(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】鞍乗型車両の車体構造
(51)【国際特許分類】
B62J 9/14 20200101AFI20240501BHJP
B62J 1/12 20060101ALI20240501BHJP
B62J 11/00 20200101ALI20240501BHJP
B62J 23/00 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
B62J9/14
B62J1/12 B
B62J11/00
B62J23/00 F
B62J23/00 G
(21)【出願番号】P 2020174564
(22)【出願日】2020-10-16
【審査請求日】2023-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139365
【氏名又は名称】中嶋 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【氏名又は名称】溝口 勉
(72)【発明者】
【氏名】八木 敏昭
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-88649(JP,A)
【文献】特開2016-107795(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0105240(US,A1)
【文献】中国実用新案第201769983(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 9/14
B62J 1/12
B62J 11/00
B62J 23/00
B62J 43/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを支持する左右一対のシートレールの内側にバッテリの収容スペースが形成された鞍乗型車両の車体構造であって、
前記左右一対のシートレールを接続したシートレールブリッジと、
前記左右一対のシートレールを側方から覆う左右一対のフレームカバーと、
前記収容スペースに配置された前記バッテリを上方から覆うバッテリカバーと、
前記左右一対のフレームカバーが取り付けられるフレームカバーブラケットと、を備え、
前記バッテリカバーと前記フレームカバーブラケットが前記シートレールブリッジに取り付けられていることを特徴とする鞍乗型車両の車体構造。
【請求項2】
前記バッテリカバーと前記フレームカバーブラケットが上下に重なり、同一の締結部材によって前記シートレールブリッジに取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の鞍乗型車両の車体構造。
【請求項3】
前記フレームカバーブラケットが前記シートレールブリッジに沿って延びており、
前記フレームカバーブラケットには、前記シートレールブリッジに取り付けられるブリッジ取付部と、前記左右一対のフレームカバーが取り付けられる一対のカバー取付部と、が形成され、
前記ブリッジ取付部よりも車幅方向の外側に前記一対のカバー取付部が位置付けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の鞍乗型車両の車体構造。
【請求項4】
前記フレームカバーブラケットには、前記シートが取り付けられるシート取付部が形成され、
前記ブリッジ取付部は車幅方向に離間した一対のブリッジ取付部であり、
前記一対のブリッジ取付部の間に前記シート取付部が位置付けられていることを特徴とする請求項3に記載の鞍乗型車両の車体構造。
【請求項5】
前記フレームカバーブラケットには、前記一対のカバー取付部と前記一対のブリッジ取付部と前記シート取付部が同一直線上に並んでいることを特徴とする請求項4に記載の鞍乗型車両の車体構造。
【請求項6】
前記シートはフロントシート及びリアシートを有しており、
前記シート取付部にはクッションが取り付けられており、
前記クッションには、前記フロントシートの後端側が取り付けられる取付面と、前記リアシートの前端側を下方から支持する支持面と、が形成されていることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の鞍乗型車両の車体構造。
【請求項7】
前記シートレールブリッジの外周面には、当該外周面から突き出すようにカシメナットが取り付けられており、
前記バッテリカバーには、前記シートレールブリッジの外周面から突き出した前記カシメナットを受け入れる位置決め部が形成され、
前記バッテリカバーが前記カシメナットと前記フレームカバーブラケットに挟み込まれることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の鞍乗型車両の車体構造。
