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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】物体検知装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/527 20060101AFI20240501BHJP
   G01S 15/931 20200101ALI20240501BHJP
【FI】
G01S7/527
G01S15/931
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020141857
(22)【出願日】2020-08-25
(65)【公開番号】P2022037626
(43)【公開日】2022-03-09
【審査請求日】2023-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西 隆史
(72)【発明者】
【氏名】小山 優
(72)【発明者】
【氏名】青山 哲也
【審査官】藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-232069(JP,A)
【文献】特開2020-85506(JP,A)
【文献】国際公開第2016/207620(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/52 - 7/64
15/00 - 15/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を送受信する送受信器(21)と、
前記送受信器を駆動するための駆動信号を生成する駆動信号生成部(24)と、
前記送受信器の受信信号から一部の信号を抽出して出力するフィルタ(25)と、
前記フィルタの出力信号に基づいて物体検知判定を行う検知判定部(3)と、
参照信号を記憶する記憶部(26)と、を備える物体検知装置であって、
前記駆動信号生成部は、前記送受信器の共振周波数とは異なる周波数に対応する前記駆動信号を生成し、
前記フィルタは、前記記憶部に記憶された前記参照信号と前記受信信号の相関度を出力することで、前記受信信号のうち該周波数から前記共振周波数へシフトした信号に対する出力信号が、前記受信信号に含まれる他の信号に対する出力信号よりも大きくなる特性を有している物体検知装置。
【請求項2】
前記検知判定部は、前記フィルタの出力と前記受信信号の振幅の両方が所定値よりも大きい場合に物体検知判定を行い、前記フィルタの出力と前記受信信号の振幅の一方または両方が所定値以下の場合に物体検知判定を行わない請求項1に記載の物体検知装置。
【請求項3】
前記送受信器は、狭帯域の周波数特性を有する請求項1または2に記載の物体検知装置。
【請求項4】
前記駆動信号生成部は、前記送受信器の帯域に含まれ、かつ、前記送受信器の帯域の中心周波数とは異なる周波数に対応する前記駆動信号を生成する請求項1ないしのいずれか1つに記載の物体検知装置。
【請求項5】
所定距離内の物体を検知するための近距離検知状態と、所定距離よりも離れた物体を検知するための通常検知状態とを遷移し、
前記近距離検知状態では、前記駆動信号生成部が前記共振周波数とは異なる周波数に対応する前記駆動信号を生成し、
前記通常検知状態では、前記駆動信号生成部が前記共振周波数に対応する前記駆動信号を生成する請求項1ないしのいずれか1つに記載の物体検知装置。
【請求項6】
前記通常検知状態のとき、検知された物体との距離が閾値以内となった場合に前記近距離検知状態に遷移し、
前記近距離検知状態のとき、検知された物体との距離が閾値よりも大きくなった場合に前記通常検知状態に遷移する請求項に記載の物体検知装置。
【請求項7】
起動してから所定時間が経過するまでの間、前記通常検知状態と前記近距離検知状態とを交互に遷移し、
物体が検知された場合に、検知された物体との距離に応じて前記通常検知状態または前記近距離検知状態に遷移する請求項またはに記載の物体検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体検知装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両において、超音波センサによって障害物を検知し、検知結果を用いて自動駐車等を行う技術が提案されている。車載用の超音波センサでは、超音波を送受信するトランスデューサとしてマイクロフォンが用いられるが、マイクロフォンでは探査波の送信後に残響が発生する。そして、車両から近距離にある物体で探査波が反射すると、この残響に反射波が埋もれる。そのため、近距離にある物体は、遠距離にある物体に比べて検知が困難である。
