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特許7480641水質センサ取付部材、水質センサ取付構造及びボイラ
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  • 特許-水質センサ取付部材、水質センサ取付構造及びボイラ 図1
  • 特許-水質センサ取付部材、水質センサ取付構造及びボイラ 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】水質センサ取付部材、水質センサ取付構造及びボイラ
(51)【国際特許分類】
   F22B 37/38 20060101AFI20240501BHJP
【FI】
F22B37/38 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020144958
(22)【出願日】2020-08-28
(65)【公開番号】P2022039776
(43)【公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】宮川 亮
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-095335(JP,A)
【文献】特開2016-061490(JP,A)
【文献】特開2009-025185(JP,A)
【文献】特開2015-114251(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22B 1/00-37/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラにおいて、気液分離器から下部ヘッダに飽和水を還流させる降水管に突設される筒状のセンサ取付座と、
前記センサ取付座に挿入され、前記飽和水の水質を測定する水質センサを保持する水質センサ取付部材と、
を備え、
前記水質センサ取付部材は、
前記センサ取付座の開口部を封止するとともに、前記水質センサが挿入される保持孔を有する封止部と、
前記水質センサを取り囲むよう前記封止部から前記センサ取付座の内側に延びる筒状に形成され、複数の通水開口が形成された分離筒部と、
前記分離筒部の先端を閉塞する壁部と、
を有し、
前記通水開口は、前記降水管の軸方向視において、前記降水管よりも外側の位置に形成される、水質センサ取付構造
【請求項2】
前記分離筒部は、周方向に所定の間隔をあけて形成された4つ以上の前記通水開口を有する、請求項1に記載の水質センサ取付構造
【請求項3】
前記分離筒部と前記センサ取付座との間隔は、1mm以上20mm以下である、請求項1又は2に記載の水質センサ取付構造。
【請求項4】
複数の水管と、
前記複数の水管の下端に接続される下部ヘッダと、
前記複数の水管の上端に接続される上部ヘッダと、
前記上部ヘッダから流出する水蒸気から飽和水を分離する気液分離器と、
前記気液分離器と前記下部ヘッダとを接続し、前記気液分離器が分離した前記飽和水を前記下部ヘッダに還流させる降水管と、
を備え、
前記降水管に、請求項1から3のいずれかに記載の水質センサ取付構造を有する、ボイラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水質センサ取付部材、水質センサ取付構造及びボイラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水管ボイラにおいて、気液分離器により水蒸気から分離した飽和水(缶水)を下部ヘッダに還流させる降水管に、還流される飽和水の水質を検出する水質センサ取り付ける場合がある。例として、降水管に電気伝導度を測定するセンサを取り付けることで、ボイラの中で最も濃縮された缶水の濃縮度を検出する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第2933833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、上述のようなボイラにおいて、電気伝導度センサは、降水管に設けられるノズルに取り付けられる。例えば装置の小型化等により気液分離器の能力に余裕がない場合には、降水管に水蒸気(気泡)を含む飽和水が流入するおそれがある。降水管に流入した水蒸気は、電気伝導度センサを取り付けるノズルの中のよどみに溜まりやすい。電気伝導度センサの電極の周囲に水蒸気の溜まりができると、見かけ上の電気伝導度の値が小さくなるため、缶水の濃縮度を正確に判断できない可能性がある。また、電気伝導度センサ以外の水質センサにおいても、水蒸気によって正確な検出ができないおそれがある。かかる実情に鑑みて、本発明は、降水管内の飽和水の水質を正確に測定できる水質センサ取付部材、水質センサ取付構造及びボイラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る水質センサ取付部材は、ボイラにおいて、気液分離器から下部ヘッダに飽和水を還流させる降水管に突設される筒状のセンサ取付座に挿入され、前記飽和水の水質を測定する水質センサを保持する水質センサ取付部材であって、前記センサ取付座の開口部を封止するとともに、前記水質センサが挿入される保持孔を有する封止部と、前記水質センサを取り囲むよう前記封止部から前記センサ取付座の内側に延びる筒状に形成され、複数の通水開口が形成された分離筒部と、前記分離筒部の先端を閉塞する壁部と、を有する。
