(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】接近通報装置
(51)【国際特許分類】
G10K 9/12 20060101AFI20240501BHJP
B60Q 5/00 20060101ALI20240501BHJP
G10K 9/13 20060101ALI20240501BHJP
H04R 3/04 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
G10K9/12 C
B60Q5/00 610Z
B60Q5/00 620A
B60Q5/00 630B
B60Q5/00 640Z
B60Q5/00 650A
B60Q5/00 650B
B60Q5/00 660B
B60Q5/00 660Z
B60Q5/00 670A
G10K9/13 102A
H04R3/04
(21)【出願番号】P 2021190411
(22)【出願日】2021-11-24
【審査請求日】2023-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】390001812
【氏名又は名称】株式会社デンソーエレクトロニクス
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴田 吉輝
(72)【発明者】
【氏名】佐川 周平
(72)【発明者】
【氏名】竹内 祐介
【審査官】中嶋 樹理
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/184829(WO,A1)
【文献】特開2001-028797(JP,A)
【文献】特開2017-095060(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0046234(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 9/12
B60Q 5/00
G10K 9/13
H04R 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(70)の接近を通報するための接近通報音を発する接近通報装置であって、
前記接近通報音の基になる接近通報音データを記憶したメモリ部(32a)を有し、前記接近通報音データに基づいた出力を行うマイコン(32)と、
前記マイコンからの出力に基づいて前記接近通報音を発する発音体(20)と、
前記マイコンが実装された電気基板(30)と、
前記電気基板のセンサ実装面(302)に実装され、該センサ実装面上の温度である基板温度を検出し、該基板温度を示す基板温度情報を前記マイコンへ出力する基板温度センサ(36)と、
前記マイコンと前記発音体と前記電気基板と前記基板温度センサとが収容された筐体(11)とを備え、
前記マイコンは、前記メモリ部に加え更に、前記発音体の温度である発音体温度を前記基板温度情報に基づいて推定演算する演算部(32d)と、該演算部が推定演算した前記発音体温度に基づいて前記接近通報音を補正する補正部(32e)とを有する、接近通報装置。
【請求項2】
前記メモリ部には、当該接近通報装置が備える前記発音体の個体に対し測定して得られた個体データも予め記憶されており、
前記補正部は、前記個体データを用いて前記接近通報音を補正する、請求項1に記載の接近通報装置。
【請求項3】
前記発音体は、振動板(202)と、通電されることにより前記振動板を振動させる駆動部(203)とを有し、
前記駆動部は、前記振動板に対し一軸心(CL)の軸方向(Da)の一方側に配置され、
前記電気基板は、前記駆動部に対し前記軸方向の前記一方側に配置され、前記軸方向に交差する方向に拡がり、
前記基板温度センサは、前記駆動部に対し前記軸方向の前記一方側に重なるように配置されている、請求項1または2に記載の接近通報装置。
【請求項4】
前記センサ実装面は、前記軸方向の前記一方側とは反対側の他方側を向いた面である、請求項3に記載の接近通報装置。
【請求項5】
前記車両の動力源(701)が収容された動力源室(71)内に配置される接近通報装置であって、
前記マイコンには、前記動力源室の温度に関連する1つ以上の動力源室温度関連情報が入力され、
前記演算部は、前記動力源室温度関連情報と前記基板温度情報とに基づいて前記発音体温度を推定演算する、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の接近通報装置。
【請求項6】
前記演算部は、前記1つ以上の動力源室温度関連情報と前記基板温度情報とのそれぞれの前記発音体温度に対する寄与度のうち前記基板温度情報の前記発音体温度に対する寄与度が最も大きくなるように予め定められた規則(F1)を用いて、前記発音体温度を推定演算し、
前記発音体温度に対する寄与度とは、前記演算部が推定演算する前記発音体温度の変動に対して与える影響の度合である、請求項5に記載の接近通報装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の接近を通報するための接近通報音を発する接近通報装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド車などでは、その構造から車両の発生騒音が小さく、これらの車両の接近を歩行者が気付き難い。そのため、近年、歩行者などの周囲に車両が近くにいるという認知度を上げるために、接近通報音として擬似走行音を発する接近通報装置が電気自動車やハイブリッド車などに搭載される。
【0003】
そして、そのような接近通報装置として、例えば特許文献1に記載された車両接近通報装置が知られている。この特許文献1に記載された車両接近通報装置では、マイコンからの出力に基づいて、擬似走行音などの接近通報音がスピーカから発せられる。
【0004】
また、マイコンでは、各種センサによって検出された外気温、エンジン水温、エンジンオイル温度、および車速からスピーカ温度が推定され、接近通報音が、その推定されたスピーカ温度に基づいて補正される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の車両接近通報装置のように接近通報音を発する接近通報装置は、例えば、車両のエンジンルーム内に配置されることが想定される。そのように接近通報装置がエンジンルーム内に配置される場合、そのエンジンルーム内の温度変化は激しいので、接近通報装置におけるスピーカ温度も大きく変動し、そのスピーカ温度の変動に伴うスピーカの出力特性の変化も大きくなる。そのため、そのスピーカの出力特性の変化が加味されずに接近通報音が接近通報装置から発せられると、その接近通報音が所望の音よりも小さく聞こえたり大きく聞こえたりする事態が生じうる。
【0007】
このような事態を回避するために、特許文献1の車両接近通報装置では、スピーカ温度が推定され、接近通報音が、その推定されたスピーカ温度に基づいて補正される。
【0008】
しかしながら、特許文献1の車両接近通報装置では、スピーカ温度を推定するために、スピーカの近傍で検出される温度は用いられない。そのため、スピーカ温度を高精度に推定することが難しい。そして、スピーカ温度の推定精度が悪化すれば、それに応じて、接近通報音の補正精度も悪化する。発明者らの詳細な検討の結果、以上のようなことが見出された。なお、スピーカは発音体とも称され、スピーカ温度は発音体温度とも称される。
【0009】
