IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ車体株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-燃料電池用セパレータ 図1
  • 特許-燃料電池用セパレータ 図2
  • 特許-燃料電池用セパレータ 図3
  • 特許-燃料電池用セパレータ 図4
  • 特許-燃料電池用セパレータ 図5
  • 特許-燃料電池用セパレータ 図6
  • 特許-燃料電池用セパレータ 図7
  • 特許-燃料電池用セパレータ 図8
  • 特許-燃料電池用セパレータ 図9
  • 特許-燃料電池用セパレータ 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】燃料電池用セパレータ
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0228 20160101AFI20240501BHJP
   H01M 8/0213 20160101ALI20240501BHJP
   H01M 8/0221 20160101ALI20240501BHJP
   H01M 8/0226 20160101ALI20240501BHJP
   H01M 8/0258 20160101ALI20240501BHJP
   H01M 8/2483 20160101ALI20240501BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20240501BHJP
【FI】
H01M8/0228
H01M8/0213
H01M8/0221
H01M8/0226
H01M8/0258
H01M8/2483
H01M8/10 101
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020167448
(22)【出願日】2020-10-02
(65)【公開番号】P2022059696
(43)【公開日】2022-04-14
【審査請求日】2022-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】杉野 祐記
【審査官】山本 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-278247(JP,A)
【文献】特開2005-174821(JP,A)
【文献】特開2006-236841(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00- 8/0297
H01M 8/08- 8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性の第1炭素粒子、及び樹脂材を含む板状の基材を備え、燃料電池の発電部に接触して設けられる燃料電池用セパレータであって、
前記発電部に対向するとともに反応ガスが流れるガス流路部と、前記基材の厚さ方向に貫通して形成され、前記反応ガスが排出される排出マニホールドと、前記排出マニホールドに隣り合う隣接部と、を有しており、
前記隣接部は、前記厚さ方向において前記発電部側に位置する表面を有しており、
前記表面には、導電性の第2炭素粒子を含み、前記発電部における生成水を前記排出マニホールドに向けて誘導する誘導層が設けられており、
前記第2炭素粒子は、前記樹脂材を介して前記基材に結合されるとともに、前記樹脂材から露出しており、
前記第2炭素粒子の平均粒子径は、前記第1炭素粒子の平均粒子径よりも大きい、
燃料電池用セパレータ。
【請求項2】
前記ガス流路部を第1ガス流路部とするとき、
前記第1ガス流路部から前記排出マニホールドに向かって延びるとともに前記反応ガスが流れる第2ガス流路部を有しており、
前記隣接部は、前記第2ガス流路部と前記排出マニホールドとの間に設けられている、
請求項1に記載の燃料電池用セパレータ。
【請求項3】
前記第1ガス流路部の表面及び前記第2ガス流路部の表面の双方には、前記誘導層が設けられており、
前記第1ガス流路部の前記表面に設けられた前記誘導層と、前記第2ガス流路部の前記表面に設けられた前記誘導層と、前記隣接部の前記表面に設けられた前記誘導層と、は連なっている、
請求項2に記載の燃料電池用セパレータ。
【請求項4】
前記隣接部は、前記隣接部の前記表面に連なって設けられ、前記排出マニホールドの内面を形成する側面を有しており、
前記側面には、前記誘導層が設けられており、
前記隣接部の前記表面に設けられた前記誘導層と、前記側面に設けられた前記誘導層とは、連なっている、
請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の燃料電池用セパレータ。
