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特許7480778羽毛分離システム並びに羽毛分離方法およびリサイクル羽毛の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】羽毛分離システム並びに羽毛分離方法およびリサイクル羽毛の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B68G 3/00 20060101AFI20240501BHJP
   B07B 7/01 20060101ALI20240501BHJP
   B07B 7/083 20060101ALI20240501BHJP
   B07B 11/02 20060101ALI20240501BHJP
   B07B 11/06 20060101ALI20240501BHJP
   B07B 7/10 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
B68G3/00
B07B7/01
B07B7/083
B07B11/02
B07B11/06
B07B7/10
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021515057
(86)(22)【出願日】2021-03-11
(86)【国際出願番号】 JP2021009787
(87)【国際公開番号】W WO2021200013
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-10-30
(31)【優先権主張番号】P 2020065010
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020065011
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡 尚樹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 保
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103752590(CN,A)
【文献】特開2001-017754(JP,A)
【文献】特開2009-247645(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B68G 1/00-99/00
B07B 1/00-15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆物の袋状物に羽毛が詰め込まれた製品から羽毛を分離する羽毛分離システムであっ
て、
前記製品を、前記被覆物の袋状物の少なくとも一部が開口するよう個片に切断する切断
部と、
前記製品の個片を、前記羽毛と前記被覆物とに分離する羽毛分離部と、
前記羽毛分離部に気流を導入する気流導入部と、
を備え、
前記切断部は、前記製品の被覆物の面積Sが、1cm2より大きく、400cm2未満
に切断し、切断した前記個片の被覆物の最小外接円の直径をD、最小外接平行線間距離を
Lとした場合、D/L<10の範囲である羽毛分離システム。
【請求項2】
被覆物の袋状物に羽毛が詰め込まれた製品から羽毛を分離する羽毛分離システムであっ
て、
前記製品を、前記被覆物の袋状物の少なくとも一部が開口するよう個片に切断する切断
部と、
前記製品の個片を、前記羽毛と前記被覆物とに分離する羽毛分離部と、
前記羽毛分離部に気流を導入する気流導入部と、
を備え、
前記羽毛分離部は、
円筒形状を少なくとも一部に有する分離槽と、
切断された前記個片を投入する羽毛投入部と、
分離された前記羽毛を排出する羽毛排出部と、
前記分離槽の円筒の中心に配設され、高さ方向の異なる位置に複数の撹拌棒を有する回
転軸と、
分離された前記被覆物を排出する被覆物排出部と、を有する羽毛分離システム。
【請求項3】
分離した前記羽毛を収容する羽毛回収部と、
分離した前記被覆物を収容する被覆物回収部と、
をさらに備える請求項1または2に記載の羽毛分離システム。
【請求項4】
前記切断部は、前記製品の被覆物の面積Sが、1cm2より大きく、400cm2未満
に切断し、切断した前記個片の被覆物の最小外接円の直径をD、最小外接平行線間距離を
