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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】光源ユニット及び加熱処理装置
(51)【国際特許分類】
   F21S 2/00 20160101AFI20240501BHJP
   H01L 33/00 20100101ALI20240501BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20240501BHJP
   F21Y 105/16 20160101ALN20240501BHJP
【FI】
F21S2/00 110
H01L33/00 L
H01L33/00 J
F21S2/00 600
F21Y115:10
F21Y105:16
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020158210
(22)【出願日】2020-09-23
(65)【公開番号】P2022052054
(43)【公開日】2022-04-04
【審査請求日】2023-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】溝尻 貴文
(72)【発明者】
【氏名】金津 桂太
(72)【発明者】
【氏名】井上 隆博
【審査官】土谷 秀人
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-008727(JP,A)
【文献】特開2010-129861(JP,A)
【文献】特開2007-141896(JP,A)
【文献】特開2016-076529(JP,A)
【文献】特開2005-228833(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0270735(US,A1)
【文献】特開2013-106550(JP,A)
【文献】特開2014-130728(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0301257(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第109253404(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21K 9/00 - 9/90
F21S 2/00 - 45/70
H01L 21/00 - 33/64
B01J 10/00 - 12/02
B01J 14/00 - 19/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板に搭載された複数のLED素子によって形成された光源領域とを備え、
それぞれの前記光源領域は、複数の前記LED素子が直列接続されてなるLED素子群を複数備えると共に、当該LED素子群が並列接続されてなり、
複数の前記光源領域のうちの少なくとも一つは、含まれる全ての前記LED素子が出射する光のピーク波長が実質的に同一である単一波長光源領域であり、
前記単一波長光源領域において、前記LED素子群の一方の端子はアノード電極に接続され、他方の端子はカソード電極に接続されていることを特徴とする光源ユニット。
【請求項2】
前記基板上に配置された複数の小基板を備え、
複数の前記光源領域のそれぞれは、異なる前記小基板上に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の光源ユニット。
【請求項3】
前記単一波長光源領域に含まれる前記LED素子群は、直列に接続されている前記LED素子の数が同一であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光源ユニット。
【請求項4】
前記単一波長光源領域は、前記基板の主面と直交する方向から見たときに、前記基板の周方向に配列されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の光源ユニット。
【請求項5】
搭載されている全ての前記LED素子は、出射する光のピーク波長が実質的に同一であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の光源ユニット。
【請求項6】
前記単一波長光源領域に含まれる前記LED素子は、出射する光のピーク波長が300nm以上1000nm以下の範囲内であることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の光源ユニット。
【請求項7】
