IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スズキ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-運転支援装置 図1
  • 特許-運転支援装置 図2
  • 特許-運転支援装置 図3
  • 特許-運転支援装置 図4
  • 特許-運転支援装置 図5
  • 特許-運転支援装置 図6
  • 特許-運転支援装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】運転支援装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20240501BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20240501BHJP
【FI】
G08G1/16 D
G06T7/00 650Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020183451
(22)【出願日】2020-11-02
(65)【公開番号】P2022073456
(43)【公開日】2022-05-17
【審査請求日】2023-09-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139365
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 勉
(72)【発明者】
【氏名】倉田 光次
【審査官】白石 剛史
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-218873(JP,A)
【文献】特開2006-264465(JP,A)
【文献】特開2012-238185(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0198534(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/16
G06T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の前方を撮像する撮像部と、
制御部とを備え、
前記制御部は、
前記自車両の前方の車道上に存在し、手または指示具を用いて交通に関する指示を出す指示者が前記自車両を停止させる車両停止指示を解除したか否かを、前記撮像部により撮像された画像に基づいて前記指示者の動きを認識することにより判断する指示判断部と、
前記車道の周囲に存在する、人、自転車、車椅子または小型電動車両である移動体が、前記車道に向かって移動しているか否かを、前記撮像部により撮像された画像に基づいて判断する移動判断部と、
前記指示者が前記車両停止指示を解除したと前記指示判断部により判断され、かつ、前記車道の周囲に存在する前記移動体が前記車道に向かって移動していると前記移動判断部により判断された場合に、前記自車両の運転者に対して警報を出力し、または前記自車両を停止させる制御実行部とを有していることを特徴とする運転支援装置。
【請求項2】
前記移動判断部は、前記車道の周囲に存在する人が人間の平均歩行速度に基づいて定められた速度基準値を上回る移動速度で前記車道に向かって移動しているか否かを、前記撮像部により撮像された画像に基づいて判断し、
前記制御実行部は、前記指示者が前記車両停止指示を解除したと前記指示判断部により判断され、かつ前記車道の周囲に存在する人が前記速度基準値を上回る移動速度で前記車道に向かって移動していると前記移動判断部により判断された場合に、前記自車両の運転者に対して警報を出力し、または前記自車両を停止させることを特徴とする請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記移動判断部は、前記車道の周囲に存在する人が前記車道に向かって移動しており、かつ当該人の身体の一部の動きが、人間が走るときの動きであるか否かを、前記撮像部により撮像された画像に基づいて判断し、
前記制御実行部は、前記指示者が前記車両停止指示を解除したと前記指示判断部により判断され、かつ、前記車道の周囲に存在する人が前記車道に向かって移動しており、かつ当該人の身体の一部の動きが、人間が走るときの動きであると移動判断部により判断された場合に、前記自車両の運転者に対して警報を出力し、または前記自車両を停止させることを特徴とする請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記自車両の周囲の物体を検出する検出部を備え、
前記移動判断部は、前記車道の周囲に存在する前記移動体が前記車道に向かって移動しているか否かを前記検出部を用いて判断することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の運転支援装置。
【請求項5】
前記指示判断部は、前記指示者が前記車道上から前記車道の周囲に向かって移動したことが前記撮像部により撮像された画像に基づいて認識された場合に、前記指示者が前記車両停止指示を解除したと判断することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の運転支援装置。
【請求項6】
前記指示判断部は、前記指示者が前記車両停止指示を解除したか否かを、前記撮像部により撮像された画像に基づいて前記指示者の手または前記指示具の動きを認識することにより判断することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の運転支援装置。
【請求項7】
前記自車両と他車両との間で通信を行う通信部を備え、