本発明は上記点に鑑みて、接近通報音を補正するための基になる発音体温度の推定精度を向上させることが可能な接近通報装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の接近通報装置は、
車両(70)の接近を通報するための接近通報音を発する接近通報装置であって、
接近通報音の基になる接近通報音データを記憶したメモリ部(32a)を有し、接近通報音データに基づいた出力を行うマイコン(32)と、
マイコンからの出力に基づいて接近通報音を発する発音体(20)と、
マイコンが実装された電気基板(30)と、
電気基板のセンサ実装面(302)に実装され、そのセンサ実装面上の温度である基板温度を検出し、その基板温度を示す基板温度情報をマイコンへ出力する基板温度センサ(36)と、
マイコンと発音体と電気基板と基板温度センサとが収容された筐体(11)とを備え、
マイコンは、メモリ部に加え更に、発音体の温度である発音体温度を基板温度情報に基づいて推定演算する演算部(32d)と、その演算部が推定演算した発音体温度に基づいて接近通報音を補正する補正部(32e)とを有する。
【0011】
このようにすれば、発音体温度を推定演算するための基板温度を検出する基板温度センサを、発音体と同じ空間である筐体内の空間に配置し、且つ、その発音体の近傍に配置することができる。従って、例えば特許文献1の車両接近通報装置との比較で、発音体温度の推定精度を向上させることが可能である。
【0012】
また、基板温度センサは、マイコンが実装された電気基板に実装されているので、その基板温度センサと、マイコンが実装された電気基板とを接続する電気配線が不要になる。従って、その電気配線を介して基板温度センサの検出信号がマイコンへ入力される場合と比較して、基板温度センサとマイコンとの間の電気抵抗を格段に小さくし、基板温度センサの検出信号を精度良くマイコンへ入力することができる。この点からも、発音体温度の推定精度を向上させることが可能である。
【0013】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態において、接近通報装置が車両に搭載された状態を模式的に示した図である。
【
図2】第1実施形態において、接近通報装置の概略構成を示した断面図である。
【
図3】
図2のIII方向の矢視図であって、第1実施形態の接近通報装置の正面図である。
【
図4】第1実施形態における接近通報装置のブロック図である。
【
図5】第1実施形態において、スピーカが有するボイスコイルの抵抗率の温度特性を示した図である。
【
図6】第1実施形態において、スピーカにおけるボイスコイル温度と音圧レベルとの関係である音圧レベル温度特性を例示した図である。
【
図7】第1実施形態において、スピーカ周波数特性および音源特性を示した図である。
【
図8】第1実施形態において、発音出力に対するボイスコイルの温度変化を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、実施形態を説明する。なお、後述の他の実施形態を含む以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0016】
(第1実施形態)
図1に示すように、本実施形態の接近通報装置10は、ハイブリッド自動車などである車両70に搭載される。具体的に、接近通報装置10は、車両70のうち前方部分に設けられたエンジンルーム71内に配置される。接近通報装置10は、ロードノイズが小さな低速走行時に、接近通報音としての擬似走行音を発音し、これにより、車両70の接近を周囲の歩行者などに通報する。なお、エンジンルーム71とは、言い換えると、車両70の走行用動力源701としてのエンジン等が収容された動力源室である。また、
図1の矢印D1、D2は、接近通報装置10を搭載する車両70の向きを表している。
【0017】
図2~
図4に示すように、接近通報装置10は、内部に空間が形成された筐体11、発音体であるスピーカ20、電気基板30、マイコン32、基板温度センサ36、ローパスフィルタ40、およびパワーアンプ41などを備えている。なお、本実施形態の説明では、パワーアンプ41をアンプ41と略して記載することがある。また、
図4に表示された「LPF」はローパスフィルタの略であり、「AMP」はアンプの略である。
【0018】
筐体11は、接近通報装置10の外殻を成しており、例えば複数の樹脂部品が一体となって構成されている。筐体11内には、上記したスピーカ20、電気基板30、マイコン32、基板温度センサ36、ローパスフィルタ40、およびアンプ41が収容されている。スピーカ20および電気基板30は筐体11に対して固定されている。
【0019】
また、筐体11は、外部配線を接続するためのコネクタ部111を備えている。
【0020】
また、筐体11内では、電気基板30は、スピーカ20に対し、そのスピーカ20の中心線であるスピーカ軸心CLの軸方向Daの一方側に配置されている。なお、本実施形態の説明では、スピーカ軸心CLの軸方向Daをスピーカ軸方向Daと称する場合がある。また、スピーカ軸方向Daの一方側に対する反対側は、スピーカ軸方向Daの他方側と称される。また、スピーカ軸心CLは本開示の一軸心に対応する。
【0021】
電気基板30は、スピーカ軸方向Daに交差する方向(厳密には、そのスピーカ軸方向Daに垂直な方向)へ拡がった板形状を成している。そして、電気基板30は、抵抗やコンデンサ等の電気部品が実装される実装面として、一面301と他面302とを有している。電気基板30はプリント基板であり、その電気基板30に実装された電気部品に対し電気的に接続される配線パターンが一面301と他面302とにそれぞれ形成されている。
【0022】
電気基板30の一面301は、電気基板30のうちスピーカ軸方向Daの一方側に設けられ、スピーカ軸方向Daの一方側に向いている。電気基板30の他面302は、電気基板30のうちスピーカ軸方向Daの他方側に設けられ、スピーカ軸方向Daの他方側に向いている。
【0023】
電気基板30の他面302には基板温度センサ36が実装されている。すなわち、電気基板30の他面302は、基板温度センサ36が実装されたセンサ実装面である。
【0024】
また、マイコン32も電気基板30の他面302に実装され、ローパスフィルタ40とアンプ41は、電気基板30の一面301または他面302に実装されている。
【0025】
また、電気基板30には金属部材である複数のコネクタターミナル44がハンダ付けにより接続されている。コネクタターミナル44は、そのコネクタターミナル44のうち電気基板30側とは反対側に設けられたコネクタ側端部441を有し、そのコネクタ側端部441は、筐体11のコネクタ部111にて筐体11の外部へ露出している。電気基板30は、コネクタターミナル44を介して、接近通報装置10の外部に設けられた外部接続機器72に対して電気的に接続される。
【0026】
その外部接続機器72には、車速センサ721、水温センサ722、油温センサ723、外気温センサ724、エンジン制御用の電子制御装置725(以下、エンジンECU725とも呼ぶ)、および不図示の車両用電源(例えば、バッテリ)などが含まれる。
【0027】
スピーカ20は、マイコン32からの出力に基づいて接近通報音を発する装置である。詳細には、スピーカ20は、アンプ41を通じて送られてくる接近通報音電圧波形信号Smに応じた周波数、音圧レベルで接近通報音の発音を行う。本実施形態の説明では、接近通報音電圧波形信号Smを発音用信号Smと称する場合がある。
【0028】
図2、
