(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 31/08 20060101AFI20240501BHJP
H01R 13/405 20060101ALI20240501BHJP
H01R 13/42 20060101ALI20240501BHJP
H01R 13/52 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
H01R31/08 Z
H01R13/405
H01R13/42 B
H01R13/42 E
H01R13/52 301H
(21)【出願番号】P 2021009349
(22)【出願日】2021-01-25
【審査請求日】2023-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中居 和雄
【審査官】鎌田 哲生
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-073911(JP,A)
【文献】特開2010-177045(JP,A)
【文献】特開2013-101856(JP,A)
【文献】特開2014-035947(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0403346(US,A1)
【文献】米国特許第6341984(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/40-13/533
H01R 27/00-31/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タブを有する雄端子と、前記タブに接続可能な雌端子と、ハウジングと、を備え、
前記ハウジングは、
前記雄端子を保持する保持部と、
前記雌端子を収容する
複数のキャビティと、を有し、
前記キャビティの一端は、前記保持部の壁面によって閉塞され、
前記タブは、前記保持部の壁面から前記キャビティ内に突出して配置され
、
さらに、前記ハウジングは、各キャビティ内に突出し、前記雌端子を係止する撓み変形可能な複数のランスと、前記ハウジングの外面から各ランスに臨む位置にかけて貫通する開口部と、を有し、
前記開口部内には栓部およびシール部材が配置され、
前記開口部は、前記各ランスの撓み空間と連通するように区画された複数のシール空間を有し、
前記シール部材は、各シール空間に挿入される複数の筒状のシール部を有し、
各シール部の内周面が前記栓部の外周面に密着し、前記各シール部の外周面が前記各シール空間の内周面に密着するように構成された、コネクタ。
【請求項2】
前記雄端子は、前記保持部にインサート保持されている、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記栓部は、前記ランスの撓み動作を規制するリテーナに設けられている、請求項1または請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記シール部材は、前記各シール部を連結するブリッジ部を有している、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されたコネクタは、端子挿入部および導体保持部を有するハウジングと、端子挿入部に挿入される端子と、導体保持部に保持される接続用導体と、ハウジングに装着される蓋部材と、を備える。接続用導体は、複数の嵌合部と、各嵌合部を連結する連結部と、を有している。各嵌合部は、端子の雌型電気接触部に接続される。
【0003】
特許文献2に開示されたコネクタは、互いに嵌合可能なオスハウジングおよびメスハウジングを備える。オスハウジングは、オス端子(ジョイント端子)を保持する。メスハウジングは、メス端子を収容する端子収容室を有している。ジョイント端子は、複数の接触部と、各接触部を連結する連結部と、を有している。各接触部は、メス端子の接触バネ片に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-177045号公報
【文献】特開2014-35947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の場合、端子は、端子挿入部に挿入され、接続用導体の連結部に当て止めされる。接続用導体には、ハウジングから抜け出す方向に端子の挿入力が作用する。このため、接続用端子の抜け出しを規制する蓋部材の存在が不可欠になる。
【0006】