前記通信部は、前記指示判断部および前記移動判断部の判断結果を前記他車両に送信することを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の運転支援装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の運転者の運転または自動運転車両の自動運転を支援する運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動四輪車もしくは自動二輪車等の車両の運転者の運転、または自動運転車両の自動運転を支援する運転支援装置において、車両と人または自転車等との接触を回避する性能を高めるためには、人または自転車等の動き、具体的には挙動や移動を検出し、検出した人または自転車等の動きに基づいて、車両の運転者に人または自転車等との接触の危険を知らせ、または車両を制動する制御を行うことが望ましい。
【0003】
この点、下記の特許文献1には、車両が横断歩道の手前で停止したときに、横断歩道の付近に立つ者が、手を上に挙げたポーズをとっており、または横断歩道を渡り始めた場合に、その者が、車両を停止させて横断歩道を渡ろうとする意思を持っていると推定し、車両の停止を継続する装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2018/078713号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、警察官による交通整理や、交通誘導員による交通誘導、あるいは学童擁護員による児童の誘導等が実施されている場面では、警察官、交通誘導員または学童擁護員等、交通に関する指示を出す指示者の指示に従って、車両を停止させ、または発進させることが求められる。具体的には、車両を停止させる車両停止指示を指示者が出したときには、その指示に従って車両を停止させ、指示者が車両停止指示を解除したときには、それに従って車両を発進させることが求められる。
【0006】
しかしながら、このような場面では、指示者が車両停止指示を解除したときに、車両が進もうとしている車道に、人または自転車等が急に飛び出してくることがある。例えば、車両停止指示により車両が停止している間に車道を渡ろうと思い、車道に向かって歩いている人、または車道に向かって自転車で走っている人が、車両停止指示が解除されたことを認識しながら、それでも車両が発進する前に急いで車道を渡ろうと思い、車道に飛び出してくるのである。
【0007】
そこで、交通整理、交通誘導等が実施されている場面においては、人または自転車等が車道に飛び出してくる状況を的確に認識し、車道に飛び出してきた人または自転車等と、車両停止指示の解除に従って発進した車両との接触を回避することが要望される。
【0008】
なお、上記特許文献1に記載された装置では、横断歩道の付近に立つ者が、手を上に挙げたポーズをとっており、または横断歩道を渡り始めた場合に、車両の停止を継続する制御を行う。しかしながら、車両停止指示が解除されたときに車道に飛び出してくる人が手を挙げたポーズをとることは希である。手を挙げるポーズをとらずに人が車道に飛び出してきた場合、特許文献1に記載された装置では車両の停止を継続する制御を行い損ねるおそれがある。また、人が車道を渡り始めたこと、すなわち、車道に飛び出して車道に進入した後の人を認識するのでは、車両が停止するタイミングが遅くなるおそれがある。
【0009】
本発明は例えば上述したような問題に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、交通整理、交通誘導等が実施されている場面において、車道に飛び出してきた人または自転車等と自車両との接触を回避することができる運転支援装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の運転支援装置は、自車両の前方を撮像する撮像部と、制御部とを備え、前記制御部は、前記自車両の前方の車道上に存在し、手または指示具を用いて交通に関する指示を出す指示者が前記自車両を停止させる車両停止指示を解除したか否かを、前記撮像部により撮像された画像に基づいて前記指示者の動きを認識することにより判断する指示判断部と、前記車道の周囲に存在する、人、自転車、車椅子または小型電動車両である移動体が、前記車道に向かって移動しているか否かを、前記撮像部により撮像された画像に基づいて判断する移動判断部と、前記指示者が前記車両停止指示を解除したと前記指示判断部により判断され、かつ、前記車道の周囲に存在する前記移動体が前記車道に向かって移動していると前記移動判断部により判断された場合に、前記自車両の運転者に対して警報を出力し、または前記自車両を停止させる制御実行部とを有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、交通整理、交通誘導等が実施されている場面において、車道に飛び出してきた人または自転車等と自車両との接触を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1の実施例の運転支援装置の構成を示すブロック図である。
図2】本発明の第1の実施例の運転支援装置による運転支援処理を示すフローチャートである。
図3】交通整理または交通誘導等が実施されている場面を示す説明図である。
図4】指示者が車道上に立って車両停止指示を出している状態を示す説明図である。
図5】本発明が想定している状態の一つで、指示者が車両停止指示を解除した状態を示す説明図である。
図6】本発明の第2の実施例の運転支援装置の構成を示すブロック図である。
図7】本発明の第2の実施例の運転支援装置による運転支援処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態の運転支援装置は、自車両の前方を撮像する撮像部と、制御部とを備えている。自車両とは、運転支援装置が設けられた車両を意味する。また、自車両の前方とは、自車両の前の広範囲の領域を意味し、自車両の前方には、自車両のまっすぐ前の領域だけでなく、自車両の左前の領域および自車両の右前の領域が含まれる。
【0014】
また、制御部は、指示判断部、移動判断部および制御実行部を有している。指示判断部は、自車両の前方の車道上に存在し、手または指示具を用いて交通に関する指示を出す指示者が、自車両を停止させる車両停止指示を解除したか否かを、撮像部により撮像された画像に基づいて当該指示者の動きを認識することにより判断する。
【0015】
