トレミー管各々で前記コンクリートの吐出条件を、前記コンクリートの天端高さが均一となるよう調整する工程とを備え、前記芯材が、逆打ち工法に用いる構真柱であるとともに、天端高さの均一性を監視するバランス検知センサが、ひずみゲージであり、前記芯材の同一高さであって対向する位置に、対をなして設置されていることを特徴とする
【0013】
本発明の芯材の姿勢制御方法によれば、地中孔に打設されたコンクリートの天端高さの均一性を、芯材に設けたバランス検知センサを利用して監視できる。これにより、コンクリートの天端における均一性をリアルタイムで把握できる。また、天端高さが不均一であると検知された場合には、芯材に作用するコンクリートの側圧に不均衡が生じているから、その側圧の影響を受けて、鉛直状に建込まれた芯材が傾斜する状態にあることを容易に推定することができる。
【0014】
したがって、天端高さが不均一となったことを検知した時点で速やかに、複数のトレミー管各々でコンクリートの吐出条件を適宜変更し、天端高さが均一となるよう調整することで、芯材に作用する側圧の均衡を図ることができる。これにより、別途設備を準備する等の煩雑な作業を行うことなく、容易かつ迅速に芯材が鉛直姿勢を保持できるよう制御することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、芯材が建込まれた地中孔にトレミー管を用いてコンクリートを打設する際、地中孔に打設されたコンクリートの天端高さの均一性をバランス検知センサにより把握し、天端の状態に応じてトレミー管各々でコンクリートの吐出条件を適宜変更するのみの簡略な方法で、コンクリートを打設しつつ、迅速に芯材の鉛直姿勢を維持できるよう制御することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施の形態における構真柱をコンクリートで埋設する様子を示す図である(その1)。
【
図2】本発明の実施の形態における構真柱をコンクリートで埋設する様子を示す図である(その2)。
【
図3】本発明の実施の形態におけるコンクリートの側圧が構真柱に作用する様子を示す図である。
【
図4】本発明の実施の形態における芯材の姿勢制御方法に用いる装備を示す図である(その1)。
【
図5】本発明の実施の形態における芯材の姿勢制御方法に用いる装備を示す図である(その2)。
【
図6】本発明の実施の形態における芯材の姿勢制御方法を示す図である(その1)。
【
図7】本発明の実施の形態における芯材の姿勢制御方法を示す図である(その2)。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、芯材を地中孔の建込み位置に先決めしたのち、トレミー管を用いてコンクリートを打設する先決め工法による芯材の建込み工事に好適な方法であり、コンクリートの側圧により芯材の姿勢に生じる傾斜を抑制し、鉛直姿勢を保持するよう制御するものである。
【0018】
以下に、芯材の姿勢制御方法を、
図1~
図7を参照しつつ説明する。なお、本実施の形態では、芯材が逆打ち工法に用いる構真柱であり、地中孔内で構真柱と場所打ち杭とを一体に構築する際、構真柱の鉛直姿勢を保持する手段として芯材の姿勢制御方法を適用する場合を事例に挙げ、その詳細を説明する。
【0019】
図1で示すように、構真柱1は、地中孔Hの内方に建込み位置調整装置7を介して所定深さまで吊り下ろされ、姿勢調整装置8を介して鉛直状に建込まれている。建込み位置調整装置7は、地中孔Hの孔口に設置されて構真柱1を支持するとともに、地中孔Hに挿入する際に構真柱1の平面視位置を調整する装置である。その構造はいずれでもよく、地中孔Hに構真柱1を建て込む際、一般に使用されているいずれのものを採用してもよい。
【0020】
