(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】純水製造装置
(51)【国際特許分類】
C02F 1/44 20230101AFI20240501BHJP
B01D 61/12 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
C02F1/44 H
B01D61/12
C02F1/44 A
(21)【出願番号】P 2022182175
(22)【出願日】2022-11-14
【審査請求日】2023-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】港 康晴
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-149207(JP,A)
【文献】特開2001-137668(JP,A)
【文献】実開昭63-054493(JP,U)
【文献】特開2001-239134(JP,A)
【文献】特開2013-215679(JP,A)
【文献】特開2022-135710(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22
B01D 61/00-71/82
C02F 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
逆浸透膜を2本以上配置した逆浸透膜システムを備えた純水製造装置であって、
前記逆浸透膜システムに被処理水を供給する給水ポンプと、
前記逆浸透膜システムの前段又は後段に
設けられ、前記逆浸透膜システムの
処理水の流量及び前記逆浸透膜システムの濃縮水の流量を検知する検知手段
と、
制御手段
と、を備
え、
前記制御手段は、
前記給水ポンプの送水量が前記検知手段の検出値に応じた値になるように、前記給水ポンプの出力を制御するとともに、通水する前記逆浸透膜の本数を制御し、これにより、前記逆浸透膜システムにおける前記逆浸透膜の膜面有効圧力を調整する、純水製造装置。
【請求項2】
前記制御手段は
前記給水ポンプをインバータ制御可能となっている、請求項1に記載の純水製造装置。
【請求項3】
前記逆浸透膜システムの前記濃縮水の流量を調整可能なコントロール弁を
さらに備え、前記制御手段は、前記
検知手段による
前記濃縮水の流量の検出値にもとづいて前記コントロール弁の開度を調整可能となっている、請求項2に記載の純水製造装置。
【請求項4】
前記逆浸透膜システムが、2~6本の逆浸透膜が充填された構造、又は1~6本の逆浸透膜が充填された複数の逆浸透膜ベッセルによる構造である、請求項1~3のいずれか1項に記載の純水製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、逆浸透膜システムを備えた純水製造装置に関し、特に使用水量などに追従して流量が変動可能な逆浸透膜システムを備えた純水製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体等の電子産業分野で用いられている超純水は、例えば、
図1に示すように前処理装置2、一次純水装置3、及び二次純水装置(サブシステム)4といった3段の装置で構成された超純水製造装置1で原水を処理することにより製造されている。具体的には、前処理装置2では、原水Wの濾過、凝集沈殿、精密濾過膜などによる前処理が施され、主に懸濁物質が除去される。
【0003】
一次純水装置3は、例えば、前処理水W0のタンク11と、給水ポンプ11Aと、逆浸透膜システム12と、紫外線(UV)酸化装置13と、再生型イオン交換装置(混床式又は4床5塔式など)14と、膜式脱気装置15とを有する。なお、16は予熱器である。ここで前処理水W0中の電解質、微粒子、生菌等の大半の除去を行うとともに有機物を分解する。
【0004】
サブシステム4は、例えば、前述した一次純水装置3で製造された一次純水W1を貯留するサブタンク21と、このサブタンク21に貯留された一次純水W1を送給する給水ポンプ22と、この一次純水W1を処理する紫外線酸化装置24と、白金族金属触媒樹脂塔25と、膜式脱気装置26と、逆浸透膜システム27と、非再生型混床式イオン交換装置28と、膜濾過装置としての限外濾過(UF)膜29とで構成されている、なお、23は熱交換器である。このサブシステム4では、紫外線酸化装置24で一次純水W1中に含まれる微量の有機物(TOC成分)を紫外線により酸化分解し、この紫外線の照射により生じた過酸化水素を白金族金属触媒樹脂塔25で分解し、その後段の膜式脱気装置26で混入しているDO(溶存酸素)などの溶存ガスを除去する。続いて逆浸透膜システム27及び非再生型イオン交換装置28で処理することで、残留した炭酸イオン、有機酸類、アニオン性物質、さらには金属イオンやカチオン性物質を除去する。そして、限外濾過(UF)膜29で微粒子を除去して超純水(二次純水)W2とし、これを送給管30からユースポイント5に供給して、未使用の超純水は返送管31からサブタンク21に還流する。
