IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東洋紡株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-光電変換素子 図1
  • 特許-光電変換素子 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】光電変換素子
(51)【国際特許分類】
   H10K 30/50 20230101AFI20240501BHJP
   H10K 30/30 20230101ALI20240501BHJP
   H10K 85/10 20230101ALI20240501BHJP
   H10K 85/60 20230101ALI20240501BHJP
   C08G 61/12 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
H10K30/50
H10K30/30
H10K85/10
H10K85/60
C08G61/12
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020552924
(86)(22)【出願日】2020-05-20
(86)【国際出願番号】 JP2020019867
(87)【国際公開番号】W WO2020255609
(87)【国際公開日】2020-12-24
【審査請求日】2023-02-17
(31)【優先権主張番号】P 2019112104
(32)【優先日】2019-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】倉田 崇
(72)【発明者】
【氏名】今西 良樹
(72)【発明者】
【氏名】山上 紅里
(72)【発明者】
【氏名】田中 光
(72)【発明者】
【氏名】萩谷 一剛
【審査官】佐竹 政彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/132917(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/125822(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/066305(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/065356(WO,A1)
【文献】WEN Shuguang et al.,"A Benzobis(thiazole)-Based Copolymer for Highly Efficient Non-Fullerene Polymer Solar Cells",CHEMISTRY OF MATERIALS,2019年01月16日,Vol.31,pp.919-926,
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 30/00-99/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カソードと、活性層と、アノードとがこの順に配置された構造を有する光電変換素子であって、
前記活性層は、
下記式(1)で表されるベンゾビスチアゾール構造単位を有する高分子化合物と、
下記式(2)で表される芳香族性化合物、および/または、下記式(3)で表される芳香族性化合物を含有することを特徴とする光電変換素子。
【化1】

[式(1)中、T1、T2は、それぞれ独立に、アルコキシ基であるか、チオアルコキシ基であるか、炭化水素基またはオルガノシリル基で置換されていてもよいチオフェン環であるか、炭化水素基またはオルガノシリル基で置換されていてもよいチアゾール環であるか、炭化水素基、オルガノシリル基、アルコキシ基、チオアルコキシ基、トリフルオロメチル基、またはハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基を表す。
また、B1、B2は、それぞれ独立に、炭化水素基で置換されていてもよいチオフェン環であるか、炭化水素基で置換されていてもよいチアゾール環であるか、またはエチニレン基を表す。]
【化2】

[式(2)中、R101~R116は、それぞれ独立に、水素原子であるか、アルキル基であるか、アルコキシ基であるか、チオアルコキシ基であるか、フッ素原子であるか、アルキル基、アルコキシ基、チオアルコキシ基、またはフッ素原子で置換されていてもよいベンゼン環であるか、アルキル基、アルコキシ基、チオアルコキシ基、またはフッ素原子で置換されていてもよいチオフェン環を表す。]
【化3】

[式(3)中、R201~R214は、それぞれ独立に、水素原子であるか、アルキル基であるか、アルコキシ基であるか、チオアルコキシ基であるか、フッ素原子であるか、アルキル基、アルコキシ基、チオアルコキシ基、またはフッ素原子で置換されていてもよいベンゼン環であるか、アルキル基、アルコキシ基、チオアルコキシ基、またはフッ素原子で置換されていてもよいチオフェン環を表す。]
【請求項2】
1、T2が、それぞれ独立に、下記式(t1)~式(t5)のいずれかで表される基である請求項1に記載の光電変換素子。
【化4】

[式(t1)~式(t5)中、R13、R14は、それぞれ独立に、炭素数6~30の炭化水素基を表す。
15、R16は、それぞれ独立に、炭素数6~30の炭化水素基、または*-Si(R183で表される基を表す。
17は、それぞれ独立に、炭素数6~30の炭化水素基、*-Si(R183、*-O-R19、*-S-R20、*-CF3、またはハロゲン原子を表す。
n1は1~3の整数、n2は1または2、n3は1~5の整数をそれぞれ表し、複数のR15は同一でも異なっていてもよく、複数のR16は同一でも異なっていてもよく、複数のR17は同一でも異なっていてもよい。
18は、それぞれ独立に、炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、または炭素数6~10の芳香族炭化水素基を表し、複数のR18は同一でも異なっていてもよい。
19、R20は、それぞれ独立に、炭素数6~30の炭化水素基を表す。
*は、結合手を表す。]
【請求項3】
1、B2が、それぞれ独立に、下記式(b1)~式(b3)のいずれかで表される基である請求項1または2に記載の光電変換素子。
【化5】

[式(b1)~式(b3)中、R21、R22は、それぞれ独立に、炭素数6~30の炭化水素基を表す。
n4は0~2の整数、n5は0または1を表し、複数のR21は同一でも異なっていてもよい。
*は、結合手を表し、左側の*は、ベンゾビスチアゾール構造単位のベンゼン環に結合する結合手を表す。]
【請求項4】
前記式(1)で表されるベンゾビスチアゾール構造単位を含む高分子化合物は、ドナー-アクセプター型半導体高分子化合物である請求項1~3のいずれかに記載の光電変換素子。
【請求項5】
前記カソードと前記活性層との間に電子輸送層を有する請求項1~4のいずれかに記載の光電変換素子。
【請求項6】
前記アノードと前記活性層との間にホール輸送層を有する請求項1~5のいずれかに記載の光電変換素子。
【請求項7】
前記カソードの一方の側に基材が配置され、前記カソードの他方の側に前記活性層が配置されている請求項1~6のいずれかに記載の光電変換素子。
【請求項8】
前記アノードの一方の側に基材が配置され、前記アノードの他方の側に前記活性層が配置されている請求項1~6のいずれかに記載の光電変換素子。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の光電変換素子を備えることを特徴とする有機薄膜太陽電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カソードと、活性層と、アノードとがこの順に配置された構造を有する光電変換素子について、活性層に、特定のベンゾビスチアゾール構造単位を有する高分子化合物と、特定の構造を有する芳香族性化合物とを含有する光電変換素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機半導体材料は、有機エレクトロニクス分野において最も重要な材料の1つであり、電子供与性のp型有機半導体化合物や電子受容性のn型有機半導体化合物に分類できる。こうしたp型有機半導体化合物やn型有機半導体化合物を適切に組合せることによって様々な半導体素子を製造できる。半導体素子は、例えば、電子と正孔が再結合して形成する励起子(エキシトン)の作用によって発光する有機エレクトロルミネッセンスや、光を電力に変換する有機薄膜太陽電池、電流や電圧を制御する有機薄膜トランジスタなどの有機電子デバイスに用いられている。有機電子デバイスに用いられる有機半導体材料の一例が、例えば、特許文献1に開示されている。特許文献1に記載されている有機半導体材料は、特定のベンゾビスチアゾール骨格を有する構造単位を有する高分子化合物を含んでいる。また、特許文献2、3には、特定のベンゾビスチアゾール構造単位を有する高分子化合物を含有する光電変換素子が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2015/122321号
【文献】国際公開第2016/125822号
【文献】国際公開第2016/132917号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、有機電子デバイスの中でも有機薄膜太陽電池は、大気中への二酸化炭素放出がないため環境保全に有用であり、また簡単な構造で製造も容易であることから、需要が高まっている。有機薄膜太陽電池は、太陽光のエネルギーを電力に変換する効率(エネルギー変換効率PCE)が高いことが望まれており、エネルギー変換効率PCEは、短絡電流密度(Jsc)、開放電圧(Voc)、曲線因子(FF)、および入射エネルギー(Pin)に基づいて、次式で算出できる。
PCE=(Jsc×Voc×FF/Pin)×100
【0005】
光電変換素子のエネルギー変換効率PCEを高めるには、短絡電流密度(Jsc)、開放電圧(Voc)、または曲線因子(FF)のいずれかを向上させるか、入射エネルギー(Pin)を下げることが考えられる。これらのうち開放電圧(Voc)を向上させると、電力の高出力化が可能となり、安定した電力供給を実現できる。一方、短絡電流密度(Jsc)は、有機半導体化合物が受け取るエネルギーの量と相関することが知られており、短絡電流密度(Jsc)を向上させるには、有機半導体化合物に可視領域から近赤外領域までの広い波長範囲の光を吸収させる必要がある。有機半導体化合物が吸収できる光のうち、もっとも低いエネルギーの光の波長(もっとも長い波長)が吸収端波長であり、この波長に対応したエネルギーがバンドギャップエネルギーに相当する。そのため、有機半導体化合物により広い波長範囲の光を吸収させるには、バンドギャップ[p型有機半導体化合物のHOMO準位(最高被占軌道準位)とLUMO準位(最低空軌道準位)のエネルギー差]を狭くする必要がある。
【0006】
本発明の目的は、開放電圧(Voc)および短絡電流密度(Jsc)が高い光電変換素子を提供することにある。また、本発明の他の目的は、上記光電変換素子を備えた有機薄膜太陽電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の発明を含む。
[1] カソードと、活性層と、アノードとがこの順に配置された構造を有する光電変換素子であって、前記活性層は、下記式(1)で表されるベンゾビスチアゾール構造単位を有する高分子化合物と、下記式(2)で表される芳香族性化合物、および/または、下記式(3)で表される芳香族性化合物を含有することを特徴とする光電変換素子。
【化1】

[式(1)中、T1、T2は、それぞれ独立に、アルコキシ基であるか、チオアルコキシ基であるか、炭化水素基またはオルガノシリル基で置換されていてもよいチオフェン環であるか、炭化水素基またはオルガノシリル基で置換されていてもよいチアゾール環であるか、炭化水素基、オルガノシリル基、アルコキシ基、チオアルコキシ基、トリフルオロメチル基、またはハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基を表す。
また、B1、B2は、それぞれ独立に、炭化水素基で置換されていてもよいチオフェン環であるか、炭化水素基で置換されていてもよいチアゾール環であるか、またはエチニレン基を表す。]
【化2】

[式(2)中、R101~R116は、それぞれ独立に、水素原子であるか、アルキル基であるか、アルコキシ基であるか、チオアルコキシ基であるか、フッ素原子であるか、アルキル基、アルコキシ基、チオアルコキシ基、またはフッ素原子で置換されていてもよいベンゼン環であるか、アルキル基、アルコキシ基、チオアルコキシ基、またはフッ素原子で置換されていてもよいチオフェン環を表す。]
【化3】

[式(3)中、R201~R214は、それぞれ独立に、水素原子であるか、アルキル基であるか、アルコキシ基であるか、チオアルコキシ基であるか、フッ素原子であるか、アルキル基、アルコキシ基、チオアルコキシ基、またはフッ素原子で置換されていてもよいベンゼン環であるか、アルキル基、アルコキシ基、チオアルコキシ基、またはフッ素原子で置換されていてもよいチオフェン環を表す。]
[2] T1、T2が、それぞれ独立に、下記式(t1)~式(t5)のいずれかで表される基である[1]に記載の光電変換素子。
【化4】

[式(t1)~式(t5)中、R13、R14は、それぞれ独立に、炭素数6~30の炭化水素基を表す。
15、R16は、それぞれ独立に、炭素数6~30の炭化水素基、または*-Si(R183で表される基を表す。
17は、それぞれ独立に、炭素数6~30の炭化水素基、*-Si(R183、*-O-R19、*-S-R20、*-CF3、またはハロゲン原子を表す。
n1は1~3の整数、n2は1または2、n3は1~5の整数をそれぞれ表し、複数のR15は同一でも異なっていてもよく、複数のR16は同一でも異なっていてもよく、複数のR17は同一でも異なっていてもよい。
18は、それぞれ独立に、炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、または炭素数6~10の芳香族炭化水素基を表し、複数のR18は同一でも異なっていてもよい。
19、R20は、それぞれ独立に、炭素数6~30の炭化水素基を表す。
*は、結合手を表す。]
[3] B1、B2が、それぞれ独立に、下記式(b1)~式(b3)のいずれかで表される基である[1]または[2]に記載の光電変換素子。
【化5】

[式(b1)~式(b3)中、R21、R22は、それぞれ独立に、炭素数6~30の炭化水素基を表す。