前記単一波長光源領域に含まれる前記LED素子は、出射する光のピーク波長が300nm以上500nm以下の範囲内であることを特徴とする請求項6のいずれか一項に記載の光源ユニット。
【請求項8】
前記単一波長光源領域に含まれる前記LED素子は、出射する光のピーク波長が800nm以上900nm以下の範囲内であることを特徴とする請求項6に記載の光源ユニット。
【請求項9】
被処理基板を加熱処理する加熱処理装置であって、
前記被処理基板を収容するチャンバと、
前記チャンバ内で前記被処理基板を支持する支持部材と、
前記被処理基板に向かって光を照射する請求項1~8のいずれか一項に記載の光源ユニットとを備えることを特徴とする加熱処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源ユニット及び加熱処理装置に関し、特に、LED素子を光源とする光源ユニット及び加熱処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセスでは、半導体ウェハ等の被処理基板に対して、成膜処理、酸化拡散処理、改質処理、アニール処理といった様々な熱処理が行われ、これらの処理は、非接触での処理が可能な光照射による加熱処理方法が多く採用されている。そして、下記特許文献1には、LED素子から出射される光によって半導体ウェハを加熱処理する光加熱装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-009927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体製造プロセスに用いられる半導体ウェハに光を照射する装置は、半導体ウェハ全体が均一に処理されるように、半導体ウェハの表面(特に主面)全体にわたって均一な強度分布の光を照射できることが期待されている。
【0005】
そこで、本発明者らは、半導体ウェハ等の被処理基板全体にわたってより均一な光を照射できる加熱処理装置を鋭意検討したところ、以下のような課題が存在することを見出した。
【0006】
LED素子は、ハロゲンランプや放電ランプ等の光源に比べて、単体での輝度が非常に小さい。このため、半導体ウェハの加熱処理のような、高出力が要求される加熱処理装置では、数千個以上ものLED素子が必要となる。
【0007】
LED素子は、流れる電流値に応じて輝度が変動するため、LED素子を光源とする加熱処理装置は、各LED素子に流れる電流の値が揃うように、LED素子が直列に接続されて構成される。しかしながら、上述したような数千個以上ものLED素子が用いられる加熱処理装置では、全てのLED素子を直列に接続して構成すると、点灯させるためには非常に高い電圧を両端部に印加しなければならない。
【0008】
そこで、加熱処理装置に搭載する光源として、LED素子を数個から数十個だけ直列に接続した複数のLED素子群を構成し、さらに、当該LED素子群を並列に接続して構成された光源ユニットが提案されている。このように構成された光源ユニットは、少なくとも同じLED素子群に含まれるLED素子に同じ電流が流れる。
【0009】
ところが、並列に接続されている各LED素子群の両端には、同じ電圧が印加されるが、LED素子群を構成する各LED素子の順方向電圧(Vf)が異なると、LED素子群ごとに流れる電流にはバラつきが生じてしまう。
【0010】
したがって、単純にLED素子を直列に接続して構成したLED素子群を、並列に複数接続して構成した光源とする光源ユニットでは、半導体ウェハの加熱処理等の高い均一性が求められる処理において、許容できないほどの輝度ムラが生じてしまっていた。
【0011】
本発明は、上記課題に鑑み、被処理基板に照射される光の均一性を向上させたLED素子を光源とする光源ユニット及び加熱処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の光源ユニットは、
基板と、
前記基板に搭載された複数のLED素子によって形成された光源領域とを備え、
それぞれの前記光源領域は、複数の前記LED素子が直列接続されてなるLED素子群を複数備えると共に、当該LED素子群が並列接続されてなり、
複数の前記光源領域のうちの少なくとも一つは、含まれる全ての前記LED素子が出射する光のピーク波長が実質的に同一である単一波長光源領域であることを特徴とする。
【0013】
本明細書における「ピーク波長が実質的に同一のLED素子」とは、LED素子のそれぞれのピーク波長を比較したときに、最も長いピーク波長と最も短いピーク波長の差が、最も短いピーク波長に対して3%以下であることをいう。
【0014】
LED素子は、エネルギーの高い短波長の光を出射する素子ほど、順方向電圧が大きくなる。例えば、可視光の波長帯域では、青色の光を出射するLED素子は、赤色の光を出射するLED素子よりも順方向電圧が大きい。