【0005】
上述したような超純水製造装置1において、逆浸透膜システム12を構成する逆浸透膜は、
図17に示すような特性を有する。すなわち、逆浸透膜では、膜面有効圧力((給水量+濃縮水量)/2-処理水)と各種除去対象物質(ここではホウ素)の除去率とには相関性があり、膜面有効圧力が低くなると、各種除去対象物質の除去率が低くなる傾向を示すことが知られている。ここで各種除去対象物質の除去に最適な膜面有効圧力は、逆浸透膜の種類によって異なるが、顕著さの差異はあるがいずれも膜面有効圧力が低くなると、各種除去対象物質の除去率が低くなる傾向を示す。
【0006】
この特性を考慮し、安定な水質の処理水を常時供給するために、逆浸透膜システム12において処理水水量が略一定になるように構成・制御されている。具体的には、(処理水水量が一定)=(膜面有効圧力が一定)となるようにする。ただし長期的な運転状況によってはRO膜の閉塞や劣化によりその関係は変化するため、運転管理上の調整が必要である。
【0007】
ところで、
図2に概略的に示す純水製造装置41は、前処理水W0を貯留する第一のタンク42と第一の給水ポンプ43と逆浸透膜システム44と、逆浸透膜処理システム44の処理水WRを第二のタンク45に送水する供給ライン48Aと、サブシステムに一次純水W1を供給する第二の給水ポンプ46と、浸透膜処理システム44の処理水WRを第一のタンク42へ返送する返送ライン49Aと、逆浸透膜処理システム44の濃縮水W3の流路50とを備える。なお、48B,49Bは流量調整自動弁である。この純水製造装置41では、ユースポイント(POU)47の使用量の最大値の一次純水W1を製造して、第二のタンク45に供給し、余剰水を循環利用している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、純水製造装置41は、逆浸透膜システム44に送水する第一の給水ポンプ43は送水量が一定(110%)であるので、常に一定量の電力を消費している。そして、ユースポイント(POU)47での使用水量が0~80%の範囲で変動して水を使用しなくなっても、返送ライン49Aから第一のタンク42へ処理水WRを90%返送することで循環利用している。なお、濃縮水W3は20%で一定とする。近年、CO2削減や省エネルギー化の取り組みが推進されており、純水製造装置41において、電力消費量が多い逆浸透膜システム44に前処理水W0を供給する第一の給水ポンプ43の運転エネルギーを削減することは重要である。
【0009】
そこで、ユースポイント(POU)47での第一の給水ポンプ43の送水量をインバータ等で低減させることが考えられるが、単にユースポイント(POU)47での要給水量に応じて第一の給水ポンプ43の送水量を低減させると、膜面有効圧力の低下につながり、逆浸透膜の処理水の水質が悪化してしまう、という問題点がある。
【0010】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、使用水量などに追従して流量が変動しても水質を安定させることができ、省エネを達成可能な逆浸透膜システムを備えた純水製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的に鑑み、本発明は、逆浸透膜を2本以上配置した逆浸透膜システムを備えた純水製造装置であって、前記逆浸透膜システムの前段又は後段に該逆浸透膜システムの逆浸透膜の膜面有効圧力を算出可能な指標を検知する検知手段を設け、この検知手段の検出値に基づいて、前記逆浸透膜システムにおける通水する逆浸透膜の本数を制御して膜面有効圧力を調整する制御手段を備えた、純水製造装置を提供する(発明1)。
【0012】