Lとした場合、D/L<10の範囲である請求項2または3に記載の羽毛分離システム。
【請求項5】
前記羽毛分離部は、
円筒形状を少なくとも一部に有する分離槽と、
切断された前記個片を投入する羽毛投入部と、
分離された前記羽毛を排出する羽毛排出部と、
前記分離槽の円筒の中心に配設され、高さ方向の異なる位置に複数の撹拌棒を有する回
転軸と、
分離された前記被覆物を排出する被覆物排出部と、
を備える請求項1、3または4に記載の羽毛分離システム。
【請求項6】
前記複数の撹拌棒は、少なくとも前記羽毛投入部より下部に設けられている請求項2ま
たは5に記載の羽毛分離システム。
【請求項7】
前記分離槽は、2つの円筒が側面で接合された形状であり、前記回転軸は、前記2つの
円筒の中心にそれぞれ配設されている請求項2、5または6に記載の羽毛分離システム。
【請求項8】
前記回転軸の回転数は、100rpm以上1000rpm以下である請求項2、5~7
のいずれか一つに記載の羽毛分離システム。
【請求項9】
前記回転軸の前記羽毛投入部より上部には、前記被覆物の前記羽毛排出部への混入を防
止する機能をもつ攪拌棒が設けられている請求項2、5~8のいずれか一つに記載の羽毛
分離システム。
【請求項10】
前記撹拌棒のうち最下部に配置される撹拌棒は、前記羽毛と分離された前記被覆物の掻
き出し棒である請求項2、5~9のいずれか一つに記載の羽毛分離システム。
【請求項11】
前記分離槽は、前記回転軸が水平方向から15~80°の角度をなすように斜めに配置
される請求項2、5~10のいずれか一つに記載の羽毛分離システム。
【請求項12】
前記気流導入部は、前記分離槽の内部に0.1m/秒以上1.0m/秒以下の速度の気
流を導入する請求項2、5~11のいずれか一つに記載の羽毛分離システム。
【請求項13】
前記気流導入部が羽毛回収部に接続される請求項1~12のいずれか一つに記載の羽毛
分離システム。
【請求項14】
被覆物の袋状物に羽毛が詰め込まれた製品から羽毛を分離する羽毛分離方法であって、
前記製品を、前記被覆物の袋状物の少なくとも一部が開口するよう個片に切断する切断
工程と、
前記製品の前記個片を、撹拌手段と気流により前記羽毛と前記被覆物とに分離する羽毛
分離工程と、
分離した前記羽毛を回収する羽毛回収工程と、
を含み、
前記切断工程は、前記製品の被覆物の面積Sが、1cm2より大きく、400cm2未
満に切断し、切断した前記個片の被覆物の最小外接円の直径をD、最小外接平行線間距離
をLとした場合、D/L<10の範囲である羽毛分離方法。
【請求項15】
前記分離工程は、分離槽内の攪拌手段で被覆物、羽毛、空気からなる混合状態を形成し
、気流を分離槽内に導入することで、羽毛のみを分離槽から空気の流れと共に搬出する請
求項14に記載の羽毛分離方法。
【請求項16】
前記羽毛分離工程は、0.1m/秒以上1.0m/秒以下の速度の気流を導入して前記
羽毛を分離する請求項14または15に記載の羽毛分離方法。
【請求項17】
請求項14~16のいずれか一つに記載の羽毛分離方法を含む、リサイクル羽毛の製造
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、羽毛が詰め込まれた製品から羽毛を分離する羽毛分離システム並びに羽毛分離方法およびリサイクル羽毛の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
羽毛は、寝具や衣類の詰物として使用されている。寝具に使用される羽毛は、リサイクルする際、人手で吊るした寝具を裁断して解体した後、内部の羽毛を吸引、回収して再利用されているが、羽毛が飛散するため、回収効率や労働環境の点で問題を有している。一方、衣類等においては、使用される羽毛量が少ないため、人手で羽毛を分離、回収するのは非効率であり、再利用しにくいものであった。
【0003】
近年、環境および倫理的な観点から、寝具や衣類に使用される羽毛の効率的な再利用について希求されているが、羽毛からダウンやフェザーを分離する技術は提案されているものの(例えば、特許文献1~3参照)、布等の被覆物で被覆された羽毛を効率よく回収する技術については、何ら検討されていない状況であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭62-137087号公報
【文献】特許第4936014号公報