【請求項5】
前記隣接部の前記表面を第1表面とするとき、
前記隣接部は、前記隣接部の前記側面に連なって設けられ、前記厚さ方向において前記第1表面とは反対側に位置する第2表面を有しており、
前記第2表面には、前記誘導層が設けられており、
前記側面に設けられた前記誘導層と、前記第2表面に設けられた前記誘導層とは、連なっている、
請求項4に記載の燃料電池用セパレータ。
【請求項6】
導電性の炭素粒子、及び樹脂材を含む板状の基材を備え、燃料電池の発電部に接触して設けられる燃料電池用セパレータであって、
前記発電部に対向するとともに反応ガスが流れるガス流路部と、前記基材の厚さ方向に貫通して形成され、前記反応ガスが排出される排出マニホールドと、前記排出マニホールドに隣り合う隣接部と、を有しており、
前記隣接部は、前記厚さ方向において前記発電部側に位置する表面と、前記表面に連なって設けられ、前記排出マニホールドの内面を形成する側面と、を有しており、
前記表面及び前記側面には、前記発電部における生成水を前記排出マニホールドに向けて誘導する多数の微細な突起が設けられており、
前記隣接部における前記突起の数は、前記反応ガスの流れ方向の下流側ほど多くなっており、
前記突起の高さは、前記炭素粒子の平均粒子径よりも大きい、
燃料電池用セパレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用セパレータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、固体高分子形燃料電池は、膜電極接合体を有する発電部と、発電部の周囲に接合されたフレームと、発電部及びフレームを挟持する2つのセパレータとを含む単セルが複数積層されたスタックを備えている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
単セルは、燃料ガスや酸化剤ガスなどの反応ガスが供給される供給マニホールドと、当該反応ガスが排出される排出マニホールドとを有している。供給マニホールドと排出マニホールドとは、フレーム及び2つのセパレータを貫通してそれぞれ設けられている。セパレータの各々には、発電部との間において反応ガスが流れるガス流路部が形成されている。フレームには、供給マニホールドとガス流路部とを連通する複数の供給路と、ガス流路部と排出マニホールドとを連通する複数の排出路とが形成されている。供給路及び排出路は、フレームを厚さ方向に貫通している。
【0004】
供給マニホールドに供給された反応ガスは、複数の供給路を通じてガス流路部に供給される。そして、同反応ガスは、複数の排出路を通じて排出マニホールドから外部に排出される。ガス流路部を流れる反応ガスが発電部に到達することで、反応ガスの電気化学反応により発電が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-181500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ガス流路部には、発電部における電気化学反応によって生成された水(以下、生成水と称する)が存在することがある。こうした生成水は、反応ガスと共に複数の排出路を通じて排出マニホールドから外部に排出される。しかしながら、生成水の量が多くなった場合には、ガス流路部が生成水により閉塞されたり、ガス流路部における反応ガスの圧力損失が過度に増大したりするおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための燃料電池用セパレータは、導電性の第1炭素粒子、及び樹脂材を含む板状の基材を備え、燃料電池の発電部に接触して設けられる燃料電池用セパレータであって、前記発電部に対向するとともに反応ガスが流れるガス流路部と、前記基材を厚さ方向に貫通して形成され、前記反応ガスが排出される排出マニホールドと、前記排出マニホールドに隣り合う隣接部と、を有しており、前記隣接部は、前記厚さ方向において前記発電部側に位置する表面を有しており、前記表面には、導電性の第2炭素粒子を含み、前記発電部における生成水を前記排出マニホールドに向けて誘導する誘導層が設けられており、前記第2炭素粒子は、前記樹脂材を介して前記基材に結合されるとともに、前記樹脂材から露出しており、前記第2炭素粒子の平均粒子径は、前記第1炭素粒子の平均粒子径よりも大きい。
【0008】