また、姿勢調整装置8は、平面視で構真柱1の軸線より放射状に伸縮する複数の伸縮装置により構成され、建込み位置調整装置7とともに、構真柱1の姿勢を鉛直状に調整する部材である。例えばパンタグラフジャッキ等、伸縮装置であれば姿勢調整装置8として、いずれを採用してもよい。そして、地中孔Hは、安定液Wを供給しつつ孔口をケーシングPで保護しながら削孔することにより形成され、その下方には、鉄筋籠Sが建込まれている。
【0021】
このような構真柱1と地中孔Hの孔壁との間には、先端からコンクリートCが吐出される2本のトレミー管Tが配置されている。これにより、トレミー管Tを介してコンクリートCを、鉄筋籠Sと構真柱1の下端部近傍を埋設するようにして地中孔Hの所定の高さ位置まで打設することにより、地中孔Hには、
図2で示すように、鉄筋コンクリート造の場所打ち杭9が構真柱1と一体に構築される。
【0022】
なお、本実施の形態では構真柱1として、コンクリートCに埋設される埋設部分12がクロスH鋼材(H形鋼を十字に組合せた断面十字形の鋼材)により構成され、その上方に位置し、のちに地下躯体の本設柱として機能する柱部分11が鋼管より構成された、鉄骨部材を採用している。
【0023】
ところで、
図1で示すように、コンクリートCの打設作業を開始したのち、作業の進行に伴ってコンクリートCの天端が徐々に上昇すると、構真柱1の埋設部分12にはコンクリートCの側圧が作用する状態となる。すると、構真柱1は地中孔H内で、建込み位置調整装置7及び姿勢調整装置8により鉛直状に建込まれていても、構真柱1に作用するコンクリートCの側圧の均衡状態によって、その姿勢が傾斜する恐れがある。
【0024】
具体的には、
図3(a)で示すように、地中孔H内で打設されたコンクリートCの天端高さが一様な場合、構真柱1の埋設部分12に作用するコンクリートCの側圧も、埋設部分12の周方向に一様で均衡な状態にある。したがって、鉛直姿勢の構真柱1が傾斜する恐れはない。
【0025】
しかし、
図3(b)で示すように、地中孔H内で打設されたコンクリートCの天端高さが不均一な場合には、構真柱1の埋設部分12に作用するコンクリートCの側圧も、埋設部分12の周方向に不均一な状態となる。つまり、
図3(c)の平面図で示すように、埋設部分12に作用するコンクリートCの側圧は、バランスの取れていない不均衡な状態となり、鉛直姿勢の構真柱1は傾斜する恐れがある。
【0026】
そこで、構真柱1には
図4で示すように、柱部分11の上方に、構真柱1の姿勢を把握するために用いる傾斜計2が設けられるとともに、埋設部分12の下方に、打設されたコンクリートCの天端高さの均一性を把握するために用いるバランス検知センサ3が設けられている。
【0027】
傾斜計2は、起立状態で吊持された構真柱1の鉛直軸に対する傾斜角度を把握することができる計測機器であればいずれを採用してもよく、例えば、加速度センサを採用することができる。
【0028】
加速度センサは、自身に作用する重力加速度を検知することで傾斜角度を計測するセンサであり、相互に直交する2方向に感度方向を有する2軸型であれば、構真柱1に対して1つ設置すればよい。一方、1方向にのみ感度方向を有する1軸型の加速度センサを傾斜計2といて採用する場合には、
図4で示すように、構真柱1の軸線方向からみて感度方向が直交する2方向に向くようにして、2つの傾斜計2を構真柱1に設置すればよい。
【0029】
このような加速度センサを備えた傾斜計2は、重力加速度の感度方向に対応する出力電圧を電気信号として、計測ケーブル41を介してデータロガー42に送信する。すると、送信された電気信号はデータロガー42にて鉛直軸に対する傾斜角度に換算され、構真柱1の傾斜角度値として計測・記録される。
【0030】
また、データロガー42に記録された傾斜角度値は、例えばインターネット通信網等を介してと端末装置6と通信接続することにより、端末装置6の出力装置にてリアルタイムでモニタリングすることができる。
【0031】