図3に示すように、スピーカ20は、フレーム201と振動板202と駆動部203と複数の端子金具209とを備えている。スピーカ20は、スピーカ軸方向Daの他方側に向かって接近通報音を発するように配置されている。従って、筐体11のうちスピーカ20に対しスピーカ軸方向Daの他方側に重なる部位では、筐体11の壁が部分的に開放されている。なお、
図2は、
図3のII-II断面を示した断面図である。
【0029】
図2に示すように、フレーム201は、振動板202と駆動部203とを支持するものであり、そのフレーム201の外周部分で筐体11に対し例えば接着剤などによって固定されている。すなわち、スピーカ20の振動板202と駆動部203は、フレーム201を介して筐体11に支持されている。フレーム201は、例えば樹脂で構成されている。
【0030】
スピーカ20の振動板202は、スピーカ軸心CLを中心としてスピーカ軸心CLに交差する方向へ膜状に拡がって形成されている。振動板202は可撓性を有しており、例えばコーン紙で構成されている。振動板202は、その振動板202自体の振動により、例えば接近通報音になる空気の振動を生じさせる。振動板202は、ダイヤフラムとも称される。
【0031】
スピーカ20の駆動部203は、通電されることにより振動板202を振動させて音を発生させるためのものである。駆動部203は、スピーカ軸心CLを駆動部203の中心線として、振動板202に対しスピーカ軸方向Daの一方側に配置されている。駆動部203は、ボビン204とボイスコイル205と磁気回路部206とを備えている。また、電気基板30は、その駆動部203に対しスピーカ軸方向Daの一方側に配置されている。
【0032】
ボビン204は円筒状とされ、振動板202の一部に接合されている。ボビン204の外側には、ボイスコイル205が巻かれている。スピーカ軸心CLは、そのボイスコイル205の中心線でもある。
【0033】
磁気回路部206は、ボイスコイル205に磁界を印加するものである。磁気回路部206は、有底筒状のヨークと、ヨークの内底面に配置された円板状の磁石と、磁石に積層された円板状のトッププレートとを備えている。ヨークおよびトッププレートは、磁性体で構成されている。ヨークは、振動板202に向かって開口し、フレーム201におけるスピーカ軸方向Daの一方側の開口部を塞ぐように配置されている。
【0034】
磁石およびトッププレートのそれぞれとヨークの側壁との間には隙間が形成されており、この隙間にボイスコイル205が入ることで、トッププレートとヨークの側壁との間に発生する磁界がボイスコイル205に印加される。この状態でボイスコイル205に電流が流されることで、ボビン204がスピーカ軸方向Daに変位し、振動板202が振動して、音が発生する。そして、そのボイスコイル205に流される電流は、マイコン32からの出力信号に応じてアンプ41から供給される。
【0035】
スピーカ20の端子金具209は、駆動部203のボイスコイル205と電気基板30とを電気的に接続する金属部品である。すなわち、アンプ41から供給される電流は、端子金具209を介してボイスコイル205に流れる。
【0036】
端子金具209はフレーム201に固定され、フレーム201からスピーカ軸方向Daの一方側へ突き出ている。そして、その端子金具209の突き出た先端部は、電気基板30に対しハンダ付けにより接続されている。
【0037】
図4に示すように、車速センサ721は車速を検出し、その車速を示す車速検知信号を出力する。そして、その車速検知信号は、車速を示す車速情報として接近通報装置10のマイコン32に入力される。
【0038】
水温センサ722は、エンジンを冷却するためのラジエータ水の温度を検出し、そのラジエータ水の温度を示す水温検知信号を出力する。そして、その水温検知信号は、ラジエータ水の温度を示す水温情報としてマイコン32に入力される。
【0039】
油温センサ723はエンジンオイルの温度を検出し、そのエンジンオイルの温度を示す油温検知信号を出力する。そして、その油温検知信号は、エンジンオイルの温度を示す油温情報としてマイコン32に入力される。
【0040】
外気温センサ724は車室外の外気温を検出し、その外気温を示す外気温検知信号を出力する。そして、その外気温検知信号は、外気温を示す外気温情報としてマイコン32に入力される。
【0041】
これらの車速、ラジエータ水の温度、エンジンオイルの温度、および外気温は何れも、接近通報装置10が設置されたエンジンルーム71の温度に影響する。従って、各センサ721~724から得られる車速情報、水温情報、油温情報、および外気温情報はそれぞれ、エンジンルーム71の温度に関連するエンジンルーム温度関連情報(別言すると、動力源室温度関連情報)に該当する。
【0042】
エンジンECU725は、エンジン制御に用いられる種々の物理量の値などを扱っており、その中から、車両70の走行可能状態に関する情報やエンジン作動時間に関する情報を接近通報装置10のマイコン32に対して入力する。
【0043】
図2、
図4に示すように、基板温度センサ36は、例えばサーミスタで構成された温度センサであり、電気基板30の他面302上の温度である基板温度を検出する。その基板温度は、電気基板30の他面302に接する空気の温度であってもよいし、電気基板30の他面302のうち基板温度センサ36が配置されている箇所の温度であってもよい。基板温度センサ36は、基板温度を示す基板温度検知信号を出力し、その基板温度検知信号は、基板温度を示す基板温度情報としてマイコン32に入力される。
【0044】
また、
図2に示すように、基板温度センサ36は、スピーカ20の駆動部203に対しスピーカ軸方向Daの一方側に重なるように配置されている。詳細には、基板温度センサ36は、スピーカ20の駆動部203に接触はしていないが、その駆動部203に対しスピーカ軸方向Daに隙間をあけて隣接して配置されている。要するに、基板温度センサ36は、スピーカ20の駆動部203の近傍、詳細にはその駆動部203が有するボイスコイル205の近傍に配置されている。
【0045】
なお、本実施形態の説明では、センサ721、722、723、724を略して、センサ721~724と表現することがあり、センサ721、722、723、724、36を略して、センサ721~724、36と表現することがある。
【0046】
図4に示すように、各センサ721~724の検知信号やエンジンECU725からの情報は、例えば車内LANなどを通じて接近通報装置10のマイコン32に対して入力されるようになっている。
【0047】
なお、
図4に示された各センサ721~724としては、車両70に搭載されているものが用いられている。すなわち、それらのセンサ721~724は、スピーカ20の温度を検出する為のみに設けられているわけではない。そのスピーカ20の温度とはスピーカ20の代表温度であり、スピーカ温度とも称される。詳細に言うと本実施形態では、スピーカ20のボイスコイル205の温度Tvcがスピーカ温度として取り扱われる。このスピーカ温度は本開示の発音体温度に対応する。なお、本実施形態の説明では、ボイスコイル205の温度Tvcをボイスコイル温度Tvcと略して記載することがある。
【0048】
マイコン32は、LSIまたはIC等の1また複数の電子部品を含んで構成された電子制御装置である。マイコン32は、記録媒体としての半導体メモリに格納されたコンピュータプログラムを実行し、そのコンピュータプログラムが実行されることで、コンピュータプログラムに対応する方法が実行される。例えば、マイコン32は、予め記憶された接近通報音データに基づいて電圧波形信号である発音用信号Smを生成し、その発音用信号Smを出力する。
