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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】制御装置、および電動アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/12 20100101AFI20240501BHJP
   F16H 59/02 20060101ALI20240501BHJP
   F16H 59/50 20060101ALI20240501BHJP
   F16H 61/32 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
F16H61/12
F16H59/02
F16H59/50
F16H61/32
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020153726
(22)【出願日】2020-09-14
(65)【公開番号】P2022047767
(43)【公開日】2022-03-25
【審査請求日】2023-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000220505
【氏名又は名称】ニデックパワートレインシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100138689
【弁理士】
【氏名又は名称】梶原 慶
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】有田 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 圭
【審査官】中野 裕之
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-19896(JP,A)
【文献】特開2005-198449(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 61/12
F16H 59/02
F16H 59/50
F16H 61/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されモータ部と前記モータ部の回転を出力シャフトに伝える伝達機構部と前記モータ部の回転を検出可能な第1回転センサと前記出力シャフトの回転を検出可能な第2回転センサとを備える電動アクチュエータに設けられ、前記車両のシフト操作に応じて前記出力シャフトの回転角度に基づいて前記モータ部を制御する制御装置であって、
前記第2回転センサの検出結果に基づいて前記出力シャフトの回転角度を算出可能な回転角度計算部と、
前回行われた前記シフト操作と今回行われた前記シフト操作との組み合わせが互いに異なる少なくとも2つ以上の操作パターンがそれぞれ行われた場合における前記モータ部の回転と前記出力シャフトの回転とのずれに関する情報が記憶される記憶部と、
を備え、
前記回転角度計算部は、前記第2回転センサが故障した場合、前記第1回転センサの検出結果と、前記ずれに関する情報と、に基づいて、前記出力シャフトの回転角度を算出する、制御装置。
【請求項2】
前記第1回転センサの検出結果と前記第2回転センサの検出結果とに基づいて、前記ずれに関する情報を取得可能な情報取得部をさらに備え、
前記記憶部には、前回行われた前記シフト操作に関する情報が記憶され、
前記情報取得部は、前記記憶部に記憶された前回行われた前記シフト操作に関する情報に基づいて前記操作パターンを判別し、取得した前記ずれに関する情報を判別した前記操作パターンについての前記ずれに関する情報として前記記憶部に記憶させる、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記情報取得部は、前記ずれに関する情報がすでに前記記憶部に記憶されている前記操作パターンが行われた場合、前記記憶部に記憶された前記操作パターンについての前記ずれに関する情報を更新する、請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記ずれに関する情報は、前記モータ部が回転し始めてから前記出力シャフトが回転し始めるまでの前記モータ部の回転角度の変化量である空転角度を含み、
前記情報取得部は、前記第1回転センサの検出結果と前記第2回転センサの検出結果とに基づいて、前記空転角度を算出可能である、請求項2または3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記記憶部には、前回行われた前記シフト操作と今回行われた前記シフト操作との全ての組み合わせの前記操作パターンごとの前記ずれに関する情報が記憶される、請求項1から4のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項6】
前記操作パターンは、複数のグループに分けられ、
前記記憶部には、前記グループごとの前記ずれに関する情報が記憶される、請求項1から4のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項7】
車両に搭載される電動アクチュエータであって、
モータ部と、
前記モータ部の回転を出力シャフトに伝える伝達機構部と、
前記モータ部の回転を検出可能な第1回転センサと、
前記出力シャフトの回転を検出可能な第2回転センサと、
請求項1から6のいずれか一項に記載の制御装置と、
を備える、電動アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置、および電動アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
