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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】天井搬送車システム
(51)【国際特許分類】
   B61B 13/00 20060101AFI20240501BHJP
   B61B 3/02 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
B61B13/00 U
B61B3/02 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022039457
(22)【出願日】2022-03-14
(65)【公開番号】P2023134103
(43)【公開日】2023-09-27
【審査請求日】2023-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100176245
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100180851
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼口 誠
(72)【発明者】
【氏名】小林 誠
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2014-0141827(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2022-0023395(KR,A)
【文献】特許第6481174(JP,B2)
【文献】特開2018-122700(JP,A)
【文献】特開平02-141361(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0047106(US,A1)
【文献】国際公開第2012/157319(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61B 13/00
B61B 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車輪を有する走行部と、前記走行部に吊下部を介して支持されると共に被搬送物を保持する本体部と、を有する天井搬送車と、
前記走行部の走行時において前記吊下部が移動可能なスリット部及び前記走行車輪が転動する転動部を有し、前記走行部が走行する内部空間が形成された筒状の走行レールと、を備え、
カーブ区間における前記走行レールの前記内部空間には、前記転動部を転動するカーブ外側の前記走行車輪が通過する通過領域の上方に、前記転動部から所定量浮き上がった前記走行車輪が接触する浮き上がり規制部が、前記走行レールの延在方向に沿って配置されており、
前記天井搬送車は、
前記走行レールの分岐箇所において分岐に用いられる分岐ローラを更に有し、
前記走行レールを走行する前記搬送車の前記分岐ローラと前記浮き上がり規制部とは、前記走行レールの走行方向と鉛直方向との両方に直交する幅方向において互いに対向するように設けられ、
前記浮き上がり規制部には、前記分岐ローラに対向する端面が形成されており、
ストレート区間における前記内部空間には、鉛直方向から見た平面視において前記端面と前記転動部に交差する側面部とを接続するテーパ面が設けられている、天井搬送車システム。
【請求項2】
前記走行レールは、前記転動部に交差する側面部を有しており、
前記浮き上がり規制部は、前記側面部から前記内部空間側に突出している、請求項1記載の天井搬送車システム。
【請求項3】
前記天井搬送車は、
前記走行部の各部を制御する制御部を有し、
前記分岐ローラは、前記幅方向に移動可能に設けられており、
前記制御部は、前記走行部が前記カーブ区間に進入する前又は進入すると同時に前記分岐ローラを前記幅方向においてカーブ内側に移動させるように制御する、請求項1又は2記載の天井搬送車システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一側面の目的は、天井搬送車システムに関する。
【背景技術】
【0002】