【0049】
具体的には、
図4に示すように、マイコン32は、メモリ部32a、信号生成部32b、取得部32c、演算部32d、音圧・周波数補正部32e、および出力時間演算部32fを有した構成とされている。それらのメモリ部32a、信号生成部32b、取得部32c、演算部32d、音圧・周波数補正部32e、および出力時間演算部32fが実行する制御処理はコンピュータプログラムによって実現されてもよいし、ハードウェアで実現されるものであってもよい。本実施形態の説明では、音圧・周波数補正部32eを略して補正部32eと称することがある。
【0050】
メモリ部32aは、接近通報音データや各種制御プログラムなどを記憶する部分である。その接近通報音データとは、接近通報音の基になるデータ、すなわち、接近通報音の音源データである。例えば、メモリ部32aには、PCMデータなどの接近通報音データ、および、スピーカ温度に対応付けた補正演算プログラムを含む車両70の接近通報音の発音の制御プログラムなどが記憶されている。
【0051】
このメモリ部32aは、マイコン32を構成する半導体部品の一部分であってもよいし、マイコン32が有する1つの独立した記録媒体であってもよい。
【0052】
信号生成部32bは、メモリ部32aに記憶された接近通報音データに基づいて、接近通報音を出力するための発音用信号Smを生成する。
【0053】
取得部32cは、外部接続機器72および基板温度センサ36から各種情報を取得する部分である。その各種情報とは、例えば、上記した車速情報、水温情報、油温情報、外気温情報、基板温度情報、車両70の走行可能状態に関する情報、およびエンジン作動時間に関する情報などである。
【0054】
ここで、外部接続機器72から取得部32cが取得する各種情報は、スピーカ温度の変化の外部要因となる情報である。すなわち、車速が大きくなると、スピーカ20への風当たりが強くなり、スピーカ温度の低下が生じ得る。また、ラジエータの温度やエンジン温度など、スピーカ20の周囲に存在している部材の温度の影響によってスピーカ温度が変動し得る。同様に、外気温の影響によってもスピーカ温度が変動し得る。このように、取得部32cは、外部接続機器72から各種情報を取得することで、スピーカ温度を変化させ得る外部要因のパラメータの各値を取得している。
【0055】
なお、外部接続機器72と基板温度センサ36とから伝えられる情報が各種センサ721~724、36による各種検出信号である場合には、取得部32cは、その各種検出信号に基づいて、車速、ラジエータ水の温度、エンジンオイルの温度、外気温、基板温度などを求めている。
【0056】
演算部32dは、取得部32cで取得された各種情報、および、後述する出力時間演算部32fから伝えられるスピーカ20での発音の出力時間に基づいて、スピーカ温度を推定演算する。なお、演算部32dによる演算の手法については後述する。
【0057】
補正部32eは、スピーカ20が発する接近通報音がスピーカ温度の変化に起因して変化することを抑制するように、演算部32dが推定演算したスピーカ温度に基づいて接近通報音を補正する。詳しく言うと、補正部32eは、演算部32dが推定演算したスピーカ温度に基づいて、スピーカ20から発音する際のスピーカ出力音圧の振幅および出力する音の周波数を補正するように、発音用信号Smを補正する。
【0058】
そして、補正部32eは、補正後のスピーカ出力音圧および周波数の発音用信号Smをローパスフィルタ40に伝えている。この補正部32eによる補正の手法については後述する。
【0059】
出力時間演算部32fは、スピーカ20から発音を行うときの出力時間を演算し、その出力時間を演算部32dに伝える。スピーカ温度は発音を行った際の出力時間に応じて上昇する。このため、スピーカ20の出力時間は、スピーカ温度の変化の内部要因となる情報となる。
【0060】
出力時間演算部32fは、例えば、車両70が走行してスピーカ20から発音が行われると、発音が停止するまでの間、出力時間を積算する。出力時間演算部32fによる出力時間の積算は車両70の始動中行われ、車両70の始動が解除されるとリセットされる。車両70が始動中であるか否かは例えば車両70の走行可能状態に基づいて判定することができ、出力時間演算部32fは、車両70が始動中において、出力時間の積算を行っている。
【0061】
また、出力時間演算部32fは、スピーカ20からの発音を停止してからの経過時間を出力時間と共に演算部32dに伝えている。すなわち、スピーカ20からの発音が停止するとスピーカ温度が低下するので、出力時間演算部32fは、発音を停止してからの経過時間を演算部32dに伝える。これにより、出力時間に基づくスピーカ温度上昇と、発音を停止してからのスピーカ温度低下とを加味して、より正確にスピーカ温度を推定演算できるようにしている。
【0062】
ローパスフィルタ40には、マイコン32から出力された発音用信号Smが入力される。ローパスフィルタ40は、高周波のノイズ成分を除去して、ノイズ成分除去後の発音用信号Smを発生させる。例えば、ローパスフィルタ40は、出力に対応する電圧を内蔵のコンデンサに蓄え、それをアンプ41に出力している。
【0063】
アンプ41は、図示しない定電圧源からの電圧印加に基づいてローパスフィルタ40の出力と対応する電流をスピーカ20に流す。スピーカ20が発音する音圧は、アンプ41から供給される電流の大きさ(すなわち、振幅)に応じて決まり、アンプ41から供給される電流の大きさは、PWM出力に対応するローパスフィルタ40の出力波形によって決まる。このため、アンプ41が流す電流は、スピーカ温度に基づく補正後の発音用信号Smに基づいて変化させられる。
【0064】
そして、その補正後の発音用信号Smに基づいて変化する電流がアンプ41からスピーカ20のボイスコイル205へ供給されることで、スピーカ20の振動板202が振動し、接近通報音が発生する。
【0065】
次に、上記した補正部32eでの補正の手法および演算部32dによるスピーカ温度の推定演算方法について説明する。
【0066】
補正部32eでは、スピーカ温度に応じて発音用信号Smの電圧レベルの補正を行う。具体的には、後述するように、発音用信号Smの振幅係数k1を演算している。そして、補正部32eは、演算された振幅係数k1を音圧補正前の発音用信号Smに掛け合わせることで、音圧補正後の発音用信号Smを生成している。
【0067】
具体的には、補正部32eは、メモリ部32aに記憶された演算式もしくはマップを用いて、演算部32dで推定されたスピーカ温度に対応する振幅係数k1を演算している。すなわち、メモリ部32aには、スピーカ20が搭載される場所の温度変化として想定される温度範囲内における温度と音圧レベルとの関係を示した演算式もしくはマップを記憶してある。そして、補正部32eは、その演算式にスピーカ温度を代入して振幅係数k1を演算したり、マップからスピーカ温度に対応する振幅係数k1を選択している。なお、スピーカ温度については、後述するように演算部32dで行われる推定演算の結果を用いている。
【0068】
図5は、スピーカ20が有するボイスコイル205の抵抗率の温度特性を示した図である。
図6は、スピーカ20におけるボイスコイル温度Tvcと音圧レベルとの関係である音圧レベル温度特性を例示した図である。その
図6の破線L1、L2、L3は、音圧補正が為されていない成り行きの音圧レベル温度特性、すなわち、振幅係数k1が「k1=1」とされたときの音圧レベル温度特性を示している。また、その破線L1、L2、L3は、スピーカ20の3つの個体が有する音圧レベル温度特性をそれぞれ例示している。