n4は0~2の整数、n5は0または1を表し、複数のR21は同一でも異なっていてもよい。
*は、結合手を表し、左側の*は、ベンゾビスチアゾール構造単位のベンゼン環に結合する結合手を表す。]
[4] 前記式(1)で表されるベンゾビスチアゾール構造単位を含む高分子化合物は、ドナー-アクセプター型半導体高分子化合物である[1]~[3]のいずれかに記載の光電変換素子。
[5] 前記カソードと前記活性層との間に電子輸送層を有する[1]~[4]のいずれかに記載の光電変換素子。
[6] 前記アノードと前記活性層との間にホール輸送層を有する[1]~[5]のいずれかに記載の光電変換素子。
[7] 前記カソードの一方の側に基材が配置され、前記カソードの他方の側に前記活性層が配置されている[1]~[6]のいずれかに記載の光電変換素子。
[8] 前記アノードの一方の側に基材が配置され、前記アノードの他方の側に前記活性層が配置されている[1]~[6]のいずれかに記載の光電変換素子。
[9] [1]~[8]のいずれかに記載の光電変換素子を備えることを特徴とする有機薄膜太陽電池。
【発明の効果】
【0008】
本発明の光電変換素子は、カソードと、活性層と、アノードとがこの順に配置された構造を有しており、活性層が、特定のベンゾビスチアゾール構造単位を有する高分子化合物と、特定の構造を有する芳香族性化合物とを含有している。その結果、光電変換素子の開放電圧(Voc)および短絡電流密度(Jsc)の両方が高くなるため、電力の高出力化が可能となり、安定した電力供給を実現でき、しかもエネルギー変換効率PCEの向上も可能となる。また、本発明によれば、上記光電変換素子を備えた有機薄膜太陽電池を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の光電変換素子の一実施形態を示す模式図である。
図2図2は、本発明の光電変換素子の他の実施形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明者らは、開放電圧(Voc)および短絡電流密度(Jsc)の両方を向上させることによって、光電変換素子のエネルギー変換効率PCEを高めることを目指して、鋭意検討を重ねてきた。その結果、活性層に、後述する式(1)で表されるベンゾビスチアゾール構造単位を有する高分子化合物と、後述する式(2)で表される芳香族性化合物、および/または、後述する式(3)で表される芳香族性化合物とを含有させれば、可視光領域全体に幅広い光吸収を有するとともに、HOMO準位やLUMO準位を適切な範囲に調整できるため、開放電圧(Voc)を向上しながら短絡電流密度(Jsc)を向上でき、光電変換素子のエネルギー変換効率PCEを高められることを見出し、本発明を完成した。以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施形態の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、これらの内容に限定はされない。
【0011】
<1.光電変換素子>
本発明に係る光電変換素子は、カソードと、活性層と、アノードとがこの順に配置された構造を有する光電変換素子であって、前記活性層は、下記式(1)で表されるベンゾビスチアゾール構造単位を有する高分子化合物[以下、高分子化合物(1)ということがある。]と、下記式(2)で表される芳香族性化合物[以下、芳香族性化合物(2)ということがある。]、および/または、下記式(3)で表される芳香族性化合物[以下、芳香族性化合物(3)ということがある。]とを含有する光電変換素子である。
【0012】
【化6】
【0013】
[式(1)中、T1、T2は、それぞれ独立に、アルコキシ基であるか、チオアルコキシ基であるか、炭化水素基またはオルガノシリル基で置換されていてもよいチオフェン環であるか、炭化水素基またはオルガノシリル基で置換されていてもよいチアゾール環であるか、炭化水素基、オルガノシリル基、アルコキシ基、チオアルコキシ基、トリフルオロメチル基、またはハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基を表す。
また、B1、B2は、それぞれ独立に、炭化水素基で置換されていてもよいチオフェン環であるか、炭化水素基で置換されていてもよいチアゾール環であるか、またはエチニレン基を表す。]
【0014】
【化7】
【0015】
[式(2)中、R101~R116は、それぞれ独立に、水素原子であるか、アルキル基であるか、アルコキシ基であるか、チオアルコキシ基であるか、フッ素原子であるか、アルキル基、アルコキシ基、チオアルコキシ基、またはフッ素原子で置換されていてもよいベンゼン環であるか、アルキル基、アルコキシ基、チオアルコキシ基、またはフッ素原子で置換されていてもよいチオフェン環を表す。]
【0016】
【化8】
【0017】
[式(3)中、R201~R214は、それぞれ独立に、水素原子であるか、アルキル基であるか、アルコキシ基であるか、チオアルコキシ基であるか、フッ素原子であるか、アルキル基、アルコキシ基、チオアルコキシ基、またはフッ素原子で置換されていてもよいベンゼン環であるか、アルキル基、アルコキシ基、チオアルコキシ基、またはフッ素原子で置換されていてもよいチオフェン環を表す。]
【0018】
本発明に係る光電変換素子は、カソードと、活性層と、アノードとがこの順に配置された構造を有しており、本発明の一実施形態について、図面を用いて具体的に説明するが、本発明に係る光電変換素子は、図面に示した構成に限定されるわけではない。
【0019】
図1は、本発明の光電変換素子の一実施形態を示す模式図であり、一般的な有機薄膜太陽電池に用いられる光電変換素子の構成例を示している。図1に示した光電変換素子(I)は、カソード(電極)(C)と、活性層(X)と、アノード(電極)(A)とがこの順に配置された構造を有している。図1に示した実施形態では、カソード(C)の一方の側に基材(B)が配置され、カソード(C)の他方の側に活性層(X)が配置されている。図1に示した光電変換素子(I)は、更に、バッファ層として、電子輸送層(E)とホール輸送層(H)とを有している。即ち、図1に示した光電変換素子(I)は、カソード(C)と活性層(X)との間に電子輸送層(E)を有し、アノード(A)と活性層(X)との間にホール輸送層(H)を有している。従って、図1に示した実施形態では、基材(B)と、カソード(C)と、バッファ層として電子輸送層(E)と、活性層(X)と、バッファ層としてホール輸送層(H)と、アノード(A)と、がこの順に配置されている。
【0020】
図2は、本発明の光電変換素子の他の実施形態を示す模式図であり、一般的な有機薄膜太陽電池に用いられる光電変換素子の構成例を示している。図2に示した光電変換素子(II)は、カソード(電極)(C)と、活性層(X)と、アノード(電極)(A)とがこの順に配置された構造を有している。図2に示した実施形態では、アノード(A)の一方の側に基材(B)が配置され、アノード(A)の他方の側に活性層(X)が配置されている。図2に示した光電変換素子(II)は、更に、バッファ層として、電子輸送層(E)とホール輸送層(H)とを有している。即ち、図2に示した光電変換素子(II)は、カソード(C)と活性層(X)との間に電子輸送層(E)を有し、アノード(A)と活性層(X)との間にホール輸送層(H)を有している。従って、図2に示した実施形態では、基材(B)と、アノード(A)と、バッファ層としてホール輸送層(H)と、活性層(X)と、バッファ層として電子輸送層(E)と、カソード(C)と、がこの順に配置されている。以下、これらの各部について説明する。
【0021】
<1.1 活性層(X)>
活性層(X)は、光電変換が行われる層を指し、光電変換素子が光を受けると、光が活性層(X)に吸収され、p型有機半導体化合物とn型有機半導体化合物との界面で電気が発生し、発生した電気がカソード(C)およびアノード(A)から取り出される。
【0022】
上記活性層(X)は、上記式(1)で表されるベンゾビスチアゾール構造単位を有する高分子化合物[高分子化合物(1)]と、上記式(2)で表される芳香族性化合物[芳香族性化合物(2)]、および/または、上記式(3)で表される芳香族性化合物[芳香族性化合物(3)]とを含有する。高分子化合物(1)は、p型有機半導体化合物であり、芳香族性化合物(2)と芳香族性化合物(3)は、n型有機半導体化合物である。
【0023】
上記活性層(X)は、上記式(1)で表されるベンゾビスチアゾール構造単位を有する高分子化合物[高分子化合物(1)]を一種含有してもよいし、二種以上含有してもよい。また、上記活性層(X)は、p型有機半導体化合物として、更に、上記式(1)で表されるベンゾビスチアゾール構造単位を有しない有機半導体化合物を含有してもよい。以下、上記式(1)で表されるベンゾビスチアゾール構造単位を有しない有機半導体化合物を、以下、有機半導体化合物(11)ということがある。
【0024】
上記活性層(X)は、芳香族性化合物(2)または芳香族性化合物(3)のいずれか一方を含有してもよいし、芳香族性化合物(2)および芳香族性化合物(3)の両方を含有してもよく、芳香族性化合物(2)または芳香族性化合物(3)のいずれか一方を含有することが好ましい。また、上記活性層(X)は、更に、芳香族性化合物(2)または芳香族性化合物(3)以外のn型有機半導体化合物を含有してもよい。
【0025】
上記活性層(X)の膜厚は特に限定されないが、例えば、70nm以上、1000nm以下が好ましい。活性層(X)の膜厚を70nm以上とすることにより、光電変換素子のエネルギー変換効率PCEの向上が期待できる。また、活性層(X)の膜厚を70nm以上とすることにより、膜内の貫通短絡を防止できる。活性層(X)の膜厚は、70nm以上が好ましく、より好ましくは90nm以上、更に好ましくは100nm以上である。一方、一般的に、活性層(X)を厚くすればするほど、活性層(X)中で発生した電荷が、電極まで移動する距離が増加することから、電荷の電極への輸送が妨げられる。このように活性層(X)が厚い場合、光を吸収できる領域は増えるものの、光吸収によって生じた電荷の輸送が困難であることから、エネルギー変換効率PCEが低下する。そこで活性層(X)の膜厚を1000nm以下とすることにより、電極間の距離が離れすぎず電荷の拡散が良好となり、且つ活性層(X)の内部抵抗も小さくなる。活性層(X)の膜厚は、1000nm以下が好ましく、より好ましくは750nm以下、更に好ましくは500nm以下である。また、活性層(X)の膜厚を70nm以上、1000nm以下とすることにより、活性層(X)を作製するプロセスにおける再現性が一層向上する。また、活性層(X)の膜厚を70nm以上、500nm以下とすることにより、エネルギー変換効率PCEの向上に加えて、開放電圧(Voc)を確保できるため好ましい。
【0026】
[1.1.1 活性層の層構成]
活性層(X)の層構成としては、p型有機半導体化合物とn型有機半導体化合物とが積層された薄膜積層型、またはp型有機半導体化合物とn型有機半導体化合物とが混合した層を有するバルクヘテロ接合型等が挙げられる。なかでも、エネルギー変換効率PCEがより向上しうる点で、バルクヘテロ接合型の活性層が好ましい。
【0027】
上記バルクヘテロ接合型の活性層は、p型有機半導体化合物とn型有機半導体化合物とが混合された層(以下、i層ということがある。)を有する。i層は、p型有機半導体化合物とn型有機半導体化合物とが相分離した構造を有し、相界面でキャリア分離が起こり、生じたキャリア(正孔および電子)が電極まで輸送される。
【0028】
i層に含まれるp型有機半導体化合物の質量を100%としたとき、高分子化合物(1)の含有量は、50質量%以上が好ましく、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、最も好ましくは100質量%である。高分子化合物(1)はp型有機半導体化合物として好適な性質を有するため、i層に含まれるp型有機半導体化合物として高分子化合物(1)のみを含むことが最も好ましい。
【0029】
i層中でのp型有機半導体化合物とn型有機半導体化合物との質量比(p型有機半導体化合物/n型有機半導体化合物)は、良好な相分離構造を得ることによりエネルギー変換効率PCEを向上させる観点から、0.2以上が好ましく、より好ましくは0.5以上、更に好ましくは1以上であり、5以下が好ましく、より好ましくは4以下、更に好ましくは3以下、特に好ましくは2以下である。
【0030】
i層は、塗布法および蒸着法(例えば共蒸着法)を含む任意の方法によって形成できるが、塗布法を用いることによってより簡単にi層を形成できるため好ましい。上記高分子化合物(1)は、溶媒に対して良好な溶解性を有するため、塗布成膜性に優れる点で好ましい。塗布法によってi層を形成する場合、p型有機半導体化合物およびn型有機半導体化合物を含む塗布液を調製し、この塗布液を塗布すればよい。p型有機半導体化合物およびn型有機半導体化合物を含む塗布液は、p型有機半導体化合物を含む溶液とn型有機半導体化合物を含む溶液をそれぞれ調製してから混合して作製してもよいし、溶媒にp型有機半導体化合物およびn型有機半導体化合物を溶解して作製してもよい。
【0031】
塗布液中のp型有機半導体化合物とn型有機半導体化合物との合計濃度は特に限定されないが、充分な膜厚の活性層(X)を形成する観点から、塗布液全体に対して1.0質量%以上が好ましく、半導体化合物を充分に溶解させる観点から、塗布液全体に対して4.0質量%以下が好ましい。
【0032】
塗布方法としては任意の方法を用いることができ、例えば、スピンコート法、インクジェット法、ドクターブレード法、ドロップキャスティング法、リバースロールコート法、グラビアコート法、キスコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーバーコート法、パイプドクター法、含浸・コート法、カーテンコート法、またはフレキソコート法等が挙げられる。塗布液を塗布した後に、加熱等による乾燥処理を行ってもよい。
【0033】
