(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】熱分析装置
(51)【国際特許分類】
G01N 25/00 20060101AFI20240501BHJP
G01N 25/20 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
G01N25/00 P
G01N25/20 G
(21)【出願番号】P 2021062837
(22)【出願日】2021-04-01
【審査請求日】2023-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】富田 創
【審査官】鴨志田 健太
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-078857(JP,U)
【文献】特開平11-174009(JP,A)
【文献】特開2014-092140(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 25/00
G01N 25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒータを含み、試料を加熱する加熱炉と、
前記加熱炉に冷却風を送る冷却ファンと、
前記冷却ファンと前記加熱炉との間に配置され、前記冷却風が通る通路を含むダクトと、
前記ダクト内に配置され、前記通路を開閉するシャッタと、
を備え、
前記シャッタは、
第1回転軸と、前記第1回転軸から下方へ延びる第1板部とを含み、前記第1回転軸回りに回転可能に支持される第1フラップと、
前記第1回転軸よりも上方、且つ、前記冷却ファン側に配置される第2回転軸と、前記第2回転軸から下方へ延びる第2板部と、前記加熱炉側から前記第1フラップに重なる下端とを含み、前記第2回転軸回りに回転可能に支持される第2フラップと、
を含む、
熱分析装置。
【請求項2】
前記ダクトと前記加熱炉との間に配置される輻射シールドをさらに備える、
請求項1に記載の熱分析装置。
【請求項3】
前記ヒータを制御するコントローラをさらに備え、
前記コントローラは、前記加熱炉を輻射熱が支配的になる温度以上の温度まで昇温可能である、
請求項1又は2に記載の熱分析装置。
【請求項4】
前記試料と基準物質との温度差を示す示差熱信号を出力する温度センサをさらに備え、
前記温度センサは、0.1℃以下の温度差を検出可能である、
請求項1から3のいずれかに記載の熱分析装置。
【請求項5】
ヒータを含み、試料を加熱する加熱炉と、
前記加熱炉に冷却風を送る冷却ファンと、
前記冷却ファンと前記加熱炉との間に配置され、前記冷却風が通る通路を含むダクトと、
前記ダクト内に配置され、前記通路を開閉するシャッタと、
を備え、
前記シャッタは、
第1回転軸と、前記第1回転軸から下方へ延びる第1板部とを含み、前記第1回転軸回りに回転可能に支持される第1フラップと、
前記第1回転軸よりも上方に配置される第2回転軸と、前記第2回転軸から下方へ延びる第2板部と、前記通路における前記加熱炉側から前記第1フラップに重なる下端とを含み、前記第2回転軸回りに回転可能に支持される第2フラップと、
前記第2フラップに接続され、前記第2フラップの重心が前記第2フラップの上下方向における中心よりも下方に位置するように配置された錘と、
を含む、
熱分析装置。
【請求項6】
前記ダクトと前記加熱炉との間に配置される輻射シールドをさらに備える、
請求項5に記載の熱分析装置。
【請求項7】
前記ヒータを制御するコントローラをさらに備え、
前記コントローラは、前記加熱炉を輻射熱が支配的になる温度以上の温度まで昇温可能である、
請求項5又は6に記載の熱分析装置。
【請求項8】
前記試料と基準物質との温度差を示す示差熱信号を出力する温度センサをさらに備え、
前記温度センサは、0.1℃以下の温度差を検出可能である、
請求項5から7のいずれかに記載の熱分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