同構成によれば、誘導層では、第1炭素粒子の平均粒子径よりも大きい平均粒子径を有する第2炭素粒子が基材の樹脂材から露出している。このため、誘導層の表面には、第2炭素粒子によって微細な凹凸が形成される。この凹凸は、第1炭素粒子によって形成される凹凸に比べて大きい。これにより、誘導層の表面粗さが大きくなるため、誘導層の表面においては、生成水に作用する毛管力が大きくなる。こうした誘導層が排出マニホールドに隣り合う隣接部に設けられているため、誘導層に到達した生成水が排出マニホールドに向かって移動しやすくなる。その結果、生成水が排出マニホールドを通じて外部に排出されやすくなる。したがって、生成水の排出性を高めることができる。
【0009】
上記燃料電池用セパレータにおいて、前記ガス流路部を第1ガス流路部とするとき、前記第1ガス流路部から前記排出マニホールドに向かって延びるとともに前記反応ガスが流れる第2ガス流路部を有しており、前記隣接部は、前記第2ガス流路部と前記排出マニホールドとの間に設けられていることが好ましい。
【0010】
燃料電池においては、例えば、隣接部が、燃料電池の単セルを構成するフレームなどの別部材に接触することで隣接部に反応ガスが流れない場合がある。
この場合、上記構成によれば、隣接部の表面に設けられた誘導層が、上記別部材に接触する。この場合であっても、生成水は、誘導層の表面に形成された微細な凹凸と、別部材との隙間を伝って排出マニホールドに向かって移動することができる。このため、生成水は、反応ガスと共に第2ガス流路部を通じて排出マニホールドに向かうとともに、上記隙間を通じて排出マニホールドに向かう。したがって、生成水の排出性を高めることができる。
【0011】
上記燃料電池用セパレータにおいて、前記第1ガス流路部の表面及び前記第2ガス流路部の表面の双方には、前記誘導層が設けられており、前記第1ガス流路部の前記表面に設けられた前記誘導層と、前記第2ガス流路部の前記表面に設けられた前記誘導層と、前記隣接部の前記表面に設けられた前記誘導層と、は連なっていることが好ましい。
【0012】
同構成によれば、第1ガス流路部の表面に設けられた誘導層と、第2ガス流路部の表面に設けられた誘導層と、隣接部の表面に設けられた誘導層とが連なっている。このため、第1ガス流路部に存在する生成水が、第1ガス流路部の表面、第2ガス流路部の表面、及び隣接部の表面にそれぞれ設けられた誘導層を通じて、排出マニホールドに向かって移動しやすくなる。これにより、生成水が早期に外部に排出されやすくなる。したがって、生成水の排出性を一層高めることができる。
【0013】
上記燃料電池用セパレータにおいて、前記隣接部は、前記隣接部の前記表面に連なって設けられ、前記排出マニホールドの内面を形成する側面を有しており、前記側面には、前記誘導層が設けられており、前記隣接部の前記表面に設けられた前記誘導層と、前記側面に設けられた前記誘導層とは、連なっていることが好ましい。
【0014】
同構成によれば、隣接部の表面に設けられた誘導層と、隣接部の側面に設けられた誘導層とは連なっている。このため、誘導層に到達した生成水は、排出マニホールドの内部まで移動しやすくなる。ここで、燃料電池において、排出マニホールドの内部を流れる反応ガスの流量は、ガス流路部を流れる反応ガスの流量よりも大きい。このため、生成水は、排出マニホールドの内部に到達することで、反応ガスによって誘導層から吹き飛ばされやすくなる。したがって、生成水の排出性をより一層高めることができる。
【0015】
上記燃料電池用セパレータにおいて、前記隣接部の前記表面を第1表面とするとき、前記隣接部は、前記隣接部の前記側面に連なって設けられ、前記厚さ方向において前記第1表面とは反対側に位置する第2表面を有しており、前記第2表面には、前記誘導層が設けられており、前記側面に設けられた前記誘導層と、前記第2表面に設けられた前記誘導層とは、連なっていることが好ましい。
【0016】
同構成によれば、隣接部の側面に設けられた誘導層と、隣接部の第2表面に設けられた誘導層とは連なっている。このため、誘導層に到達した生成水は、側面に設けられた誘導層を介して第2表面に向かって移動しやすくなる。これにより、生成水が、排出マニホールドの内部におけるより広い範囲に移動しやすくなる。したがって、生成水の排出性をより一層高めることができる。
【0017】
また、上記課題を解決するための燃料電池用セパレータは、導電性の炭素粒子、及び樹脂材を含む板状の基材を備え、燃料電池の発電部に接触して設けられる燃料電池用セパレータであって、前記発電部に対向するとともに反応ガスが流れるガス流路部と、前記基材を厚さ方向に貫通して形成され、前記反応ガスが排出される排出マニホールドと、前記排出マニホールドに隣り合う隣接部と、を有しており、前記隣接部は、前記厚さ方向において前記発電部側に位置する表面を有しており、前記表面には、前記発電部における生成水を前記排出マニホールドに向けて誘導する多数の微細な突起が設けられており、前記突起の高さは、前記炭素粒子の平均粒子径よりも大きい。
【0018】
