(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
H02K 5/22 20060101AFI20240501BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20240501BHJP
B60K 5/02 20060101ALI20240501BHJP
B60K 1/00 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
H02K5/22
H02M7/48 Z
B60K5/02 E
B60K1/00
(21)【出願番号】P 2020177371
(22)【出願日】2020-10-22
【審査請求日】2023-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】廣瀧 敬士
(72)【発明者】
【氏名】三浦 広樹
(72)【発明者】
【氏名】岡▲崎▼ 真行
【審査官】安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-322439(JP,A)
【文献】特開2015-220830(JP,A)
【文献】特開2004-032863(JP,A)
【文献】特開2009-142038(JP,A)
【文献】特開2020-137364(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/22
H02M 7/48
B60K 5/02
B60K 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータおよびステータと、当該ロータおよびステータを収容するモータケースとを有し、車両走行用の駆動力を発生可能なモータと、
前記モータとは異なる機能を有する機構部を収容し、前記モータケースに対して隣接して連結される隣接ケースと、
前記隣接ケースの外周部に取付けられ、入力された直流電力を交流電力に変換して前記モータに出力するインバータと、
前記インバータと前記モータとを電気接続するバスバーと、
を備え、
前記隣接ケースの外径は、前記モータケースの外径よりも小径であり、
前記バスバーは、
前記モータとの接続部分である第1接続部と、
前記インバータとの接続部分である第2接続部と、
前記第1接続部と前記第2接続部との間において、当該バスバーの厚み方向に曲折され、それぞれが変形可能な第1曲折部および第2曲折部と、
を有し、
前記バスバーを当該バスバーの幅方向の一方から側面視するとき、前記バスバーはクランク形状を有する、
車両。
【請求項2】
請求項1に記載の車両において、
前記バスバーは、前記第1接続部と前記第2接続部との間の領域において、当該領域の一部が前記バスバーの厚み方向に弧状に湾曲された、変形可能な湾曲部をさらに有する、
車両。
【請求項3】
請求項2に記載の車両において、
前記バスバーの長手方向において、前記第1曲折部は前記第2曲折部よりも前記第1接続部側に設けられており、
前記湾曲部は、前記第1接続部と前記第2曲折部との間、または、前記第2接続部と前記第1曲折部との間に設けられている、
車両。
【請求項4】
請求項3に記載の車両において、
前記バスバーの長手方向において、前記湾曲部は、前記第1曲折部に重複して設けられている、
車両。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の車両において、
前記湾曲部を第1湾曲部とするとき、
前記バスバーは、前記第1接続部と前記第2接続部との間の前記第1湾曲部が設けられた箇所とは異なる領域において、当該領域の一部が前記バスバーの厚み方向に弧状に湾曲され、変形可能な第2湾曲部をさらに有する、
車両。
【請求項6】
請求項5に記載の車両において、
前記バスバーの長手方向において、前記第2湾曲部は、前記第2曲折部に重複して設けられている、
車両。
【請求項7】
請求項1から請求項6の何れかに記載の車両において、
前記バスバーを当該バスバーの幅方向の一方から側面視するとき、前記第1曲折部と前記第2曲折部との間の領域は、前記第1曲折部と前記第2曲折部とを直線で結ぶよりも長さが長くなるように形成されている、
車両。
【請求項8】
請求項7に記載の車両において、
前記バスバーは、前記第1曲折部と前記第2曲折部との間において、当該バスバーの厚み方向に曲折され、それぞれが変形可能な第3曲折部および第4曲折部および第5曲折部をさらに有し、
前記第3曲折部および第4曲折部および第5曲折部が設けられることにより、前記第1曲折部と前記第2曲折部との間の領域の長さが、前記第1曲折部と前記第2曲折部とを直線で結ぶよりも長く設定される、
車両。
【請求項9】
請求項1から請求項8の何れかに記載の車両において、
前記バスバーの長手方向において、前記第1曲折部と前記第2曲折部との間の中間部は、前記第1接続部と前記第2接続部との間の中点位置に対して前記第1接続部側に偏って設けられている、
車両。
【請求項10】
請求項1から請求項9の何れかに記載の車両において、
複数の気筒を有し、当該複数の気筒が車両前後方向に配列されるように搭載された縦置きエンジンをさらに備え、
前記モータは、前記縦置きエンジンに対して車両前後方向の後方に配置され、
前記隣接ケースは、トランスミッションのミッションケースであって、前記モータケースに対して車両前後方向の後方に隣接配置されている、
車両。
【請求項11】
請求項1から請求項10の何れかに記載の車両において、
前記バスバーを第1バスバーとするとき、前記インバータと前記モータとを電気接続する第2バスバーおよび第3バスバーをさらに備え、
前記第1バスバーおよび前記第2バスバーおよび前記第3バスバーには、長手方向の複数の位置において、互いの接触を規制する複数のバー固定部材が取り付けられている、
車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に関し、特に車両走行用の動力源としてモータを備える車両に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境負荷の低減などを目的として、車両走行用の駆動源としてモータを備えた電気自動車(PEV)や、エンジンとモータとを備えたハイブリッド車(HEV)などが普及してきている。車両走行用の駆動源として用いられるモータは、通常、三相交流電力の供給を受けて回転駆動する。このため、バッテリとモータとの送電経路中に、直流電力を交流電力に変換するインバータを介挿させることが必要となる。
【0003】