【0069】
例えば、スピーカ20のボイスコイル205の材料は銅であり、
図5に示すように、銅の抵抗率の温度係数が約4000ppm/℃となる。そのため、ボイスコイル205のインピーダンスは、ボイスコイル温度Tvcの-40℃から110℃迄の150℃幅で、約60%変化することになる。
【0070】
このため、
図6の破線L1、L2、L3で示されるように、温度変化に伴って発音用信号Smの電圧レベルを変更しなかった場合、実際にスピーカ20から出力される接近通報音の音圧レベルは温度上昇に伴って低下する。例えば、ボイスコイル温度Tvcが-40から110℃に変化した場合のように150℃幅だと、その温度変化の影響だけで音圧レベルは単純に4dB低下してしまう。
【0071】
詳細に言うと、スピーカ20のボイスコイル205の抵抗値はボイスコイル205の個体毎に異なるので、
図5に示された温度特性は、スピーカ20の個体毎にばらついている。そのため、スピーカ20の音圧レベル温度特性も、例えば
図6の破線L1、L2、L3で示されるように、スピーカ20の個体毎にばらついている。
【0072】
図6の破線L1は、スピーカ20の第1の個体に対し測定して得られた個体データとしての音圧レベル温度特性、すなわち第1の音圧レベル温度特性を示している。また、破線L2は、スピーカ20の第2の個体に対し測定して得られた個体データとしての音圧レベル温度特性、すなわち第2の音圧レベル温度特性を示している。また、破線L3は、スピーカ20の第3の個体に対し測定して得られた個体データとしての音圧レベル温度特性、すなわち第3の音圧レベル温度特性を示している。そのスピーカ20の第1~第3の個体はそれぞれ、接近通報装置10の別々の製品に備えられる。
【0073】
そして、第1の音圧レベル温度特性は、スピーカ20の第1の個体を有する接近通報装置10の製品に含まれるマイコン32のメモリ部32aに予め記憶されている。これと同様に、第2の音圧レベル温度特性は、スピーカ20の第2の個体を有する接近通報装置10の製品に含まれるマイコン32のメモリ部32aに予め記憶されている。また、第3の音圧レベル温度特性は、スピーカ20の第3の個体を有する接近通報装置10の製品に含まれるマイコン32のメモリ部32aに予め記憶されている。
【0074】
これらのメモリ部32aに記憶された個体データである第1~第3の音圧レベル温度特性はそれぞれ、接近通報音を補正するために用いられる補正用データである。
【0075】
本実施形態では、スピーカ20が例えば
図6の破線L1、L2、L3の何れかで示される音圧レベル温度特性を有し、補正部32eは、スピーカ温度に応じた振幅係数k1を演算する。そして、その振幅係数k1を音圧補正前の発音用信号Smに掛け合わせることでスピーカ20での発音の音圧レベルを補正でき、スピーカ20から接近通報音が発音されたときに、例えば
図6の実線L0で示されるように、その音圧レベルが一定値となるようにすることができる。その
図6の実線L0は、補正の目標とされる音圧レベルY0、すなわち目標音圧レベルY0を示しており、この目標音圧レベルY0は、接近通報音の通報性も騒音性も両方共に満足する値として予め実験的に定められてる。
【0076】
具体的には、スピーカ温度が高くなるほど振幅係数k1が大きくなるようにすることで、発音用信号Smの電圧レベルは補正される。
【0077】
例えば、スピーカ20の第1の個体を有する接近通報装置10の製品において、推定演算されたスピーカ温度であるボイスコイル温度Tvcが温度T1であった場合について説明する。この場合、振幅係数k1の演算のために、補正部32eは、
図6の破線L1で示される第1の音圧レベル温度特性を用い、その第1の音圧レベル温度特性(すなわち、破線L1の関係)で温度T1に対応した音圧レベルY1を求める。そして、補正部32eは、その音圧レベルY1が目標音圧レベルY0になるように、振幅係数k1を定める。この場合、矢印AR1で示されるように音圧レベルが補正によって引き上げられる必要があるので、振幅係数k1は「k1>1」になる。そして、振幅係数k1が「k1>1」とされることで、「k1=1」の場合に比して発音用信号Smの電圧レベルが上がる。
【0078】
また、上記とは別の例として、スピーカ20の第2の個体を有する接近通報装置10の製品において、推定演算されたスピーカ温度であるボイスコイル温度Tvcが温度T2であった場合について説明する。この場合、振幅係数k1の演算のために、補正部32eは、
図6の破線L2で示される第2の音圧レベル温度特性を用い、その第2の音圧レベル温度特性(すなわち、破線L2の関係)で温度T2に対応した音圧レベルY2を求める。そして、補正部32eは、その音圧レベルY2が目標音圧レベルY0になるように、振幅係数k1を定める。この場合、矢印AR2で示されるように音圧レベルが補正によって引き下げられる必要があるので、振幅係数k1は「k1<1」になる。そして、振幅係数k1が「k1<1」とされることで、「k1=1」の場合に比して発音用信号Smの電圧レベルが下がる。
【0079】
このように、補正部32eは、スピーカ20の個体毎の音圧レベル温度特性のバラツキを吸収し、スピーカ20での発音の音圧レベルがスピーカ温度に拘わらず
図6の実線L0で示されるような一定値になるように、発音用信号Smの電圧レベルを補正する。
【0080】
なお、本実施形態では、スピーカ20からの発音の音圧レベルを一定値としているが、その一定値とは、必ずしも全く同じ固定の音圧レベルである必要はない。この音圧レベルを補正する場合に目標とする一定値は、ある程度幅を持たせた値、例えば接近通報装置10の使用温度範囲における音圧レベルの変化が2dB程度の所定範囲以内となる幅を持たせた値とされてもよい。
【0081】
また、補正部32eでは、スピーカ温度に応じて発音用信号Smの周波数の補正を行う。通常、接近通報音として用いる音源データの特性(以下、音源特性という)についてはスピーカ20の周波数特性(以下、スピーカ周波数特性という)に応じて設定するため、スピーカ周波数特性の変化は意図せぬ音圧変動や音色の変化を生じさせる可能性がある。そして、そのスピーカ周波数特性は、スピーカ20が有する振動板202(
図2参照)の温度変化に基づく硬度変化によって変動する。そのため、本実施形態の補正部32eは、スピーカ温度の変化によるスピーカ周波数特性の変動に対応して、スピーカ周波数特性の変化量に合わせて接近通報音の音程を微調整することで補正する。補正部32eは、その接近通報音の音程を微調整する補正を、上記したスピーカ温度に対応する音圧の振幅の補正と組み合わせて行っている。
【0082】
例えば、
図7に示すように、スピーカ周波数特性や音源特性は、スピーカ温度の変化、より詳しくはスピーカ20の振動板202の温度変化に基づく硬度変化によって変動する。すなわち、振動板202の硬度によってその振動板202の共振周波数が決まることから、振動板202の温度変化に起因する硬度変化に伴って共振周波数が変化し、スピーカ周波数特性や音源特性が変化する。スピーカ周波数特性については、山状の波形で示され、スピーカ温度が低温、常温(例えば、25℃程度)、高温の場合それぞれでピークをとるときの周波数が変化し、スピーカ温度が低いほどピークをとるときの周波数が高くなる。また、音源特性については、音源として使用する周波数帯域中における低周波数帯と高周波数帯それぞれで代表的な2つの成分の効率(別言すると、能率)の変化を示してあるが、スピーカ温度が低温、常温、高温の場合それぞれで効率が変化しており、スピーカ温度が高いほど効率が低下する。
【0083】
