(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】電池ユニット
(51)【国際特許分類】
H01M 10/6557 20140101AFI20240501BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20240501BHJP
H01M 10/658 20140101ALI20240501BHJP
H01M 10/6568 20140101ALI20240501BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20240501BHJP
H01M 10/647 20140101ALI20240501BHJP
H01M 10/651 20140101ALI20240501BHJP
H01M 50/204 20210101ALI20240501BHJP
H01M 50/209 20210101ALI20240501BHJP
H01M 50/213 20210101ALI20240501BHJP
H01M 50/249 20210101ALI20240501BHJP
【FI】
H01M10/6557
H01M10/613
H01M10/658
H01M10/6568
H01M10/625
H01M10/647
H01M10/651
H01M50/204 401H
H01M50/209
H01M50/213
H01M50/249
(21)【出願番号】P 2020158661
(22)【出願日】2020-09-23
【審査請求日】2023-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】花岡 輝彦
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 敏貴
(72)【発明者】
【氏名】爲谷 栄太郎
【審査官】宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-111478(JP,A)
【文献】特開2011-238374(JP,A)
【文献】特開2014-000948(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/52-10/667
H01M50/20-50/298
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
並設された複数の電池セルと、該電池セルを冷却する冷却システムと、を備えた電池ユニットであって、
前記冷却システムは、
冷媒と、
前記電池セルと接するように設けられた前記冷媒が循環するための循環経路と、
前記循環経路に設けられた前記冷媒を循環させるための循環器と、
前記循環経路に設けられた前記冷媒を放熱させるための熱交換器と、を有し、
前記冷媒には、熱凝集性と断熱性とを有する粒子である熱凝集性断熱粒子が添加されていることを特徴とする電池ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の電池ユニットにおいて、
前記冷媒は水であり、
前記熱凝集性断熱粒子は、
中空シリカと、
前記中空シリカの外側に配置された吸水性高分子層と、
前記吸水性高分子層を覆う熱溶融性高分子層と、によって構成されていることを特徴とする電池ユニット。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電池ユニットにおいて、
前記複数の電池セル各々は、該電池セルが並設された並設方向において互いに逆向きになった対応する外面である対応面と、該対応面同士を互いの周縁部において接続する側面と、を有し、
前記循環経路は、
前記循環器の冷媒吐出部に接続され、前記電池セル各々における一方の前記側面に沿って前記並設方向に連続して延びる第1側面経路部と、
前記循環器の冷媒吸引部に接続され、前記電池セル各々における他方の前記側面に沿って前記並設方向に連続して延びる第2側面経路部と、
前記並設方向の前記対応面に沿って延びる、前記第1側面経路部と前記第2側面経路部とを接続する対応面経路部と、を有し、