工場等の建屋の天井等に設置された走行レールに沿って走行する天井搬送車が知られている。例えば、特許文献1には、走行レールを走行する走行部と、物品を保持する本体部と、を備えた天井搬送車が開示されている。特許文献1の天井搬送車では、走行部は、角筒状に形成された走行レールの筒内部を走行し、本体部は、走行レールの下面部に設けられたスリットを介して、走行部に対して吊り下げ支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開2012/157319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような構成の天井搬送車では、カーブ区間を走行する際の遠心力によって走行部を構成する走行車輪の一部が浮き上がり、走行部が傾くことがある。この場合、走行部の各部が走行レールと衝突し、走行部の各部が損傷するおそれがある。
【0005】
そこで、本発明の一側面の目的は、走行部がカーブ区間を走行する際の走行車輪の浮き上がり量を抑制することができる、天井搬送車システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る天井搬送車システムは、走行車輪を有する走行部と、走行部に吊下部を介して支持されると共に被搬送物を保持する本体部と、を有する天井搬送車と、走行部の走行時において吊下部が移動可能なスリット部及び走行車輪が転動する転動部を有し、走行部が走行する内部空間が形成された筒状の走行レールと、を備え、カーブ区間における走行レールの内部空間には、転動部を転動するカーブ外側の走行車輪が通過する通過領域の上方に、転動部から所定量浮き上がった走行車輪が接触する浮き上がり規制部が、走行レールの延在方向に沿って配置されている。
【0007】
この構成の天井搬送車システムでは、カーブ区間の走行レールの内部空間に、カーブ外側の走行車輪が転動部から所定量浮き上がったときに接触する浮き上がり規制部が、走行レールの延在方向に沿って配置されている。これにより、カーブ区間においてカーブ外側の走行車輪が転動部から所定量よりも大きく浮き上がることが防止される。したがって、走行部がカーブ区間を走行する際の走行車輪の浮き上がり量を抑制することができる。
【0008】
本発明の一側面に係る天井搬送車システムでは、走行レールは、転動部に交差する側面部を有しており、浮き上がり規制部は、側面部から内部空間側に突出してもよい。この構成では、走行レールの側面部を利用して、浮き上がり規制部を容易に構成することができる。
【0009】
本発明の一側面に係る天井搬送車システムでは、天井搬送車は、走行レールの分岐箇所において分岐に用いられる分岐ローラを更に有し、走行レールを走行する搬送車の分岐ローラと浮き上がり規制部とは、走行レールの走行方向と鉛直方向との両方に直交する幅方向において互いに対向するように設けられ、浮き上がり規制部には、分岐ローラに対向する端面が形成されており、ストレート区間における内部空間には、鉛直方向から見た平面視において端面と転動部に交差する側面部とを接続するテーパ面が設けられてもよい。この構成では、平面視において天井搬送車の分岐ローラが浮き上がり規制部の端面よりも外側に位置したままカーブ区間の入口に到達したとしても、分岐ローラは浮き上がり規制部の延在方向における端部に衝突することなく、テーパ面によって浮き上がり規制部の端面にスムーズに誘導される。これにより、分岐ローラ及び浮き上がり規制部の少なくとも一方が損傷することを防止できる。
【0010】
本発明の一側面に係る天井搬送車システムでは、天井搬送車は、走行部の各部を制御する制御部を有し、分岐ローラは、幅方向に移動可能に設けられており、制御部は、走行部がカーブ区間に進入する前又は進入すると同時に分岐ローラを幅方向においてカーブ内側に移動させるように制御してもよい。この構成では、分岐ローラと浮き上がり規制部との衝突によって分岐ローラ及び浮き上がり規制部の少なくとも一方が損傷することをより確実に防止できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一側面によれば、走行部がカーブ区間を走行する際の走行車輪の浮き上がり量を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、一実施形態に係る天井搬送車システムの概略構成図である。
図2図2は、図1の搬送車を前方から見た正面図である。
図3図3は、図2の走行レール部分を拡大して示した断面図である。
