(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】乗物用内装材の照明構造
(51)【国際特許分類】
B60Q 3/54 20170101AFI20240501BHJP
B60Q 3/217 20170101ALI20240501BHJP
B60Q 3/225 20170101ALI20240501BHJP
B60Q 3/233 20170101ALI20240501BHJP
B60Q 3/267 20170101ALI20240501BHJP
B60Q 3/66 20170101ALI20240501BHJP
【FI】
B60Q3/54
B60Q3/217
B60Q3/225
B60Q3/233
B60Q3/267
B60Q3/66
(21)【出願番号】P 2020171998
(22)【出願日】2020-10-12
【審査請求日】2023-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀 昭文
(72)【発明者】
【氏名】森島 愛
(72)【発明者】
【氏名】山田 孝政
【審査官】當間 庸裕
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第01110822(EP,A2)
【文献】特開2013-100100(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 3/00-3/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物用内装材における照明構造であって、
光源と、前記光源から出光される光を導光可能な長手状の導光体と、を備え、
前記導光体は、長手方向において屈曲される屈曲部を少なくとも一箇所備えるとともに、一端側から入射された前記光源からの光を内部で導光しつつ他端側へ導くものであって、その導光途上において乗物室内に向けて光を出射することで照明を提供するものであり、
前記乗物用内装材は、乗物に乗車した視認者に対して明るい照明を提供する部分である第1部分と、前記視認者に対して前記第1部分よりも暗い照明を提供する部分である第2部分とを備えており、
前記導光体は、前記一端側から前記他端側に向かう方向が、前記第1部分において、前記視認者の目に近づく方向となるように設置されるとともに、前記第2部分において、前記視認者の目から遠ざかる方向となるように設置され
、
前記視認者の視線の方向が、前記乗物における進行方向と同方向とされ、
前記乗物用内装材は、アームレストと、前記アームレストの下方に配されたポケットと、インサイドハンドルを収容するハンドル収容部と、を備え、
前記導光体は、前記第1部分である前記アームレストの上面に対して、前記乗物用内装材における前側から後側に向かって光が導光されるように延びた部分から出射される光によって照明を提供する一方、前記第2部分である前記アームレストの下面から前記ポケットの開口部にわたる部分、および前記ハンドル収容部に対して、前記乗物用内装材における後側から前側に向かって光が導光されるように延びた部分から出射される光によって照明を提供するものであり、
前記乗物用内装材は、上側に配されるアッパボードと、前記アッパボードよりも下側に配されるロアボードとを備え、
前記導光体は、
前記アッパボードに配される前記ハンドル収容部の上端に沿って延び、光を後側から前側に導光する部分Aから、前記ハンドル収容部に対して光を照射し、
前記部分Aから前記ハンドル収容部の前方まで延びた後、後方に向けて折り返され、前記アッパボードと前記ロアボードとの境界部に沿って後方に向けて延びるように配されて、光を前側から後側に導光する部分Bから、前記アームレストの上面に対して光を照射し、
前記部分Bから前記アッパボードおよび前記ロアボードの境界部の後端まで延びた後、前方に向けて折り返され、前記アームレストの下面に沿って前方に向けて延びるように配されて、光を後側から前側に導光する部分Cから、前記ポケットの開口部に対して光を照射する構成とされる、乗物用内装材の照明構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される技術は、乗物用内装材の照明構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両などの乗物の内装材に設けられる照明装置として、例えば、下記特許文献1に記載のものが知られている。特許文献1のものは、光源と、光源からの光を導光することで周囲を照明する円柱状の導光体とを備えている。このような照明装置は、乗物の内装材に取り付けられ、例えば、乗物室内を照らしたり、内装材の意匠性を高くしたりすることに用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した照明装置では、車両において複数箇所を照射したい場合には、それら複数箇所にそれぞれ光源および導光体が必要となり、コストが高くなるという問題がある。また、複数箇所において、それぞれ輝度を異ならせたい等の事情がある場合にも、複数の光源および導光体を用いなければならない。