特許文献2の場合、メス端子は、端子収容室に挿入され、メスハウジングの前壁に当て止めされる。このため、オスハウジングおよびメスハウジングの両ハウジングが必要になる。しかし、両ハウジングのうちの一方を省略することができれば、部品点数を削減することができ、好ましいと言える。
【0007】
そこで、本開示は、部品点数を削減することが可能なコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のコネクタは、タブを有する雄端子と、前記タブに接続可能な雌端子と、ハウジングと、を備え、前記ハウジングは、前記雄端子を保持する保持部と、前記雌端子を収容するキャビティと、を有し、前記キャビティの一端は、前記保持部の壁面によって閉塞され、前記タブは、前記保持部の壁面から前記キャビティ内に突出して配置されている、コネクタである。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、部品点数を削減することが可能なコネクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態1に係るコネクタにおいて、リテーナが本係止位置にある場合の平面図である。
【
図3】
図3は、リテーナが仮係止位置にある場合の平面図である。
【
図5】
図5は、雄端子をインサートしたハウジングの正面図である。
【
図6】
図6は、雄端子をインサートしたハウジングの背面図である。
【
図8】
図8は、雄端子を捻り部で切断した場合の正面図である。
【
図11】
図11は、本開示の実施形態2に係るコネクタにおいて、リテーナがハウジングに正規に装着された場合の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示のコネクタは、
(1)タブを有する雄端子と、前記タブに接続可能な雌端子と、ハウジングと、を備え、前記ハウジングは、前記雄端子を保持する保持部と、前記雌端子を収容するキャビティと、を有し、前記キャビティの一端は、前記保持部の壁面によって閉塞され、前記タブは、前記保持部の壁面から前記キャビティ内に突出して配置されている。
雄端子が保持部に保持された状態で、キャビティ内に雌端子が挿入される。雌端子は、保持部の壁面に当て止めされ、雄端子のタブと接続される。雄端子を保持する保持部と雌端子を収容するキャビティは、雄ハウジングと雌ハウジングに別々に設けられず、共通のハウジングに設けられている。このため、部品点数を削減することができる。
また、雌端子が保持部の壁面に当て止めされることで、雌端子の挿入力が雄端子に直接作用するのを回避することができる。よって、ハウジングとは別に雄端子の抜け出しを規制する格別の構造を設ける必要がない。
【0012】
(2)前記雄端子は、前記保持部にインサート保持されているのが好ましい。
これによれば、雄端子と保持部との一体性を高めることができるとともに、保持部の壁面を、雌端子を当て止め可能な形状に精度良く形成することができる。
【0013】
(3)前記ハウジングは、前記キャビティ内に突出し、前記雌端子を係止するランスと、前記ハウジングの外面から前記ランスに臨む位置にかけて貫通する開口部と、を有し、前記開口部内には栓部が配置されると良い。
ハウジングには、ランスを形成する金型の抜きに起因し、開口部が形成されてしまう。開口部が形成されると、ハウジングの外面から開口部を通してキャビティ内に異物が入り込む可能性がある。しかるに上述した構成によれば、栓部によって、キャビティ内に異物が入り込むのを防止することができる。
【0014】
(4)前記栓部と前記開口部との間を封止するシール部を備えると良い。
これによれば、開口部からキャビティ内に水や油等が入り込むのを防止することもできる。
【0015】
(5)前記栓部は、前記ランスの撓み動作を規制するリテーナに設けられていると良い。
これによれば、栓部がリテーナ機能を有することになるため、専用部品化することがなく、汎用性に優れる。
【0016】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態に係るコネクタの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0017】
<実施形態1>
実施形態1に係るコネクタ10は、
図2および
図4に示すように、ハウジング20と、雄端子50と、雌端子70と、リテーナ80と、シール部材90と、を備える。雄端子50は、ハウジング20に対してインサートにより一体に保持される。雌端子70は、ハウジング20に収容される。雄端子50と雌端子70は、ハウジング20内で互いに接続される。ハウジング20は、単一のハウジングとして完結しており、雄ハウジングと雌ハウジングとに分割されない。リテーナ80は、ハウジング20に装着され、雌端子70がハウジング20から抜け出すのを規制する。