図4図4は、浮き上がり規制部の配置箇所を示した平面図である。
図5図5は、走行レールの内部空間を走行する走行部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の一側面の好適な一実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。図2及び図3では、説明の便宜のため「上」、「下」、「左」、「右」、「前」、「後」方向を定義する。
【0014】
図1及び図2に示されるように、天井搬送車システム1は、走行レール4に沿って移動可能な天井搬送車6(以下、「搬送車6」と称する。)を用いて、物品(被搬送物)10を載置部9間で搬送するためのシステムである。物品10には、例えば、複数の半導体ウェハを格納するFOUP(Front Opening Unified Pod)及びガラス基板を格納するレチクルポッド等のような容器、並びに一般部品等が含まれる。天井搬送車システム1は、走行レール4、複数の搬送車6及び複数の載置部9を備える。
【0015】
図1に示されるように、載置部9は、走行レール4に沿って配置され、搬送車6が物品10を受け渡し可能な位置に設けられている。載置部9には、バッファ及び受渡ポートが含まれる。バッファは、物品10が一時的に載置される載置部である。バッファは、例えば、目的とする受渡ポートに他の物品10が載置されている等の理由により、搬送車6が搬送している物品10をその受渡ポートに移載できない場合に、物品10が仮置きされる載置部である。受渡ポートは、例えば洗浄装置、成膜装置、リソグラフィ装置、エッチング装置、熱処理装置、平坦化装置をはじめとする半導体の処理装置(図示せず)に対して物品10の受渡を行うための載置部である。なお、処理装置は、特に限定されず、種々の装置であってもよい。
【0016】
例えば、載置部9は、走行レール4の側方に配置されている。この場合、搬送車6は、横送り部24で昇降駆動部28等を横送りし、昇降台30を昇降させることにより、載置部9との間で物品10を受け渡しする。なお、図示はしないが載置部9は、走行レール4の直下に配置されてもよい。この場合、搬送車6は、昇降台30を昇降させることにより、載置部9との間で物品10を受け渡しする。
【0017】
走行レール4は、例えば、作業者の頭上スペースである天井付近に敷設されている。走行レール4は、例えば天井から吊り下げられている。走行レール4は、搬送車6を走行させるための予め定められた走行路である。搬送車6は、予め定められた一方向に走行レール4を移動する。走行レール4は、支柱4A,4Aにより支持される。
【0018】
図2及び図3に示されるように、走行レール4は、一対の下面部(転動部)41,41と一対の側面部42,42と上面部43とからなる角筒状のレール本体部40と、給電部45と、磁気プレート46と、を有している。レール本体部40は、搬送車6の走行部50が走行する内部空間Sを形成する。下面部41は、搬送車6の走行方向に延在し、レール本体部40の下面を構成する。下面部41は、搬送車6の走行ローラ(走行車輪)51が転動して走行部50が走行する板状部材である。側面部42は、下面部41から立設(交差)している。側面部42は、搬送車6の走行方向に延在し、レール本体部40の側面を構成する。上面部43は、搬送車6の走行方向に延在し、レール本体部40の上面を構成する。
【0019】
走行レール4の延在方向に直交する幅方向(左右方向)に対向する一対の下面部41,41の間には、後段にて詳述する走行部50の吊下部8が走行時に通過するスリット部Gが形成されている。スリット部Gは、走行レール4の延在方向に沿って延在している。
【0020】
給電部45は、搬送車6の給電コア57に電力を供給すると共に、給電コア57と信号の送受信を行う部位である。給電部45は、一対の側面部42,42のそれぞれに固定され、走行方向に沿って延在している。給電部45は、給電コア57に対して非接触の状態で電力を供給する。磁気プレート46は、搬送車6のLDM(Linear DC Motor)59に走行又は停止のための磁力を発生させる。磁気プレート46は、上面部43に固定され、走行方向に沿って延在している。
【0021】
