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特許7480843ピークトラッキング装置、ピークトラッキング方法およびピークトラッキングプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】ピークトラッキング装置、ピークトラッキング方法およびピークトラッキングプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/86 20060101AFI20240501BHJP
【FI】
G01N30/86 M
G01N30/86 E
G01N30/86 F
G01N30/86 G
G01N30/86 D
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022527541
(86)(22)【出願日】2021-03-31
(86)【国際出願番号】 JP2021014052
(87)【国際公開番号】W WO2021240993
(87)【国際公開日】2021-12-02
【審査請求日】2022-10-31
(31)【優先権主張番号】P 2020093335
(32)【優先日】2020-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100125704
【弁理士】
【氏名又は名称】坂根 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【弁理士】
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】野田 陽
【審査官】小澤 理
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-324029(JP,A)
【文献】国際公開第2019/176658(WO,A1)
【文献】特表2003-530572(JP,A)
【文献】国際公開第2018/211714(WO,A1)
【文献】特開平04-212059(JP,A)
【文献】野田陽,クロマトグラムの保持時間アラインメントアルゴリズム,島津評論,2013年,Vol.69, No.3-4,265-269
【文献】ライフィクス株式会社,多サンプルMS 高速定量解析ソフトウェア MS Quant Manager,カタログ,2014年,[online], [2021.06.04検索], インターネット, <URL: https://ja.reifycs.com/files/BrochureMsQuantManager.pdf>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/86
G01N 21/17
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Scopus
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なる複数の分析条件データを分析装置に与えることによって得られた複数の測定データに基づいて、複数のクロマトグラムを取得するクロマトグラム取得部と、
各クロマトグラムに含まれる各ピークが、試料に含まれる一の物質に所属する確率を示す所属確率に基づくスコアデータを算出するスコア算出部と、
前記スコア算出部により算出された前記スコアデータを前記複数の分析条件データと対比してディスプレイに表示するスコア表示部、または、前記スコア算出部により算出された前記スコアデータを前記複数の分析条件データと対比して出力する出力部を備えるピークトラッキング装置。
【請求項2】
前記スコア算出部は、前記複数の分析条件データと各分析条件データに基づいて得られた各物質の保持時間との回帰分析を行うことにより、前記所属確率を算出する、請求項1に記載のピークトラッキング装置。
【請求項3】
前記ピークトラッキング装置は、さらに、
前記回帰分析により得られた前記所属確率の分布を表示する分布表示部、を備える、請求項2に記載のピークトラッキング装置。
【請求項4】
前記スコア算出部は、ベイズ推論を用いることにより回帰関数に誤差を与えたときの誤差分布から取得される尤度、および、各ピークが選択される確率に基づいて前記所属確率を算出する、請求項1に記載のピークトラッキング装置。
【請求項5】
前記スコア算出部は、試料に含まれる物質ごとにスコアデータを算出する、請求項1に記載のピークトラッキング装置。
【請求項6】
互いに異なる複数の分析条件データを分析装置に与えることによって得られた複数の測定データに基づいて、複数のクロマトグラムを取得する工程と、
各クロマトグラムに含まれる各ピークが、試料に含まれる一の物質に所属する確率を示す所属確率に基づくスコアデータを算出する工程と、
算出された前記スコアデータを前記複数の分析条件データと対比してディスプレイに表示する工程、または、算出された前記スコアデータを前記複数の分析条件データと対比して出力する工程を含むピークトラッキング方法。
【請求項7】
