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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】方向指示装置
(51)【国際特許分類】
   G08B 5/00 20060101AFI20240501BHJP
   G08B 27/00 20060101ALI20240501BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20240501BHJP
   F21V 23/00 20150101ALI20240501BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20240501BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20240501BHJP
【FI】
G08B5/00 C
G08B27/00 A
B64C39/02
F21V23/00 140
F21S2/00 365
F21Y115:10
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020141626
(22)【出願日】2020-08-25
(65)【公開番号】P2022037472
(43)【公開日】2022-03-09
【審査請求日】2023-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】大山 実
(72)【発明者】
【氏名】田之上 洋
(72)【発明者】
【氏名】在原 康貴
(72)【発明者】
【氏名】小澤 和典
【審査官】松永 謙一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0203470(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0135450(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0240296(US,A1)
【文献】国際公開第2016/170766(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B 5/00
G08B 27/00
B64C 39/02
F21V 23/00
F21S 2/00
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と、
前記本体部を飛行可能にする飛行手段と、
前記本体部に取り付けられ、指向性を有する光束を投射する投光部と、
前記光束に向けて粒子状物質を噴射する噴霧部と、
前記光束の投射方向を可変にする駆動機構と、
目標地点の三次元位置および前記本体部の三次元位置に基づいて、前記目標地点に向かう方向に前記光束が投射されるように前記投光部および前記駆動機構の動作を制御する制御装置と、を備えることを特徴とする方向指示装置。
【請求項2】
前記本体部の周囲に存在する粒子状物質を検出する粒子検出部をさらに備え、
前記制御装置は、前記粒子検出部の検出結果に基づいて前記噴霧部の動作を制御することを特徴とする請求項に記載の方向指示装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記光束が間欠的に投射されるように前記投光部の動作を制御することを特徴とする請求項1または2に記載の方向指示装置。
【請求項4】
前記投光部は、複数色の光束を投射可能となるよう構成され、
前記制御装置は、複数の目標地点のそれぞれに向かう複数の方向に向けて異なる色の光束が照射されるように前記投光部および前記駆動機構の動作を制御することを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の方向指示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、方向指示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地震や火災などの災害発生時に避難経路を示すための避難誘導装置が提案されている。避難誘導装置は、例えば、市街地や公園などに設置され、平常時には地図表示装置として機能し、災害時には避難すべき方向に光を照射して避難経路を案内する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-234250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
市街地等に設置することを目的とした避難誘導装置では、山岳地域や過疎地における避難誘導が困難である。