かかる発明(発明1)によれば、純水製造装置の造水供給先(ユースポイント)の要求水量に応じて、純水製造装置の逆浸透膜システムに供給する被処理水の水量を増減させる。逆浸透膜システムに供給される被処理水の流量が変化する条件下で処理水水質を安定的に維持するためには、膜面有効圧力を一定範囲内で運転する必要がある。膜面有効圧力が一定のとき、逆浸透膜1本あたりから得られる水量は通水する逆浸透膜の本数に依存する。したがって、逆浸透膜の膜面有効圧力を算出可能な指標を検出して、被処理水の水量が増減したときに膜面有効圧力が所定の範囲内となるように並列に設けた逆浸透膜の通水本数を増減させることで、水質を安定させることができる。
【0013】
上記発明(発明1)においては、前記純水製造装置は、前記逆浸透膜システムに被処理水を供給する給水ポンプを有し、前記制御手段は該給水ポンプをインバータ制御可能となっていることが好ましい(発明2)。
【0014】
かかる発明(発明2)によれば、逆浸透膜システムに被処理水を供給する給水ポンプのインバータ制御と逆浸透膜の通水本数の制御とを両方行うことにより、膜面有効圧力を所定の範囲内に好適に維持することができ、給水ポンプの稼働エネルギーを効率化することができる。
【0015】
また、上記発明(発明2)においては、前記逆浸透膜システムの濃縮水の水量を検知する流量計を有するとともに該濃縮水の流量を調整可能なコントロール弁を有し、前記制御手段は、前記流量計による濃縮水の流量の検出値に基づいて前記コントロール弁の開度を調整可能となっていることが好ましい(発明3)。
【0016】
上記発明(発明3)によれば、被処理水の水量が増減したときに並列に設けた逆浸透膜の通水本数を増減させるとともに濃縮水の流量を調整することにより、膜面有効圧力が所定の範囲内となるようにさらに好適に制御することができる。
【0017】
さらに、上記発明(発明1~3)においては、前記逆浸透膜システムが、2~6本の逆浸透膜が充填された構造、又は1~6本の逆浸透膜が充填された複数の逆浸透膜ベッセルによる構造であることが好ましい(発明4)。
【0018】
上記発明(発明4)によれば、逆浸透膜システムは、複数の逆浸透膜が並列に配置された構造であっても、複数の系列の逆浸透膜ベッセルが並列に配置された構造のであってもいずれにも好適に適用することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の純水製造装置によれば、逆浸透膜を2本以上並列に配置した逆浸透膜システムを備えた純水製造装置において、逆浸透膜システムの逆浸透膜の膜面有効圧力を算出可能な指標を検知する検知手段を設けて逆浸透膜システムの膜面有効圧力の増減を検知し、この検出値に基づいて、前記逆浸透膜システムの通水する逆浸透膜の本数を制御するものであるので、逆浸透膜システムで処理する被処理水の水量が増減した際に、逆浸透膜の膜面有効圧力が所定の範囲内となるように逆浸透膜の通水本数を増減させることで、水質を安定させることができる。さらに、逆浸透膜システムで処理する被処理水の水量に応じて給水ポンプの稼働エネルギーを効率化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の純水装置を適用可能な超純水製造装置を示すフロー図である。
【
図2】純水製造装置の要部を概略的に示すフロー図である。
【
図3】本発明の第一の実施形態による純水製造装置の要部を概略的に示すフロー図である。
【
図4】
図3に示す純水製造装置の運転工程の一例を示すフロー図である。
【
図5】
図3に示す純水製造装置の運転工程の他例を示すフロー図である。
【
図6】本発明の第二の実施形態による純水製造装置を概略的に示すフロー図である。
【
図7】
図6に示す実施形態による純水製造装置の運転工程の一例を示すフロー図である。
【
図8】
図6に示す実施形態による純水製造装置の運転工程の他例を示すフロー図である。
【
図9】実施例1における逆浸透膜処理システムを示すフロー図である。
【
図10】実施例1における給水圧力(膜面有効圧力)と透過水圧力との経時変化を示すグラフである。
【
図11】実施例1における濃縮水流量と透過水流量との経時変化を示すグラフである。
【
図12】実施例1における逆浸透膜の本数の変化と透過水の水質(電気伝導度)との関係を示すグラフである。
【
図13】実施例2における逆浸透膜処理システムを示すフロー図である。
【
図14】実施例2おける給水圧力(膜面有効圧力)と透過水圧力との経時変化を示すグラフである。
【
図15】実施例2における濃縮水流量と透過水流量との経時変化を示すグラフである。
【
図16】実施例2における経過時間と透過水の水質とを示すグラフである。
【