このため、補正部32eは、スピーカ温度に基づいて接近通報音の周波数を補正し、音程を微調整する。例えば、補正部32eは、スピーカ温度が常温よりも高いと接近通報音の周波数を常温のときよりも下げると共に、スピーカ温度が常温よりも低いと接近通報音の周波数を常温のときよりも上げるようにし、スピーカ周波数特性が常温時のものに近づくように補正する。また、補正部32eは、スピーカ温度に基づいて、接近通報音として使用している周波数帯域中の各成分の音圧を変化させる。例えば、補正部32eは、スピーカ温度が常温よりも高いと接近通報音の周波数成分の音圧を高くすると共に、スピーカ温度が常温よりも低いと接近通報音の周波数成分の音圧を低くすることで音源特性が常温時のものに近づくようにする。これにより、スピーカ温度の変化が生じても、聞こえる接近通報音の変化が少なくなるようにすることができる。
【0084】
このように、補正部32eにて、スピーカ音に応じて接近通報音の音圧の振幅や周波数を補正している。これにより、スピーカ温度の変化が生じても聞こえる接近通報音の変化が少なくなるようにすることができる。
【0085】
次に、演算部32dによるスピーカ温度の推定演算の手法について説明する。スピーカ温度の推定は、スピーカ20の周囲の雰囲気温度Tsp(以下、スピーカ雰囲気温度Tspという)の推定とスピーカ20のボイスコイル205(
図2参照)の温度上昇推定とによって行われる。具体的には、演算部32dは、スピーカ雰囲気温度Tspを推定し、その推定したスピーカ雰囲気温度Tspに基づき、ボイスコイル205の温度上昇推定によってスピーカ温度を求める。
【0086】
スピーカ雰囲気温度Tsp、換言すればボイスコイル205の雰囲気温度は、通電されるボイスコイル205、電気基板30、およびその電気基板30上の電気部品によって上昇する。それだけでなく、そのスピーカ雰囲気温度Tspは、エンジンルーム71内に配置されたエンジンやラジエータ等の熱源としての車載機器によっても上昇する。
【0087】
そこで、演算部32dは、取得部32cが外部接続機器72および基板温度センサ36から取得した外気温情報、水温情報、油温情報、基板温度情報、および車速情報に基づいて、スピーカ雰囲気温度Tspを推定する。具体的に、演算部32dは、スピーカ雰囲気温度Tspを求めるために予め定められた規則としての下記式F1を用いて、スピーカ雰囲気温度Tspを推定する。
Tsp=a1・Tair+b1・Tra+c1・Toil+d1・Tpcb-k2・SPD
・・・(F1)
【0088】
なお、上記式F1において、Tspはスピーカ雰囲気温度、Tairは外気温情報、a1は外気温係数、Traは水温情報、b1は水温係数、Toilは油温情報、c1は油温係数、Tpcbは基板温度情報、d1は基板温度係数、SPDは車速情報、k2は車速に対する自然空冷係数を意味している。
【0089】
上記式F1について説明すると、上記式F1の係数a1、b1、c1、d1、k2はそれぞれ、予め実験的に定められている。例えば、スピーカ20の搭載位置におけるスピーカ雰囲気温度Tspと、センサ721~724、36から取得できる外気温、水温、油温、および基板温度の温度情報との相関を予め計測しておき、係数a1、b1、c1、d1は、その計測された相関に基づいて定められている。
【0090】
また、上記式F1では、車両走行時におけるスピーカ搭載位置でのエアフローの風当たりによってスピーカ20の自然空冷が生じることも加味されているので、上記式F1の右辺には「-k2・SPD」の項が設けられている。スピーカ20の自然冷却は車速に比例するとみなし、上記式F1の自然空冷係数k2は、予め実験的に求められたスピーカ搭載位置による車速の影響度に基づいて定められている。そして、車速はその車速が高くなるほどスピーカ雰囲気温度Tspを下げる方向に作用するので、スピーカ雰囲気温度Tspは、それぞれの温度情報に係数を乗じて得られた値の合計値から、車速情報に自然空冷係数k2を乗じて得られた値を差し引くことで算出される。上記式F1中の各係数a1、b1、c1、d1、k2は、例えば車両70のエンジンルーム71の構成や車載機器の配置が異なれば異なるものである。
【0091】
更に詳しく言うと、基板温度を検出する基板温度センサ36はスピーカ20の近傍に配置されているので、外気温、ラジエータ水の水温、エンジンオイルの油温、基板温度、および車速のうち、スピーカ雰囲気温度Tspに対し基板温度が最も強く影響する。そのため、上記式F1では、外気温情報、水温情報、油温情報、基板温度情報、および車速情報のそれぞれのスピーカ雰囲気温度Tspに対する寄与度のうち、基板温度情報のスピーカ雰囲気温度Tspに対する寄与度が最も大きい。例えばスピーカ雰囲気温度Tspが上昇すればその分、スピーカ温度も上昇するので、別言すれば、外気温情報、水温情報、油温情報、基板温度情報、および車速情報のそれぞれのスピーカ温度に対する寄与度のうち、基板温度情報のスピーカ温度に対する寄与度が最も大きいとも言える。
【0092】
具体的に、上記式F1において、そのスピーカ雰囲気温度Tspに対する寄与度は各係数a1、b1、c1、d1、k2によって調整されている。例えば、上記式F1のパラメータであるTair、Tra、Toil、Tpcb、SPDが互いに同程度の変動範囲で変動するのであれば、各係数a1、b1、c1、d1、k2のうち基板温度係数d1を最大とすることで、スピーカ雰囲気温度Tspに対する基板温度情報の寄与度を最も大きくすることができる。
【0093】
なお、スピーカ雰囲気温度Tspに対する寄与度とは、演算部32dが推定演算するスピーカ雰囲気温度Tspの変動に対して与える影響の度合である。スピーカ温度に対する寄与度も、これと同様に定義される。すなわち、スピーカ温度に対する寄与度とは、演算部32dが推定演算するスピーカ温度の変動に対して与える影響の度合である。
【0094】
一方、ボイスコイル205(
図2参照)の温度上昇は、スピーカ20での発音を行った出力時間と、発音を停止してからの経過時間と、スピーカ20の出力率とから推定演算される。そのスピーカ20の出力率の単位は例えば「%」である。
【0095】
接近通報音として設定した音声出力波形は一定の音色を繰り返し再生するため、接近通報音は定常波と見なすことができる。接近通報音の出力波形、出力振幅、出力時間を乗算したもの、つまり出力電圧の積分値の2乗に発音時の熱損失は比例することから、ボイスコイル205に生じている熱損失と上記のように推定されるスピーカ雰囲気温度Tspとの和で、
図8に示す温度上昇曲線または下降曲線のどの位置にいるか推定が可能である。
【0096】
例えば、温度上昇曲線については、下記式F2で示される。
【数2】
なお、上記式F2中において、Tvcはボイスコイル温度、a2は温度上昇曲線の漸近線、τは時定数、tはスピーカ20での出力時間である。漸近線a2は発音時の熱損失に比例し、時定数τは放熱性に依存する。これら漸近線a2および時定数τについては予め実測により、もしくは、計算により求めておくことができる。一方、温度下降曲線については、発音を停止したときのボイスコイル温度Tvcとスピーカ雰囲気温度Tspとの温度差と発音を停止してからの経過時間とボイスコイル205の材質などに基づいて決まる。
【0097】
従って、スピーカ20の発音中には、温度上昇曲線に基づく温度上昇分をスピーカ雰囲気温度Tspに対して加算することで、ボイスコイル温度Tvcを推定演算することが可能となる。そして、スピーカ20の発音停止中には、発音が停止された時点における推定されたボイスコイル温度Tvcから温度下降曲線に基づく温度低下分を減算することで、ボイスコイル温度Tvcを推定演算することが可能となる。