【0015】
このため、光源領域は、出射する光のピーク波長が実質的に同一のLED素子で構成することで、順方向電圧のバラつきを小さくすることができる。つまり、上記構成とすることで、少なくとも単一波長光源領域においては、他の光源領域に比べてLED素子の順方向電圧のバラつきが小さくなり、LED素子群ごとの輝度ムラが抑制される。
【0016】
また、LED素子は、出射する光のピーク波長が短いほど結晶中に形成される欠陥が多くなり、欠陥が多いほどLED素子の寿命は短くなる。すなわち、ピーク波長のバラつきによって、LED素子の寿命がバラつく。つまり、上記構成とすることで、LED素子の寿命のバラつきが小さくなり、長時間に亘ってLED素子群ごとの輝度ムラが抑制される。
【0017】
上記光源ユニットは、
前記基板上に配置された複数の小基板を備え、
複数の前記光源領域のそれぞれは、異なる前記小基板上に形成されていても構わない。
【0018】
上記構成とすることで、基板上において、小基板ごとにLED素子群の配置構成を簡単に交換や変更をすることができる。したがって、被処理基板の種類、形状、大きさに応じて、LED素子群の配置構成、照射する光の波長帯域や強度等を適宜調整することができる。
【0019】
上記光源ユニットにおいて、
前記単一波長光源領域に含まれる前記LED素子群は、直列に接続されている前記LED素子の数が同一であっても構わない。
【0020】
上記構成とすることで、単一波長光源領域を構成する各LED素子は、印加される順方向電圧がより揃うようになり、LED素子ごとの輝度ムラが抑制される。
【0021】
上記光源ユニットにおいて、
前記単一波長光源領域は、前記基板の主面と直交する方向から見たときに、前記基板の周方向に配列されていても構わない。
【0022】
本明細書における「周方向に配列されている」とは、例えば、扇形状を呈する複数の小基板が組み合わせられて、全体として円形状となるように小基板が配置されている場合や、一つ、又は複数の光源領域の周囲を取り囲むように光源領域が形成されている場合等が含まれる。
【0023】
上記構成とすることで、被処理基板の主面の周方向において、光強度分布の均一性がより高められ、特に、半導体ウェハ等の円板形状を呈する被処理基板では、周方向における照射ムラが抑制されて、より均一な光照射が実現される。
【0024】
上記光源ユニットにおいて、
搭載されている全ての前記LED素子は、出射する光ピーク波長が実質的に同一であっても構わない。
【0025】
上記構成とすることで、基板に載置された全てのLED素子からピーク波長が実質的に同じ光が出射されるため、被処理基板に照射される光の均一性がさらに向上される。
【0026】
上記光源ユニットにおいて、
前記単一波長光源領域に含まれる前記LED素子は、出射する光のピーク波長が300nm以上1000nm以下の範囲内であっても構わない。
【0027】
特に、シリコン(Si)からなる半導体ウェハ(以下、「シリコンウェハ」という。)は、紫外光から可視光の波長帯域の光に対して吸収率が高く透過率が低いが、波長が1100nmよりも長くなると急激に吸収率が低くなり、透過率が高くなるという特徴がある。「発明を実施するための形態」の説明において参照される図4Aから図4Cに示すように、波長が1100nm以上の光が半導体ウェハに照射されると、約50%の光が半導体ウェハを透過してしまう。
【0028】
シリコンウェハの場合、波長1100nm以上の光では、処理対象となる主面とは反対側の面に照射されると、一部がシリコンウェハを透過して、処理対象の主面にまで到達してしまう。そうすると、処理対象となる主面に形成されている配線等がこの光を吸収してしまい、温度分布にバラつきが生じ、シリコンウェハに反りや割れが生じるおそれがある。また、成膜加熱の場合は、多くの膜種において、1000nm以上において吸収率のバラつきが大きくなるという傾向がある。
【0029】
このため、LED素子から出射させる光のピーク波長は、吸収率が50%以上であって、透過率が20%以下である、1000nm以下であることが好ましい。
【0030】
また、シリコンウェハは、波長300nm未満の光に対して、吸収率が最も低いところで約10%程度まで低下してしまう。このため、少なくとも25%以上の吸収率を確保するためには、LED素子から出射される光のピーク波長は、300nm以上であることが好ましい。
【0031】
上記構成とすることで、光源ユニットは、シリコンウェハを加熱処理する場合において、より効率的に加熱処理を行うことができる。また、300nm以上1000nm以下の光は、シリコンウェハのイオンドープ量に応じて現れる抵抗率に対して、透過率や反射率の変動が小さいため、ドープ量によらず面内を均一に、かつ、一様な昇温レートで加熱処理することができる。
【0032】