搬送車6は、走行レール4に沿って走行し、物品10を搬送する。搬送車6は、物品10を移載可能に構成されている。搬送車6は、天井走行式無人搬送車である。天井搬送車システム1が備える搬送車6の台数は、特に限定されず、複数である。搬送車6は、本体部7と、走行部50と、本体コントローラ(制御部)35と、を有する。本体部7は、本体フレーム22と、横送り部24と、θドライブ26と、昇降駆動部28と、昇降台30と、カバー33と、を有する。
【0022】
本体フレーム22は、走行部50と吊下部8を介して接続されており、横送り部24と、θドライブ26と、昇降駆動部28と、昇降台30と、カバー33とを支持する。横送り部24は、θドライブ26、昇降駆動部28及び昇降台30を一括して、走行レール4の走行方向と直交する幅方向(左右方向)に横送りする。θドライブ26は、昇降駆動部28及び昇降台30の少なくとも何れかを水平面内で所定の角度範囲内で回動させる。昇降駆動部28は、ワイヤ、ロープ及びベルト等の吊持材を巻取る又は繰出すことによって昇降台30を昇降させる。昇降台30には、チャックが設けられており、物品10の把持又は解放が自在とされている。カバー33は、例えば搬送車6の走行方向の前後に一対設けられている。カバー33は、図示しない爪等を出没させて、搬送中に物品10が落下することを防止する。
【0023】
図3及び図5に示されるように、走行部50は、搬送車6を走行レール4に沿って走行させる。走行部50は、二つの本体部50A,50Bを有しており、二つの本体部50A,50Bは、互いに連結されている。二つの本体部50A,50Bのそれぞれは、走行ローラ51、サイドローラ52、分岐ローラ53、補助ローラ54、傾斜ローラ55、給電コア57及びLDM59を有している。
【0024】
走行ローラ51は、走行部50の前後の左右両端に配置されている。走行ローラ51は、レール本体部40の一対の下面部41,41の内面41a,41aを転動する。サイドローラ52は、走行ローラ51のそれぞれを前後方向に挟むように配置されている。サイドローラ52は、レール本体部40の側面部42の内面42aに接触可能に設けられている。
【0025】
分岐ローラ53は、サイドローラ52を上下方向から挟むように配置されている。分岐ローラ53は、走行レール4の分岐箇所で搬送車6(走行部50)が直進走行する又は分岐走行するのを切り替えるために設けられる。より詳細には、分岐ローラ53は、分岐箇所に設けられているガイド部材に選択的に誘導されることによって、搬送車6の走行方向を切り替える。分岐ローラ53は、一つの本体部50A(50B)に対して四個設けられている。分岐ローラ53は、幅方向に移動可能に設けられる支持部材53に取り付けられている。支持部材53は、駆動部が駆動することによって幅方向に移動する。すなわち、支持部材53が幅方向に移動することで四個の分岐ローラ53が一体的に幅方向に移動する。駆動部の駆動は、本体コントローラ35によって制御される。
【0026】
サイドローラ52は、走行レール4の接続部又は分岐部等に配置されているガイド(図示せず)に接触可能に設けられている。補助ローラ54は、走行部50の前後に設けられている、三つ一組のローラ群である。補助ローラ54は、走行部50が加減速等により前後に傾いたときに、LDM59及び給電コア57等が走行レール4の上面部43に配置された磁気プレート46に接触することを防止するために設けられている。傾斜ローラ55は、前後方向から傾いた状態で配置されている。傾斜ローラ55は、走行部50がカーブ区間を走行する際の遠心力による傾きを防止するために設けられている。
【0027】
給電コア57は、走行部50の前後に、左右方向にLDM59を挟むように配置されている。走行レール4に配置された給電部45との間で非接触による給電と、非接触による各種信号の送受信を行う。給電コア57は本体コントローラ35との間で信号をやりとりする。LDM59は、走行部50の前後に設けられている。LDM59は、電磁石によって走行レール4の上面部43に配置された磁気プレート46との間で、走行又は停止のための磁力を発生させる。
【0028】
走行部50は、後段にて詳述する搬送コントローラ90によって本体コントローラ35を介した状態で制御される。具体的には、搬送コントローラ90からの指令が本体コントローラ35に送信され、当該指令を受信した本体コントローラ35が走行部50を制御する。
【0029】