前記スコアデータを算出する工程は、試料に含まれる物質ごとスコアデータを算出する、請求項6に記載のピークトラッキング方法。
【請求項8】
互いに異なる複数の分析条件データを分析装置に与えることによって得られた複数の測定データに基づいて、複数のクロマトグラムを取得する処理、
各クロマトグラムに含まれる各ピークが、試料に含まれる一の物質に所属する確率を示す所属確率に基づくスコアデータを算出する処理、
算出された前記スコアデータを前記複数の分析条件データと対比してディスプレイに表示する処理、または、算出された前記スコアデータを前記複数の分析条件データと対比して出力する処理、をコンピュータに実行させるピークトラッキングプログラム。
【請求項9】
複数の分析条件データを分析装置に与えることによって得られた複数の測定データに基づいて、複数のクロマトグラムを取得するクロマトグラム取得部と、
各クロマトグラムに含まれる各ピークが、試料に含まれる一の物質に所属する確率を示す所属確率に基づくスコアデータを算出するスコア算出部と、
前記スコア算出部により算出された前記スコアデータをディスプレイに表示するスコア表示部、または、前記スコア算出部により算出された前記スコアデータを出力する出力部を備え、
前記スコア算出部は、前記複数の分析条件データと各分析条件データに基づいて得られた各物質の保持時間との回帰分析を行うことにより、前記所属確率を算出する、ピークトラッキング装置。
【請求項10】
複数の分析条件データを分析装置に与えることによって得られた複数の測定データに基づいて、複数のクロマトグラムを取得するクロマトグラム取得部と、
各クロマトグラムに含まれる各ピークが、試料に含まれる一の物質に所属する確率を示す所属確率に基づくスコアデータを算出するスコア算出部と、
前記スコア算出部により算出された前記スコアデータをディスプレイに表示するスコア表示部、または、前記スコア算出部により算出された前記スコアデータを出力する出力部を備え、
前記スコア算出部は、ベイズ推論を用いることにより回帰関数に誤差を与えたときの誤差分布から取得される尤度、および、各ピークが選択される確率に基づいて前記所属確率を算出する、ピークトラッキング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピークトラッキング装置、ピークトラッキング方法およびピークトラッキングプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
分析装置において取得される測定データから、試料のクロマトグラムを取得することができる。ピークの分離度を高くすることを目的として、あるいは、分析時間を短くすることを目的として、分析条件データの最適化を図るメソッドスカウティングが行われる。
【0003】
メソッドスカウティングを行うとき、異なる分析条件データに基づいて得られる異なるクロマトグラム間で同じ物質由来のピークを決定するピークトラッキングを行う必要がある。ピークトラッキングを行うためには、例えば、ピークの面積値、ピークの光学スペクトル、または、ピークのMSスペクトルの類似度などが用いられる。
【0004】
また、分析条件データと分析測定データとの間で回帰分析を行うことにより、メソッドスカウティングに有用な情報を与えることができる。下記非特許文献1においては、保持時間の回帰分析が行われている。
【0005】
【文献】“Ternary isocratic mobile phase optimization utilizing resolution Design space based on retention time and peak width modeling”、Journal of Chromatography A、Volume 1273 95P~104P、2013年1月18日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
核酸医薬品、ペプチド医薬品など比較的分子量の大きな薬剤の合成において、構造の似通った類縁物が副産物として生成されることが知られている。このような類縁物は光学スペクトルも似通っているため、光学スペクトル類似度を利用してもピークトラッキングが充分に行えない場合がある。また、このような類縁物はMSスペクトルも似た形状になることが多く、ピーク毎に特異なクロマトグラムを出力するm/z値を探索するために膨大な労力が必要とされる。ピーク面積値を用いる方法によっても、組み合わせを絞りきれない場合が多く、ピークトラッキングが充分に行えない場合がある。
【0007】