【0005】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、山岳地域や過疎地においても利用可能な方向指示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様の方向指示装置は、本体部と、本体部を飛行可能にする飛行手段と、本体部に取り付けられ、指向性を有する光束を投射する投光部と、光束の投射方向を可変にする駆動機構と、目標地点の三次元位置および本体部の三次元位置に基づいて、目標地点に向かう方向に光束が投射されるように投光部および駆動機構の動作を制御する制御装置と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、山岳地域や過疎地においても利用可能な方向指示装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態に係る方向指示装置の使用態様を模式的に示す図である。
図2】方向指示装置の構成を模式的に示す外観図である。
図3】制御装置の機能構成を模式的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。かかる実施の形態に示す具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。
【0010】
図1は、実施の形態に係る方向指示装置10の使用態様を模式的に示す図である。方向指示装置10は、空中を飛行するよう構成され、例えばドローンなどの無人飛行機により構成される。方向指示装置10は、上空から目標地点14に向けて指向性を有する光束12を投射し、目標地点14が存在する方向を指示する。方向指示装置10は、例えば山岳地域で使用され、登山者や遭難者に向けて山小屋などの目標地点14が存在する方向を指示する。図1の例では、目標地点14の一例である山小屋が稜線16の裏側に隠れており、登山者や遭難者は山小屋を直接視認することができない。本実施の形態によれば、上空から光束12を投射することで、方向指示装置10を視認可能な比較的広い範囲に存在する人に対して目標地点14の位置を案内することができる。
【0011】
図2は、方向指示装置10の構成を模式的に示す外観図である。方向指示装置10は、本体部20と、飛行手段22と、投光部24と、噴霧部26と、駆動機構28と、測位アンテナ30と、通信アンテナ32と、バッテリ34と、タンク36と、粒子検出部38と、制御装置40と、を備える。
【0012】
飛行手段22は、本体部20を飛行可能にする。飛行手段22は、例えば、本体部20の上側に取り付けられる複数のプロペラを有する。複数のプロペラの動作を制御することで、本体部20の飛行を制御できる。なお、飛行手段22の具体的な構成は特に限定されず、プロペラ以外の構成を用いて本体部20を飛行可能にしてもよい。飛行手段22は、例えば本体部20を飛行または滞空させるための気球を有してもよい。
【0013】
投光部24は、本体部20の下側に取り付けられ、指向性を有する光束12を投射するよう構成される。投光部24は、高指向性の光束12を投射することが好ましく、平行光束を投射することがより好ましい。投光部24は、LEDなどの光源と、光源からの出力光を平行化(コリメート)するレンズなどの光学素子とを有する。投光部24は、赤、緑、青または白などの可視光の光束12を投射するよう構成される。投光部24は、光束12の色を切替可能となるよう構成されてもよく、例えば、複数色(例えば、赤、緑、青および白)の光束12を投射可能となるよう構成されてもよい。
【0014】
投光部24は、光束12を時間的に連続して投射してもよいし、光束12を時間的に間欠して投射してもよい。投光部24は、光束12を投射する点灯期間と、光束12を投射しない非点灯期間とを繰り返すように動作してもよい。投光部24は、点灯期間において光束12を連続的に投射してもよいし、点灯期間において光束12が明滅するように投射してもよい。投光部24を間欠的に動作させることで、光束12の瞬間的な光強度を高めつつ、バッテリ34の消費を抑えることができる。また、光束12を明滅するように投射することで、連続点灯させる場合よりも光束12の存在を目立たせることができる。
【0015】
噴霧部26は、本体部20の下側に取り付けられ、光束12に向けて粒子状物質18を噴射するよう構成される。噴霧部26は、タンク36に蓄えられる物質を噴射する。噴霧部26は、例えば水などの液体を霧状にして噴射する。粒子状物質18は、液体でなくてもよく、固体の粒子(粉体)であってもよい。粒子状物質18の粒子径は、例えば0.1μm~1mm程度であり、1μm~100μm程度が好ましい。粒子状物質18を噴射することで、光束12を粒子状物質18によって散乱させることができ、光束12の視認性を高めることができる。例えば、光束12に沿って所定距離(例えば、2m~20m程度)にわたって粒子状物質18が噴射されることで、方向指示装置10から少なくとも所定距離までビーム状または棒状に延びる発光体が存在するかのように見せることができる。噴霧部26は、粒子状物質18を効率的に使用するため、光束12の通過領域に選択的に粒子状物質18を噴射することが好ましい。噴霧部26から粒子状物質18が噴射される範囲は、10度以下の立体角となるように狭い範囲に限定されることが好ましい。
