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特許7480792残留塩素計及びその制御方法、塩素計システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】残留塩素計及びその制御方法、塩素計システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/416 20060101AFI20240501BHJP
   G01N 27/30 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
G01N27/416 316Z
G01N27/30 361
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022001233
(22)【出願日】2022-01-06
(65)【公開番号】P2023100509
(43)【公開日】2023-07-19
【審査請求日】2023-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100169823
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 雄郎
(74)【代理人】
【識別番号】230128026
【弁護士】
【氏名又は名称】駒木 寛隆
(72)【発明者】
【氏名】客野 智彦
【審査官】小澤 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-164408(JP,A)
【文献】特開昭59-228159(JP,A)
【文献】特開2010-185678(JP,A)
【文献】特開昭60-205345(JP,A)
【文献】特表平06-508432(JP,A)
【文献】特開2016-080573(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/416
G01N 27/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料水の中の残留塩素の濃度を測定する残留塩素計であって、
前記試料水の中に浸漬される指示極及び対極と、
前記指示極及び前記対極の間に電圧を印加した場合に、前記指示極及び前記対極の間に流れる電流である拡散電流に基づき、前記試料水の中の残留塩素の濃度を測定する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記指示極及び前記対極の間に直流の電圧を印加した場合に、前記指示極を前記試料水の中で回転させるモータを流れる電流であるモータ電流と、前記拡散電流との少なくともいずれかについて、周期的変動を検知するための信号解析である交流的解析を行い、当該交流的解析の結果に基づき、前記残留塩素計の補用品の劣化の程度を検出する、
残留塩素計。
【請求項2】
前記制御部は、
前記モータ電流及び前記拡散電流の少なくともいずれかについて行われた前記交流的解析の結果と、予め取得されたサンプル信号についての前記交流的解析の結果とを比較して、前記残留塩素計の補用品の劣化の程度を検出する、
請求項1に記載の残留塩素計。
【請求項3】
前記補用品は、前記モータ、前記指示極の電極、又は、前記指示極から前記拡散電流を取り出すための摺動コンタクトである、請求項1又は2に記載の残留塩素計。
【請求項4】
前記制御部は、
前記検出した劣化の程度に基づき、前記補用品を交換すべきか否かを判定し、
前記補用品を交換すべきかの判定結果をユーザに提示する、
請求項1からのいずれか一項に記載の残留塩素計。
【請求項5】
試料水の中の残留塩素の濃度を測定する残留塩素計であって、
前記試料水の中に浸漬される指示極及び対極と、
前記指示極及び前記対極の間に電圧を印加した場合に、前記指示極及び前記対極の間に流れる電流である拡散電流に基づき、前記試料水の中の残留塩素の濃度を測定する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記指示極を前記試料水の中で回転させるモータを流れる電流であるモータ電流に基づき、前記残留塩素計の補用品の劣化の程度を検出する、
残留塩素計。
【請求項6】
試料水の中の残留塩素の濃度を測定する残留塩素計であって、
前記試料水の中に浸漬される指示極及び対極と、
前記指示極及び前記対極の間に電圧を印加した場合に、前記指示極及び前記対極の間に流れる電流である拡散電流に基づき、前記試料水の中の残留塩素の濃度を測定する制御部と、
を有する残留塩素計と、
前記残留塩素計と通信可能な情報処理装置と、
を備え、
前記情報処理装置は、
前記指示極及び前記対極の間に直流の電圧を印加した場合に、前記指示極を前記試料水の中で回転させるモータを流れる電流であるモータ電流と、前記拡散電流との少なくともいずれかについて、周期的変動を検知するための信号解析である交流的解析を行い、当該交流的解析の結果に基づき、前記残留塩素計の補用品の劣化の程度を検出する、
塩素計システム。
【請求項7】
試料水の中に浸漬される指示極及び対極と、
前記指示極及び前記対極の間に電圧を印加した場合に、前記指示極及び前記対極の間に流れる電流である拡散電流に基づき、前記試料水の中の残留塩素の濃度を測定する制御部と、
を備えた残留塩素計の制御方法であって、
前記制御部が、
前記指示極及び前記対極の間に直流の電圧を印加した場合に、前記指示極を前記試料水の中で回転させるモータを流れる電流であるモータ電流と、前記拡散電流との少なくともいずれかについて、周期的変動を検知するための信号解析である交流的解析を行い、当該交流的解析の結果に基づき、前記残留塩素計の補用品の劣化の程度を検出する工程と、