モータ部と、モータ部の回転を出力シャフトに伝える伝達機構部と、を備える電動アクチュエータが知られている。例えば、特許文献1には、そのような電動アクチュエータとして、車両の自動変速機のシフトを切り替えるシフトバイワイヤシステムの駆動部として適用される回転式アクチュエータが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-247798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような電動アクチュエータにおいては、出力シャフトの回転角度を検出可能な回転センサの検出結果に基づいてモータ部が制御され、出力シャフトの回転角度が制御される場合がある。しかし、この場合、出力シャフトの回転角度を検出可能な回転センサが故障した場合には、出力シャフトの回転角度の制御精度が低下する虞がある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みて、出力シャフトの回転角度を検出可能な回転センサが故障した場合であっても、出力シャフトの回転角度の制御精度が低下することを抑制できる制御装置、およびそのような制御装置を備えた電動アクチュエータを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の制御装置の一つの態様は、車両に搭載されモータ部と前記モータ部の回転を出力シャフトに伝える伝達機構部と前記モータ部の回転を検出可能な第1回転センサと前記出力シャフトの回転を検出可能な第2回転センサとを備える電動アクチュエータに設けられ、前記車両のシフト操作に応じて前記出力シャフトの回転角度に基づいて前記モータ部を制御する制御装置であって、前記第2回転センサの検出結果に基づいて前記出力シャフトの回転角度を算出可能な回転角度計算部と、前回行われた前記シフト操作と今回行われた前記シフト操作との組み合わせが互いに異なる少なくとも2つ以上の操作パターンがそれぞれ行われた場合における前記モータ部の回転と前記出力シャフトの回転とのずれに関する情報が記憶される記憶部と、を備える。前記回転角度計算部は、前記第2回転センサが故障した場合、前記第1回転センサの検出結果と、前記ずれに関する情報と、に基づいて、前記出力シャフトの回転角度を算出する。
【0007】
本発明の電動アクチュエータの一つの態様は、車両に搭載される電動アクチュエータであって、モータ部と、前記モータ部の回転を出力シャフトに伝える伝達機構部と、前記モータ部の回転を検出可能な第1回転センサと、前記出力シャフトの回転を検出可能な第2回転センサと、上記の制御装置と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一つの態様によれば、電動アクチュエータにおいて、出力シャフトの回転角度を検出可能な回転センサが故障した場合であっても、出力シャフトの回転角度の制御精度が低下することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本実施形態の電動アクチュエータが搭載されるアクチュエータ装置を示す図であって、ロックギヤがアンロック状態である場合を示す図である。
図2図2は、本実施形態の電動アクチュエータが搭載されるアクチュエータ装置を示す図であって、ロックギヤがロック状態である場合を示す図である。
図3図3は、本実施形態の電動アクチュエータが搭載されるアクチュエータ装置の一部を上側から見た図である。
図4図4は、本実施形態の電動アクチュエータの機能構成を示すブロック図である。
図5図5は、本実施形態の記憶部に記憶されたモータ部の空転角度の一例を示す図である。
図6図6は、本実施形態の電動アクチュエータの制御手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
各図においてZ軸方向は、正の側を上側とし、負の側を下側とする上下方向である。各図に適宜示す仮想軸である中心軸Jの軸方向は、例えば、Z軸方向、すなわち上下方向と平行である。以下の説明においては、中心軸Jの軸方向と平行な方向を単に「軸方向Z」と呼ぶ。また、特に断りのない限り、中心軸Jを中心とする径方向を単に「径方向」と呼ぶ。また、上側から見て中心軸Jを中心として反時計回りに回転する方向を「第1回転方向θ1」と呼び、上側から見て中心軸Jを中心として時計回りに回転する方向を「第2回転方向θ2」と呼ぶ。
【0011】
また、各図においてX軸方向は、Z軸方向と直交する方向であり、Y軸方向は、X軸方向およびZ軸方向の両方と直交する方向である。X軸方向と平行な方向を「前後方向X」と呼び、Y軸方向と平行な方向を「左右方向Y」と呼ぶ。前後方向Xにおいては、X軸方向の正の側(+X側)を前側とし、X軸方向の負の側(-X側)を後側とする。左右方向Yにおいては、Y軸方向の正の側(+Y側)を左側とし、Y軸方向の負の側(-Y側)を右側とする。
【0012】
なお、上下方向、前後方向、左右方向、上側、下側、前側、後側、左側、および右側とは、単に各部の相対位置関係を説明するための名称であり、実際の配置関係等は、これらの名称で示される配置関係等以外の配置関係等であってもよい。
【0013】
図1および図2に示すように、本実施形態の電動アクチュエータ10は、アクチュエータ装置1に搭載される。アクチュエータ装置1は、例えば、車両に設けられ、運転者のシフト操作に基づいて駆動されるシフト・バイ・ワイヤ方式のアクチュエータ装置である。アクチュエータ装置1は、運転者のシフト操作に基づいてマニュアルバルブ72を移動させ、油路ボディ80内の油圧回路を切り換える。これにより、アクチュエータ装置1は、車両のギヤを、例えば、パーキングP、リバースR、ニュートラルN、ドライブDの間で切り換え可能である。
【0014】
また、アクチュエータ装置1は、運転者のシフト操作に基づいてロックギヤGをロック状態とアンロック状態との間で切り換える。アクチュエータ装置1は、車両のギヤがパーキングPである場合に、ロックギヤGをロック状態とし、車両のギヤがパーキングP以外の場合に、ロックギヤGをアンロック状態とする。ロックギヤGは、車軸に連結されたギヤである。ロックギヤGは、外周面に複数の歯部Gaを有し、左右方向Yに延びる回転軸Gj回りに回転する。
【0015】
アクチュエータ装置1は、電動アクチュエータ10と、出力シャフト60と、油路ボディ80と、アーム操作部61と、バルブ操作部62と、ロックアーム71と、マニュアルバルブ72と、を備える。出力シャフト60は、例えば、中心軸Jを中心として軸方向Zに延びる円柱状である。出力シャフト60は、電動アクチュエータ10によって中心軸J回りに回転させられる。
【0016】
油路ボディ80は、複数の油路で構成される油圧回路を内部に有する。図3に示すように、油路ボディ80は、左右方向Yに窪む挿入穴81を有する。図示は省略するが、挿入穴81は、油路ボディ80内の油路と繋がっている。挿入穴81内には、マニュアルバルブ72が左右方向Yに移動可能に配置されている。マニュアルバルブ72は、例えば、左右方向Yに延びる棒状である。マニュアルバルブ72が左右方向Yに移動することで、油路ボディ80内の油路同士の接続が変化し、油圧回路が切り換えられる。
【0017】