交通に関する指示を出す指示者は、警察官、交通誘導員、交通警備員、学童擁護員等であるが、これらに限らない。また、指示者の手は、指示者の身体において肩から指先に至る部分を指す。また、指示具は、例えば、誘導棒、赤色灯、合図灯、停止棒、横断旗、指導旗等である。また、例えば、指示者が、車道上に立って、指示具を持った手を横に伸ばして指示具を水平にしたとき、そのような指示者の動きは、車両停止指示を出したことを意味する。また、例えば、指示者が、指示具を下ろして、車道上から車道の周囲に向かって移動したとき、そのような指示者の動きは、車両停止指示を解除したことを意味する。また、指示者が、車両を招くように指示具を振りつつ、反対側の手を車両が進むべき方向に伸ばしたとき、そのような指示者の動きも、車両停止指示を解除したことを意味する。
【0016】
指示者が自車両の前方の車道上に存在するとき、指示者は撮像部により撮像される。指示判断部は、撮像部により撮像された画像に対して例えば画像認識処理を行い、指示者の動きを認識することにより、指示者が車両停止指示を解除したか否かを判断する。
【0017】
移動判断部は、自車両の前方の車道の周囲に存在する移動体が、自車両の前方の車道に向かって移動しているか否かを、撮像部により撮像された画像に基づいて判断する。
【0018】
移動体は、人、自転車、車椅子または小型電動車両である。小型電動車両には電動車椅子が含まれる。車道の周囲は、道路のうち車道以外の領域、および道路の外側であって道路の近傍の領域である。なお、横断歩道は車道上に配置されているので、車道の一部である。
【0019】
制御実行部は、指示者が車両停止指示を解除したと指示判断部により判断され、かつ、自車両の前方の車道の周囲に存在する上記移動体が自車両の前方の車道に向かって移動していると移動判断部により判断されたときに、主に自車両が手動運転車両である場合には、自車両の運転者に対して警報を出力し、主に自車両が自動運転車両である場合には、自車両を停止させる制御を行う。警報の出力は、例えば、音を発する、ランプを付ける、メッセージを表示する、シートまたはハンドル等に設けられたバイブレータを作動させて振動を運転者に伝えるなどである。自車両が手動運転車両である場合、自車両を運転する運転者は、警報に応じて自車両の発進をとどまり、または自車両を発進させた後、直ちに自車両を停止させる。また、自車両が自動運転車両である場合、自車両を停止させる制御により、自車両の停止が継続され、または自車両が発進した後、直ちに自車両が停止する。なお、手動運転車両においても警報と同時に自車両を停止させる制御を併用してもよい。また、自動運転車両においては、自車両の停止と警報を併用してもよい。
【0020】
このように、本発明の実施形態の運転支援装置は、交通に関する指示を出す指示者が車両停止指示を解除したとき、自車両の前方の車道の周囲に、自車両の前方の車道に向かって移動している人、自転車、車椅子または小型電動車両が存在する場合に、自車両の運転者に対して警報を出力し、または自車両を停止させる制御を行う。交通整理、交通誘導等が実施されている場面においては、指示者が車両停止指示を解除したときに、車道の周囲に存在する人、自転車、車椅子または小型電動車両が、車両停止指示の解除により車両が発進する前に車道を渡ろうとして、車道に飛び出してくることがある。本実施形態の運転支援装置は、このような、交通整理、交通誘導等が実施されている場面において、人、自転車、車椅子または小型電動車両が自車両の前方の車道に飛び出してくる状況を、指示者が車両停止指示を解除したこと、および自車両の前方の車道の周囲に自車両の前方の車道に向かって移動している人、自転車、車椅子または小型電動車両が存在することといった2つの判断基準により判断し、これら2つの判断基準の双方が満たされた場合に自車両の運転者に対して警報を出力し、または自車両を停止させる制御を行う。したがって、本実施形態の運転支援装置によれば、交通整理、交通誘導等が実施されている場面において、人、自転車、車椅子または小型電動車両が車道に飛び出してくる状況を的確に認識することができ、車道に飛び出してきた人、自転車、車椅子または小型電動車両と自車両との接触を回避することができる。
【0021】
また、本発明の実施形態の運転支援装置は、指示者が車両停止指示を解除したときに、自車両の前方の車道の周囲に、自車両の前方の車道に向かって移動している人、自転車、車椅子または小型電動車両が存在することを認識する。自車両の前方の車道の周囲に、自車両の前方の車道に向かって移動している人、自転車、車椅子または小型電動車両が存在するという状況は、人、自転車、車椅子または小型電動車両が自車両の前方の車道に飛び出す直前の状況である可能性が高い。すなわち、この状況は、人、自転車、車椅子または小型電動車両が、自車両が進もうとしている車道に飛び出すおそれのある状況である。このように、本発明の実施形態の運転支援装置は、指示者が車両停止指示を解除したときに、人、自転車、車椅子または小型電動車両が、自車両が進もうとしている車道に飛び出す直前の状況を認識して警報の出力または車両の停止制御を行う。それゆえ、人、自転車、車椅子または小型電動車両が、自車両が進もうとしている車道に実際に飛び出す前に警報の出力または車両の停止制御を開始することができる。したがって、自車両が停止するタイミングを早めることができ、車道に飛び出してきた人、自転車、車椅子または小型電動車両と自車両との接触を回避する確実性を高めることができる。
【実施例1】
【0022】
(運転支援装置)
図1は本発明の第1の実施例の運転支援装置1の構成を示している。本発明の第1の実施例の運転支援装置1は、車両の運転者の運転を支援する装置であり、車両に設けられている。車両は、例えば自動四輪車であり、また、手動運転車両である。以下、運転支援装置1が設けられた車両を「自車両」という。
【0023】
運転支援装置1は、図1に示すように、カメラ11、超音波センサ12、車速センサ13、GPS(Global Positioning System)受信機14、記憶部15、通信部16、警報音出力装置17、表示部18、バイブレータ19およびCPU(Central Processing Unit)20を備えている。なお、カメラ11は撮像部の具体例であり、超音波センサ12は検出部の具体例であり、CPU20は制御部の具体例である。
【0024】