を含む、残留塩素計の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、残留塩素計及びその制御方法、塩素計システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ポーラログラフ方式を利用して水中の残留塩素を測定する残留塩素計が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-164408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
残留塩素計の電極、及びモータ等の補用品は、長期間の使用に伴い劣化していくため、定期的に交換する必要がある。従来の構成においては、メーカーが推奨する交換周期等に従って、ユーザが残留塩素計の補用品の交換を行っていた。しかし、補用品の劣化の程度は使用環境によって異なるため、従来の構成においては、補用品を交換する時期に関して改善の余地があった。
【0005】
本開示の目的は、補用品をより適切な時期に交換することが可能な残留塩素計及びその制御方法、塩素計システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
幾つかの実施形態に係る残留塩素計によれば、試料水の中の残留塩素の濃度を測定する残留塩素計であって、前記試料水の中に浸漬される指示極及び対極と、前記指示極及び前記対極の間に電圧を印加した場合に、前記指示極及び前記対極の間に流れる電流である拡散電流に基づき、前記試料水の中の残留塩素の濃度を測定する制御部と、を備え、前記制御部は、前記指示極を前記試料水の中で回転させるモータを流れる電流であるモータ電流と、前記拡散電流との少なくともいずれかに基づき、前記残留塩素計の補用品の劣化の程度を検出する。
【0007】
このように、残留塩素計はモータ電流と拡散電流の少なくともいずれかに基づき補用品の劣化の程度を検出するため、ユーザは、補用品を劣化の程度に応じてより適切な時期に交換することが可能である。
【0008】
一実施形態に係る残留塩素計において、前記制御部は、前記モータ電流及び前記拡散電流の少なくともいずれかについて、周期的変動を検知するための信号解析である交流的解析を行い、前記モータ電流及び前記拡散電流の少なくともいずれかについて行われた前記交流的解析の結果と、予め取得されたサンプル信号についての前記交流的解析の結果とを比較して、前記残留塩素計の補用品の劣化の程度を検出する。
【0009】
このように、残留塩素計は、モータ電流及び拡散電流の少なくともいずれかについて交流的解析を行って補用品の劣化の程度を検出するため、モータ電流又は拡散電流の周期的変動として現れる補用品の劣化を適切に検出することが可能である。
【0010】
一実施形態に係る残留塩素計において、前記制御部は、前記モータ電流及び前記拡散電流の少なくともいずれかについて、その値の全体的な傾向を検知するための信号解析である直流的解析を行い、前記モータ電流及び前記拡散電流の少なくともいずれかについて行われた前記直流的解析の結果と、予め取得されたサンプル信号についての前記直流的解析の結果とを比較して、前記残留塩素計の補用品の劣化の程度を検出する。
【0011】
このように、残留塩素計は、モータ電流及び拡散電流の少なくともいずれかについて直流的解析を行って補用品の劣化の程度を検出するため、モータ電流又は拡散電流の全体的変動として現れる補用品の劣化を適切に検出することが可能である。
【0012】
一実施形態に係る残留塩素計において、前記補用品は、前記モータ、前記指示極の電極、又は、前記指示極から前記拡散電流を取り出すための摺動コンタクトである。したがって、残留塩素計は、モータ、指示極の電極、及び摺動コンタクトについて劣化を検出することが可能である。
【0013】
一実施形態に係る残留塩素計において、前記制御部は、前記検出した劣化の程度に基づき、前記補用品を交換すべきか否かを判定し、前記補用品を交換すべきかの判定結果をユーザに提示する。したがって、ユーザは、補用品の交換の要否を容易に把握することが可能である。
【0014】
幾つかの実施形態に係る塩素計システムによれば、試料水の中の残留塩素の濃度を測定する残留塩素計であって、前記試料水の中に浸漬される指示極及び対極と、前記指示極及び前記対極の間に電圧を印加した場合に、前記指示極及び前記対極の間に流れる電流である拡散電流に基づき、前記試料水の中の残留塩素の濃度を測定する制御部と、を有する残留塩素計と、前記残留塩素計と通信可能な情報処理装置と、を備え、前記情報処理装置は、前記指示極を前記試料水の中で回転させるモータを流れる電流であるモータ電流と、前記拡散電流との少なくともいずれかに基づき、前記残留塩素計の補用品の劣化の程度を検出する。
【0015】
このように、情報処理装置はモータ電流と拡散電流の少なくともいずれかに基づき補用品の劣化の程度を検出するため、仮に残留塩素計にデータの解析能力が実装されていなくても、ユーザは、補用品を劣化の程度に応じてより適切な時期に交換することが可能である。
【0016】
幾つかの実施形態に係る残留塩素計の制御方法によれば、試料水の中に浸漬される指示極及び対極と、前記指示極及び前記対極の間に電圧を印加した場合に、前記指示極及び前記対極の間に流れる電流である拡散電流に基づき、前記試料水の中の残留塩素の濃度を測定する制御部と、を備えた残留塩素計の制御方法であって、前記制御部が、前記指示極を前記試料水の中で回転させるモータを流れる電流であるモータ電流と、前記拡散電流との少なくともいずれかに基づき、前記残留塩素計の補用品の劣化の程度を検出する工程と、を含む。