図1および図2に示すように、アーム操作部61は、連結部61aと、ロッド61bと、支持部61cと、フランジ部61eと、コイルバネ61fと、を有する。連結部61aは、出力シャフト60に固定されている。連結部61aは、例えば、出力シャフト60から径方向外側に突出している。ロッド61bは、前後方向Xに沿って移動可能に配置されている。ロッド61bは、例えば、後側の端部が連結部61aに連結されている。
【0018】
支持部61cは、前後方向Xに延びる軸を中心とする円錐台状である。支持部61cの外径は、前側から後側に向かうに従って大きくなっている。支持部61cは、支持部61cを前後方向Xに貫通する貫通孔61dを有する。貫通孔61dには、ロッド61bの前側の端部が通されている。支持部61cは、ロッド61bに対して前後方向Xに移動可能である。支持部61cとロッド61bとは、例えば、同心に配置されている。フランジ部61eは、支持部61cよりも後側において、ロッド61bに固定されている。
【0019】
コイルバネ61fは、前後方向Xに延びている。コイルバネ61fは、支持部61cとフランジ部61eとの前後方向Xの間に配置されている。コイルバネ61fの内側にはロッド61bが通されている。コイルバネ61fの後端は、フランジ部61eに接触している。コイルバネ61fの前端は、支持部61cに接触している。コイルバネ61fは、支持部61cがロッド61bに対して前後方向Xに相対移動することで伸縮し、支持部61cに対して前後方向Xの弾性力を加える。
【0020】
バルブ操作部62は、例えば、出力シャフト60の下端部に固定されている。図3に示すように、バルブ操作部62は、例えば、出力シャフト60から径方向外側に突出している。バルブ操作部62の先端部は、マニュアルバルブ72と連結されている。
【0021】
アーム操作部61およびバルブ操作部62は、電動アクチュエータ10によって駆動される。具体的には、電動アクチュエータ10によって出力シャフト60が中心軸J回りに回転させられると、出力シャフト60の回転に伴って、連結部61aおよびバルブ操作部62も中心軸J回りに回転する。ロッド61bは、連結部61aが中心軸J回りに回転することで、前後方向Xに移動する。ロッド61bは、例えば、連結部61aが第1回転方向θ1に回転することで、後側に移動する。ロッド61bは、例えば、連結部61aが第2回転方向θ2に回転することで、前側に移動する。ロッド61bの前後方向Xの移動に伴って、支持部61c、フランジ部61e、およびコイルバネ61fも前後方向Xに移動する。
【0022】
電動アクチュエータ10は、運転者のシフト操作に基づいてバルブ操作部62の位置をパーキング位置PPと非パーキング位置との間で切り換え可能である。非パーキング位置は、パーキング位置PP以外の位置であり、本実施形態では、図3に示すように、ドライブ位置DPと、ニュートラル位置NPと、リバース位置RPと、を含む。すなわち、本実施形態では、電動アクチュエータ10は、運転者のシフト操作に基づいてバルブ操作部62の位置を、ドライブ位置DPと、ニュートラル位置NPと、リバース位置RPと、パーキング位置PPとの間で切り換える。本実施形態において、パーキング位置PPは、ロックギヤGがロック状態となるロック位置であり、非パーキング位置は、ロックギヤGがアンロック状態となる非ロック位置である。
【0023】
ドライブ位置DPは、車両のギヤがドライブDである場合のバルブ操作部62の位置である。ニュートラル位置NPは、車両のギヤがニュートラルNである場合のバルブ操作部62の位置である。リバース位置RPは、車両のギヤがリバースRである場合のバルブ操作部62の位置である。パーキング位置PPは、車両のギヤがパーキングPである場合のバルブ操作部62の位置である。図1は、例えば、バルブ操作部62が非パーキング位置のうちリバース位置RPにある場合を示している。図2は、例えば、バルブ操作部62がパーキング位置PPにある場合を示している。
【0024】
図3に示すように、パーキング位置PPにおいてバルブ操作部62は、上側から見て前後方向Xに対して第2回転方向θ2側に傾く仮想線LPに沿って配置される。図示は省略するが、リバース位置RPにおいてバルブ操作部62は、上側から見て前後方向Xに延びる仮想線LRに沿って配置される。ニュートラル位置NPにおいてバルブ操作部62は、上側から見て前後方向Xに対して第1回転方向θ1側に傾く仮想線LNに沿って配置される。ドライブ位置DPにおいてバルブ操作部62は、上側から見て前後方向Xに対して仮想線LNよりも第1回転方向θ1側に傾く仮想線LDに沿って配置される。
【0025】
バルブ操作部62における先端部の左右方向Yの位置は、例えば、パーキング位置PP、リバース位置RP、ニュートラル位置NP、ドライブ位置DPの順に、左側から右側になる。バルブ操作部62における先端部の左右方向Yの位置が変化するとともに、バルブ操作部62における先端部が連結されたマニュアルバルブ72の左右方向Yの位置が変化する。つまり、マニュアルバルブ72の左右方向Yの位置は、パーキング位置PP、リバース位置RP、ニュートラル位置NP、ドライブ位置DPの順に、左側から右側になる。このようにして、バルブ操作部62は、マニュアルバルブ72を移動させる。
【0026】
図1および図2に示すように、ロックアーム71は、例えば、アーム操作部61の前側に配置されている。ロックアーム71は、回転軸71dを中心として回転可能に配置されている。回転軸71dは、左右方向Yに延びる軸である。ロックアーム71は、第1部分71aと、第2部分71bと、を有する。第1部分71aは、回転軸71dから後側に延びている。第1部分71aの後端は、支持部61cの外周面に接触している。第2部分71bは、回転軸71dから上側に向かって前側に僅かに傾いて延びている。第2部分71bは、上端部に前側に突出する噛合部71cを有する。
【0027】
ロックアーム71は、ロッド61bおよび支持部61cの前後方向Xへの移動に伴って、回転軸71d回りに回転する。例えば、出力シャフト60が図1に示す状態から第2回転方向θ2に回転すると、ロッド61bおよび支持部61cが前側に移動する。支持部61cの外径は、前側から後側に向かうに従って大きくなるため、支持部61cが前側に移動すると、支持部61cに接触する第1部分71aが上側に持ち上げられ、ロックアーム71が回転軸71dを中心として左側から見て反時計回りに回転する。これにより、噛合部71cがロックギヤGに近づき、図2に示すように、歯部Ga同士の間に噛み合う。
【0028】
このとき、歯部Gaの位置によっては、噛合部71cが歯部Gaに接触し、ロックアーム71は、噛合部71cが歯部Ga同士の間に噛み合う位置まで回転できない場合がある。このような場合であっても、本実施形態では、支持部61cがロッド61bに対して前後方向Xに移動可能であるため、ロッド61bはパーキング位置PPに移動しつつ、支持部61cがパーキング位置PPよりも後側に位置する状態を許容できる。これにより、出力シャフト60の回転が阻害されることを抑制でき、電動アクチュエータ10に負荷が掛かることを抑制できる。