【0003】
これについて、特許文献1では、共振周波数とは異なる周波数でトランスデューサを駆動し、反射波と残響のうなり成分を検出することで、近距離にある物体を検知している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-268035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、反射波に比べて残響の強度は非常に大きいため、残響内の信号をうなりで検出することはS/Nの観点で困難である。また、車載センサで用いられるマイクロフォンは狭帯域であるため、うなりを検出し、近距離にある物体を検知することがさらに困難になる。
【0006】
本発明は上記点に鑑みて、物体検知装置において近距離にある物体の検知を容易にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、超音波を送受信する送受信器(21)と、送受信器を駆動するための駆動信号を生成する駆動信号生成部(24)と、送受信器の受信信号から一部の信号を抽出して出力するフィルタ(25)と、フィルタの出力信号に基づいて物体検知判定を行う検知判定部(3)と、参照信号を記憶する記憶部(26)とを備える物体検知装置であって、駆動信号生成部は、送受信器の共振周波数とは異なる周波数に対応する駆動信号を生成し、フィルタは、記憶部に記憶された参照信号と受信信号の相関度を出力することで、受信信号のうち該周波数から共振周波数へシフトした信号に対する出力信号が、受信信号に含まれる他の信号に対する出力信号よりも大きくなる特性を有している。
【0008】
マイクロフォンを共振周波数とは異なる周波数で駆動すると、マイクロフォンの構造によって、残響が共振周波数にシフトする。このような駆動特性を利用し、該周波数から共振周波数にシフトした信号を受信信号から抽出することで、残響に埋もれた近距離対象からの反射波を高いS/Nで検出することができる。これにより、近距離にある物体を検知することが容易になる。
【0009】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態にかかる物体検知装置の構成を示すブロック図である。
図2】送信波の周波数成分を示す図である。
図3】送信波の周波数成分を示す図である。
図4】送信波の周波数成分を示す図である。
図5】物体検知処理のフローチャートである。
図6】受信信号の周波数と振幅を示す図である。
図7】フィルタ出力と受信信号の振幅を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0012】
(第1実施形態)
第1実施形態について説明する。図1に示す本実施形態の物体検知装置1は、不図示の車両に搭載されていて、当該車両の周囲の物体Bを検知するように構成されている。物体検知装置1を搭載する車両を、以下「自車両」と称する。不図示の車両は、例えば、自動車である。
【0013】
物体検知装置1は、超音波センサ2と、超音波センサ2の動作を制御する制御部3とを備えている。超音波センサ2は、超音波である探査波を送信するとともに探査波の物体Bによる反射波を受信することで、物体Bを検知するように構成されている。
【0014】
超音波センサ2は、送受信器としてのトランスデューサ21と、送信回路22と、受信回路23と、駆動信号生成部24と、フィルタ25と、参照信号記憶部26と、受信信号処理部27と、振幅生成部28とを備えている。
【0015】
トランスデューサ21は、探査波を外部に向けて送信する送信器としての機能と、反射波を受信する受信器としての機能とを有していて、送信回路22および受信回路23と電気接続されている。すなわち、超音波センサ2は、いわゆる送受信一体型の構成を有している。
【0016】
具体的には、トランスデューサ21は、圧電素子等の電気-機械エネルギー変換素子を内蔵した、超音波マイクロフォンとして構成されている。トランスデューサ21は、探査波を自車両の外部に送信可能および反射波を自車両の外部から受信可能なように、自車両の外表面に面する位置に配置されている。