【0017】
このように、残留塩素計はモータ電流と拡散電流の少なくともいずれかに基づき補用品の劣化の程度を検出するため、ユーザは、補用品を劣化の程度に応じてより適切な時期に交換することが可能である。
【発明の効果】
【0018】
本開示の一実施形態によれば、残留塩素計の補用品をより適切な時期に交換することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】一実施形態に係る残留塩素計の構成例を示す図である。
図2図1の測定槽の構成例を示す図である。
図3図1のモータ駆動部の構成例を示す回路図である。
図4】モータの負荷トルクとモータにおける消費電流との対応関係の一例を示す図である。
図5】残留塩素計が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
図6】一実施形態に係る塩素計システムの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<比較例>
残留塩素計は、水道水等の試料水に含まれる残留塩素の濃度(「残塩濃度」ともいう。)を測定するための装置である。残留塩素とは、試料水の中に存在する遊離残留塩素と結合残留塩素とを合わせたものをいう。指示極及び対極(比較極)と呼ばれる二つの電極を試料水の中に浸漬し、指示極側を陰極として指示極及び対極の間に電圧を印加すると、指示極の表面において被電解質である塩素の電界還元反応が生じ、指示極と対極の間に電流が流れる。
【0021】
指示極及び対極の間に電圧が印加されると、指示極の近傍には濃度分極を生じた一定の拡散層が形成される。この状態では電解還元電流は拡散速度に比例する。拡散速度は試料水中の残留塩素濃度に比例する。したがって、残留塩素計は、拡散層が形成されている状態における電流(拡散電流)を測定することで試料水中の残留塩素の濃度を測定することができる。このような測定原理による濃度測定法はポーラログラフ方式と呼ばれる。
【0022】
このような塩素濃度測定においては、塩素濃度と拡散電流の比例性を安定的に得るために拡散層の厚さを一定に保つことが重要である。そのため、拡散層の厚さを一定に保つため、残留塩素計は、測定中において、指示極をモータによって一定速度で回転させる。
【0023】
残留塩素計の電極、及びモータ等の補用品は、長期間の使用に伴い劣化していくため、定期的に交換する必要がある。比較例に係る塩素濃度計においては、塩素濃度計のメーカーが推奨する交換周期等に従って、ユーザが残留塩素計の補用品の交換を行っていた。しかし、補用品の劣化の程度は使用環境によって異なる。そのため、従来の構成においては、劣化が進んで交換が必要な補用品をそのまま使い続けることで、製品のパフォーマンスが低下する等の支障が生じる可能性があった。従来の構成においては、まだ交換する必要がない補用品を交換することで、無駄なコストが生じることもあり得た。
【0024】
本開示の目的は、残留塩素計の補用品をより適切な時期に交換可能とすることである。
【0025】
<実施形態>
以下、本開示の一実施形態について、図面を参照して説明する。各図面中、同一の構成又は機能を有する部分には、同一の符号を付している。本実施形態の説明において、同一の部分については、重複する説明を適宜省略又は簡略化する場合がある。
【0026】
(第1実施形態)
本開示に係る残留塩素計は、指示極を回転させるモータを流れる電流又は拡散電流を測定し、その電流に基づき補用品の劣化の程度を検知する。残留塩素計は、検知した劣化の程度に応じて、補用品を交換すべき状態になった場合、そのことをユーザに通知することで、ユーザが補用品を適切なタイミングで交換することを可能にする。
【0027】
図1は、一実施形態に係る残留塩素計1の構成例を示す図である。残留塩素計1は、指示極11、対極(比較極)12、モータ13を含むモータ駆動部30、摺動コンタクト16、電流-電圧変換回路51、アナログデジタル変換器52、制御部53、加電圧回路54、及び出力部55を備える。
【0028】
指示極11及び対極12は電極である。指示極11及び対極12は、測定槽50を構成する壁部20に蓄えられた水道水等の試料水Wの中に浸漬される。指示極11及び対極12の間には、制御部53の制御に基づき電圧が印加される。
【0029】
モータ13は、残留塩素濃度の測定中、指示極11を一定速度で回転させる動力源である。モータ13は、電力を指示極11を回転させる力に変換する任意の構成を有する。モータ13を駆動するモータ駆動部30の構成については、図3を参照して後述する。
【0030】
摺動コンタクト16は、モータ13により指示極11が回転している状態において、指示極11と電流-電圧変換回路51との間の電気的な接続を維持したまま、拡散電流を取り出す電気伝達機構である。測定中、指示極11は常時回転しているため、残留塩素計1は、回転体である指示極11を流れる電流を摺動コンタクト16から取り出すことで、拡散電流を検出する。本実施形態に係る残留塩素計1は、指示極11から信号を取り出す電気的接触装置(コンタクト)としてブラシと回転子に摺動方式を採用した摺動コンタクト16を備えるが、指示極11から信号を取り出すことが可能ならばこのような構成に限られない。例えば、電気的接触装置は、収納部の金属球を介して回転体(指示極11)と静止状態の接触子との間で電力または電気信号の伝達を行うようにしてもよい。電気的接触装置は、回転体である指示極11から電流又は電圧信号を取り出す任意の機構を使用してもよい。また、電気的接触装置は、水銀などの液体金属を利用した機構を用いてもよい。なお、摺動コンタクト16は、耐摩耗性と耐腐食性に優れた金合により構成してもよい。あるいは、摺動コンタクト16は、チタン、プラチナ、金、銀、ステンレスなど腐食しにくい金属で形成してもよい。摺動コンタクト16により取り出された拡散電流の値は、後述する制御部41へ伝達される。