図17】逆浸透膜の膜面有効圧力とホウ素除去率の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の逆浸透膜システムを備えた純水製造装置について添付図面を参照して説明する。
【0022】
〔第一の実施形態〕
(純水製造装置)
図3は、本発明の第一の実施形態による逆浸透膜システムを備えた純水製造装置の要部を概略的に示している。本発明は、逆浸透膜システムの制御にその特徴を有するので、本実施形態においては、逆浸透膜システム12を中心に図示する。
図3に示す純水製造装置において、逆浸透膜システム12は、3本の逆浸透膜12A,12B,12Cを並列に配置した構成となっていて、給水ポンプ11Aは、純水製造装置3における一次純水W1の要求量に応じた量の被処理水(前処理水)W4を供給するように図示しない制御手段により制御可能となっている。また、給水ポンプ11Aの前段には被処理水W4の流量計32が設けられていて、この流量計32の検出値に基づいて制御手段により逆浸透膜12A,12B,12Cの通水本数を制御可能となっている。なお、121は逆浸透膜12A,12B,12Cの濃縮水W6の流路である。
【0023】
(逆浸透膜システム)
本実施形態において、逆浸透膜システム12は、逆浸透膜が2本以上並列に配置されたものである。この逆浸透膜システム12は、2~6本の逆浸透膜が並列に充填された逆浸透膜による構成であってもよいし、1~6本の逆浸透膜が充填された逆浸透膜ベッセルを複数並列に配置した構成であってもよい。この逆浸透膜システム12は、基本的に同一の逆浸透膜により構成される。
【0024】
上述したような逆浸透膜システム12を構成する逆浸透膜12A,12B,12Cとしては、特に制限はなく、本分野で公知の逆浸透膜装置を用いることができ、酢酸セルロース、脂肪族ポリアミド系或いは芳香族ポリアミド系又はこれらの複合系からなる各種有機高分子膜或いはセラミック膜等が使用でき、極超低圧逆浸透膜、超低圧逆浸透膜、低圧又は中圧逆浸透膜のいずれも適用することができるが、低圧逆浸透膜又は超低圧逆浸透膜に好適に適用することができる。
【0025】
(逆浸透膜システムを備えた純水製造装置の制御方法)
このような逆浸透膜システム12を備えた純水製造装置における逆浸透膜システム12の制御方法について、
図3~
図5に基づいて説明する。
【0026】
まず、基本状態は、
図3に示すように処理水W5の水量(造水量)を80m
3/hとして逆浸透膜システム12の濃縮水W6を20m
3/hで固定した場合であり、給水ポンプ11Aから、100m
3/hの被処理水W4を、逆浸透膜システム12を構成する3本の逆浸透膜12A,12B,12Cにそれぞれ供給する。このとき逆浸透膜12A,12B,12Cの膜面有効圧力は0.7MPaであり、この膜面有効圧力で好適なイオン除去率を発揮すると想定する。
【0027】
そして、ユースポイントの要求水量(処理水W5)が40m
3/hに減少した場合、
図4に示すように給水ポンプ11Aの出力を60m
3/hに低減するように制御し、この被処理水W4を、逆浸透膜システム12を構成する3本の逆浸透膜12A,12B,12Cにそれぞれ供給する。このとき逆浸透膜システム12の濃縮水W6は20m
3/hであるので、逆浸透膜12A,12B,12Cの膜面有効圧力は0.35MPaとなる。この場合には、逆浸透膜12A,12B,12Cの膜面有効圧力の低下により処理水W5の水質が悪化する。
【0028】
そこで、本実施形態においては、ユースポイントの要求水量(処理水W5)が40m
3/hに減少した場合、
図5に示すように1本の逆浸透膜(逆浸透膜12C)への通水を停止する。この状態で給水ポンプ11Aの出力を60m
3/hに低減するように制御し、この被処理水W4を逆浸透膜システム12に供給すると、逆浸透膜12A,12Bにそれぞれ供給される。このとき逆浸透膜システム12の濃縮水W6は20m
3/hであるので、逆浸透膜12A,12Bの膜面有効圧力は0.52MPaとなる。このように逆浸透膜12A,12Bの膜面有効圧力の低下を抑制することにより、処理水W5の水質の悪化を防止することができる。
【0029】
上述したような制御において、膜本数の逆浸透膜の切り替えを判断する方法としては、本実施形態においては、被処理水W4の流量計32を設けたが、これに限らず処理水W5の流量計、被処理水W4/処理水W5/濃縮水W6の圧力計による膜面有効圧力の算出、処理水5の水質(電気伝導率、TOC)計測手段などを採用することができる。また本数切り替えのタイミングは、逆浸透膜の膜種により任意に設定すればよい。さらに、発停手段は自動弁や系列毎の給水ポンプとすればよい。