【請求項8】
前記シートレールブリッジは円筒状に形成され、
前記シートレールブリッジの外周面には、前記バッテリカバーが取り付けられる平面部が形成されており、
前記バッテリカバーの上面が前記左右一対のシートレールの上面と同じ高さ又は前記左右一対のシートレールの上面よりも低くなるように、前記シートレールブリッジの外周面を凹ませて前記平面部が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の鞍乗型車両の車体構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗型車両の車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
鞍乗型車両のシートは左右一対のシートレールに支持されており、この一対のシートレールの内側に各種電装部品が収容されている。一対のシートレールには箱型のバッテリホルダが支持されており、バッテリホルダには電装部品としてバッテリが保持されている。バッテリホルダの上面は開口しており、バッテリホルダの開口からバッテリが露出している。この種の鞍乗型車両の車体構造として、バッテリカバーによってバッテリホルダの開口を覆うことで、異物や衝撃等からバッテリを保護するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一対のシートレールの内側にはバッテリ等の電装部品の他にも、マニュアル等の様々な物品が収容されるため、一対のシートレールの内側の収容スペースを広く確保する必要がある。しかしながら、一対のシートレールの内側にバッテリカバーが取り付けられると、バッテリカバーの着脱のために他部材との隙間を確保しなければならず、一対のシートレールの内側の収容スペースが狭くなる。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、バッテリカバーを設けても、一対のシートレールの内側の収容スペースを有効に活用することができる鞍乗型車両の車体構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の鞍乗型車両の車体構造は、シートを支持する左右一対のシートレールの内側にバッテリの収容スペースが形成された鞍乗型車両の車体構造であって、前記左右一対のシートレールを接続したシートレールブリッジと、前記左右一対のシートレールを側方から覆う左右一対のフレームカバーと、前記収容スペースに配置された前記バッテリを上方から覆うバッテリカバーと、前記左右一対のフレームカバーが取り付けられるフレームカバーブラケットと、を備え、前記バッテリカバーと前記フレームカバーブラケットが前記シートレールブリッジに取り付けられていることで上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様の鞍乗型車両の車体構造によれば、バッテリカバーとフレームカバーブラケットの取付箇所がシートレールブリッジに集約される。バッテリカバーの取付箇所及びフレームカバーブラケットの取付箇所が分散しないため、バッテリ保護のためにバッテリカバーがシートレールブリッジに取り付けられても、左右一対のシートレールの内側に収容スペースが広く確保される。よって、収容スペースを有効に活用して、バッテリ以外の電装部品や物品のレイアウト性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】本実施例のシート周辺の車両後部の上面図である。
【
図3】
図2からリアシートを取り外した車両後部の上面図である。
【
図4】本実施例のシートを取り外した車両後部の斜視図である。
【
図5】
図3からフロントシートとフレームカバーを取り外した車両後部の上面図である。
【
図6】
図5からバッテリカバーを外した車両後部の上面図である。
【
図7】本実施例のシートブラケットの取付状態を示す斜視図である。
【
図8】本実施例のバッテリカバーの取付状態を示す断面図である。
【
図9】本実施例のシートの取付状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一態様の鞍乗型車両の車体構造は、シートを支持する左右一対のシートレールの内側にバッテリの収容スペースが形成されている。シートレールブリッジによって左右一対のシートレールが接続され、左右一対のフレームカバーによって左右一対のシートレールが側方から覆われている。収容スペースにはバッテリが配置され、バッテリカバーによってバッテリが上方から覆われている。左右一対のフレームカバーがフレームカバーブラケットに取り付けられている。バッテリカバーとフレームカバーブラケットがシートレールブリッジに取り付けられ、バッテリカバーとフレームカバーブラケットの取付箇所がシートレールブリッジに集約される。バッテリカバーの取付箇所及びフレームカバーブラケットの取付箇所が分散しないため、バッテリ保護のためにバッテリカバーがシートレールブリッジに取り付けられても、左右一対のシートレールの内側に収容スペースが広く確保される。よって、収容スペースを有効に活用して、バッテリ以外の電装部品や物品のレイアウト性を向上することができる。