熱分析には、示差熱分析、熱重量測定、熱機械分析、示差走査熱量分析など、様々な手法がある。例えば示差熱分析は、試料及び基準物質の温度を、所定の測定プログラムに従って変化させながら、試料と基準物質との温度差を温度の関数として測定する方法である。示唆熱分析は、転移、融解、反応等の吸発熱を伴う現象を測定の対象とする。また、熱重量測定は、試料を一定のレートで加熱若しくは冷却したときの、又は一定温度に保持したときの試料の重量の変化を測定する方法である。熱重量測定は、例えば、蒸発、分解、酸化、還元、吸着等の温度に対する重量変化を伴う化学的又は物理的な変化を測定の対象とする。
【0003】
熱分析装置には、冷却システムを備えるものがある。例えば、特許文献1の熱分析装置は、ファンとシャッタとを備えている。ファンは、放熱フィンを空冷するための冷却風を発生させる。シャッタは、複数のフラップを含む。複数のフラップは、上下方向に並んで配置されている。複数のフラップは、回転軸を含み、回転軸回りに回転可能に支持されている。
【0004】
上記の熱分析装置では、ファンが作動しているときには、冷却風の風圧によって複数のフラップが回転して開かれる。それにより、ファンからの冷却風が、フラップの間の隙間を通って、放熱フィンに到達する。ファンが停止しているときには、複数のフラップは、自重によって閉じられる。それにより、放熱フィンとファンとの間が遮断される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
熱分析装置には、高温に昇温された加熱炉を、上記のような冷却システムによって、冷却するものがある。加熱炉の昇温中には、ファンが停止していることで、シャッタは閉じられる。それにより、加熱炉の熱放射からファンが保護される。昇温の終了後には、ファンが作動することで、シャッタが開かれる。それにより、冷却風が加熱炉に到達することで、加熱炉が迅速に冷却される。
【0007】
上記のフラップは、風圧によって回転可能に吊り下げられている。そのため、加熱炉が高温になっているときには、空気の対流によってフラップが揺らぐことがある。その場合、フラップの間に隙間が生じ、加熱炉からの輻射熱がファンに届くことで、ファンが損傷する可能性がある。また、フラップが揺らぐことで、加熱炉内の温度分布が乱れてしまい、熱分析の精度が低下する可能性がある。本発明の目的は、熱分析装置において、加熱炉の輻射熱からファンを保護すると共に、熱分析の精度の低下を抑えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1態様に係る熱分析装置は、加熱炉と、冷却ファンと、ダクトと、シャッタとを備える。加熱炉は、ヒータを含み、試料を加熱する。冷却ファンは、加熱炉に冷却風を送る。ダクトは、冷却ファンと加熱炉との間に配置され、冷却風が通る通路を含む。シャッタは、ダクト内に配置され、通路を開閉する。シャッタは、第1フラップと第2フラップとを含む。第1フラップは、第1回転軸と第1板部とを含む。第1板部は、第1回転軸から下方へ延びる。第1フラップは、第1回転軸回りに回転可能に支持される。第2フラップは、第2回転軸と、第2板部と、下端とを含む。第2回転軸は、第1回転軸よりも上方、且つ、冷却ファン側に配置される。第2板部は、第2回転軸から下方へ延びる。下端は、加熱炉側から第1フラップに重なる。第2フラップは、第2回転軸回りに回転可能に支持される。
【0009】
本発明の第2態様に係る熱分析装置は、加熱炉と、冷却ファンと、ダクトと、シャッタとを備える。加熱炉は、ヒータを含み、試料を加熱する。冷却ファンは、加熱炉に冷却風を送る。ダクトは、冷却ファンと加熱炉との間に配置され、冷却風が通る通路を含む。シャッタは、ダクト内に配置され、通路を開閉する。シャッタは、第1フラップと、第2フラップと、錘とを含む。第1フラップは、第1回転軸と第1板部とを含む。第1板部は、第1回転軸から下方へ延びる。第1フラップは、第1回転軸回りに回転可能に支持される。第2フラップは、第2回転軸と、第2板部と、下端とを含む。第2回転軸は、第1回転軸よりも上方に配置される。第2板部は、第2回転軸から下方へ延びる。下端は、加熱炉側から第1板部に重なる。第2フラップは、第2回転軸回りに回転可能に支持される。錘は、第2フラップに接続される。錘は、第2フラップの重心が第2フラップの上下方向における中心よりも下方に位置するように配置される。