前記第1側面経路部及び前記第2側面経路部各々が前記電池セル各々の前記側面に沿って延びる長さは、前記対応面経路部が前記電池セル各々の前記対応面に沿って延びる長さよりも短いことを特徴とする電池ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の電池を組み合わせた組電池が記載されている。この組電池の電池各々は矩形板状である。この電池同士が上下方向に間隔をあけて積層されている。これらの電池の表面には、電池の熱を放熱するための金属製の放熱部材が設けられている。また、隣接する電池同士の間には、両電池に設けられた放熱部材と接するように断熱部材が設けられている。
【0003】
この組電池が備える電池に設けられた放熱部材は、伝熱性のある部材により隣接していない他の電池に設けられた放熱部材に接続されている。この放熱部材を介して、電池の発した熱が隣接していない他の電池に設けられた放熱部材へ伝熱される。また、隣接した電池同士の間には断熱部材が設けられている。この断熱部材により、電池の発した熱が隣接する電池へ伝熱されることが抑制される。このため、電池が発熱したときに、発熱した電池の周辺に熱がこもることが抑制され、組電池の温度の上昇が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載された組電池は、各電池同士の間に2つの放熱部材と1つの断熱部材とが配置されている。このため、組電池が大型化するという問題がある。
【0006】
本発明は、斯かる点に鑑みて為されたものであり、その目的は、電池ユニット全体に対する冷却と過熱した電池セルに対する断熱とが統合された冷却システムを備えた、シンプルかつコンパクトな電池ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の目的を達成するために、電池セルを冷却するための冷媒に、熱凝集性と断熱性とを有する粒子を添加した。
【0008】
具体的には、ここで開示する電池ユニットは、並設された複数の電池セルと、この電池セルを冷却する冷却システムと、を備える電池ユニットであって、この冷却システムは、冷媒と、この電池セルと接するように設けられたこの冷媒が循環するための循環経路と、この循環経路に設けられたこの冷媒を循環させるための循環器と、この循環経路に設けられたこの冷媒を放熱させるための熱交換器と、を有し、この冷媒には、熱凝集性と断熱性とを有する粒子である熱凝集性断熱粒子が添加されていることを特徴とする。
【0009】
この構成によると、この電池ユニットは並設された複数の電池セルを備えている。これらの電池セルは、この電池ユニットの使用に伴って発熱する。発熱した電池セル各々は、これらの電池セルに設けられた循環経路を循環する冷媒によって吸熱される。この冷媒は循環器によってこの循環経路を循環させられる。この冷媒はこの循環経路に設けられた熱交換器により放熱される。この冷媒の吸熱と放熱とを繰り返すことにより、これらの電池セルの温度上昇が抑えられる。
【0010】
また、電池セルに不具合が発生したときには、電池セルが過熱(異常発熱)するときがある。このときは、過熱した電池セルから冷媒に伝わる熱量が大きくなる。このため、冷媒の温度が過熱した電池セルまわりにおいて局部的に急上昇する。そして、この冷媒に添加されている熱凝集性断熱粒子の温度が熱凝集温度を超えて上昇していく。その結果、過熱した電池セルのまわりにおいて、循環経路内の熱凝集断熱粒子が凝集した、言わば断熱層が形成される。
【0011】
このように、電池セルが過熱したときには、過熱した電池セルと接する循環経路内に断熱層が形成される。この過熱した電池セルの発する熱が他の電池セルに与える影響が、この断熱層によって抑制される。さらに、この断熱層は電池セルを冷却するための冷媒が循環する循環経路の内部に形成される。このため、循環経路とは別に断熱材を設ける必要がなくなり、電池ユニットの構成がシンプルかつコンパクトになる。
【0012】
前記の電池ユニットにおいて、冷媒は水であり、熱凝集性断熱粒子は、中空シリカと、この中空シリカの外側に配置された吸水性高分子層と、この吸水性高分子層を覆う熱溶融性高分子層と、によって構成されているとしてもよい。
【0013】