【0016】
噴霧部26は、光束12の視認性が低いと考えられる状況において、粒子状物質18を噴射してもよい。噴霧部26は、方向指示装置10の周囲に飛散する粒子状物質の量が少ない場合、例えば、晴天で空気が澄んでいる場合に粒子状物質18を噴射してもよい。噴霧部26は、光束12の視認性が高いと考えられる状況において、粒子状物質18を噴射しなくてもよい。噴霧部26は、方向指示装置10の周囲に飛散する粒子状物質の量が多い場合、例えば、霧が発生している場合や、砂塵が舞っている場合には粒子状物質18を噴射しなくてもよい。
【0017】
噴霧部26は、投光部24の動作に合わせて粒子状物質18を噴射してもよい。投光部24が間欠的に光束12を投射する場合、噴霧部26は、投光部24が光束12を投射する点灯期間または点灯期間の開始前に粒子状物質18を噴射してもよい。つまり、粒子状物質18が噴射された直後に光束12が投射されるように、粒子状物質18の噴射タイミングが制御されてもよい。
【0018】
駆動機構28は、本体部20の下側に取り付けられ、本体部20に対する投光部24および噴霧部26の向きを可変にする。駆動機構28は、投光部24の仰角θおよび方位角φを可変にし、投光部24から投射される光束12の向きを可変にする。仰角θは、本体部20の水平方向に対する角度である。方位角φは、本体部20の上下方向に延びる軸まわりの回転角であり、例えば東西南北の方位を指定する角度である。投光部24および噴霧部26は、例えば、駆動機構28に一体的に取り付けられ、駆動機構28を介して本体部20に取り付けられる。投光部24および噴霧部26の向きは、駆動機構28によって一緒に調整される。駆動機構28は、投光部24および噴霧部26の向きを個別に調整可能となるよう構成されてもよい。
【0019】
測位アンテナ30は、GNSS(Global Navigation Satellite System)などの衛星測位信号の受信部である。測位アンテナ30は、例えば本体部20の上側に取り付けられる。通信アンテナ32は、外部機器と無線通信するための無線信号の送受信部である。通信アンテナ32は、例えば本体部20の下側に取り付けられる。
【0020】
バッテリ34は、方向指示装置10の動作に必要な電力を供給する。バッテリ34は、リチウムイオン電池などの充放電可能な二次電池で構成される。タンク36は、噴霧部26が噴射する物質を貯蔵する。タンク36は、パイプやバルブを介して噴霧部26と接続される。バッテリ34およびタンク36は、本体部20の内部に収容される。
【0021】
粒子検出部38は、本体部20の周囲に存在する粒子状物質を検出する。粒子検出部38は、例えば本体部20の下側に取り付けられる。粒子検出部38は、例えば、噴霧部26が噴射する粒子状物質18と同程度のサイズの粒子状物質の量または濃度を検出する。粒子検出部38は、例えば、本体部20の周囲に存在する粒子状物質に光を照射し、粒子状物質からの反射光または散乱光を計測することで粒子状物質を検出してもよい。粒子検出部38は、投光部24が投射する光束12を利用し、粒子状物質による光束12の反射光または散乱光を計測することで粒子状物質を検出してもよい。粒子検出部38として、視界センサ、温度センサ、湿度センサなどを用いてもよい。
【0022】
制御装置40は、方向指示装置10の動作を制御する。制御装置40は、本体部20に収容されている。制御装置40は、飛行手段22による飛行を制御し、方向指示装置10が所望の飛行地点に滞空するようにする。制御装置40は、方向指示装置10の三次元位置を測定し、方向指示装置10から目標地点14に向かう方向を算出する。制御装置40は、目標地点14に向かう方向に光束12が投射されるように投光部24および駆動機構28を動作させる。制御装置40は、粒子検出部38の検出結果に応じて噴霧部26を動作させる。
【0023】
図3は、制御装置40の機能構成を模式的に示すブロック図である。制御装置40は、測位部42と、通信部44と、飛行制御部46と、発光制御部48と、噴霧制御部50と、指示方向制御部52と、記憶部54とを含む。図示する各機能ブロックは、ハードウェア的には、コンピュータのCPUやメモリをはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックとして描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組み合わせによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0024】