カメラ11は自車両の前方を撮像する装置である。カメラ11は、例えば、自車両が自動四輪車の場合、自車両の運転室内においてフロントガラスの上部の近傍(図3参照)、または自車両のフロントバンパの近傍等、自車両の前方を撮像することができる位置に配置されている。カメラ11は、自車両の前方を連続的に撮像することができる能力を有している。カメラ11はスチルカメラでもよいし、ビデオカメラでもよい。また、カメラ11は赤外線カメラでもよい。カメラ11は、水平方向における視野角が例えば150度~180度程度の広角レンズを有しており、自車両のまっすぐ前の領域だけでなく、自車両の左前の領域および自車両の右前の領域をも撮像することができる。カメラ11は、撮像した自車両の前方の撮像画像をCPU20に出力する。なお、自車両が自動四輪車以外の他の車両(例えば、自動二輪車、自動三輪車)である場合、カメラ11は、自車両の前方を撮像することができる位置(例えば車両前部の任意の箇所)に配置されている。
【0025】
超音波センサ12は、超音波を利用して物体の存否および物体までの距離を検出する装置である。超音波センサ12は、超音波を発信してから、その超音波の物体からの反射波を受信するまでの時間に基づいて物体までの距離を検出することができる。また、超音波センサ12は自車両から近距離離れた物体を検出する能力を有し、その検出可能距離は例えば6mまたは8m程度である。また、具体的には図示していないが、超音波センサ12は、自車両の周囲、具体的には自車両の前方、後方、左方および右方に存在する物体をそれぞれ検出することができるように、自車両に複数設けられている。例えば、自車両には6個の超音波センサ12が設けられ、6個の超音波センサ12は、自車両のフロントバンパの左右方向中央部、左端部および右端部、並びに自車両のリヤバンパの左右方向中央部、左端部および右端部にそれぞれ配置されている。各超音波センサ12は、検出した物体との距離を示す距離検出信号をCPU20に出力する。なお、超音波センサの代わりに、レーザーレーダやミリ波レーダ(準ミリ波レーダを含む)を使用してもよい。
【0026】
車速センサ13は自車両の走行速度を検出する装置であり、自車両が停止していることも検出することができる。車速センサ13は、検出した自車両の走行速度を示す車速検出信号をCPU20に出力する。
【0027】
GPS受信機14は、GPS衛星から送信される測位信号に基づいて自車両の現在位置を検出する装置である。GPS受信機14は自車両の現在位置を示す位置情報をCPU20に出力する。
【0028】
記憶部15は、情報を記憶する半導体記憶装置または磁気記憶装置である。記憶部15には地図情報24が記憶されている。通信部16は、他車両と無線通信を行う装置である。
【0029】
警報音出力装置17は、自車両の運転者に対して警報音(電子音)を出力する装置であり、スピーカ等を有している。表示部18は、自車両の運転者に対して情報を表示する装置であり、具体的には、ディスプレイ装置である。表示部18は、自車両の運転室内において、自車両を運転している運転者が容易に見ることができる位置に配置されている。バイブレータ19は、振動を発して、自車両の運転者に合図する装置であり、自車両のハンドルまたは運転シート等、運転者に振動を伝えることができる位置に配置されている。なお、警報音出力装置17、表示部18およびバイブレータ19は、自車両の運転者に対して警報を出力する警報装置の具体例である。
【0030】
CPU20は、カメラ11から出力された撮像画像、超音波センサ12から出力された距離検出信号、車速センサ13から出力された車速検出信号、およびGPS受信機14から出力された位置情報等に基づいて、通信部16、警報音出力装置17、表示部18およびバイブレータ19等を制御する装置である。CPU20には、カメラ11、超音波センサ12、車速センサ13、GPS受信機14、記憶部15、通信部16、警報音出力装置17、表示部18およびバイブレータ19が接続されている。
【0031】
また、CPU20は、例えば記憶部15に記憶されたプログラムを読み取って実行することにより、指示判断部21、移動判断部22および制御実行部23として機能する。指示判断部21は、交通に関する指示を出す指示者が自車両を停止させる車両停止指示を出しているか否か、および車両停止指示を解除したか否かなどを判断する。移動判断部22は、車道の周囲に存在する人が速度基準値を上回る移動速度で車道に向かって移動しているか否かを判断する。また、移動判断部22は、車道の周囲に存在する人が車道に向かって移動しており、かつ当該人の身体の一部の動きが、人間が走るときの動きであるか否かを判断する。また、移動判断部22は、車道の周囲に存在する自転車、車椅子または小型電動車両が車道に向かって移動しているか否かを判断する。制御実行部23は、指示判断部および移動判断部の判断結果に基づいて、運転者に対して警報を出力し、または出力している警報を停止する。
【0032】
(運転支援処理)
図2は運転支援装置1による運転支援処理を示している。図3は交通整理または交通誘導等が実施されている場面の一例を示している。図3において、自車両35は、道路31の車道32の左側の車線において、横断歩道34の手前に停止している。第1の実施例における運転支援処理は、例えば図3に示すように、走行していた自車両35が車道32上で停止したときなどに開始される。なお、自車両が停止したことは車速センサ13を用いて認識することができる。
【0033】
図2に示す運転支援処理において、まず、指示判断部21が、自車両の前方の車道上に、交通に関する指示を出す指示者が存在し、その指示者が、自車両を停止させる車両停止指示を出しているか否かを判断する(ステップS1)。
【0034】
交通に関する指示を出す指示者とは、交通整理を行う警察官、交通誘導を行う交通誘導員、児童等の誘導を行う学童擁護員等である。指示具とは、例えば、誘導棒、赤色灯、合図灯、停止棒、横断旗、指導旗等である。
【0035】