【0031】
電流-電圧変換回路51は、摺動コンタクト16を介して取得された拡散電流を電圧に変換する回路である。電流-電圧変換回路51は、図3を参照して後述する、抵抗33~35,37、及び比較器(オペアンプ)36のような構成を備えてもよい。アナログデジタル変換器(Analog to Digital Converter)52は、拡散電流に応じた電圧を、アナログ信号からデジタル信号に変換する。デジタル信号は制御部53へ出力される。
【0032】
制御部53は、1つ以上のプロセッサを含む。一実施形態において「プロセッサ」は、例えばCPU(Central Processing Unit)等の汎用のプロセッサ、又は特定の処理に特化した専用のプロセッサであるが、これらに限定されない。制御部53は、拡散電流を測定するための各構成要素と通信可能に接続され、拡散電流の測定に関する残留塩素計1の動作を制御する。加電圧回路54は、制御部53の制御に基づき、指示極11側を陰極として指示極11と対極12との間に電位差を生じさせる回路である。加電圧回路54は、指示極11と対極12との間に電位差を生じさせる電源として作用する。出力部55は、ユーザに対して情報を出力し、ユーザに通知する1つ以上の出力インタフェースを含む。例えば、出力部55は、情報を画像で出力するディスプレイ、又は情報を音声で出力するスピーカ等であるが、これらに限定されない。なお、制御部53、加電圧回路54、及び出力部55は、後述するモータ駆動部30の制御部41、電源31、及び出力部45と共通の構成としてもよい。
【0033】
図2は、図1の測定槽50の構成例を示す図である。測定槽50は、壁部20、入水口21、混合槽22、ビーズケース23、オーバフロー堰24、25、緩衝板26、排水口27、逆洗口28、及び排水口29を備える。ビーズ233で充たされたビーズケース23が、混合槽22の中に設けられる。指示極11は、ビーズケース23の中に設置され、モータ13により回転する。対極12はビーズケース23の外の混合槽22内に設けられる。
【0034】
試料水Wは、入水口21から混合槽22へ注入される。試料水Wは、混合槽22、ビーズケース23、指示極11、対極12、オーバフロー堰24,25を経由して排水口27,29から排出される。オーバフロー堰24,25及び入水口21付近に設けられた緩衝板26によって、入水口21から注入された試料水Wの流量範囲にかかわらず、ほぼ一定の流量の試料水Wを指示極11へ送ることが可能である。なお、試料水Wは、入水口21ではなく、逆洗口28から混合槽22へ注入してもよい。通常使用される入水口21ではなく、別に設けた逆洗口28から定期的に洗浄用のフィルタを通過した洗浄水を注入するようにすることで、測定槽50内の特定の個所に蓄積した汚れ等を洗浄してもよい。
【0035】
指示極11は、電極111を備え、残留塩素濃度に比例した拡散電流を測定するために使用される。指示極11に物理的な汚れ又は電気的な汚れ等が付着すると、拡散電流の正しい値を測定することができなくなるため、指示極11は常に洗浄されている必要がある。本実施形態に係る残留塩素計1は、小型のビーズ233で充たされたビーズケース23内で指示極11を回転させることで、指示極11の表面をビーズ233により研磨し、常に洗浄された状態に保つ。これにより、試料水W中に含まれる鉄成分又はマンガン成分等の電極111への付着が防止され、指示極11の感度の低下が防止される。また、指示極11の電極111を化学的腐食に強い、例えば、金、チタン、プラチナ、銀、ステンレス等の物質により構成することで、指示極11の電極111の腐食を防止してもよい。ビーズ233は例えばセラミックにより構成されるが、電極111の表面を研磨することができる任意の物質により構成してもよい。例えば、ビーズ233は、ガラス、任意の金属、砂、又は胡桃の実等により構成してもよい。ビーズケース23は、ビーズ233よりも小さく、試料水Wがビーズケース23内を流出入することが可能な大きさの多数の側面孔231及び底面孔232を有してもよい。
【0036】
対極12は、例えば、銀により構成してもよい。対極12を銀により構成した場合、オーバフロー堰24に、孔241を設けるようにしてもよい。孔241は、試料水Wが流れなくなったとき、混合槽22内に淀んでいる水を排出し、対極12を水中から露出させ、指示極11が銀メッキされることを防ぐ作用を有する。
【0037】
図3は、図1のモータ駆動部30の構成例を示す回路図である。モータ駆動部30は、
モータ13、電源31、抵抗32~35、比較器36、抵抗37、アナログデジタル変換器38、制御部41、記憶部42、通信部43、入力部44、及び出力部45を備える。
【0038】
モータ13は、指示極11をビーズケース23内で回転させる。モータ13は、例えば、ステッピングモータにより実現してもよい。モータ13は、例えば、1秒間に10回転の回転速度で、指示極11を回転させてもよい。以下、モータ13は直流モータである例を説明するが、交流モータとしてもよい。
【0039】
電源31は、モータ13を駆動するための電力を提供する。電源31は、加電圧回路54と共通としてもよいし、加電圧回路54と共通の電力源を適宜、変圧等の変換を行って構成してもよい。
【0040】