同構成によれば、隣接部の表面には、基材を構成する炭素粒子の平均粒子径よりも大きい高さを有する多数の微細な突起が設けられている。これにより、隣接部の表面粗さが大きくなるため、隣接部の表面においては、生成水に作用する毛管力が大きくなる。このため、隣接部に到達した生成水が排出マニホールドに向かって移動しやすくなる。その結果、生成水が排出マニホールドを通じて外部に排出されやすくなる。したがって、生成水の排出性を高めることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、生成水の排出性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】燃料電池用セパレータの第1実施形態について、単セルの構成を示す分解斜視図。
図2図1のA部におけるスタックの断面図。
図3図2のB部における第2セパレータの拡大図。
図4図1のC部におけるスタックの断面図。
図5図4のD部における隣接部の拡大図。
図6】燃料電池用セパレータの第2実施形態について、第2セパレータを示す斜視図。
図7】同実施形態における第2セパレータの平面図。
図8】同実施形態における隣接部の拡大断面図。
図9】第1変更例における隣接部の拡大断面図。
図10】第2変更例における隣接部の拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<第1実施形態>
以下、図1図5を参照して、燃料電池用セパレータの第1実施形態について説明する。
【0022】
各図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張又は簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率については実際と異なる場合がある。
図1及び図2に示すように、固体高分子形燃料電池は、複数の単セル10が積層されたスタック1を備えている。燃料電池用セパレータ(以下、セパレータ40と称する)は、単セル10に用いられるものである。なお、セパレータ40は、後述する第1セパレータ50及び第2セパレータ60の総称である。
【0023】
(単セル10)
図1に示すように、単セル10は、平面視において長辺及び短辺を有する長方形状をなしている。
【0024】
以降において、図1の左右方向、すなわち、単セル10の長辺に沿う方向をX軸方向と称し、図1の上下方向、すなわち、単セル10の短辺に沿う方向をY軸方向と称する。また、図1における右方及び左方をそれぞれ単に右方及び左方と称する。また、図1における上方及び下方をそれぞれ単に上方及び下方と称する。
【0025】
単セル10は、シート状の発電部20と、発電部20の周囲に接合されたフレーム30と、発電部20及びフレーム30を挟持する2つのセパレータ40とを備えている。
単セル10は、反応ガスとして、例えば、水素ガスなどの燃料ガスを供給する燃料ガス供給マニホールド11と、燃料ガスを排出する燃料ガス排出マニホールド12とを有している。燃料ガス供給マニホールド11は、単セル10の右方の端部における下方の部分に設けられている。燃料ガス排出マニホールド12は、単セル10の左方の端部における上方の部分に設けられている。
【0026】
単セル10は、反応ガスとして、例えば、空気などの酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給マニホールド13と、酸化剤ガスを排出する酸化剤ガス排出マニホールド14とを有している。酸化剤ガス供給マニホールド13は、単セル10の左方の端部における下方の部分に設けられている。酸化剤ガス排出マニホールド14は、単セル10の右方の端部における上方の部分に設けられている。
【0027】
単セル10は、冷却水を供給する冷却水供給マニホールド15と、冷却水を排出する冷却水排出マニホールド16とを有している。冷却水供給マニホールド15は、単セル10の右方の端部における燃料ガス供給マニホールド11と酸化剤ガス排出マニホールド14との間に設けられている。冷却水排出マニホールド16は、単セル10の左方の端部における燃料ガス排出マニホールド12と酸化剤ガス供給マニホールド13との間に設けられている。
【0028】
マニホールド11~16の各々は、フレーム30と2つのセパレータ40とを厚さ方向において貫通している。
(発電部20)
図2に示すように、発電部20は、膜電極接合体21と、膜電極接合体21を挟持するアノード側ガス拡散層24及びカソード側ガス拡散層25とにより構成されている。
【0029】
膜電極接合体21は、湿潤状態で良好なプロトン伝導性を有する固体高分子材料からなる電解質膜22と、電解質膜22を挟持する2つの電極触媒層23とを備えている。電極触媒層23には、反応ガスの電気化学反応を促進するために、例えば白金などの触媒が担持されている。