【文献】中国実用新案第204281925号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、袋状の被覆物に羽毛が詰め込まれた製品から、羽毛を効率よく分離、回収する羽毛分離システム並びに羽毛分離方法およびリサイクル羽毛の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る羽毛分離システムは、被覆物の袋状物に羽毛が詰め込まれた製品から羽毛を分離する羽毛分離システムであって、前記製品を、前記被覆物の袋状物の少なくとも一部が開口するよう個片に切断する切断部と、前記製品の個片を、前記羽毛と前記被覆物とに分離する羽毛分離部と、前記羽毛分離部に気流を導入する気流導入部と、を備える。
【0007】
また、本発明に係る羽毛分離システムは、上記発明において、分離した前記羽毛を収容する羽毛回収部と、分離した前記被覆物を収容する被覆物回収部と、をさらに備える。
【0008】
また、本発明に係る羽毛分離システムは、上記発明において、前記切断部は、前記製品の被覆物の面積Sが、1cmより大きく、400cm未満となるように切断し、切断した前記個片の被覆物の最小外接円の直径をD、最小外接平行線間距離をLとした場合、D/L<10の範囲である。
【0009】
また、本発明に係る羽毛分離システムは、上記発明において、前記羽毛分離部は、円筒形状を少なくとも一部に有する分離槽と、切断された前記個片を投入する羽毛投入部と、分離された前記羽毛を排出する羽毛排出部と、前記分離槽の円筒の中心に配設され、高さ方向の異なる位置に複数の撹拌棒を有する回転軸と、分離された前記被覆物を排出する被覆物排出部と、を備える。
【0010】
また、本発明に係る羽毛分離システムは、上記発明において、前記複数の撹拌棒は、少なくとも前記羽毛投入部より下部に設けられている。
【0011】
また、本発明に係る羽毛分離システムは、上記発明において、前記分離槽は、2つの円筒が側面で接合された形状であり、前記回転軸は、前記2つの円筒の中心にそれぞれ配設されている。
【0012】
また、本発明に係る羽毛分離システムは、上記発明において、前記回転軸の回転数は、100rpm以上1000rpm以下である。
【0013】
また、本発明に係る羽毛分離システムは、上記発明において、前記回転軸の前記羽毛投入部より上部には、前記被覆物の前記羽毛排出部への混入を防止する機能をもつ攪拌棒が設けられている。
【0014】
また、本発明に係る羽毛分離システムは、上記発明において、前記攪拌棒のうち最下部に配置される攪拌棒は、前記羽毛と分離された前記被覆物の掻き出し棒である。
【0015】
また、本発明に係る羽毛分離システムは、上記発明において、前記分離槽は、前記回転軸が水平方向から15°~80°の角度をなすように斜めに配置されている。
【0016】
また、本発明に係る羽毛分離システムは、上記発明において、前記気流導入部は、前記分離槽の内部に0.1m/秒以上1.0m/秒以下の速度の気流を導入する。
【0017】
また、本発明に係る羽毛分離システムは、上記発明において、前記気流導入部が羽毛回収部に接続される。
【0018】
また、本発明に係る羽毛分離方法は、被覆物の袋状物に羽毛が詰め込まれた製品から羽毛を分離する羽毛分離方法であって、前記製品を、前記被覆物の袋状物の少なくとも一部が開口するよう個片に切断する切断工程と、前記製品の個片を、撹拌手段と気流により前記羽毛と前記被覆物とに分離する羽毛分離工程と、分離した前記羽毛を回収する羽毛回収工程と、を含む。
【0019】
また、本発明に係る羽毛分離方法は、上記発明において、前記分離工程は、分離槽内の攪拌手段で被覆物、羽毛、空気からなる混合状態を形成し、気流を分離槽内に導入することで、羽毛のみを分離槽から空気の流れと共に搬出する。
【0020】
また、本発明に係る羽毛分離方法は、上記発明において、前記切断工程は、前記製品の被覆物の面積Sが、1cmより大きく、400cm未満に切断し、切断した前記個片の被覆物の最小外接円の直径をD、最小外接平行線間距離をLとした場合、D/L<10の範囲である。
【0021】
また、本発明に係る羽毛分離方法は、上記発明において、前記羽毛分離工程は、0.1m/秒以上1.0m/秒以下の速度の気流を導入して前記羽毛を分離する。
【0022】