【発明の効果】
【0010】
第1の態様に係る熱分析装置では、第2回転軸は、第1回転軸から冷却ファン側にずれて配置されている。また、第2フラップの下端が加熱炉側から第1フラップに重なっている。それにより、加熱炉側からの空気の対流が生じても、第2フラップは自重によって動き難い。それにより、加熱炉の輻射熱からファンが保護される。また、加熱炉内の温度分布の乱れが抑えられ、熱分析の精度の低下が抑えられる。
【0011】
第2の態様に係る熱分析装置では、第2フラップの下端が加熱炉側から第1フラップに重なっている。また、錘により第2フラップの重心が第2フラップの中心よりも下方に位置する。それにより、加熱炉側からの空気の対流が生じても、第2フラップは自重によって動き難い。それにより、加熱炉の輻射熱からファンが保護される。また、加熱炉内の温度分布の乱れが抑えられ、熱分析の精度の低下が抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態に係る熱分析装置の側面図である。
【
図2】第1実施形態に係る熱分析装置の内部の構成を示す図である。
【
図3】第1実施形態に係る熱分析装置の制御系を示すブロック図である。
【
図4】第1実施形態に係る熱分析装置の内部の構成を示す図である。
【
図5】第2実施形態に係る熱分析装置のシャッタを示す図である。
【
図6】第2実施形態に係る熱分析装置のシャッタを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1実施形態]
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
図1は、第1実施形態に係る熱分析装置1の側面図である。本実施形態に係る熱分析装置1は、示差熱・熱重量同時測定装置である。熱分析装置1は、ハウジング10と、載置台11と、加熱炉12と、冷却装置13とを備える。載置台11と、加熱炉12と、冷却装置13とは、ハウジング10内に配置されている。載置台11は、加熱炉12内に配置されている。載置台11には、試料と基準物質とが置かれる。加熱炉12は、試料と基準物質とを加熱する。冷却装置13は、加熱炉12を冷却する。
【0014】
図2は、熱分析装置1の内部の構成を示す図である。
図2に示すように、加熱炉12は、炉心管14とヒータ15とを含む。炉心管14は、例えばセラミックなどの耐熱性を有する材料製である。炉心管14内には、上述した載置台11が配置される。ヒータ15は、炉心管14の周囲に配置されており、炉心管14を加熱する。ヒータ15は、例えば電熱線であり、炉心管14に巻回されている。
【0015】
冷却装置13は、冷却ファン21と、ファンモータ22と、ダクト23と、シャッタ24とを含む。冷却ファン21は、ファンモータ22に接続されている。冷却ファン21は、回転することで、加熱炉12に冷却風を送る。ファンモータ22は、電動モータであり、冷却ファン21を回転させる。ダクト23は、冷却ファン21と加熱炉12との間に配置されている。ダクト23は、冷却風が通る通路25を含む。
【0016】
ダクト23と加熱炉12との間には、輻射シールド26と断熱カバー27とが配置されている。輻射シールド26は、炉心管14を覆う。輻射シールド26には、通気孔28が設けられている。断熱カバー27は、輻射シールド26を覆う。輻射シールド26は、加熱時に加熱炉12からの輻射熱を反射する。輻射シールド26は、例えば、ニッケル、アルミ、或いは鉄などの輻射熱を反射し易い材料製である。断熱カバー27は、外部への熱の放散を軽減する。
【0017】