塗布液の溶媒としては、p型有機半導体化合物およびn型有機半導体化合物を均一に溶解できるものであれば特に限定されないが、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、ノナン、またはデカン等の脂肪族炭化水素類;トルエン、キシレン、メシチレン、インダン、テトラリン、シクロヘキシルベンゼン、クロロベンゼン、またはオルトジクロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、またはデカリン等の脂環式炭化水素類;メタノール、エタノール、プロパノール、またはアニソール等の低級アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロペンタノン、またはシクロヘキサノン等の脂肪族ケトン類;アセトフェノン、またはプロピオフェノン等の芳香族ケトン類;酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、または乳酸メチル等のエステル類;クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、またはトリクロロエチレン等のハロゲン炭化水素類;エチルエーテル、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、ジブチルエーテル、ジフェニルエーテル、またはジオキサン等のエーテル類;または、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン(NMP)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)、またはジメチルアセトアミド等のアミド類;等が挙げられ、これらを単独で用いても複数を混合して用いてもよい。なかでも好ましくは、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、シクロヘキシルベンゼン、クロロベンゼン、またはオルトジクロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、またはデカリン等の脂環式炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、またはシクロヘキサノン等の脂肪族ケトン類;または、エチルエーテル、テトラヒドロフラン、またはジオキサン等のエーテル類である。
【0034】
バルクヘテロ接合型の活性層を塗布法によって形成する場合、p型有機半導体化合物とn型有機半導体化合物とを含む塗布液に添加剤を加えてもよい。バルクヘテロ接合型の活性層におけるp型有機半導体化合物とn型有機半導体化合物との相分離構造は、光吸収過程、励起子の拡散過程、励起子の乖離(キャリア分離)過程、キャリア輸送過程等に対して影響を及ぼす。従ってバルクヘテロ接合型の活性層におけるp型有機半導体化合物とn型有機半導体化合物との相分離構造を最適化することにより、良好なエネルギー変換効率PCEを実現できると考えられる。そこで、塗布液に、p型有機半導体化合物またはn型有機半導体化合物と親和性の高い添加剤を含有させることによって、好ましい相分離構造を有する活性層が得られ、エネルギー変換効率PCEを向上できると考えられる。
【0035】
上記添加剤は、活性層(X)から失われにくくなる点で、固体であるか、高沸点の液体であることが好ましい。
【0036】
具体的には、添加剤が固体の場合は、添加剤の融点(1気圧)は、通常35℃以上が好ましく、より好ましくは50℃以上、更に好ましくは80℃以上、特に好ましくは150℃以上、最も好ましくは200℃以上である。融点の上限は、例えば、400℃以下が好ましく、より好ましくは350℃以下、更に好ましくは300℃以下である。固体の添加剤としては、例えば、炭素数10以上20以下の脂肪族炭化水素類または置換基を有していてもよい炭素数10以上20以下の芳香族化合物等が挙げられ、置換基を有していてもよい炭素数10以上20以下の芳香族化合物が好ましい。芳香族化合物の具体的な例としてはナフタレン化合物が挙げられ、特にナフタレンに1以上8以下の置換基が結合した化合物が好ましい。ナフタレンに結合している置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、アミノ基、アミド基、カルボニルオキシ基、カルボキシル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、シリル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基または芳香族基が挙げられる。
【0037】
添加剤が液体の場合は、添加剤の沸点(1気圧)は、80℃以上が好ましく、より好ましくは100℃以上、更に好ましくは150℃以上である。沸点の上限は、例えば、300℃以下が好ましく、より好ましくは250℃以下、更に好ましくは200℃以下である。液体の添加剤としては、例えば、炭素数8以上9以下の脂肪族炭化水素類または置換基を有していてもよい炭素数8以上9以下の芳香族化合物等が挙げられる。脂肪族炭化水素類の具体的な例としては、ジハロゲン炭化水素化合物が挙げられ、特にオクタンに1以上8以下の置換基が結合した化合物が好ましい。オクタンに結合している置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、チオール基、アルコキシ基、チオアルコキシ基、シアノ基、アミノ基、アミド基、カルボニルオキシ基、カルボキシル基、カルボニル基、または芳香族基が挙げられる。芳香族化合物の具体的な例としては、ベンゼンが挙げられ、ハロゲン原子、水酸基、チオール基、アルコキシ基、チオアルコキシ基、シアノ基、アミノ基、アミド基、カルボニルオキシ基、カルボキシル基、またはカルボニル基などの置換基を有するベンゼン化合物、或いはハロゲン原子が4以上6以下結合しているベンゼン化合物が好ましい。より具体的には、アニソール;2-メトキシトルエン、3-メトキシトルエン、4-メトキシトルエン、2,5-ジメチルアニソールなどの1つ以上のアルコキシ基とアルキル基で置換されたベンゼン化合物;チオアニソール;エチルフェニルスルフィド;4-(メチルチオ)トルエンおよびその位置異性体;2-メトキシチオアニソールおよびその位置異性体;1-メトキシナフタレン、2-メトキシナフタレンなどのメトキシナフタレン位置異性体;1,4-ジメトキシナフタレン、1,6-ジメトキシナフタレン、1,7-ジメトキシナフタレン、2,3-ジメトキシナフタレン、2,6-ジメトキシナフタレン、2,7-ジメトキシナフタレンなどのジメトキシナフタレン位置異性体;などが挙げられる。
【0038】
上記添加剤は、p型有機半導体化合物とn型有機半導体化合物とを含む塗布液全体の質量に対して、0.1質量%以上が好ましく、より好ましくは0.5質量%以上であり、10質量%以下が好ましく、より好ましくは5質量%以下である。添加剤の量がこの範囲にあることにより、好ましい相分離構造を得ることができる。
【0039】
[1.1.2 p型有機半導体化合物]
上記活性層(X)は、p型有機半導体化合物として、高分子化合物(1)を含有する。上記高分子化合物(1)は、p型有機半導体化合物であり、下記式(1)で表されるベンゾビスチアゾール構造単位(以下、「式(1)で表される構造単位」ということがある。)を有する。
【0040】
【化9】
【0041】
上記高分子化合物(1)は、上記式(1)で表されるベンゾビスチアゾール構造単位を有するため、HOMO準位を深くしながらバンドギャップを狭めることができ、エネルギー変換効率PCEを高めるのに有利である。高分子化合物(1)は、上記式(1)で表されるベンゾビスチアゾール構造単位と、後述する共重合成分(12)とを共重合したドナー-アクセプター型半導体高分子化合物が好ましい。ドナー-アクセプター型半導体高分子化合物は、ドナー性ユニットとアクセプター性ユニットが交互に配置した高分子化合物を意味する。ドナー性ユニットは、電子供与性の構造単位を意味し、アクセプター性ユニットは、電子受容性の構造単位を意味する。前記ドナー-アクセプター型半導体高分子化合物は、式(1)で表される構造単位と、後述する共重合成分(12)とが交互に配置した高分子化合物であることが好ましい。このような構造とすることで、p型有機半導体化合物として好適に用いることができる。
【0042】
上記式(1)で表されるベンゾビスチアゾール構造単位では、T1、T2は、それぞれ独立に、アルコキシ基であるか、チオアルコキシ基であるか、チオフェン環であるか、チアゾール環であるか、フェニル基を表す。チオフェン環は、炭化水素基またはオルガノシリル基で置換されていてもよく、チアゾール環は、炭化水素基またはオルガノシリル基で置換されていてもよく、フェニル基は、炭化水素基、オルガノシリル基、アルコキシ基、チオアルコキシ基、トリフルオロメチル基、またはハロゲン原子で置換されていてもよい。上記ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素のいずれも用いることができる。
【0043】
上記オルガノシリル基は、Si原子に1個以上の炭化水素基が置換した1価の基を意味するものとし、Si原子に置換する炭化水素基の数は、2個以上が好ましく、3個がさらに好ましい。
【0044】
上記T1、T2は、互いに同一であっても異なっていてもよいが、製造が容易である観点からは、同一であることが好ましい。
【0045】
上記T1、T2は、それぞれ独立に、下記式(t1)~式(t5)のいずれかで表される基が好ましい。即ち、上記T1、T2で表されるアルコキシ基としては下記式(t1)で表される基が好ましく、上記T1、T2で表されるチオアルコキシ基としては下記式(t2)で表される基が好ましく、上記T1、T2で表されるチオフェン環としては下記式(t3)で表される基が好ましく、上記T1、T2で表されるチアゾール環としては下記式(t4)で表される基が好ましく、上記T1、T2で表されるフェニル基としては下記式(t5)で表される基が好ましい。上記T1、T2が下記式(t1)~式(t5)のいずれかで表される基であると、短波長の光を吸収することができるとともに、高い平面性を有することから効率的にπ-πスタッキングが形成されるため、エネルギー変換効率PCEをより一層高めることができる。
【0046】
【化10】
【0047】
上記式(t1)~式(t5)中、R13、R14は、それぞれ独立に、炭素数6~30の炭化水素基を表す。R15、R16は、それぞれ独立に、炭素数6~30の炭化水素基、または*-Si(R183で表される基を表す。R17は、それぞれ独立に、炭素数6~30の炭化水素基、*-Si(R183、*-O-R19、*-S-R20、*-CF3、またはハロゲン原子を表す。n1は1~3の整数、n2は1または2、n3は1~5の整数をそれぞれ表し、複数のR15は同一でも異なっていてもよく、複数のR16は同一でも異なっていてもよく、複数のR17は同一でも異なっていてもよい。R18は、それぞれ独立に、炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、または炭素数6~10の芳香族炭化水素基を表し、複数のR18は同一でも異なっていてもよい。R19、R20は、それぞれ独立に、炭素数6~30の炭化水素基を表す。*は、結合手を表す。
【0048】
上記式(t1)~式(t5)において、R13~R17で表される炭素数6~30の炭化水素基としては、分岐を有する炭化水素基が好ましく、より好ましくは分岐鎖状飽和炭化水素基である。R13~R17で表される炭化水素基が分岐を有することにより、有機溶剤への溶解度を上げることができ、高分子化合物(1)は適度な結晶性を得ることができる。
【0049】
上記R13~R17で表される炭化水素基の炭素数は、大きいほど有機溶剤への溶解度を向上させることができるが、大きくなり過ぎると後述するカップリング反応における反応性が低下するため、高分子化合物(1)の合成が困難となる。そのためR13~R17で表される炭化水素基の炭素数は6~30が好ましく、より好ましくは8~25、更に好ましくは8~20、特に好ましくは8~16である。
【0050】
上記R13~R17で表される炭化水素基としては、具体的には、n-ヘキシル基等の炭素数6のアルキル基;n-ヘプチル基等の炭素数7のアルキル基;n-オクチル基、1-n-ブチルブチル基、1-n-プロピルペンチル基、1-エチルヘキシル基、2-エチルヘキシル基、3-エチルヘキシル基、4-エチルヘキシル基、1-メチルヘプチル基、2-メチルヘプチル基、6-メチルヘプチル基、2,4,4-トリメチルペンチル基、2,5-ジメチルヘキシル基等の炭素数8のアルキル基;n-ノニル基、1-n-プロピルヘキシル基、2-n-プロピルヘキシル基、1-エチルヘプチル基、2-エチルヘプチル基、1-メチルオクチル基、2-メチルオクチル基、6-メチルオクチル基、2,3,3,4-テトラメチルペンチル基、3,5,5-トリメチルヘキシル基等の炭素数9のアルキル基;n-デシル基、1-n-ペンチルペンチル基、1-n-ブチルヘキシル基、2-n-ブチルヘキシル基、1-n-プロピルヘプチル基、1-エチルオクチル基、2-エチルオクチル基、1-メチルノニル基、2-メチルノニル基、3,7-ジメチルオクチル基等の炭素数10のアルキル基;n-ウンデシル基、1-n-ブチルヘプチル基、2-n-ブチルヘプチル基、1-n-プロピルオクチル基、2-n-プロピルオクチル基、1-エチルノニル基、2-エチルノニル基等の炭素数11のアルキル基;n-ドデシル基、1-n-ペンチルヘプチル基、2-n-ペンチルヘプチル基、1-n-ブチルオクチル基、2-n-ブチルオクチル基、1-n-プロピルノニル基、2-n-プロピルノニル基等の炭素数12のアルキル基;n-トリデシル基、1-n-ペンチルオクチル基、2-n-ペンチルオクチル基、1-n-ブチルノニル基、2-n-ブチルノニル基、1-メチルドデシル基、2-メチルドデシル基等の炭素数13のアルキル基;n-テトラデシル基、1-n-ヘプチルヘプチル基、1-n-ヘキシルオクチル基、2-n-ヘキシルオクチル基、1-n-ペンチルノニル基、2-n-ペンチルノニル基等の炭素数14のアルキル基;n-ペンタデシル基、1-n-ヘプチルオクチル基、1-n-ヘキシルノニル基、2-n-ヘキシルノニル基等の炭素数15のアルキル基;n-ヘキサデシル基、2-n-ヘキシルデシル基、1-n-オクチルオクチル基、1-n-ヘプチルノニル基、2-n-ヘプチルノニル基等の炭素数16のアルキル基;n-ヘプタデシル基、1-n-オクチルノニル基等の炭素数17のアルキル基;n-オクタデシル基、1-n-ノニルノニル基等の炭素数18のアルキル基;n-ノナデシル基等の炭素数19のアルキル基;n-エイコシル基、2-n-オクチルドデシル基等の炭素数20のアルキル基;n-ヘンエイコシル基等の炭素数21のアルキル基;n-ドコシル基等の炭素数22のアルキル基;n-トリコシル基等の炭素数23のアルキル基;n-テトラコシル基、2-n-デシルテトラデシル基等の炭素数24のアルキル基;等が挙げられる。中でも、特に好ましくは2-エチルヘキシル基、3,7-ジメチルオクチル基、2-n-ブチルオクチル基、2-n-ヘキシルデシル基、2-n-オクチルドデシル基、2-n-デシルテトラデシル基である。R13~R17で表される炭化水素基が上記の基であると、高分子化合物(1)は、有機溶剤への溶解度が向上し、適度な結晶性を有する。
【0051】