【実施例】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本実施例の車体構造が適用された鞍乗型車両について詳細に説明する。
図1は、本実施例の鞍乗型車両の左側面図である。また、以下の図では、矢印FRは車両前方、矢印REは車両後方、矢印Lは車両左方、矢印Rは車両右方をそれぞれ示している。
【0011】
図1に示すように、鞍乗型車両1は、アルミ鋳造によって形成されるツインスパー型の車体フレーム10に、エンジン16や電装系等の各種部品を搭載して構成されている。車体フレーム10はヘッドパイプ(不図示)から左右に分岐して後方に延びる一対のメインフレーム11と、ヘッドパイプから左右に分岐して下方に延びる一対のダウンフレーム(不図示)とを有している。一対のメインフレーム11によってエンジン16の後部が支持され、一対のダウンフレームによってエンジン16の前部が支持されている。エンジン16が車体フレーム10に支持されることで、車両全体の剛性が確保されている。
【0012】
メインフレーム11の前側部分はエンジン16の上方に位置するタンクレール12になっており、タンクレール12によって燃料タンク17が支持されている。メインフレーム11の後側部分はエンジン16の後方に位置するボディフレーム13になっており、ボディフレーム13の上下方向の略中間位置にスイングアーム18が揺動可能に支持されている。ボディフレーム13の上部からは左右一対のシートレール14、15が後方に向かって延びている。上側のシートレール14には、運転者用のフロントシート21及び同乗者用のリアシート22が支持されている。
【0013】
ヘッドパイプには、ステアリングシャフト(不図示)を介して一対のフロントフォーク23が操舵可能に支持されている。フロントフォーク23の下部には前輪25が回転可能に支持されている。スイングアーム18はボディフレーム13から後方に向かって延びている。スイングアーム18の後端には後輪28が回転可能に支持され、後輪28の上方はリアフェンダ29に覆われている。後輪28にはチェーンドライブ式の変速機構を介してエンジン16が連結されており、変速機構を介してエンジン16からの動力が後輪28に伝達されている。
【0014】
車体フレーム10の前側はフロントカウル31に覆われており、フロントカウル31の後方かつエンジン16の前方は一対のサイドカバー32に覆われている。一対のシートレール14、15の側方かつリアシート22の下方は一対のフレームカバー33に覆われ、一対のシートレール14、15の下方はロアカバー34に覆われている。一対のシートレール14、15の後端部はリアカバー35に覆われ、リアカバー35の下側にはリアフェンダ29が取り付けられている。上側のシートレール14には、リアシート22に跨った同乗者が把持するためのグラブバー(不図示)が支持されている。
【0015】
このような鞍乗型車両1では、車両中心付近のフロントシート21の下方に重量物であるバッテリ68(
図6参照)を配置することが望まれている。一対のシートレール14の内側にはバッテリ68の収容スペースが形成されている。この収容スペースにはバッテリ68以外にも様々な電装部品やマニュアル等の物品が収容されるため、収容スペースを広く確保しなければならない。バッテリ保護のために収容スペースにバッテリカバー61(
図5参照)が設けられると、バッテリカバー61の着脱によって他部材との隙間が必要になって収容スペースを広く確保することが難しい。
【0016】
そこで、本実施例の鞍乗型車両1の車体構造では、一対のシートレール14を接続するシートレールブリッジ43(
図5参照)に、バッテリカバー61の取付箇所の他にも、様々な部材の取付箇所が集約されている。部材毎に取付箇所が不要になるため、鞍乗型車両1がシンプルな車体構造になって、一対のシートレール14の内側に電装部品や物品等の収容スペースが広く確保される。このとき、フロントシート21の下方に配置された収容品の高さが抑えられて、フロントシート21に収容品が干渉することがないため、フロントシート21に平坦な座面が前後方向に広く確保される。
【0017】
以下、
図2から
図6を参照して、鞍乗型車両の車体構造について説明する。
図2は、本実施例のシート周辺の車両後部の上面図である。
図3は、