測位部42は、測位アンテナ30が受信する衛星測位信号に基づいて本体部20の三次元位置を測定する。測位部42は、例えば本体部20の緯度、経度および高度を特定する。
【0025】
通信部44は、通信アンテナ32を通じて外部機器と無線通信する。通信部44は、目標地点14の三次元位置情報および方向指示装置10が飛行または滞空すべき飛行地点の三次元位置情報を取得する。通信部44が取得する目標地点や飛行地点の三次元位置情報は、記憶部54に保存される。なお、目標地点や飛行地点の三次元位置情報は、飛行前に記憶部54にあらかじめ設定されることで取得されてもよい。通信部44は、方向指示装置10の飛行方向を指令するための指令情報を取得してもよい。通信部44は、方向指示装置10の現在位置情報、バッテリ34の残量情報、タンク36の残量情報などを外部機器に送信してもよい。
【0026】
飛行制御部46は、飛行手段22の動作を自律的に制御する。飛行制御部46は、例えば、所望の飛行地点との往復飛行や所望の飛行地点での滞空飛行が実現されるように飛行手段22の動作を制御する。飛行制御部46は、目標地点が複数設定される場合、複数の目標地点を巡回する飛行が実現されるように飛行手段22の動作を制御してもよい。飛行制御部46は、通信部44が取得する指令情報に基づいて、飛行手段22の動作を制御してもよい。
【0027】
発光制御部48は、投光部24の動作を制御する。発光制御部48は、方向指示装置10が所望の飛行地点に到達して滞空している場合、投光部24に光束12を投射させる。発光制御部48は、予め設定された点灯パターンにしたがって光束12が間欠的に投射されるように投光部24を動作させてもよい。点灯パターンは、例えば、数秒間にわたって光束12を点滅させた後、数十秒から数分程度にわたって光束12を非点灯とするサイクルを繰り返すように定められてもよい。
【0028】
発光制御部48は、複数の点灯パターンを有し、光束12の点灯パターンを切り替えることで光束12に情報を付与してもよい。例えば、モールス信号を用いた点灯パターンを用意することで、何らかのメッセージが伝達されるようにしてもよい。発光制御部48は、光束12の点灯パターンによって現在時刻が伝達されるようにしてもよい。例えば、現在時刻が7時であれば、光束12をゆっくりと7回点滅させ、点滅回数によって時刻を伝達してもよい。発光制御部48は、通信部44を通じて点灯パターンを定めるデータを取得した場合、取得した点灯パターンにしたがって投光部24を動作させてもよい。
【0029】
発光制御部48は、所定の条件が充足された場合に、投光部24の点灯パターンを切り替えてもよい。例えば、バッテリ34の残量に応じて点灯パターンを切り替えてもよく、バッテリ34の残量が多い場合には非点灯の期間を1分以内に短くし、バッテリ34の残量が少ない場合には非点灯の期間を2分以上に長くしてもよい。また、粒子検出部38の検出結果に基づいて点灯パターンを切り替えてもよく、周囲に飛散する粒子状物質の量が少ない場合、視認性が高まるように非点灯の期間を短くしてもよい。一方、周囲に飛散する粒子状物質の量が多い場合、バッテリ34を節約するために非点灯の期間を長くしてもよい。
【0030】
発光制御部48は、目標地点が複数設定される場合、複数の目標地点のそれぞれに異なる色の光束12が投射されるように、投光部24が投射する光束12の色を切り替えてもよい。複数の目標地点のそれぞれに投射すべき光束12の色は、記憶部54に記憶される。例えば、避難場所に向けて緑色の光束12を投射し、崖や谷などの危険箇所に向けて赤色の光束12を投射してもよい。その他、飲料水を安全に確保できる湧水や清流のある箇所に向けて青色の光束12を投射してもよい。
【0031】
噴霧制御部50は、投光部24による光束12の投射タイミングに合わせて噴霧部26を動作させる。粒子検出部38の検出結果に基づいて噴霧部26の動作を制御する。噴霧制御部50は、周囲に飛散する粒子状物質の量が少ない場合、投光部24の動作に合わせて噴霧部26に粒子状物質18を噴射させる。噴霧制御部50は、周囲に飛散する粒子状物質の量が多い場合、噴霧部26が粒子状物質18を噴射しないようにする。
【0032】
指示方向制御部52は、方向指示装置10の三次元位置と目標地点14の三次元位置に基づいて、方向指示装置10から目標地点14に向かう方向を算出し、算出した方向に基づいて駆動機構28の動作を制御する。指示方向制御部52は、算出した方向に光束12が投射されるように投光部24の仰角θおよび方位角φを制御する。
【0033】