このようにすれば、冷媒が電池セルの過熱により高温となったときには、まず、熱溶融性高分子層が溶融する。この熱溶融性高分子層が溶融すると、内側に配置された吸水性高分子層が露出する。露出したこの吸水性高分子層は、冷媒を吸収し膨張する。その結果、膨潤した吸水性高分子層を介して、中空シリカ同士が結合していき、凝集する。これにより、循環経路内にはこの中空シリカが凝集し、空気が断熱効果を発揮する断熱層が形成される。
【0014】
前記の電池ユニットにおいて、複数の電池セル各々は、これらの電池セルが並設された並設方向において互いに逆向きになった対応する外面である対応面と、この対応面同士を互いの周縁部において接続する側面と、を有し、循環経路は、循環器の冷媒吐出部に接続され、これらの電池セル各々における一方の側面に沿って前記並設方向に連続して延びる第1側面経路部と、循環器の冷媒吸引部に接続され、これらの電池セル各々における他方の側面に沿って前記並設方向に連続して延びる第2側面経路部と、前記並設方向の対応面に沿って延びる、この第1側面経路部とこの第2側面経路部とを接続する対応面経路部と、を有し、これらの第1側面経路部及び第2側面経路部各々がこれらの電池セル各々の側面に沿って延びる長さは、対応面経路部がこれらの電池セル各々の対応面に沿って延びる長さよりも短いことを特徴とする。
【0015】
この構成によると、電池ユニットに異常が発生するなどして、電池セルが過熱することがある。この電池セルには、電池セルが並設される方向に相対する対応面と、対応面同士を周縁部において接続する側面とを有している。この側面に沿って延びる第1側面経路部と第2側面経路部との長さは、この対応面に沿って延びる対応面経路部よりも短い。長さの短いこれら第1側面経路部と第2側面経路部において冷媒が一つの過熱された電池セルから受け取る熱量は、長さの長い対応面経路部において冷媒が一つの過熱された電池セルから受け取る熱量よりも少なくなる。受け取る熱量の少ない第1側面経路部と第2側面経路部における熱凝集性断熱粒子の凝集量は、対応面経路部における凝集量よりも少なくなる。
【0016】
このように、第1側面経路部及び第2側面経路部における熱凝集性断熱粒子の凝集量が少ない。凝集量が少ないため、第1側面経路部及び第2側面経路部が凝集した熱凝集性断熱粒子により詰まることが抑制される。すなわち、過熱された電池セル両側の対応面経路部が熱凝集性断熱粒子の凝集によって塞がっても、電池セルの並設方向に連続した第1及び第2の両側面経路部での冷媒の流れは保たれやすい。従って、電池セルの過熱を生じた後も、複数の電池セル全体にわたる冷媒の循環を維持することが容易になる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、電池ユニット全体に対する冷却と過熱した電池セルに対する断熱とが統合された冷却システムを備えた、シンプルかつコンパクトな電池ユニットを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態1に係る電池ユニットの概略図である。
【
図4】電池セルに設けられた循環経路を示す側面図である。
【
図5】本発明に係る熱凝集性断熱粒子の断面図である。
【
図6】電池セルが過熱した際の
図1に相当する図である。
【
図7】本発明の実施形態2に係る電池ユニットの電池セルが過熱した際の概略図である。
【
図8】その他の実施形態に係る
図4に相当する図である。
【
図9】その他の実施形態に係る
図4に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0020】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る電池ユニット1の構成を示している。この電池ユニット1は、並設された複数の電池セル2(
図1では電池セル2は3つのみ記載)と電池ユニット1を冷却するための冷却システムとを備えている。この電池ユニット1は、電気自動車などに用いられる。これら複数の電池セル2は、これら電池セル2が並設された並設方向において互いに逆向きになった対応する外面である対応面211と、これら対応面211の周縁部同士を接続する側面212とを有している。これらの電池セル2は、互いの対応面211同士を対向させるように配置されている。
【0021】
これら電池セル2は、