また、本発明に関わるリサイクル羽毛の製造方法は、前記羽毛分離方法を含む。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、切断部で個片化した製品から、羽毛分離部で連続的かつ効率よく羽毛を分離し、ダウン率の高い羽毛を回収することができる。
【0024】
本発明によれば、被覆物で被覆された羽毛を回転軸に付設された撹拌棒で機械的に打撃することにより、静電気等で被覆物に張り付いた羽毛や、被覆物内に詰め込まれた羽毛を、効率的に叩きだし、分離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、実施の形態に係る羽毛分離システムの概略図である。
図2図2は、被覆物の切断を説明する図である。
図3図3は、実施の形態の変形例1に係る羽毛分離システムの概略図である。
図4図4は、実施の形態の変形例2に係る羽毛分離システムにおける羽毛分離部の鉛直方向の断面図である。
図5A図5Aは、実施の形態の変形例3に係る羽毛分離システムにおける羽毛分離部の鉛直方向の断面図である。
図5B図5Bは、図5Aに示す断面と直交する鉛直方向の断面図である。
図5C図5Cは、図5Aの上面図である。
図6図6は、実施の形態の変形例4に係る羽毛分離システムにおける羽毛分離部の鉛直方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、「実施の形態」という」)を説明する。なお、図面はあくまでも模式的なものであり、本発明の内容を理解でき得る程度に形状、大きさ、および位置関係を概略的に示すものである。すなわち、本発明は、各図で例示された形状、大きさおよび位置関係のみに限定されるものではなく、図面の相互間においても、互いの寸法や比率が異なる部分が含まれている。
【0027】
(実施の形態)
図1は、実施の形態に係る羽毛分離システム100の概略図である。被覆物3の袋状物に羽毛が詰め込まれた製品1から羽毛を分離する羽毛分離システム100は、製品1を被覆物3の袋状物の少なくとも一部が開口するよう個片に切断する切断部10と、個片を羽毛2と被覆物3とを分離する羽毛分離部20と、切断部10で切断された個片を羽毛分離部に搬送する搬送部30と、分離した羽毛2を収容する羽毛回収部40と、分離した被覆物3を収容する被覆物回収部50と、羽毛分離部に気流を導入する気流導入部60と、を備える。
【0028】
本実施の形態に係る羽毛分離システム100で分離する羽毛は、被覆物の袋状物に詰め込まれた羽毛である。被覆物の袋状物に羽毛が詰め込まれた製品1としては、寝具や衣類を例示することができる。一般に、羽毛が寝具や衣類の詰物として使用される際、羽毛の偏りを抑制するために、被覆物は所定の大きさに縫製または接着剤で接合され、縫製または接合により形成された被覆物の袋状物内に羽毛が所定量詰め込まれている。本実施の形態で分離対象とする羽毛は、縫製または接合によって袋状とされた被覆物内に詰め込まれた羽毛である。
【0029】
切断部10は、カッター11と、搬送部12と、を有する。カッター11は、1段で製品1を個片化するものでも、縦方向と横方向の2段階に製品1を切断するものでもよい。カッター11が2段階で製品1を切断する場合、搬送部12をL字に配置し、縦または横方向に製品を切断した後、搬送方向を90°換えたのち、横または縦方向に切断する構成とすることが省スペース化の観点で好ましい。
【0030】
切断部10は、被覆物3の袋状物の一部が開口するように切断し、製品1を個片化する。被覆物3の被覆物の少なくとも一部が開口したものであれば、羽毛2の分離は可能であるが、袋状物の2辺が開口するように製品1を切断することが好ましい。被覆物は、回収率の観点から、切り分けられた被覆物の面積Sは、1cmより大きく、400cmより小さいことが好ましく、10cmより大きく、100cmより小さくするのが更に好ましい。被覆物の面積Sは、切断された被覆物を平板上にできるだけ展開した状態での面積で定義される。また、被覆物は、切り分けられた被覆物の最小外接円の直径をD、最小外接平行線間距離をLとした場合、D/L<10の範囲となるように切断するのが好ましく、D/L<4の範囲となるように切断することが更に好ましい。被覆物の最小外接円の直径Dと、最小外接平行線間距離Lとの比を小さくすることにより、回転軸25や撹拌棒26への被覆物の絡みつきを防止することができる。図2は、被覆物の切断を説明する図であり、図2(a)は切り分けられた被覆物の個片Pが四角形である場合を示し、図2(b)は四角形以外の場合を示す。被覆物の個片Pの最小外接円の直径Dと、最小外接平行線間距離Lとの比を低く抑えることにより、回転軸25や撹拌棒26への被覆物の絡みつきを防止することができるうえ、ダウンを切断する機会を減らすことができる。また、切り分けられた被覆物の個片Pの面積Sは、袋状物の面積対比で表現すると、袋状物一単位の面積の10%以上、100%以下の大きさに切断することがより好ましい。