【0030】
〔第二の実施形態〕
(純水製造装置)
本実施形態は、基本的には、前述した
図2に示す純水製造装置41と同じ構成を有する。すなわち、純水製造装置41は、前処理水W0を貯留する第一のタンク42と第一の給水ポンプ43と複数本並列で逆浸透膜を有する逆浸透膜システム44と、逆浸透膜処理システム44の処理水WRを第二のタンク45に送水する供給ライン48Aと、ユースポイント47へ一次純水W1を供給する第二の給水ポンプ46と、浸透膜処理システム44の処理水WRを第一のタンク42へ返送する返送ライン49Aと、逆浸透膜処理システム44の濃縮水W3の流路50とを備える。なお、48B,49Bは流量調整自動弁である。
【0031】
(純水製造装置の制御方法)
このような純水製造装置41における逆浸透膜システム44の制御方法について、
図6~
図8に基づいて説明する。
【0032】
(純水製造装置の従来の運転制御方法)
まず、従来の制御は、
図6に示すように逆浸透膜システム44の処理水量(造水量)を90m
3/hとして逆浸透膜システム44の濃縮水W3を20m
3/hで固定した場合、第一の給水ポンプ43から110m
3/hの被処理水としての前処理水W0を逆浸透膜システム44に供給する。これにより、逆浸透膜システム44の処理水WRの造水量は90m
3/hで一定となる。
【0033】
このとき、ユースポイント47の使用量が80m3/hである場合、80m3/hの処理水WRを供給ライン48Aから第二のタンク45に送水する一方、10m3/hの処理水WRを返送ライン49Aから第一のタンク42に10m3/hを返送する(図中の(1))。
【0034】
次に、ユースポイント47の使用量が55m3/hに減少した場合、55m3/hの処理水WRを供給ライン48Aから第二のタンク45に送水する一方、返送ライン49Aから第一のタンク42に35m3/hを返送する(図中の(2))。
【0035】
さらに、ユースポイント47の使用量が40m3/hに減少した場合、40m3/hの処理水WRを供給ライン48Aから第二のタンク45に送水する一方、返送ライン49Aから第一のタンク42に50m3/hを返送する(図中の(3))。
【0036】
このような従来の運転制御方法では、ユースポイント47の使用量の減少に伴い、逆浸透膜システム44を構成する逆浸透膜の膜面有効圧力が低下するので、処理水WRの水質が悪化する懸念が生じる。さらに、第一の給水ポンプ43の稼働エネルギーも過剰となる。
【0037】
(純水製造装置の第一の流量変動運転制御方法)
図7に示すように第一の流量変動運転制御の初期状態は、前述した「基本的運転制御」の(1)と同じである。
【0038】
すなわち、逆浸透膜システム44の処理水量(造水量)を90m3/hとして逆浸透膜システム44の濃縮水W3を20m3/hで固定した場合、第一の給水ポンプ43から110m3/hの被処理水W0を逆浸透膜システム44に供給する。これにより、逆浸透膜システム44の処理水WRの造水量は90m3/hとなる。
【0039】
このとき、ユースポイント47の使用量を80m3/hである場合、処理水WRを供給ライン48Aから第二のタンク45に80m3/hで送水する一方、返送ライン49Aから第一のタンク42に10m3/hを返送する(図中の(1))。
【0040】
次に、ユースポイント47の使用量が55m3/hに減少した場合、第一の給水ポンプ43から90m3/hの被処理水W0を逆浸透膜システム44に供給する。この結果、逆浸透膜システム44の濃縮水は20m3/hであるので、処理水WRの造水量は75m3/hとなる。この際、前述した第一の実施形態のように逆浸透膜システムを構成する逆浸透膜の通水本数を減少させる。そして、処理水WRを供給ライン48Aから第二のタンク45に55m3/h送水する一方、返送ライン49Aから第一のタンク42に15m3/hを返送する(図中の(2))。
【0041】
さらに、ユースポイント47の使用量が40m3/hに減少した場合、第一の給水ポンプ43から80m3/hの被処理水W0を逆浸透膜システム44に供給する。この結果、処理水WRの造水量は60m3/hとなる。この際、前述した第一の実施形態のように逆浸透膜システムを構成する逆浸透膜の通水本数を減少させる。そして、処理水WRを供給ライン48Aから第二のタンク45に40m3/h送水する一方、返送ライン49Aから第一のタンク42に20m3/hを返送する(図中の(1))。