特許文献1には、車両走行用の駆動源としてエンジンに加えてモータを備えるハイブリッド車が開示されている。特許文献1に開示のハイブリッド車では、エンジンとモータとトランスミッションとがこの順に接続された駆動源を備える。そして、特許文献1に開示のハイブリッド車では、インバータがトランスミッションのミッションケースの外周面に取付けられている。よって、特許文献1に開示のハイブリッド車では、モータとインバータとが近接配置されることとなり、短い配線により互いが電気接続できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1には、モータとインバータとを電気接続するための配線としてワイヤーハーネスを用いるかバスバーを用いるかについての具体的な開示はない。一般的に、金属板材で形成されたバスバーは、ワイヤーハーネスよりも安価である。このため、互いに近接配置されたモータとインバータとの電気接続には、バスバーを用いることがコスト面からも優位である。
【0006】
しかしながら、バスバーは、ワイヤーハーネスに比べて可撓性が低いため、モータとインバータとに接続された状態で応力が作用することが懸念される。具体的には、モータのモータケースとトランスミッションのミッションケースとは、互いに別の部材であり、ボルト等を用いて互いが固定される。このため、モータケースおよびミッションケースのそれぞれの製造誤差や、モータケースとミッションケースとの組付け誤差などが発生し得る。よって、これら誤差を有した状態で組付けられたモータケースとミッションケースとの間で配策されるバスバーには応力が残留することが懸念される。
【0007】
なお、バスバーに大きな応力が残留した状態で長期に車両を使用した場合には、バスバーが変形等の損傷を生じるおそれもある。
【0008】
本発明は、上記のような問題を解決しようとなされたものであって、モータケースに隣接する隣接ケースに取付けられたインバータと、モータとの電気接続のために設けられるバスバーにおいて、残留応力を低く抑えることができる車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る車両は、ロータおよびステータと、当該ロータおよびステータを収容するモータケースとを有し、車両走行用の駆動力を発生可能なモータと、前記モータとは異なる機能を有する機構部を収容し、前記モータケースに対して隣接して連結される隣接ケースと、前記隣接ケースの外周部に取付けられ、入力された直流電力を交流電力に変換して前記モータに出力するインバータと、前記インバータと前記モータとを電気接続するバスバーと、を備える。
【0010】
前記隣接ケースの外径は、前記モータケースの外径よりも小径である。
【0011】
前記バスバーは、前記モータとの接続部分である第1接続部(電気的な接続および機械的な接続を行う部分)と、前記インバータとの接続部分である第2接続部(電気的な接続および機械的な接続を行う部分)と、前記第1接続部と前記第2接続部との間において、当該バスバーの厚み方向に曲折され、それぞれが変形可能な第1曲折部および第2曲折部と、を有する。前記バスバーを当該バスバーの幅方向の一方から側面視するとき、前記バスバーはクランク形状を有する。
【0012】
上記態様に係る車両では、インバータとモータとを電気接続するバスバーにそれぞれが変形可能な第1曲折部と第2曲折部とを設けている。よって、上記態様に係る車両では、モータケースおよび隣接ケースのそれぞれの製造誤差や、モータケースと隣接ケースとの組付け誤差などが発生した場合であっても、これらの間で配策されるバスバーの第1曲折部および第2曲折部の変形(曲折角度の変化)により誤差が吸収される。このため、上記態様に係る車両では、バスバーに残留する応力を緩和することができ、バスバーが損傷するのを抑制することができる。
【0013】
上記態様に係る車両において、前記バスバーは、前記第1接続部と前記第2接続部との間の領域において、当該領域の一部が前記バスバーの厚み方向に弧状に湾曲された、変形可能な湾曲部をさらに有していてもよい。
【0014】
上記態様に係る車両では、バスバーが変形可能な湾曲部も有しているので、モータケースおよび隣接ケースの製造誤差や、モータケースと隣接ケースとの組付け誤差などが発生した場合であっても、第1曲折部および第2曲折部の変形に加えて湾曲部の変形によっても誤差を吸収することができる。よって、上記態様に係る車両では、バスバーに残留する応力をさらに低く抑えるのに優位である。
【0015】
上記態様に係る車両において、前記バスバーの長手方向において、前記第1曲折部は前記第2曲折部よりも前記第1接続部側に設けられていてもよく、前記湾曲部は、前記第1接続部と前記第2曲折部との間、または、前記第2接続部と前記第1曲折部との間に設けられていてもよい。
【0016】
上記態様に係る車両では、バスバーにおいて、第1接続部と第2曲折部との間、または、第2接続部と第1曲折部との間に湾曲部を設けることとしている。第1接続部と第2曲折部との間と、第2接続部と第1曲折部との間との何れに湾曲部を設けるかの選択は、インバータおよびモータに対するバスバーの取り付け順序に関係する。具体的に、先にインバータにバスバーを取り付け、その後にバスバーをモータに取付ける場合には、第1接続部と第2曲折部との間に湾曲部を設けることが、バスバーの残留応力を低く抑えるために有効である。
【0017】
一方、先にモータにバスバーを取り付け、その後にバスバーをインバータに取付ける場合には、第2接続部と第1曲折部との間に湾曲部を設けることが、バスバーの残留応力を低く抑えるために有効である。即ち、バスバーに湾曲部を設ける箇所を、バスバーを先に取付ける側よりも後で取り付ける側の部分とすることで、バスバーに作用する応力をより低く抑えることができる。
【0018】
上記態様に係る車両において、前記バスバーの長手方向において、前記湾曲部は、前記第1曲折部に重複して設けられていてもよい。
【0019】
上記態様に係る車両では、バスバーにおいて、湾曲部が第1曲折部して設けられている。このように第1曲折部と湾曲部とを同じ箇所に形成することとすれば、バスバーの製造が容易となり、部材コストを低減することが可能となる。
【0020】
上記態様に係る車両において、前記湾曲部を第1湾曲部とするとき、前記バスバーは、前記第1接続部と前記第2接続部との間の前記第1湾曲部が設けられた箇所とは異なる領域において、当該領域の一部が前記バスバーの厚み方向に弧状に湾曲され、変形可能な第2湾曲部をさらに有していてもよい。
【0021】
上記態様に係る車両では、バスバーが変形可能な第2湾曲部をさらに有することとしている。このため、上記態様に係る車両では、モータケースおよび隣接ケースのそれぞれの製造誤差や、モータケースと隣接ケースとの組付け誤差などが発生した場合であっても、第1曲折部、第2曲折部、および第1湾曲部の変形に加えて第2湾曲部の変形によっても誤差を吸収することができる。よって、上記態様に係る車両では、バスバーに残留する応力をさらに低く抑えるのに優位である。
【0022】