図2からリアシートを取り外した車両後部の上面図である。
図4は、本実施例のシートを取り外した車両後部の斜視図である。
図5は、
図3からフロントシートとフレームカバーを取り外した車両後部の上面図である。
図6は、
図5からバッテリカバーを外した車両後部の上面図である。
【0018】
図2に示すように、鞍乗型車両1の車両後部には、フロントシート21とリアシート22が前後に並んで設けられている。前側のフロントシート21の後端部は車幅方向内側に向かって前方に凹んでおり、後側のリアシート22の前端部は車幅方向内側に向かって前方に膨らんでいる。このフロントシート21の後端部の凹みに、リアシート22の前端部の膨らみが入り込み、車両上面視にてフロントシート21とリアシート22が隙間なく連なっている。リアシート22の左右側方には一対のフレームカバー33が設けられ、リアシート22の後方にはリアカバー35が設けられている。
【0019】
図3に示すように、鞍乗型車両1の車両後部からリアシート22(
図2参照)が取り外されると、一対のフレームカバー33の内側が上方に露出される。一対のフレームカバー33によって一対のシートレール14の後半部が側方から覆われている。一対のシートレール14の後半部に板状のリアシートブラケット41、42が取り付けられ、リアシートブラケット41、42によって一対のシートレール14が連結されている。リアシートブラケット41の前方で一対のシートレール14に円筒状のシートレールブリッジ43が接合されており、シートレールブリッジ43によって一対のシートレール14が接続されている。
【0020】
シートレールブリッジ43にはフレームカバーブラケット51を介して一対のフレームカバー33が取り付けられている。フレームカバーブラケット51の車幅方向の中央には、フロントシート21のシートプレート47が筒状のクッション81を介して取り付けられている。このクッション81の上面によってリアシート22(
図2参照)の前端部が下方から支持され、リアカバー35によってリアシート22の後端部が下方から支持される。リアシート22がクッション81及びリアカバー35に支持された状態で、リアシート22がボルト(不図示)によってリアシートブラケット41、42に固定される。
【0021】
図4及び
図5に示すように、鞍乗型車両1の車両後部からフロントシート21(
図3参照)が取り外されると、一対のシートレール14、15の内側でバッテリ68を保護するバッテリカバー61が上方に露出される。バッテリカバー61の左右側方において、一対のシートレール14の内側面にはレールブラケット71が接合されている。一対のレールブラケット71はシートレール14に沿って延びている。一対のレールブラケット71の前端部には長板状のフロントシートブラケット72が取り付けられ、フロントシートブラケット72によって一対のシートレール14が連結されている。
【0022】
フロントシートブラケット72には一対のサポートフレーム73が取り付けられており、一対のサポートフレーム73がフロントシートブラケット72から前方に向かって延びている。一対のサポートフレーム73の前端側には長板状のサポートフレームブラケット74が取り付けられ、サポートフレームブラケット74によって一対のサポートフレーム73が連結されている。各レールブラケット71、フロントシートブラケット72、サポートフレームブラケット74には突起付きのクッション76が取り付けられ、複数のクッション76の突起にフロントシート21のシートプレート47(
図3参照)が取り付けられている。
【0023】
フロントシートブラケット72には、一対のサポートフレーム73の取付箇所よりも内側に、バッテリカバー61用の一対の取付穴75が形成されている。フロントシートブラケット72の下面にバッテリカバー61の前端側の一対の取付片62が押し当てられ、一対のボルト(不図示)によって一対の取付片62がフロントシートブラケット72の一対の取付穴75に固定されている。バッテリカバー61の後端側の一対の取付片63の上面にフレームカバーブラケット51が重ねられ、一対のボルト59によって一対の取付片63がフレームカバーブラケット51と共にシートレールブリッジ43に固定されている。
【0024】
バッテリカバー61は、一対のシートレール14、15の内側に配置されたバッテリ68を上方から覆っている。バッテリカバー61は、バッテリ68の上方に位置する水平板部64と、水平板部64の後端からシートレールブリッジ43まで後斜め上方に広がる傾斜板部65とを有している。バッテリカバー61によってバッテリ68が覆われることで、異物や衝撃からバッテリ68が保護されている。水平板部64の上面は他の電装部品や物品の載置面としても利用され、バッテリカバー61の下方の収容スペースだけでなく、バッテリカバー61の上方の収容スペースも有効活用されている。