【0030】
アノード側ガス拡散層24は、膜電極接合体21と第1セパレータ50との間に設けられている。カソード側ガス拡散層25は、膜電極接合体21と第2セパレータ60との間に設けられている。アノード側ガス拡散層24及びカソード側ガス拡散層25は、共に炭素繊維により形成されている。
【0031】
(フレーム30)
図1に示すように、フレーム30の中央部には、発電部20が配置される開口31が設けられている。フレーム30は、絶縁性を有する樹脂材料により形成されている。
【0032】
フレーム30のうち、燃料ガス供給マニホールド11と開口31との間の部分には、X軸方向に延びる複数の貫通孔32がY軸方向に互いに間隔をおいて設けられている。フレーム30のうち、燃料ガス排出マニホールド12と開口31との間の部分には、X軸方向に延びる複数の貫通孔33がY軸方向に互いに間隔をおいて設けられている。
【0033】
フレーム30のうち、酸化剤ガス供給マニホールド13と開口31との間の部分には、X軸方向に延びる複数の貫通孔34がY軸方向に互いに間隔をおいて設けられている。フレーム30のうち、酸化剤ガス排出マニホールド14と開口31との間の部分には、X軸方向に延びる複数の貫通孔35がY軸方向に互いに間隔をおいて設けられている。
【0034】
(セパレータ40)
図2に示すように、第1セパレータ50は、板状の基材70を備えている。第1セパレータ50は、X軸方向に延びる複数の突条51と、複数の第1ガス流路部52とを有している。第1ガス流路部52は、互いに隣り合う2つの突条51の間において突条51に沿って延びている。すなわち、第1セパレータ50には、突条51と第1ガス流路部52とがY軸方向に交互に並んで設けられている。
【0035】
突条51の各々は、アノード側ガス拡散層24に接触している。第1ガス流路部52とアノード側ガス拡散層24とで区画される部分には、燃料ガスが流通する燃料ガス流路が形成されている。
【0036】
図1に示すように、第1セパレータ50は、第1ガス流路部52にそれぞれ連なるとともに燃料ガスが流れる第2ガス流路部53A及び第2ガス流路部53Bを有している。第2ガス流路部53Aは、第1ガス流路部52から燃料ガス供給マニホールド11に向かって延びている。第2ガス流路部53Bは、第1ガス流路部52から燃料ガス排出マニホールド12に向かって延びている。第2ガス流路部53A,53Bは、第1ガス流路部52と同様に、互いに隣り合う2つの突条51の間において突条51に沿って延びている。なお、図1においては、便宜上、ガス流路部52,53A,53Bの数を省略して図示している。
【0037】
図2に示すように、第2セパレータ60は、板状の基材70を備えている。第2セパレータ60は、X軸方向に延びる複数の突条61と、複数の第1ガス流路部62とを有している。第1ガス流路部62は、互いに隣り合う2つの突条61の間において突条61に沿って延びている。すなわち、第2セパレータ60には、突条61と第1ガス流路部62とがY軸方向に交互に並んで設けられている。
【0038】
突条61の各々は、カソード側ガス拡散層25に接触している。第1ガス流路部62とカソード側ガス拡散層25とで区画される部分には、酸化剤ガスが流通する酸化剤ガス流路が形成されている。
【0039】
図1に示すように、第2セパレータ60は、第1ガス流路部62にそれぞれ連なるとともに酸化剤ガスが流れる第2ガス流路部63A及び第2ガス流路部63Bを有している。第2ガス流路部63Aは、第1ガス流路部62から酸化剤ガス供給マニホールド13に向かって延びている。第2ガス流路部63Bは、第1ガス流路部62から酸化剤ガス排出マニホールド14に向かって延びている。第2ガス流路部63A,63Bは、第1ガス流路部62と同様に、互いに隣り合う2つの突条61の間において突条61に沿って延びている。なお、図1においては、便宜上、ガス流路部62,63A,63Bの数を省略して図示している。
【0040】
図2に示すように、互いに隣り合う2つの単セル10において、一方の単セル10における第1セパレータ50の第1ガス流路部52と、他方の単セル10における第2セパレータ60の第1ガス流路部62とは接触している。同第1セパレータ50の突条51と、同第2セパレータ60の突条61とで区画される部分には、冷却水が流通する冷却水流路が形成されている。
【0041】
燃料電池においては、燃料ガスと酸化剤ガスとが発電部20において電気化学反応することにより発電が行われる。このとき、発電部20では、燃料ガスと酸化剤ガス、すなわち水素と酸素との電気化学反応により水(以下、生成水と称する)が生成される。こうした生成水は、第2セパレータ60の第1ガス流路部62に流入した後に、酸化剤ガスの圧力により第2ガス流路部63Bに移動する。