【0098】
このボイスコイル温度Tvcの推定演算を、演算部32dは、車両70の走行可能状態における接近通報音の出力時間および発音を停止してからの経過時間を加味した温度上昇分の加算と温度低下分の減算との積算によって行っている。これにより、車両70の始動開始からのボイスコイル205の温度変化に対応して正確にスピーカ温度を演算できる。
【0099】
なお、スピーカ20の出力率、すなわち接近通報音の音圧レベルに対する出力率の最大出力を100%としたときに対する実際の出力の比は、車速等に応じて設定可能である。具体的には、車速が低いときには出力率は小さく、車速が高くなるほど出力率を大きくというように接近通報音の出力を設定できる。この場合、出力率に応じて温度上昇曲線の漸近線a2が変わることから、漸近線a2に対して出力率を乗算することで、出力率の変化に対応した温度上昇曲線とすることができる。
【0100】
以上説明したように、本実施形態の接近通報装置10が備えるマイコン32は、スピーカ温度に応じて接近通報音の音圧、例えば発音用信号Smの電圧レベルを補正したり、接近通報音の周波数や接近通報音として使用している周波数帯域中の各成分の音圧を補正している。この補正により、スピーカ温度の変化に起因した接近通報音の変化を、補正部32eによる接近通報音の補正が無い場合に比して抑制できる。
【0101】
上述したように、本実施形態によれば、
図2、
図4に示すように、接近通報装置10が備えるマイコン32とスピーカ20と電気基板30と基板温度センサ36は、接近通報装置10の筐体11に収容されている。基板温度センサ36は、電気基板30のセンサ実装面としての他面302に実装されており、その他面302上の温度である基板温度を検出し、その基板温度を示す基板温度情報をマイコン32へ出力する。そして、マイコン32の演算部32dはスピーカ温度を基板温度情報に基づいて推定演算し、補正部32eは、その演算部32dが推定演算したスピーカ温度に基づいて接近通報音を補正する。
【0102】
このようなことから、スピーカ温度を推定演算するための基板温度を検出する基板温度センサ36を、スピーカ20と同じ空間である筐体11内の空間に配置し、且つ、そのスピーカ20の近傍に配置することができる。従って、例えば特許文献1の車両接近通報装置との比較で、スピーカ温度の推定精度を向上させることが可能である。
【0103】
また、基板温度センサ36は、マイコン32が実装された電気基板30に実装されているので、その基板温度センサ36と、マイコン32が実装された電気基板30とを接続する電気配線が不要になる。従って、その電気配線を介して基板温度センサ36の検出信号がマイコン32へ入力される場合と比較して、基板温度センサ36とマイコン32との間の電気抵抗を格段に小さくし、基板温度センサ36の検出信号を精度良くマイコン32へ入力することができる。この点からも、スピーカ温度の推定精度を向上させることが可能である。
【0104】
また、マイコン32が実装された電気基板30とスピーカ20とが1つの筐体11内に収容された機電一体の構成では、その筐体11内の電気基板30に基板温度センサ36を設けることは容易である。すなわち、その基板温度センサ36から得られる基板温度情報を用いて、スピーカ温度の推定精度を容易に向上させることが可能である。
【0105】
また、本実施形態によれば、
図4、
図6に示すように、スピーカ20の個体毎に個体データとしての音圧レベル温度特性が測定される。そして、接近通報装置10の一製品が備えるマイコン32のメモリ部32aには、その接近通報装置10の一製品が備えるスピーカ20の個体に対し測定して得られた音圧レベル温度特性が予め記憶されている。そして、マイコン32の補正部32eは、個体データとしての音圧レベル温度特性を用いて接近通報音を補正する。
【0106】
従って、スピーカ20の個体毎の音圧レベル温度特性のバラツキを吸収する個体バラツキ補正と、スピーカ温度に応じた温度補正とを同時に行うことができる。これにより、スピーカ20が発する接近通報音のバラツキ抑制を高精度に行うことが可能である。
【0107】
また、マイコン32とスピーカ20は単一のユニットを構成するように機電一体となっているので、マイコン32のメモリ部32aに記憶された個体データと、その個体データに対し一対一の関係にあるスピーカ20との組合せがずれる心配がない。
【0108】
また、本実施形態によれば、
図2に示すように、スピーカ20の駆動部203は、振動板202に対しスピーカ軸方向Daの一方側に配置されている。電気基板30は、駆動部203に対しスピーカ軸方向Daの一方側に配置され、スピーカ軸方向Daに交差する方向へ拡がった板形状を成している。そして、基板温度センサ36は、スピーカ20の駆動部203に対しスピーカ軸方向Daの一方側に重なるように配置されている。
【0109】
従って、マイコン32が実装された電気基板30に基板温度センサ36を実装しつつ、スピーカ20の駆動部203が有するボイスコイル205の近傍にその基板温度センサ36を配置することができる。これにより、基板温度センサ36が検出する基板温度に基づいて得られるスピーカ温度を精度良く推定演算することが可能である。
【0110】
また、本実施形態によれば、
図2に示すように、電気基板30の他面302は、基板温度センサ36が実装されたセンサ実装面であり、スピーカ軸方向Daの他方側に向いた面である。
【0111】
従って、基板温度センサ36が電気基板30の他面302ではなく一面301に実装されている場合と比較して、基板温度センサ36をスピーカ20のボイスコイル205に近づけて配置することが可能である。また、基板温度センサ36とボイスコイル205との間を電気基板30が遮らないように基板温度センサ36を配置することができる。これにより、基板温度センサ36が検出する基板温度をボイスコイル205周りの温度に近づけることが可能である。
【0112】
また、本実施形態によれば、
図4に示すように、エンジンルーム71の温度に関連するエンジンルーム温度関連情報に該当する車速情報、水温情報、油温情報、および外気温情報がそれぞれ、マイコン32に入力される。そして、そのマイコン32の演算部32dは、それらのエンジンルーム温度関連情報と基板温度情報とに基づいてスピーカ温度を推定演算する。
【0113】
ここで、本実施形態の接近通報装置10は車両70のエンジンルーム71内に配置され、そのエンジンルーム71内の温度変化は激しい。そのため、例えば接近通報装置10が雰囲気温度変化の緩やかな環境に置かれる場合と比較して、本実施形態では、エンジンルーム71内の温度変化の影響で基板温度とスピーカ雰囲気温度Tspとの関係が変動しやすいという特有の事情がある。
【0114】
このような特有の事情から、基板温度情報だけでなくエンジンルーム温度関連情報も加味してスピーカ温度の推定演算が行われるので、エンジンルーム71内の温度を加味した精度の良いスピーカ温度を推定して得ることが可能である。
【0115】
また、基板温度は通電に起因した電気基板30の自己発熱の影響を受けるが、スピーカ温度の推定演算にエンジンルーム温度関連情報も加味されることで、推定演算で得られるスピーカ温度に対する電気基板30の自己発熱の影響を低減することが可能である。
【0116】
また、本実施形態によれば、