【0025】
フレームカバーブラケット51は、長板を前面視W形状に屈曲させて形成されており、シートレールブリッジ43に沿って延びている。フレームカバーブラケット51の両端部及び中央部が上方に突き出しており、フレームカバーブラケット51の両端部と中央部の間の一対の底部が下方に凹んでいる。フレームカバーブラケット51の一対の底部が、一対のボルト59によってバッテリカバー61の一対の取付片63を介してシートレールブリッジ43に固定され、フレームカバーブラケット51の両端部と中央部がシートレールブリッジ43から上方に離間されている。
【0026】
フレームカバーブラケット51の両端部には、一対のフレームカバー33が取り付けられる一対のカバー取付穴(カバー取付部)52が形成されている。フレームカバーブラケット51の中央部には、フロントシート21(
図2参照)が取り付けられるシート取付穴(シート取付部)53が形成されている。フレームカバーブラケット51の一対の底部には、シートレールブリッジ43に取り付けられる一対のブリッジ取付穴(ブリッジ取付部、
図8参照)54が形成されている。なお、一対のフレームカバー33、フロントシート21、フレームカバーブラケット51、バッテリカバー61の取付状態については後述する。
【0027】
このように、フレームカバーブラケット51には、一対のブリッジ取付穴54よりも車幅方向の外側に一対のカバー取付穴52が位置付けられ、一対のブリッジ取付穴54の間にシート取付穴53が位置付けられている。また、フレームカバーブラケット51の板面に垂直な方向から見たときに、一対のカバー取付穴52と一対のブリッジ取付穴54とシート取付穴53が同一直線上に並んでいる。バッテリカバー61、フレームカバーブラケット51、フレームカバー33、フロントシート21の取付穴がシートレールブリッジ43上に集約され、ツールを用いて取付作業するためのツールラインも集約されて作業性が向上される。
【0028】
図6に示すように、鞍乗型車両1の車両後部からバッテリカバー61及びフレームカバーブラケット51(
図5参照)が取り外されると、バッテリ68及びシートレールブリッジ43の平面部44が上方に露出される。バッテリ68はバッテリホルダ69に保持されており、収容スペースにはバッテリホルダ69を介してバッテリ68が配置されている。なお、収容スペースには、バッテリ68の他にも、例えば、ECU(Electronic Control Unit)、ヒューズボックス、ETC(Electronic Toll Collection)ユニット、ハーネス等の電装部品や、マニュアル、ツール等の物品が収容されてもよい。
【0029】
シートレールブリッジ43には、外周面の一部が凹んでバッテリカバー61が取り付けられる平面部44が形成されている。シートレールブリッジ43の平面部44には一対のカシメナット45が固定され、平面部44から一対のカシメナット45の頭部が突き出している。一対のカシメナット45は、バッテリカバー61の一対の取付片63の取付穴66(
図8参照)に対応する位置に取り付けられている。一対の取付片63の下面にはカシメナット45の頭部を受け入れる凹部67(
図8参照)が形成され、凹部67にカシメナット45の頭部が入り込むことで、シートレールブリッジ43にバッテリカバー61が位置決めされる。
【0030】
図7から
図9を参照して、シートブラケット、バッテリカバー、シートの取付状態について説明する。
図7は、本実施例のシートブラケットの取付状態を示す斜視図である。
図8は、本実施例のバッテリカバーの取付状態を示す断面図である。
図9は、本実施例のシートの取付状態を示す断面図である。
【0031】
図7に示すように、フレームカバーブラケット51の一対の底部が、バッテリカバー61(
図5参照)の一対の取付片63と共に、一対のボルト59によってシートレールブリッジ43に取り付けられている。フレームカバーブラケット51の両端部及び中央部がシートレールブリッジ43から浮いており、両端部には一対のフレームカバー33が取り付けられ、中央部にはフロントシート21のシートプレート47が取り付けられている。このとき、フレームカバーブラケット51の両端部及び中央部は同じ高さになっており、シートプレート47上のフロントシート21がフレームカバー33に接触している。
【0032】
フレームカバー33の上面がフレームカバーブラケット51の両端部に向かって張り出し、このフレームカバー33の張出部37の下面からボス部38が突き出している。フレームカバーブラケット51のカバー取付穴52(