【0029】
また、ロッド61bがパーキング位置PPに位置し、支持部61cがパーキング位置PPよりも後側に位置する状態では、コイルバネ61fが圧縮変形した状態となる。そのため、コイルバネ61fによって支持部61cに前向きの弾性力が加えられる。これにより、支持部61cを介して、コイルバネ61fからロックアーム71に、回転軸71dを中心として左側から見て反時計回りに回転する向きの回転モーメントが加えられる。したがって、ロックギヤGが回転して歯部Gaの位置がずれると、ロックアーム71が回転して、噛合部71cが歯部Ga同士の間に噛み合う。
【0030】
一方、例えば、出力シャフト60が図2に示す状態から第1回転方向θ1に回転すると、ロッド61bおよび支持部61cが後側に移動する。支持部61cが後側に移動すると、支持部61cによって持ち上げられていた第1部分71aが自重で、あるいはロックギヤGから力を受けて下側に移動し、ロックアーム71が回転軸71dを中心として左側から見て時計回りに回転する。これにより、噛合部71cがロックギヤGから離れ、図1に示すように、歯部Ga同士の間から外れる。
【0031】
図4に示すように、電動アクチュエータ10は、モータ部20と、伝達機構部30と、第1回転センサ51と、第2回転センサ52と、制御装置40と、を備える。伝達機構部30は、モータ部20の回転を出力シャフト60に伝える。伝達機構部30には、例えば、モータ部20における図示しないロータのシャフトが連結されている。本実施形態において伝達機構部30は、減速機である。
【0032】
なお、本明細書においてモータ部20の回転とは、モータ部20における図示しないロータの回転である。また、本明細書において、モータ部20の回転角度とは、モータ部20における図示しないロータの回転角度であり、モータ部20の回転角速度とは、モータ部20における図示しないロータの回転角速度である。
【0033】
第1回転センサ51は、モータ部20の回転を検出可能なセンサである。より詳細には、第1回転センサ51は、例えば、モータ部20における図示しないシャフトの回転を検出可能である。第1回転センサ51は、所定の間隔でモータ部20の回転を検出する。第1回転センサ51は、例えば、磁気センサである。第1回転センサ51は、例えば、ホールICなどのホール素子である。
【0034】
第2回転センサ52は、出力シャフト60の回転を検出可能なセンサである。第2回転センサ52は、所定の間隔で出力シャフト60の回転を検出する。第2回転センサ52が出力シャフト60の回転を検出する間隔は、例えば、第1回転センサ51がモータ部20の回転を検出する間隔よりも大きい。第2回転センサ52は、例えば、磁気センサである。第2回転センサ52は、例えば、ホールICなどのホール素子である。
【0035】
制御装置40は、車両に搭載される電動アクチュエータ10に設けられ、車両のシフト操作に応じて出力シャフト60の回転角度に基づいてモータ部20を制御する制御装置である。本実施形態において制御装置40は、車両に搭載され、車両のシフト操作に基づいてモータ部20を制御する。制御装置40は、回転角度指令部41と、回転角度制御部42と、回転角速度制御部43と、電流制御部44と、インバータ部45と、電流検出部46と、回転角速度計算部47と、回転角度計算部48と、故障検出部49と、記憶部50と、情報取得部90と、を備える。なお、図4において機能ブロックで示される制御装置40の各部は、制御装置40が各部の機能を有しているならば、制御装置40においてどのように構成されていてもよい。
【0036】
回転角度指令部41には、移動指令CSが入力される。移動指令CSは、車両のシフト操作が行われることで、電動アクチュエータ10に送られる信号である。移動指令CSは、例えば、車両のエンジンコントロールユニットから送られる。移動指令CSには、車両のギヤをいずれのギヤに切り替えるについての情報が含まれている。回転角度指令部41は、移動指令CSに基づいて、目標角度指令41aを回転角度制御部42に出力する。目標角度指令41aは、出力シャフト60の目標回転角度を含む。
【0037】
回転角度制御部42は、入力された目標角度指令41aに基づいて、角速度指令42aを回転角速度制御部43に出力する。回転角速度制御部43は、入力された角速度指令42aに基づいて、電流指令43aを電流制御部44に出力する。電流制御部44は、電流指令43aに基づいてインバータ部45に信号を送る。インバータ部45には、電動アクチュエータ10の外部から電流が供給される。インバータ部45は、電流指令43aからの信号に基づいて、外部から供給された電流の周波数を変換する。インバータ部45は、周波数を変換した電流をモータ部20に供給する。電流検出部46は、インバータ部45からモータ部20に出力される電流を検出する。電流検出部46の検出結果は、電流制御部44に入力される。
【0038】
回転角速度計算部47には、第1回転センサ51からの信号が入力される。回転角速度計算部47は、第1回転センサ51の検出結果に基づいてモータ部20の回転角速度を算出可能である。回転角速度計算部47は、第1タイミングにおいて検出された第1回転センサ51の検出結果と第1タイミングの次の第2タイミングにおいて検出された第1回転センサ51の検出結果との差分に基づいて、モータ部20の回転角速度を算出する。このようにして算出されたモータ部20の回転角速度を用いることで、モータ部20の回転を好適に制御できる。回転角速度計算部47において算出されたモータ部20の回転角速度は、回転角速度制御部43に入力される。
【0039】
回転角度計算部48には、第2回転センサ52からの信号が入力される。回転角度計算部48は、第2回転センサ52の検出結果に基づいて出力シャフト60の回転角度を算出可能である。回転角度計算部48において算出された出力シャフト60の回転角度は、回転角度制御部42に入力される。本実施形態において回転角度計算部48には、第1回転センサ51からの信号も入力される。本実施形態において回転角度計算部48は、第1回転センサ51の検出結果に基づいてモータ部20の回転角度を算出可能である。
【0040】