抵抗32は、モータ13を流れる電流を測定するための抵抗である。抵抗33~35,37、比較器(オペアンプ)36は、モータ13を流れる電流を電圧に変換する電流-電圧変換回路である。アナログデジタル変換器(Analog to Digital Converter)38は、モータ13を流れる電流に応じた電圧を、アナログ信号からデジタル信号に変換する。デジタル信号は制御部41へ出力される。
【0041】
制御部41は、1つ以上のプロセッサを含む。一実施形態において「プロセッサ」は、例えばCPU等の汎用のプロセッサ、又は特定の処理に特化した専用のプロセッサであるが、これらに限定されない。制御部41は、残留塩素計1を構成する各構成要素と通信可能に接続され、モータ13の制御に関する残留塩素計1の動作を制御する。なお、制御部41は、図1の制御部53と共通の構成とし、摺動コンタクト16により取り出された拡散電流の値を取得してもよい。
【0042】
記憶部42は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、ROM(Read-Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)、及びRAM(Random Access Memory)を含む任意の記憶モジュールを含む。記憶部42は、例えば、主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能してもよい。記憶部42は、残留塩素計1の動作に用いられる又は残留塩素計1の動作の結果得られた任意の情報を記憶する。例えば、記憶部42は、各種プログラム、モータ13を流れる電流のデータ、及び拡散電流のデータ等の各種情報等を記憶してもよい。記憶部42は、残留塩素計1に内蔵されているものに限定されず、USB(Universal Serial Bus)等のデジタル入出力ポート等によって接続されている外付けのデータベース又は外付け型の記憶モジュールであってもよい。
【0043】
通信部43は、後述する情報処理装置2等の他の装置と通信接続可能な、任意の通信モジュールを含む。通信部43は、さらに、他の装置との通信を制御するための通信制御モジュール、及び他の装置との通信に必要となる識別情報等の通信用データを記憶する記憶モジュールを含んでもよい。
【0044】
入力部44は、ユーザの入力操作を受け付けて、ユーザの操作に基づく入力情報を取得する1つ以上の入力インタフェースを含む。例えば、入力部44は、物理キー、静電容量キー、ポインティングディバイス、出力部45のディスプレイと一体的に設けられたタッチスクリーン、又は音声入力を受け付けるマイク等であるが、これらに限定されない。
【0045】
出力部45は、ユーザに対して情報を出力し、ユーザに通知する1つ以上の出力インタフェースを含む。例えば、出力部45は、情報を画像で出力するディスプレイ、又は情報を音声で出力するスピーカ等であるが、これらに限定されない。前述のように、出力部45は、出力部55と共通の構成としてもよい。
【0046】
モータ駆動部30又は残留塩素計1の機能は、本実施形態に係る劣化検知を行うために用いられうるコンピュータプログラム(プログラム)を、制御部41に含まれるプロセッサで実行することにより実現されうる。すなわち、モータ駆動部30又は残留塩素計1の少なくとも一部の機能は、ソフトウェアにより実現されうる。コンピュータプログラムは、モータ駆動部30又は残留塩素計1の動作に含まれるステップの処理をコンピュータに実行させることで、各ステップの処理に対応する機能をコンピュータに実現させる。すなわち、コンピュータプログラムは、コンピュータを本実施形態に係るモータ駆動部30又は残留塩素計1として機能させるためのプログラムである。
【0047】
なお、モータ駆動部30は、制御部41がモータ13を流れる電流信号を取得できるならば、図3に例示した構成と異なる構成を有してもよい。すなわち、モータ13を流れる電流の検出方式は問わない。例えば、モータドライバIC(Integrated Circuit)の電流モニタ機能を使用して電流信号を取得することができるならば、制御部41は、そのようなモータドライバICから直接、電流信号を取得してもよい。この場合、モータ駆動部30は、電流検出用の抵抗32、抵抗33~35,37、比較器36、アナログデジタル変換器38を備えなくてもよい。また、制御部41、記憶部42、通信部43、入力部44、及び出力部45の一部又は全ての機能が、制御部41に含まれる専用回路により実現されてもよい。すなわち、モータ駆動部30又は残留塩素計1の一部の機能が、ハードウェアにより実現されてもよい。また、残留塩素計1は、制御部41が拡散電流を取得するための任意の構成を有する。
【0048】
本実施形態に係る残留塩素計1は、一例として、モータ13を流れる電流信号又は拡散電流に基づき、電極111、摺動コンタクト16、及びモータ13の各補用品の劣化の程度を検知し、検知の結果に応じて、交換すべき補用品を判定する。このような検知・判定処理の原理について、図4を参照して説明する。
【0049】
図4は、モータ13の負荷トルクとモータ13における消費電流との対応関係の一例を示す図である。図4は、モータ13に加えられた負荷トルクと、モータ13が消費する電流値との対応関係の一例をグラフにより示している。すなわち、図4は、無負荷で回転するモータ13に徐々にブレーキを掛けて、負荷トルクを増加した場合のモータ13を流れる電流値の変化をグラフにより示している。図4において、横軸はモータ13に加えられた負荷トルクの大きさを示し、縦軸はモータ13を流れる電流の大きさを示す。図4に示すように、一般的に負荷トルクと消費電流値は非線形で比例する関係を有する。
【0050】