また、シリコンウェハは、図4Aから図4Cに示すように、300nm以上1000nm以下の光に対する吸収率が20%以上であって、かつ、透過率がほぼ0%である。このため、当該波長範囲の光は、シリコンウェハの極表面だけを効率的に加熱処理することができる。
【0033】
上記光源ユニットにおいて、
前記単一波長光源領域に含まれる前記LED素子は、出射する光のピーク波長が300nm以上500nm以下の範囲内であっても構わない。
【0034】
被処理基板の加熱処理等に用いられる加熱処理装置は、処理中の温度が均一となっているかを確認するために、被処理基板の表面温度を測定する放射温度計が搭載されることがある。放射温度計は、計測対象から放射される光を観測することによって、計測対象の表面温度を計測する温度計である。
【0035】
放射温度計は、温度を測定する計測対象や温度範囲に応じて多少異なるが、感度波長帯域が主に近赤外から赤外の波長帯域(例えば、0.8μm~14μm)に設定されている。したがって、光源ユニットが赤外領域の光を出射するものであって、光源ユニットが搭載される光照射装置が放射温度計を備える場合、放射温度計が光源ユニットから出射される光を迷光として観測してしまう。
【0036】
そこで、上記構成とすることで、放射温度計の感度波長帯域が0.8μm付近であったとしても、LED素子から出射される光が、放射温度計によって迷光として観測されてしまうおそれが少なくなる。
【0037】
上記光源ユニットにおいて、
前記単一波長光源領域に含まれる前記LED素子は、出射する光のピーク波長が800nm以上900nm以下の範囲内であっても構わない。
【0038】
図4Aから図4Cに示すように、シリコンウェハは、波長が800nm以上900nm以下の範囲の光に対して、波長の変動に対する吸収率の変化が小さい。このため、当該波長範囲とすることで、照射される光の波長がシリコンウェハの照射領域ごとに差異が生じていたとしても、加熱ムラが生じにくい。
【0039】
したがって、上記構成とすることで、シリコンウェハに対して、LED素子が出射する光のピーク波長のバラつきの影響が小さい光源ユニットを構成することができる。
【0040】
本発明の加熱処理装置は、
被処理基板を加熱処理する加熱処理装置であって、
前記被処理基板を収容するチャンバと、
前記チャンバ内で前記被処理基板を支持する支持部材と、
前記被処理基板に向かって光を照射する上記光源ユニットとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、被処理基板に照射される光の均一性を向上させたLED素子を光源とする光源ユニット及び加熱処理装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】加熱処理装置の一実施形態の構成をY方向に見たときの断面図である。
図2図1の光源ユニットを+Z側から見たときの図面である。
図3】小基板の構成を模式的に示す図面である。
図4A】シリコンウェハの光に対する吸収率と透過率のスペクトルを示すグラフである。
図4B】シリコンウェハの光に対する吸収率と透過率のスペクトルを示すグラフである。
図4C】シリコンウェハの光に対する吸収率と透過率のスペクトルを示すグラフである。
図5】別実施形態の光源ユニットを+Z側から見たときの図面である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明の光源ユニット及び加熱処理装置について、図面を参照して説明する。なお、光源ユニット及び加熱処理装置に関する以下の各図面は、いずれも模式的に図示されたものであり、図面上の寸法比や個数は、実際の寸法比や個数と必ずしも一致していない。
【0044】
[第一実施形態]
図1は、加熱処理装置1の一実施形態の構成をY方向に見たときの断面図である。図1に示すように、第一実施形態の加熱処理装置1は、被処理基板W1が収容されるチャンバ10と、光源ユニット2と、放射温度計14とを備える。光源ユニット2は、複数のLED素子11と、LED素子11が載置された基板12とを備える。第一実施形態は、被処理基板W1がシリコンウェハであることを前提として説明するが、シリコン以外の材料からなる半導体ウェハであってもよく、ガラス基板等であっても構わない。
【0045】
以下の説明においては、図1に示すように、基板12と被処理基板W1が対向する方向をZ方向、一対の支持部材13が対向する方向をX方向とし、X方向及びZ方向に直交する方向をY方向として説明する。また、加熱処理装置1は、後述の図2に示すように、LED素子11の配置は、X方向に見たときとY方向に見たときの構造が同じため、特に必要が無い限りはY方向に見たときの構造のみで説明する。
【0046】