本発明の目的は、クロマトグラムに含まれるピークを同定するために有用な情報をユーザに提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一局面に従うピークトラッキング装置は、複数の分析条件データを分析装置に与えることによって得られた複数の測定データに基づいて、複数のクロマトグラムを取得するクロマトグラム取得部と、各クロマトグラムに含まれる各ピークが、試料に含まれるいずれの物質に所属するかを示す所属確率に基づくスコアデータを算出するスコア算出部と、スコア算出部により算出されたスコアデータをディスプレイに表示するスコア表示部とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、クロマトグラムに含まれるピークを同定するために有用な情報をユーザに提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は本実施の形態に係る分析システムの全体図である。
図2図2は本実施の形態に係るコンピュータの構成図である。
図3図3は本実施の形態に係るコンピュータの機能ブロック図である。
図4図4は異なる分析条件データから得られたクロマトグラムを示す図である。
図5図5は本実施の形態に係るピークトラッキング方法を示すフローチャートである。
図6図6は溶媒濃度と保持時間との関係を示す図である。
図7図7は物質Aの保持時間回帰曲線の予測分布を示す図である。
図8図8は物質Bの保持時間回帰曲線の予測分布を示す図である。
図9図9は物質Cの保持時間回帰曲線の予測分布を示す図である。
図10図10は物質Dの保持時間回帰曲線の予測分布を示す図である。
図11図11は物質Eの保持時間回帰曲線の予測分布を示す図である。
図12図12は溶媒濃度“0.25”におけるカテゴリカル分布確率のヒストグラムを示す図である。
図13図13は溶媒濃度“0.5”におけるカテゴリカル分布確率のヒストグラムを示す図である。
図14図14は溶媒濃度“0.75”におけるカテゴリカル分布確率のヒストグラムを示す図である。
図15図15は溶媒濃度“1.0”におけるカテゴリカル分布確率のヒストグラムを示す図である。
図16図16はディスプレイに表示される分析支援画面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態に係るピークトラッキング装置、方法およびプログラムの構成について説明する。
【0012】
(1)分析システムの全体構成
図1は、本実施の形態に係る分析システム5の全体図である。分析システム5は、コンピュータ1および液体クロマトグラフ3を備える。コンピュータ1および液体クロマトグラフ3は、ネットワーク4を介して接続される。ネットワーク4は、例えばLAN(Local Area Network)である。
【0013】
コンピュータ1は、液体クロマトグラフ3に分析条件を設定する機能、液体クロマトグラフ3における測定結果を取得し、測定結果を分析する機能などを備える。コンピュータ1には、液体クロマトグラフ3を制御するためのプログラムがインストールされる。
【0014】
液体クロマトグラフ3は、ポンプユニット、オートサンプラユニット、カラムオーブンユニットおよび検出器ユニットなどを備える。液体クロマトグラフ3は、また、システムコントローラを備える。システムコントローラは、コンピュータ1からネットワーク4経由で受信した制御指示に従って、液体クロマトグラフ3を制御する。システムコントローラは、液体クロマトグラフ3の測定結果のデータを、ネットワーク4経由でコンピュータ1に送信する。
【0015】
(2)コンピュータ(ピークトラッキング装置)の構成
図2は、コンピュータ1の構成図である。コンピュータ1は、本実施の形態においてはパーソナルコンピュータが利用される。コンピュータ1は、CPU(Central Proccessing Unit)101、RAM(Random Access Memory)102、ROM(Read Only Memory)103、ディスプレイ104、操作部105、記憶装置106、通信インタフェース107、および、デバイスインタフェース108を備える。
【0016】
CPU101は、コンピュータ1の制御を行う。RAM102は、CPU101がプログラムを実行するときにワークエリアとして使用される。ROM103には、制御プログラムなどが記憶される。ディスプレイ104は、例えば液晶ディスプレイである。操作部105は、ユーザの操作を受け付けるデバイスであり、キーボード、マウスなどを含む。ディスプレイ104がタッチパネルディスプレイで構成され、ディスプレイ104が操作部105としての機能を備えていても良い。記憶装置106は、各種プログラムおよびデータを記憶する装置である。記憶装置106は、例えばハードディスクである。通信インタフェース107は、他のコンピュータおよびデバイスと通信を行うインタフェースである。通信インタフェース107は、ネットワーク4に接続される。デバイスインタフェース108は、各種の外部デバイスにアクセスするインタフェースである。CPU101は、デバイスインタフェース108に接続された外部デバイス装置を介して記憶媒体109にアクセスすることができる。
【0017】