図3においては、指示者37が、指示具38を持って、自車両35の前方の車道32上に立っている。指示者37は、自車両35と横断歩道34との間に立ち、横断歩道34を渡る人または横断歩道34の周辺の人39A~39E(歩行者)等を擁護している。また、図4は、指示者37が車道32上に立って車両停止指示を出している状態を示している。図4に示すように、指示者37が指示具38を持った手を横に伸ばして指示具38を水平にしたとき、それは車両停止指示を意味する。また、図示していないが、指示者が指示具を持っていない場合には、指示者が片手または両手を横に伸ばして水平にしたとき、それは車両停止指示を意味する。
【0036】
指示判断部21は、カメラ11により撮像された自車両の前方の撮像画像に対して画像認識処理を行い、その画像認識処理の結果に基づいて、自車両の前方の車道上に指示者が存在し、その指示者が車両停止指示を出しているか否かを判断する。この画像認識処理にはパターンマッチング等の画像認識技術を用いることができる。
【0037】
例えば、自車両の前方の車道上に、誘導棒、赤色灯、合図灯または停止棒を用いて車両停止指示を出している指示者が存在する場合、撮像画像に対する画像認識処理により、自車両の前方の車道上に、立った状態で移動しない人が認識され、かつその人が棒状の物体を持ち、その物体を水平にしていることが認識される。また、誘導棒、赤色灯、合図灯および停止棒には照明器が内蔵されている。夜間において、自車両の前方の車道上に、照明器を作動させた誘導棒、赤色灯、合図灯または停止棒を用いて車両停止指示を出している指示者が存在する場合には、撮像画像に対する画像認識処理により、自車両の前方の車道上に、立った状態で移動しない人が認識され、かつその人が光を発する棒状の物体を持ち、その物体を水平にしていることが認識される。また、自車両の前方の車道上に、横断旗または指導旗を用いて車両停止指示を出している指示者が存在する場合、撮像画像に対する画像認識処理により、自車両の前方の車道上に、立った状態で移動しない人が認識され、かつその人が旗状の物体を持ち、その物体を水平にしていることが認識される。また、自車両の前方の車道上に、指示具を持たずに手で車両停止指示を出している指示者が存在する場合、撮像画像に対する画像認識処理により、自車両の前方の車道上に、立った状態で移動しない人が認識され、かつその人が片手または両手を水平に伸ばしていることが認識される。指示判断部21は、撮像画像に対する画像認識処理により、以上のような認識結果が得られた場合には、自車両の前方の車道上に指示者が存在し、その指示者が車両停止指示を出していると判断する。
【0038】
自車両の前方の車道上に、交通に関する指示を出す指示者が存在し、その指示者が車両停止指示を出している場合には(ステップS1:YES)、続いて、指示判断部21は、その指示者が車両停止指示を解除したか否かを判断する(ステップS2)。指示判断部21は、カメラ11により撮像された自車両の前方の撮像画像に対して画像認識処理を行い、その画像認識処理の結果に基づいて指示者の動きを認識することにより、指示者が車両停止指示を解除した否かを判断する。
【0039】
ここで、図5は、指示者37が車両停止指示を解除した状態を示している。図5に示すように、指示者37が、指示具38を下ろして、車道32上から車道32の周囲、具体的には車道32の脇、または歩道33に向かって移動したとき、そのような指示者の動きは、車両停止指示を解除したことを意味する。また、図示していないが、指示者が指示具を持っていない場合、指示者が水平にしていた手を下ろして、車道32上から車道32の周囲に移動したとき、それは車両停止指示を解除したことを意味する。
【0040】
自車両の前方の車道上に存在する指示者が車両停止指示を解除した場合、撮像画像に対する画像認識処理により、指示者が指示具または手を下ろす動き、および指示者が車道上から車道の周囲に向かって移動する動きが認識される。指示判断部21は、撮像画像に対する画像認識処理により、このような認識結果が得られた場合には、自車両の前方の車道上に存在する指示者が車両停止指示を解除したと判断する。
【0041】
自車両の前方の車道上に存在する指示者が車両停止指示を解除した場合(ステップS2:YES)、移動判断部22が、指示者が車両停止指示を解除した時点またはその直後に、次の4つの判断基準(A)~(D)のうちのいずれかを満たすか否かを判断する(ステップS3~S6)。
(A)自車両の前方の車道の周囲に存在する人が速度基準値を上回る移動速度で自車両の前方の車道に向かって移動していること
(B)自車両の前方の車道の周囲に存在する人が自車両の前方の車道に向かって移動しており、かつ当該人の身体の一部の動きが、人間が走るときの動きであること
(C)自車両の前方の車道の周囲に存在する自転車、車椅子または小型電動車両が自車両の前方の車道に向かって移動していること
(D)車道を渡る、人、自転車、車椅子または小型電動車両等が自車両の前方の車道上に存在すること
判断基準(A)~(C)において、車道の周囲とは、道路のうち車道以外の領域、および道路の外側であって当該道路の近傍の領域を意味する。例えば、図3において、車道32の両側にある歩道33は車道の周囲に当たる。また、判断基準(A)において、速度基準値とは、人間の平均歩行速度に基づいて定められた値である。例えば、速度基準値は人間の平均歩行速度である。本実施例では、速度基準値が時速4kmに設定されている。また、判断基準(C)における小型電動車両には電動車椅子が含まれる。
【0042】
例えば、図5に示すように、指示者37が車両停止指示を解除した時点またはその直後に、歩道33にいる人39F、39Gが、車道32上に停止している車両が発進する前に車道32を渡ろうと思い、歩道33から車道32に向かって走り出すことがある。歩道33から車道32に向かって走り出した人39F、39Gの移動速度は4kmを上回る。また、歩道33から車道32に向かって走り出した人39F、39Gの身体の一部、例えば腕および脚の動きは、人間が走るときの腕および脚の動きとなる。判断基準(A)または判断基準(B)は、自車両の前方において、車道の周囲に存在する人が車道の周囲から車道に向かって走り出しているか否かを判断するための判断基準である。
【0043】