上記態様に係る車両において、前記バスバーの長手方向において、前記第2湾曲部は、前記第2曲折部に重複して設けられていてもよい。
【0023】
上記態様に係る車両では、バスバーにおいて、第2湾曲部が第2曲折部に重複して設けられている。このように第2曲折部と第2湾曲部とを同じ箇所に形成することとすれば、バスバーの製造が容易となり、部材コストを低減することが可能となる。
【0024】
上記態様に係る車両において、前記バスバーを当該バスバーの幅方向の一方から側面視するとき、前記第1曲折部と前記第2曲折部との間の領域は、前記第1曲折部と前記第2曲折部とを直線で結ぶよりも長さが長くなるように形成されていてもよい。
【0025】
上記態様に係る車両では、バスバーにおける第1曲折部と第2曲折部との間の領域が、当該第1曲折部と第2曲折部とを直線で結ぶよりも長さが長くなるようにしている。このため、上記態様に係る車両では、バスバーにおける第1曲折部と第2曲折部との間の領域の変形によっても上記誤差を吸収することが可能となる。
【0026】
上記態様に係る車両において、前記バスバーは、前記第1曲折部と前記第2曲折部との間において、当該バスバーの厚み方向に曲折され、それぞれが変形可能な第3曲折部および第4曲折部および第5曲折部をさらに有しいてもよく、前記第3曲折部および第4曲折部および第5曲折部が設けられることにより、前記第1曲折部と前記第2曲折部との間の領域の長さが、前記第1曲折部と前記第2曲折部とを直線で結ぶよりも長く設定されていてもよい。
【0027】
上記態様に係る車両では、バスバーにおける第1曲折部と第2曲折部との間の領域に、それぞれが変形可能な第3曲折部、第4曲折部、および第5曲折部をさらに有するので、これらの曲折部(第3曲折部、第4曲折部、第5曲折部)の変形によっても上記誤差を吸収することが可能となる。
【0028】
上記態様に係る車両において、前記バスバーの長手方向で、前記第1曲折部と前記第2曲折部との間の中間部は、前記第1接続部と前記第2接続部との間の中点位置に対して前記第1接続部側に偏って設けられていてもよい。
【0029】
上記態様に係る車両では、バスバーにおける中間部が上記中点位置に対して第1接続部側に偏って設けられている。インバータおよびモータへのバスバーの取り付けにおいて、先にインバータにバスバーを取り付け、その後にバスバーをモータに取付ける場合には、バスバーにおける後で取り付ける側(第1接続部の側)に相対的に大きな応力が作用する。この場合に、上記のように中間部を偏在させることで、効果的に応力を低く抑えることが可能となる。
【0030】
上記態様に係る車両において、複数の気筒を有し、当該複数の気筒が車両前後方向に配列されるように搭載された縦置きエンジンをさらに備えていてもよく、前記モータは、前記縦置きエンジンに対して車両前後方向の後方に配置されていてもよく、前記隣接ケースは、トランスミッションのミッションケースであって、前記モータケースに対して車両前後方向の後方に隣接配置されていてもよい。
【0031】
上記態様に係る車両は、車両走行用の駆動源として、モータだけでなくエンジンも備える、所謂ハイブリッド車である。そして、インバータをミッションケースの外周面に取付けることで、車両におけるスペースを有効に利用しながら、応力に起因するバスバーの変形や破損を抑制することができる。
【0032】
上記態様に係る車両において、前記バスバーを第1バスバーとするとき、前記インバータと前記モータとを電気接続する第2バスバーおよび第3バスバーをさらに備えていてもよく、前記第1バスバーおよび前記第2バスバーおよび前記第3バスバーには、長手方向の複数の位置において、互いの接触を規制する複数のバー固定部材が取り付けられていてもよい。
【0033】
上記態様に係る車両では、第1バスバー、第2バスバー、および第3バスバーが複数のバー固定部材により、互いの接触が規制されている。これより、車両走行時の振動がバスバー(第1バスバー、第2バスバー、第3バスバー)に加わっても、バスバー同士の接触が確実に抑制され、短絡が防がれる。ここで、各バー固定部材は、絶縁性の材料を用いて構成するか、少なくともバスバーと接触する部分に絶縁処理が施された部材を用いることが必要である。
【0034】
なお、第1バスバー、第2バスバー、および第3バスバーの全体を1つの樹脂モールド覆ってしまうことも考えられるが、インバータおよびモータへの組付け時の応力を低く抑えるという観点から、互いの間に間隔を空けて配された複数のバー固定部材をバスバーに取付けることが望ましい。
【発明の効果】
【0035】
上記の各態様に係る車両では、モータケースに隣接する隣接ケースに取付けられたインバータと、モータとの電気接続のために設けられるバスバーにおいて、残留応力を低く抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両の構成を示す模式図である。
【
図2】車両におけるモータおよびトランスミッションとその周辺構造を斜め上方から見た斜視図である。
【
図3】車両におけるモータおよびトランスミッションとその周辺構造を斜め下方から見た斜視図である。
【
図4】車両におけるモータおよびトランスミッションとその周辺構造を上方から見た平面図である。
【
図5】モータケースとミッションケースとのサイズ関係を示す模式図である。
【
図6】配線カバーを取り外した状態で、モータケースの上部からミッションケースの上部にかけての部分を示す平面図である。
【
図7】
図6のVII-VII線断面を示す断面図である。
【
図8】バスバーを当該バスバーの幅方向の一方から側面視した側面図である。
【
図9】変形例1に係る車両が備えるバスバーを当該バスバーの幅方向の一方から側面視した側面図である。
【
図10】変形例2に係る車両が備えるバスバーを当該バスバーの幅方向の一方から側面視した側面図である。
【
図11】変形例3に係る車両が備えるバスバーを当該バスバーの幅方向の一方から側面視した側面図である。
【
図12】変形例4に係る車両が備えるバスバーを当該バスバーの幅方向の一方から側面視した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下では、本発明の実施形態について、図面を参酌しながら説明する。なお、以下で説明の形態は、本発明の一例であって、本発明は、その本質的な構成を除き何ら以下の形態に限定を受けるものではない。
【0038】
以下の説明で用いる図においては、「FR」が車両前方、「RE」が車両後方、「UP」が車両上方、「LO」が車両下方、「RI」が車両右方、「LE」が車両左方をそれぞれ示す。
【0039】
1.車両1の概略構成
本実施形態に係る車両1の概略構成について、
図1を用いて説明する。
【0040】