【0005】
光源および導光体を増やさないためには、長尺な導光体を照射したい箇所に配策し、導光体の必要箇所にV溝加工やシボ加工を施して光源からの光を部分的に散乱させることで、光の見え方を制御することが考えられる。しかしそのような場合には、加工費や作業工数がかかるという問題がある。
【0006】
本明細書によって開示される技術は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、光源および導光体の数を増やすことなく、複数箇所を視認者に対して異なる視感度となるよう照明することが可能な乗物用内装材の照明構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書によって開示される技術は、乗物用内装材における照明構造であって、光源と、前記光源から出光される光を導光可能な長手状の導光体と、を備え、前記導光体は、長手方向において屈曲される屈曲部を少なくとも一箇所備えるとともに、一端側から入射された前記光源からの光を内部で導光しつつ他端側へ導くものであって、その導光途上において乗物室内に向けて光を出射することで照明を提供するものであり、前記乗物用内装材は、乗物に乗車した視認者に対して明るい照明を提供する部分である第1部分と、前記視認者に対して前記第1部分よりも暗い照明を提供する部分である第2部分とを備えており、前記導光体は、前記一端側から前記他端側に向かう方向が、前記第1部分において、前記視認者の目に近づく方向となるように設置されるとともに、前記第2部分において、前記視認者の目から遠ざかる方向となるように設置されている。
【0008】
一端側から入射された光源からの光を内部で導光しつつ、その導光途上において光を出射する導光体においては、導光体中を進行する光の向きと、導光体から出射された光を見る視認者の視線の方向とによって、視認者による光の見え方に違いが生じる。具体的には、光の進行方向が視認者の目に近づく方向となるように光源および導光体が配されている場合には、発せられる光は視認者にとって視感度が高くなる(明るく見える)一方、光の進行方向が視認者の目から離れる方向となるように光源および導光体が配されている場合には、発せられる光は視認者にとって視感度が低くなる(暗く見える)という事象が認められる。
【0009】
本明細書に開示される技術は、このような事象を利用したものであって、上記構成によれば、輝度の異なる複数の光源および導光体を用いなくても、導光体を、一端側から他端側に向かう方向(光の進行方向)が、第1部分において視認者の目に近づく方向となるように設置することにより、視認者に対して明るく照明し、第2部分において視認者の目から遠ざかる方向となるように設置することにより、視認者に対して第1部分よりも暗く照明することができる。すなわち、乗物用内装材における複数箇所を、視認者に対して異なる視感度となるよう照明することが可能となる。
【0010】
上記構成において、導光体は、一端側から他端側に向かう方向が、第1部分において、乗物用内装材における前側から後側に向かう方向となるように設置されるとともに、第2部分において、後側から前側に向かう方向となるように設置されていてもよい。
【0011】
また、上記構成において、視認者の視線の方向は、乗物における進行方向と同方向であってもよい。
【0012】
また、上記構成において、乗物用内装材は、アームレストと、アームレストの下方に配されたポケットと、インサイドハンドルを収容するハンドル収容部と、を備え、第1部分は、アームレストの上面を含み、第2部分は、アームレストの下面からポケットの開口部にわたる部分、および、ハンドル収容部を含んでいてもよい。
【0013】
上記構成によれば、視認者に対してアームレストの上面が明るく照明され、ポケットおよびハンドル収容部が、アームレストの上面と比較して、暗く照明される。
【発明の効果】
【0014】
本明細書によって開示される技術によれば、光源および導光体を増やすことなく、複数箇所を視認者に対して異なる視感度となるよう照明することが可能な乗物用内装材の照明構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】一実施形態に係る照明構造を有するドアトリムを車室内側から視た正面図
【
図3】ドアパネルに対する配索状態を示す照明装置の正面図
【
図4】ドアトリムの一部断面図(
図2のI-I線で切断した図)
【