【0018】
なお、以下の説明において、前後方向は、
図1~
図4の右側を前側とする。上下方向は、高さ方向と同義であって、
図2および
図4の上下方向を基準とする。左右方向は、幅方向と同義であって、
図5、
図6および
図8の左右方向を基準とする。なお、この方向の基準は実際の使用状態における方向の基準と必ずしも一致するわけではない。
【0019】
(ハウジング)
ハウジング20は、合成樹脂製であって、前部に、雌端子70を収容する収容部21を有し、後部に、雄端子50を保持する保持部22を有している。収容部21および保持部22は、前後方向に連続して並んで設けられている。
【0020】
図5に示すように、収容部21は、左右方向に一列に並ぶ複数のキャビティ23を有している。各キャビティ23の前部は、断面円形をなし、円筒部35内に前後方向に延びるように設けられている。
図2および
図4に示すように、キャビティ23の前端は、収容部21(ハウジング20)の前面に開口し、キャビティ23の後端は、保持部22の後述する壁面32によって閉塞されている。収容部21は、各キャビティ23内に突出するランス24を有している。ランス24は、キャビティ23の内壁上面から後方へ片持ち状に延び、上下方向に撓み変形可能とされている。収容部21は、ランス24の上方に、ランス24の撓み動作を許容する撓み空間25を有している。
【0021】
ハウジング20は、上部に、撓み空間25と連通し、前後方向に延びて保持部22の後面に開口する開口部26を有している。
図6に示すように、開口部26は、それぞれの撓み空間25と対応し、左右方向に複数並んで設けられたシール空間27を有している。
図2および
図4に示すように、開口部26の内上面における前後方向の途中には、上下方向に沿った段差面28が設けられている。開口部26のうち、段差面28を境とした前後両側の空間のうち、後側の空間は、前側の空間よりも上下方向に大きく開口している。シール空間27は、開口部26における上述した後側の空間に設けられている。シール空間27には、リテーナ80の後述する栓部86とシール部材90の後述するシール部91とが挿入される。
【0022】
開口部26は、上述した後側の空間のうち、各シール空間27よりも後方に、リテーナ80の後述するリテーナ本体81を収容する本体収容空間29を有している。
図6に示すように、本体収容空間29は、前方で各シール空間27と連通しつつ、左右方向に長く延びた単一の空間になっている。
【0023】
保持部22は、ハウジング20の下部に、ブロック状の保持部本体31を有している。
図2および
図4に示すように、保持部本体31は、開口部26(シール空間27および本体収容空間29)の下面を区画している。保持部本体31には、雄端子50がインサート保持されている。保持部本体31の前面は、上下方向および左右方向に沿った壁面32であって、各キャビティ23の後端を閉塞する。雄端子50の後述するタブ52は、保持部本体31の前面からキャビティ23内に突出している。
【0024】
保持部22は、
図1および
図3に示すように、ハウジング20の上壁である覆い壁33を有している。覆い壁33は、開口部26(シール空間27および本体収容空間29)の上面を区画している。覆い壁33は、左右方向に間隔を置いた複数箇所(本実施形態1の場合は3箇所)に、係止受け部34を有している。各係止受け部34は、覆い壁33を厚み方向に貫通する孔であって、前後方向に長い矩形の開口形状を有している。各係止受け部34は、下方で開口部26の本体収容空間29に連通している。各係止受け部34には、後述する係止部82の突起83が進入して係止可能とされている。
【0025】
(雄端子)
雄端子50は、導電金属製の板状のバスバーであって、
図7に示すように、後部に取付部51を有し、前部に複数のタブ52を有し、取付部51と各タブ52との間につなぎ部53を有している。
【0026】
取付部51は、前後方向および左右方向に平坦な形状をなし、板厚方向(上下方向)に貫通する円形の取付孔54を有している。また、雄端子50は、取付部51の後端から下向きに屈曲する掛止部55を有している。雄端子50は、図示しない掛止受け部に掛止部55を引っ掛けた状態で、取付孔54内に挿通されたボルト等を介して図示しない取付対象(アース接続対象)に取り付けられる。
【0027】
つなぎ部53は、取付部51の前端から上方に起立している。雄端子50の左右中間部には、つなぎ部53と取付部51とに亘って、上方に膨出する扁平なビード部56が設けられている。また、雄端子50の左右両端部には、つなぎ部53から取付部51にかけて延びるリブ状の起立縁部57が設けられている。ビード部56および起立縁部57は、雄端子50におけるつなぎ部53と取付部51との間の屈曲形状を一定に維持する役割を有している。