図1に示すように、車両1は、車両走行用の駆動源としてエンジン10とモータ12とを備える。エンジン10およびモータ12は、車両1の前部に設けられたエンジンルーム1a内に搭載されている。エンジン10は、複数の気筒10aを有し、複数の気筒10aが車両1の前後方向に並ぶように縦置きで配置されている。即ち、本実施形態におけるエンジン10は、縦置きエンジンである。
【0041】
なお、本実施形態に係る車両1では、エンジン10として、ガソリンエンジンあるいはディーゼルエンジンの何れを採用することも可能である。
【0042】
モータ12は、エンジン10に対して、車両1の前後方向における後方に配置されている。そして、モータ12の回転軸は、ダンパ11を介してエンジン10の出力軸に連結されている。エンジン10とモータ12とは、車両1の走行状況に応じて、一方あるいは両方が車両走行用の駆動力を発生する。なお、エンジン10とモータ12との間に設けられたダンパ11は、エンジン10とモータ12との間で衝撃トルクを緩和するためのデバイスである。
【0043】
車両1は、トランスミッション13、トランスファ14、プロペラシャフト15,16、デファレンシャルギヤ17,21、ドライブシャフト18,22、および車輪19,20,23,24も備える。トランスミッション13は、モータ12に連結されている。トランスミッション13は、モータ12からの駆動力に加えて、モータ12を通してエンジン10からの駆動力も入力されるようになっている。トランスミッション13は、走行状況に応じた比に変速してトランスファ14に出力する。
【0044】
なお、本実施形態に係る車両1では、トランスミッション13として、マニュアルトランスミッションあるいはオートマチックトランスミッションの何れを採用することも可能である。
【0045】
トランスファ14は、動力分割装置であって、トランスミッション13から出力された駆動力を前輪23,24への駆動力と後輪19,20への駆動力に分割するデバイスである。トランスファ14には、リヤ(R)プロペラシャフト15とフロント(F)プロペラシャフト16とが連結されている。
【0046】
なお、トランスファ14による駆動力の配分は、路面μ等に応じて比率が逐次変更されるようになっていてもよい。
【0047】
Rプロペラシャフト15は、トランスファ14から車両1の前後方向の後方に向けて延びるように設けられている。Rプロペラシャフト15の後端は、リヤ(R)デファレンシャルギヤ17に連結されている。Rデファレンシャルギヤ17からは、車幅方向の両側に向けてリヤ(R)ドライブシャフト18が延びている。Rドライブシャフト18の両端には、後輪19,20が取り付けられている。
【0048】
Fプロペラシャフト16は、トランスミッション13、モータ12、およびダンパ11の車幅方向の側方を通り、車両1の前後方向の前方に向けて延びるように設けられている。Fプロペラシャフト16の前端は、フロント(F)デファレンシャルギヤ21に連結されている。Fデファレンシャルギヤ21からは、車幅方向の両側に向けてフロント(F)ドライブシャフト22が延びている。Fドライブシャフト22の両端には、前輪23,24が取り付けられている。
【0049】
さらに、車両1には、バッテリ25と電力変換ユニット26とを備える。バッテリ25は、それぞれがリチウムイオンバッテリである複数のバッテリで構成されたバッテリモジュールである。バッテリ25には、電力変換ユニット26が電気的に接続されている。
【0050】
電力変換ユニット26は、インバータ27とDC-DCコンバータ28とを有する。インバータ27は、バッテリ25から入力された直流電力を交流電力に変換してモータ12に出力するデバイスである。DC-DCコンバータ28は、バッテリ25から入力された直流電力の電圧を変換(昇降圧)して車両1の各種負荷に出力するデバイスである。
【0051】
2.モータ12およびトランスミッション13とその周辺構造
車両1におけるモータ12およびトランスミッション13とその周辺構造について、
図2から
図5を用いて説明する。
【0052】
図2から
図4に示すように、モータ12はモータケース12aを有し、トランスミッション13はミッションケース13aを有する。モータケース12aは、筒状の外殻部材であって、内部にロータおよびステータ(図示を省略。)を収容する。ミッションケース13aは、車両1の前後方向に長尺な筒状の外殻部材であって、内部に変速機構(図示を省略。)を収容する。なお、本実施形態に係るミッションケース13aは、モータケース12aに対して車両前後方向の後方に隣接して、モータケース12aに連結された隣接ケースに該当する。
【0053】
ミッションケース13aの上部には、インバータ27が取り付けられている。また、
図3に示すように、ミッションケース13aの下部には、オイルパン13cが取り付けられている。オイルパン13cは、トランスミッション13におけるミッションケース13a内の作動油を貯留するための容器である。
【0054】
図2および
図4に示すように、ミッションケース13aの上部からモータケース12aの上部にかけての領域には、配線カバー29が設けられている。配線カバー29は、インバータ27とモータ12とを電気的に接続するためのバスバーや接続端子などの周囲を覆う部材である。
【0055】
図2から
図4に示すように、DC-DCコンバータ28は、ミッションケース13aに対して車幅方向の一方の側方(左方)に離間し、且つ、ミッションケース13aの下部よりも車両1の上下方向の下方に配されている。
【0056】
モータケース12aおよびミッションケース13aに対して車幅方向の左方には、Fプロペラシャフト16が配設されている。Fプロペラシャフト16は、DC-DCコンバータ28よりもミッションケース13a等に近い領域に配置されている。
【0057】
モータケース12aおよびミッションケース13aに対して車幅方向の右方には、排気管30が配置されている。詳細な図示を省略しているが、排気管30は、エンジン10のエキゾーストマニホールドに接続されており、車両1の前後方向における後方に向けて延びるように設けられている。
【0058】
3.モータケース12aおよびミッションケース13aの径方向でのサイズ
モータケース12aおよびミッションケース13aの径方向でのサイズについて、
図5を用いて説明する。
【0059】
図5に示すように、車両1では、エンジンルーム1a(
図1を参照。)と車室とは、ダッシュパネル1bで仕切られている。車室の下部には、ダッシュパネル1bに連続するフロアパネル1cが設けられている。そして、フロアパネル1cには、車幅方向の中央領域において、車両上下方向の上方(車室内側)に向けて膨出するとともに、車両前後方向に延びるフロアトンネル1dが設けられている。
【0060】