図5参照)には、筒状のクッション(不図示)が取り付けられている。フレームカバー33の張出部37がフレームカバーブラケット51の両端部に上方から重ねられ、クッションの内側にボス部38が挿し込まれることで、フレームカバー33がフレームカバーブラケット51に取り付けられる。ボス部38の先端には爪が形成されており、クッションに爪が引っ掛かってフレームカバー33が抜け止めされている。これにより、一対のフレームカバー33の取付箇所がシートレールブリッジ43に集約される。
【0033】
図8に示すように、シートレールブリッジ43の平面部44から一対(
図8では1つのみ図示)のカシメナット45の頭部が突き出している。シートレールブリッジ43の平面部44にバッテリカバー61の一対の取付片63が上方から重ねられ、一対の取付片63の凹部67に一対のカシメナット45の頭部が入り込む。シートレールブリッジ43に対してバッテリカバー61が位置決めされて、一対の取付片63の取付穴66がカシメナット45のネジ穴46に容易に位置合わせされる。また、一対の取付片63にフレームカバーブラケット51が上方から重ねられて、一対のブリッジ取付穴54が一対の取付片63の取付穴66に位置合わせされる。
【0034】
一対のブリッジ取付穴54及び一対の取付片63の取付穴66を通して、一対のボルト59の先端が一対のカシメナット45のネジ穴46に挿し込まれる。ボルト59が締め付けられることで、フレームカバーブラケット51がバッテリカバー61に押し付けられ、フレームカバーブラケット51とカシメナット45にバッテリカバー61が挟み込まれる。一対の取付片63とフレームカバーブラケット51が、シートレールブリッジ43に対して同一のボルト59によって供締めで固定されて、バッテリカバー61とフレームカバーブラケット51の取付作業の負担が軽減される。これにより、フレームカバーブラケット51とバッテリカバー61の取付箇所がシートレールブリッジ43に集約される。
【0035】
このとき、シートレールブリッジ43の平面部44がシートレールブリッジ43の外周面の一部を凹ませて形成され、平面部44上の一対の取付片63の上面が一対のシートレール14の上面と同じ高さに調整されている。バッテリカバー61及びフレームカバーブラケット51が低くなって、フロントシート21の下方のバッテリ68の高さが抑えられ、フロントシート21の平坦な座面が確保し易くなる。シートレール14が後方に向かって高くなるように傾斜しているため、フレームカバーブラケット51が低くなることで、リアシート22の前端が後退してフロントシート21の平坦な座面が広く確保される。
【0036】
図9に示すように、フレームカバーブラケット51の中央部の下面には、シート取付穴53と同軸上に溶接ナット55が接合されている。クッション81は断面視H型のゴムブッシュであり、クッション81の内側には円筒状のスペーサ82が装着されている。シート取付穴53にクッション81が重ねられて、スペーサ82の貫通穴83がシート取付穴53に位置合わせされる。スペーサ82の貫通穴83及びシート取付穴53を通して、ボルト84の先端が溶接ナット55のネジ穴85に差し込まれる。ボルト84が締め付けられることで、フレームカバーブラケット51に対してクッション81が取り付けられる。
【0037】
クッション81の外周面(取付面)87には、フロントシート21のシートプレート47が装着される環状溝86が形成されている。シートプレート47の後端の延出部48には装着穴49が形成されており、この装着穴49の開口縁がクッション81の環状溝86に入り込むことで、フロントシート21の後端側がクッション81の外周面87に取り付けられる。クッション81の上面(支持面)89には、ボルト84の頭部を収容する凹部88が形成されている。この凹部88の周りのクッション81がリアシート22のシートプレート50に当接することで、リアシート22の前端側がクッション81の上面89によって下方から支持される。これにより、フロントシート21の取付箇所、リアシート22の支持箇所がシートレールブリッジ43に集約される。
【0038】
以上、本実施例によれば、一対のフレームカバー33の取付箇所、フレームカバーブラケット51の取付箇所、バッテリカバー61の取付箇所、フロントシート21の取付箇所、リアシート22の支持箇所がシートレールブリッジ43に集約される。各部材の取付箇所及び支持箇所が分散しないため、バッテリ保護のためにバッテリカバー61がシートレールブリッジ43に取り付けられても、一対のシートレール14の内側に収容スペースが広く確保される。よって、収容スペースを有効に活用して、バッテリ68以外の電装部品や物品のレイアウト性を向上することができる。
【0039】
なお、本実施例では、バッテリカバーの上面にフレームカバーブラケットが重ねられる構成にしたが、フレームカバーブラケットの上面にバッテリカバーが重ねられてもよい。
【0040】