【0042】
このような第一の流量変動運転制御方法では、ユースポイント47の使用量の減少に伴う逆浸透膜システム44を構成する逆浸透膜の膜面有効圧力の低下を減少させることができるので、処理水WRの水質が悪化を抑制することができる。しかしながら、逆浸透膜の通水本数の増減による制御であるので、段階的な制御となるため、微調整はできない。
【0043】
(純水製造装置の第二の流量変動運転制御方法)
図8に示すように第二の流量変動運転制御では、第二のタンク45に水位計51を設け、この水位計の計測値に基づいて図示しない制御手段により流量調整自動弁48B,49Bの開度を制御可能となっているとともに、処理水WRの圧力を計測する圧力計52を設けるとともに第一の給水ポンプ43にインバータ53を設け、この圧力計52の計測値に基づいて第一の給水ポンプ43の出力をインバータ制御可能1となっている。
【0044】
この第二の流量変動運転制御の初期状態は、ユースポイント47の使用量が80m3/hである場合、第一の給水ポンプ43から100m3/hの被処理水W0を逆浸透膜システム44に供給する。この逆浸透膜システム44の濃縮水は20m3/hで固定とする。したがって、逆浸透膜システム44の処理水WRの造水量は80m3/hとなる。この実施態様では流量調整自動弁49Bは閉鎖して、返送ライン49Aから第一のタンク42へは返送しない(0m3/h)(図中の(1))。なお、返送ライン49Aは、純水製造装置のトラブル時や給水の水質の急激な変動時の緊急時用のラインとして利用する。
【0045】
次に、ユースポイント47の使用量が55m3/hに減少した場合、第一の給水ポンプ43から75m3/hの被処理水W0を逆浸透膜システム44に供給する。これにより逆浸透膜システム44の造水量を55m3/hとするとともに、前述した第一の実施形態のように逆浸透膜システムを構成する逆浸透膜の通水本数を減少させる。そして、55m3/hの処理水WRを供給ライン48Aから第二のタンク45に送水する。このとき、造水量の減少と逆浸透膜の通水本数の変動と流量調整自動弁48Bの開度に応じて処理水WRの圧力が変動するので、その圧力を圧力計52で計測し、ほぼ一定となるように第一の給水ポンプ43をインバータ53で制御する。なお、流量調整自動弁49Bは閉鎖して、返送ライン49Aから第一のタンク42へは返送しない(0m3/h)(図中の(2))。
【0046】
さらに、ユースポイント47の使用量が40m3/hに減少した場合、第一の給水ポンプ43から60m3/hの被処理水W0を逆浸透膜システム44に供給する。これにより処理水WRの造水量を40m3/hとするとともに、前述した第一の実施形態のように逆浸透膜システムを構成する逆浸透膜の通水本数を減少させる。そして、40m3/hの処理水WRを供給ライン48Aから第二のタンク45に送水する。このとき、造水量の減少と逆浸透膜の通水本数の変動と流量調整自動弁48Bの開度に応じて処理水WRの圧力が変動するので、その圧力を圧力計52で計測し、ほぼ一定となるように第一の給水ポンプ43をインバータ53で制御する。なお、流量調整自動弁49Bは閉鎖して、返送ライン49Aから第一のタンク42へは返送しない(0m3/h)(図中の(3))。
【0047】
この第二の流量変動運転制御方法では、ユースポイント47の使用量の減少に伴う逆浸透膜システム44を構成する逆浸透膜の膜面有効圧力の低下を減少させることができるので、処理水WRの水質が悪化を抑制することができる。しかも、逆浸透膜システム44の処理水WRの圧力に応じて、第一の給水ポンプ43の出力を微調整することができるので、ユースポイント47での使用水量に応じて、第一の給水ポンプ43の動力を最小限に抑制することができる。このように逆浸透膜の膜面有効圧力の維持と、水質の変化を最小限にする運転制御とを組み合わせることで、より最適に逆浸透膜システム44の運転制御が可能となる。
【0048】
以上、本発明について、前記各実施形態に基づき説明してきたが、本発明は前記実施形態に限らず種々の変形実施が可能である。例えば、逆浸透膜システムの前後の構成は特に制限はなく、流量可変式の種々の構成の純水製造装置に適用可能である。
【実施例】
【0049】
以下、具体的実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0050】
〔実施例1〕
(逆浸透膜の本数切り替え試験)