【0006】
前記分離筒部は、周方向に所定の間隔をあけて形成された4つ以上の前記通水開口を有してもよい。
【0007】
本発明の一態様に係る水質センサ取付構造は、ボイラにおいて、気液分離器から下部ヘッダに飽和水を還流させる降水管に突設される筒状のセンサ取付座と、前記センサ取付座に挿入される上述の水質センサ取付部材と、を備える。
【0008】
前記通水開口は、前記降水管の軸方向視において、前記降水管よりも外側の位置に形成されてもよい。
【0009】
前記分離筒部と前記センサ取付座との間隔は、1mm以上20mm以下であってもよい。
【0010】
本発明の一態様に係るボイラは、複数の水管と、前記複数の水管の下端に接続される下部ヘッダと、前記複数の水管の上端に接続される上部ヘッダと、前記上部ヘッダから流出する水蒸気から飽和水を分離する気液分離器と、前記気液分離器と前記下部ヘッダとを接続し、前記気液分離器が分離した前記飽和水を前記下部ヘッダに還流させる降水管と、を備え、前記降水管に、上述の水質センサ取付構造を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、降水管内の飽和水の水質を正確に測定できる水質センサ取付部材、水質センサ取付構造及びボイラを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係るボイラの構成を示す模式図である。
図2図1のボイラの水質センサ取付構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るボイラ1の構成を示す模式図である。図2は、図1のボイラ1の水質センサ取付構造を示す断面図である。
【0014】
ボイラ1は、鉛直に延びるよう配置される複数の水管2と、複数の水管の下端に接続される下部ヘッダ3と、複数の水管の上端に接続される上部ヘッダ4と、複数の水管2を覆う缶体カバー5と、缶体カバー5の内部に燃焼ガスを供給する不図示の燃焼ガス供給部と、上部ヘッダ4から流出する水蒸気から飽和水を分離する気液分離器6と、気液分離器6と下部ヘッダ3とを接続し、気液分離器6が分離した飽和水を下部ヘッダに還流させる降水管7と、を備える。ボイラ1は、降水管7に、それ自体が本発明の一実施形態である水質センサ取付構造10を有する。
【0015】
水質センサ取付構造10は、図2に詳しく示すように、降水管7内の飽和水の水質を検出する水質センサ100を取り付けるための構造である。水質センサ取付構造10は、降水管7に突設される筒状のセンサ取付座20と、センサ取付座20に挿入される水質センサ取付部材30と、を備える。
【0016】
水質センサ取付構造10により取り付けられる水質センサ100としては、例えば、電気伝導度センサ、硬度センサ、pHセンサ、イオン濃度センサ、溶存酸素濃度センサ等、降水管7を流れる飽和水の任意の水質を検出するものとできる。典型的には、水質センサ100は、ボイラ1の内部の水(缶水)の濃縮の度合いを検出するために用いられる電気伝導度センサである。一般的に、水質センサ100が検出する缶水の濃縮度が高くなった場合、缶水の一部を排出することで補給水によって缶水を希釈するブローを行う。これにより、缶水中の不純物の濃度が抑制されるので、ボイラ1の内部にスケールが付着することが防止される。
【0017】
水質センサ100は、水質センサ取付部材30の中に延在し、飽和水と接触して水質を検出する検出部101と、水質センサ取付部材30の外側に配置され、検出値に応じた電気信号を出力するための端子又は配線を有する出力部102と、センサ取付座20に気密に固定するための固定構造103と、を有する構成とされる。水質センサ100の固定構造は、図示する実施形態のように水質センサ取付部材30に螺合するねじを有する構造であってもよく、フランジ、ヘルール等を有する構造であってもよい。
【0018】
センサ取付座20は、例として、内ねじを有するソケット(降水管7側にはねじを有しない片ソケットが好ましい)、先端にフランジを有する短管等とすることができる。センサ取付座の形状は、円筒状に限られず、四角筒、六角筒等の多角筒状又はこれらに類する形状であってもよい。センサ取付座20の長さは、水質センサ100の検出部101を収容できる長さとされることが好ましい。
【0019】
センサ取付座20は、降水管7側の端面を降水管7の曲率に合わせた円弧状とすることによって降水管7の内側に突出しないように形成されてもよいが、降水管7側の端面が平面的に形成される場合、センサ取付座20の端部が少なくとも部分的に降水管7の内側に突出するように配設され得る。
【0020】
水質センサ取付部材30は、センサ取付座20の外側の開口部を封止するとともに、水質センサ100が挿入される保持孔31を有する封止部32と、水質センサ100の検出部101を取り囲むよう封止部32からセンサ取付座20の内側に延びる筒状に形成され、複数の通水開口33が形成された分離筒部34と、分離筒部34の先端を閉塞する壁部35と、を有する。この水質センサ取付部材30は、本発明に係る水質センサ取付部材の一実施形態である。
【0021】