記憶装置106には、ピークトラッキングプログラムP1、分析条件データAP、測定データMD、クロマトグラムCG、保持時間データRTD、および、スコアデータSDが記憶される。ピークトラッキングプログラムP1は、液体クロマトグラフ3を制御するためのプログラムである。ピークトラッキングプログラムP1は、液体クロマトグラフ3に対して分析条件を設定する機能、液体クロマトグラフ3から測定結果を取得し、クロマトグラムCGを生成するなど、測定結果を分析する機能などを備える。分析条件データAPは、液体クロマトグラフ3に設定する分析条件を記述したデータであり、複数の分析パラメータを含む。測定データMDは、液体クロマトグラフ3から取得した測定結果のデータである。保持時間データRTDは、クロマトグラムCGに含まれる物質の保持時間を示すデータである。本実施の形態においては、分析される試料に複数の物質が含まれており、クロマトグラムCGには複数の物質のピークが含まれる。これにより、保持時間データRTDには各クロマトグラムCGに対して複数の保持時間を示すデータが含まれる。スコアデータSDは、クロマトグラムに含まれる各ピークが、試料に含まれるいずれの物質に所属するかを示す所属確率に基づいて算出されるデータである。
【0018】
図3は、コンピュータ1の機能ブロック図である。制御部200は、CPU101が、RAM102をワークエリアとして使用し、ピークトラッキングプログラムP1を実行することにより実現される機能部である。制御部200は、分析管理部201、クロマトグラム取得部202、スコア算出部203、および、分析支援情報表示部204を備える。
【0019】
分析管理部201は、液体クロマトグラフ3の制御を行う。分析管理部201は、ユーザによる分析条件データAPの設定および分析処理の開始指示を受けて、液体クロマトグラフ3に対する分析処理の指示を行う。ユーザは、溶媒濃度、溶媒混合比、グラジエント初期値、グラジエント勾配、カラム温度などの分析パラメータの設定値の組み合わせを、分析条件として設定する。ユーザは、これら分析パラメータの組み合わせを複数セット設定する。例えば、溶媒濃度を少しずつ変化させた分析パラメータの組み合わせや、カラム温度を少しずつ変化させた分析パラメータの組み合わせなどを分析条件として設定する。ユーザは、このように複数の分析条件データAPを作成し、同一の試料に対して複数の分析条件データAPに基づく分析処理を行う。
【0020】
分析管理部201は、また、液体クロマトグラフ3から測定データMDを取得する。上記のように、ユーザは、複数の分析条件データAPに基づく分析処理を行う。分析管理部201は、複数の分析条件データAPに対応する複数の測定データMDを取得する。
【0021】
クロマトグラム取得部202は、測定データMDに基づいてクロマトグラムCGを取得する。クロマトグラム取得部202は、取得したクロマトグラムCGを記憶装置106に保存する。上記のように、分析管理部201は、複数の分析条件データAPに対応する複数の測定データMDを取得する。クロマトグラム取得部202は、複数の測定データMDに対応する複数のクロマトグラムCGを取得する。
【0022】
スコア算出部203は、クロマトグラム取得部202が取得した複数のクロマトグラムCGに基づいて、スコアデータSDを算出する。本実施の形態において液体クロマトグラフ3において分析される試料は、複数の物質を含んでいる。スコア算出部203は、クロマトグラムCGに含まれる各ピークが、試料に含まれるいずれの物質に所属するかを示す所属確率を算出する。
【0023】
図4は、2つの異なる分析条件データAPに基づいて得られた2つのクロマトグラムCG1,CG2を示す図である。クロマトグラムCG1,CG2は、同一の試料について得られた測定データMDに基づいて取得される。図4を参照すれば分かるように、クロマトグラムCG1,CG2では、分析条件データAPの違いに起因して各ピークの保持時間が異なっている。図において点線で結ばれているピークは、同一の物質に由来するピークである。スコア算出部203は、クロマトグラムCG1,CG2に含まれる各ピークが、試料に含まれるいずれの物質に所属するかを示す所属確率を算出する。
【0024】
具体的には、スコア算出部203は、分析条件データAPに含まれる分析パラメータである溶媒濃度と、クロマトグラムCGから得られる各ピークの保持時間データRTDとを用いて回帰分析を行う。本実施の形態においては、スコア算出部203は、ベイズ推論を利用して保持時間データRTDの回帰を行う。そして、スコア算出部203は、保持時間データRTDの回帰分析結果に基づき、クロマトグラムCGに含まれる各ピークが、試料に含まれるいずれの物質に所属するかを示す所属確率を算出する。そして、スコア算出部203は、算出した所属確率に基づいてスコアデータSDを生成する。
【0025】
分析支援情報表示部204は、ディスプレイ104に分析支援のための情報表示を行う。分析支援情報表示部204は、分布表示部205およびスコア表示部206を備える。分布表示部205は、スコア算出部203における回帰分析の結果をディスプレイ104に表示する。スコア表示部206は、スコア算出部203が算出したスコアデータSDをディスプレイ104に表示する。
【0026】
(3)ピークトラッキング方法