図2に示すように、略直方体状のセル筐体21を有している。電池セル2は、他の電池セル2と電気的に並列または直列に接続されている。この電池セル2は、面積の大きい対応面211と面積の小さい側面212とを有している。この電池セル2の上側面(図中で上側)には端子213が2つ設けられている。これらの端子213の一方が+極、他方が-極となっている。この電池セル2の内部構造は
図3に示されている。この電池セル2は、略直方体状の電極体22を有している。この電極体は、正極シート、負極シート及びセパレータを捲回して、又は積層して略直方体状に形成されている。この電極体22の側面212側の両端には、樹脂製の固定部材23が設けられている。この電極体22の上側面(図中で上側)には、側面212側の両端から電池セル2の中央側に向けて延びる、金属製のタブリード24が設けられている。このタブリード24の一方が+極、他方が-極となっている。このタブリード24は、電極体22の上側面(図中で上側)における側面212側の両端から下側(図中で下側)に向けて板状に延びている。このタブリード24は、この下側に向けて延びた板状の箇所が電極体22の集電体に接続されている。
【0022】
この電池ユニット1は、電池ユニット1全体を冷却するための冷却システムを備えている。この冷却システムは、冷媒としての冷却水3と、循環経路4と、循環器5と、熱交換器6とを有している。この冷却水3は、電池ユニット1の複数の電池セル2に対して循環させられる。これにより、この冷却水3はこれら電池セル2から熱を奪って電池セル2を冷却する。この冷却水3の循環は循環経路4を介して行われる。
【0023】
この循環経路4は、複数の電池セル2に沿うようにして設けられている。この循環経路4には循環器5の冷媒吐出部51と冷媒吸引部52とが接続されている。この循環器5は、循環経路4において冷却水3を循環させるためのポンプである。また、循環経路4には、循環器5に対して熱交換器6が直列的に接続されている。この熱交換器6は冷却水3を冷却するための機器であり、空冷用のファン(図示せず)を有している。
【0024】
循環経路4は、電池セル2に沿って設けられた対応面経路部41と側面経路部42とを有している。この対応面経路部41は、電池セル2の対応面211に沿って設けられている。この対応面経路部41は、各電池セル2の対応面211の前記並設方向の両側に設けられている。この対応面経路部41の形状が
図4に示されている。
図4においてセル筐体21は省略されている。この対応面経路部41は、一方の側面212から他方の側面212に向かってジグザグに進むように設けられている。側面経路部42は、電池セル2の側面212に沿って設けられている。この側面経路部42は、隣り合う電池セル2の一方では、電池セル2の片側の側面212に沿って設けられて当該電池セル2の両側の対応面経路部41に接続され、他方では、電池セル2の反対側の側面212に沿って設けられて当該電池セル2の両側の対応面経路部41に接続されている。これにより、循環経路4は、対応面経路部41と側面経路部42とを経由して、冷却水3が循環できるように構成されている。
【0025】
この冷却システムの冷却水3には、熱凝集性と断熱性とを有する熱凝集性断熱粒子7が添加されている。
図5に示すように、この熱凝集性断熱粒子7は中空シリカ71を有している。中空シリカ71の中心部には空気72が含まれている。中空シリカ71はこの空気72により断熱性をもつ。この中空シリカ71の表面には、吸水性高分子であるポリアクリル酸ソーダが設けられている。これにより、中空シリカ71の表面には高い吸水性をもつ吸水性高分子層としてのポリアクリル酸ソーダ高分子層73が形成されている。このポリアクリル酸ソーダ高分子層73は、中空シリカ71にポリアクリル酸ソーダを直接散布する、またはバインダーを使用するなどして形成されている。このバインダーには、超高分子量ポリエチレンオキシドなどが用いられる。ポリアクリル酸ソーダ高分子層73の外側は、熱溶融性高分子であるポリスチレンに覆われている。これにより、ポリアクリル酸ソーダ高分子層73の外側には、熱溶融性をもつ熱溶融性高分子層としてのポリスチレン高分子層74が形成されている。このポリスチレン高分子層74は、液中乾燥法などによって形成されている。
【0026】