このような水質センサ取付部材30を備える水質センサ取付構造10では、降水管7に流入した飽和水を、通水開口33を通してのみ分離筒部34の内部に流入させられるので、通水開口33において飽和水の流速を抑制することで飽和水に混入した水蒸気を分離し、水蒸気が分離された飽和水を分離筒部34の内部に流入させられる。よって、水質センサ取付部材30は、水質センサ100の検出部101の周囲に水蒸気を滞留させにくくするので、水質センサ100の検出部101の周囲を飽和水で満たすことができる。これにより、水質センサ取付部材30は、水質センサ100が降水管7を流れる飽和水の水質を正確に測定することを可能にする。
【0022】
封止部32は、例として、センサ取付座20がソケットである場合にはセンサ取付座20の内ねじに螺合する外ねじを有するブッシング状に、センサ取付座20がフランジ付き短管である場合にはセンサ取付座20のフランジに対応する閉止フランジ状に形成することができる。
【0023】
封止部32は、水質センサ100を保持する構造、つまり水質センサ100の固定構造103に係合する構造を有する。例として、水質センサ100がねじ込み型である場合(固定構造103がねじである場合)、水質センサ100を保持する構造として、保持孔31の内周面に水質センサ100のねじに螺合する内ねじが設けられ得る。
【0024】
分離筒部34は、多角筒状であってもよいが、センサ取付座20との間隔aが略一定となるよう、センサ取付座20と同心に配置される円筒状であることが好ましい。分離筒部34とセンサ取付座20との間隔aとしては、1mm以上20mm以下が好ましく、2mm以上10mm以下がより好ましい。分離筒部34とセンサ取付座20との間隔aを前記範囲内とすることによって、降水管7から分離筒部34への飽和水の十分な流入量を確保しつつ、分離筒部34への過剰な飽和水の流入、ひいては分離筒部34に流入する飽和水の運動エネルギーの総和を小さくすることができるので、分離筒部34の中の水蒸気の滞留をより確実に防止できる。
【0025】
分離筒部34は、複数の通水開口33を有するため、いずれかの通水開口33から新たな飽和水が分離筒部34の中に流入すると同時に、他の通水開口33から分離筒部34の中の飽和水が流出する。これにより、水質センサ取付部材30は、常に降水管7から飽和水を取り込んで分離筒部34の内部の飽和水を連続的に入れ換えられるので、水質センサ100が実質的にそのとき流れている飽和水の水質を検出することができる。
【0026】
分離筒部34は、周方向に所定の間隔をあけて形成された4つ以上の通水開口33を有することが好ましい。これにより、分離筒部34の中心軸周りの角度位置によらず、水蒸気の滞留を防止できる。つまり、このような構成により、本実施形態のように、水質センサ取付部材30をセンサ取付座20にねじ込んで取り付けるような構造も採用できる。
【0027】
通水開口33は、降水管7の軸方向視において、降水管7よりも外側の位置に形成されることが好ましい。通水開口33を、降水管7よりも外側の位置に形成することにより、飽和水が降水管7から直線的に分離筒部34の内側に流入することを防げるため、水質センサ100の検出部101の周囲に水蒸気が滞留することをより確実に防止できる。
【0028】
通水開口33の径としては、1mm以上10mm以下が好ましく、2mm以上7mm以下がより好ましい。通水開口33の径を前記範囲内とすることによって、降水管7から分離筒部34への飽和水の十分な流入量を確保しつつ、分離筒部34への水蒸気の進入を効果的に抑制できる。
【0029】
壁部35は、分離筒部34の先端部を閉鎖できればよく、その形状は、例えば平板状、ドーム状、円錐状当、特に限定されない。壁部35は、分離筒部34とセンサ取付座20との間への飽和水の流入を阻害しないよう、分離筒部34から分離筒部34の径方向外側に突出しないことが好ましい。図示する実施形態において、壁部35は、分離筒部34の内側に嵌合する円盤状とされ、分離筒部34の先端部の内周面と壁部35の外周部の降水管7側面と肉盛り溶接することによって接合されることが企図される。
【0030】
ボイラ1において、設置スペース等の問題により、気液分離器6の分離能力を十分に大きく設計することができない場合がある。この場合、ボイラ1の水蒸気生成量が大きくなると、気液分離器6で飽和水と水蒸気とを完全に分離することができず、降水管7に水蒸気を含む飽和水が流出し得る。
【0031】
しかしながら、ボイラ1では、水質センサ取付部材30を用いて降水管7に突設したセンサ取付座20に水質センサ100を取り付ける構成としたことによって、気液分離器6の能力が不十分となって降水管7を流れる飽和水に水蒸気が含まれている場合であっても、水質センサ取付部材30が水蒸気が飽和水と共に水質センサ100の検出部101の周囲に流れ込むことを抑制できる。これにより、水質センサ100の検出値が水蒸気によって大きな誤差を生じることを防止できるので、降水管7を流れる飽和水の水質を正確に測定できる。
【0032】
以上、本発明に係るボイラの好ましい実施形態につき説明したが、本発明は、上述の実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 ボイラ
2 水管
3 下部ヘッダ
4 上部ヘッダ
5 缶体カバー
6 気液分離器
7 降水管
10 水質センサ取付構造
20 センサ取付座
30 水質センサ取付部材
31 保持孔
32 封止部
33 通水開口
34 分離筒部
35 壁部
100 水質センサ
101 検出部
102 出力部
103 固定構造
図1
図2