シャッタ24は、ダクト23内に配置されている、シャッタ24は、ダクト23内の通路25を開閉する。シャッタ24は、複数のフラップ31-33を含む。複数のフラップ31-33は、金属製であり、薄板状の形状を有している。複数のフラップ31-33は、上下方向に並んで配置されている。複数のフラップ31-33は、回転可能に吊り下げられている。詳細には、複数のフラップ31-33は、第1フラップ31と、第2フラップ32と、第3フラップ33とを含む。
【0018】
第1フラップ31は、複数のフラップ31-33の中で、最も下方に配置されている。第1フラップ31は、第1回転軸41と第1板部42とを含む。第1回転軸41は、回転可能にダクト23によって支持されている。第1フラップ31は、第1回転軸41回りに回転可能である。第1板部42は、第1回転軸41から下方へ延びている。第1フラップ31は、ダクト23の底面29から第1回転軸41までの高さよりも大きな長さを有する。第1フラップ31の下端43は、ダクト23の底面29に接触している。第1フラップ31は、下方、且つ、加熱炉12側に向かって、傾斜している。
【0019】
第2フラップ32は、第1フラップ31の上方に配置されている。第2フラップ32は、第2回転軸44と第2板部45とを含む。第2回転軸44は、回転可能にダクト23によって支持されている。第2フラップ32は、第2回転軸44回りに回転可能である。第2回転軸44は、第1回転軸41よりも上方、且つ、冷却ファン21側に配置される。
【0020】
第2板部45は、第2回転軸44から下方へ延びている。第2フラップ32は、第1回転軸41と第2回転軸44との間の距離よりも大きな長さを有する。第2フラップ32の下端46は、加熱炉12側から第1フラップ31に重なっている。第2フラップ32の下端46は、第1フラップ31に接触している。第2フラップ32は、下方、且つ、加熱炉12側に向かって、傾斜している。
【0021】
第3フラップ33は、第2フラップ32の上方に配置されている。第3フラップ33は、複数のフラップ31-33のうち最も上方に配置されている。第3フラップ33は、第3回転軸47と第3板部48とを含む。第3回転軸47は、回転可能にダクト23によって支持されている。第3フラップ33は、第3回転軸47回りに回転可能である。第3回転軸47は、第2回転軸44よりも上方、且つ、冷却ファン21側に配置される。
【0022】
第3板部48は、第3回転軸47から下方へ延びている。第3フラップ33は、第2回転軸44と第3回転軸47との間の距離よりも大きな長さを有する。第3フラップ33の下端49は、加熱炉12側から第2フラップ32に重なっている。第3フラップ33の下端49は、第2フラップ32に接触している。第3フラップ33は、下方、且つ、加熱炉12側に向かって、傾斜している。
【0023】
図3は、熱分析装置1の制御系を示すブロック図である。
図3に示すように、熱分析装置1は、加熱装置16と、温度センサ17と、重量センサ18と、入力装置19と、コントローラ20とを備えている。加熱装置16は、上述したヒータ15に電力を供給する駆動回路を含む。温度センサ17は、試料と基準物質との温度を検出する。温度センサ17は、例えば熱電対であり、上述した載置台11に配置されている。温度センサ17は、試料と基準物質との温度差を示す示差熱信号を出力する。温度センサ17は、例えば0.1℃以下の温度差を検出可能である。温度センサ17は、例えば0.01℃までの温度差を検出可能である。
【0024】
重量センサ18は、試料及び基準物質の重量を測定する。重量センサ18は、例えば熱天秤式のセンサである。重量センサ18は、試料及び基準物質の重量を示す信号を出力する。入力装置19は、熱分析装置1のユーザによって操作可能である。入力装置19は、例えば、ハードキーを含む。或いは、入力装置19は、タッチスクリーンを含んでもよい。
【0025】
コントローラ20は、プロセッサ及びメモリを有するコンピュータを含む。コントローラ20は、加熱装置16を制御することで、ヒータ15による加熱炉12の昇温を制御する。コントローラ20は、冷却装置13を制御することで、加熱炉12を冷却する。コントローラ20は、ファンモータ22を制御することで、冷却ファン21を作動させる。コントローラ20は、ユーザにより入力された測定プログラムを記憶する。