本体コントローラ(制御部)35は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等からなる電子制御ユニットである。本体コントローラ35は、搬送車6における各種動作を制御する。具体的には、本体コントローラ35は、走行部50と、横送り部24と、θドライブ26と、昇降駆動部28と、昇降台30と、を制御する。本体コントローラ35は、例えばROMに格納されているプログラムがRAM上にロードされてCPUで実行されるソフトウェアとして構成することができる。本体コントローラ35は、電子回路等によるハードウェアとして構成されてもよい。本体コントローラ35は、走行レール4の給電部45(フィーダー線)等を利用して、搬送コントローラ90(図1参照)と通信を行う。
【0030】
図4に示されるように、走行レール4は、ストレート区間4Sとカーブ区間4Cとによって構成されている。図2図4に示されるように、本実施形態では、カーブ区間4Cにおける走行レール4の内部空間Sには、下面部41の内面41aを転動するカーブ外側の走行ローラ51が通過する通過領域Rの上方且つ上面部43の下方に、下面部41から所定量浮き上がった走行ローラ51が接触する浮き上がり規制部81が、走行レール4の延在方向に沿って配置されている。浮き上がり規制部81は、側面部42の内面42aを基端として内部空間S側に先端まで延びている。言い換えれば、浮き上がり規制部81の先端は、側面部42の内面42aよりも内部空間S側に突出している。
【0031】
浮き上がり規制部81は、例えば、ステンレス鋼等から形成されており、側面部42と一体的に形成されてもよいし、側面部42に対しブラケット等を介して取り付けられてもよい。なお、上記の所定量は、走行ローラ51の浮き上がり量に対する、走行レール4と走行部50の各部との衝突状態とに応じて適宜設定される。すなわち、走行ローラ51が浮き上ったとしても走行レール4と走行部50の各部とが衝突しない場合、そのときの浮き上がり量は許容される。
【0032】
なお、走行レール4を構成する一対の側面部42,42を平面視した場合において、走行レール4におけるカーブ外側とは、曲線半径の大きい(曲率が小さい)側の側面部42側を意味し、走行レール4におけるカーブ内側とは、曲線半径の小さい(曲率が大きい)側の側面部42側を意味する。また、下面部41、側面部42及び上面部43においては、上記内部空間Sに接する側の面を内面といい、内面とは反対側の面すなわち外部空間に接する側の面を外面という。
【0033】
浮き上がり規制部81は、走行レール4を走行する搬送車の分岐ローラ53に対して幅方向に対向するように設けられている。浮き上がり規制部81の内部空間S側の先端は、図に示されるように、端面81aとして構成されている。端面81aの鉛直方向におけるサイズは、分岐ローラ53の鉛直方向におけるサイズよりも大きい。すなわち、浮き上がり規制部81の端面81aは、分岐ローラ53が転動可能に構成されている。カーブ区間4Cの入口部分及び出口部分(すなわち、ストレート区間4Sにおけるカーブ区間4Cとの境界部)には、テーパ部83が配置されている。テーパ部83も、浮き上がり規制部81と同様に、走行レール4を構成する側面部42に取り付けられている。
【0034】
テーパ部83は、側面部42の内面42aと浮き上がり規制部81の端面81aとを滑らかに接続するテーパ面83aを有している。テーパ面83aの鉛直方向におけるサイズは、分岐ローラ53の鉛直方向におけるサイズよりも大きく、端面81aと略同一である。このようなテーパ部83の構成によって、分岐ローラ53は、側面部42の内面とテーパ面83aと端面81aとを連続的に転動可能となっている。
【0035】
本実施形態では、本体コントローラ35は、走行部50がカーブ区間4Cに進入する前又は進入すると同時に分岐ローラ53を幅方向においてカーブ内側(図5に示される分岐ローラ53の位置)に移動させるように制御する。より詳細には、本体コントローラ35は、駆動部の駆動を制御して、支持部材53を移動させることによって、分岐ローラ53を移動させる。本実施形態では、本体コントローラ35は、幅方向において分岐ローラ53が浮き上がり規制部81の端面81aの位置又は浮き上がり規制部81の端面81aの位置よりも内側に移動させる。
【0036】