図5】視認者の視線の方向および導光体中の光の進行方向による出射光の見え方の違いを概念的に示した図
【発明を実施するための形態】
【0016】
一実施形態を、
図1から
図5を参照しつつ説明する。本実施形態では、自動車等の車両用のドアトリム10(乗物用内装材の一例)における、照明装置30による照明構造ついて例示する。なお、各図において、FR及びRRの矢印は車両前方及び車両後方をそれぞれ示し、UP及びDWの矢印は車両上方及び車両下方をそれぞれ示し、IN及びOUTの矢印は車室内(乗物室内)側及び車室外(乗物室外)側をそれぞれ示す。
【0017】
図1は、ドアトリム10を車室内側から視た正面図、
図2は、ドアトリム10の背面図である。ドアトリム10は、車両用ドアの車室内側部分を構成するものであって、ドアインナパネル(図示せず)に対して、車室内側から取り付けられる。ドアトリム10は、トリムボード11を主体として構成されており、複数の部品が互いに組み付けられたものからなる。本実施形態のトリムボード11は、主として、アッパボード12、ロアボード13、アームレストボード14およびポケットボード15によって構成されている。
【0018】
トリムボード11の上下方向における略中央かつ車両後方寄りには、ロアボード13の上方寄りにアームレストボード14が締結されることによって、乗員の肘掛けとして使用されるアームレスト16が車室内側に張り出す形で形成されている。このアームレスト16の上面16Aは、略水平方向に沿って延びている。上面16Aの前方寄りには、上方へ開口するアームレスト開口部(図示せず)が形成されており、このアームレスト開口部には、ドアウインドウを開閉操作するためのスイッチ操作部(図示せず)が設けられている。
【0019】
アームレスト16の前方側には、ドアグリップ18が延設されている。ドアグリップ18は、略水平とされたアームレスト16の上面16Aの前側部分から斜め上方に向けて傾斜するように設けられている。ドアグリップ18は、乗員が把持し易いように、ロアボード13の板面(車室内側の面)から離間しており、その前端部においてロアボード13と一体とされることでトリムボード11に対して固定されている。
【0020】
アッパボード12のうち、スイッチ操作部の上方であって、ロアボード13との接合部付近には、ハンドル収容部20が設けられている、ハンドル収容部20は、アッパボード12に設けられたハンドル開口部12Aに、インサイドハンドルベゼル21を車室内側から取り付けることにより構成されている。
図4は
図2のI-I断面図であって、同図に示すように、インサイドハンドルベゼル21は、奥壁22と、奥壁22の周縁部から車室内側に向けて立ち上がる立壁23と、立壁23の端縁部から径方向の外側に向けて延設されたフランジ部24とを有している。インサイドハンドルベゼル21は、フランジ部24がアッパボード12のハンドル開口部12Aの周縁部に車室内側から重畳するように取り付けられることで、アッパボード12の車室内面から車室外側に向けて窪んだ状態のハンドル収容部20を構成している。ハンドル収容部20の内部には、車両用ドアの開閉操作を行うためのインサイドハンドル(図示せず)が収容される。
【0021】
また、アームレスト16およびドアグリップ18の下方には、ドアポケット27が形成されている。ドアポケット27は、ポケットボード15がロアボード13の車室外側の下方側に取り付けられることによって形成されている。ドアポケット27は、車両上方に向けて開口するポケット開口部27Aを有しており、内部に物品等を収容可能な構成とされている。ポケット開口部27Aは、車両前後方向に長い形状を有している。ドアポケット27は、アームレスト16およびドアグリップ18の下方において、アームレスト16およびドアグリップ18の下端から離間して位置している。
【0022】
上述したアッパボード12とロアボード13とは、ロアボード13の上縁から上方に張り出した複数の取付片13Bをアッパボード12の車室外側に重ね合わせ、アッパボード12に固定することで、締結されている(
図2参照)。詳細については、後述する。
【0023】
本実施形態のドアトリム10には、照明装置30が設けられている。照明装置30は、LED(光源の一例)31と、LED31から出射された光を導光可能な導光体33と、を有して構成されている(
図5参照)。LED31は、LED基板に実装された状態でLED収容ケース32に収容されている。また、LED31は、図示しない制御装置を介して、車両に搭載されたバッテリ等の電源装置に接続されている。
【0024】
導光体33は、断面が略円形に形成され、可撓性を有する長尺状(棒状)の導光材料により構成されている。導光材料とは、屈折率が空気よりも十分に高く、光を透過させる材料のことであって、例えばアクリル系樹脂等が挙げられる。
【0025】