【0026】
次に、熱分析装置1による測定の動作について説明する。ユーザは、試料及び基準物質を加熱炉12内の載置台11に配置する。ユーザは、入力装置19を用いて、測定プログラムを設定し、測定開始を指示する。コントローラ20は、測定開始の指示を受けると、測定プログラムに従って、加熱炉12の昇温を開始する。本実施形態に係る熱分析装置1では、コントローラ20は、輻射熱が支配的になる温度以上の温度まで加熱炉12を昇温可能である。輻射熱が支配的になる温度は、例えば600℃以上の温度である。例えば、コントローラ20は、室温から約1500℃の温度まで、加熱炉12の温度を制御することができる。
【0027】
測定プログラムの実行中には、加熱炉12内において試料及び基準物質が昇温される。この間、温度センサ17は、試料及び基準物質の温度を、連続的、或いは断続的に繰り返し測定し、その温度の測定値をコントローラ20に送る。重量センサ18は、試料及び基準物質の重量を、連続的、或いは断続的に繰り返し測定し、その重量の測定値をコントローラ20へ送る。コントローラ20は、温度の測定値と重量の測定値とを記録する。
【0028】
測定プログラムの実行中には、コントローラ20は、冷却ファン21を停止させている。そのため、
図2に示すように、複数のフラップ31-33は自重によって互いに折り重なった状態に保持される。従って、シャッタ24は、ダクト23内の通路25を閉じている。それにより、加熱炉12の熱放射から冷却ファン21が保護される。
【0029】
測定プログラムに従った温度と重量の測定が終了すると、コントローラ20は、冷却ファン21を作動させて、加熱炉12の温度を室温付近まで下げる。このとき、
図4に示すように、複数のフラップ31-33は、冷却ファン21からの冷却風A1の風圧によって、冷却ファン21側から加熱炉12側へ向かって押される。そのため、複数のフラップ31-33は、回転軸41,44,47回りに回転し、複数のフラップ31-33の間に隙間が生まれる。従って、シャッタ24は、ダクト23内の通路25を開く。それにより、冷却風A1が加熱炉12へ到達することで、加熱炉12が冷却される。
【0030】
以上、説明した本実施形態に係る熱分析装置1では、第2回転軸44は、第1回転軸41から冷却ファン21側にずれて配置されている。第3回転軸47は、第2回転軸44から冷却ファン21側にずれて配置されている。また、第2フラップ32の下端46が加熱炉12側から第1フラップ31に重なっている。第3フラップ33の下端49が加熱炉12側から第2フラップ32に重なっている。それにより、
図2に示すように、加熱炉12側からの空気の対流A2が生じても、複数のフラップ31-33は自重によって動き難い。それにより、加熱炉12の輻射熱からファンが保護される。また、加熱炉12内の温度分布の乱れが抑えられ、熱分析の精度の低下が抑えられる。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る熱分析装置について説明する。
図5及び
図6は、第2実施形態に係る熱分析装置のシャッタ24を示す図である。
図5は、通路25を閉じているシャッタ24を示している。
図6は、通路25を開いているシャッタ24を示している。
図5及び
図6に示すように、第2実施形態に係る熱分析装置では、シャッタ24は、複数の錘51-53を含む。複数の錘51-53は、それぞれ複数のフラップ31-33に接続されている。複数の錘51-53は、複数のフラップ31-33のそれぞれの重心が、各フラップ31-33の上下方向における中心C1,C2,C3よりも下方に位置するように配置される。例えば、複数の錘51-53は、それぞれ複数のフラップ31-33の下端43,46,49に接続されている。
【0031】