上記実施形態の天井搬送車システム1における作用効果について説明する。上記実施形態の天井搬送車システム1では、カーブ区間4Cの走行レール4の内部空間Sに、浮き上がり規制部81が配置されている。浮き上がり規制部81は、カーブ外側の走行ローラ51が下面部41から所定量浮き上がったときに接触する部位であり、走行レール4の延在方向に沿って配置されている。これにより、カーブ区間4Cにおいてカーブ外側の走行ローラ51が下面部41から所定量よりも大きく浮き上がることが防止される。したがって、走行部50がカーブ区間4Cを走行する際の走行ローラ51の浮き上がり量を抑制することができる。これにより、例えば、走行部50(例えば、LDM59、給電コア57)及び走行レール4(例えば、給電部45、磁気プレート46)の少なくとも一方が損傷することを抑制できる。
【0037】
上記実施形態の天井搬送車システム1では、浮き上がり規制部81は、側面部42から内部空間S側に突出するように構成されている。これにより、走行レール4の側面部42を利用して、容易に浮き上がり規制部81を構成することができる。
【0038】
上記実施形態の天井搬送車システム1では、走行レール4を走行する搬送車6の分岐ローラ53と浮き上がり規制部81とは、幅方向において互いに対向するように設けられ、浮き上がり規制部81には、分岐ローラ53に対向する端面81aが形成されており、ストレート区間4Sにおける内部空間Sには、平面視において端面81aと側面部42とを接続するテーパ面83aが設けられている。これにより、平面視において搬送車6の分岐ローラ53が浮き上がり規制部81の端面81aよりも外側に位置したままカーブ区間4Cの入口に到達したとしても、分岐ローラ53は浮き上がり規制部81の延在方向における端部に衝突することなく、テーパ面83aによって浮き上がり規制部81の端面81aにスムーズに誘導される。これにより、分岐ローラ53及び浮き上がり規制部81の少なくとも一方が損傷することを防止できる。
【0039】
上記実施形態の天井搬送車システム1では、本体コントローラ35は、走行部50がカーブ区間4Cに進入する前又は進入すると同時に分岐ローラ53を幅方向においてカーブ内側に移動させるように制御してもよい。これにより、分岐ローラ53と浮き上がり規制部81との衝突によって分岐ローラ53及び浮き上がり規制部81の少なくとも一方が損傷することをより確実に防止できる。
【0040】
以上、一実施形態について説明したが、本発明の一側面は、上記実施形態に限られない。発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0041】
上記実施形態では、走行ローラ51が転動する転動面が走行レール4の下面部41として構成されている例を挙げて説明したが、これに限定されない。走行ローラ51が転動する転動面は、走行レール4の下面よりも上方に別途形成されていてもよい。
【0042】
上記実施形態及び変形例では、搬送車6がカーブ区間4Cに侵入する前に分岐ローラ53を幅方向に移動させる例を挙げて説明したが、このような制御は必須ではなく、また、搬送車6が分岐ローラ53を備えることも必須ではない。
【0043】
上記実施形態及び変形例では、浮き上がり規制部81が走行レール4の側面部42に取り付けられている例を挙げて説明したがこれに限定されない。例えば、浮き上がり規制部81は、走行レール4の上面部43等から吊り下げられる等、下面部41の内面41aを転動するカーブ外側の走行ローラ51が通過する通過領域Rの上方に設けられる構成とすればよい。
【0044】
上記実施形態及び変形例では、浮き上がり規制部81が、下面部41の内面41aを転動するカーブ外側の走行ローラ51が通過する通過領域Rの上方に設けられている例を挙げて説明したが、この構成に加えて、下面部41の内面41aを転動するカーブ内側の走行ローラ51が通過する通過領域の上方にも設けられてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1…天井搬送車システム、4…走行レール、4C…カーブ区間、4S…ストレート区間、6…天井搬送車(搬送車)、7…本体部、8…吊下部、10…物品(被搬送物)、35…本体コントローラ、41…下面部(転動部)、42…側面部、43…上面部、50…走行部、51…走行ローラ(走行車輪)、53…分岐ローラ、81…浮き上がり規制部、81a…端面、83…テーパ部、83a…テーパ面、G…スリット部、R…通過領域、S…内部空間。
図1
図2
図3
図4
図5