また、本実施例では、一対のボルトによってバッテリカバー及びフレームカバーブラケットがシートレールブリッジに取り付けられる構成にしたが、バッテリカバー及びフレームカバーブラケットの取付方法は特に限定されない。バッテリカバー及びフレームカバーブラケットは、掛け止め、クリップ止め等の他の取付方法によってシートレールブリッジに取り付けられてもよい。
【0041】
また、本実施例では、フレームカバーのボス部によって、フレームカバーブラケットにフレームカバーが取り付けられる構成にしたが、フレームカバーの取付方法は特に限定されない。フレームカバーは、ネジ止め、掛け止め、クリップ止め等の他の取付方法によってフレームカバーブラケットに取り付けられてもよい。
【0042】
また、本実施例では、フレームカバーブラケットに取り付けられたクッションによって、フレームカバーブラケットにフロントシートが取り付けられる構成にしたが、フロントシートの取付方法は特に限定されない。フロントシートは、クッションを介さずに、ネジ止め、掛け止め、クリップ止め等の他の取付方法によってフレームカバーブラケットに取り付けられてもよい。
【0043】
また、本実施例のフレームカバーブラケットにおいて、一対のブリッジ取付穴よりも車幅方向の外側に一対のカバー取付穴が位置付けられ、一対のブリッジ取付穴の間にシート取付穴が位置付けられる構成にしたが、各取付穴の位置や個数は特に限定されない。フレームカバーブラケットに、ブリッジ取付穴、カバー取付穴、シート取付穴が形成されていればよい。
【0044】
また、本実施例では、ブリッジ取付部としてブリッジ取付穴が例示されたが、ブリッジ取付部はシートレールブリッジに取付可能な形状であればよい。また、ブリッジ取付部としてカバー取付穴を例示したが、カバー取付部はフレームカバーが取付可能な形状であればよい。さらに、シート取付部としてシート取付穴を例示したが、シート取付部はシートが取付可能な形状であればよい。これらブリッジ取付部、カバー取付部、シート取付部は、例えば切り欠き形状でもよい。
【0045】
また、本実施例では、一対のシートレール上にシートとしてフロントシート及びリアシートが支持されているが、一対のシートレールには少なくともフロントシートが支持されていればよい。
【0046】
また、本実施例では、シートレールブリッジの外周面から突き出したカシメナットと、バッテリカバーの下面に形成された凹部とによって、シートレールブリッジにバッテリカバーが位置決めされる構成にしたが、位置決め構成は特に限定されない。例えば、バッテリカバーの下面から突き出した凸部と、シートレールブリッジの外周面に形成された凹部によって、シートレールブリッジにバッテリカバーが位置決めされてもよい。
【0047】
また、本実施例では、バッテリカバーの上面がシートレールの上面と同じ高さになるように、シートレールブリッジの外周面を凹ませて平面部が形成されたが、バッテリカバーの上面がシートレールの上面よりも低くなるように、シートレールブリッジの外周面を凹ませて平面部が形成されてもよい。
【0048】
また、本実施例では、バッテリカバーが水平板部と傾斜板部を有する構成にしたが、バッテリカバーはバッテリを上方から覆うように形成されていれば、バッテリカバーの形状は特に限定されない。
【0049】
また、車体構造は、図示の鞍乗型車両に限らず、他のタイプの鞍乗型車両に採用されてもよい。鞍乗型車両とは、ライダーがシートに跨った姿勢で乗車する車両全般に限定されず、ライダーがシートに跨らずに乗車する小型のスクータタイプの車両も含んでいる。
【0050】
以上の通り、本実施例の鞍乗型車両の車体構造は、シート(フロントシート21)を支持する左右一対のシートレール(14)の内側にバッテリ(68)の収容スペースが形成された鞍乗型車両の車体構造であって、左右一対のシートレールを接続したシートレールブリッジ(43)と、左右一対のシートレールを側方から覆う左右一対のフレームカバー(33)と、収容スペースに配置されたバッテリを上方から覆うバッテリカバー(61)と、左右一対のフレームカバーが取り付けられるフレームカバーブラケット(51)と、を備え、バッテリカバーとフレームカバーブラケットがシートレールブリッジに取り付けられている。この構成によれば、バッテリカバーとフレームカバーブラケットの取付箇所がシートレールブリッジに集約される。バッテリカバーの取付箇所及びフレームカバーブラケットの取付箇所が分散しないため、バッテリ保護のためにバッテリカバーがシートレールブリッジに取り付けられても、左右一対のシートレールの内側に収容スペースが広く確保される。よって、収容スペースを有効に活用して、バッテリ以外の電装部品や物品のレイアウト性を向上することができる。
【0051】