図9に示すように、給水ポンプ61と逆浸透膜62A及び62Bとを備えた逆浸透膜システム62と、これら逆浸透膜62A、62Bの濃縮水を処理する逆浸透膜63とを備え、逆浸透膜63の下流側にサンプリング点64を設けた試験装置を用意した。この試験装置において、ユースポイントでの要求水量の変動を想定して、給水ポンプ61の給水圧力及び逆浸透膜システム62の透過水(処理水)の流量を変動させ、これに伴い逆浸透膜62A、62B、並びに逆浸透膜63への通水・停止を制御した。具体的には、流量の多い順に逆浸透膜62A、62B及び逆浸透膜63(3本)、逆浸透膜62A及び逆浸透膜63(2本)、逆浸透膜62Aのみ(1本)に通水本数を変動させて4000秒の通水試験を行った。なお、逆浸透膜62A、62B及び逆浸透膜63は、1本のベッセルに1本の逆浸透膜をそれぞれ充填したものであり、約0、4~1.0MPaの膜面有効圧力で高い性能を発揮するものを使用した。
【0051】
この通水試験における透過水の流量及び濃縮水の流量を
図10に、給水圧力及び透過水圧力を
図11に、逆浸透膜システム62の透過水の水質として電気伝導率(EC)を測定した結果を逆浸透膜の通水本数の変化とともに
図12にそれぞれ示す。
【0052】
図10~
図12から明らかなとおり、逆浸透膜62A及び62Bと逆浸透膜63の膜面有効圧力(≒給水圧力(本実施例では濃縮水量一定、透過水≒0Maのため))をほぼ0.8~0.5MPaの範囲に制御することができることがわかる。また、処理水(透過水)の電気伝導率は、安定的に低く維持することができた。なお、逆浸透膜の本数を増加させた際に一時的に増加しているが、これは逆浸透膜の通水停止時に透過水側に保持していた水の水質が悪化しており、この逆浸透膜の通水再開時に悪化した保持水が放出されるためと考えられ、再開前に洗浄することが望ましいことがわかる。
【0053】
〔実施例2〕
(流量変動による逆浸透膜の処理水の影響確認試験)
図13に示す試験装置を用意した。この試験装置は、
図9に示す装置において、給水ポンプ61にインバータ65を設けるとともに、逆浸透膜63の下流側に流量調整弁66を設け、透過水圧力及び濃縮水流量が一定となるように制御し、通水本数を3本に固定して処理した。
【0054】
この試験における透過水の流量及び濃縮水の流量を
図14に、給水圧力及び透過水圧力を
図15に、サンプリング点64で測定した透過水の水質として電気伝導率(EC)、Na濃度、SiO2濃度、TOC濃度及びホウ素濃度を測定した結果を逆浸透膜の通水本数の変化とともに
図16にそれぞれ示す。
【0055】
図14~
図16から明らかなとおり、透過水流量及び給水圧力の低下に伴い、水質が低下しており、透過水水質が給水圧力(膜面有効圧力)に依存することがわかる。したがって、実施例1の制御を適用することにより、より安定した水質での運転が可能であるといえる。
【符号の説明】
【0056】
1 超純水製造装置
2 前処理装置
3 一次純水装置
4 二次純水装置(サブシステム)
5 ユースポイント
11 タンク
11A 給水ポンプ
12 逆浸透膜システム
12A,12B,12C 逆浸透膜
32 流量計
41 純水製造装置
42 第一のタンク
43 第一の給水ポンプ
44 逆浸透膜システム
45 第二のタンク
46 第二の給水ポンプ
47 ユースポイント
48A 供給ライン
48B 流量調整自動弁
49A 返送ライン
49B 流量調整自動弁
50 濃縮水流路
51 水位計
52 圧力計
53 インバータ
61 給水ポンプ
62 逆浸透膜システム
62A,62B,63 逆浸透膜
64 サンプリング点
65 インバータ
66 流量調整弁
W 原水
W0 前処理水(被処理水)
W1 一次純水
W2 二次純水(超純水)
W3,W6 濃縮水
W4 被処理水
W5 処理水
W6 濃縮水
W5,WR 逆浸透膜システムの処理水
【要約】
【課題】 使用水量などに追従して流量が変動しても水質を安定させることができ、省エネを達成可能な逆浸透膜システムを備えた純水製造装置を提供する。
【解決手段】 純水製造装置3において、逆浸透膜システム12は、3本の逆浸透膜12A,12B,12Cを並列に配置した構成となっていて、給水ポンプ11Aは、純水製造装置3における被処理水W5の要求量に応じた量の前処理水W0を供給するように制御手段により制御可能となっている。給水ポンプ11Aの前段には流量計32が設けられていて、この流量計32の検出値に基づいて制御手段により逆浸透膜12A,12B,12Cの通水本数を制御可能となっている。
【選択図】
図3