上記R13~R17で表される炭化水素基は、特に炭素数8~16の分岐鎖状アルキル基が好ましい。
【0052】
上記式(t3)~式(t5)において、R15~R17で表される*-Si(R183の基におけるR18は、それぞれ独立に、炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、または炭素数6~10の芳香族炭化水素基を表し、複数のR18は同一でも異なっていてもよい。R15~R17が*-Si(R183で表される基であると、高分子化合物(1)は、有機溶剤への溶解度が向上する。
【0053】
上記R17で表されるハロゲン原子は、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が好ましい。
【0054】
上記R18で表される脂肪族炭化水素基の炭素数は、好ましくは1~18であり、より好ましくは1~8である。R18で表される脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、イソブチル基、n-ペンチル基、tert-ペンチル基、イソペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、2-オクチルブチル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、2-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、オクタデシル基等が挙げられる。R18で表される芳香族炭化水素基の炭素数は、好ましくは6~8であり、より好ましくは6または7であり、特に好ましくは6である。R18で表される芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基等が挙げられる。中でも、R18としては、炭素数1~20の脂肪族炭化水素基が好ましく、より好ましくは分岐を有する炭素数1~20の脂肪族炭化水素基であり、特に好ましくはイソプロピル基である。
【0055】
複数のR18は、同一でも異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
【0056】
上記式(t3)~式(t5)において、R15~R17で表される*-Si(R183の基としては、具体的には、トリメチルシリル基、エチルジメチルシリル基、イソプロピルジメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソブチルシリル基、トリプロピルシリル基、トリブチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、メチルジフェニルシリル基等のアルキルシリル基;トリフェニルシリル基、tert-ブチルクロロジフェニルシリル基等のアリールシリル基;等が挙げられる。中でも、アルキルシリル基が好ましく、トリメチルシリル基またはトリイソプロピルシリル基が特に好ましい。
【0057】
上記式(t5)において、R17で表される*-O-R19または*-S-R20の基におけるR19またはR20は、それぞれ独立に、炭素数6~30の炭化水素基を表し、炭素数6~30の炭化水素基としては、上記R13~R17で表される炭素数6~30の炭化水素基として例示した基を好ましく用いることができる。
【0058】
上記式(t3)において、複数のR15は、同一でも異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。n1は1または2が好ましく、より好ましくは1である。上記式(t4)において、複数のR16は、同一でも異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。n2は1が好ましい。上記式(t5)において、複数のR17は、同一でも異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。n3は1~3の整数が好ましく、より好ましくは1または2であり、更に好ましくは1である。
【0059】
1、T2としては、電子供与性の基、或いは電子求引性の基を用いることができる。電子供与性の基としては、式(t1)~式(t3)のいずれかで表される基が挙げられる。
【0060】
【化11】
【0061】
上記式(t1)~式(t3)中、*は、ベンゾビスチアゾール構造単位のチアゾール環に結合する結合手を表す。
【0062】
上記R13~R15は、前記と同様の基を表す。n1は、上記と同義である。
【0063】
電子供与性の基としては、上記式(1)で表される構造単位全体として平面性に優れる観点から、上記式(t1)または上記式(t3)で表される基がより好ましく、上記式(t3)で表される基がさらに好ましく、下記式(t3-1)~(t3-16)で表される基が特に好ましい。下記式(t3-1)~(t3-16)中、*は結合手を表す。
【0064】
【化12】
【0065】
【化13】
【0066】
電子求引性の基としては、下記式(t4)または下記式(t5)で表される基が挙げられる。
【0067】
【化14】
【0068】
上記式(t4)、式(t5)中、*は、ベンゾビスチアゾール構造単位のチアゾール環に結合する結合手を表す。
【0069】
上記R16、R17は、前記と同様の基を表す。n2、n3は、上記と同義である。
【0070】
上記式(1)で表されるベンゾビスチアゾール構造単位では、B1、B2は、それぞれ独立に、チオフェン環であるか、チアゾール環であるか、またはエチニレン基を表す。チオフェン環は、炭化水素基で置換されていてもよく、チアゾール環は、炭化水素基で置換されていてもよい。
【0071】
上記B1、B2は、互いに同一であっても異なっていてもよいが、製造が容易である観点からは、同一であることが好ましい。
【0072】
上記B1、B2は、それぞれ独立に、下記式(b1)~式(b3)のいずれかで表される基が好ましい。即ち、上記B1、B2で表されるチオフェン環としては下記式(b1)で表される基が好ましく、上記B1、B2で表されるチアゾール環としては下記式(b2)で表される基が好ましく、上記B1、B2で表されるエチニレン基としては下記式(b3)で表される基が好ましい。上記B1、B2が下記式(b1)、式(b2)で表される基であると、上記式(1)で表されるベンゾビスチアゾール構造単位全体として平面性に優れるとともに、得られる高分子化合物(1)全体としても平面性に優れる。また、上記B1、B2が下記式(b1)、式(b2)で表される基であると、ベンゾビスチアゾール構造単位中でS原子とN原子の相互作用が生じ、平面性がさらに向上する。その結果、エネルギー変換効率PCEをより一層高めることができる。
【0073】
【化15】
【0074】
上記式(b1)~式(b3)中、R21、R22は、それぞれ独立に、炭素数6~30の炭化水素基を表す。n4は0~2の整数、n5は0または1を表し、複数のR21は同一でも異なっていてもよい。*は、結合手を表し、左側の*は、ベンゾビスチアゾール構造単位のベンゼン環に結合する結合手を表す。
【0075】
上記式(b1)、式(b2)において、R21、R22が炭素数6~30の炭化水素基であると、エネルギー変換効率PCEをより一層高められる可能性があるため好ましい。上記式(b1)、式(b2)において、R21、R22で表される炭素数6~30の炭化水素基としては、上記R13~R17で表される炭素数6~30の炭化水素基として例示した基を好ましく用いることができる。
【0076】
上記式(b1)において、複数のR21は、同一でも異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。n4は0または1が好ましく、より好ましくは0である。n4が0であると、ドナー-アクセプター型半導体ポリマーの形成が容易であるため好ましい。上記式(b2)において、n5は0が好ましい。n5が0であると、ドナー-アクセプター型半導体ポリマーの形成が容易であるため好ましい。
【0077】
上記式(1)で表されるベンゾビスチアゾール構造単位としては、具体的には、下記式(1-1)~式(1-48)で表される構造単位が挙げられる。
【0078】
【化16】
【0079】
【化17】
【0080】
【化18】
【0081】
【化19】
【0082】
【化20】
【0083】
【化21】
【0084】
上記式(1)で表されるベンゾビスチアゾール構造単位を含む高分子化合物は、ドナー-アクセプター型半導体高分子化合物であることが好ましい。
【0085】
上記式(1)で表されるベンゾビスチアゾール構造単位と組み合わせて、ドナー-アクセプター型半導体高分子化合物を形成する共重合成分(12)としては、従来公知の構造単位を用いることができ、共重合成分(12)は、ドナー性ユニットであってもよいし、アクセプター性ユニットであってもよい。共重合成分(12)としては、具体的には、以下の構造単位を挙げることができる。
【0086】
【化22】
【0087】
【化23】
【0088】
[式(c1)~(c45)中、R30~R81は、それぞれ独立に、上記R13~R17で表される炭素数6~30の炭化水素基と同様の基を表し、A30、A31は、それぞれ独立に、T1、T2と同様の基を表し、具体的には、アルコキシ基であるか、チオアルコキシ基であるか、炭化水素基またはオルガノシリル基で置換されていてもよいチオフェン環であるか、炭化水素基またはオルガノシリル基で置換されていてもよいチアゾール環であるか、炭化水素基、オルガノシリル基、アルコキシ基、チオアルコキシ基、トリフルオロメチル基、またはハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基を表す。式(c13)中、jは0~4の整数を表す。●は、式(1)で表されるベンゾビスチアゾール構造単位のB1またはB2に結合する結合手を表す。]
【0089】
上記式(c1)~式(c32)で表される基は、アクセプター性ユニットとして作用する基であり、上記式(c34)~式(c45)で表される基は、ドナー性ユニットとして作用する基である。
【0090】
上記式(c33)で表される基は、A30、A31の種類により、アクセプター性ユニットとして作用することもあれば、ドナー性ユニットとして作用することもある。
【0091】
上記高分子化合物(1)中の式(1)で表される構造単位と、共重合成分(12)の繰り返し単位の比率は、特段の制限は無いが、通常1モル%以上が好ましく、より好ましくは5モル%以上、さらに好ましくは15モル%以上、特に好ましくは30モル%以上である。一方、通常99モル%以下が好ましく、より好ましくは95モル%以下、さらに好ましくは85モル%以下、特に好ましくは70モル%以下である。なお、式(1)で表される構造単位と、共重合成分(12)の繰り返し単位の比率は、式(1)で表される構造単位の分子量と、式(1)で表される構造単位と共重合する共重合成分(12)の分子量に基づいて算出すればよい。
【0092】
上記高分子化合物(1)において、上記式(1)で表されるベンゾビスチアゾール構造単位と、共重合成分(12)との配列状態は、交互、ブロックおよびランダムのいずれでもよい。すなわち、上記高分子化合物(1)は、交互コポリマー、ブロックコポリマー、およびランダムコポリマーのいずれでもよく、より好ましくは交互コポリマーである。
【0093】
上記高分子化合物(1)において、上記式(1)で表されるベンゾビスチアゾール構造単位および共重合成分(12)は、それぞれ1種のみを含んでいてもよい。また、上記式(1)で表されるベンゾビスチアゾール構造単位を2種以上含んでいてもよいし、また、共重合成分(12)を2種以上含んでいてもよい。上記式(1)で表されるベンゾビスチアゾール構造単位および共重合成分(12)の種類に制限はないが、通常8以下が好ましく、より好ましくは5以下である。特に好ましくは式(1)で表されるベンゾビスチアゾール構造単位のうち1種と、共重合成分(12)のうち1種を交互に含んでいる高分子化合物(1)であり、最も好ましくは式(1)で表される構成単位1種のみと、共重合成分(12)1種のみを交互に含んでいる高分子化合物(1)である。
【0094】
上記高分子化合物(1)の好ましい具体例を以下に示す。以下の具体例において、RTはn-オクチル基、2-エチルヘキシル基、3,7-ジメチルオクチル基、2-n-ブチルオクチル基、2-n-ヘキシルデシル基、2-n-オクチルドデシル基、2-n-デシルテトラデシル基、トリイソプロピルシリル基を表す。R43はn-オクチル基、2-エチルヘキシル基、3,7-ジメチルオクチル基、2-n-ブチルオクチル基、2-n-ヘキシルデシル基を表す。高分子化合物(1)が複数の繰り返し単位を含む場合は、各繰り返し単位の数の比率は任意である。
【0095】
【化24】
【0096】
上記高分子化合物(1)は、長波長領域(600nm以上)に吸収を持つことが好ましい。また、高分子化合物(1)を用いた光電変換素子は、高い開放電圧(Voc)を示し、高いエネルギー変換効率PCEを示す。高分子化合物(1)をp型有機半導体化合物とし、後述する式(2)で表される芳香族性化合物および/または式(3)で表される芳香族性化合物をn型有機半導体化合物として組み合わせると、特に高いエネルギー変換効率PCEを示す。また、上記高分子化合物(1)は、HOMOエネルギー準位が低く酸化されにくい利点もある。また、上記高分子化合物(1)は溶媒に対して高溶解性を示すために、塗布成膜が容易であるという利点がある。また、塗布成膜を行う際に溶媒の選択の幅が広がるために、成膜により適した溶媒を選択でき、形成された活性層の膜質を向上させることができる。このことも、上記高分子化合物(1)を用いた光電変換素子が高いエネルギー変換効率PCEを示す一因であると考えられる。
【0097】
上記高分子化合物(1)の重量平均分子量(Mw)は、一般に、2000以上、500000以下が好ましく、より好ましくは3000以上、200000以下である。上記高分子化合物(1)の数平均分子量(Mn)は、一般に、2000以上、500000以下が好ましく、より好ましくは3000以上、200000以下である。上記高分子化合物(1)の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)は、ゲル浸透クロマトグラフィーを用い、標準試料としてポリスチレンを用いて作成した較正曲線に基づいて算出できる。
【0098】
上記高分子化合物(1)の光吸収極大波長(λmax)は、400nm以上が好ましく、より好ましくは450nm以上であり、一方、通常1200nm以下が好ましく、より好ましくは1000nm以下、さらに好ましくは900nm以下である。また、半値幅は、通常10nm以上が好ましく、より好ましくは20nm以上であり、一方、通常300nm以下が好ましい。また、上記高分子化合物(1)の吸収波長領域は太陽光の吸収波長領域に近いほど望ましい。