また、方向を表現する際に、正負の向きを区別する場合には、「+Z方向」、「-Z方向」のように、正負の符号を付して記載され、正負の向きを区別せずに方向を表現する場合には、単に「Z方向」と記載される。
【0047】
チャンバ10は、図1に示すように、内側に被処理基板W1を支持する支持部材13を備える。支持部材13は、被処理基板W1の主面W1aがXY平面上に配置されるように、被処理基板W1を支持する。
【0048】
なお、支持部材13による被処理基板W1の支持は、その主面W1aがXY平面上に配置されるようなものであればよく、例えば、支持部材13がピン状の突起を複数備え、その突起により被処理基板W1を点で支持するものであっても構わない。ここで、主面W1bは、回路素子や配線等が形成され、LED素子11から出射される光が照射される面である。
【0049】
また、チャンバ10は、支持部材13で支持される被処理基板W1の主面W1aと対向する観測用窓10aと、主面W1bと対向する透光窓10bとを備える。観測用窓10a
は、放射温度計14が被処理基板W1の主面W1aの温度を観測するために設けられている。透光窓10bは、光源ユニット2のLED素子11から出射されて被処理基板W1の主面W1bに向かって進行する光を、チャンバ10内に取り込むために設けられている。
【0050】
放射温度計14は、測定対象物から放射される赤外光を観測することで、当該測定対象物の表面温度を計測する温度計であって、感度波長帯域は、概ね0.8μm以上14μm以下の範囲である。
【0051】
図2は、図1の光源ユニット2を+Z側から見たときの模式的な図面である。図2に示すように、光源ユニット2は、基板12の主面上に、複数のLED素子11を含む複数の光源領域12aが配列されて構成されている。なお、第一実施形態における光源領域12aは、後述される小基板20上に形成されており、図1に示すように、基板12上には、光源領域12aが形成された小基板20が載置されている。
【0052】
光源ユニット2は、図1に示すように、チャンバ10の透光窓10bを介して、支持部材13によって支持された被処理基板W1の主面W1bに向かって光を出射するように、チャンバ10の-Z側に配置されている。
【0053】
図3は、小基板20の構成を模式的に示す図面である。図3に示すように、小基板20は、電力が供給されるアノード電極30aとカソード電極30bがそれぞれ二つずつ設けられており、複数のLED素子11が配線パターンによって接続されている。また、複数のLED素子11と並列に、ツェナーダイオード30cが電極(30a,30b)間に接続されている。ツェナーダイオード30cは、静電気やサージ電流によってLED素子11が劣化することを防ぐために配置されている。
【0054】
LED素子11は、直列に接続されてLED素子群11sを構成している。そして、電極(30a,30b)間には、同じ数のLED素子11で構成された複数のLED素子群11sが並列に接続されている。
【0055】
小基板20は、出射する光のピーク波長が実質的に同一のLED素子11のみからなる複数の単一波長光源領域を構成しており、第一実施形態では、ピーク波長が395nmの光を出射するLED素子11のみで構成されている。
【0056】
上記構成とすることで、各小基板20に載置されたLED素子11は、ほぼ同じ順方向電圧が印加され、LED素子11ごとの輝度ムラが抑制され、被処理基板W1に照射される光の均一性がさらに向上される。
【0057】
ここで、シリコンウェハの光に対する吸収スペクトルについて説明する。図4Aから図4Cは、シリコンウェハの光に対する吸収率と透過率のスペクトルを示すグラフである。図4Aは、シリコンウェハの抵抗率が0.02Ω・cm、図4Bは、シリコンウェハの抵抗率が3Ω・cm、図4Cは、シリコンウェハの抵抗率が11Ω・cmの場合における吸収率と透過率のスペクトルがそれぞれ図示されている。
【0058】
図4Aから図4Cに示すように、波長が300nm以上1000nm以下の範囲において、シリコンウェハの光に対する吸収率及び透過率は、いずれの抵抗率の値においても、ほぼ同じスペクトルを示す。したがって、シリコンウェハは、300nm以上1000nm以下の光に対して、イオンドープ量に応じて現れる抵抗率に対して、透過率や反射率の変動が小さい。このため、第一実施形態における光源ユニット2は、シリコンウェハを加熱処理する場合において、ドープ量によらず被処理基板W1の主面W1bを均一に、かつ、一様な昇温レートで加熱処理することができる。
【0059】
また、シリコンウェハは、図4Aから図4Cに示すように、300nm以上1000nm以下の光に対する吸収率が20%以上であって、かつ、透過率がほぼ0%である。このため、当該波長範囲の光は、シリコンウェハの極表面だけを効率的に加熱処理することができる。
【0060】