【0031】
羽毛分離部20は、内部空洞の円筒形状を少なくとも一部に有する分離槽21と、切断され個片化した製品1を投入する羽毛投入部22と、被覆物3と分離された羽毛2を排出する羽毛排出部23と、分離槽21の円筒の中心に配設され、高さ方向の異なる位置に複数の撹拌棒26を有する回転軸25と、分離された被覆物3を排出する被覆物排出部24と、を備える。
【0032】
羽毛分離部20は、自重により落下する個片、すなわち羽毛2が詰め込まれた被覆物3を、回転軸25を回転させることにより回転する撹拌棒26で叩くことによって、被覆物3で被覆された羽毛2を被覆物3から分離する。羽毛2は、被覆物3に静電気で張り付いたり、被覆物3の袋状物内に詰め込まれているが、撹拌棒26で機械的に叩くことで、被覆物3と分離することができる。
【0033】
分離槽21は、羽毛2と被覆物3とを効率よく分離するために、所定の高さを有していることが好ましい。分離槽21の高さは、分離槽21の直径の2倍以上がより好ましく、3倍以上の高さであることがさらに好ましい。また、分離槽21の高さは、高すぎると設備が大きくなり、省スペースに設置できず、また、メンテナンスや清掃が困難になることから、5倍以下がより好ましく、4倍以下の高さであることがさらに好ましい。
【0034】
羽毛投入部22は、分離槽21の高さ方向の中心から上部に配設されている。羽毛投入部22は、分離槽21の高さ方向の上部壁面に配設することにより、分離槽21に導入する気流の風速を高くすることなく、撹拌棒26による個片の打撃を所定時間行うことができ、回収率およびダウン率を向上することができる。
【0035】
羽毛排出部23は、分離槽21の上部に配設されている。また、被覆物排出部24は、分離槽21の下部に配設されている。羽毛2は被覆物3に比べ比重が小さいため、被覆物3から分離された羽毛2は、分離槽21内で下部から上部へと流れる気流により分離槽21の上部に運ばれて羽毛排出部23から排出される。一方、比重が大きい被覆物3は、自重により分離槽21の下部に落下し、被覆物排出部24から排出される。また、羽毛排出部23は、分離槽21の上面の中心に配置されることが好ましい。回転軸25の回転により遠心力が作用し、比重の重い被覆物3は円筒の外側に飛ばされて効果的に落下し、気流は分離槽21の中心側に形成されるため、被覆物3と分離した羽毛2を、この気流に乗って分離槽21の中心に配置された羽毛排出部23から効果的に排出することができる。
【0036】
回転軸25には、異なる位置に複数の撹拌棒26が付設されている。本実施の形態では、撹拌棒26は、同じ高さで回転軸25を中心として対向するように直線状に2本延出している。また、撹拌棒26は、隣接する高さの撹拌棒26と直交するように(90°回転して)、回転軸25から延出している。被覆物3に被覆された羽毛2を効率よく分離するためには、撹拌棒26との機械的な接触を多くすることが好ましい。したがって、回転軸25に取り付ける撹拌棒26は、同じ高さで2本に限定するものではなく、延出する撹拌棒26が、同じ高さで120°の角度をなして3本延出するよう配置したり、直交するように4本配置してもよい。同じ位置での撹拌棒26の取付け本数を増やした場合でも、隣接する高さの撹拌棒26と重ならないように配置することが好ましい。なお、同じ位置に配置する撹拌棒26の数を増やしすぎると、分離槽21内に生じる気流を妨げるおそれがあるため、回転軸25の同じ位置に取り付ける撹拌棒26の数は、8本以下とすることが好ましい。また、攪拌棒27は、棒状の剛体である必要はなく、回転軸25に取り付けられ、回転軸25が回転中に、遠心力の作用により変形し、回転軸25と略垂直に放射状に張った状態で、回転するものであってもよい。
【0037】