ミッションケース13aは、フロアトンネル1dの下方において、モータケース12aに対して車両1の前後方向における後方に隣接して配置され、図示を省略しているボルトなどで固定されている。そして、ミッションケース13aにおけるモータケース12aへの固定部分における外径D13は、モータケース12aの外径D12よりも小径に形成されている。
【0061】
インバータ27は、モータケース12aよりも小径なミッションケース13aの上部13bに取付けられている。詳細な図示を省略しているが、モータケース12aの上部12bには、インバータ27との電気的な接続のためのバスバーを接続する配線接続部が設けられている。バスバーおよび配線接続部などに関しては、後述する。
【0062】
上記のようなモータケース12aとミッションケース13aとの外径D12,D13の違いにより、モータケース12aの外周面における上部12bとミッションケース13aの外周面における上部13bとの間には、段差Gがついている。ここで、段差Gの寸法は、モータケース12aおよびミッションケース13aのそれぞれの製造誤差や、モータケース12aとミッションケース13aとの組付け誤差などにより若干変化することがある。
【0063】
4.モータ12とインバータ27との接続形態
モータ12とインバータ27との接続形態について、
図6および
図7を用いて説明する。
【0064】
図6に示すように、フロアトンネル1d(
図5を参照。)の下方に配置されたミッションケース13aの上部13bには、インバータ27が取り付けられている。そして、インバータ27の配線接続部27c(
図7を参照。)と、フロアトンネル1dの下方でモータケース12aの上部12bに配置されるモータ12の配線接続部12cとは、3本のバスバー31,32,33により電気接続されている。3本のバスバー31,32,33は、それぞれが金属板から構成されており、車両1の上下方向での板厚が車幅方向での幅および前後方向での長さに比べて薄く形成されている。
【0065】
3本のバスバー31,32,33は、長手方向の複数箇所(本実施形態では、一例として2箇所)に、互いに幅方向に間隔を空けた状態で3本のバスバー31,32,33を束ねるようにバー固定部材40,41が取り付けられている。バー固定部材40,41は、それぞれが樹脂材料などの絶縁性材料により形成されている。3本のバスバー31,32,33は、バー固定部材40,41の取り付けにより、互い同士が接触したり、周辺の部材(特に、導電性の部材)に接触したりするのが規制されている。
【0066】
モータケース12aの上部12bには、バスバー31,32,33との接続のための配線接続部12cが設けられている。
図7に示すように、配線接続部12cには、モータケース12a内の配線12dの一端が配されている。
【0067】
図6および
図7に示すように、バスバー31,32,33と配線接続部12cとの接続(電気的な接続および機械的な接続)は、ボルト34,35,36とナット45との締結によりなされている。
【0068】
図7に示すように、インバータ27は、電気回路を収容するインバータケース27aを有する。インバータケース27aは、車両1の前後方向における前方側であって、上下方向における下方側にバスバー31,32,33との接続のための配線接続部27bが設けられている。配線接続部27bには、インバータケース27a内の配線27cの一端が配されている。
【0069】
図6および
図7に示すように、バスバー31,32,33と配線接続部27bとの接続(電気的な接続および機械的な接続)は、ボルト37,38,39とナット48との締結によりなされる。なお、本実施形態に係る車両1の製造においては、モータ12とインバータ27との接続工程において、モータケース12aとミッションケース13aとを連結する。
【0070】
次に、インバータケース27aの配線接続部27bに対してバスバー31,32,33を接続する。そして、バスバー31,32,33が接続されたインバータケース27aをミッションケース13aの上部13bに配置し、モータケース12aの配線接続部12cにバスバー31,32,33を接続する。
【0071】
なお、バー固定部材40,41は、インバータケース27aの配線接続部27bにバスバー31,32,33を接続する前に、バスバー31,32,33に取付けておくことが、バスバー31,32,33のハンドリング性の向上という観点から望ましい。
【0072】
最後に配線カバー29を取り付ける。なお、配線カバー29については、バスバー31,32,33の製造誤差などによっても、当該配線カバー29の内面29aとバスバー31,32,33やバー固定部材40,41とが接触しないように若干大きめのサイズで形成されている。
【0073】
ここで、本実施形態に係る車両1では、3本のバスバー31,32,33のうちのバスバー32が第1バスバーに該当し、バスバー31が第2バスバーに該当し、バスバー33が第3バスバーに該当する。ただし、本実施形態では、3本のバスバー31,32,33は全て同じ構成を有し、また、モータ12およびインバータ27との接続形態も同様であるので、バスバー31,32,33の何れを第1バスバーとし、何れを第2バスバー、第3バスバーとするかは任意である。
【0074】
5.バスバー31,32,33の構造
バスバー31,32,33の構造について、
図8を用いて説明する。なお、
図8では、3本のバスバー31,32,33のうち、第1バスバーに該当するバスバー32を代表的に図示しているが、バスバー31,33も同様の構造を有する。
【0075】
図8に示すように、本実施形態に係るバスバー32は、前部32aに設けられた通し孔32bと、後部32cに設けられた通し孔32dとを有する。通し孔32bは、モータ12の配線接続部12cへの接続に際してボルト32の軸部が挿通する孔であり、第1接続部に該当する。通し孔32dは、インバータ27の配線接続部27bへの接続に際してボルト38の軸部が挿通する孔であり、第2接続部に該当する。
【0076】
また、バスバー32は、それぞれが板厚方向に曲折された曲折部32f,32gを有する。バスバー32において、曲折部32fは、曲折部32gよりも通し孔32bに近い側に設けられ、第1曲折部に該当する。曲折部32gは、第2曲折部に該当する。このように、バスバー32は、通し孔32bと通し孔32dとの間に2つの曲折部32f,32gを有することで、
図8に示す側面視で全体としてクランク形状を有する。
【0077】
バスバー32における曲折部32fと曲折部32gとの間の中間部32eは、曲折部32gから曲折部32fへと行くのに従って上方となるように傾斜を有するように形成されている。中間部32eの高さ(上下方向での曲折部32fと曲折部32gとの間の寸法)は、モータケース12aの上部12bとミッションケース13aの上部13bとの段差G(
図5を参照。)に基づいて設定されている。
【0078】
図8に示すように、中間部32eは、矢印Bで示すように、前後方向における通し孔32bと通し孔32dとの中点位置LC32に対して通し孔32b側(前方側)に偏って設けられている。