本実施形態に係る残留塩素計1は、モータ13が消費する電流値と負荷トルクが密接な関係にあることを利用する。つまり、残留塩素計1は、モータ13を流れる電流値の変化に基づき、モータ13に加えられている負荷トルクの大きさを推定する。電極111、摺動コンタクト16、及びモータ13の劣化の種類によって、モータ13に加えられる負荷トルクのパターンは異なる。残留塩素計1は、このようなパターンの相違に基づき、電極111、摺動コンタクト16、及びモータ13の補用品の種類毎に、劣化の程度を検知してもよい。
【0051】
例えば、指示極11の電極111においては、使用期間の経過に応じて、表面にうろこ状の凹凸が発生することが知られている。そして、電極111の表面にうろこ状の凹凸が発生した場合、モータ13を流れる電流の波形には細かい波形が重畳されることが知られている。そこで、残留塩素計1は、このような電極111の劣化に応じた波形を事前に学習しておき、モータ13を流れる電流の測定値と、事前に学習した波形とを比較して、電極111の劣化の程度を検知してもよい。
【0052】
また、指示極11の電極111が新しいときは、残留塩素計1が測定する拡散電流の測定値は、指示極11の回転周期に依存しない波形を示すものの、使用期間の経過に応じて、拡散電流の測定値は、指示極11の回転周期を周期とする正弦波に近づくことが知られている。そこで、残留塩素計1は、拡散電流の波形に基づき、電極111の劣化の程度を検知してもよい。
【0053】
摺動コンタクト16については、使用期間が長くなるにつれて、回転する機械部品と回転しない機械部品とのクリアランスが狂ったり、回転する機械部品と回転しない機械部品との間を埋める潤滑剤が劣化したりすることによって、動作が渋くなることが知られている。摺動コンタクト16の動作が渋くなったことは、指示極11を同じように回転させる場合であっても負荷トルクが大きくなり、モータ13を流れる電流の値が大きくなる現象として観察されうる。したがって、残留塩素計1は、同一の動作をする場合であっても、モータ13を流れる電流の値が全体的に大きくなったことに基づき、摺動コンタクト16の劣化を検出してもよい。また、摺動コンタクト16においては、使用期間が長くなるにつれて、回転する機械部品と回転しない機械部品との間に電流を流すブラシが劣化することにより、指示極11の回転周期に応じたタイミングで、瞬断的な接触不良が周期的に発生する場合がありうる。このような接触不良は、モータ13を流れる電流の電流値のサンプルが、指示極11の回転周期等に応じたタイミングで、周期的に途絶えることとして観察される。そこで、残留塩素計1は、モータ13を流れる電流の電流値のサンプルが周期的に途絶えたことに基づき、摺動コンタクト16の劣化を検出してもよい。
【0054】
モータ13については、モータ軸受け部分の経時劣化、及び、潤滑剤の劣化等により、同一の電流が流れてもトルクの出力が減少するため、同一のトルクを出力するために必要な電流値が上昇することが知られている。そこで、残留塩素計1は、モータ13を流れる電流値の上昇に基づきモータ13の劣化の程度を検知してもよい。また、モータ13を構成するベアリングの劣化等により、指示極11を一回転する間に加えられる負荷トルクは均一でなくなり、モータ13の回転において「ゴリゴリ」「ゴロゴロ」といった感触が生じるようになる場合がある。このような感触は、モータ13を流れる電流波形が、モータ13の回転周期に合わせて上下する波形として現れる。そこで、残留塩素計1は、モータ13を流れる電流値がモータ13の回転周期に合わせて上下することに基づきモータ13の劣化の程度を検知してもよい。
【0055】
また、モータ13の使用期間が長くなるにつれて、モータ13を駆動する電力を供給する電極等の絶縁不良が生じ、指示極11の回転周期に応じたタイミングで、瞬断的な接触不良が周期的に発生する場合がありうる。このような接触不良は、モータ13を流れる電流の電流値のサンプルが、指示極11の回転周期等に応じたタイミングで、周期的に途絶えることとして観察される。そこで、残留塩素計1は、モータ13を流れる電流の電流値のサンプルが周期的に途絶えたことに基づき、モータ13の劣化を検出してもよい。
【0056】
上記のように、残留塩素計1は、拡散電流の測定値に基づく電極111の劣化検知、並びに、モータ13を流れる電流の測定値に基づく、摺動コンタクト16の接触不良、及びモータ13のベアリング劣化・接触不良の検知を、信号の周期的変動に基づき行う。本明細書では、このような信号の周期的変動を検知するための信号解析をAC(Alternating Current)解析(交流的解析)と称する。具体的には、AC解析は、特定の周波数成分の抽出及び除去、並びに特定の周波数帯域を増幅等の加工を施す解析を指す。残留塩素計1は、モータ13の電流又は拡散電流についてAC解析を行うことにより、各補用品が経時変化に伴って発生する周期的な特徴を抽出することができる。残留塩素計1は、各補用品について異なる内容のAC解析を行ってもよい。残留塩素計1は、AC解析を実行することで、例えば、破損したベアリングの「ゴリゴリ」とした感触をそのまま電流波形として抽出することができ、これにより劣化予兆を検知してもよい。また、残留塩素計1は、各補用品の劣化時の波形を事前に取得し、適宜、モータ13の電流又は拡散電流の測定値と比較して劣化予兆を検出してもよい。
【0057】
他方、残留塩素計1は、摺動コンタクト16の劣化、モータ軸受け部分の経時劣化、及び、潤滑剤の劣化等を、モータ13を流れる電流の測定値の上昇に基づき検知する。本明細書では、このような信号の値の全体的な傾向を検知するための信号解析をDC(Direct Current)解析(直流的解析)と称する。具体的には、DC解析は、特定の期間における積分処理、移動平均、及び中央値の演算等を行う解析を指す。残留塩素計1は、モータ13の電流又は拡散電流についてDC解析を行うことにより、各補用品が経時変化に伴って発生する平均的な特徴を抽出することができる。残留塩素計1は、具体的な期間の設定、及び、処理の選択等に関して、各補用品につき異なる内容の処理を行ってもよい。