【0017】
送信回路22は、入力された駆動信号に基づいてトランスデューサ21を駆動することで、トランスデューサ21にて探査波を発信させるように設けられている。具体的には、送信回路22は、デジタル/アナログ変換回路等を有している。すなわち、送信回路22は、駆動信号生成部24から出力された駆動信号に対してデジタル/アナログ変換等の信号処理を施すことで、素子入力信号を生成するように構成されている。素子入力信号は、トランスデューサ21を駆動するための交流電圧信号である。そして、送信回路22は、生成した素子入力信号をトランスデューサ21に印加してトランスデューサ21における電気-機械エネルギー変換素子を励振することで、探査波を発生させるように構成されている。
【0018】
受信回路23は、トランスデューサ21による超音波の受信結果に対応する受信信号を生成してフィルタ25等に出力するように設けられている。具体的には、受信回路23は、増幅回路およびアナログ/デジタル変換回路等を有している。すなわち、受信回路23は、トランスデューサ21が出力した素子出力信号に対して、増幅およびアナログ/デジタル変換等の信号処理を施すことで、受信波の振幅および周波数に関する情報を含む受信信号を生成するように構成されている。素子出力信号は、超音波の受信により、トランスデューサ21に設けられた電気-機械エネルギー変換素子が発生する交流電圧信号である。
【0019】
駆動信号生成部24は、駆動信号を生成して送信回路22に出力するように設けられている。駆動信号は、トランスデューサ21を駆動してトランスデューサ21から探査波を発信させるための信号である。
【0020】
トランスデューサ21の共振周波数をf0として、駆動信号生成部24は、共振周波数f0とは異なる周波数に対応する駆動信号を例えば数周期分生成するようになっている。駆動信号生成部24は、トランスデューサ21の帯域内の周波数であって、共振周波数f0よりも高い周波数に対応する駆動信号を生成する。あるいは、駆動信号生成部24は、トランスデューサ21の帯域内の周波数であって、共振周波数f0よりも低い周波数に対応する駆動信号を生成する。
【0021】
車載センサに用いられるマイクロフォンは、一般的に共振周波数f0±2.5%を帯域とする狭帯域の周波数特性を有している。このようなマイクロフォンを用いる場合には、駆動信号生成部24は、共振周波数f0±2.5%の範囲に含まれ、かつ、トランスデューサ21の帯域の中心周波数とは異なる周波数に対応する駆動信号を生成する。トランスデューサ21の駆動周波数をfdとして、駆動周波数fdがトランスデューサ21の帯域に含まれるように駆動信号を生成することで、探査波の音圧レベルを確保することができる。
【0022】
共振周波数f0よりも高い周波数に対応する駆動信号が生成されると、探査波の周波数は、図2図4に示すように変化する。すなわち、駆動信号による駆動中には、図2に示すように、駆動信号に対応する駆動周波数fdで探査波が送信される。そして、駆動信号による駆動が終了すると、図3に示すように、駆動信号に対応する周波数成分が小さくなり、残響による共振周波数f0の成分が大きくなって、全体として元の駆動周波数fdよりも低い周波数で探査波が送信される。なお、図3において、実線は探査波全体の周波数成分を示し、一点鎖線は駆動信号による周波数成分を示し、二点鎖線は残響の周波数成分を示す。その後、残響成分がさらに大きくなって、図4に示すように共振周波数f0で探査波が送信されるようになる。このように、探査波の周波数は、共振周波数f0よりも高い周波数から共振周波数f0にシフトする。
【0023】
同様に、トランスデューサ21の共振周波数f0よりも低い周波数に対応する駆動信号が生成された場合には、探査波の周波数は、共振周波数f0よりも低い周波数から共振周波数f0にシフトする。
【0024】
フィルタ25は、受信信号から一部の必要な信号を抽出して出力するように構成されている。前述したように、駆動信号生成部24は、トランスデューサ21の共振周波数f0とは異なる周波数に対応する駆動信号を生成する。そして、フィルタ25は、受信信号のうち該周波数から共振周波数f0へシフトした信号に対する出力信号が、受信信号に含まれる他の信号に対する出力信号よりも大きくなる特性を有している。