故障検出部49には、第2回転センサ52からの信号が入力される。故障検出部49は、第2回転センサ52の検出結果に基づいて第2回転センサ52が故障したか否かを検出可能である。故障検出部49は、例えば、第2回転センサ52からエラー信号が入力された場合、および第2回転センサ52から入力された信号の値が不正な場合などに第2回転センサ52が故障していると判断する。第2回転センサ52から入力された信号の値が不正な場合とは、例えば、第2回転センサ52から入力された信号の値が、第2回転センサ52から前回入力された信号の値に対して所定値以上離れているような場合を含む。故障検出部49の検出結果は、回転角度計算部48に入力される。
【0041】
記憶部50には、前回行われた車両のシフト操作と今回行われた車両のシフト操作との組み合わせが互いに異なる少なくとも2つ以上の操作パターンがそれぞれ行われた場合におけるモータ部20の回転と出力シャフト60の回転とのずれに関する情報が記憶される。車両のシフト操作は、車両のギヤを或る状態から異なる状態に変更するために運転者などによって行われる操作である。本実施形態において車両のシフト操作は、車両のギヤをパーキングP、リバースR、ニュートラルN、ドライブDのいずれか一つの状態から、他の一つの状態に変更するために行われる操作である。本明細書において「操作パターン」は、前回行われた車両のシフト操作と今回行われた車両のシフト操作との組み合わせで構成されるパターンである。
【0042】
モータ部20の回転と出力シャフト60の回転とのずれに関する情報は、モータ部20の回転と出力シャフト60の回転とのずれ量、モータ部20の回転と出力シャフト60の回転とのずれを算出可能なデータなどを含む。モータ部20の回転と出力シャフト60の回転とのずれを算出可能なデータは、第1回転センサ51の検出結果、第2回転センサ52の検出結果、電動アクチュエータ10の組付け誤差、伝達機構部30の減速比の誤差などを含む。
【0043】
モータ部20の回転と出力シャフト60の回転とのずれは、例えば、モータ部20と伝達機構部30との連結のガタなどによって生じる。本実施形態においてモータ部20の回転と出力シャフト60の回転とのずれに関する情報は、モータ部20の空転角度を含む。空転角度は、モータ部20が回転し始めてから出力シャフト60が回転し始めるまでのモータ部20の回転角度の変化量である。言い換えれば、空転角度は、モータ部20を回転させ始めてから出力シャフト60が回転し始めるまでの間にモータ部20が空転する角度である。なお、以下の説明においては、モータ部20の回転と出力シャフト60の回転とのずれに関する情報を単に「ずれに関する情報」と呼ぶ。
【0044】
本実施形態において記憶部50には、前回行われたシフト操作と今回行われたシフト操作との全ての組み合わせの操作パターンごとのずれに関する情報が記憶される。具体的には、例えば、記憶部50には、図5に示す全36パターンの操作パターンごとのずれに関する情報が記憶される。本実施形態においては、記憶部50には、各操作パターンのずれに関する情報が予め記憶されている。
【0045】
図5では、ずれに関する情報として、モータ部20の空転角度[°]を示している。図5において「P」はパーキングPを示しており、「R」はリバースRを示しており、「N」はニュートラルNを示しており、「D」はドライブDを示している。前回のシフト操作および今回のシフト操作において、「P」,「R」,「N」,「D」の記号同士の間の矢印は、シフト操作において車両のギヤが変更される向きを示している。例えば、「P→R」は、車両のギヤがパーキングPからリバースRに変更されるシフト操作を示している。例えば、「P←R」は、車両のギヤがリバースRからパーキングPに変更されるシフト操作を示している。また、図5における矢印の向きは、図3に示すマニュアルバルブ72が移動する方向に対応させて示している。例えば、「P→R」のシフト操作においては、マニュアルバルブ72は右側(-Y側)に移動する。例えば、「P←R」のシフト操作においては、マニュアルバルブ72は左側(+Y側)に移動する。
【0046】
図5において、例えば、前回のシフト操作が「P→R」で、今回のシフト操作が「P←R」である欄に記載された値は、車両のギヤがパーキングPからリバースRに変更されるシフト操作を行った次に、車両のギヤがリバースRからパーキングPに変更されるシフト操作を行う場合におけるモータ部20の空転角度[°]を示している。
【0047】
図5では、空転角度が正の値の場合には、モータ部20が空転する向きが、出力シャフト60を第1回転方向θ1に回転させる際にモータ部20が回転する向きであることを示している。空転角度が負の値の場合には、モータ部20が空転する向きが、出力シャフト60を第2回転方向θ2に回転させる際にモータ部20が回転する向きであることを示している。
【0048】
図5に示すように、今回のシフト操作を行う際におけるモータ部20の空転角度は、前回のシフト操作がどのようなシフト操作であったかによって異なる場合がある。つまり、今回のシフト操作が同じシフト操作であっても、前回のシフト操作が異なっている場合には、今回のシフト操作を行う際における空転角度が異なる場合がある。図5の例では、今回のシフト操作がされた際にモータ部20が回転する向きが、前回のシフト操作がされた際にモータ部20が回転した向きと同じ向きの場合、モータ部20の空転角度は比較的小さくなる。言い換えれば、図5の例では、今回のシフト操作がされた際にマニュアルバルブ72が動く向きが、前回のシフト操作がされた際にマニュアルバルブ72が動いた向きと同じ向きの場合、モータ部20の空転角度は比較的小さくなる。
【0049】
一方、図5の例では、今回のシフト操作がされた際にモータ部20が回転する向きが、前回のシフト操作がされた際にモータ部20が回転した向きと逆向きの場合、モータ部20の空転角度は比較的大きくなる。言い換えれば、図5の例では、今回のシフト操作がされた際にマニュアルバルブ72が動く向きが、前回のシフト操作がされた際にマニュアルバルブ72が動いた向きと逆向きの場合、モータ部20の空転角度は比較的大きくなる。
【0050】
なお、モータ部20の空転角度の大小関係は、上述した図5の例に限られない。例えば、今回のシフト操作がされた際にモータ部20が回転する向きが、前回のシフト操作がされた際にモータ部20が回転した向きと同じ向きの場合に、モータ部20の空転角度が比較的大きくなる場合もある。また、例えば、今回のシフト操作がされた際にモータ部20が回転する向きが、前回のシフト操作がされた際にモータ部20が回転した向きと逆向きの場合に、モータ部20の空転角度が比較的小さくなる場合もある。モータ部20の空転角度の大小関係は、例えば、モータ部20の回転が停止した際にモータ部20によって出力シャフト60に加えられるブレーキ力の大きさなどに起因して変わる場合がある。
【0051】