次に、本実施の形態に係るコンピュータ1(ピークトラッキング装置)において実行されるピークトラッキング方法について説明する。図5は、本実施の形態に係るピークトラッキング方法を示すフローチャートである。クロマトグラフにおける各物質の保持時間は、溶媒濃度、pH、カラム温度などの分析パラメータに対して回帰できることが知られている。本実施の形態のピークトラッキング方法においては、保持時間の回帰と同時に、クロマトグラムに含まれる各ピークの所属を決定する。回帰と同時に所属問題を解く場合、解が一意になるとは限らないため、本実施の形態においては、ベイズ推論による事後分布算出によって、解としてあり得る分布を取得する。
【0027】
図5に示す処理を開始する前に、予め、ユーザが操作部105を操作し、複数の分析条件の設定を行う。このようなユーザの設定操作を受けて、分析管理部201は、記憶装置106に複数の分析条件データAPを保存する。
【0028】
次に、図5に示すステップS101において、分析管理部201が、複数の分析条件データAPを液体クロマトグラフ3に設定する。具体的には、分析管理部201は、液体クロマトグラフ3のシステムコントローラに対して、複数の分析条件データAPを設定する。これに応じて、液体クロマトグラフ3において、設定された複数の分析条件データAPに基づいて、同一の試料に対して複数回の分析処理が実行される。液体クロマトグラフ3において、複数の分析条件データAPに対応して複数の測定データMDが取得される。
【0029】
次に、ステップS102において、分析管理部201は、液体クロマトグラフ3から複数の測定データMDを取得する。分析管理部201は、記憶装置106に、取得した複数の測定データMDを保存する。
【0030】
次に、ステップS103において、クロマトグラム取得部202が、ステップS102において記憶装置106に保存された複数の測定データMDを取得し、取得した複数の測定データMDから複数のクロマトグラムCGを取得する。
【0031】
次に、ステップS104において、スコア算出部203は、ステップS103において取得された複数のクロマトグラムCGを取得し、各クロマトグラムCGに含まれる各ピークの保持時間データRTDを取得する。
【0032】
図6は、分析条件データAPとステップS104において取得された保持時間データRTDとの関係を示す図である。図6において、横軸は、分析条件データAPに含まれる分析パラメータのうち、溶媒濃度を示す。図6において、縦軸は、保持時間を示す。図6においては、5つの分析条件データAPに対応して、5種類の溶媒濃度に関して取得された保持時間がグラフされている。溶媒濃度は、“0.0”、“0.25”、“0.5”、“0.75”、“1.0”の5種類であるが、ここでは特に溶媒濃度の単位は意味を持たないものとする。
【0033】
5種類の溶媒濃度に対して、それぞれ5つの保持時間がプロットされている。この5つの保持時間は、試料に含まれる物質A~Eの5つのピークの保持時間である。図6においては、5つの保持時間の点を、5種類の記号で示している。具体的には、保持時間の短い方から順に、四角形、星形、三角形、円形および十字の5種類の記号で示している。しかし、実際には、溶媒濃度によって保持時間の順序が入れ替わることもあるため、図6における記号は便宜上である。つまり、同じ記号が同じ物質由来のピークの保持時間であるとは限らない。ここで、濃度“0.0”における5つの保持時間を、保持時間の短い方から順に物質A~Eと対応付ける。つまり、濃度“0.0”における四角形が物質A、星型が物質B、三角形が物質C、円形が物質D、十字が物質Eであるとする。本発明の主目的は、濃度“0.25”、“0.5”、“0.75”、“1.0”における5つの記号で表される保持時間に対応するピークが、物質A~のいずれに所属するかの所属確率を示すことである。
【0034】
次に、ステップS105において、スコア算出部203は、以下の数式(1)により、各ピークがいずれの物質に所属するかを示す所属確率(事後分布)を求める。
【0035】
【数1】
【0036】
数式(1)において、cは濃度である。図6に示した例では、濃度cは、“0.0”、“0.25”、“0.5”、“0.75”、“1.0”の5種類である。数式(1)において、iは、ピークのIDである。図6に示した例では、保持時間の小さい方から順にi=0~4のIDが付与される。つまり、図6において、四角形で示されるピークにi=0、星形で示されるピークにi=1、三角形で示されるピークにi=2、円形で示されるピークにi=、十字で示されるピークにi=4のIDが付与される。
【0037】
p(i|c)は、カテゴリカル分布によってピークが選ばれる確率を示す。p(i|c)は、濃度cにおいて、i=0~4のピークが選ばれる確率である。つまり、p(i|c)は、各ピークが物質A~Eのいずれに所属するかを示す事後分布を算出するための事前分布となる。本実施の形態においては、説明を簡単にするために、p(i|c)は、iに関わらず一定であるとする。ただし、ピークのスペクトルや面積を参照することにより、濃度cにおいて、ピークが選ばれる確率として適当な値を設定することができる。例えば、物質A~Eのピークの大小関係やスペクトルの類似度などを参照することで、p(i|c)に適当な値を設定することができる。