【0025】
例えば、図1に示すように、超音波センサ2は、受信信号と比較するための参照信号を記憶する参照信号記憶部26を備えており、フィルタ25は、参照信号記憶部26に記憶された参照信号と受信信号の相関度を出力する。このように、フィルタ25を、参照信号を利用した自己相関フィルタとすることで、パルス圧縮によりS/Nを向上させることができる。参照信号は、例えば駆動周波数fdと共振周波数f0から設計される。また、トランスデューサ21の個体特性差を考慮して性能を最大化するために、個体ごとの特性を計測して記憶しておき、それを参照信号として用いてもよい。
【0026】
受信信号処理部27は、フィルタ25の出力信号に対してFFT等の処理を施すことで、受信波の振幅に対応する振幅信号と、受信波の周波数に対応する受信周波数信号とを生成するように構成されている。FFTはFast Fourier Transformの略である。また、受信信号処理部27は、生成した振幅信号および受信周波数信号を、制御部3に出力するように設けられている。
【0027】
振幅生成部28は、受信回路23が生成した受信信号から振幅信号を生成し、制御部3に出力するように設けられている。
【0028】
制御部3は、車載通信回線を介して超音波センサ2と情報通信可能に接続されており、超音波センサ2の送受信動作を制御するように構成されている。
【0029】
制御部3は、いわゆるソナーECUとして設けられていて、図示しないCPU、ROM、RAM、不揮発性リライタブルメモリ、等を有する車載マイクロコンピュータを備えている。ECUはElectronic Control Unitの略である。不揮発性リライタブルメモリは、例えば、EEPROM、フラッシュROM、等である。EEPROMはElectronically Erasable and Programmable Read Only Memoryの略である。
【0030】
制御部3は、受信信号処理部27によって処理されたフィルタ25の出力信号に基づいて物体検知判定を行うように構成されており、検知判定部に相当する。なお、本実施形態では、制御部3は、フィルタ25の出力信号から受信信号処理部27が生成した振幅信号と、受信回路23の出力信号から振幅生成部28が生成した振幅信号の両方が所定の閾値よりも大きい場合に、物体検知判定を行う。受信波には、検知したい対象からの反射波以外に、ノイズや路面からの反射波等が含まれる。これに対して、フィルタ25の出力に加えて受信信号自体の振幅が大きいことを条件に物体検知することで、ノイズ等による誤判定を抑制することが可能となる。
【0031】
物体検知装置1の動作について説明する。物体検知装置1は、自車両のイグニッションがオンされると、図5に示す物体検知処理を繰り返し実行する。
【0032】
なお、駆動周波数fdをトランスデューサ21の共振周波数f0からずらしたり、残響時間短縮のために駆動信号のパルス長を短くしたりすると、トランスデューサ21の出力が低下する。そこで本実施形態では、物体検知装置1は、自車両から所定距離内の物体を検知するための近距離検知状態と、所定距離よりも離れた物体を検知するための通常検知状態とを遷移する。
【0033】
具体的には、物体検知装置1は、通常時は通常検知状態にあってトランスデューサ21を共振周波数f0で駆動する。そして、物体検知装置1は、通常検知状態で検知された物体との距離が所定の閾値以内となった場合には、近距離検知状態に遷移して、トランスデューサ21を共振周波数f0とは異なる周波数で駆動する。また、物体検知装置1は、近距離検知状態で検知された物体との距離が所定の閾値よりも大きくなった場合には、通常検知状態に遷移する。
【0034】
まず、ステップS1にて、物体検知装置1は、通常検知状態であるか否かを判定する。物体検知装置1は、通常検知状態であると判定すると、ステップS2にて、トランスデューサ21を共振周波数f0で駆動する通常検知を行う。一方、物体検知装置1は、通常検知状態ではなく近距離検知状態であると判定すると、ステップS3にて、トランスデューサ21を共振周波数f0とは異なる周波数で駆動する近距離検知を行う。
【0035】