記憶部50には、前回行われたシフト操作に関する情報が記憶される。記憶部50には、例えば、前回のシフト操作において、車両のギヤをパーキングP、リバースR、ニュートラルN、ドライブDのうちのいずれの状態からいずれの状態へと変更したかが記憶されている。記憶部50に記憶された前回行われたシフト操作に関する情報は、例えば、新たにシフト操作が行われる度に上書きされていく。
【0052】
図4に示すように、情報取得部90には、第1回転センサ51からの信号および第2回転センサ52からの信号が入力される。情報取得部90は、第1回転センサ51の検出結果と第2回転センサ52の検出結果とに基づいて、ずれに関する情報を取得可能である。本実施形態において情報取得部90は、第1回転センサ51の検出結果と第2回転センサ52の検出結果とに基づいて、モータ部20の空転角度を算出可能である。具体的に情報取得部90は、例えば、第1回転センサ51から入力される信号および第2回転センサ52から入力される信号に基づいて、モータ部20が回転し始めた時点から出力シャフト60が回転し始める時点までの間にモータ部20が回転した回転角度を空転角度として算出する。
【0053】
本実施形態において情報取得部90は、記憶部50に記憶された前回行われたシフト操作に関する情報に基づいて操作パターンを判別し、取得したずれに関する情報を判別した操作パターンについてのずれに関する情報として記憶部50に記憶させる。このとき、実行された操作パターンについてのずれに関する情報がすでに記憶部50に記憶されている場合には、当該操作パターンについてのずれに関する情報が上書きされる。つまり、本実施形態において情報取得部90は、ずれに関する情報がすでに記憶部50に記憶されている操作パターンが行われた場合、記憶部50に記憶された操作パターンについてのずれに関する情報を更新する。
【0054】
制御装置40は、例えば、図6に示すフローチャートに沿ってモータ部20の制御を行う。制御装置40は、今回行われたシフト操作に基づいてモータ部20の制御を開始した(ステップS1)後、第2回転センサ52が正常に動作しているか否かを判断する(ステップS2)。本実施形態において制御装置40は、故障検出部49によって第2回転センサ52が故障しているか否かを判断し、第2回転センサ52が正常に動作しているか否かを判断する。制御装置40は、故障検出部49によって第2回転センサ52が故障していないと判断された場合、第2回転センサ52が正常に動作していると判断する。一方、制御装置40は、故障検出部49によって第2回転センサ52が故障していると判断された場合、第2回転センサ52が正常に動作していないと判断する。
【0055】
第2回転センサ52が正常に動作していると判断した場合(ステップS2:YES)、制御装置40は、第2回転センサ52の検出結果に基づいて、出力シャフト60の回転角度を算出する(ステップS3a)。具体的に制御装置40は、回転角度計算部48によって、出力シャフト60の回転角度を取得する。制御装置40は、出力シャフト60の回転角度に基づいて、モータ部20を回転させる(ステップS4a)。
【0056】
モータ部20を回転させ始めた後、制御装置40は、出力シャフト60が回転し始めたか否かを判断する(ステップS5)。本実施形態において制御装置40は、情報取得部90において、出力シャフト60が回転し始めたか否かを判断する。情報取得部90は、例えば、入力されている第2回転センサ52からの信号が変化した場合に出力シャフト60が回転し始めたと判断する。第2回転センサ52からの信号が変化した場合とは、例えば、第2回転センサ52から情報取得部90に入力される信号の電圧値が所定の閾値を超えた場合などである。
【0057】
出力シャフト60が回転し始めたと判断した場合(ステップS5:YES)、制御装置40は、モータ部20の空転角度を記憶部50に記憶させる(ステップS6)。具体的に、本実施形態において制御装置40は、情報取得部90によって、モータ部20が回転し始めた時点から出力シャフト60が回転し始めた時点までのモータ部20の回転角度を空転角度として記憶部50に記憶させる。このとき、本実施形態において記憶部50には予め操作パターンごとにモータ部20の空転角度が記憶されているため、情報取得部90は、判別した操作パターンに応じた空転角度を上書きする。なお、ステップS6は、例えば、シフト操作が行われるごとに一度ずつ実行される。
【0058】
制御装置40は、出力シャフト60が回転し始めた後もモータ部20の回転を継続しつつ、出力シャフト60の回転角度が目標回転角度に到達したか否かを判断する(ステップS7)。出力シャフト60の回転角度が目標回転角度に到達していないと判断した場合(ステップS7:NO)、制御装置40は、例えば、第2回転センサ52が正常に動作しているか否かを判断しつつ(ステップS2)、モータ部20の制御を継続する。出力シャフト60の回転角度が目標回転角度に到達したと判断した場合(ステップS7:YES)、制御装置40は、モータ部20の制御を停止する(ステップS8)。
【0059】
一方、ステップS2において第2回転センサ52が正常に動作していないと判断した場合(ステップS2:NO)、制御装置40は、第1回転センサ51の検出結果と、記憶部50に記憶されたモータ部20の空転角度と、に基づいて、出力シャフト60の回転角度を算出する(ステップS3b)。本実施形態において制御装置40は、回転角度計算部48において、第1回転センサ51の検出結果と、モータ部20の空転角度と、に基づいて出力シャフト60の回転角度を算出する。つまり、本実施形態において回転角度計算部48は、第2回転センサ52が故障した場合、第1回転センサ51の検出結果と、ずれに関する情報と、に基づいて、出力シャフト60の回転角度を算出する。
【0060】
具体的に、回転角度計算部48は、例えば、第1回転センサ51の検出結果に基づいて算出されたモータ部20の回転角度から空転角度を減じた値を、減速機である伝達機構部30の減速比で割って、出力シャフト60の回転角度を算出する。制御装置40は、算出された出力シャフト60の回転角度に基づいて、モータ部20を回転させる(ステップS4b)。その後、制御装置40は、第2回転センサ52が正常である場合と同様に、ステップS7およびステップS8を行う。
【0061】
上述したように、例えば、モータ部20と伝達機構部30との連結にはガタがあり、モータ部20の回転と出力シャフト60の回転との間にはズレが生じる場合がある。そのため、例えば、第1回転センサ51に基づいて検出されたモータ部20の回転角度のみから出力シャフト60の回転角度を算出する場合、算出される出力シャフト60の回転角度は、実際の出力シャフト60の回転角度に対して大きくずれる虞がある。
【0062】