図4に示すように、演算部32dは、スピーカ雰囲気温度Tspを求めるために予め定められた規則としての上記式F1を用いて、スピーカ雰囲気温度Tspを推定する。そして、演算部32dは、そのスピーカ雰囲気温度Tspに基づいてスピーカ温度を推定演算する。更に、外気温情報、水温情報、油温情報、基板温度情報、および車速情報のそれぞれのスピーカ雰囲気温度Tspに対する寄与度のうち、基板温度情報のスピーカ雰囲気温度Tspに対する寄与度が最も大きくなるように、上記式F1は定められている。
【0117】
ここで、基板温度センサ36がスピーカ20の近傍に配置されているので、スピーカ雰囲気温度Tspの変化は、上記式F1に採用されている各情報が示す物理量の中で基板温度に最も強く反映されるという実情がある。これに対し、この実情に合わせて上記式F1が設定されるので、上記式F1によってスピーカ雰囲気温度Tspを精度良く推定することができる。そして、そのスピーカ雰囲気温度Tspの推定精度向上により、スピーカ温度を精度良く推定して得ることが可能である。
【0118】
(他の実施形態)
(1)上述の第1実施形態では、
図4に示すように、マイコン32が外気温センサ724から取得する外気温情報は、外気温センサ724から出力される外気温検知信号であるので、例えば電圧で表される。しかしながら、これは一例である。マイコン32が取得する外気温情報は、物理量である外気温そのものであってもよいし、その外気温を示す電圧以外の指標値であってもよい。このことは、マイコン32が外気温センサ724以外の他のセンサ721、722、723、36から取得する物理量の情報についても同様である。
【0119】
(2)上述の第1実施形態では、
図4に示すように、各センサ721~724の検知信号がマイコン32に入力されることで、そのマイコン32は、車速情報や温度情報を取得するが、これは一例である。例えば、各センサ721~724の検知信号の入力に替えて、車両70に備えられた種々の電子制御装置(言い換えると、ECU)において扱われている車速情報や温度情報がマイコン32に入力され、それによって、そのマイコン32は、車速情報や温度情報を取得してもよい。
【0120】
例えば、メータ制御用のECUでは、車速センサ721の車速検知信号が入力され車速が取得されているので、車速情報はそのメータ制御用のECUからマイコン32に入力されるようにしてもよい。また、エンジンECU725では、水温センサ722および油温センサ723の検知信号に基づいてラジエータ水やエンジンオイルの温度が取得されているので、それらの水温情報と油温情報はエンジンECU725からマイコン32に入力されるようにしてもよい。また、車両用空調装置の制御用のECUは、外気温センサ724の検知信号に基づいて外気温を取得しているので、外気温情報はその車両用空調装置の制御用のECUからマイコン32に入力されるようにしてもよい。
【0121】
(3)上述の第1実施形態において、
図4には、マイコン32が有するメモリ部32a、信号生成部32b、取得部32c、演算部32d、補正部32e、および出力時間演算部32fが互いに独立した機能構成部として示されているが、これは一例である。それらのうち2つ以上の機能構成部が1つの機能構成部に統合されていても差し支えない。例えば、演算部32dは、取得部32cを含んだ構成になっていてもよい。
【0122】
(4)上述の第1実施形態では、
図4の演算部32dは、スピーカ雰囲気温度Tspを求めるために予め定められた規則としての上記式F1を用いて、スピーカ雰囲気温度Tspを推定するが、これは一例である。例えば、演算部32dは、外気温情報、水温情報、油温情報、基板温度情報、および車速情報をパラメータとして予め実験的に定められたマップを上記式F1の替わりに用いて、スピーカ雰囲気温度Tspを推定してもよい。この場合、そのマップが、上記予め定められた規則に該当する。
【0123】
(5)上述の第1実施形態では、スピーカ20で実際に発音されたときの接近通報音の音圧レベルが固定値もしくは所定範囲内となるようにする場合について説明した。しかし、上記した車速に加えて、アクセル開度などの車両走行状態に応じて接近通報音の音圧レベルの出力率を変化させることがある。例えば、車速もしくはアクセル開度が大きくなるほど、接近通報音の音圧レベルの出力率を大きくすることで、歩行者に車両70の接近がより速いことや車両70の加速量が大きいことを認識させるようにすることができる。
【0124】
このような場合には、基本的には車両状態と接近通報音の音圧レベルに対する出力率とが一定の関係となるが、スピーカ温度が変化すると、その関係も変化させられることになる。このため、この場合にもスピーカ温度に基づいて発音用信号Smの振幅係数k1を演算し、発音用信号Smを補正すれば、車両状態と接近通報音の音圧レベルに対する出力率とが一定の関係となるようにすることができる。
【0125】
同様に、接近通報音の周波数や使用される周波数帯域についても、車速やアクセル開度などの車両走行状態に応じて変化させることができる。その場合にも、車両走行状態に応じて設定される接近通報音の周波数や使用される周波数帯域について、スピーカ温度に応じて変化させるようにすれば、上記の第1実施形態で説明した効果を得ることができる。
【0126】
(6)上述の第1実施形態では、
図4に示すように、マイコン32から出力される発音用信号Sm自体が既に補正後の信号となるようにしているが、これは一例である。マイコン32の外部で発音用信号Smの電圧レベルや周波数および使用される周波数帯域中の周波数成分の音圧を補正することもできる。例えば、マイコン32の外部に電圧制御部を設け、この電圧制御部に対して補正前の発音用信号Smを入力すると共に、マイコン32から振幅係数k1や周波数および周波数帯域中の周波数成分の補正量に応じた制御信号を出力する。このようにすれば、電圧制御部にて、その制御信号に基づいて発音用信号Smの電圧レベルなどを補正することができ、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0127】
(7)上述の第1実施形態では、
図1に示すように、接近通報装置10を搭載する車両70は、例えばハイブリッド自動車であるが、その車両70は電気自動車であっても差し支えない。
【0128】
(8)なお、本発明は、上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。また、上記実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0129】
また、上記実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記実施形態において、構成要素等の材質、形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の材質、形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その材質、形状、位置関係等に限定されるものではない。
【0130】
また、上記実施形態において、センサから車両70の外部環境情報(例えば外気温)を取得することが記載されている場合、そのセンサを廃し、車両70の外部のサーバまたはクラウドからその外部環境情報を受信することも可能である。あるいは、そのセンサを廃し、車両70の外部のサーバまたはクラウドからその外部環境情報に関連する関連情報を取得し、取得した関連情報からその外部環境情報を推定することも可能である。
【符号の説明】
【0131】
10 接近通報装置
11 筐体
20 スピーカ(発音体)
30 電気基板
302 電気基板の他面(センサ実装面)
32 マイコン
32a メモリ部
32d 演算部
36 基板温度センサ
70 車両