指示方向制御部52は、本体部20の姿勢に応じた制御をしてもよい。指示方向制御部52は、本体部20の揺れや回転を各種センサ(不図示)を用いて検知し、本体部20の揺れや回転による光束12の投射方向のずれを相殺または緩和するように駆動機構28の動作を制御してもよい。なお、本体部20の揺れや回転は、飛行制御部46によって自律的に抑制されることが好ましい。
【0034】
つづいて、方向指示装置10の使用方法を例示する。方向指示装置10は、例えば、登山中に遭難した遭難者を近くの山小屋などの避難場所に誘導するために使用できる。まず、方向指示装置10に目標地点および飛行地点の三次元位置情報が設定される。方向指示装置10は、離陸して設定された飛行地点に向けて飛行する。方向指示装置10は、設定された飛行地点に到達すると、方向指示装置10の現在位置と目標地点の位置に基づいて光束12を投射すべき方向を算出し、算出した方向に向けて光束12を投射する。方向指示装置10は、光束12の視認性を高めるために光束12に沿って粒子状物質18を噴射してもよい。
【0035】
方向指示装置10の飛行地点は、遭難者の場所がいずれであっても視認できる可能性が高い場所となるように設定される。例えば、避難場所がある山の頂上付近や尾根付近ではなく、谷間などの山の斜面から離れた位置に設定される。この場合、方向指示装置10の飛行地点は、目標地点14からある程度離れていることが想定され、例えば、目標地点14から数百m~数km程度離れていることが想定される。したがって、方向指示装置10が投射する光束12は必ずしも目標地点14まで到達せず、光束12が目標地点14をサーチライトのように照らす状況とはなりにくい。
【0036】
方向指示装置10から投射される光束12は、方向指示装置10から少なくとも所定距離(例えば2m~20m程度)にわたって延びるビーム状または棒状の発光体として視認される。遭難者は、ビーム状または棒状の発光体の延びる方向によって避難すべき方向の目安を付けることができる。遭難者から見たときの目標地点14が山の稜線16などで隠れている場合、稜線16の裏側に向けて延びる発光体が視認できるため、稜線16の向こうに避難場所があることを推定できる。したがって、本実施の形態によれば、方向指示装置10の飛行地点の周囲の数百m~数km程度の広い範囲に存在する遭難者に対して避難誘導を実現できる。また、複数の遭難者が互いに異なる場所に存在する場合であっても、一つの方向指示装置10を用いて複数の遭難者を同時に避難誘導することができる。
【0037】
方向指示装置10は、複数の飛行地点を巡回するように設定されてもよい。複数の飛行地点を巡回することで、方向指示装置10を視認可能となる場所を広げることができ、より広範囲に存在する遭難者に対して避難誘導を実現できる。また、複数の方向指示装置10を同時に使用し、複数の方向指示装置10を異なる飛行地点で滞空させることで、より広範囲の遭難者に対して避難誘導できるようにしてもよい。複数の方向指示装置10は、同じ目標地点に向けて光束12を投射してもよいし、互いに異なる目標地点に向けて光束12を投射してもよい。例えば、避難場所に向けて緑色の光束12を投射する第1方向指示装置と、危険箇所に向けて赤色の光束12を投射する第2方向指示装置とを組み合わせて使用してもよい。
【0038】
方向指示装置10は、山岳地域での使用に限られず、任意の場所で利用されてもよい。方向指示装置10は、市街地や平地で利用されてもよい。方向指示装置10は、災害時や遭難時の避難誘導ではなく、登山者に対する経路案内や大規模イベントでの経路案内のために利用されてもよい。方向指示装置10は、陸上で利用されてもよいし、水上で利用されてもよい。例えば、ボートやヨットを利用する海や湖での遭難者に対して避難誘導をしてもよいし、遠泳コースを案内してもよい。
【0039】
方向指示装置10は、地上または水上(例えば船)から延びる係留線で接続されてもよい。この場合、係留線を介して方向指示装置10に電力が供給されてもよいし、係留線を介して方向指示装置10と有線で通信してもよい。
【0040】
方向指示装置10は、スピーカを有し、音声で避難誘導するよう構成されてもよい。方向指示装置10は、音声で光束12の意味を説明してもよい。例えば、「光が延びる方向に避難してください」といった音声を出力してもよい。その他、「緑色が延びる方向に避難してください」「赤色が延びる方向に近づかないでください」などの光束12の色の意味合いを説明する音声を出力してもよい。
【0041】
以上、本発明を上述の実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、実施の形態に示す各構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0042】
10…方向指示装置、12…光束、14…目標地点、18…粒子状物質、20…本体部、22…飛行手段、24…投光部、26…噴霧部、28…駆動機構、38…粒子検出部、40…制御装置。
図1
図2
図3