これに対して、本実施形態によれば、回転角度計算部48は、第2回転センサ52が故障した場合、第1回転センサ51の検出結果と、モータ部20の回転と出力シャフト60の回転とのずれに関する情報と、に基づいて、出力シャフト60の回転角度を算出する。そのため、算出される出力シャフト60の回転角度を、ずれに関する情報によって補正することができる。これにより、第1回転センサ51の検出結果のみから出力シャフト60の回転角度を算出する場合に比べて、出力シャフト60の回転角度を精度よく算出できる。
【0063】
ここで、モータ部20の回転と出力シャフト60の回転とのずれは、行われる操作パターンによって異なる場合がある。そのため、単にモータ部20の回転と出力シャフト60の回転とのずれに関する情報を記憶部50に記憶させるのみでは、操作パターンが異なった場合に、出力シャフト60の回転角度を精度よく算出できない虞がある。
【0064】
これに対して、本実施形態によれば、記憶部50に記憶されるずれに関する情報は、前回行われたシフト操作と今回行われたシフト操作との組み合わせが互いに異なる少なくとも2つ以上の操作パターンがそれぞれ行われた場合におけるずれに関する情報を含む。つまり、記憶部50には、2種類以上の操作パターンに対応するずれに関する情報が記憶される。そのため、実行される操作パターンに応じて、算出される出力シャフト60の回転角度を好適に補正することができる。これにより、出力シャフト60の回転角度をより精度よく算出できる。
【0065】
以上により、本実施形態によれば、出力シャフト60の回転角度を検出可能な第2回転センサ52が故障した場合であっても、出力シャフト60の回転角度の制御精度が低下することを抑制できる。そのため、第2回転センサ52が故障した場合であっても、制御装置40は、車両のシフト操作に基づいて好適にモータ部20を制御できる。これにより、第2回転センサ52が故障した場合であっても、電動アクチュエータ10によって、車両のギヤを、パーキングP、リバースR、ニュートラルN、ドライブDの間で好適に切り換えることができる。
【0066】
具体的に本実施形態では、回転角度計算部48は、第2回転センサ52が故障した場合、モータ部20の回転角度と、記憶部50に記憶されたモータ部20の空転角度と、減速機である伝達機構部30の減速比と、に基づいて、出力シャフト60の回転角度を算出する。そのため、例えば、モータ部20の回転角度から空転角度を減じて得られる角度を減速比で割ることで、好適に出力シャフト60の回転角度を算出できる。
【0067】
また、本実施形態によれば、第1回転センサ51の検出結果と第2回転センサ52の検出結果とに基づいて、ずれに関する情報を取得可能な情報取得部90をさらに備える。情報取得部90は、記憶部50に記憶された前回行われたシフト操作に関する情報に基づいて操作パターンを判別し、取得したずれに関する情報を判別した操作パターンについてのずれに関する情報として記憶部50に記憶させる。そのため、例えば、予め、ずれに関する情報を記憶部50に記憶させておかなくても、情報取得部90を用いて、記憶部50にずれに関する情報を学習させていくことができる。また、例えば、電動アクチュエータ10が使用される前に、全ての操作パターンに対応するモータ部20の制御を行い、全ての操作パターンに対応するずれに関する情報を記憶部50に記憶させることもできる。
【0068】
また、本実施形態によれば、情報取得部90は、ずれに関する情報がすでに記憶部50に記憶されている操作パターンが行われた場合、記憶部50に記憶された操作パターンについてのずれに関する情報を更新する。そのため、操作パターンごとのずれに関する情報を、シフト操作が実行される度に更新していくことができる。これにより、例えば、経年劣化などにより、モータ部20の回転と出力シャフト60の回転とのずれが変化する場合であっても、情報を更新して、より正確なずれに関する情報を記憶部50に記憶させておくことができる。したがって、第2回転センサ52が故障した場合であっても、出力シャフト60の回転角度をより精度よく算出することができる。
【0069】
また、本実施形態によれば、ずれに関する情報は、モータ部20が回転し始めてから出力シャフト60が回転し始めるまでのモータ部20の回転角度の変化量である空転角度を含む。情報取得部90は、第1回転センサ51の検出結果と第2回転センサ52の検出結果とに基づいて、空転角度を算出可能である。モータ部20の回転と出力シャフト60の回転とにずれが生じる主な原因は、例えば、モータ部20が回転しても出力シャフト60が回転しない空転状態が生じることである。そのため、空転角度を情報取得部90によって取得して記憶部50に記憶させることで、第2回転センサ52が故障した場合であっても、記憶部50に記憶された空転角度を用いて、出力シャフト60の回転角度をより精度よく算出できる。
【0070】
また、本実施形態によれば、記憶部50には、前回行われたシフト操作と今回行われたシフト操作との全ての組み合わせの操作パターンごとのずれに関する情報が記憶される。そのため、第2回転センサ52が故障した場合に、どのような操作パターンのシフト操作が行われた場合であっても、各操作パターンに応じたずれに関する情報を用いて、算出される出力シャフト60の回転角度を好適に補正できる。これにより、第2回転センサ52が故障した場合に、どのようなシフト操作が行われた場合であっても、出力シャフト60の回転角度の制御精度が低下することを好適に抑制できる。
【0071】
本発明は上述の実施形態に限られず、本発明の技術的思想の範囲内において、他の構成および他の方法を採用することもできる。記憶部に記憶されるずれに関する情報は、少なくとも2つ以上の操作パターンが行われた場合におけるずれに関する情報を含んでいるならば、どのような情報が含まれていてもよい。
【0072】
記憶部には、モータ部の回転と出力シャフトの回転とのずれが比較的小さくなる操作パターンのずれに関する情報が記憶されなくてもよい。具体的に、上述した図5の例では、前回のシフト操作が「R←N」または「R←D」で今回のシフト操作が「P←R」の操作パターンにおける空転角度、前回のシフト操作が「P→N」または「R→N」で今回のシフト操作が「N→D」の操作パターンにおける空転角度、前回のシフト操作が「P→R」で今回のシフト操作が「R→N」または「R→D」の操作パターンにおける空転角度、および前回のシフト操作が「N←D」で今回のシフト操作が「P←N」または「R←N」の操作パターンにおける空転角度が、記憶部に記憶されなくてもよい。
【0073】