【0042】
図4に矢印にて示すように、生成水は、酸化剤ガスOGと共に、貫通孔35を通じてフレーム30と第1セパレータ50との間を流れることで、酸化剤ガス排出マニホールド14から排出される。
【0043】
第2セパレータ60は、酸化剤ガス排出マニホールド14に隣り合う隣接部64を有している。隣接部64は、第2ガス流路部63Bと酸化剤ガス排出マニホールド14との間に設けられている。
【0044】
図5に示すように、隣接部64は、基材70の厚さ方向において発電部20側に位置する第1表面64aと、厚さ方向において第1表面64aとは反対側に位置する第2表面64bとを有している。第1表面64aは、フレーム30のうち貫通孔35と酸化剤ガス排出マニホールド14との間の部分に接触している(図4参照)。
【0045】
隣接部64は、第1表面64aと第2表面64bとに連なる側面64cを有している。側面64cは、酸化剤ガス排出マニホールド14の内面を形成している。
(基材70)
図3に示すように、基材70は、導電性の第1炭素粒子71、及び樹脂材72を含んでいる。第1炭素粒子71としては、例えば、球状黒鉛などの天然黒鉛が挙げられる。樹脂材72としては、例えば、ポリプロピレン樹脂などの熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0046】
突条61の発電部20側に位置する表面、及び第1ガス流路部62の発電部20側に位置する表面には、発電部20における生成水を酸化剤ガス排出マニホールド14に向けて誘導する誘導層73が設けられている。突条61の表面に設けられた誘導層73と、第1ガス流路部62の表面に設けられた誘導層73とは連なっている。誘導層73は、親水性を有している。
【0047】
誘導層73は、導電性の第2炭素粒子74を含んでいる。第2炭素粒子74としては、例えば、球状黒鉛などの天然黒鉛が挙げられる。第1炭素粒子71と第2炭素粒子74とは、同種の炭素材であってもよいし、互いに異なる炭素材であってもよい。
【0048】
第2炭素粒子74は、樹脂材72を介して基材70に結合されるとともに、樹脂材72から露出している。第2炭素粒子74の平均粒子径は、第1炭素粒子71の平均粒子径よりも大きい。
【0049】
本明細書における「平均粒子径」とは、レーザ回折・散乱法などによって測定される体積基準の粒度分布における積算値が50%となるときの粒子径、すなわちメジアン径を指す。なお、各図においては、便宜上、第1炭素粒子71のうち、当該第1炭素粒子71のメジアン径を有する炭素粒子と、第2炭素粒子74のうち、当該第2炭素粒子74のメジアン径を有する炭素粒子とを図示している。
【0050】
図4に示すように、第2ガス流路部63Bの発電部20側に位置する表面には、誘導層73が設けられている。第1ガス流路部62の表面に設けられた誘導層73と、第2ガス流路部63Bの表面に設けられた誘導層73とは連なっている。
【0051】
図5に示すように、隣接部64の第1表面64a、第2表面64b、及び側面64cには、誘導層73がそれぞれ設けられている。第1表面64aに設けられた誘導層73と、側面64cに設けられた誘導層73とは連なっている。側面64cに設けられた誘導層73と、第2表面64bに設けられた誘導層73とは連なっている。また、第2ガス流路部63Bの表面に設けられた誘導層73と、第1表面64aに設けられた誘導層73とは連なっている。
【0052】
誘導層73は、例えば、基材70の表面に第2炭素粒子74を付着させた後に、プレス装置により基材70を加熱するとともに加圧することで形成される。これにより、第2炭素粒子74が樹脂材72を介して基材70に結合される。
【0053】
本実施形態の作用について説明する。
誘導層73では、第1炭素粒子71の平均粒子径よりも大きい平均粒子径を有する第2炭素粒子74が基材70の樹脂材72から露出している。このため、誘導層73の表面には、第2炭素粒子74によって微細な凹凸が形成される。この凹凸は、第1炭素粒子71によって形成される凹凸に比べて大きい。これにより、誘導層73の表面粗さが大きくなるため、誘導層73の表面においては、生成水に作用する毛管力が大きくなる。こうした誘導層73が酸化剤ガス排出マニホールド14に隣り合う隣接部64に設けられているため、誘導層73に到達した生成水が酸化剤ガス排出マニホールド14に向かって移動しやすくなる。
【0054】
本実施形態の効果について説明する。
(1)隣接部64の第1表面64aには、誘導層73が設けられている。
こうした構成によれば、上述した作用を奏することから、生成水が酸化剤ガス排出マニホールド14を通じて外部に排出されやすくなる。したがって、生成水の排出性を高めることができる。
【0055】