【0099】
上記高分子化合物(1)の溶解度は特に限定は無いが、好ましくは25℃におけるクロロベンゼンに対する溶解度が通常0.1質量%以上、より好ましくは0.4質量%以上、さらに好ましくは0.8質量%以上であり、一方、通常30質量%以下が好ましく、より好ましくは20質量%以下である。溶解性が高いことは、活性層をより厚く成膜できる点で好ましい。
【0100】
上記高分子化合物(1)は分子間で相互作用するものが好ましい。本発明において、分子間で相互作用するということは、高分子化合物の分子間でのπ-πスタッキングの相互作用等によってポリマー鎖間の距離が短くなることを意味する。相互作用が強いほど、高分子化合物が高いキャリア移動度および/または結晶性を示す傾向がある。すなわち、分子間で相互作用する高分子化合物においては分子間での電荷移動が起こりやすいため、活性層(X)内のp型有機半導体化合物(高分子化合物(1))とn型有機半導体化合物との界面で生成した正孔(ホール)を効率よくアノード(A)へ輸送できると考えられる。
【0101】
次に、上記高分子化合物(1)を製造できる方法について説明する。
【0102】
上記高分子化合物(1)は、上記式(1)で表されるベンゾビスチアゾール構造単位を有する化合物と、下記共重合成分(12)とをカップリング反応させることによって製造できる。
【0103】
上記式(1)で表されるベンゾビスチアゾール構造単位を有する化合物は、例えば、国際公開第WO2016/132917号に記載の方法で製造できる。
【0104】
上記式(1)で表されるベンゾビスチアゾール構造単位を有する化合物と、下記共重合成分(12)とのカップリング反応は、金属触媒の存在下で行えばよい。即ち、上記式(1)で表されるベンゾビスチアゾール構造単位を有する化合物と、下記式(C1)~(C45)で表される化合物のいずれかと反応させることによって行うことが可能である。こうして得られた高分子化合物(1)は、ドナー-アクセプター型高分子化合物となる。
【0105】
【化25】
【0106】
【化26】
【0107】
[式(C1)~(C45)中、R30~R81は、それぞれ独立に、上記R13~R17で表される炭素数6~30の炭化水素基と同様の基を表し、A30、A31は、それぞれ独立に、T1、T2と同様の基を表し、具体的には、アルコキシ基であるか、チオアルコキシ基であるか、炭化水素基またはオルガノシリル基で置換されていてもよいチオフェン環であるか、炭化水素基またはオルガノシリル基で置換されていてもよいチアゾール環であるか、炭化水素基、オルガノシリル基、アルコキシ基、チオアルコキシ基、トリフルオロメチル基、またはハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基を表す。式(C13)中、jは0~4の整数を表す。Xはハロゲン原子を表す。]
【0108】
(その他のp型有機半導体化合物)
上記活性層(X)は、p型有機半導体化合物として、上記高分子化合物(1)を含有し、更に、上記式(1)で表されるベンゾビスチアゾール構造単位を有しない有機半導体化合物(11)を含有してもよい。即ち、上記高分子化合物(1)と、有機半導体化合物(11)とを、混合および/または積層して上記活性層(X)を構成してもよい。併用できる有機半導体化合物(11)について、以下説明する。なお、有機半導体化合物(11)は、高分子有機半導体化合物であっても、低分子有機半導体化合物であってもよいが、高分子有機半導体化合物が好ましい。
【0109】
(有機半導体化合物(11))
有機半導体化合物(11)としては、例えば、ポリチオフェン、ポリフルオレン、ポリフェニレンビニレン、ポリチエニレンビニレン、ポリアセチレンまたはポリアニリン等の共役コポリマー半導体化合物;アルキル基やその他の置換基で置換されたオリゴチオフェン等のコポリマー半導体化合物;二種以上のモノマー単位を共重合させたコポリマー半導体化合物;等が挙げられる。
【0110】
共役コポリマーは、例えば、Handbook of Conducting Polymers,3rd Ed.(全2巻),2007、J.Polym. Sci.Part A:Polym.Chem.2013,51,743-768、J.Am.Chem.Soc.2009,131,13886-13887、Angew.Chem.Int.Ed.2013,52,8341-8344、Adv.Mater.2009,21,2093-2097等の公知文献に記載されたコポリマーやその誘導体、および記載されているモノマーの組み合わせによって合成し得るコポリマーを用いることができる。
【0111】
有機半導体化合物(11)は、一種の化合物でも複数種の化合物の混合物でもよい。有機半導体化合物(11)を用いることで吸収波長帯の追加による吸光量の増加などが期待できる。有機半導体化合物(11)の具体例としては以下のものが挙げられるが、以下のものに限定されるわけではない。
【0112】
【化27】
【0113】
【化28】
【0114】
p型有機半導体化合物のHOMO(最高被占軌道)エネルギー準位は特に限定は無く、後述のn型有機半導体化合物の種類によって選択できる。特に、n型有機半導体化合物として、芳香族性化合物(2)および/または芳香族性化合物(3)と、フラーレン化合物を併用する場合、p型有機半導体化合物のHOMOエネルギー準位の下限は、通常-7eV以上が好ましく、より好ましくは-6.5eV以上、特に好ましくは-6.2eV以上である。一方、HOMOエネルギー準位の上限は、通常-4.0eV以下が好ましく、より好ましくは-4.5eV以下、特に好ましくは-5.1eV以下である。特に、p型有機半導体化合物のHOMOエネルギー準位が-6.2eV以上であることによりp型半導体としての特性が向上し、p型有機半導体化合物のHOMOエネルギー準位が-5.1eV以下であることによりp型有機半導体化合物の安定性が向上し、開放電圧(Voc)も向上する。
【0115】
p型有機半導体化合物のLUMO(最低空軌道)エネルギー準位は特に限定は無く、後述のn型有機半導体化合物の種類によって選択できる。特に、n型有機半導体化合物として、芳香族性化合物(2)および/または芳香族性化合物(3)と、フラーレン化合物を併用する場合、p型有機半導体化合物のLUMOエネルギー準位は、通常-4.5eV以上が好ましく、より好ましくは-4.3eV以上である。p型有機半導体化合物のLUMOエネルギー準位が-4.5eV以上であることによりn型有機半導体化合物への電子移動が起こりやすくなり短絡電流密度(Jsc)が向上する。一方、LUMOエネルギー準位の上限は、通常-2.5eV以下が好ましく、より好ましくは-2.7eV以下である。p型有機半導体化合物のLUMOエネルギー準位が-2.5eV以下であることにより、バンドギャップが調整され長波長の光エネルギーを有効に吸収でき、短絡電流密度(Jsc)が向上する。
【0116】
p型有機半導体化合物のLUMOエネルギー準位が-4.5eV以上であることによりn型有機半導体化合物への電子移動が起こりやすくなり短絡電流密度(Jsc)が向上する。LUMOエネルギー準位およびHOMOエネルギー準位の算出方法は、理論的に計算値で求める方法と実際に測定する方法が挙げられる。理論的に計算値で求める方法としては、半経験的分子軌道法および非経験的分子軌道法が挙げられる。実際に測定する方法としては、紫外可視吸収スペクトル測定法または常温常圧下で、紫外線光電子分析装置(理研計器社製、「AC-3」)によりイオン化ポテンシャルを測定する方法が挙げられる。その中でも紫外線光電子分析装置を用いて測定することが好ましく、本発明では紫外線光電子分析装置として理研計器製の「AC-3」を用いるものとする。
【0117】
[1.1.3 n型有機半導体化合物]
上記活性層(X)は、下記式(2)で表される芳香族性化合物[芳香族性化合物(2)]、および/または、下記式(3)で表される芳香族性化合物[芳香族性化合物(3)]を含有する。
【0118】
上記芳香族性化合物(2)、および芳香族性化合物(3)は、いずれもn型有機半導体化合物である。n型有機半導体化合物として芳香族性化合物(2)および/または芳香族性化合物(3)を用い、p型有機半導体化合物として、上記高分子化合物(1)を用いることによって、高速かつ効率的に電荷分離ができる。
【0119】
(芳香族性化合物(2))
芳香族性化合物(2)は、下記式(2)で表される化合物である。
【0120】
【化29】
【0121】
上記式(2)中、R101~R116は、それぞれ独立に、水素原子であるか、アルキル基であるか、アルコキシ基であるか、チオアルコキシ基であるか、フッ素原子であるか、ベンゼン環であるか、チオフェン環を表す。ベンゼン環は、アルキル基、アルコキシ基、チオアルコキシ基、またはフッ素原子で置換されていてもよく、チオフェン環は、アルキル基、アルコキシ基、チオアルコキシ基、またはフッ素原子で置換されていてもよい。R101~R116で表されるアルキル基、およびR101~R116で表されるベンゼン環またはチオフェン環に置換しているアルキル基は、炭素数1~10の炭化水素基が好ましく、炭化水素基は、直鎖状であってもよいし、分岐を有していてもよい。R101~R116で表されるアルコキシ基、およびR101~R116で表されるベンゼン環またはチオフェン環に置換しているアルコキシ基は、炭素数1~10の炭化水素基の一部の炭素が酸素に置き換わった基が好ましい。R101~R116で表されるチオアルコキシ基は、およびR101~R116で表されるベンゼン環またはチオフェン環に置換しているチオアルコキシ基は、炭素数1~10の炭化水素基の一部の炭素が硫黄に置き換わった基が好ましい。R101~R116は、それぞれ独立に、水素原子であるか、アルキル基であるか、フッ素原子であるか、アルキル基、アルコキシ基、またはチオアルコキシ基で置換されているベンゼン環であるか、アルキル基で置換されているチオフェン環が好ましく、特に、水素原子であるか、アルキル基で置換されているベンゼン環がより好ましい。
【0122】
上記芳香族性化合物(2)の好ましい具体例を以下に示す。
【0123】
【化30】
【0124】
【化31】
【0125】
【化32】
【0126】
【化33】
【0127】
【化34】
【0128】
【化35】
【0129】
(芳香族性化合物(3))
芳香族性化合物(3)は、下記式(3)で表される化合物である。
【0130】
【化36】
【0131】
上記式(3)中、R201~R214は、それぞれ独立に、水素原子であるか、アルキル基であるか、アルコキシ基であるか、チオアルコキシ基であるか、フッ素原子であるか、ベンゼン環であるか、チオフェン環を表す。ベンゼン環は、アルキル基、アルコキシ基、チオアルコキシ基、またはフッ素原子で置換されていてもよく、チオフェン環は、アルキル基、アルコキシ基、チオアルコキシ基、またはフッ素原子で置換されていてもよい。R201~R214で表されるアルキル基、およびR201~R214で表されるベンゼン環またはチオフェン環に置換しているアルキル基は、炭素数1~10の炭化水素基が好ましく、炭化水素基は、直鎖状であってもよいし、分岐を有していてもよい。R201~R214で表されるアルコキシ基、およびR201~R214で表されるベンゼン環またはチオフェン環に置換しているアルコキシ基は、炭素数1~10の炭化水素基の一部の炭素が酸素に置き換わった基が好ましい。R201~R214で表されるチオアルコキシ基は、およびR201~R214で表されるベンゼン環またはチオフェン環に置換しているチオアルコキシ基は、炭素数1~10の炭化水素基の一部の炭素が硫黄に置き換わった基が好ましい。R201~R214は、それぞれ独立に、水素原子であるか、アルキル基であるか、アルコキシ基であるか、フッ素原子であるか、アルキル基、アルコキシ基、またはチオアルコキシ基で置換されているベンゼン環が好ましく、特に、水素原子であるか、アルキル基で置換されているベンゼン環がより好ましい。
【0132】
上記芳香族性化合物(3)の好ましい具体例を以下に示す。
【0133】
【化37】
【0134】
【化38】
【0135】
【化39】
【0136】
【化40】
【0137】
【化41】
【0138】
【化42】
【0139】
上記芳香族性化合物(2)と上記芳香族性化合物(3)とを比較すると、n型有機半導体化合物として上記芳香族性化合物(2)を用いた方が、エネルギー変換効率PCEが大きくなる傾向があるため好ましい。
【0140】
(その他のn型有機半導体化合物)
上記活性層(X)は、n型有機半導体化合物として、上記芳香族性化合物(2)および/または芳香族性化合物(3)を含有し、更に、上記芳香族性化合物(2)および芳香族性化合物(3)以外のn型有機半導体化合物を含有してもよい。
【0141】
即ち、上記芳香族性化合物(2)および/または芳香族性化合物(3)と、n型有機半導体化合物とを、混合および/または積層して上記活性層(X)を構成してもよい。併用できるn型有機半導体化合物について、以下説明する。なお、n型有機半導体化合物は、高分子有機半導体化合物であっても、低分子有機半導体化合物であってもよいが、高分子有機半導体化合物が好ましい。
【0142】
上記芳香族性化合物(2)および芳香族性化合物(3)以外のn型有機半導体化合物としては、一般的に、その最低空軌道(LUMO)準位が-3.5~-4.5eVであるようなπ電子共役系化合物であり、例えば、チオフェン環およびベンゼン環を含むπ電子共役系化合物、フラーレンもしくはその誘導体、オクタアザポルフィリン等、p型有機半導体化合物の水素原子をフッ素原子に置換したパーフルオロ体(例えば、パーフルオロペンタセンやパーフルオロフタロシアニン)、ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等の芳香族カルボン酸無水物やそのイミド化物を骨格として含む高分子化合物等を挙げる事ができる。これらのn型有機半導体化合物のうち、上記高分子化合物(1)と高速かつ効率的に電荷分離ができるためフラーレンもしくはその誘導体が好ましい。
【0143】