例えば、操作パターンが複数のグループに分けられ、記憶部には、当該グループごとのずれに関する情報が記憶されてもよい。具体的には、例えば、図5において示した36パターンの操作パターンを、破線で囲んで示すグループG1~G10に分けてもよい。グループG1およびグループG2は、それぞれ操作パターンを9つずつ含む。グループG1に含まれる操作パターンは、前回のシフト操作がパーキングP以外からパーキングPに切り換えられる操作で、かつ、今回のシフト操作がパーキングPからパーキングP以外に切り換えられる操作となる操作パターンである。グループG2に含まれる操作パターンは、前回のシフト操作がドライブD以外からドライブDに切り換えられる操作で、かつ、今回のシフト操作がドライブDからドライブD以外に切り換えられる操作となる操作パターンである。
【0074】
グループG3およびグループG4は、操作パターンを1つずつ含む。グループG3に含まれる操作パターンは、前回のシフト操作がパーキングPからリバースRに切り換えられる操作で、かつ、今回のシフト操作がリバースRからパーキングPに切り換えられる操作となる操作パターンである。グループG4に含まれる操作パターンは、前回のシフト操作がドライブDからニュートラルNに切り換えられる操作で、かつ、今回のシフト操作がニュートラルNからドライブDに切り換えられる操作となる操作パターンである。
【0075】
グループG5、グループG6、グループG7、およびグループG8は、操作パターンを2つずつ含む。グループG5に含まれる操作パターンは、前回のシフト操作がニュートラルNまたはドライブDからリバースRに切り換えられる操作で、かつ、今回のシフト操作がリバースRからパーキングPに切り換えられる操作となる操作パターンである。グループG6に含まれる操作パターンは、前回のシフト操作がパーキングPまたはリバースRからニュートラルNに切り換えられる操作で、かつ、今回のシフト操作がニュートラルNからドライブDに切り換えられる操作となる操作パターンである。グループG7に含まれる操作パターンは、前回のシフト操作がパーキングPからリバースRに切り換えられる操作で、かつ、今回のシフト操作がリバースRからニュートラルNまたはドライブDに切り換えられる操作となる操作パターンである。グループG8に含まれる操作パターンは、前回のシフト操作がドライブDからニュートラルNに切り換えられる操作で、かつ、今回のシフト操作がニュートラルNからパーキングPまたはリバースRに切り換えられる操作となる操作パターンである。
【0076】
グループG9およびグループG10は、操作パターンを4つずつ含む。グループG9に含まれる操作パターンは、前回のシフト操作がニュートラルNまたはドライブDからリバースRに切り換えられる操作で、かつ、今回のシフト操作がリバースRからニュートラルNまたはドライブDに切り換えられる操作となる操作パターンである。グループG10に含まれる操作パターンは、前回のシフト操作がパーキングPまたはリバースRからニュートラルNに切り換えられる操作で、かつ、今回のシフト操作がニュートラルNからパーキングPまたはリバースRに切り換えられる操作となる操作パターンである。
【0077】
各グループG1~G10は、モータ部20の空転角度の値が同程度となる操作パターン同士で分けられている。このように操作パターンをグループ分けし、例えば、各グループG1~G10において、同じグループに含まれる操作パターンにおける空転角度を同じ値として記憶部50に記憶させる。つまり、グループG1~G10ごとに1つずつずれに関する情報を記憶部50に記憶させる。これにより、操作パターンごとにずれに関する情報を記憶部50に記憶させる場合に比べて、記憶部50に記憶させる情報の個数を少なくできる。上述した例では、操作パターンごとのずれに関する36個の情報を、グループG1~G10ごとのずれに関する10個の情報に減らすことができる。したがって、記憶部50の容量を少なくできる。グループG1~G10ごとに対応して記憶されるずれに関する情報は、例えば、各グループに含まれる操作パターンのずれに関する情報の平均値とすることができる。
【0078】
また、上述したように操作パターンをグループ分けする場合、例えば、1つの操作パターンが行われた場合に、当該操作パターンが含まれたグループに対応するずれに関する情報を、情報取得部90によって更新することができる。そのため、1つの操作パターンが行われた際に、同じグループに含まれる他の操作パターンに対応するずれに関する情報も更新される。これにより、実行されることが少ない操作パターンについても、ずれに関する情報を好適に更新することができる。
【0079】
なお、上述したようにグループごとにずれに関する情報を記憶させる場合であっても、空転角度が同程度となる操作パターン同士を同じグループにすることで、第2回転センサ52が故障した場合に、グループごとに対応したずれに関する情報を用いて出力シャフト60の回転角度を精度よく算出することができる。
【0080】
記憶部に記憶されるずれに関する情報は、予め記憶されたまま、更新されなくてもよい。この場合、制御装置は、情報取得部を有しなくてもよい。記憶部には、ずれに関する情報が上書きされずに蓄積されていってもよいし、ずれに関する情報が所定の個数蓄積された後に、古い情報から順に上書きされていってもよい。記憶部に記憶されるずれに関する情報は、予め記憶されていなくてもよい。この場合、記憶部には、シフト操作が行われてモータ部の制御が行われる度に、情報取得部によってずれに関する情報が記憶されていってもよい。
【0081】
伝達機構部は、モータ部の回転を出力シャフトに伝えることができるならば、どのような構造であってもよい。伝達機構部は、増速機であってもよいし、モータ部の回転を変速しない機構であってもよい。
【0082】
第1回転センサは、モータ部の回転を検出可能であれば、どのようなセンサであってもよい。第2回転センサは、出力シャフトの回転を検出可能であれば、どのようなセンサであってもよい。第1回転センサおよび第2回転センサは、磁気抵抗素子であってもよいし、光学式のセンサであってもよい。第1回転センサは、複数設けられてもよい。第2回転センサは、複数設けられてもよい。
【0083】
以上に本明細書において説明した各構成および各方法は、相互に矛盾しない範囲内において、適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0084】
10…電動アクチュエータ、20…モータ部、30…伝達機構部、40…制御装置、48…回転角度計算部、50…記憶部、51…第1回転センサ、52…第2回転センサ、60…出力シャフト、90…情報取得部、G1,G2,G3,G4,G5,G6,G7,G8,G9,G10…グループ
図1
図2
図3
図4
図5
図6