次に、電池ユニット1の冷却システムによる温度上昇の抑制について説明する。この電池ユニット1の使用に伴って、電池セル2各々が発熱する。発熱した電池セル2は、各電池セル2の対応面211と側面212とにそれぞれ設けられた、対応面経路部41と側面経路部42とを介して冷却水3に吸熱される。この吸熱によって、電池セル2は温度上昇が抑制される。この吸熱により温度が上昇した冷却水3は熱交換器4を通過するときに、空冷ファンで送られる外気との熱交換によって冷却される。
【0027】
次に、電池ユニット1の電池セル2が過熱した際の、熱凝集性断熱粒子7の作用について説明する。この熱凝集性断熱粒子7は、冷却水3に添加されている。このため、この冷却水3の循環に伴って熱凝集性断熱粒子7は循環経路4の内部を冷却水3と共に流動する。
図6は、図中の一番左側の電池セル2が過熱した状態を示す。電池セル2が過熱すると、この電池セル2に接する対応面経路部41と側面経路部42とが加熱される。これらの対応面経路部41と側面経路部42とが加熱されると、これらの内部において冷却水3の温度が上昇させられる。冷却水3の温度の上昇によって、冷却水3に添加された熱凝集性断熱粒子7の表面温度は上昇させられる。表面温度が上昇した熱凝集性断熱粒子7は、その表面を形成するポリスチレン高分子層74が溶融させられる。これにより熱凝集性断熱粒子7は、ポリスチレン高分子層74の内側に設けられたポリアクリル酸ソーダ高分子層73が露出させられる。この吸水性をもつポリアクリル酸ソーダ高分子層73は、循環経路4内を流れる冷却水3を吸収して膨張する。その結果、膨潤したポリアクリル酸ソーダ高分子層73を介して、中空シリカ71同士が結合していき、凝集する。熱凝集性断熱粒子7の中空シリカ71は断熱性をもっている。このため、凝集した熱凝集性断熱粒子7により、中空シリカ71の空気72が断熱効果を発揮する断熱層8が過熱した電池セル2のまわりに形成される。
【0028】
従って、この実施形態において、電池ユニット1の温度上昇を抑制する冷却システムの冷却水3には、熱凝集性断熱粒子7が添加されている。これにより、電池セル2が過熱した際には、過熱した電池セルと接する循環経路4の対応面経路部41と側面経路部42との内部に断熱層8が形成される。このため、過熱した電池セル2が発する熱から他の電池セル2が受ける影響は断熱層8によって抑制される。また、この断熱層8は電池ユニット1を冷却するための循環経路4の内部に形成される。このため、循環経路4とは別に断熱材を設ける必要がなくなり、電池ユニット1の構成をシンプルかつコンパクトにすることができる。
【0029】
(実施形態2)
図7は、本発明の実施形態2に係る電池ユニット1の構成を示している。電池セル2に設けられた循環経路4の構成が前記実施形態1とは異なるが、他の構成は実施形態1と同様である。
【0030】
実施形態2においても、実施形態1と同様に、電池ユニット1は並設された複数の電池セル2(
図7では、電池セル2は3つのみ記載)を備えている。
図7は、図中の一番左側の電池セルが過熱した際の電池ユニット1を示す。この電池セル2の構造は実施形態1と同様である。
【0031】
電池ユニット1は、
図7に示すように、複数の電池セル2(
図7では電池セル2は3つのみ記載)を備えている。これらの電池セル2は、対応面211を対向させるように配置されている。
【0032】
電池ユニット1は、電池ユニット1全体を冷却するための冷却システムを備えている。この冷却システムは、冷媒としての冷却水3を利用して各電池セルを冷却するシステムである。電池ユニット1は、実施形態1と同様に、冷却水3が循環経路4を循環することにより冷却される。
【0033】
この循環経路4は、第1側面経路部421と第2側面経路部422と対応面経路部41とを有している。第1側面経路部421は、電池セル2各々における図中で上側の側面212に沿って、電池セル2が並設された方向(図中で左右方向)に連続して設けられている。また、この第1側面経路部421は、循環器5の冷媒吐出部51に接続されている。第2側面経路部422は、電池セル2各々における図中で下側の側面212に沿って、電池セル2が並設された方向(図中で左右方向)に接続されている。また、この第2側面経路部422は、循環器5の冷媒吸引部52に接続されている。対応面経路部41は、電池セルの対応面211に沿って設けられている。この対応面経路部41は、一端が第1側面経路部421に他端が第2側面経路部422にそれぞれ接続されている。
【0034】