導光体33は、長手方向における一端(以下、33Aとする)側の端面がLED31の発光面と対向して配された状態で、LED収容ケース32に取り付けられている。これにより、この一端33A側の端面は、LED31から出射された光が入射される光入射面とされる。導光体33は、内部を進行する光が臨界角より大きい入射角で外部の空気層との界面に入射すると、全反射しつつ、内部を伝播する構成となっている。つまり、その内部において光を他端(以下、33Bとする)側へ導光可能な構成のものである(
図5参照)。
【0026】
導光体33の外周面(側面)は、例えば、フッ素系樹脂を被覆するなどの処理がなされており、導光体33の内部に導入された光を外部に向かって放出させる構成とされている。つまり、導光体33の一端33A(光入射面)側から入射された光は、導光体33内部で全反射を繰り返すことで導光されつつ、一部が導光途中において外周面の全面から出射されることが可能となっている。これにより、導光体33全体が線状光源となり、その周囲を照らすことが可能となっている。このように、導光体33の外周面は、一端33A(光入射面)側から導光体33内部に入射された光を外部に出射させる光出射面とされる。
【0027】
ところで、このような照明装置30においては、導光体33内において導光される光の進行方向と、導光体33から出射される光を視認する視認者の視線の方向とにより、視認者による光の見え方(視感度)が変化するという事象が認められる。具体的には、
図5を参照して説明すると、LED31から発せられ、導光体33内において導光される光の進行方向が、視認者の目に向かう方向となるように導光体33が配されている場合(
図5におけるAの位置から出射光を視認する場合)には、光の進行方向が視認者の目から離れる方向となるように導光体が配されている場合(
図5におけるBの位置から出射光を視認する場合)と比較して、出射光がより明るく見えるという事象が認められる。
【0028】
さて、本実施形態のドアトリム10においては、上述したハンドル収容部20と、アームレスト16の上面16Aと、ポケット開口部27Aとを、車両に乗車した視認者に対して照明装置30により明るく照射したいという要望がある。また、これらのうち、アームレスト16の上面16Aは、スイッチ操作部が設けられているため、最も明るくしたい部分(以下、明るい照明を提供したい部分を第1部分11Bとする)であり、ハンドル収容部20およびポケット開口部27Aは、アームレスト16の上面16Aと比較して暗くてよい部分(以下、第1部分11Bより暗くてよい部分を第2部分11Dとする)である。
【0029】
そこで、本実施形態の照明装置30は、トリムボード11に対して以下のように設置されている。
図2に示すように、照明装置30のLED収容ケース32(すなわちLED31)は、ハンドル収容部20のインサイドハンドルベゼル21の奥壁22における後方側の上方角部付近の車室外側に設置されている。そしてLED収容ケース32から引き出された導光体33は、インサイドハンドルベゼル21の立壁23のうち上方に位置する立壁23Aの上面に沿って、前方に向けて延びるように設置されている(以下、LED収容ケース32から前方に延びる部分を、第1配策部34とする)。インサイドハンドルベゼル21の立壁23Aには、
図4に示すように、前後方向に延びるスリット25が設けられており、導光体33(第1配策部34)は、このスリット25から車室内(ハンドル収容部20内)に臨むように図示しない固定部材によって設置されている。そして、導光体33(第1配策部34)から出射された光は、このスリット25を介して、ハンドル収容部20の内側に向けて光を照射するようになっている。
【0030】
この場合、視認者はハンドル収容部20よりも車両前後方向における後方に着座するため、その視線Lは前方、すなわち、車両の進行方向に向かう(
図1参照)。一方、第1配策部34において導光体33の内部を進行する光は、後方から前方に向かう。すなわち、光の進行方向は、視認者の視線Lの方向と概ね同方向とされる。換言すると、第1配策部34における光の進行方向は、視認者の目から離れる方向とされる。従って、スリット25からハンドル収容部20内に照射される光は、視認者にとって視感度が低いものとされる。
【0031】
導光体33は、
図2に示すように、ハンドル収容部20の前方まで延びた後、後方に向けて第1折返部(屈曲部の一例)35により折り返され、アッパボード12とロアボード13との境界部に沿って後方に向けて延びるように設置されている(以下、第1折返部35から後方に向けて延びる部分を、第2配策部36とする)。
【0032】