DC解析には、アナログ的な解析、デジタル的な解析、及びこれらの組合せが含まれてもよい。デジタル的な解析にはFFT(Fast Fourier Transform)等の高度な解析が含まれてもよい。例えば、ベアリングのグリスが徐々に劣化して堅くなった場合、モータ13の負荷トルクが徐々に重たくなるために、モータ13の駆動電流の平均値が高くなる。残留塩素計1は、モータ13の電流についてDC解析を実行することで、モータ13の電流の平均値の上昇を検知し、劣化予兆を検知してもよい。また、残留塩素計1は、事前に閾値を設定し、信号のDC解析に基づき取得された値と、閾値との大小を比較することで、劣化予兆の判断を行ってもよい。
【0058】
図5は、残留塩素計1が実行する処理の一例を示すフローチャートである。図5を参照して説明する残留塩素計1の動作は本実施形態に係る残留塩素計1の制御方法に相当する。以下、制御部53は制御部41と共通であり、制御部41が残留塩素計1全体の動作を制御する例について説明する。図5の各ステップは、残留塩素計1の制御部41の制御に基づき実行される。以下、モータ13を流れる電流信号に基づき補用品の劣化を検知する処理について説明するが、拡散電流に基づき補用品の劣化を検知する場合も同様の処理となる。
【0059】
ステップS1において、制御部41は、モータ13を流れる電流信号を取得する。具体的には、制御部41は、抵抗33~35,37、及び比較器(オペアンプ)36により電流・電圧変換され、アナログデジタル変換器38によりデジタル信号に変換された、モータ13を流れる電流の信号を取得する。制御部41は、取得した電流信号のデータを記憶部42に記憶してもよいし、他の情報処理装置へ転送してもよい。制御部41は、残留塩素計1について初めてフローチャートの処理を実行する場合、ステップS1において取得された電流信号のデータを、新品の状態におけるデータとして記憶部42に記憶してもよい。
【0060】
ステップS2において、制御部41は、ステップS1で取得した電流信号を解析する。具体的には、制御部41は、モータ13を流れる電流の信号について、前述のAC解析、DC解析、又はこれらの組合せを含む複数種類の解析を行ってもよい。解析の際に、制御部41は、モータ13が発生するノイズ、商用電源から発生するノイズ、及び外来からの不要なノイズ等をモータ13の電流の信号から除去してもよい。具体的には、例えば、制御部41は、AD変換の手前でノイズの除去を行ってもよい。制御部41は、解析の結果を記憶部42に記憶してもよい。
【0061】
ステップS3において、制御部41は、ステップS2における電流信号の解析の結果に基づき、補用品の劣化の程度を検知する。具体的には、制御部41は、ステップS2による解析結果と、事前に機械学習等により取得した解析結果と比較して補用品の劣化の程度を検知してもよい。例えば、制御部41は、補用品が新品の状態におけるモータ13の電流に関する解析結果を記憶しておき、ステップS2による解析結果をこれと比較することで、補用品の劣化の程度を検知してもよい。ステップS2による解析結果と比較する対象は、事前に補用品ごとに取得されたモータ13の電流に関する解析結果としてもよい。
【0062】
ステップS4において、制御部41は、ステップS3で検知した補用品の劣化の程度に基づき、交換すべき補用品を判定する。例えば、制御部41は、ステップS3で検知した補用品の劣化の程度が、予め定めた劣化の程度の閾値を上回る場合は、その補用品を交換すべきと判定してもよい。
【0063】
ステップS5において、制御部41は、ステップS4における判定結果をユーザに提示する。例えば、制御部41は、判定結果を示す画像を出力部45のディスプレイに表示したり音声により判定結果を通知したりしてもよい。制御部41は、予め登録された機器管理者のメールアドレスを宛先として、判定結果を示すメールを送信してもよい。また、制御部41は、補用品の交換の要否に加えて、各補用品の劣化の程度をユーザに通知してもよい。制御部41は、ステップS5の処理を終えると、図5のフローチャートの処理を終了する。
【0064】
以上のように、残留塩素計1は、試料水Wの中の残留塩素の濃度を測定する装置である。残留塩素計1は、試料水Wの中に浸漬される指示極11及び対極12と、指示極11及び対極12の間に電圧を印加した場合に、指示極11及び対極12の間に流れる電流である拡散電流に基づき、試料水Wの中の残留塩素の濃度を測定する制御部41と、を備える。制御部41は、指示極11を試料水Wの中で回転させるモータ13を流れる電流であるモータ電流と、拡散電流との少なくともいずれかに基づき、残留塩素計1の補用品の劣化の程度を検出する。このように、残留塩素計1はモータ電流と拡散電流の少なくともいずれかに基づき補用品の劣化の程度を検出するため、ユーザは、補用品を劣化の程度に応じてより適切な時期に交換することが可能である。
【0065】
なお、制御部41は、モータ電流及び拡散電流の少なくともいずれかについて、周期的変動を検知するための信号解析である交流的解析を行ってもよい。制御部41は、モータ電流及び拡散電流の少なくともいずれかについて行われた交流的解析の結果と、予め取得されたサンプル信号についての交流的解析の結果とを比較して、残留塩素計1の補用品の劣化の程度を検出してもよい。このように、残留塩素計1は、モータ電流及び拡散電流の少なくともいずれかについて交流的解析を行って補用品の劣化の程度を検出するため、モータ電流又は拡散電流の周期的変動として現れる補用品の劣化を適切に検出することができる。