【0079】
本実施形態に係るバスバー32は、前後方向(バスバー32の長手方向)における通し孔32bと通し孔32dとの間に2つの曲折部32f,32gを有することで、矢印A1,A2で示すように上下方向に撓むことが可能である。即ち、バスバー32は、曲折部32fおよび曲折部32gの変形(曲折角度の変化)により、前部32a(通し孔32bが設けられた部分)と後部32c(通し孔32dが設けられた部分)との上下方向での相対的な位置が変位可能となっている。
【0080】
6.効果
本実施形態に係る車両1では、インバータ27とモータ12とを電気接続するバスバー31,32,33のそれぞれに変形可能な曲折部32f,32gとを設けている。よって、車両1では、モータケース12aおよびミッションケース13aのそれぞれの製造誤差や、モータケース12aとミッションケース13aとの組付け誤差などが発生した場合であっても、モータケース12aとミッションケース13aの間で配策されるバスバー31,32,33の曲折部32f,32gの変形(曲折角度の変化)により誤差が吸収される。このため、本実施形態に係る車両1では、バスバー31,32,33に残留する応力を緩和することができ、バスバー31,32,33が損傷するのを抑制することができる。
【0081】
また、本実施形態に係る車両1では、バスバー31,32,33における中間部32eが、前後方向における通し孔32bと通し孔32dとの中点(中点位置LC32)に対して、通し孔32bが設けられた側に偏って設けられている。インバータ27およびモータ12へのバスバー31,32,33の取り付けにおいて、上述のように、先にインバータ27にバスバー31,32,33を取り付け、その後にバスバー31,32,33をモータ12に取付ける場合には、バスバー31,32,33における後で取り付ける側(通し孔32bが設けられた前部32a)に大きな応力が作用する。この場合に、本実施形態のように中間部32eを通し孔32bが設けられた前方側に偏在させることで、効果的に応力を低く抑えることが可能となる。
【0082】
本実施形態に係る車両1は、車両走行用の駆動源として、モータ12だけでなくエンジン10も備える、所謂ハイブリッド車である。そして、インバータ27をミッションケース13aの外周面の上部13bに取付けることで、車両1におけるスペースを有効に利用しながら、応力に起因するバスバー31,32,33の変形や破損を抑制することができる。
【0083】
また、本実施形態に係る車両1では、3本のバスバー31,32,33が2つのバー固定部材40,41により、互いの接触が規制されている。これより、車両走行時の振動がバスバー31,32,33に加わっても、バスバー31,32,33同士の接触やバスバー31,32,33と周辺部材との接触が確実に抑制され、短絡やバスバー31,32,33の変形などが防がれる。
【0084】
なお、1つの樹脂モールドで3本のバスバー31,32,33の周囲全体を覆ってしまうことも考えられるが、インバータ27およびモータ12への組付け時の応力を低く抑えるという観点から、互いの間に間隔を空けて配された複数(2つ以上)のバー固定部材40,41をバスバーに取付けることが望ましい。
【0085】
以上のように、本実施形態に係る車両1では、モータケース12aに隣接するミッションケース13aの上部13bに取付けられたインバータ27と、モータ12との電気接続のために設けられるバスバー31,32,33において、残留応力を低く抑えることができる。
【0086】
[変形例1]
変形例1に係る車両について、
図9を用いて説明する。なお、本変形例に係る車両は、バスバー42の側面視での形状を除いて上記実施形態と同じ構成を有するので、以下での説明を省略する。
【0087】
図9に示すように、本変形例に係るバスバー42も、前部42aに通し孔42bを有し、後部42cに通し孔42dを有する。また、バスバー42は、前部42aにおける通し孔42bよりも後部42c寄りの部分に曲折部42fを有し、後部42cにおける通し孔42dよりも前部42a寄りの部分に曲折部42gを有する。
【0088】
本実施形態に係るバスバー42も、前後方向(バスバー42の長手方向)における通し孔42bと通し孔42dとの間に合計で5つの曲折部42f,42g,42h,42i,42jを有することで、矢印C1,C2で示すように上下方向に撓むことが可能である。これにより、バスバー42も、曲折部42f,42g,42h,42i,42jの変形(曲折角度の変化)により、前部42a(通し孔42bが設けられた部分)と後部42c(通し孔42dが設けられた部分)との上下方向での相対的な位置が変位可能となっている。
【0089】
本変形例に係るバスバー42は、当該バスバー42の前後方向における曲折部42fと曲折部42gとの間の中間部42eに、3つの曲折部42h,42i,42jを有する点で、上記実施形態に係るバスバー32と異なる。
【0090】
バスバー42では、中間部42eに3つの曲折部42h,42i,42jが設けられることにより、曲折部42fと曲折部42fとを直線で結んだ場合(仮想線L32e)よりも長さが長くなっている。なお、本変形例では、中間部42eに3つの曲折部42h,42i,42jを設けることとしたが、2つ以下の曲折部を設けることにしてもよいし、4つ以上の曲折部を設けることにしてもよい。
【0091】
また、本変形例に係るバスバー42でも、中間部42eは、矢印Dで示すように、前後方向における通し孔42bと通し孔42dとの中点位置LC42に対して通し孔42b側(前方側)に偏って設けられている。
【0092】
以上のような構成を有するバスバー42を備える車両でも、上記実施形態に係る車両1と同様の効果を奏することができる。また、本変形例に係るバスバー42では、中間部42eに3つの曲折部42h,42i,42jを有することで、曲折部42fと曲折部42fとの間の長さが仮想線L32eよりも長くされているので、曲折部42f,42gの変形に加え曲折部42h~42jの変形によってインバータ27およびモータ12への組付け時における応力を緩和するのにさらに優位である。
【0093】
なお、本変形例では、バスバー42における全ての曲折部42f~42jを中点位置LC42よりも通し孔42b側(前方側)に偏って設けることとしたが、必ずしも全ての曲折部42f~42jを中点位置LC42よりも通し孔42b側(前方側)に偏って設ける必要はない。即ち、中間部42eが中点位置LC42を挟んで前後に配されるようにすることも可能である。
【0094】
[変形例2]
変形例2に係る車両について、
図10を用いて説明する。なお、本変形例に係る車両は、バスバー52の側面視での形状を除いて上記実施形態と同じ構成を有するので、以下での説明を省略する。
【0095】