本実施例の鞍乗型車両の車体構造において、バッテリカバーとフレームカバーブラケットが上下に重なり、同一の締結部材(ボルト59)によってシートレールブリッジに取り付けられている。この構成によれば、バッテリカバーとフレームカバーブラケットの取付箇所を減らして、左右一対のシートレールの内側に収容スペースが広く確保される。また、締結部材によってバッテリカバーとフレームカバーブラケットが一度に取り付けられて、バッテリカバーとフレームカバーブラケットの取付作業の負担を減らすことができる。
【0052】
本実施例の鞍乗型車両の車体構造において、フレームカバーブラケットがシートレールブリッジに沿って延びており、フレームカバーブラケットには、シートレールブリッジに取り付けられるブリッジ取付部(ブリッジ取付穴54)と、左右一対のフレームカバーが取り付けられる一対のカバー取付部(カバー取付穴52)と、が形成され、ブリッジ取付部よりも車幅方向の外側に一対のカバー取付部が位置付けられている。この構成によれば、バッテリカバーとフレームカバーブラケットの取付箇所と同様に、左右一対のフレームカバーの取付箇所もシートレールブリッジ上に集約されて、左右一対のシートレールの内側に収容スペースが広く確保される。
【0053】
本実施例の鞍乗型車両の車体構造において、フレームカバーブラケットには、シートが取り付けられるシート取付部(シート取付穴53)が形成され、ブリッジ取付部は車幅方向に離間した一対のブリッジ取付部であり、一対のブリッジ取付部の間にシート取付部が位置付けられている。この構成によれば、バッテリカバーとフレームカバーブラケットの取付箇所と同様に、シートの取付箇所もシートレールブリッジ上に集約されて、左右一対のシートレールの内側に収容スペースが広く確保される。
【0054】
本実施例の鞍乗型車両の車体構造において、フレームカバーブラケットには、一対のカバー取付部と一対のブリッジ取付部とシート取付部が同一直線上に並んでいる。この構成によれば、バッテリカバー、フレームカバーブラケット、フレームカバー、シートの取付箇所がシートレールブリッジ上に集約されて、ツールを用いて取付作業するためのツールラインも集約される。
【0055】
本実施例の鞍乗型車両の車体構造において、シートはフロントシート(21)及びリアシート(22)を有しており、シート取付部にはクッション(81)が取り付けられており、クッションには、フロントシートの後端側が取り付けられる取付面(外周面87)と、リアシートの前端側を下方から支持する支持面(上面89)と、が形成されている。この構成によれば、フロントシートの後端側の取付箇所及びリアシートの前端側の支持箇所がシートレールブリッジ上に集約されて、左右一対のシートレールの内側に収容スペースが広く確保される。
【0056】
本実施例の鞍乗型車両の車体構造において、シートレールブリッジの外周面には、当該外周面から突き出すようにカシメナット(45)が取り付けられており、バッテリカバーには、シートレールブリッジの外周面から突き出したカシメナットを受け入れる位置決め部(凹部67)が形成され、バッテリカバーがカシメナットとフレームカバーブラケットに挟み込まれる。この構成によれば、シートレールブリッジに対してバッテリカバーが容易に位置決めされ、シートレールブリッジに対してバッテリカバーとフレームカバーブラケットを容易に取り付けることができる。
【0057】
本実施例の鞍乗型車両の車体構造において、シートレールブリッジは円筒状に形成され、シートレールブリッジの外周面には、バッテリカバーが取り付けられる平面部(44)が形成されており、バッテリカバーの上面が左右一対のシートレールの上面と同じ高さ又は左右一対のシートレールの上面よりも低くなるように、シートレールブリッジの外周面を凹ませて平面部が形成されている。この構成によれば、バッテリカバー及びフレームカバーブラケットが低くなって、シート下方の部材の高さが抑えられることで、シートの平坦な座面を広く確保し易くなる。
【0058】
なお、本実施例を説明したが、他の実施例として、上記実施例及び変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
【0059】
また、本発明の技術は上記の実施例に限定されるものではなく、技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
【符号の説明】
【0060】
1 :鞍乗型車両
14 :シートレール
21 :フロントシート(シート)
22 :リアシート(シート)
33 :フレームカバー
43 :シートレールブリッジ
44 :平面部
45 :カシメナット
51 :フレームカバーブラケット
52 :カバー取付穴(カバー取付部)
53 :シート取付穴(シート取付部)
54 :ブリッジ取付穴(ブリッジ取付部)
59 :ボルト(締結部材)
61 :バッテリカバー
67 :凹部(位置決め部)
68 :バッテリ
81 :クッション
87 :クッションの外周面(取付面)
89 :クッションの上面(支持面)