フラーレンやその誘導体としては、C60フラーレン、C70フラーレン、C76フラーレン、C78フラーレン、C84フラーレン、C240フラーレン、C540フラーレン、ミックスドフラーレン、フラーレンナノチューブ、およびこれらの一部が水素原子、ハロゲン原子、置換または無置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキル基、シリル基、エーテル基、チオエーテル基、アミノ基、シリル基等によって置換されたフラーレン誘導体を挙げることができる。フラーレン誘導体としては、フェニル-C61-酪酸エステル、ジフェニル-C62-ビス(酪酸エステル)、フェニル-C71-酪酸エステル、フェニル-C85-酪酸エステルまたはチエニル-C61-酪酸エステルが好ましく、上記の酪酸エステルのアルコール部分の炭素数は1~30が好ましく、より好ましくは1~8、さらに好ましくは1~4、最も好ましくは1である。好ましいフラーレン誘導体を例示すると、フェニル-C61-酪酸メチルエステル([60]PCBM)、フェニル-C61-酪酸n-ブチルエステル([60]PCBnB)、フェニル-C61-酪酸イソブチルエステル([60]PCBiB)、フェニル-C61-酪酸n-ヘキシルエステル([60]PCBH)、フェニル-C61-酪酸n-オクチルエステル([60]PCBO)、ジフェニル-C62-ビス(酪酸メチルエステル)(ビス[60]PCBM)、フェニル-C71-酪酸メチルエステル([70]PCBM)、フェニル-C85-酪酸メチルエステル([84]PCBM)、チエニル-C61-酪酸メチルエステル([60]ThCBM)、C60ピロリジントリス酸、C60ピロリジントリス酸エチルエステル、N-メチルフラロピロリジン(MP-C60)、(1,2-メタノフラーレンC60)-61-カルボン酸、(1,2-メタノフラーレンC60)-61-カルボン酸t-ブチルエステル、特開2008-130889号公報等のメタロセン化フラーレン、米国特許第7,329,709号明細書等の環状エーテル基を有するフラーレンが挙げられる。これらを単一で用いても、2種類以上を混合して用いても問題ない。
【0144】
<1.2 カソード(C)、アノード(A)>
カソード(C)およびアノード(A)は、光吸収により生じた正孔および電子を捕集する機能を有する。したがって、一対の電極には、電子の捕集に適した電極[即ち、カソード(C)]と、正孔の捕集に適した電極[即ち、アノード(A)]とを用いることが好ましい。一対の電極は、いずれか一方が透光性であればよく、両方が透光性であっても構わない。透光性があるとは、太陽光を40%以上透過することを指す。また、透光性を有する透明電極の太陽光線透過率は70%以上であることが、透明電極を透過させて活性層(X)に光を到達させるために好ましい。光の透過率は、通常の分光光度計で測定できる。
【0145】
カソード(C)は、活性層(X)で発生した電子をスムーズに取り出す機能を有する電極であることが好ましい。カソード(C)の膜厚は特に制限は無いが、通常10nm以上が好ましく、より好ましくは20nm以上、さらに好ましくは50nm以上である。一方、通常10μm以下が好ましく、より好ましくは1μm以下、さらに好ましくは500nm以下である。カソード(C)の膜厚が10nm以上であることにより、シート抵抗が抑えられ、カソード(C)の膜厚が10μm以下であることにより、光透過率を低下させずに光を電気に効率よく変換できる。カソード(C)が透明電極である場合には、光透過率とシート抵抗とを両立できる膜厚を選ぶ必要がある。カソード(C)のシート抵抗は特に制限は無いが、通常1Ω/sq以上が好ましく、一方、1000Ω/sq以下が好ましく、より好ましくは500Ω/sq以下、さらに好ましくは100Ω/sq以下である。
【0146】
アノード(A)は、活性層(X)で発生した正孔をスムーズに取り出す機能を有する電極であることが好ましい。アノード(A)の膜厚は特に制限は無いが、通常10nm以上が好ましく、より好ましくは20nm以上、さらに好ましくは50nm以上である。一方、通常10μm以下が好ましく、より好ましくは1μm以下、さらに好ましくは500nm以下である。アノード(A)の膜厚が10nm以上であることにより、シート抵抗が抑えられ、アノード(A)の膜厚が10μm以下であることにより、光透過率を低下させずに光を電気に効率よく変換できる。アノード(A)が透明電極である場合には、光透過率とシート抵抗とを両立できる膜厚を選ぶ必要がある。アノード(A)のシート抵抗は特に制限は無いが、通常1Ω/sq以上が好ましく、一方、1000Ω/sq以下が好ましく、より好ましくは500Ω/sq以下、さらに好ましくは100Ω/sq以下である。
【0147】
カソード(C)およびアノード(A)は、2層以上の積層構造を有していてもよい。また、カソード(C)およびアノード(A)に対して表面処理を行うことにより、特性(電気特性やぬれ特性等)を改良してもよい。
【0148】
次に、カソード(C)とアノード(A)の材料について説明する。カソード(C)とアノード(A)の材料は、基材に対する積層構造によって異なる。
【0149】
図1に示した光電変換素子の場合)
図1に示したように、カソード(C)の一方の側に基材が配置され、カソード(C)の他方の側に活性層(X)が配置されている場合、カソード(C)の材料としては、例えば、酸化ニッケル、酸化錫、酸化インジウム、酸化インジウムスズ(ITO)、インジウム-ジルコニウム酸化物(IZO)、酸化チタンまたは酸化亜鉛等の導電性金属酸化物;金、白金、銀、クロム、アルミニウム、マグネシウムまたはコバルト等の金属あるいはその合金等が挙げられる。
【0150】
図1に示した光電変換素子では、カソード(C)が透光性を有することが好ましい。カソード(C)が透明電極である場合には、ITO、酸化亜鉛または酸化錫等の透光性がある導電性金属酸化物を用いることが好ましく、特にITOを用いることがより好ましい。
【0151】
カソード(C)の形成方法としては、蒸着法若しくはスパッタ法等の真空成膜方法、またはナノ粒子や前駆体を含有するインクを塗布して成膜する湿式塗布法等が挙げられる。
【0152】
アノード(A)の材料としては、例えば、白金、金、銀、銅、鉄、錫、亜鉛、アルミニウム、インジウム、クロム、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウムまたはマグネシウム等の金属およびその合金;フッ化リチウムやフッ化セシウム等の無機塩;酸化ニッケル、酸化アルミニウム、酸化リチウム、酸化インジウムスズ(ITO)または酸化セシウムのような金属酸化物;ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアセチレン、トリフェニレンジアミンまたはポリアニリン等に、スルホン酸および/またはヨウ素等がドーピングされた導電性ポリマー、スルホニル基を置換基として有するポリチオフェン誘導体、アリールアミン等の導電性有機化合物等が挙げられる。電極保護の観点から、アノード(A)は、白金、金、銀、銅、鉄、錫、アルミニウム、カルシウムまたはインジウム等の金属およびこれらの金属を用いた合金から形成される金属電極が好ましい。
【0153】
アノード(A)の形成方法としては、蒸着法若しくはスパッタ法等の真空成膜方法、またはナノ粒子や前駆体を含有するインクを塗布して成膜する湿式塗布法等が挙げられる。
【0154】
図2に示した光電変換素子の場合)
図2に示したように、アノード(A)の一方の側に基材が配置され、アノード(A)の他方の側に活性層(X)が配置されている場合、カソード(C)の材料としては、例えば、白金、金、銀、銅、鉄、錫、亜鉛、アルミニウム、インジウム、クロム、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウム又はマグネシウム等の金属及びその合金;フッ化リチウムやフッ化セシウム等の無機塩;酸化ニッケル、酸化アルミニウム、酸化リチウム、酸化インジウムスズ(ITO)又は酸化セシウムのような金属酸化物等が挙げられる。電極保護の観点から、カソード(C)は、白金、金、銀、銅、鉄、錫、アルミニウム、カルシウム又はインジウム等の金属及びこれらの金属を用いた合金から形成される金属電極が好ましい。
【0155】
カソード(C)の形成方法としては、蒸着法若しくはスパッタ法等の真空成膜方法、またはナノ粒子や前駆体を含有するインクを塗布して成膜する湿式塗布法等が挙げられる。
【0156】
アノード(A)の材料としては、例えば、酸化ニッケル、酸化錫、酸化インジウム、酸化インジウムスズ(ITO)、インジウム-ジルコニウム酸化物(IZO)、酸化チタン又は酸化亜鉛等の導電性金属酸化物;金、白金、銀、クロム又はコバルト等の金属あるいはその合金;ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアセチレン、トリフェニレンジアミンまたはポリアニリン等に、スルホン酸および/またはヨウ素等がドーピングされた導電性ポリマー、スルホニル基を置換基として有するポリチオフェン誘導体、アリールアミン等の導電性有機化合物等が挙げられる。
【0157】
図2に示した光電変換素子では、アノード(A)が透光性を有することが好ましい。アノード(A)が透明電極である場合には、ITO、酸化亜鉛又は酸化錫等の透光性がある導電性金属酸化物を用いることが好ましく、特にITOを用いることが好ましい。
【0158】
アノード(A)の形成方法としては、蒸着法若しくはスパッタ法等の真空成膜方法、またはナノ粒子や前駆体を含有するインクを塗布して成膜する湿式塗布法等が挙げられる。
【0159】
<1.3 基材(B)>
光電変換素子は、通常は支持体となる基材(B)を有する。すなわち、基材(B)上に、電極としてカソード(C)、アノード(A)と、活性層(X)とが形成される。
【0160】
基材(B)の材料は、本発明の効果を著しく損なわない限り特に限定されない。基材(B)の材料の好適な例を挙げると、石英、ガラス、サファイアまたはチタニア等の無機材料;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール共重合体、フッ素樹脂フィルム、塩化ビニル若しくはポリエチレン等のポリオレフィン、セルロース、ポリ塩化ビニリデン、アラミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリノルボルネンまたはエポキシ樹脂等の有機材料;紙または合成紙等の紙材料;ステンレス、チタンまたはアルミニウム等の金属に、絶縁性を付与するために表面をコートまたはラミネートしたもの等の複合材料;等である。ガラスとしてはソーダガラス、青板ガラスまたは無アルカリガラス等が挙げられる。ガラスからの溶出イオンが少ない点で、これらの中でも無アルカリガラスが好ましい。
【0161】
基材(B)の形状に制限はなく、例えば、板状、フィルム状、またはシート状等のものを用いることができる。
【0162】
基材(B)の膜厚に制限はないが、通常5μm以上が好ましく、より好ましくは20μm以上であり、一方、通常20mm以下が好ましく、より好ましくは10mm以下である。基材(B)の膜厚が5μm以上であることは、光電変換素子の強度が不足する可能性が低くなるために好ましい。基材(B)の膜厚が20mm以下であることは、コストが抑えられ、かつ重量が重くならないために好ましい。特に、基材(B)の材料がガラスである場合の膜厚は、通常0.01mm以上が好ましく、より好ましくは0.1mm以上であり、一方、通常10mm以下が好ましく、より好ましくは5mm以下である。ガラス基材(B)の膜厚が0.01mm以上であることは、機械的強度が増加し、割れにくくなるために好ましい。また、ガラス基材(B)の膜厚が5mm以下であることは、重量が重くならないために好ましい。
【0163】
<1.4 バッファ層(E)、(H)>
光電変換素子は、活性層(X)とカソード(C)との間にバッファ層として電子輸送層(E)を有し、活性層(X)とアノード(A)との間にバッファ層としてホール輸送層(H)を有することが好ましい。バッファ層を設けることで、活性層(X)と、カソード(C)またはアノード(A)との間での電子または正孔の移動が容易となるほか、電極間の短絡が防止されうる。
【0164】
ホール輸送層(H)と電子輸送層(E)は、1対の電極(カソードとアノード)の間に、活性層(X)を挟むように配置される。すなわち、光電変換素子がホール輸送層(H)と電子輸送層(E)との両方を含む場合、アノード(A)、ホール輸送層(H)、活性層(X)、電子輸送層(E)、およびカソード(C)がこの順に配置される。光電変換素子がホール輸送層(H)を含み電子輸送層(E)を含まない場合は、アノード(A)、ホール輸送層(H)、活性層(X)、およびカソード(C)がこの順に配置される。光電変換素子が電子輸送層(E)を含みホール輸送層(H)を含まない場合は、アノード(A)、活性層(X)、電子輸送層(E)、およびカソード(C)がこの順に配置される。
【0165】
[1.4.1 電子輸送層(E)]
電子輸送層(E)は、活性層(X)からカソード(C)へ電子の取り出しを行う層であり、電子取り出しの効率を向上させる電子輸送性の材料であれば特段の制限はなく、有機化合物でも無機化合物でもよいが、無機化合物が好ましい。
【0166】
無機化合物の材料の好ましい例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、若しくはセシウム等のアルカリ金属の塩、または金属酸化物等が挙げられる。なかでも、アルカリ金属の塩としては、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、またはフッ化セシウムのようなフッ化物塩が好ましい。金属酸化物としては、酸化チタン(TiOx)や酸化亜鉛(ZnO)のようなn型半導体特性を有する金属酸化物が好ましい。無機化合物の材料としてより好ましくは、酸化チタン(TiOx)または酸化亜鉛(ZnO)のような、n型半導体特性を有する金属酸化物である。特に好ましくは酸化チタン(TiOx)である。このような材料の動作機構は不明であるが、カソード(VI)と組み合わされた際に、仕事関数を小さくし、太陽電池素子内部に印加される電圧を上げる事が考えられる。
【0167】
電子輸送層(E)の膜厚は特に限定はないが、通常0.1nm以上が好ましく、より好ましくは0.5nm以上、さらに好ましくは1.0nm以上であり、一方、通常200nm以下が好ましく、より好ましくは150nm以下、さらに好ましくは100nm以下、特に好ましくは70nm以下である。電子輸送層(E)の膜厚が0.1nm以上であることでバッファ材料としての機能を果たすことになる。電子輸送層(E)の膜厚が200nm以下であることで電子が取り出しやすくなり、エネルギー変換効率PCEが向上しうる。
【0168】
[1.4.2 ホール輸送層(H)]
ホール輸送層(H)は、活性層(X)からアノード(A)へ正孔の取り出しを行う層であり、正孔取り出しの効率を向上させることが可能な正孔輸送性の材料であれば特に限定されない。具体的には、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアセチレン、トリフェニレンジアミンまたはポリアニリン等に、スルホン酸および/またはヨウ素等がドーピングされた導電性ポリマー、スルホニル基を置換基として有するポリチオフェン誘導体、アリールアミン等の導電性有機化合物、三酸化モリブデン、五酸化バナジウムまたは酸化ニッケル等のp型半導体特性を有する金属酸化物、上述のp型有機半導体化合物等が挙げられる。その中でも好ましくはスルホン酸をドーピングした導電性ポリマーが挙げられ、ポリチオフェン誘導体にポリスチレンスルホン酸をドーピングしたポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT:PSS)、酸化モリブデンや酸化バナジウムなどの金属酸化物がより好ましい。また、金、インジウム、銀またはパラジウム等の金属等の薄膜も使用することができる。金属等の薄膜は、単独で形成してもよいし、上記の有機材料と組み合わせて用いることもできる。