この各電池セル2の側面212の長さは、対応面211の長さに比べて短くなっている。このため、各電池セル2の側面212に沿う第1側面経路部421及び第2側面経路部422の長さは、対応面211に沿う対応面経路部41の長さに比べて短くなっている。
【0035】
次に、実施形態2において電池ユニット1の電池セル2が過熱した際の、熱凝集性断熱粒子7の作用について説明する。この電池セル2が過熱すると、電池セル2から対応面経路部411と第1側面経路部421及び第2側面経路部422に伝熱される。この過熱した電池セル2に沿って延びる長さが、第1側面経路部421及び第2側面経路部422は対応面経路部411に比べて短くなっている。このため、第1側面経路部421及び第2側面経路部422に伝わる熱量は、対応面経路部411に伝わる熱量に比べて小さくなる。
【0036】
また、電池セル2の電極体22が過熱したとき、電極体22が発する熱はセル筐体21に伝熱される。この熱は、対応面211側においては、直接セル筐体21に伝熱される。一方で、この熱は、側面212側においては、ダブリード24と固定部材23とを介してセル筐体21に伝熱される。これにより、電池セル2のセル筐体21は、対応面211の温度が上がりやすくなり、側面212の温度が上がりにくくなる。
【0037】
さらに、セル筐体21と電極体22との距離が近い対応面211は側面212よりも電極体22が発する熱の影響を受けやすく、表面温度が上昇しやすい。これにより、電池セル2のセル筐体21は、対応面211の温度が上がりやすくなり、側面212の温度が上がりにくくなる。
【0038】
このように、伝わる熱量が小さく且つ温度の上りにくい側面212に設けられた第1側面経路部421及び第2側面経路部422内の冷却水3の温度は、伝わる熱力が大きく且つ温度の上がりやすい対応面211に設けられた対応面経路部41内の冷却水3の温度に比べて低くなる。過熱した電池セル2の熱により、まず、対応面経路部41内の冷却水3の温度が、熱凝集性断熱粒子7のポリスチレン高分子層74が溶融する温度まで上昇させられる。ポリスチレン高分子層74が溶融した熱凝集性断熱粒子7により、実施形態1と同様に、対応面経路部41内には断熱層8が形成される。一方で、第1側面経路部421及び第2側面経路部422内の冷却水3の温度は、対応面経路部41内の冷却水3の温度に比べ低い。温度の低い第1側面経路部421及び第2側面経路部422内において、熱凝集性断熱粒子7はポリスチレン高分子層74が溶融しづらく、凝集量が少なくなる。
【0039】
従って、この実施形態において、電池セル2が過熱したとき、対応面経路部41に比べ、第1側面経路部421と第2側面経路部422とにおいて、熱凝集性断熱粒子7の凝集量が少なくなっている。これにより、第1側面経路部421及び第2側面経路部422は凝集した熱凝集性断熱粒子7による詰まりが抑制される。このため、これらの第1側面経路部421及び第2側面経路部422を流れる冷却水3の流量が十分に確保される。そして、これら第1側面経路部421及び第2側面経路部422は、電池セル2の配設方向に連続している。このため、対応面経路部41に断熱層8が形成されたとき、対応面経路部41が断熱層8により詰まったとしても、第1側面経路部421と第2側面経路部422とを介して、冷却水3を循環させることができる。
【0040】
このように、この電池ユニット1は、対応面経路部41に断熱層8を形成されたとき、第1側面経路部421と第2側面経路部422とを介して、冷却水3の循環ができるように構成されている。このため、冷却水3の循環による電池ユニット1の冷却と、過熱した電池セル2に対する断熱とを同時に行うことができる。
【0041】
また、
図7に示すように、電池セル2は対応面211を対向さえて配置されている。これらの対応面211同士の間に設けられた対応面経路部41内に断熱層8が形成されやすいため、過熱した電池セル2の熱から他の電池セル2が受ける影響を十分に抑制することができる。
【0042】
(その他の実施形態)
前記実施形態では、電池セル2を3つのみ記載したが、電池セル2の個数は3つに限定されない。電池セル2は複数あればよい。
【0043】
前記実施形態では、循環経路4の対応面経路部41は対応面211上にジグザグに設けられているとした。しかし、