また、図3においては、自転車40および小型電動車両42が歩道33上を走行している。図示していないが、指示者37が車両停止指示を解除した時点またはその直後に、歩道33上を走行している自転車40または小型電動車両42が、車道32上に停止している車両が発進する前に車道32を渡ろうと思い、歩道33から車道32に向かって移動することがある。判断基準(C)は、自車両の前方において、車道の周囲に存在する自転車、車椅子または小型電動車両が車道の周囲から車道に向かって移動しているか否かを判断するための判断基準である。
【0044】
また、指示者が車両停止指示を解除した時点またはその直後において、指示者が車両停止指示を解除する前に車道を渡り始めた人、自転車、車椅子または小型電動車両等が車道を渡り終えていない場合がある。判断基準(D)は、自車両の前方において、このような状況が生じていることを判断するための判断基準である。
【0045】
移動判断部22は、判断基準(A)~(D)のうちのいずれかを満たすか否かの判断を、カメラ11により撮像された自車両の前方の撮像画像に対して画像認識処理を行い、その画像認識処理の結果に基づいて行う。具体的には、判断基準(A)~(D)の判断における人、自転車、車椅子または小型電動車両の移動方向の認識、および判断基準(A)の判断における人の移動速度の認識は、例えばオプティカルフロー等の画像認識技術を用いて行う。また、判断基準(C)の判断において、人の身体の一部の動きが、人間が走るときの動きであることの認識は、例えばパターンマッチング等の画像認識技術を用いて行う。
【0046】
また、判断基準(A)~(D)の判断における人、自転車、車椅子または小型電動車両の移動方向の認識、および判断基準(A)の判断における人の移動速度の認識を、超音波センサ12を用いて行ってもよい。例えば、図5に示すように、車道32の左側の歩道33に存在する人39Fが歩道33から車道32に向かって右方向に移動したことは、自車両のフロントバンパの左端部に配置された超音波センサ12を用いて検出することができる。
【0047】
判断基準(A)~(D)のうちのいずれかを満たすと移動判断部22が判断した場合には(ステップS3~S6のうちのいずれかがYES)、制御実行部23が、自車両の運転者に対して警報を出力する(ステップS7)。具体的には、制御実行部23は、警報音出力装置17を制御し、自車両の運転者に対して警報音(電子音)を出力する。「前方に歩行者がいます」といった音声を警報音出力装置17から出力するようにしてもよい。また、制御実行部23は、表示部18を制御し、ランプを点灯または点滅させ、あるいは「前方に歩行者がいます」といったメッセージ(文字、テキストまたは画像)を、自車両の運転者に対して表示する。また、制御実行部23は、バイブレータ19を制御し、振動を発して、自車両の運転者に合図する。
【0048】
警報を出力した後、制御実行部23は、上記判断基準(A)~(D)を満たすか否かを再び判断し、上記判断基準(A)~(D)のすべてを満たさない状況となった場合には(ステップS8:YES)、警報の出力を停止する(ステップS9)。これにより、運転支援処理は終了する。
【0049】
一方、指示者が車両停止指示を解除した時点またはその直後に、上記判断基準(A)~(D)のすべてを満たさないと移動判断部22が判断した場合(ステップS3~S6のすべてがNO)、または、自車両の前方の車道上に、交通に関する指示を出す指示者が存在しないと指示判断部21が判断した場合には(ステップS1:NO)、警報を出力することなく、運転支援処理を終了する。なお、以上の運転支援処理が終了した後、自車両が発進し、さらにその後、自車両が車道上で停止したときには、この運転支援処理が再び実行される。
【0050】
以上説明した通り、本発明の実施例の運転支援装置1は、交通に関する指示を出す指示者が車両停止指示を解除した時点またはその直後において、自車両の前方の車道の周囲に存在する人が速度基準値を上回る移動速度で自車両の前方の車道に向かって移動している場合には、自車両の運転者に対して警報を出力する。車両停止指示が解除された時点またはその直後において、車道の周囲に存在する人が、人間の平均歩行速度に基づいて定められた速度基準値を上回る移動速度で車道に向かって移動しているという状況は、車道の周囲にいる人が、車両停止指示の解除により車両が発進する前に車道を渡ろうと思い、車道に向かって走っている状況である可能性が高い。すなわち、この状況は、人が車道に人が飛び出してくる状況である。本実施例の運転支援装置1は、交通整理、交通誘導等が実施されている場面において、自車両の前方の車道に人が飛び出してくる状況を、交通に関する指示を出す指示者が車両停止指示を解除したこと、および自車両の前方の車道の周囲に存在する人が速度基準値を上回る移動速度で自車両の前方の車道に向かって移動していることといった2つの判断基準で判断し、これら2つの判断基準の双方が満たされた場合に、自車両の運転者に対して警報を出力する。それゆえ、交通整理、交通誘導等が実施されている場面において、自車両の前方の車道に人が飛び出してくる状況を的確に認識することができ、その状況を自車両の運転者に確実に知らせることができる。したがって、交通整理、交通誘導等が実施されている場面において、車道に飛び出してきた人と自車両との接触を回避することができる。
【0051】
また、本発明の実施例の運転支援装置1は、指示者が車両停止指示を解除したときに、自車両の前方の車道の周囲に、自車両の前方の車道に向かって移動している人が存在することを認識する。自車両の前方の車道の周囲に、自車両の前方の車道に向かって移動している人が存在するという状況は、人が自車両の前方の車道に飛び出す直前の状況である可能性が高い。このように、本発明の実施例の運転支援装置1は、指示者が車両停止指示を解除した時点またはその直後に、人が自車両の前方の車道に飛び出す直前の状況を認識して警報を出力する。それゆえ、本発明の実施例の運転支援装置1によれば、人が自車両の前方の車道に実際に飛び出す前に、警報を出力する制御を開始することができる。これにより、警報を出力するタイミングを早めることができる。したがって、人が自車両の前方の車道に飛び出すことを自車両の運転者に早期に認識させることができ、車道に飛び出してきた人と自車両との接触を回避する確実性を高めることができる。
【0052】