【0169】
ホール輸送層(H)の膜厚は特に限定はないが、通常0.2nm以上が好ましく、より好ましくは0.5nm以上、さらに好ましくは1.0nm以上であり、一方、通常400nm以下が好ましく、より好ましくは200nm以下、さらに好ましくは100nm以下、特に好ましくは70nm以下である。ホール輸送層(H)の膜厚が0.2nm以上であることでバッファ材料としての機能を果たすことになる。ホール輸送層(H)の膜厚が400nm以下であることで正孔が取り出し易くなり、エネルギー変換効率PCEが向上しうる。
【0170】
電子輸送層(E)およびホール輸送層(H)の形成方法に制限はない。例えば、昇華性を有する材料を用いる場合は、真空蒸着法等により形成できる。また、例えば、溶媒に可溶な材料を用いる場合は、スピンコートやインクジェット等の湿式塗布法等により形成できる。電子輸送層(E)に半導体化合物を用いる場合は、活性層(X)と同様に、半導体化合物前駆体を含む層を形成した後に、前駆体を半導体化合物に変換してもよい。
【0171】
<1.5 光電変換素子の製造方法>
光電変換素子の製造方法に特に制限は無いが、下記の方法に従って作製できる。
【0172】
(光電変換素子(I))
光電変換素子(I)は、基材(B)、カソード(C)、電子輸送層(E)、活性層(X)、ホール輸送層(H)、およびアノード(A)を順次積層することによって作製できる。なお、上述したように、電子輸送層(E)および/またはホール輸送層(H)は必ずしも設けなくてもよい。
【0173】
上記光電変換素子(I)は、例えば、カソード(C)として酸化インジウムスズ(ITO)透明導電膜がパターニングされたガラス基板(ジオマテック社製)を、アセトンによる超音波洗浄、ついでエタノールによる超音波洗浄の後、窒素ブローで乾燥させ、UV-オゾン処理を実施しカソード付き基材(B)ができる。次いで、0.5M酢酸亜鉛・0.5Mアミノエタノール/2-メトキシエタノール溶液をスピンコーターで塗布(3000rpm、40秒)した後に175℃で30分間アニールすることによって、酸化亜鉛に変換した電子輸送層(E)を形成できる。次いで、グローブボックス内に搬入し、不活性ガス雰囲気下でp型有機半導体化合物とn型有機半導体化合物との混合溶液をスピンコートし、ホットプレート上でアニール処理もしくは減圧乾燥を実施することで活性層(X)を形成できる。次いで、減圧下にて酸化モリブデンを蒸着してホール輸送層(H)を作製できる。最後に電極である銀を蒸着し、これをアノード(A)とし、光電変換素子(I)を得ることができる。また、異なる構成を有する光電変換素子、例えば、電子輸送層(E)およびホール輸送層(H)のうちの少なくとも1つを有さない光電変換素子も、同様の方法によって作製できる。
【0174】
(光電変換素子(II))
光電変換素子(II)は、基材(B)、アノード(A)、ホール輸送層(H)、活性層(X)、電子輸送層(E)、およびカソード(C)を順次積層することによって作製できる。なお、上述したように、電子輸送層(E)および/またはホール輸送層(H)は必ずしも設けなくてもよい。
【0175】
上記光電変換素子(II)は、例えば、アノード(A)として酸化インジウムスズ(ITO)透明導電膜がパターニングされたガラス基板(ジオマテック社製)を、アセトンによる超音波洗浄、ついでエタノールによる超音波洗浄の後、窒素ブローで乾燥させ、UV-オゾン処理を実施しアノード付き基材(B)ができる。次いで、PEDOT-PSS(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-ポリ(スチレンスルホン酸))水分散体をスピンコーターで塗布(5000rpm、50秒)した後に200℃で10分間アニールすることによって、ホール輸送層(H)を形成できる。次いで、グローブボックス内に搬入し、不活性ガス雰囲気下でp型有機半導体化合物とn型有機半導体化合物との混合溶液をスピンコートし、ホットプレート上でアニール処理もしくは減圧乾燥を実施することで活性層(X)を形成できる。次いで、大気中にて、オルトチタン酸テトライソプロピルのエタノール溶液(約0.3v%)をスピンコートして雰囲気中の水分により酸化チタンに変換し、電子輸送層(E)を作製できる。最後に電極であるアルミニウムを蒸着し、これをカソード(C)とし、光電変換素子(II)を得ることができる。また、異なる構成を有する光電変換素子、例えば、ホール輸送層(H)および電子輸送層(E)のうちの少なくとも1つを有さない光電変換素子も、同様の方法によって作製できる。
【0176】
<1.6 光電変換特性>
光電変換素子の光電変換特性は次のようにして求めることができる。光電変換素子にソーラーシミュレーターでAM1.5G条件の光を照射強度100mW/cm2で照射して、電流-電圧特性を測定する。得られた電流-電圧曲線から、短絡電流密度(Jsc)、開放電圧(Voc)、曲線因子(FF)、直列抵抗、シャント抵抗、入射エネルギー(Pin)といった光電変換特性を求めることができる。また、短絡電流密度(Jsc)、開放電圧(Voc)、曲線因子(FF)、および入射エネルギー(Pin)に基づいて、次式でエネルギー変換効率PCEを算出できる。
PCE=(Jsc×Voc×FF/Pin)×100
【0177】
<2.本発明に係る有機薄膜太陽電池>
本発明に係る光電変換素子は、太陽電池、なかでも有機薄膜太陽電池の太陽電池素子として用いることが好ましい。
【0178】
本発明に係る有機薄膜太陽電池の用途に制限はなく、任意の用途に用いることができる。本発明に係る有機薄膜太陽電池は、例えば、建材用太陽電池、自動車用太陽電池、インテリア用太陽電池、センサー用太陽電池、鉄道用太陽電池、船舶用太陽電池、飛行機用太陽電池、宇宙機用太陽電池、家電用太陽電池、携帯電話用太陽電池または玩具用太陽電池等として用いることができる。
【0179】
本発明に係る有機薄膜太陽電池はそのまま用いてもよいし、基材(B)上に本発明に係る有機薄膜太陽電池を設置して太陽電池モジュールとして用いてもよい。具体例を挙げると、基材(B)として建材用板材を用いる場合、この板材の表面に本発明に係る有機薄膜太陽電池を設けることによって、太陽電池モジュールとして太陽電池パネルを作製できる。
【0180】
本願は、2019年6月17日に出願された日本国特許出願第2019-112104号に基づく優先権の利益を主張するものである。上記日本国特許出願第2019-112104号の明細書の全内容が、本願に参考のため援用される。
【実施例
【0181】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例によって制限を受けるものではなく、前記および後記の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0182】
実施例で用いた測定方法は、下記の通りである。
【0183】
(NMRスペクトル測定)
化合物について、NMRスペクトル測定装置(Agilent製(旧Varian製)の「400MR」を用いて、NMRスペクトル測定を行った。
【0184】
(ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC))
化合物について、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用い、分子量測定を行った。測定に際しては、化合物を0.5g/Lの濃度となるように移動相溶媒(クロロホルム)に溶解し、下記条件で測定を行い、ポリスチレンを標準試料として作成した較正曲線に基づいて換算することによって、化合物の数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)を算出した。測定におけるGPC条件は、下記の通りである。
移動相:クロロホルム流速は0.6mL/min
装置 :HLC-8320GPC(東ソー製)
カラム:TSKgel(登録商標)、SuperHM-H’2 + TSKgel(登録商標)、SuperH2000(東ソー製)
【0185】
まず、実施例で用いた化合物の合成条件について説明する。
【0186】
(合成例1)
2,6-ビス[5-(2-ヘキシルデシル)チオフェン-2-イル]ベンゾ[1,2-d;4,5-d’]ビスチアゾール(DBTH-HDTH)の合成
【0187】
300mLフラスコに2,6-ジヨードベンゾ[1,2-d;4,5-d’]ビスチアゾール(DBTH-DI、5.2g、11.7mmol)、トリブチル[5-(2-ヘキシルデシル)チオフェン-2-イル]スタンナン(HDT-Sn、23.2g、38.6mmol)、トリス(2-フリル)ホスフィン(443mg、1.87mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)-クロロホルム付加体(490mg、0.47mol)、およびN,N-ジメチルホルムアミド(115mL)を加えて120℃で23時間反応した。反応終了後、室温まで冷却した後に水を加えクロロホルムで2回抽出して、有機層を水洗した後に無水硫酸マグネシウムで乾燥した。次いで、ろ過・濃縮して得られた粗品をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、クロロホルム/ヘキサン=1/1)で精製することで、2,6-ビス[5-(2-ヘキシルデシル)チオフェン-2-イル]ベンゾ[1,2-d;4,5-d’]ビスチアゾール(DBTH-HDTH)が5.62g、薄黄色固体として得られた(収率60%)。1H-NMR測定により、目的とする化合物が生成したことを確認した。
1H-NMR(400MHz,CDCl3):δ 8.39 (s, 2H), 7.53 (d, J= 3.6 Hz, 2H), 6.81 (d, J = 3.6 Hz, 2H), 2.81 (m, 4H), 1.66 (m, 2H), 1.37-1.24 (m, 48H), 0.90 (t, J = 6.4 Hz, 6H), 0.88 (t, J = 6.4 Hz, 6H).
【0188】
【化43】
【0189】
(合成例2)
2,6-ビス[5-(2-ヘキシルデシル)チオフェン-2-イル]-4,8-ジヨードベンゾ[1,2-d;4,5-d’]ビスチアゾール(DI-DBTH-HDTH)の合成
【0190】
100mLフラスコに、上記合成例1で得られた2,6-ビス[5-(2-ヘキシルデシル)チオフェン-2-イル]ベンゾ[1,2-d;4,5-d’]ビスチアゾール(DBTH-HDTH、4g、4.97mmol)と、テトラヒドロフラン(80mL)を加えて-40℃に冷却した後にリチウムジイソプロピルアミド(2M溶液、5.5mL、10.9mmol)を滴下して30分攪拌した。次いで、ヨウ素(3.8g、14.9mol)を加えた後に室温で2時間反応した。反応終了後、10質量%亜硫酸水素ナトリウムを加えクロロホルムで抽出して、得られた有機層を飽和重曹水、次いで飽和食塩水で洗浄して無水硫酸マグネシウムを用いて乾燥した。次いで、ろ過・濃縮して得られた粗品をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、クロロホルム/ヘキサン=1/1)で精製することで、2,6-ビス[5-(2-ヘキシルデシル)チオフェン-2-イル]-4,8-ジヨードベンゾ[1,2-d;4,5-d’]ビスチアゾール(DI-DBTH-HDTH)が2.66g、黄色固体として得られた(収率51%)。1H-NMR測定により、目的とする化合物が生成したことを確認した。
1H-NMR(400MHz,CDCl3):δ 7.53 (d, J = 3.6 Hz, 2H), 6.81 (d, J = 3.6 Hz, 2H), 2.80 (m, 4H), 1.70 (m, 2H), 1.36-1.24 (m, 48H), 0.89 (t, J = 6.4 Hz, 6H), 0.86 (t, J= 6.4 Hz, 6H).
【0191】
【化44】
【0192】
(合成例3)
2,6-ビス[5-(2-ヘキシルデシル)チオフェン-2-イル]-4,8-ジチオフェン-2-イル-ベンゾ[1,2-d;4,5-d’]ビスチアゾール(DTH-DBTH-HDTH)の合成
【0193】
50mLフラスコに、上記合成例2で得られた2,6-ビス[5-(2-ヘキシルデシル)チオフェン-2-イル]-4,8-ジヨードベンゾ[1,2-d;4,5-d’]ビスチアゾール(DI-DBTH-HDTH、1.1g、1.04mmol)と、トリブチルチオフェン-2-イル-スタンナン(830μL、2.60mmol)、トリス(2-フリル)ホスフィン(40mg、0.17mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)-クロロホルム付加体(45mg、0.04mmol)、およびN,N-ジメチルホルムアミド(22mL)を加えて80℃で19時間反応した。反応終了後、室温まで冷却した後に水を加えクロロホルムで2回抽出して、有機層を水洗した後に無水硫酸マグネシウムで乾燥した。次いで、ろ過・濃縮して得られた粗品をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、クロロホルム/ヘキサン=1/1~クロロホルム)で精製することで、2,6-ビス[5-(2-ヘキシルデシル)チオフェン-2-イル]-4,8-ジチオフェン-2-イル-ベンゾ[1,2-d;4,5-d’]ビスチアゾール(DTH-DBTH-HDTH)が1.01g、黄色固体として得られた(収率100%)。1H-NMR測定により、目的とする化合物が生成したことを確認した。
1H-NMR(400MHz,CDCl3):δ 8.00 (dd, J = 4.0, 0.8 Hz, 2H), 7.58 (dd, J = 5.2, 0.8 Hz, 2H), 7.55 (d, J = 4.0 Hz, 2H), 7.27 (dd, J = 5.2, 4.0 Hz, 2H), 6.81 (d, J = 4.0 Hz, 2H), 2.81 (m, 4H), 1.72 (m, 2H), 1.34-1.25 (m, 48H), 0.89 (t, J = 6.4 Hz, 6H), 0.87 (t, J = 6.4 Hz, 12H).