第一実施形態の光源ユニット2は、LED素子11から出射される光の波長帯域が395nmと、300nm以上500nm以下の波長範囲が選択されている。図4Aから図4Cに示すように、波長が300nm以上500nm以下の範囲は、波長の変動に対する吸収率の変化が大きいが、実質的に同じピーク波長の光を出射するLED素子11のみで構成されることで、シリコンウェハに対する処理ムラが抑制される。
【0061】
さらに、第一実施形態の加熱処理装置1は、放射温度計14の感度波長帯域とLED素子11から出射される光の波長範囲が異なるように構成されている。このため、放射温度計14によってLED素子11から出射される光が迷光として観測されてしまうおそれが少ない。
【0062】
なお、第一実施形態のLED素子11は、基板12上に配列された小基板20上で複数の光源領域12aを構成しているが、基板12上にLED素子11が直接載置されて、光源領域12aを形成していても構わない。
【0063】
[第二実施形態]
本発明の加熱処理装置1の第二実施形態の構成につき、第一実施形態と異なる箇所を中心に説明する。
【0064】
第二実施形態の加熱処理装置1は、図1に示す第一実施形態と同じ構成であって、光源ユニット2の光源領域12aは、出射する光のピーク波長が850nmのLED素子11のみで構成されている。
【0065】
図4Aから図4Cに示すように、波長が800nm以上900nm以下の範囲は、波長の変動に対する吸収率の変化が小さい。したがって、上記構成とすることで、各LED素子11が出射する光のピーク波長にバラつきが生じても、シリコンウェハを均一に加熱処理することができる。
【0066】
なお、第二実施形態においては、放射温度計14は、LED素子11から出射される光を迷光として観測してしまわないように、感度波長帯域が1μm以上のものが採用されることが好ましい。また、時間管理等によって加熱処理の進行状況が管理される構成等の場合は、放射温度計14が備えられていなくても構わない。
【0067】
[別実施形態]
以下、別実施形態につき説明する。
【0068】
〈1〉 図5は、別実施形態の光源ユニット2を+Z側から見たときの図面である。図5に示す本実施形態の光源ユニット2は、実線で囲まれた領域が、ピーク波長が実質的に同一のLED素子11で構成された単一波長光源領域である光源領域12aを示す。そして、破線で囲まれた領域が、単一波長光源領域ではない光源領域12bを示す。
【0069】
上記構成とすることで、被処理基板W1の主面W1bの周方向において、光強度分布の均一性がより高められ、特に、半導体ウェハ等の円板形状を呈する被処理基板W1では、周方向における照射ムラが抑制されて、より均一な加熱処理が実現される。
【0070】
なお、本実施形態では、図5に示すように、基板12の主面上の周方向に単一波長領域である光源領域12aが配列されているが、光源領域(12a,12b)は、周方向に配列されていなくても構わない。例えば、被処理基板W1や基板12を回転させながら加熱処理が行われる場合は、中心12cの周りを一周するようにではなく、一部だけに光源領域12aが構成されていても構わない。
【0071】
また、単一波長光源領域である光源領域12aが複数形成されている場合、単一波長光源領域である光源領域12aごとに、出射する光のピーク波長が異なっていても構わない。
【0072】
〈2〉 上述した各実施形態において、光源領域(12a,12b)は正方形、小基板20は長方形状で図示されているが、例えば、円形状の他、四角形以外の多角形状であってもよい。また、光源領域(12a,12b)及び小基板20は、基板12の中心12cの周りに環状を呈するように形成されていてもよく、それぞれの光源領域(12a,12b)及び小基板20ごとに形状が異なっていても構わない。
【0073】
さらに、LED素子群11sは、全て同じ数のLED素子11で構成されているが、アノード電極30aやカソード電極30bからそれぞれの距離に応じて生じる電圧降下の差等を考慮して、含まれるLED素子11の数を異ならせても構わない。
【0074】
〈3〉 上述した加熱処理装置1が備える構成は、あくまで一例であり、本発明は、図示された各構成に限定されない。
【符号の説明】
【0075】
1 : 加熱処理装置
2 : 光源ユニット
10 : チャンバ
10a : 観測用窓
10b : 透光窓
11 : LED素子
11s : LED素子群
12 : 基板
12a,12b : 光源領域
12c : 中心
13 : 支持部材
14 : 放射温度計
20 : 小基板
30a : アノード電極
30b : カソード電極
30c : ツェナーダイオード
W1 : 被処理基板
W1a,W1b : 主面
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5