また、本実施例の運転支援装置1は、交通に関する指示を出す指示者が車両停止指示を解除した時点またはその直後において、自車両の前方の車道の周囲に存在する人が自車両の前方の車道に向かって移動しており、かつ当該人の身体の一部の動きが、人間が走るときの動きである場合には、運転者に対して警報を出力する。自車両の前方の車道の周囲に存在する人が自車両の前方の車道に向かって移動しており、かつ当該人の身体の一部の動きが、人間が走るときの動きであることを認識することにより、車道の周囲にいる人が車道に向かって走っている状況、すなわち、人が車道に飛び出してくる状況を的確に認識することができる。
【0053】
また、本実施例の運転支援装置1は、人が走っている状況を、人の移動速度が速度基準値を上回っているかという判断基準と、人の身体の一部の動きが、人間が走るときの動きであるかという判断基準との2通りの判断基準で判断する。これにより、例えば、人が走っている状況を、人の移動速度が速度基準値を上回っているかという判断基準により認識することができなかった場合でも、人の身体の一部の動きが、人間が走るときの動きであるかという判断基準により認識することができる。したがって、車道の周囲にいる人が車道に向かって走っている状況の認識の確実性を高めることができる。
【0054】
また、本実施例の運転支援装置1は、交通に関する指示を出す指示者が車両停止指示を解除した時点またはその直後において、自車両の前方の車道の周囲に存在する自転車、車椅子または小型電動車両が自車両の前方の車道に向かって移動している場合には、運転者に対して警報を出力する。車両停止指示が解除された時点またはその直後において、車道の周囲に存在する自転車、車椅子または小型電動車両が、車道に向かって移動しているという状況は、車道の周囲にいる自転車、車椅子または小型電動車両が、車両停止指示の解除により車両が発進する前に車道を渡ろうとして、車道に向かって移動している状況である可能性が高い。すなわち、この状況は、自転車、車椅子または小型電動車両が車道に飛び出してくる状況である。本実施例の運転支援装置1は、交通整理、交通誘導等が実施されている場面において、自車両の前方の車道に自転車、車椅子または小型電動車両が飛び出してくる状況を、交通に関する指示を出す指示者が車両停止指示を解除したこと、および自車両の前方の車道の周囲に存在する自転車、車椅子または小型電動車両が自車両の前方の車道に向かって移動していることといった2つの判断基準により的確に認識することができ、この認識に基づいて警報を出力することにより、自転車、車椅子または小型電動車両が飛び出してくる状況を自車両の運転者に確実に知らせることができる。したがって、交通整理、交通誘導等が実施されている場面において、車道に飛び出してきた自転車、車椅子または小型電動車両と自車両との接触を回避することができる。また、本実施例の運転支援装置1によれば、指示者が車両停止指示を解除した時点またはその直後に、自転車、車椅子または小型電動車両が自車両の前方の車道に飛び出す直前の状況を認識して警報を出力するので、警報を出力するタイミングを早めることができ、自転車、車椅子または小型電動車両が自車両の前方の車道に飛び出すことを自車両の運転者に早期に認識させることができる。したがって、車道に飛び出してきた自転車、車椅子または小型電動車両と自車両との接触を回避する確実性を高めることができる。
【0055】
また、本実施例の運転支援装置1は、指示者が車両停止指示を解除したことを、指示者の手または指示具の動き、および指示者が車道上から車道の周囲に向かって移動したことに基づいて認識する。これにより、指示者が車両停止指示を解除したことの認識精度を高めることができる。
【0056】
また、本実施例の運転支援装置1は、カメラ11による撮像、または超音波センサ12による物体検出に基づいて、車両停止指示が解除されたか否かおよび車道の周囲の状況等を判断するので、運転支援装置を安価に実現することができる。
【実施例2】
【0057】
図6は、自動運転車両を制御する自動運転システム50の構成を示している。自動運転システム50は、本発明の第2の実施例の運転支援装置51および自動運転制御装置55を備えている。なお、図6に示す運転支援装置51において、図1中の運転支援装置1と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を簡略化または省略する。
【0058】
上述した第1の実施例の運転支援装置1は主に手動運転車両に適用されるものであるが、第2の実施例の運転支援装置51は主に自動運転車両に適用されるものである。図6に示すように、第2の実施例の運転支援装置51は、自車両の運転者に対して警報を出力するための警報装置(警報音出力装置、表示部およびバイブレータ)を有していない。一方、第2の実施例の運転支援装置51のCPU52は自動運転制御装置55に接続されている。自動運転制御装置55は、自車両の自動運転を制御する装置であり、自車両の走行制御をはじめ、自車両の種々の制御を行う。なお、自動運転システム50は、自車両から近距離離れた位置に存在する物体を検出することができる超音波センサ12に加え、自車両から中距離または遠距離離れた位置に存在する物体を検出することができるレーザーレーダおよびミリ波レーダ等(いずれも図示せず)を有している。自動運転システム50は、カメラ11、超音波センサ12、レーザーレーダおよびミリ波レーダ(準ミリ波レーダを含む)を用いて自車両の周囲の状況を認識し、車速センサ13を用いて自車両の速度を認識し、GPS受信機14および地図情報24を用いて自車両の現在位置等を認識し、これらの認識結果に基づいて自動運転制御装置55により自車両を制御し、自車両の自動運転を実現する。
【0059】
図7は運転支援装置51による運転支援処理を示している。この運転支援処理が図2に示す第1の実施例における運転支援処理と異なる点は、車両停止指示が解除されたか否かおよび車道の周囲の状況等の判断結果に基づいて行う制御が警報の出力・停止ではなく、自車両の停止・発進である点、およびそれらの判断結果を他車両へ送信する処理を行う点である。以下、これらの点を中心に説明する。
【0060】