詳細には、複数の錘51-53は、第1錘51と、第2錘52と、第3錘53とを含む。第1錘51は、第1フラップ31に接続されている。第1錘51は、第1フラップ31の重心が、第1フラップ31の上下方向における中心C1よりも下方に位置するように配置される。第2錘52は、第2フラップ32に接続されている。第2錘52は、第2フラップ32の重心が、第2フラップ32の上下方向における中心C2よりも下方に位置するように配置される。第3錘53は、第3フラップ33に接続されている。第3錘53は、第3フラップ33の重心が、第3フラップ33の上下方向における中心C3よりも下方に位置するように配置される。
【0032】
なお、第2実施形態に係る熱分析装置では、第2回転軸44は、第1回転軸41の真上に配置されている。第3回転軸47は、第2回転軸44の真上に配置されている。しかし、第2回転軸44は、第1実施形態と同様に、第1回転軸41から冷却ファン21側にずれて配置されてもよい。第3回転軸47は、第1実施形態と同様に、第2回転軸44から冷却ファン21側にずれて配置されてもよい。第2実施形態に係る熱分析装置の他の構成は、第1実施形態に係る熱分析装置1と同様である。
【0033】
以上説明した第2実施形態に係る熱分析装置では、第2フラップ32の下端46が加熱炉12側から第1フラップ31に重なっている。第3フラップ33の下端49が加熱炉12側から第2フラップ32に重なっている。また、複数の錘51-53により、複数のフラップ31-33の重心が、各フラップの中心C1,C2,C3よりも下方に位置する。それにより、加熱炉12側からの空気の対流が生じても、複数のフラップ31-33は自重によって動き難い。それにより、加熱炉12の輻射熱からファンが保護される。また、加熱炉12内の温度分布の乱れが抑えられ、熱分析の精度の低下が抑えられる。
【0034】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0035】
熱分析装置は、示差熱・熱重量同時測定装置に限らない。熱分析装置は、例えば、熱重量測定装置、熱機械分析装置、或いは示差走査熱量分析装置などの他の装置であってもよい。シャッタのフラップの数は3つに限らない。フラップの数は、3つより少なくてもよく、或いは3つより多くてもよい。熱分析装置によって昇温可能な温度の上限値は、上記の実施形態のものに限らず、変更されてもよい。熱分析装置によって検出可能な温度差の下限値は、上記の実施形態のものに限らず、変更されてもよい。
[態様]
上述した複数の例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0036】
(第1態様)熱分析装置は、加熱炉と、冷却ファンと、ダクトと、シャッタとを備える。加熱炉は、ヒータを含み、試料を加熱する。冷却ファンは、加熱炉に冷却風を送る。ダクトは、冷却ファンと加熱炉との間に配置され、冷却風が通る通路を含む。シャッタは、ダクト内に配置され、通路を開閉する。シャッタは、第1フラップと第2フラップとを含む。第1フラップは、第1回転軸と第1板部とを含む。第1板部は、第1回転軸から下方へ延びる。第1フラップは、第1回転軸回りに回転可能に支持される。第2フラップは、第2回転軸と、第2板部と、下端とを含む。第2回転軸は、第1回転軸よりも上方、且つ、冷却ファン側に配置される。第2板部は、第2回転軸から下方へ延びる。下端は、加熱炉側から第1フラップに重なる。第2フラップは、第2回転軸回りに回転可能に支持される。
【0037】
第1態様に係る熱分析装置では、第2回転軸は、第1回転軸から冷却ファン側にずれて配置されている。また、第2フラップの下端が加熱炉側から第1フラップに重なっている。それにより、加熱炉側からの空気の対流が生じても、第2フラップは自重によって動き難い。それにより、加熱炉の輻射熱からファンが保護される。また、加熱炉内の温度分布の乱れが抑えられ、熱分析の精度の低下が抑えられる。
【0038】