本実施の形態では、撹拌棒26は、高さを変えて6対取り付けられている。撹拌棒26と機械的に接触した羽毛2を被覆する被覆物3や、羽毛2と分離した被覆物3は、撹拌棒26との機械的な接触により、分離槽21の上部に跳ね上げられる場合がある。羽毛2を被覆する被覆物3および羽毛2と分離した被覆物3の羽毛排出部23からの排出を防止するために、少なくとも1対の攪拌棒を羽毛投入部22より上部に取り付けることが好ましい。
【0038】
撹拌棒26は、長さが長いほど被覆物3に被覆された羽毛2との接触の回数が増加するため好ましい。撹拌棒26の回転直径(回転軸25の直径+撹拌棒26の長さ×2)は、分離槽21を構成する円筒の直径の80%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、95%以上がさらに好ましい。また、分離槽21との干渉を避けるため、撹拌棒26の回転直径は、円筒の直径の99%以下、好ましくは98%以下である。
【0039】
回転軸25に取り付けられる撹拌棒26のうち、最下部に配置される撹拌棒26は、羽毛2と分離された被覆物3を掻き出す掻き出し棒26aとして機能する。掻き出し棒26aは、分離槽21の底面と接触しない程度の最下部に取り付けられることが好ましい。
【0040】
本実施の形態において、回転軸25の回転数は、被覆物3の切断サイズや気流の速度によって適宜選択することができるが、100rpm以上が好ましく、400rpm以上がより好ましい。回転軸25の回転数を大きくすることにより、撹拌棒26と被覆物3との接触の回数が多くなり、分離効率を向上することができる。上限としては、消費エネルギーと効率の観点から、1000rpm以下であることが好ましい。
【0041】
羽毛回収部40は、羽毛2を収容する回収槽41と、回収槽の上部に設けられ、分離された羽毛2を投入する投入部42と、後述する気流導入部60を接続する換気口43と、を備える。羽毛回収部40の投入部42は、羽毛分離部20の羽毛排出部23とパイプ44等で接続されている。本実施の形態では、回収槽41は1つであるが、パイプ44に三方弁を設けて、2つの回収槽41を交互に使用する構成とすることもできる。
【0042】
被覆物回収部50は、被覆物3を収容する収容部51と、分離された被覆物3を投入する投入部52と、を備える。被覆物回収部50は、被覆物排出部24から被覆物3の自重により回収するために、羽毛分離部20の下部に配置することが好ましい。
【0043】
羽毛分離部20の分離槽21内に気流を導入する気流導入部60は、一例として図1に示すように、羽毛回収部40の換気口43に取り付けられる。この場合気流導入部60としては、吸引ブロワー等を使用することができる。本実施の形態では、羽毛回収部40の換気口43に気流導入部を配置しているが、羽毛分離部20と羽毛回収部40とを接続するパイプ44に設けてもよい。図3は、本実施の形態の変形例1にかかる羽毛分離システム100Dの概略図である。図3に示すように、気流導入部61として送風ファンを、分離槽21の下部に設けてもよい。
【0044】
気流導入部60により分離槽21内に導入される気流の速度は、分離槽を流れる総風量を、分離槽21を構成する円筒形状の断面積で割った値で定義され、0.1m/秒以上1.0m/秒以下であることが好ましい。気流の速度が小さいほど、羽毛排出部23から排出される羽毛2中のダウンの割合が高くなる。一方、風速が小さすぎると、分離した羽毛2の風送能力が低くなるため、時間当たりの羽毛2の回収率が低下してしまう。逆に風速が速すぎると、排出した羽毛に、分離した被覆物が混ざる可能性が高くなる。分離槽21内に導入される気流の速度は、0.3m/秒以上、0.5m/秒以下であることがさらに好ましい。
【0045】
本実施の形態では、切断部10で製品1を切断した個片は、搬送部30により羽毛分離部20の羽毛投入部22に搬送されているが、搬送部30を用いることなく、切断部10から羽毛投入部22に直接個片を投入する構成としてもよい。
【0046】
本実施の形態にかかる羽毛分離システム100は、上記したように、製品1を切断部10で切断し、搬送部30により自動的に羽毛分離部20に搬送し、羽毛を分離、回収するため、コンパクトなシステムで効率よく製品1から羽毛2を回収することができる。また、羽毛分離部20は、被覆物3で被覆された羽毛2を、撹拌棒26で機械的に接触させて、被覆物3と叩き離すことにより、被覆物3と羽毛2とを確実に分離させた混合状態を効率的に形成し、かつ、ここに羽毛のみを浮遊させる気流を流すことで、比較的小型の分離槽21を有するシステムにおいても羽毛のみを連続的、かつ効果的に分離することができる。羽毛を効率よく製品から分離、回収するためには、切断部と、羽毛分離部と気流導入部と、を備える羽毛分離システムとすることが好ましいが、図3に示す変形例の羽毛分離部のように、羽毛分離部に気流導入部を直接接続した羽毛分離装置においても、被覆部の少なくとも一部が開口した個片から、羽毛を分離、回収することができる。