図10に示すように、本変形例に係るバスバー52も、前部52aに通し孔52bを有し、後部52cに通し孔52dを有する。また、バスバー52は、前部52aにおける通し孔52bよりも後部52c寄りの部分に曲折部52fを有し、後部52cにおける通し孔52dよりも前部52a寄りの部分に曲折部52gを有する。
【0096】
本実施形態に係るバスバー52も、前後方向(バスバー52の長手方向)における通し孔52bと通し孔52dとの間に2つの曲折部52f,52gを有することで、矢印E1,E2で示すように上下方向に撓むことが可能である。これにより、バスバー52も、曲折部52f,52gの変形(曲折角度の変化)により、前部52a(通し孔52bが設けられた部分)と後部52c(通し孔52dが設けられた部分)との上下方向での相対的な位置が変位可能となっている。
【0097】
本変形例に係るバスバー52は、前部52aにおいて、一部が弧状に湾曲された湾曲部52hをさらに有する点で、上記実施形態に係るバスバー32と異なる。
【0098】
バスバー52では、前部52aにおける通し孔52bよりも後方の部分に湾曲部52hを有することにより、上記実施形態に係るバスバー32の前部32aを示す仮想線L32aよりも長さが長くなっている。なお、本変形例では、前部52aに1つの湾曲部52hだけを設けることとしたが、2つ以下の湾曲部を設けることにしてもよい。
【0099】
本変形例に係るバスバー52でも、中間部52eは、矢印Fで示すように、前後方向における通し孔52bと通し孔52dとの中点位置LC52に対して通し孔52b側(前方側)に偏って設けられている。
【0100】
以上のような構成を有するバスバー52を備える車両でも、上記実施形態に係る車両1と同様の効果を奏することができる。また、本変形例に係るバスバー52では、曲折部52f,52gに加えて湾曲部52hも有しているので、モータケース12aおよびミッションケース13aの製造誤差や、モータケース12aとミッションケース13aとの組付け誤差などが発生した場合であっても、曲折部52f,52gおよび湾曲部52hの変形によっても誤差を吸収することができる。
【0101】
さらに、本変形例に係るバスバー52では、湾曲部52hを通し孔52bと曲折部52fとの間に設けている。このように前部52aに湾曲部52hが設けられたバスバー52は、通し孔52dを用いてインバータ27にバスバー52を取り付け、その後に通し孔52bを用いてバスバー52をモータ12に取付ける場合に、バスバー52に作用する応力を低く抑えるために有効である。
【0102】
なお、本変形例でも、上記実施形態と同様に、バスバー52における2つの曲折部52f,52gを中点位置LC52よりも通し孔52b側(前方側)に偏って設けることとしたが、必ずしも全ての曲折部52f,52gを中点位置LC52よりも通し孔52b側(前方側)に偏って設ける必要はない。即ち、本変形例でも、中間部52eが中点位置LC52を挟んで前後に配されるようにすることも可能である。
【0103】
[変形例3]
変形例3に係る車両について、
図11を用いて説明する。なお、本変形例に係る車両は、バスバー62の側面視での形状を除いて上記実施形態と同じ構成を有するので、以下での説明を省略する。
【0104】
図11に示すように、本変形例に係るバスバー62も、前部62aに通し孔62bを有し、後部62cに通し孔62dを有する。また、バスバー62は、前部62aにおける通し孔62bよりも後部62c寄りの部分に曲折部62fを有し、後部62cにおける通し孔62dよりも前部62a寄りの部分に曲折部62gを有する。
【0105】
本実施形態に係るバスバー62も、前後方向(バスバー62の長手方向)における通し孔62bと通し孔62dとの間に2つの曲折部62f,62gを有することで、矢印G1,G2で示すように上下方向に撓むことが可能である。これにより、バスバー62も、曲折部62f,62gの変形(曲折角度の変化)により、前部62a(通し孔62bが設けられた部分)と後部62c(通し孔62dが設けられた部分)との上下方向での相対的な位置が変位可能となっている。
【0106】
本変形例に係るバスバー62は、後部62cにおいて、一部が弧状に湾曲された湾曲部62hをさらに有する点で、上記実施形態に係るバスバー32と異なる。また、本変形例に係るバスバー62は、後部62cに湾曲部62hを有し、前部52aに湾曲部52hを有する上記変形例2に係るバスバー52と異なる。
【0107】
バスバー62では、後部62cにおける通し孔62dよりも前方の部分に湾曲部62hを有することにより、上記実施形態に係るバスバー32の後部32cを示す仮想線L32cよりも長さが長くなっている。なお、本変形例では、後部62cに1つの湾曲部62hだけを設けることとしたが、2つ以下の湾曲部を設けることにしてもよい。
【0108】
本変形例に係るバスバー62でも、中間部62eは、矢印Hで示すように、前後方向における通し孔62bと通し孔62dとの中点位置LC62に対して通し孔62b側(前方側)に偏って設けられている。
【0109】
以上のような構成を有するバスバー62を備える車両でも、上記実施形態に係る車両1と同様の効果を奏することができる。また、本変形例に係るバスバー62では、曲折部62f,62gに加えて湾曲部62hも有しているので、モータケース12aおよびミッションケース13aの製造誤差や、モータケース12aとミッションケース13aとの組付け誤差などが発生した場合であっても、曲折部62f,62gおよび湾曲部62hの変形によっても誤差を吸収することができる。
【0110】
さらに、本変形例に係るバスバー62では、湾曲部62hを通し孔62dと曲折部62gとの間に設けている。このように後部62cに湾曲部62hが設けられたバスバー62は、通し孔62bを用いてバスバー62をモータ12に取付け、その後に通し孔62dを用いてインバータ27にバスバー62を取り付ける場合に、バスバー62の残留応力を低く抑えるために有効である。
【0111】
なお、本変形例でも、上記実施形態と同様に、バスバー62における2つの曲折部62f,62gを中点位置LC62よりも通し孔62b側(前方側)に偏って設けることとしたが、必ずしも曲折部62f,62gを中点位置LC62よりも通し孔62b側(前方側)に偏って設ける必要はない。即ち、本変形例でも、中間部62eが中点位置LC62を挟んで前後に配されるようにすることも可能である。
【0112】
[変形例4]
変形例4に係る車両について、
図12を用いて説明する。なお、本変形例に係る車両は、バスバー72の側面視での形状を除いて上記実施形態と同じ構成を有するので、以下での説明を省略する。
【0113】
図12に示すように、本変形例に係るバスバー72も、前部72aに通し孔72bを有し、後部72cに通し孔72dを有する。本変形例に係るバスバー72は、通し孔72bよりも後部72c寄りの箇所に(前部72aの後端部分に)、板厚方向に曲折され、且つ、湾曲された曲折湾曲部72fを有する。曲折湾曲部72fは、上記実施形態に係るバスバー32の曲折部32fを示す仮想点P32fよりも矢印Mで示すように上方に向けて膨出されている。