【0038】
数式(1)において、xは、濃度c、ID=iにおける保持時間である。数式(1)において、f(c)は、濃度cに対する保持時間の回帰関数である。N(u,σ)は、平均u、標準偏差σの条件下におけるxの確率を示す。つまり、数式(1)において、関数Nは、xの尤度を示す。
【0039】
スコア算出部203は、想定されるノイズ量(標準偏差σ)や回帰関数f(c)内部の回帰係数に適当な事前分布を与えて、ベイズ推定を行う。ノイズ量(標準偏差σ)は、液体クロマトグラフ3の繰り返し処理の精度などから、おおよその値が適切に与えられる。また、回帰関数f(c)が2次多項式の対数となっている場合であれば、ほとんどの物質で2次の係数は非常に小さくなることが知られているので、経験的に適当な正規分布を設定することができる。あるいは、既にピークトラックが完了している過去の事例に基づいて、WAICなどの情報量規準を用いて、適当な値を設定することができる。1次の係数に関しては、溶媒濃度の変化に対して一般的な傾向が知られている。図6の例においても、すべての物質A~Eについて、溶媒濃度に対して保持時間が概ね右下がりの傾向を示している。従って、より好ましくは経験的にt分布などの緩やかな事前分布を与えることができる。以上のように、尤度と事前分布から、各ピークが物質A~Eに所属する事後分布を得ることができる。なお、本実施の形態においては、NUTSサンプリングによるベイズ推論を用いる。これにより、i(ID)について周辺化により尤度が算出される。NUTSサンプリングを用いることは一例であり、他のベイズ理論の手法を用いることもできる。
【0040】
図7図11は、図6で示す保持時間について、ベイズ推論により算出された予測分布(所属確率の分布)を示す図である。図7は、物質Aに関する予測分布である。つまり、濃度“0.0”において四角形で示す物質Aのベイズ推論による予測分布を示す図である。図8は、物質Bに関する予測分布である。つまり、濃度“0.0”において星形で示す物質Bのベイズ推論による予測分布を示す図である。図9は、物質Cに関する予測分布である。つまり、濃度“0.0”において三角形で示す物質Cのベイズ推論による予測分布を示す図である。図10は、物質Dに関する予測分布である。つまり、濃度“0.0”において円形で示す物質Dのベイズ推論による予測分布を示す図である。図11は、物質Eに関する予測分布である。つまり、濃度“0.0”において十字で示す物質Eのベイズ推論による予測分布を示す図である。
【0041】
図7図11において、各ピークが物質A~Eに所属する確率が、濃淡で示されている。色の濃い部分は、所属確率が高いことを示し、色が薄くなる程、所属確率が低くなることを示している。図11に示すように、十字で示されるピークについては、いずれの濃度においても物質Eである確率が高いことが分かる。また、図8および図9に示すように、濃度“0.25”以上において星形で示されるピークは、物質Bである確率とともに、物質Cである確率も、ある程度有していることが分かる。また、図8および図9に示すように、濃度“0.25”以上において三角形で示されるピークは、物質Cである確率とともに、物質Bである確率も、ある程度有していることが分かる。
【0042】
カテゴリカル分布はサンプリング時には周辺化されているので、実際には、別途カテゴリカル分布の算出が必要である。スコア算出部203は、事後分布のサンプリングを用いて、以下の数式(2)で示す尤度L(c)を算出する。
【0043】
【数2】
【0044】
そして、スコア算出部203は、ステップS106において、以下の数式(3)を用いて、各ピークが物質A~Eのいずれに所属するかを示すスコアデータSDを計算する。スコア算出部203は、スコアデータSDを記憶装置106に保存する。
【0045】
【数3】
【0046】
図12図15は、物質Cに関して、ベイズ推論を行った場合のカテゴリカル分布確率のヒストグラムを示す図である。スコア算出部203は、事後分布のサンプリングを用いて、上記で示す尤度L(c)を計算し、カテゴリカル分布確率のヒストグラムを生成する。
【0047】
図12は、濃度“0.25”において、物質Cに関するカテゴリカル分布確率のヒストグラムを示す図である。図12において横軸はカテゴリカル分布の確率であり、縦軸は、カテゴリカル分布確率のヒストグラム(累積値)である。つまり、複数の分析条件データAPについて、カテゴリカル分布確率を算出し、その結果を集計したヒストグラムである。図に示すように、確率1.0において、i=2の累積値が最も大きくなっている。また、確率1.0において、i=3の累積値が次に多くなっている。これにより、濃度“0.25”においては、i=2のピークが物質Cに所属する確率が非常に高くなっていることが分かる。また、濃度“0.25”においては、i=3のピークが物質Cに所属する確率も、ある程度有していることが分かる。
【0048】