【0047】
上記の実施の形態では、羽毛分離部20は回転軸25が鉛直方向と重なるように(水平方向と90°の角度)配置されているが、本発明は、これに限定されるものではない。図4は、実施の形態の変形例2に係る羽毛分離システムにおける羽毛分離部20Aの鉛直方向の断面図である。図4および以下の羽毛分離部20Aの説明において、実施の形態と同様の構成については、同じ符号を付し、説明を省略する。
【0048】
羽毛分離部20Aは、円筒からなる分離槽21Aと、羽毛投入部22と、羽毛排出部23と、異なる位置に複数の撹拌棒26を有する回転軸25と、被覆物排出部24と、を備える。羽毛分離部20Aおいて、分離槽21Aは、回転軸25が斜めに配置されている。回転軸25が斜めになるように分離槽21Aを配置することにより、羽毛2を被覆する被覆物3の落下時間が長くなり、撹拌棒26との機械的な接触回数も増加する。これにより、分離効率を向上することができる。回転軸25の傾斜角度は、水平方向から15°以上80°以下とすることが好ましく、水平方向から30°以上60°以下とすることが更に好ましい。
【0049】
また、上記の実施の形態では、羽毛分離部20の分離槽21を1つの円柱から構成しているが、2つの円筒が側面で接合された形状としてもよい。図5Aは、実施の形態の変形例3に係る羽毛分離システムにおける羽毛分離部20Bの鉛直方向の断面図である。図5Bは、図5Aに示す断面と直交する鉛直方向の断面図である。図5Cは、図5Aの分離槽21Bの上面図である。なお、図5A図5Cおよび以下の羽毛分離部20Bの説明において、実施の形態と同様の構成については、同じ符号を付し、説明を省略する。
【0050】
羽毛分離部20Bにおいて、分離槽21Bは、2つの円筒が側面で接合された形状、すなわち繭型であり、回転軸25は、2つの円筒の中心にそれぞれ配設されている。2つの円筒は、円筒の中心、すなわち円筒の中心に配置される回転軸25間の距離が、撹拌棒26の円筒内径の70%以上90%以下とすることが好ましい。また、各回転軸25に取り付けられる撹拌棒26は、互いに干渉しないよう高さを変えて取り付けられている。分離槽21Bを繭型とし、2つの円筒の中心にそれぞれ回転軸25を設けることにより、分離効率をさらに向上することができる。回転軸25をそれぞれの円筒の中で同じ回転方向に回すことで、円筒が接続された箇所付近で撹拌棒26が互いに逆向きに運動するこことなり、ここで特に高い攪拌効果が作用し、分離の効率を更に高めることができる。
【0051】
また、上記の実施の形態では、羽毛排出部23を分離槽21Bの上部に設けているが、これに限定されるものではない。図6は、実施の形態の変形例4に係る羽毛分離システムにおける羽毛分離部20Cの鉛直方向の断面図である。図6および以下の羽毛分離部20Cの説明において、実施の形態と同様の構成については、同じ符号を付し、説明を省略する。
【0052】
羽毛分離部20Cは、1つの円筒からなる分離槽21Cと、分離槽21Cの上部に付設された羽毛投入部22と、分離槽21Cの下部に付設された羽毛排出部23と、異なる位置に複数の撹拌棒26を有する回転軸25と、被覆物排出部24と、被覆物排出部24から排出された被覆物を回収する回収部50と、を備える。羽毛分離部20Cにおいて、分離槽21Cは、回転軸25が斜めに配置されている。また、羽毛投入部22は、分離槽21Cに気流を導入する送風手段を有しており、送風部として機能する。
【0053】
羽毛分離部20Cでは、回転軸が斜めになるように分離槽21Cを配置するとともに、気流の下流側である分離槽21Cの下部に羽毛排出部23を設けている。このような構成とした場合にも、被覆物と分離した羽毛を効率よく分離することができる。
【0054】
以上、上記したように、本発明の羽毛分離システムは、寝具や衣類の詰物として使用されている羽毛をリサイクルする場合に好適に使用することができる。そして、これを使用した羽毛分離方法は、羽毛を効率的に分離することが可能になる。このようにしてリサイクル羽毛を効率的に製造することができる。