【0028】
また、雄端子50は、つなぎ部53の上端から左右両側に張り出し、かつ前方に屈曲された側面視L字形状の連結部58を有している。
各タブ52は、断面矩形の板状をなし、左右一列に並びつつ連結部58の前縁から前方に突出している。各タブ52は、突出方向(前後方向)の途中に段部59を有している。各タブ52において、段部59を境とした前後両側のうち、前側の領域は、後側の領域よりも一段高く配置されている。
【0029】
各タブ52の後側の領域には、
図8に示すように、捻り部61が設けられている。捻り部61は、タブ52の捻り部61以外の部分に対し、軸周りに0°~90°の範囲(本実施形態1の場合は45°)で捻られた形状になっている。
図8に示すように、捻り部61の外面のうち、左側面および上面は、左側を向いて配置され、右側面および下面は、右側を向いて配置される。
【0030】
タブ52は、ハウジング20の樹脂部分との界面にコーティング材を介在させることで、ハウジング20との間のシール性を向上させることができる。
本実施形態1の場合、コーティング材は、タブ52の左右両側または上下両側から噴射される。左側または上側から吹き付けられるコーティング材は、捻り部61の左側面および上面に付着され、右側または下側から吹き付けられるコーティング材は、捻り部61の右側面および下面に付着される。結果として、コーティング材がタブ52に対向する2方向から噴射されることで、タブ52の全周にコーティング材を効率良く付着させることが可能となる。また、捻り部61によってハウジング20と雄端子50との保持力を高めることもできる。
【0031】
なお、
図8に示す場合とは逆に、捻り部61の外面のうち、左側面および下面が左側を向いて配置され、右側面および上面が右側を向いて配置されるようにしても良い。この場合も、上記同様、タブ52に対向する2方向から噴射されるコーティング材によってタブ52の全周を付着することができる。
【0032】
(雌端子)
雌端子70は導電金属製であって、
図2および
図4に示すように、筒状の接続部71と、接続部71の前方に設けられたオープンバレル状のバレル部72と、を有している。
【0033】
バレル部72は、電線40の端末部の芯線部41に圧着されて、電線40に電気的に接続される。また、バレル部72は、電線40の端末部に嵌め付けられたゴム栓45に圧着される。ゴム栓45は、キャビティ23の前部に挿入され、キャビティ23の内周面に密着する。
【0034】
(リテーナ)
リテーナ80は合成樹脂製であって、
図9に示すように、左右方向に長い扁平なリテーナ本体81を有している。
【0035】
リテーナ本体81は、上面における左右方向に間隔を置いた複数箇所(本実施形態1の場合は3箇所)に、係止部82を有している。各係止部82は、前後方向に延びたリブ状部84から上方に突出する爪状の突起83を有している。左右両側に配置された各係止部82は、リブ状部84の後部に突起83を有している。左右中央側に配置された係止部82は、リブ状部84の前端部に突起83を有している。リテーナ本体81は、上下方向および左右方向に平坦な前面部85を有している。
【0036】
また、リテーナ80は、前面部85から前方へ細長く突出する複数の栓部86を有している。各栓部86は、リテーナ本体81の前面において、各シール空間27(各キャビティ23)と対応する位置に、左右方向に間隔を置いて配置されている。各栓部86は、先端部を除いて円柱状をなしている。各栓部86の先端部は、下面に、ランス24と接触可能な平坦な規制面87を有している。
【0037】
(シール部材)
シール部材90はシリコンゴム等のゴム製であって一体に形成され、
図10に示すように、左右一列に並ぶ複数のシール部91と、隣接するシール部91の後端部間で各シール部91を連結するブリッジ部92と、を有している。各シール部91は、四隅が丸い角筒状をなし、前後方向に貫通する断面円形のシール孔93を有している。
図2および
図4に示すように、シール部91のシール孔93の内周面には、前後方向に間隔を置いて複数の内周リップ94が設けられている。各内周リップ94は、シール孔93に挿入された栓部86の外周面に密着する。各シール部91の外周面には、前後方向に間隔を置いて複数の外周リップ95が周回して設けられている。各外周リップ95は、開口部26の各シール空間27の内周面に密着する。これにより、開口部26の各シール空間27内が液密に維持される。
【0038】
(コネクタの全体構造および作用)