なお、端末装置6は、演算処理装置及び記憶装置等のハードウェアとこれらハードウェア上で動作するソフトウェアとで構成される情報処理装置を備えている。また、情報処理装置に種々のデータを入力する通信装置やキーボード等の入力装置、情報処理装置で行われた演算処理結果をリアルタイムで出力するディスプレイ及び記憶装置等からなる出力装置を備えている。
【0032】
バランス検知センサ3は、
図4で示すように、一対のひずみゲージ31よりなる。これらひずみゲージ31は、構真柱1の埋設部分12の下端部近傍における同一高さであって対向する位置に設置されている。
【0033】
ひずみゲージ31は、設置された材料に伸縮が生じると、この伸縮に比例して電気抵抗が変化する部材である。そして、この電気抵抗の変化を電圧の変化に置き換えて計測することにより、ひずみゲージ31が設置された部分近傍のひずみεを計測することができるものである。つまり、構真柱1の埋設部分12にひずみゲージ31を設置すれば、埋設部分12に伸縮が生じた場合、この伸縮に対応するひずみεを計測することができる。
【0034】
そこで、本実施の形態では、地中孔HにコンクリートCを打設しつつ、対をなすひずみゲージ31各々のひずみεを計測し、計測したひずみεの差を把握することとした。これにより、埋設部分12のひずみゲージ31を設置した位置近傍に作用するコンクリートCの側圧について均衡状態を監視することができ、ひいては、コンクリートCの天端の均一性を把握することができる。
【0035】
つまり、ひずみεの差が0であれば、
図3(a)で示すように、埋設部分12に作用するコンクリートCの側圧はバランスの取れた均衡状態にあるから、コンクリートCの天端高さが地中孔H内で均一な状態にあると判断できる。一方、ひずみεの差が生じている場合には、
図3(b)及び(c)で示すように、埋設部分12に作用するコンクリートCの側圧が不均衡な状態にあるから、コンクリートCの天端高さも不均一な状態にあると判断できる。
【0036】
なお、ひずみゲージ31各々より検知される出力電圧は、電気信号として計測ケーブル51を介してデータロガー52に送信され、データロガー52にてひずみεとして計測・記録される。また、データロガー52に記録されたひずみεは、傾斜角度値と同様に、端末装置6の出力装置にてリアルタイムでモニタリングすることができる。
【0037】
≪≪芯材の姿勢制御方法≫≫
上記のバランス検知センサ3を利用して、構真柱1が建込まれた状態の地中孔Hにトレミー管Tを使用してコンクリートCを打設しつつ、構真柱1の姿勢を制御する方法を、以下に説明する。
【0038】
まず、
図4で示すように、地中孔Hに建込み位置調整装置7を介して、上述した傾斜計2とバランス検知センサ3が所定の位置に設置された構真柱1を所定深さまで吊り下ろすとともに、構真柱1の姿勢を姿勢調整装置8を調整して鉛直状に調整する。こののち、地中孔Hに、2本のトレミー管Tを、構真柱1を挟んで対向する位置に挿入する。
【0039】
なお、
図5で示すように、2本のトレミー管Tの配置位置とバランス検知センサ3を構成する対をなすひずみゲージ31の配置位置は、平面視で近接する位置に配置しておくと良い。また、コンクリートCの吐出口となるトレミー管Tの先端は、構真柱1を構成する埋設部分12の下端より下方に配置しておく。
【0040】
このような状態から、2本のトレミー管Tを利用した地中孔HへのコンクリートCの打設作業を開始する。また、打設作業と並行して、傾斜計2による構真柱1の傾斜角度値の計測、及びバランス検知センサ3を構成するひずみゲージ31によるひずみεの計測を開始する。
【0041】
こうして、コンクリートCを打設しつつ、地中孔H内に打設されるコンクリートCの天端高さの均一性を監視するとともに、構真柱1の姿勢を監視する。これらの計測結果は常時、現場作業員や作業管理者が、ディスプレイ等の端末装置6の出力装置を介してモニタリングすることが可能となっている。
【0042】