図12において、グラフの上部に示される割合は、各ピークの所属確率のスコアデータSDを示す。スコアデータSDは、所属確率が0.8以上となる頻度の占有率を示す値であり、右端からi=0~4の場合のスコアデータSDを示している。図の例では、i=0のピークのスコアデータSDが0、i=1のピークのスコアデータSDが0.02、i=2のピークのスコアデータSDが0.69、i=3のピークのスコアデータSDが0.3、i=4のピークのスコアデータSDが0であることを示している。
【0049】
図13は、濃度“0.5”において、物質Cに関するカテゴリカル分布確率のヒストグラムを示す図である。図に示すように、確率1.0において、i=2の累積値が最も大きくなっている。また、確率1.0において、i=3の累積値が次に多くなっている。これにより、濃度“0.5”においても、i=2のピークが物質Cに所属する確率が非常に高くなっていることが分かる。また、濃度“0.5”においても、i=3のピークが物質Cに所属する確率も、ある程度有していることが分かる。また、濃度“0.5”において、i=1のピークが物質Cに所属する確率もわずかであるが有していることが分かる。
【0050】
図13において、グラフの上部に示される割合は、図12と同様、各ピークの所属確率のスコアデータSDであり、確率が0.8以上となる頻度の占有率を示す値である。図の例では、i=0のピークのスコアデータSDが0.05、i=1のピークのスコアデータSDが0.09、i=2のピークのスコアデータSDが0.61、i=3のピークのスコアデータSDが0.24、i=4のピークのスコアデータSDが0であることを示している。
【0051】
図14は、濃度“0.75”において、物質Cに関するカテゴリカル分布確率のヒストグラムを示す図である。図15は、濃度“1.0”において、物質Cに関するカテゴリカル分布確率のヒストグラムを示す図である。濃度“1.0”、“0.75”においても、i=2のピークが物質Cに所属する確率が非常に高くなっていることが分かる。
【0052】
図14の例では、i=0のピークのスコアデータSDが0.14、i=1のピークのスコアデータSDが0.12、i=2のピークのスコアデータSDが0.59、i=3のピークのスコアデータSDが0.16、i=4のピークのスコアデータSDが0であることを示している。図15の例では、i=0のピークのスコアデータSDが0.14、i=1のピークのスコアデータSDが0.19、i=2のピークのスコアデータSDが0.51、i=3のピークのスコアデータSDが0.15、i=4のピークのスコアデータSDが0であることを示している。なお、図11図14に示した例では、スコアデータSDとしてカテゴリカル分布の確率が0.8以上となる頻度の占有率を利用したが、これは一例である。スコアデータSDは、各ピークがいずれの物質に所属するかを示す所属確率に基づいて生成されるものであればよい。言い換えると、スコアデータSDは、各ピークがいずれの物質に所属するかを示す所属確率に相関するものであればよい。
【0053】
次に、ステップS107において、スコア表示部206が、スコアデータSDをディスプレイ104に表示する。続いて、ステップS108において、分布表示部205が、ステップS105で算出した所属確率の分布(予測分布)をディスプレイ104に表示する。図16は、ディスプレイ104に表示された分析支援画面を示す図である。図16で示す例では、分析支援画面には、物質Cの所属確率のスコアデータSD、および、物質Cに関する所属確率の分布が表示されている。
【0054】
図16において、“物質Cの所属スコア”は、スコアデータSDに基づいて表示される。物質Cの所属スコアは、図12図15で示したヒストグラムの上部に表示されたスコアと同様である。また、物質Cに関する所属確率の分布は、図9に示したものと同様である。図16では、物質Cに関する分析支援情報を表示させる場合を例示したが、物質A、B、D、Eについても同様である。
【0055】
このように、本実施の形態のコンピュータ1は、各クロマトグラムに含まれる各ピークが、試料に含まれるいずれの物質に所属するかを示す所属確率に基づくスコアデータSDをディスプレイ104に表示する。これにより、ユーザは、ピークの所属確率を確認することが可能である。また、本実施の形態のコンピュータ1は、回帰分析により得られた所属確率の分布をディスプレイ104に表示する。これにより、ユーザは、ピークの所属の妥当性を視覚的に確認することができる。
【0056】
(4)請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。上記の実施の形態では、液体クロマトグラフ3が分析装置の例である。また、上記の実施の形態では、コンピュータ1がピークトラッキング装置の例である。
【0057】
請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する種々の要素を用いることもできる。
【0058】
(5)他の実施の形態