雄端子50は、ハウジング20にインサート成形される。これにより、つなぎ部53、連結部58、捻り部61を含むタブ52の後側の領域および段部59は、保持部本体31内に埋められた状態で保持される(
図2および
図4を参照)。取付部51は、保持部本体31の下方から後方に突出して露出した状態で配置される。タブ52の先端部(前側の領域)は、対応するキャビティ23内に突出して配置される。
【0039】
開口部26のシール空間27には、シール部材90のシール部91が挿入される。シール部91は、段差面28に当て止めされる。開口部26の本体収容空間29には、前部に、シール部材90のブリッジ部92が挿入される。また、リテーナ80の栓部86は、シール部材90のシール孔93を液密に貫通する。栓部86の先端部は、撓み空間25に後方から臨むように配置される(
図4を参照)。
【0040】
リテーナ80は、本体収容空間29に挿入され、ハウジング20に対して仮係止位置に留め置かれる。
図3に示すように、リテーナ80が仮係止位置にあるときに、左右中央側の係止部82の突起83が覆い壁33の係止受け部34内に挿入され、左右両側の各係止部82の突起83が覆い壁33の後方に配置される。リテーナ80は、仮係止位置において、左右中央側の係止部82の突起83が係止受け部34の後縁に当たることで後方への移動が規制され、左右両側の各係止部82の突起83が覆い壁33の後端に当たることで前方への移動が規制される。
【0041】
また、リテーナ80が仮係止位置にあるときに、電線40の端末部に接続された雌端子70が収容部21のキャビティ23内に前方から挿入される。雌端子70の挿入過程において、ランス24が接続部71に接触して撓み空間25に撓み変形させられる。雌端子70がキャビティ23内に正規に挿入されると、ランス24が弾性復帰して接続部71を係止し、雌端子70がランス24により一次的に抜け止めされる。また、雌端子70がキャビティ23内に正規に挿入されると、
図4に示すように、接続部71が保持部本体31の壁面32に当たることで、雌端子70のそれ以上後方への移動が規制される。キャビティ23の後部にはゴム栓45が液密に挿入される。
【0042】
さらに、雌端子70の挿入過程において、接続部71内に前方からタブ52の先端部が挿入される。雌端子70がキャビティ23内に正規に挿入されると、
図4に示すように、タブ52の先端部が接続部71内に設けられた弾性接触片73に接触し、両端子50、70が電気的に接続される。このように本実施形態1の場合、雌端子70のキャビティ23への挿入と両端子50、70の接続を一度の作業で行うことができる。
【0043】
雌端子70がキャビティ23内に正規に挿入された後、リテーナ80が前方に押し込まれて、仮係止位置から本係止位置へと移動する。リテーナ80が本係止位置に至ると、栓部86の先端部が撓み空間25に進入し、
図2に示すように、栓部86の規制面87がランス24に上方から接触可能に対向して配置される。これにより、ランス24の撓み動作が規制され、結果として、雌端子70が二次的に抜け止めされる。
図1に示すように、リテーナ80が本係止位置にあるときに、各係止部82の突起83がいずれも覆い壁33の係止受け部34内に挿入される。リテーナ80は、本係止位置において、左右中央側の係止部82の突起83が係止受け部34の前縁に当たることで前方への移動が規制され、左右両側の各係止部82の突起83が係止受け部34の後縁に当たることで後方への移動が規制される。これに対し、仮に、雌端子70がキャビティ23内に正規に挿入されていない半挿入状態に留め置かれていると、栓部86の先端部が撓み状態にあるランス24と干渉し、リテーナ80の本係止位置への押し込みが規制される。これにより、雌端子70がキャビティ23内に半挿入状態に留め置かれていることを検知することができる。
【0044】
以上説明したように、本実施形態1によれば、雄端子50が保持部22にインサート保持され、雄端子50のタブ52が保持部22の壁面32からキャビティ23内に突出して配置されるため、雌端子70がキャビティ23内に正規に挿入されることにより、両端子50、70がハウジング20内で電気的に接続されることになる。このため、雄ハウジングと雌ハウジングとを別々に用意する必要がなくなり、部品点数を削減することができる。
【0045】
また、雌端子70が保持部22の壁面32に当て止めされることで、雌端子70の挿入力が雄端子50に直接作用するのを回避することができる。よって、ハウジング20とは別に雄端子50の後方への抜け出しを規制する特別な抜け止め構造を設ける必要もない。
【0046】
また、雄端子50がハウジング20にインサート成形されることにより、雄端子50とハウジング20との一体性を高めることができるとともに、保持部22の壁面32を、雌端子70を当て止め可能な形状に精度良く形成することができる。