【実施例
【0055】
次に、本発明に係る羽毛分離システムおよびそれを用いた羽毛の分離方法、リサイクル羽毛の製造方法について、実施例を使用してさらに詳細に説明する。
なお、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。以下の実施例で使用する羽毛分離システムの羽毛分離部は、図5A図5Cに示す構造を有するものである。
【0056】
(原料)
袋状物の形状が、幅約5cm~6cm、長さ約15cm~50cmの大きさで、腕部と胴体部に袋状物が配置された長袖のダウンジャケット5着分を原料とした。ダウンジャケットに使用されている羽毛は、ダウン率90%のものである。
【0057】
(切断部)
切断部はシェアカッターからなり、ダウンジャケットを縦と横に2段階で切断する構造を有する。切断部で切断した個片は、1500g(羽毛:300g、被覆物その他:1200g)/分の割合で、図5A図5Cに示す構造の羽毛分離部に投入した。
【0058】
(羽毛分離部)
羽毛分離部は下記の構造を有する。
分離槽形状:円筒突合せ繭型断面
分離槽サイズ:円筒の直径500mm、2つの円筒中心の距離400mm、高さ1600mm
羽毛投入部位置:分離槽下面から820mm
羽毛投入部サイズ:縦250mm、幅550mm
回転軸サイズ:直径50mm
撹拌棒サイズ:直径8mm、長さ215mm(回転直径480mm)
羽毛投入部より下部の撹拌棒取付け数量:9対、ピッチ100mm
羽毛投入部より下部の撹拌棒取付け位置:最上段が羽毛投入部の下面から10mm下部
投入部より上部の攪拌棒取付け位置:羽毛投入部の上面から100mm上部
被覆物排出部位置:分離槽最下部
被覆物排出部サイズ:縦220mm、幅530mm
【0059】
(実施例1)
ダウンジャケットの切断サイズを10mm角~100mm角に変更し、上記の羽毛分離システムにより、ダウンジャケットの生地で被覆された羽毛の分離を行った。撹拌棒の回転速度は800rpm、気流の風速は0.3m/秒で運転した。回収率、ダウン率および羽毛以外の混入量で評価した。結果を表1に示す。
回収率(質量%)=得られた羽毛量/投入した羽毛量×100
ダウン率(質量%)=得られたダウン量/得られた羽毛量×100
羽毛以外の混入量(質量%)=(羽毛排出部からの排出量-得られた羽毛量)/羽毛排出部からの排出量×100
【0060】
【表1】
【0061】
表1に示すように、切断サイズが小さいほど回収率が高く、ダウン率が低くなることが確認された。切断サイズを小さくすると、羽毛中に含まれるダウンボールの羽枝も切断され、ダウン率が低下するものと考えられる。一方切断サイズが大きい場合、開口部を有しない袋状物の割合が大きくなるため、回収率が低下した。
【0062】
(実施例2)
ダウンジャケットの切断サイズを50mm角、気流の風速を0.3m/秒で固定し、撹拌棒の回転速度を100rpm~1000rpmに変更して、羽毛の分離を行った。結果を表2に示す。
【0063】
【表2】
【0064】
表2に示すように、撹拌棒の回転数が高いほど回収率およびダウン率が高いことが確認された。撹拌棒の回転数が高いほど、分離槽内の空気が撹拌され、被覆物に被覆された羽毛と撹拌棒との機械的な接触が多くなり、分離が促進され、回収率が上昇する。
【0065】
(実施例3)
ダウンジャケットの切断サイズを50mm角、撹拌棒の回転速度を800rpmに固定し、気流の風速を0.1m/秒~0.7m/秒に変更して、羽毛の分離を行った。結果を表3に示す。
【0066】
【表3】
【0067】
表3に示すように、気流の速度が高いほど回収率は高くなるが、羽毛排出部で回収される羽毛への羽毛以外の物、例えば被服物である生地の切れ端や糸くずなどの混入量が増加してしまうことがわかった。
【符号の説明】
【0068】
1 製品
2 羽毛
3 被覆物
10 切断部
11 カッター
12、30 搬送部
20、20A、20B、20C 羽毛分離部
21 分離槽
22 羽毛投入部
23 羽毛排出部
24 被覆物排出部
25 回転軸
26 撹拌棒
26a 掻き出し棒
40 羽毛回収部
41 回収槽
42、52 投入部
43 換気口
50 被覆物回収部
51 収容部
60、61 気流導入部
100、100D 羽毛分離システム
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6