【0194】
【化45】
【0195】
(合成例4)
2,6-ビス[5-(2-ヘキシルデシル)チオフェン-2-イル]-4,8-ビス(5-トリメチルスタンニルチオフェン-2-イル)-ベンゾ[1,2-d;4,5-d’]ビスチアゾール(DTH-DBTH-HDTH-DSM)の合成
【0196】
30mLフラスコに、上記合成例3で得られた2,6-ビス[5-(2-ヘキシルデシル)チオフェン-2-イル]-4,8-ジチオフェン-2-イル-ベンゾ[1,2-d;4,5-d’]ビスチアゾール(DTH-DBTH-HDTH、700mg、0.72mmol)と、テトラヒドロフラン(14mL)を加え-50℃に冷却してリチウムジイソプロピルアミド(2M溶液、0.79mL、1.58mmol)を滴下して30分攪拌した。その後、トリメチルすずクロリド(1M溶液、16mL、1.58mmol)を加え室温に昇温して2時間攪拌した。反応終了後、水を加えトルエンで2回抽出して、有機層を水洗した後に無水硫酸マグネシウムで乾燥した。次いで、ろ過・濃縮して得られた粗品をGPC-HPLC(JAIGEL-1H、2H、クロロホルム)で精製することで、2,6-ビス[5-(2-ヘキシルデシル)チオフェン-2-イル]-4,8-ビス(5-トリメチルスタンニルチオフェン-2-イル)-ベンゾ[1,2-d;4,5-d’]ビスチアゾール(DTH-DBTH-HDTH-DSM)が518mg、黄色固体として得られた(収率55%)。1H-NMR測定により、目的とする化合物が生成したことを確認した。
1H-NMR(400MHz,CDCl3):δ 8.16 (d, J = 3.6 Hz, 2H), 7.56 (d, J = 3.6 Hz, 2H), 7.37 (d, J = 3.6 Hz, 2H), 6.82 (d, J = 3.6 Hz, 2H), 2.82 (m, 4H), 1.71 (m, 2H), 1.35-1.25 (m, 48H), 0.88 (t, J = 6.4 Hz, 6H), 0.87 (t, J= 6.4 Hz, 6H), 0.47 (s, 18H).
【0197】
【化46】
【0198】
(合成例5)
P-THDT-DBTH-EH-IMTHの合成
【0199】
20mLフラスコに、上記合成例4で得られた2,6-ビス[5-(2-ヘキシルデシル)チオフェン-2-イル]-4,8-ビス(5-トリメチルスタンニルチオフェン-2-イル)-ベンゾ[1,2-d;4,5-d’]ビスチアゾール(DTH-DBTH-HDTH-DSM、100mg、0.08mmol)と、1,3-ジブロモ-5-(2-エチルヘキシル)チエノ-[3,4-c]ピローロ-4,6-ジオン(EH-IMTH-DB、33mg、0.08mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)-クロロホルム付加体(3mg、3μmol)、トリス(2-メトキシフェニル)ホスフィン(5mg、12μmol)、およびクロロベンゼン(6mL)を加え120℃で24時間反応した。反応終了後、メタノール(60mL)に反応液を加えて析出した固体をろ取し、得られた固体をソックスレー洗浄(メタノール、アセトン、ヘキサン)した。次いで、クロロホルムを用いてソックスレー抽出し、P-THDT-DBTH-EH-IMTHを85mg、黒色固体として得た(収率90%)。得られた黒色固体について、GPCを用いて分子量測定を行った結果、数平均分子量(Mn)は25000、重量平均分子量(Mw)は63000であった。
【0200】
【化47】
【0201】
(合成例6)
P-THDT-DBTH-O-IMTHの合成
【0202】
20mLフラスコに、上記合成例4で得られた2,6-ビス[5-(2-ヘキシルデシル)チオフェン-2-イル]-4,8-ビス(5-トリメチルスタンニルチオフェン-2-イル)-ベンゾ[1,2-d;4,5-d’]ビスチアゾール(DTH-DBTH-HDTH-DSM、90mg、0.07mmol)と、1,3-ジブロモ-5-オクチルチエノ[3,4-c]ピローロ-4,6-ジオン(O-IMTH-DB、30mg、0.07mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)-クロロホルム付加体(3mg、2μmol)、トリス(2-メトキシフェニル)ホスフィン(4mg、12μmol)、およびクロロベンゼン(7mL)を加え120℃で24時間反応した。反応終了後、メタノール(50mL)に反応液を加えて析出した固体をろ取し、得られた固体をソックスレー洗浄(メタノール、アセトン、ヘキサン)した。次いで、クロロホルムを用いてソックスレー抽出し、P-THDT-DBTH-O-IMTHを74mg、黒色固体として得た(収率87%)。得られた黒色固体について、GPCを用いて分子量測定を行った結果、数平均分子量(Mn)は7100、重量平均分子量(Mw)は15100であった。
【0203】
【化48】
【0204】
(合成例7)
P-THDT-DBTH-DMO-IMTHの合成
【0205】
20mLフラスコに、上記合成例4で得られた2,6-ビス[5-(2-ヘキシルデシル)チオフェン-2-イル]-4,8-ビス(5-トリメチルスタンニルチオフェン-2-イル)-ベンゾ[1,2-d;4,5-d’]ビスチアゾール(DTH-DBTH-HDTH-DSM、100mg、0.08mmol)と、1,3-ジブロモ-5-(3,7-ジメチルオクチル)チエノ[3,4-c]ピローロ-4,6-ジオン(DMO-IMTH-DB、35mg、0.08mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)-クロロホルム付加体(3mg、3μmol)、トリス(2-メトキシフェニル)ホスフィン(4mg、12μmol)、およびクロロベンゼン(4mL)を加え120℃で24時間反応した。反応終了後、メタノール(50mL)に反応液を加えて析出した固体をろ取し、得られた固体をソックスレー洗浄(メタノール、アセトン、ヘキサン)した。次いで、クロロホルムを用いてソックスレー抽出し、P-THDT-DBTH-DMO-IMTHを80mg、黒色固体として得た(収率83%)。得られた黒色固体について、GPCを用いて分子量測定を行った結果、数平均分子量(Mn)は11000、重量平均分子量(Mw)は24000であった。
【0206】
【化49】
【0207】
次に、上記合成例5~7で得られた高分子化合物をp型有機半導体化合物として用い、p型有機半導体化合物とn型有機半導体化合物との混合溶液を作製した。
【0208】
<実施例1>
実施例1では、p型有機半導体化合物として、上記合成例5で得られたP-THDT-DBTH-EH-IMTHの構造を有する高分子化合物を用い、n型有機半導体化合物として、下記式で示される1-Material社製のITICを用いた。p型有機半導体化合物とn型有機半導体化合物の質量比を、p型有機半導体化合物:n型有機半導体化合物=1:1としてクロロベンゼンに溶解させて溶液を調製した。p型有機半導体化合物とn型有機半導体化合物の合計濃度は2.4質量%とした。得られた溶液をホットスターラー上で100℃の温度にて2時間以上攪拌混合した。攪拌混合後の溶液を0.45μmのフィルターで濾過することにより、p型有機半導体化合物とn型有機半導体化合物との混合溶液1を作製した。
【0209】
【化50】
【0210】
<実施例2>
実施例2では、p型有機半導体化合物として、上記合成例5で得られたP-THDT-DBTH-EH-IMTHの構造を有する高分子化合物を用い、n型有機半導体化合物として、上記実施例1で用いた1-Material社製のITIC、およびフロンティアカーボン社製のPC61BM(フェニルC61酪酸メチルエステル)を用いた。p型有機半導体化合物、ITIC、およびPC61BMの質量比を、p型有機半導体化合物:ITIC:PC61BM=1:1:1としてクロロベンゼンに溶解させて溶液を調製した。p型有機半導体化合物とn型有機半導体化合物の合計濃度は2.4質量%とした。得られた溶液をホットスターラー上で100℃の温度にて2時間以上攪拌混合した。攪拌混合後の溶液を0.45μmのフィルターで濾過することにより、p型有機半導体化合物とn型有機半導体化合物との混合溶液2を作製した。
【0211】
<実施例3>
実施例3では、p型有機半導体化合物として、上記合成例6で得られたP-THDT-DBTH-O-IMTHの構造を有する高分子化合物を用い、n型有機半導体化合物として、下記式で示される1-Material社製のITIC-Mを用いた。p型有機半導体化合物とn型有機半導体化合物の質量比を、p型有機半導体化合物:n型有機半導体化合物=1:1としてクロロベンゼンに溶解させて溶液を調製した。p型有機半導体化合物とn型有機半導体化合物の合計濃度は2.4質量%とした。得られた溶液をホットスターラー上で100℃の温度にて2時間以上攪拌混合した。攪拌混合後の溶液を0.45μmのフィルターで濾過することにより、p型有機半導体化合物とn型有機半導体化合物との混合溶液3を作製した。
【0212】
【化51】
【0213】
<実施例4>
実施例4では、p型有機半導体化合物として、上記合成例6で得られたP-THDT-DBTH-O-IMTHの構造を有する高分子化合物を用い、n型有機半導体化合物として、下記式で示される1-Material社製の4TICを用いた。p型有機半導体化合物とn型有機半導体化合物の質量比を、p型有機半導体化合物:n型有機半導体化合物=1:1としてクロロベンゼンに溶解させて溶液を調製した。p型有機半導体化合物とn型有機半導体化合物の合計濃度は2.4質量%とした。得られた溶液をホットスターラー上で100℃の温度にて2時間以上攪拌混合した。攪拌混合後の溶液を0.45μmのフィルターで濾過することにより、p型有機半導体化合物とn型有機半導体化合物との混合溶液4を作製した。
【0214】
【化52】
【0215】
<実施例5>
実施例5では、p型有機半導体化合物として、上記合成例7で得られたP-THDT-DBTH-DMO-IMTHの構造を有する高分子化合物を用い、n型有機半導体化合物として、上記実施例1で用いた1-Material社製のITICを用いた。p型有機半導体化合物とn型有機半導体化合物の質量比を、p型有機半導体化合物:n型有機半導体化合物=1:1としてクロロベンゼンに溶解させて溶液を調製した。p型有機半導体化合物とn型有機半導体化合物の合計濃度は2.4質量%とした。得られた溶液をホットスターラー上で100℃の温度にて2時間以上攪拌混合した。攪拌混合後の溶液を0.45μmのフィルターで濾過することにより、p型有機半導体化合物とn型有機半導体化合物との混合溶液5を作製した。
【0216】
<実施例6>
実施例6では、p型有機半導体化合物として、上記合成例7で得られたP-THDT-DBTH-DMO-IMTHの構造を有する高分子化合物を用い、n型有機半導体化合物として、上記実施例1で用いた1-Material社製のITIC、およびフロンティアカーボン社製のPC71BM(フェニルC71酪酸メチルエステル)を用いた。p型有機半導体化合物、ITIC、およびPC71BMの質量比を、p型有機半導体化合物:ITIC:PC71BM=2:1:1としてクロロベンゼンに溶解させて溶液を調製した。p型有機半導体化合物とn型有機半導体化合物の合計濃度は2.4質量%とした。得られた溶液をホットスターラー上で100℃の温度にて2時間以上攪拌混合した。攪拌混合後の溶液を0.45μmのフィルターで濾過することにより、p型有機半導体化合物とn型有機半導体化合物との混合溶液6を作製した。
【0217】
次に、実施例1~6で得られた混合溶液を用いて光電変換素子を作製し、下記の手順で評価した。
【0218】
(光電変換素子の作製)
電極である酸化インジウムスズ(ITO)透明導電膜(カソード)がパターニングされたジオマテック社製のガラス基板を、アセトンによる超音波洗浄し、次いでエタノールによる超音波洗浄した後、窒素ブローで乾燥させた。乾燥したガラス基板にUV-オゾン処理を実施した後、電子輸送層を形成した。電子輸送層は、ガラス基板に、0.5M酢酸亜鉛・0.5Mアミノエタノール/2-メトキシエタノール溶液をスピンコーターで塗布(3000rpm、40秒)した後、175℃で30分間アニールして形成した。電子輸送層を形成したガラス基板をグローブボックス内に搬入し、不活性ガス雰囲気下でp型有機半導体化合物とn型有機半導体化合物との混合溶液1~6をスピンコートし、ホットプレート上でアニール処理を実施した。アニール処理は、110℃で15分間行った。次に、蒸着機にて、ホール輸送層である酸化モリブデンを蒸着した。その後、電極(アノード)である銀を蒸着して逆型構成デバイスである光電変換素子を作製した。得られた逆型構成デバイスについて、光電変換素子の評価を下記手順でソーラーシミュレーターを用いて行った。
【0219】
(光電変換素子の評価方法)
光電変換素子に0.05027mm角のメタルマスクを付け、照射光源としてソーラーシミュレーター(OTENTO-SUNIII、AM1.5Gフィルター、放射強度100mW/cm2、分光計器製)を用い、ソースメーター(ケイスレー社製,2400型)により、ITO電極と銀電極との間における電流-電圧特性を測定した。この測定結果から、短絡電流密度Jsc(mA/cm2)、開放電圧Voc(V)、曲線因子FF、およびエネルギー変換効率PCE(%)を算出した。短絡電流密度Jscとは、電圧値が0Vのときの電流密度である。開放電圧Vocとは、電流値が0mA/cm2のときの電圧値である。曲線因子FFとは、内部抵抗を表すファクターであり、最大出力をPmaxとすると次式で表される。
FF=Pmax/(Jsc×Voc)
エネルギー変換効率PCEは、入射エネルギーをPinとすると次式で与えられる。
PCE=(Pmax/Pin)×100=(Jsc×Voc×FF/Pin)×100
【0220】
【表1】
【0221】
本発明の光電変換素子は、短絡電流密度(Jsc)および開放電圧(Voc)が高く、エネルギー変換効率PCEが高くなっている。また、n型有機半導体化合物として上記芳香族性化合物(2)を用いた方が、エネルギー変換効率PCEが大きくなることが分かる。
【符号の説明】
【0222】
I、II 光電変換素子
A アノード
H ホール輸送層
X 活性層
E 電子輸送層
C カソード
B 基材
図1
図2