(2)隣接部64は、第2ガス流路部63Bと酸化剤ガス排出マニホールド14との間に設けられている。
隣接部64は、フレーム30に接触しているため、隣接部64とフレーム30との間には、酸化剤ガスがほとんど流れない。
【0056】
この場合であっても、生成水は、誘導層73の表面に形成された微細な凹凸と、フレーム30との隙間を伝って酸化剤ガス排出マニホールド14に向かって移動することができる。このため、生成水は、酸化剤ガスと共に第2ガス流路部63Bを通じて酸化剤ガス排出マニホールド14に向かうとともに、上記隙間を通じて酸化剤ガス排出マニホールド14に向かう。したがって、生成水の排出性を高めることができる。
【0057】
(3)第1ガス流路部62の表面に設けられた誘導層73と、第2ガス流路部63Bの表面に設けられた誘導層73と、隣接部64の表面に設けられた誘導層73とは連なっている。
【0058】
こうした構成によれば、第1ガス流路部62に存在する生成水が、第1ガス流路部62の表面、第2ガス流路部63Bの表面、及び隣接部64の表面にそれぞれ設けられた誘導層73を通じて、酸化剤ガス排出マニホールド14に向かって移動しやすくなる。これにより、生成水が早期に外部に排出されやすくなる。したがって、生成水の排出性をより一層高めることができる。
【0059】
(4)隣接部64の表面に設けられた誘導層73と、側面64cに設けられた誘導層73とは連なっている。
こうした構成によれば、誘導層73に到達した生成水は、酸化剤ガス排出マニホールド14の内部まで移動しやすくなる。ここで、燃料電池において、酸化剤ガス排出マニホールド14の内部を流れる酸化剤ガスの流量は、ガス流路部を流れる酸化剤ガスの流量よりも大きい。このため、生成水は、酸化剤ガス排出マニホールド14の内部に到達することで、酸化剤ガスによって誘導層73から吹き飛ばされやすくなる。したがって、生成水の排出性を一層高めることができる。
【0060】
(5)側面64cに設けられた誘導層73と、第2表面64bに設けられた誘導層73とは連なっている。
こうした構成によれば、誘導層73に到達した生成水は、側面64cに設けられた誘導層73を介して第2表面64bに向かって移動しやすくなる。これにより、生成水が、酸化剤ガス排出マニホールド14の内部におけるより広い範囲に移動しやすくなる。したがって、生成水の排出性をより一層高めることができる。
【0061】
<第2実施形態>
以下、図6図8を参照して、燃料電池用セパレータの第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0062】
各図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張又は簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率については実際と異なる場合がある。
図6に示すように、第2実施形態における第2セパレータ60の発電部20側に位置する表面には、誘導層73に代えて、発電部20における生成水を酸化剤ガス排出マニホールド14に向けて誘導する多数の微細な突起75が設けられている。
【0063】
突起75は、突条61の発電部20側に位置する表面、第1ガス流路部62の発電部20側に位置する表面、及び第2ガス流路部63Bの発電部20側に位置する表面に設けられている。
【0064】
図7に示すように、突起75の各々は、平面視において、突条61が延びる方向、すなわちX軸方向に長い長円状をなしている。複数の突起75は、X軸方向及びY軸方向に互いに所定の間隔をおいて設けられている。
【0065】
図8に示すように、突起75は、隣接部64の第1表面64a、第2表面64b、及び側面64cに設けられている。第1表面64aに設けられた突起75は、フレーム30に接触している。突起75の高さは、第1炭素粒子71の平均粒子径よりも大きい。
【0066】
突起75は、例えば、突起75を転写可能に構成された金型を用いて、基材70をプレス成形することにより形成されている。
本実施形態の作用について説明する。
【0067】
隣接部64の第1表面64aには、基材70を構成する第1炭素粒子71の平均粒子径よりも大きい高さを有する多数の微細な突起75が設けられている。これにより、隣接部64の表面粗さが大きくなるため、隣接部64の第1表面64aにおいては、生成水に作用する毛管力が大きくなる。このため、隣接部64に到達した生成水が酸化剤ガス排出マニホールド14に向かって移動しやすくなる。
【0068】
本実施形態の効果について説明する。
(6)隣接部64の第1表面64aには、発電部20における生成水を酸化剤ガス排出マニホールド14に向けて誘導する多数の微細な突起75が設けられている。突起75の高さは、第1炭素粒子71の平均粒子径よりも大きい。