図7に示す運転支援処理は、自車両の電源が投入されている間、繰り返し実行される。まず、指示判断部21が、自車両の前方の車道上に、交通に関する指示を出す指示者が存在し、その指示者が、自車両を停止させる車両停止指示を出しているか否かを判断する(ステップS11)。そして、自車両の前方の車道上に、交通に関する指示を出す指示者が存在し、その指示者が車両停止指示を出している場合、制御実行部53が自動運転制御装置55に停止指令信号を送って自車両を停止させる(ステップS12)。
【0061】
続いて、指示判断部21は、自車両の前方の車道上に存在する指示者が車両停止指示を解除したか否かを判断する(ステップS13)。そして、当該指示者が車両停止指示を解除した場合、移動判断部22が、指示者が車両停止指示を解除した時点またはその直後に、4つの判断基準(A)~(D)のうちのいずれかを満たすか否かを判断する(ステップS14~S17)。判断基準(A)~(D)は第1の実施例で説明したものと同じである。
【0062】
判断基準(A)~(D)のうちのいずれかを満たすと移動判断部22が判断した場合には、制御実行部53は自車両の停止を継続する。
【0063】
また、この場合、制御実行部53は、通信部16を制御し、ステップS13およびステップS14~S17の判断結果を、現在、自車両が存在する、交通整理、交通誘導等が実施されている場所に存在する他車両に送信する(ステップS18)。例えば、図3に示すように、交通整理、交通誘導等が実施されている場面の車道32において、自車両35が停止している車線の反対側の車線に他車両36が存在する場合、制御実行部53は、ステップS13およびステップS14~S17の判断結果を他車両36に送信する。他車両に設けられた他の運転支援装置は、受信した判断結果を用いて、他車両において運転支援を行うことができる。
【0064】
一方、指示者が車両停止指示を解除した時点またはその直後に、判断基準(A)~(D)のすべてを満たさないと移動判断部22が判断した場合、制御実行部53は、自動運転制御装置55に発進指令信号を送って自車両を発進させる(ステップS19)。また、指示者が車両停止指示を解除した時点またはその直後には判断基準(A)~(D)のうちのいずれかを満たすと移動判断部22が判断したが、その後、自車両が停止を継続している間に、自車両の前方の車道の周囲等の状況が変化し、その状況の変化を認識して判断基準(A)~(D)のすべてを満たさないと移動判断部22が判断した場合にも、制御実行部53は、自動運転制御装置55に発進指令信号を送って自車両を発進させる(ステップS19)。
【0065】
本発明の第2の実施例の運転支援装置51によっても、本発明の第1の実施例の運転支援装置1と同様に、交通整理、交通誘導等が実施されている場面において、車道に飛び出してきた人、自転車、車椅子または小型電動車両と自車両との接触を回避することができる。
【0066】
また、車両停止指示が解除されたか否かおよび車道の周囲の状況等の判断結果、具体的には、ステップS13およびステップS14~S17の判断結果を他車両へ送信することにより、交通整理、交通誘導等が実施されている場面において運転支援を行うのに有用な情報を、他車両に設けられた運転支援装置等に提供することができる。したがって、交通整理、交通誘導等が実施されている場面において、車道に飛び出してきた人、自転車、車椅子または小型電動車両と他車両との接触の回避に貢献することができる。
【0067】
なお、本発明は自動四輪車に限らず、自動二輪車または自動三輪車にも適用することができる。また、本発明は、普通自動車に限らず、トラック、バス、その他特殊車両等、動力付き車両全般に適用することができる。
【0068】
また、上記各実施例では、上記判断基準(B)の判断において、自車両の前方の車道の周囲に存在する人の身体の一部の動きが、人間が走るときの動きであるか否かを判断したが、これに代え、またはこれに加え、自車両の前方の車道の周囲に存在する人の全体の姿勢が、人間が走るときの姿勢であるか否かを判断してもよい。
【0069】
また、第2の実施例の運転支援装置51は、車両停止指示が解除されたか否かおよび車道の周囲の状況等の判断結果を他車両へ送信する機能を有しているが、この機能を第1の実施例の運転支援装置1に持たせてもよい。
【0070】
また、図3図6では、交通整理、交通誘導等が実施される場面の一例として、指示者が横断歩道を渡る歩行者等を擁護する場面をとりあげたが、交通整理、交通誘導等が実施される場面はこれに限らない。交通整理、交通誘導等が実施される他の場面として、例えば、工事等により一部通行不能である道路で交通誘導が実施される場面、ビルの建築現場の周囲の道路で建材等の落下による事故を回避するために交通誘導が実施される場面、故障や停電等のために信号機が作動しない交差点で交通整理が実施される場面、小学校等の近くの横断歩道や交差点で児童の誘導が実施される場面等がある。
【0071】
また、上記各実施例において、指示者が車両停止指示を解除した時点またはその直後に、車道を渡る人が自車両の前方の車道上に存在する場合、上記判断基準(D)を満たすこととなるので、上記第1の実施例の運転支援装置1は警報を出力し、上記第2の実施例の運転支援装置51は自車両の停止を継続する。この判断基準(D)の判断において、車道を渡る人と、車両停止指示を解除した指示者とを正確に識別するために、車道から車道の周囲に向かって移動する指示者を追随する画像認識処理を行うことが好ましい。また、車両停止指示を解除した指示者が歩道に上がらず、車道上の脇にとどまっている場合でも、その指示者以外に、車道を渡る人、自転車、車椅子または小型電動車両等が自車両の前方に存在せず、かつ車道上の脇にとどまっている指示者が自車両の進行の妨げとならないときには、警報を出力せず、または、その指示者との距離を確保しつつ自車両を発進させてもよい。
【0072】
また、本発明は、請求の範囲および明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う運転支援装置もまた本発明の技術思想に含まれる。
【符号の説明】
【0073】
1、51 運転支援装置
11 カメラ(撮像部)
12 超音波センサ(検出部)
16 通信部
20、52 CPU(制御部)
21 指示判断部
22 移動判断部
23、53 制御実行部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7