このとき、傾斜角度値の計測及びひずみεの計測は、連続的に計測してもよいし、一定時刻ごと(例えば、数十分毎等)に断続的に計測してもよい。また、2本のトレミー管T各々におけるコンクリートCの吐出量や打設速度は、同程度となるように管理しておくとよい。
【0043】
2本のトレミー管Tを引き上げつつ、地中孔HへのコンクリートCの打設作業を進行させた状態において、対をなすひずみゲージ31各々で計測したひずみεに差が生じた場合には、
図6で示すように、コンクリートCの天端高さが一様な状態から徐々に、不均一な状態に変化したものと判断できる。つまり、構真柱1の姿勢が傾斜した状態となっている、もしくは姿勢を傾斜させる恐れがあるものと想定できる。
【0044】
したがって、一旦トレミー管TへのコンクリートCの供給を停止することにより打設作業を中断し、構真柱1の姿勢制御作業を実施する。つまり、コンクリートCの天端高さが一様な状態となるよう、2本のトレミー管T各々でコンクリートCの吐出条件を適宜変更したうえでコンクリートCの打設作業を再開する。
【0045】
ここで、トレミー管TにおけるコンクリートCの吐出条件とは、コンクリートCの吐出量や打設速度等である。吐出量はトレミー管TへコンクリートCを供給する際の供給量を増減させることで変更することができる。また打設速度は、コンクリートCを供給する際の流下速度を変化させることで変更することができる。
【0046】
例えば、対をなすひずみゲージ31のうち、一方に引張り方向(プラス方向)のひずみが生じ、他方に圧縮方向(マイナス方向)のひずみが生じている場合には、
図6で示すように、引張り方向(プラス方向)のひずみが計測された側のコンクリートCの天端高さが、圧縮方向(マイナス方向)のひずみが計測された側の天端高さより高い状態となっている。
【0047】
したがって、コンクリートCの天端が高いと判断された側に位置するトレミー管Tは、吐出量や打設速度を低下させる、もしくは打設作業を中断する。その一方で、天端が低いと判断された側に位置するトレミー管Tは、吐出量や打設速度を増加させればよい。例えば、
図6及び
図7では、コンクリートCの天端が高いと判断された側に位置するトレミー管TについてコンクリートCの供給を停止し、もう一方のトレミー管Tのみを利用して、コンクリートCの打設を行っている。
【0048】
こうして打設作業を再開したのち、対をなすひずみゲージ31各々で計測したひずみεの差が解消された場合には、
図7で示すように、コンクリートCの天端高さが一様となり、構真柱1が鉛直姿勢にほぼ回復している。したがって、打設作業を再度停止して構真柱1の姿勢制御作業を終了する。こののち、2本のトレミー管T各々で吐出条件をほぼ同様にして再度、コンクリートCの打設作業を再開する。
【0049】
対をなすひずみゲージ31で計測されるひずみεに差が生じるたびに、上記の作業を繰り返し行ったのち、
図2で示すように、コンクリートCの天端が地中孔Hにおける所望の高さ位置に到達し、鉄筋かごSが十分埋設されたところで打設作業を終了する。なお、上記の作業は、傾斜計2により計測される構真柱1の傾斜角度値を適宜確認しつつ、実施すると良い。
【0050】
また、上述したような、構真柱1の鉛直姿勢を保持するよう制御する作業を実施する際には、対をなすひずみゲージ31によるひずみεに差が生じた場合の許容値を設けておくと良い。つまり、両者のひずみεの差が許容値を超えた場合に、構真柱1の鉛直姿勢を保持するよう制御するための上記の作業を実施することとし、これらの作業を開始したのち、ひずみεの差が許容値内に収束した場合に、作業を終了すればよい。
【0051】
さらに、端末装置6のディスプレイ等には、傾斜計2により計測される構真柱1の傾斜角度値と、対をなすひずみゲージ31で計測されたひずみεのみを出力させてもよいし、以下の情報を出力させてもよい。例えば、端末装置6の演算処理装置に、ひずみεの差を算出する差分算出部と、ひずみεの差と許容値に基づいて構真柱1の姿勢制御作業を実施するか否かを判定する姿勢制御判定部を設け、判定結果を出力する。こうすると、地中孔Hに打設されたコンクリートCの天端の状態をより迅速かつ正確に把握し、速やかに構真柱1の姿勢制御作業を実施することが可能となる。