【0069】
こうした構成によれば、上述した作用を奏することから、生成水が酸化剤ガス排出マニホールド14を通じて外部に排出されやすくなる。したがって、生成水の排出性を高めることができる。
【0070】
<変更例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0071】
・突起75の形状は、適宜変更可能である。突起75は、例えば、平面視において円形状をなすものであってもよいし、長方形状をなすものであってもよい。
・突起75の数や配置は、適宜変更可能である。例えば、酸化剤ガスの流れ方向における下流側ほど、第2セパレータ60の表面粗さが大きくなるように突起75の数や配置を変更してもよい。こうした構成によれば、下流側ほど生成水に作用する毛管力が大きくなるため、生成水が第2セパレータ60の表面に滞留することを抑制できる。
【0072】
図9に示すように、第1実施形態において、隣接部64の第2表面64bに設けられた誘導層73は省略することができる。すなわち、隣接部64における誘導層73は、第1表面64aと側面64cとにのみ設けられるものであってもよい。この場合であっても、上述した効果(4)を奏することができる。なお、図示は省略するが、第2実施形態の突起75についても同様の変更を実施することができる。すなわち、隣接部64における突起75は、第1表面64aと側面64cとにのみ設けられるものであってもよい。
【0073】
図10に示すように、第1実施形態において、隣接部64の第2表面64b及び側面64cに設けられた誘導層73は省略することができる。すなわち、隣接部64における誘導層73は、第1表面64aにのみ設けられるものであってもよい。この場合であっても、上述した効果(5)を奏することができる。なお、図示は省略するが、第2実施形態の突起75についても同様の変更を実施することができる。すなわち、隣接部64における突起75は、第1表面64aにのみ設けられるものであってもよい。
【0074】
・第1実施形態において、第1ガス流路部62の表面に設けられた誘導層73、及び第2ガス流路部63Bの表面に設けられた誘導層73の少なくとも一方は、省略することができる。
【0075】
・第2実施形態において、第1ガス流路部62の表面に設けられた突起75、及び第2ガス流路部63Bの表面に設けられた突起75の少なくとも一方は、省略することができる。
【0076】
・各実施形態において、隣接部64は、フレーム30に接触する部分であったが、隣接部64は、フレーム30に接触していなくてもよい。この場合、隣接部64は、第2ガス流路部63Bの一部であって、酸化剤ガス排出マニホールド14に隣り合う部分となる。すなわち、隣接部64は、酸化剤ガスが流れる流路として機能する。こうした構成によれば、酸化剤ガスは、貫通孔35を通じて、第1セパレータ50とフレーム30との間、及び隣接部64とフレーム30との間の双方を通じて酸化剤ガス排出マニホールド14に向かって流れる。この場合であっても、第1実施形態においては、隣接部64に誘導層73が設けられているため、上述した効果(1)を奏することができる。また、第2実施形態においては、隣接部64に突起75が設けられているため、上述した効果(6)を奏することができる。
【0077】
・誘導層73は、第2炭素粒子74に加えて、第2炭素粒子74の平均粒子径とは異なる平均粒子径の炭素粒子を有するものであってもよい。
・誘導層73における第2炭素粒子74の密度や、第2炭素粒子74の平均粒子径は、適宜変更可能である。例えば、酸化剤ガスの流れ方向における下流側ほど、第2セパレータ60の表面粗さが大きくなるように上記密度や平均粒子径を変更してもよい。こうした構成によれば、下流側ほど生成水に作用する毛管力が大きくなるため、生成水が第2セパレータ60の表面に滞留することを抑制できる。
【0078】
・第1実施形態において、第1セパレータ50に誘導層73を設けることもできる。
・第2実施形態において、第1セパレータ50に突起75を設けることもできる。
【符号の説明】
【0079】
11…燃料ガス供給マニホールド
12…燃料ガス排出マニホールド
13…酸化剤ガス供給マニホールド
14…酸化剤ガス排出マニホールド(排出マニホールド)
20…発電部
50…第1セパレータ
52…第1ガス流路部
53A…第2ガス流路部
53B…第2ガス流路部
60…第2セパレータ
62…第1ガス流路部
63A…第2ガス流路部
63B…第2ガス流路部
64…隣接部
64a…第1表面
64b…第2表面
64c…側面
70…基材
71…第1炭素粒子
72…樹脂材
73…誘導層
74…第2炭素粒子
75…突起
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10