【0047】
さらに、開口部26のシール空間27には栓部86とともにシール部91が挿されるため、開口部26を通してキャビティ23内に水や油等が入り込むのを防止することができる。しかも、栓部86がランス24の撓み動作を規制するリテーナ機能を有しているから、専用部品化することがなく、汎用性に優れる。
【0048】
<実施形態2>
本開示の実施形態2を
図11および
図12によって説明する。本実施形態2に係るコネクタ10Aは、実施形態1に係るコネクタ10と同様であって、ハウジング20A、雄端子50A、雌端子70およびリテーナ80Aを備える。雄端子50Aは、実施形態1の雄端子50とは異なる構造であるが、基本的構成は雄端子50と同様である。これに対し、開口部26Aおよびリテーナ80Aは、実施形態1の開口部26およびリテーナ80とは大きく異なる。
【0049】
開口部26Aは、
図12に示すように、両端子
50A、70の接続方向と直交した上下方向に延び、上端がハウジング20Aの上面に開口し、下端がキャビティ23の内面におけるランス24に臨む位置に開口している。また、開口部26Aは、ハウジング20Aの上面に左右方向の全幅にわたって開口している。
【0050】
リテーナ80Aは、左右方向に長く延びるリテーナ本体81Aと、リテーナ本体81Aの平坦な下面から下方に突出する栓部86Aと、を有している。リテーナ本体81Aは、開口部26Aを上方から覆う大きさで形成される。栓部86Aは、シール部91Aのシール孔93Aに液密に貫通して配置される。なお、栓部86Aは、
図12では1つのみ図示するが、各ランス24と対応するように、リテーナ80Aに複数設けられている。また、シール孔93Aも、各栓部86Aと対応するように、シール部91Aに複数設けられている。シール部91Aは、リテーナ本体81Aの下面に接触している。シール部91Aは、開口部26Aの内周面に密着する。このため、実施形態2においても、実施形態1と同様、開口部26A内が液密に維持され、開口部26Aからキャビティ23内に水や油等が入り込むのを防止することができる。
【0051】
雌端子70がキャビティ23内に正規に挿入されると、ハウジング20Aにインサート保持された雄端子50Aのタブ52Aが接続部71内の弾性接触片73に接触し、両端子50A、70がハウジング20A内で電気的に接続される。その後、リテーナ80Aが開口部26A内に正規に挿入され、栓部86Aの先端部(下端部)がランス24に接触可能に配置される。これにより、実施形態1と同様、ランス24の撓み動作が規制され、雌端子70がキャビティ23内に二次的に抜け止めされた状態になる。実施形態2によれば、比較的簡単な構造で、部品点数の削減を図ることができる。
【0052】
[本開示の他の実施形態]
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えるべきである。
実施形態1、2の場合、雄端子は、保持部にインサート保持されていたが、他の実施形態によれば、雄端子は、保持部にインサート保持されず、保持部に係止して保持されるものであってもよい。この場合に、ハウジングには、雄端子の抜け出しを規制する部材が装着される構成であっても良い。
実施形態1、2の場合、栓部は、ランスの撓み動作を規制するリテーナ機能を有するリテーナに設けられていたが、他の実施形態によれば、栓部は、開口部に挿入されるが、リテーナ機能を有しない挿入部材に設けられるものであっても良い。
実施形態1、2の場合、雄端子は、複数のタブを有するバスバーとして構成されていたが、他の実施形態によれば、雄端子は、全体がタブ状の基板用端子として構成されるものであっても良い。
【符号の説明】
【0053】
10、10A…コネクタ
20、20A…ハウジング
21…収容部
22…保持部
23…キャビティ
24…ランス
25…撓み空間
26、26A…開口部
27…シール空間
28…段差面
29…本体収容空間
31…保持部本体
32…壁面
33…覆い壁
34…係止受け部
35…円筒部
40…電線
41…芯線部
45…ゴム栓
50、50A…雄端子
51…取付部
52、52A…タブ
53…つなぎ部
54…取付孔
55…掛止部
56…ビード部
57…起立縁部
58…連結部
59…段部
61…捻り部
70…雌端子
71…接続部
72…バレル部
73…弾性接触片
80、80A…リテーナ
81、81A…リテーナ本体
82…係止部
83…突起
84…リブ状部
85…前面部
86、86A…栓部
87…規制面
90…シール部材
91、91A…シール部
92…ブリッジ部
93、93A…シール孔
94…内周リップ
95…外周リップ