処理は、ステップS2、ステップS3からステップS4に移行する。ステップS4にて、物体検知装置1は、物体が検知された場合に、探査波を送信してから反射波を受信するまでの時間等に基づいて物体との距離を算出し、物体との距離が所定の閾値よりも大きいか否かを判定する。物体検知装置1は、物体との距離が閾値よりも大きいと判定すると、ステップS5にて通常検知状態に遷移し、処理を終了する。一方、物体検知装置1は、物体との距離が閾値以内であると判定すると、ステップS6にて近距離検知状態に遷移し、処理を終了する。
【0036】
このように、近距離検知状態で検知距離が閾値より大きくなった場合に物体検知装置1が通常検知状態に遷移し、トランスデューサ21が共振周波数f0で駆動される。したがって、遠方から近傍までの広い距離範囲で対象を検知することができる。
【0037】
なお、車両の走行中には、障害物は基本的には遠距離から自車両に近づいてくるため、主に通常検知状態で対応することができる。一方、物体検知装置1の起動直後、すなわち、車両のイグニッションがオンされた直後では、障害物がすでに自車両の近傍に位置している場合がある。例えば、自車両の駐車中に自車両の隣に他の車両が駐車し、その状態で自車両のイグニッションがオンされた場合等である。
【0038】
起動直後に障害物が近傍にある場合と遠方にある場合の両方に対応するため、物体検知装置1は、起動してから所定時間が経過するまでの間は通常検知状態と近距離検知状態とを交互に遷移する。そして、物体検知装置1は、この間に物体が検知された場合には、検知距離に応じて通常検知状態または近距離検知状態に遷移する。起動直後と、起動から所定時間が経過した後とで、通常検知状態と近距離検知状態への遷移方法を変更することで、検知効率を向上させることができる。
【0039】
図6図7は、本発明者らが行った実験の結果を示す図である。実験では、トランスデューサ21から15cmの距離に直径60mmのポールをターゲットとして設置し、共振周波数f0よりも高い周波数でトランスデューサ21を駆動して、探査波の送受信を行った。なお、図6において、実線は受信信号の周波数を示し、一点鎖線は受信信号の振幅を示す。また、図7において、実線はフィルタ25の出力値を示し、一点鎖線は受信信号の振幅を示し、二点鎖線は反射信号の検出に用いられる閾値を示す。
【0040】
図6では、受信信号に残響が見られる中で、周波数がチャープしている箇所が確認できる。これは、駆動信号による駆動終了後に、トランスデューサ21の残響が駆動周波数fdから共振周波数f0へシフトし、このときの送信波がターゲットで反射してトランスデューサ21によって受信されたためである。この受信信号をフィルタ25によって処理すると、図7に示すように、残響に埋もれた反射信号が検出された。
【0041】
以上説明したように、本実施形態では、共振周波数f0とは異なる駆動周波数fdでトランスデューサ21を駆動し、駆動後の残響を駆動周波数fdから共振周波数f0にシフトさせることで、周波数のチャープが生成される。そして、このように周波数がシフトした信号をフィルタ25で抽出することで、残響に埋もれた近距離対象からの反射波を高いS/Nで検出することができる。これにより、近距離にある物体を検知することが容易になる。
【0042】
また、特許文献1に記載の方法において、うなり成分を正確に検出するためには、残響周波数とは大きく異なる周波数で、信号が数波分ずれる時間、送受信器を駆動し続ける必要があり、狭帯域のマイクロフォンを用いる車載センサでは実現が困難である。
【0043】
これに対して、本実施形態では、駆動周波数fdと共振周波数f0が大きく異なっている必要がなく、トランスデューサ21の帯域内で駆動すればよいので、狭帯域のマイクロフォンを用いる車載センサにおいても有効である。
【0044】
(他の実施形態)
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。また、上記実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0045】
例えば、物体検知装置1が参照信号記憶部26を備えず、他の方法によってフィルタ25の特性が上記のように設定されていてもよい。また、物体検知装置1が振幅生成部28を備えず、制御部3が受信信号処理部27の出力のみに基づいて物体検知判定を行ってもよい。
【符号の説明】
【0046】
21 トランスデューサ
24 駆動信号生成部
25 フィルタ
3 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7