【0052】
上記のとおり芯材の姿勢制御方法によれば、地中孔Hに打設されたコンクリートCの天端高さの均一性を、構真柱1に設けたバランス検知センサ3を利用して監視できる。これにより、コンクリートCの天端における凹凸状態をリアルタイムで容易に把握することができる。また、天端高さが不均一であると検知された場合には、構真柱1に作用するコンクリートCの側圧に不均衡が生じて、鉛直状に建込まれた構真柱1が傾斜する状態にあることを容易に推定できる。
【0053】
したがって、天端高さが不均一となったことを検知した時点で速やかに、複数のトレミー管T各々でコンクリートCの吐出条件を適宜変更し、天端高さが均一となるよう調整することで、構真柱1に作用する側圧の均衡を図ることができる。これにより、別途設備を準備する等の煩雑な作業を行うことなく簡略な方法で、容易かつ迅速に構真柱1が鉛直姿勢を保持するよう制御することが可能となる。
【0054】
これにより、姿勢調整装置8を伸縮させて傾斜した構真柱1を鉛直姿勢に戻すといった煩雑な作業を省略でき、作業性を大幅に向上することが可能となる。また、側圧の不均衡に起因して、構真柱1に交換が必要な程度のねじれや撓みを生じる現象を防止することも可能となる。
【0055】
また、バランス検知センサ3に、市場で一般に広く取引されているひずみゲージ31を利用できるため、特別な装備を用いることなく容易に、コンクリートCの天端高さの均一性を把握することが可能となる。また、従来のような、検尺を用いてコンクリートCの天端高さを計測する場合と比較して、熟練者の技能に頼ることなく天端の凹凸状態をより正確に把握することが可能となる。
【0056】
本発明の芯材の姿勢制御方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0057】
例えば、本実施の形態では、構真柱1としてコンクリートCに埋設される埋設部分12がクロスH鋼材により構成され、地下躯体の本設柱として機能する柱部分11が鋼管より構成された鋼材を適用した。しかし、例えば全長がクロスH鋼材により構成された鋼材等、一般に構真柱1として適用されている部材であれば、いずれを採用してもよい。
【0058】
また、芯材として構真柱1を採用したが、これに限定するものではない。先行して地中孔Hに建込んだのち、トレミー管Tを利用して地中孔HにコンクリートCを打設することにより構築される地中構造物の芯材であれば、例えば、地中壁の芯材等いずれに採用されるものであってもよい。
【0059】
さらに、本実施の形態では、バランス検知センサ3として一対のひずみゲージ31を採用したが、その数量はこれに限定するものではない。その設置位置も、トレミー管Tに近接した位置であれば、構真柱1の埋設部分12におけるいずれに設置に設置してもよい。
【0060】
加えて、バランス検知センサ3は、地中孔Hに吐出されたコンクリートCに起因して構真柱1の下端部近傍に作用する側圧の平面視から見た均衡状態を検知できるセンサであれば、いずれを用いてもよい。例えば、コンクリートCの側圧を計測する際に一般に用いられる圧力センサを採用してもよい。
【0061】
加えて、トレミー管Tの数量も2本に限定されるものではなく、いずれの本数を採用してもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 構真柱
11 柱部分
12 埋設部分
2 傾斜計
3 バランス検知センサ
31 ひずみゲージ
41 計測ケーブル(傾斜計用)
42 データロガー(傾斜計用)
51 計測ケーブル(ひずみゲージ用)
52 データロガー(ひずみゲージ用)
6 端末装置
7 建込み位置調整装置
8 姿勢調整装置
9 場所打ち杭
H 地中孔
S 鉄筋籠
T トレミー管
C コンクリート
P ケーシング
W 安定液