【0114】
また、本変形例に係るバスバー72は、通し孔72dよりも前部72a寄りの箇所に(後部72cの前端部分に)、板厚方向に曲折され、且つ、湾曲された曲折湾曲部72gを有する。曲折湾曲部72gは、上記実施形態に係るバスバー32の曲折部32gを示す仮想点P32gよりも矢印Nで示すように下方に向けて膨出されている。
【0115】
本実施形態に係るバスバー72も、前後方向(バスバー72の長手方向)における通し孔72bと通し孔72dとの間に2つの曲折湾曲部72f,72gを有することで、矢印I1,I2で示すように上下方向に撓むことが可能である。これにより、バスバー72も、曲折部72f,72gの変形(曲折角度の変化)により、前部72a(通し孔72bが設けられた部分)と後部72c(通し孔72dが設けられた部分)との上下方向での相対的な位置が変位可能となっている。
【0116】
本変形例に係るバスバー72では、前部72aにおける通し孔72bよりも後方の部分が、上記実施形態に係るバスバー32の前部32aを示す仮想線L32aよりも矢印Kで示す方向に窪んでいる。同様に、バスバー72では、中間部72eにおける曲折湾曲部72fに近い部分が、上記実施形態に係るバスバー32の中間部32eを示す仮想線L32eよりも矢印Lで示す方向に窪んでいる。
【0117】
本変形例に係るバスバー72でも、中間部72eは、矢印Jで示すように、前後方向における通し孔72bと通し孔72dとの中点位置LC72に対して通し孔72b側(前方側)に偏って設けられている。
【0118】
以上のような構成を有するバスバー72を備える車両でも、上記実施形態に係る車両1と同様の効果を奏することができる。
【0119】
また、本変形例に係るバスバー72では、湾曲部と曲折部とが重複した曲折湾曲部72f,72gが設けられている。このように湾曲部を曲折部と重複して設けることとすれば、バスバー72の製造が容易となり、部材コストを低減することが可能となる。
【0120】
[その他の変形例]
上記実施形態および上記変形例1~4では、エンジン10として4気筒のエンジンを一例として採用したが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、5気筒以上のエンジンや、V型の多気筒エンジン、さらにはW型の多気筒エンジンを採用することも可能である。
【0121】
また、本発明では、車両走行用の駆動源としてエンジンを備えない電気自動車(PEV)を採用することも可能である。この場合には、モータから出力された回転駆動力の減速を行うための減速機のケースを隣接ケースとして採用することが可能である。
【0122】
また、上記実施形態および上記変形例1~4では、エンジン10およびモータ12で発生の駆動力を前輪23,24にも伝達する四輪駆動車を一例としたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、FR車(フロントエンジン、リヤドライブ)に適用することも可能である。
【0123】
また、上記実施形態および上記変形例1~4におけるダンパ11として、ハイブリッド車用に採用される種々のダンパを用いることが可能である。例えば、所定のトルクを超えた場合にスリップする機能を有するリミッタ付きダンパを採用することもできる。
【0124】
また、上記実施形態および上記変形例1,2,4では、バスバー32,42,52,72における曲折部32f,32g,42f~42j,52f,52g、湾曲部52h、および曲折湾曲部72f,72gを各中点位置LC32,LC42,LC52,LC72よりも前方側の部分に設けることとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、曲折部、湾曲部、および曲折湾曲部の一部が中点位置よりも後方側の部分に設けることにしてもよい。
【0125】
ここで、車両のインバータとモータとを電気接続するバスバーについては、車両走行時の振動などを考慮して形成することが必要となる。具体的には、インバータおよびモータに取付けた場合のバスバーの応力を低く抑えるという観点からは、バスバーの板厚方向での変形度合いを大きくすることが望ましいが、車両走行時の振動による周辺部材との接触を回避するという観点からは、バスバーの板厚方向での変形度合いを小さくすることが望ましい。本発明は、取付でのバスバーの応力低減と、振動が加わった際のバスバーが周辺部材に接触するのを回避することとの両方を満たすように、バスバーの変形度合いを調整することが必要である。これより、上記実施形態および上記変形例1~4の各バスバー32,42,52,62,72のような構造が望ましい。
【0126】
上記変形例1では、バスバー42における中間部42eに3つの曲折部42h~42jを設けることとしたが、曲折部42fと曲折部42gとを直線で結んだ場合よりも長さを長くすることができれば、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、中間部に4つ以上の曲折部を設けたり、中間部に湾曲部や曲折湾曲部を設けたりすることも可能である。
【0127】
上記変形例2,3では、バスバー52,62の一部を上方に向けて膨出させることで湾曲部52h,62hを形成することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。周囲に配置された部材に接触しなければ、下方に膨出させて湾曲部を形成してもよい。
【0128】
また、上記実施形態および上記変形例1~4では、ミッションケース13aの上部13bにインバータ27を取り付けることとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、インバータをミッションケース(隣接ケース)の側部や底部に取付けることも可能である。なお、インバータの取付箇所を変更する場合には、バスバーの配線長を短くするという観点から、モータの配線接続部の配設箇所についても連動して変更することが望ましい。
【符号の説明】
【0129】
1 車両
12 モータ
12a モータケース
12b 上部
12c 配線接続部
13 トランスミッション
13a ミッションケース(隣接ケース)
13b 上部
27 インバータ
29 配線カバー
31~33,42,52,62,72 バスバー
32b,42b,52b,62b,72b 通し孔(第1接続部)
32d,42d,52d,62d,72d 通し孔(第2接続部)
32f,32g,42f,42g,42h,42i,42j,52f,52g,62f,62g 曲折部
52h,62h 湾曲部
72f,72g 曲折湾曲部