【0066】
また、制御部41は、モータ電流及び拡散電流の少なくともいずれかについて、その値の全体的な傾向を検知するための信号解析である直流的解析を行ってもよい。制御部41は、モータ電流及び拡散電流の少なくともいずれかについて行われた直流的解析の結果と、予め取得されたサンプル信号についての直流的解析の結果とを比較して、残留塩素計1の補用品の劣化の程度を検出してもよい。このように、残留塩素計41は、モータ電流及び拡散電流の少なくともいずれかについて直流的解析を行って補用品の劣化の程度を検出するため、モータ電流又は拡散電流の全体的変動として現れる補用品の劣化を適切に検出することができる。
【0067】
また、補用品は、モータ13、指示極11の電極111、又は、指示極11から拡散電流を取り出すための摺動コンタクト16としてもよい。したがって、残留塩素計1は、モータ13、指示極11の電極111、及び摺動コンタクト16について劣化を検出することが可能である。なお、残留塩素計は、補用品として、モータ13、指示極11の電極111、及び摺動コンタクト16以外にも、例えば、ビーズ233の劣化を検出して、その交換の要否を判定してもよい。
【0068】
また、制御部41は、検出した劣化の程度に基づき、補用品を交換すべきか否かを判定し、補用品を交換すべきかの判定結果をユーザに提示してもよい。例えば、制御部41は、判定結果を示す画像を出力部45のディスプレイに表示したり、音声により判定結果を通知したりしてもよい。したがって、ユーザは、補用品の交換の要否を容易に把握することが可能である。
【0069】
なお、制御部41は、ステップS1~S5の処理を、自動的に定期的(例えば、週に1回、月に1回等)に実行するようにしてもよい。これにより、残留塩素計1は、補用品の劣化の状態を定期的に監視して、補用品の交換が必要になった場合は、直ちにユーザに通知することができる。
【0070】
(第2実施形態)
残留塩素計1は、モータ13を流れる電流又は拡散電流を他の情報処理装置へ送信し、その情報処理装置がデータの解析を行うようにしてもよい。このような処理を行う塩素計システム3について、図6を参照して説明する。図6は、一実施形態に係る塩素計システム3の構成例を示す図である。
【0071】
塩素計システム3は、残留塩素計1及び情報処理装置2を備える。残留塩素計1及び情報処理装置2は、ネットワークNを介して互いに通信可能である。残留塩素計1は、第1実施形態に係る残留塩素計と同様の構成を備える。情報処理装置2は、PC(Personal Computer)、WS(Workstation)、タブレット、又はクラウドサーバ等の任意の情報処理装置である。ネットワークNは、有線ネットワーク、無線ネットワーク、又はこれらの組合せを含む。
【0072】
残留塩素計1は、モータ13の電流又は拡散電流を取得すると、そのデータを、ネットワークNを介して情報処理装置2へ送信する。すなわち、残留塩素計1は、例えば、無線通信又は有線通信により、モータ13の電流又は拡散電流のデータを情報処理装置2へ送信する。情報処理装置2は、受信したデータを解析して、補用品の劣化の程度を検出し、交換の要否を判定する。具体的には、情報処理装置2は、図5のステップS1~S5の処理を実行する。このように、塩素計システム3において、情報処理装置2はモータ電流と拡散電流の少なくともいずれかに基づき補用品の劣化の程度を検出して、その補用品を交換すべきか否かを判定する。そのため、仮に残留塩素計1にデータの解析能力が実装されていなくても、ユーザは、補用品を劣化の程度に応じた補用品の交換の要否を知ることができ、より適切な時期に補用品を交換することが可能である。
【0073】
以上のように、本開示の各実施形態によれば、モータ1の負荷トルクに比例する駆動電流又は拡散電流を解析することで、各補用品の劣化予兆を行う。したがって、残留塩素計1又は情報処理装置2は、各補用品の劣化具合を正確に把握し、これをユーザに適切な時期に通知することが可能になる。通知を受信したユーザは、必要かつ無駄のないタイミングで補用品を交換することができる。
【0074】
本開示は上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、ブロック図に記載の複数のブロックは統合されてもよいし、又は1つのブロックは分割されてもよい。フローチャートに記載の複数のステップは、記述に従って時系列に実行する代わりに、各ステップを実行する装置の処理能力に応じて、又は必要に応じて、並列的に又は異なる順序で実行されてもよい。その他、本開示の趣旨を逸脱しない範囲での変更が可能である。
【符号の説明】
【0075】
1 残留塩素計
2 情報処理装置
3 塩素計システム
11 指示極
111 電極
12 対極
13 モータ
16 摺動コンタクト
20 壁部
21 入水口
22 混合槽
23 ビーズケース
231 側面孔
232 底面孔
233 ビーズ
24 オーバフロー堰
241 孔
25 オーバフロー堰
26 緩衝板
27 排水口
28 逆洗口
29 排水口
30 モータ駆動部
31 電源
32 抵抗
33 抵抗
34 抵抗
35 抵抗
36 比較器
37 抵抗
38 アナログデジタル変換器
39 制御部
41 記憶部
42 通信部
43 入力部
44 出力部
50 測定槽
51 電流-電圧変換回路
52 アナログデジタル変換器
53 制御部
54 加電圧回路
55 出力部
W 試料水
図1
図2
図3
図4
図5
図6