図8に示すように、対応面211上に上下方向(図中で上下方向)に平行して3本の対応面経路部41が設けられているとしてもよい。この場合、循環器5の冷媒吐出部51に続く1本の循環経路4が3本の側面経路部42に分岐させられ、この分岐させた側面経路部42と3本の対応面経路部41とが接続されている。そして、この3本の対応面経路部41に続く下流側の3本の側面経路部42を1本に集合させ、循環器5の冷媒吸引部52に接続されているとしてもよい。或いは、対応面経路部41の上流側及び下流側各々に設けられた側面経路部42は1本であり、3本の対応面経路部41に分岐されていてもよい。或いは、3本の循環経路4を平行に設け、各々に循環器5及び熱交換器6を設けてもよい。
【0044】
さらに、対応面経路部41は、
図9に示すように、ジグザグの対応面経路部41が2本並設されているとしてもよい。また、これら2本の対応面経路部41は、頂点を上下方向(図中で上下方向)に対応させて設けられているとしてもよい。この場合、循環器5の冷媒吐出部51に続く1本の循環経路4が2本の側面経路部42に分岐させられ、この分岐させた側面経路部42と2本の対応面経路部41とが接続されている。そして、この2本の対応面経路部41に続く下流側の2本の側面経路部42を1本に集合させ、循環器5の冷媒吸引部52に接続されているとしてもよい。或いは、対応面経路部41の上流側及び下流側各々に設けられた側面経路部42は1本であり、2本の対応面経路部41に分岐されていてもよい。或いは、2本の循環経路4を平行に設け、各々に循環器5及び熱交換器6を設けてもよい。
【0045】
前記実施形態では、冷却水3が、
図1、
図6及び
図7において、時計回りに循環するように、循環器5の冷媒吐出部51と冷媒吸引部52とが循環経路4に接続されているとした。しかし、冷媒吐出部51と冷媒吸引部52とを反対に接続し、反時計回りに冷却水3が循環しても構わない。また、循環器5と熱交換器6との位置関係が反対でも構わない。
【0046】
前記実施形態では、電池セル2は対応面211と側面212とを有する直方体状の電池とした。しかし、電池セル2の形状は、円筒電池でもよくどのような形状でも構わない。例えば、円筒電池を用いたとき、円筒電池が軸方向に対して垂直方向に並設されている場合は、円筒電池の側面が対応面211であり、両底面が側面212であるとすればよい。一方、円筒電池が軸方向に並設されている場合は、円筒電池の両底面が対応面211であり、側面が側面212であるとすればよい。
【0047】
前記実施形態では、熱凝集性断熱粒子7の芯材には中空粒子である中空シリカ71を用いるとしたが、発泡粒子等でもよい。芯材に用いる粒子は断熱性があればよい。例えば、中空シリカ71の代替品としては、多孔質シリカ、ポリイミド多孔質、有機-無機ハイブリッド多孔質等が挙げられる。
【0048】
前記実施形態では、中空シリカ71の表面には、吸水性高分子であるポリアクリル酸ソーダが設けられているとしたが、吸水性があればポリアクリル酸ソーダでなくてもよい。例えば、ポリアクリル酸ソーダの代替品としては、ポリアクリル酸塩系、デンプン-アクリル酸塩グラフトポリマー、酢酸ビニル共重合体、無水マレイン酸共重合体、ポリビニルアルコール系、CMC系等が挙げられる。
【0049】
前記実施形態では、ポリアクリル酸ソーダ高分子層73の外側は、熱溶融性高分子であるポリスチレンに覆われているとしたが、熱溶融性があればポリスチレンでなくてもよい。例えば、ポリスチレンの代替品としては、ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体)、AS(アクリロニトリル-スチレン共重合体)等が挙げられる。
【0050】
また、熱凝集性断熱粒子7は芯材と吸水性高分子層と熱溶融性高分子層とが積層された3層構造であるとした。しかし、熱凝集性断熱粒子7の構造は3層構造に限らない。例えば、芯材の外側に加熱されることにより粘着性を発揮する樹脂や、加熱されることにより吸水性を発揮する樹脂による層を形成することにより、2層構造としても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、電池ユニット1の構成をシンプルかつコンパクトにすることができる点で極めて有用である。
【符号の説明】
【0052】
1 電池ユニット
2 電池セル
3 冷媒
4 循環経路
5 循環器
6 熱交換器
7 熱凝集性断熱粒子
8 断熱層