上述したように、アッパボード12とロアボード13とは、ロアボード13の本体部13Aの上縁から上方に張り出した複数の取付片13Bをアッパボード12の車室外側に重ね合わせ、アッパボード12に固定することで、締結されている。詳細には、アッパボード12とロアボード13とは、アッパボード12の車室外側の面に立設された取付用ボスをロアボード13の取付片13Bに形成された貫通孔に挿通し、ビス締めや熱カシメ等の締結手段を利用して互いに固定する構造をなしている(
図2参照)。このうち、取付片13Bの本体部13Aからの延出基端部には、本体部13Aの縁部に沿う方向に延びるとともに車室外側に窪む溝状の凹部13Cが形成されており、この凹部13Cの内側に、導光体33が収容可能とされている。また、アッパボード12とロアボード13とが組み付けられた状態において、アッパボード12の下端縁とロアボード13の本体部13Aの上端縁との間には、スリット状の開口17が形成されるようになっている(
図1参照)。
【0033】
アッパボード12とロアボード13との境界部に沿うように配策された導光体33の第2配策部36は、取付片13Bの凹部13C内に収容され、開口17から車室内に臨むように設置されている。そして、開口17から車室内に向けて照射された光の一部により、アームレスト16の上面16Aが照射されるようになっている。
【0034】
この場合も、視認者の視線Lは前方に向かう(
図1参照)。また、開口17から照射される光は、導光体33内を前方から後方に向かって進行している光が出射されたものである。すなわち、光の進行方向は、視認者の視線Lの方向と反対方向とされる。換言すると、導光体33の第2配策部36における光の進行方向は、視認者の目に近づく方向とされる。従って、開口17から照射される光(第2配策部36から出射される光)の視感度は、ハンドル収容部20内に照射される光(第1配策部34から出射される光)の視感度と比較して、視認者にとって高い(明るい)ものとされる。
【0035】
導光体33は、アッパボード12およびロアボード13の境界部の後端まで延びた後、前方に向けて第2折返部37(屈曲部の一例)により折り返され、アームレスト16の下面に沿って前方に向けて延びるように設置されている。さらに、アームレスト16の前端からドアグリップ18の下面に沿って前方に向けて延びるように設置されている(以下、第2折返部37から前方に延びる部分全体を、第3配策部38とする)。上述したように、ドアグリップ18はロアボード13から車室内側に離間して張り出すように設けられているため、第3配策部38の前方部分は、ロアボード13の背面から車室内側に引き出され、筒状とされたドアグリップ18の内面(意匠面とは反対側の面)に設置されている。
【0036】
アームレスト16の下面およびドアグリップ18の下面には、スリット状の開口19が連続して設けられている。第2折返部37により折り返された導光体33(第3配策部38)は、開口19から車室内に臨むように配索されており、開口19から車室内(下方)に向けて照射される光の一部により、ドアポケット27のポケット開口部27Aが照射されるようになっている。
【0037】
この場合も、視認者の視線Lは前方に向かう(
図1参照)。また、開口19から車室内に向けて照射される光は、導光体33内を後方から前方に向かって進行している光が出射されたものである。すなわち、光の進行方向は、視認者の視線Lの方向と同方向とされる。換言すると、第3配策部38における光の進行方向は、視認者の目から離れる方向とされる。従って、開口19から照射される光(第3配策部38から出射される光)の視感度は、開口17からアームレスト16の上面16Aに照射される光(第2配策部36から出射される光)の視感度と比較して、視認者にとって低い(暗い)ものとされる。
【0038】
導光体33は、ドアグリップ18の前端まで延びた後、トリムボード11(ロアボード13)の背面(車室外側の面)に再び引き込まれるとともに、後方に向けて第3折返部39により折り返され、他部品との干渉を回避しつつロアボード13の背面に固定されている。
【0039】
このように、本実施形態の照明構造は、視認者に対して明るい照明を提供したい第1部分11B(アームレスト16の上面16A)においては、導光体33内を進行する光の進行方向が、視認者の目に近づく方向となるように導光体33を設置するとともに、視認者に対して第1部分11Bよりも暗くてよい第2部分11D(ハンドル収容部20およびポケット開口部27A)においては、導光体33内を進行する光の進行方向が、視認者の目から離れる方向となるように、照明装置30(LED31および導光体33)を設置したものである。
【0040】