(第2態様)第1態様に係る熱分析装置であって、ダクトと加熱炉との間に配置される輻射シールドをさらに備えてもよい。この場合、輻射熱が支配的になる温度以上の温度まで、加熱炉が昇温されても、輻射熱の外部への漏れが抑えられる。また、このような高温まで加熱炉が昇温されるときには、対流によるフラップへの影響が大きい。そのため、本態様に係る熱分析装置がより有効となる。
【0039】
(第3態様)第1又は第2態様に係る熱分析装置であって、ヒータを制御するコントローラをさらに備えてもよい。コントローラは、加熱炉を輻射熱が支配的になる温度以上の温度まで昇温可能であってもよい。このような高温まで加熱炉が昇温されるときには、対流によるフラップへの影響が大きい。そのため、本態様に係る熱分析装置がより有効となる。
【0040】
(第4態様)第1から第3態様のいずれかに係る熱分析装置であって、試料と基準物質との温度差を示す示差熱信号を出力する温度センサをさらに備えてもよい。温度センサは、0.1℃以下の温度差を検出可能であってもよい。このように、微小な示差熱信号が検出される場合に、フラップの揺らぎによって、熱分析の精度が影響を受け易い。そのため、本態様に係る熱分析装置がより有効となる。
【0041】
(第5態様)熱分析装置は、加熱炉と、冷却ファンと、ダクトと、シャッタとを備える。加熱炉は、ヒータを含み、試料を加熱する。冷却ファンは、加熱炉に冷却風を送る。ダクトは、冷却ファンと加熱炉との間に配置され、冷却風が通る通路を含む。シャッタは、ダクト内に配置され、通路を開閉する。シャッタは、第1フラップと、第2フラップと、錘とを含む。第1フラップは、第1回転軸と第1板部とを含む。第1板部は、第1回転軸から下方へ延びる。第1フラップは、第1回転軸回りに回転可能に支持される。第2フラップは、第2回転軸と、第2板部と、下端とを含む。第2回転軸は、第1回転軸よりも上方に配置される。第2板部は、第2回転軸から下方へ延びる。下端は、加熱炉側から第1フラップに重なる。第2フラップは、第2回転軸回りに回転可能に支持される。錘は、第2フラップに接続される。錘は、第2フラップの重心が第2フラップの上下方向における中心よりも下方に位置するように配置される。
【0042】
第2の態様に係る熱分析装置では、第2フラップの下端が加熱炉側から第1フラップに重なっている。また、錘により第2フラップの重心が第2フラップの中心よりも下方に位置する。それにより、加熱炉側からの空気の対流が生じても、第2フラップは自重によって動き難い。それにより、加熱炉の輻射熱からファンが保護される。また、加熱炉内の温度分布の乱れが抑えられ、熱分析の精度の低下が抑えられる。
【0043】
(第6態様)第5態様に係る熱分析装置であって、ダクトと加熱炉との間に配置される輻射シールドをさらに備えてもよい。この場合、輻射熱が支配的になる温度以上の温度まで、加熱炉が昇温されても、輻射熱の外部への漏れが抑えられる。また、このような高温まで加熱炉が昇温されるときには、対流によるフラップへの影響が大きい。そのため、本態様に係る熱分析装置がより有効となる。
【0044】
(第7態様)第5又は第6態様に係る熱分析装置であって、ヒータを制御するコントローラをさらに備えてもよい。コントローラは、加熱炉を輻射熱が支配的になる温度以上の温度まで昇温可能であってもよい。このような高温まで加熱炉が昇温されるときには、対流によるフラップへの影響が大きい。そのため、本態様に係る熱分析装置がより有効となる。
【0045】
(第8態様)第5から第7態様のいずれかに係る熱分析装置であって、試料と基準物質との温度差を示す示差熱信号を出力する温度センサをさらに備えてもよい。温度センサは、0.1℃以下の温度差を検出可能であってもよい。このように、微小な示差熱信号が検出される場合に、フラップの揺らぎによって、熱分析の精度が影響を受け易い。そのため、本態様に係る熱分析装置がより有効となる。
【符号の説明】
【0046】
12:加熱炉、 15:ヒータ、 17:温度センサ、 20:コントローラ、 21:冷却ファン、 23:ダクト、 24:シャッタ、 26:輻射シールド、 31:第1フラップ、 32:第2フラップ、 41:第1回転軸、 42:第1板部、 44:第2回転軸、 45:第2板部、 46:下端