次に、作用効果について説明する。本実施形態のドアトリム10における照明構造は、LED31と、LED31から出光される光を導光可能な長手状の導光体33と、を備え、導光体33は、長手方向において屈曲される第1折返部35および第2折返部37を備えるとともに、一端33A側から入射されたLED31からの光を内部で導光しつつ他端33B側へ導くものであって、その導光途上において車室内に向けて光を出射することで照明を提供するものであり、ドアトリム10は、車両に乗車した視認者に対して明るい照明を提供する部分である第1部分11Bと、視認者に対して第1部分11Bよりも暗い照明を提供する部分である第2部分11Dとを備えており、導光体33は、一端33A側から他端33B側に向かう方向が、第1部分11Bにおいて、視認者の目に近づく方向となるように設置されるとともに、第2部分11Dにおいて、視認者の目から遠ざかる方向となるように設置されている。
【0041】
このような構成によれば、輝度の異なる複数の光源および導光体を用いなくても、導光体33を、一端33A側から他端33B側に向かう方向(光の進行方向)が、第1部分11Bにおいて視認者の目に近づく方向となるように設置することにより、視認者に対して明るく照明し、第2部分11Dにおいて視認者の目から遠ざかる方向となるように設置することにより、視認者に対して第1部分11Bよりも暗く照明することができる。すなわち、ドアトリム10における複数箇所を、視認者に対して異なる視感度となるよう照明することが可能となる。
【0042】
上記構成において、導光体33は、一端33A側から他端33B側に向かう方向が、第1部分11Bにおいて、ドアトリム10における前側から後側に向かう方向となるように設置されるとともに、第2部分11Dにおいて、後側から前側に向かう方向となるように設置されている。
【0043】
また、上記構成において、視認者の視線Lの方向は、車両における進行方向と同方向とされている。
【0044】
また、上記構成において、ドアトリム10は、アームレスト16と、アームレスト16の下方に配されたドアポケット27と、インサイドハンドルを収容するハンドル収容部20と、を備え、第1部分11Bは、アームレスト16の上面16Aを含み、第2部分11Dは、アームレスト16の下面からドアポケット27のポケット開口部27Aにわたる部分、および、ハンドル収容部20を含んでいる。
【0045】
このような構成によれば、視認者に対してアームレスト16の上面16Aが明るく照明され、ドアポケット27およびハンドル収容部20が、アームレスト16の上面16Aと比較して、暗く照明される。
【0046】
<他の実施形態>
本明細書に開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば、次のような実施形態も技術的範囲に含まれる。
【0047】
(1)上記実施形態以外にも、導光体及び光源の形状、配置、構成は適宜変更可能である。例えば、導光体の折返部は1箇所や3箇所以上でもよく、導光体の配策形態も上記実施形態に限るものではない。また、導光体は、水平方向だけでなく、上下方向に配策する形態としてもよい。その場合も、光の進行方向が視認者の目に近づく方向に配策されるか、あるいは、視認者の目から離れる方向に配策されるかで、視認者にとっての視感度が異なるものとされる。さらに、光源を導光体の下端に配置することもできる。
【0048】
(2)上記実施形態では、アッパボード12の下端縁とロアボード13の上端縁との間に、細長いスリット状の開口17が形成される構成を示したが、トリムボードが分割構成されず、一体部品として成形されるものであってもよく、その場合、スリット状の開口は、トリムボードの一部に穿設した孔部とすることができる。
【0049】
(3)上記実施形態では、導光体33を折り返した状態の折返部35,37を設ける構成を示したが、導光体を複数回L字形状に屈曲させた屈曲部を設ける構成とすることもできる。
【0050】
(4)上記実施形態では、照明装置30により、主に乗員にとっての操作部を照射する構成するものを例示したが、これに限られない。例えば、照明装置は、乗物室内を加飾用のイルミネーションとして照射するものであってもよい。
【0051】
(5)上記実施形態では、乗物用内装材の照明構造として車両用のドアトリム10に設けられる照明装置30を例示したが、ドアトリム以外にも、例えば、天井やコンソール、インパネ等にも本発明の技術を適用することができる。また、本発明の技術は、車両以外の航空機等の乗物用内装材の照明構造に適用することもできる。
【符号の説明】
【0052】
10:ドアトリム(乗物用内装材)、11:トリムボード、11B:第1部分、11D:第2部分、16:アームレスト、16A:上面、17,19:開口、20:ハンドル収容部、25:スリット、27:ドアポケット(ポケット)、27A:ポケット開口部、30:照明装置、31:LED(光源)、33:導光体、33A:一端、33B:他端、34:第1配策部、35:第1折返部(屈曲部)、36:第2配策部、37:第2折返部(屈曲部)、38:第3配策部、L:視線