上記実施の形態においては、コンピュータ1は、スコア算出部203が算出したスコアデータSDをディスプレイ104に表示させる。他の実施の形態としては、コンピュータ1が、スコア算出部203が算出したスコアデータSDを、他の装置または他のプログラム、プロセスなどに出力するようにしてもよい。例えば、AQBD(Analytical Quality by Design)を目的とした処理を実行する装置に、スコアデータSDを出力するようにしてもよい。この場合、コンピュータ1の制御部200は、図2に示した機能ブロックに加えて、更に出力部を備える。
【0059】
例えば、ピークの保持時間や分離度を回帰分析することにより、保持時間や分離度のデザインスペースを取得するプログラムまたは装置がある。これらデザインスペースを処理するプログラムまたは装置に、本実施の形態において算出したスコアデータSDを出力するようにしてもよい。例えば、スコアデータSDを入力した装置において、デザインスペースとスコアデータSDとを関連付けて情報を提示することができる。
【0060】
上記実施の形態においては、本発明の分析装置として、液体クロマトグラフ3を例に説明した。本発明は、他にも、ガスクロマトグラフにも適用可能である。また、上記の実施の形態において、本実施の形態のピークトラッキング装置であるコンピュータ1は、ネットワーク4を介して分析装置である液体クロマトグラフ3に接続される場合を例に説明した。他の実施の形態として、コンピュータ1が、分析装置に内蔵される構成であってもよい。
【0061】
上記実施の形態においては、ピークトラッキングプログラムP1は、記憶装置106に保存されている場合を例に説明した。他の実施の形態として、ピークトラッキングプログラムP1は、記憶媒体109に保存されて提供されてもよい。CPU101は、デバイスインタフェース108を介して記憶媒体109にアクセスし、記憶媒体109に保存されたピークトラッキングプログラムP1を、記憶装置106またはROM103に保存するようにしてもよい。あるいは、CPU101は、デバイスインタフェース108を介して記憶媒体109にアクセスし、記憶媒体109に保存されたピークトラッキングプログラムP1を実行するようにしてもよい。
【0062】
なお、本発明の具体的な構成は、前述の実施形態に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更および修正が可能である。
【0063】
(6)態様
上述した複数の例示的な実施の形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0064】
(第1項)
本発明の一態様に係るピークトラッキング装置は、
複数の分析条件データを分析装置に与えることによって得られた複数の測定データに基づいて、複数のクロマトグラムを取得するクロマトグラム取得部と、
各クロマトグラムに含まれる各ピークが、試料に含まれるいずれの物質に所属するかを示す所属確率に基づくスコアデータを算出するスコア算出部と、
前記スコア算出部により算出された前記スコアデータをディスプレイに表示するスコア表示部と、を備える。
【0065】
クロマトグラムに含まれるピークを同定するために有用な情報をユーザに提供することができる。
【0066】
(第2項)
第1項に記載のピークトラッキング装置において、
前記スコア算出部は、前記複数の分析条件データと各分析条件データに基づいて得られた各物質の保持時間との回帰分析を行うことにより、前記所属確率を算出してもよい。
【0067】
回帰可能な保持時間を利用して、クロマトグラムに含まれるピークを同定するために有用な情報をユーザに提供することができる。
【0068】
(第3項)
第2項に記載のピークトラッキング装置において、
前記ピークトラッキング装置は、さらに、
前記回帰分析により得られた前記所属確率の分布を表示する分布表示部、を備えてもよい。
【0069】
ユーザは、所属確率の分布を参照することで、ピークの同定の妥当性を確認することができる。
【0070】
(第4項)
第2項または第3項に記載のピークトラッキング装置において、
前記スコア算出部は、ベイズ推論を用いることにより回帰関数に誤差を与えたときの誤差分布から取得される尤度、および、各ピークが選択される確率に基づいて前記所属確率を算出してもよい。
【0071】
ベイズ推論により、ピークがいずれの物質に所属するかを示す所属確率を提示可能である。
【0072】
(第5項)
本発明の他の態様に係るピークトラッキング装置は、
複数の分析条件データを分析装置に与えることによって得られた複数の測定データに基づいて、複数のクロマトグラムを取得するクロマトグラム取得部と、
各クロマトグラムに含まれる各ピークが、試料に含まれるいずれの物質に所属するかを示す所属確率に基づくスコアデータを算出するスコア算出部と、
前記スコア算出部により算出された前記スコアデータを出力する出力部と、を備える。
【0073】
スコアデータを他の装置やプログラムにおいて利用可能である。
【0074】
(第6項)
本発明の他の態様に係るピークトラッキング方法は、
複数の分析条件データを分析装置に与えることによって得られた複数の測定データに基づいて、複数のクロマトグラムを取得する工程と、
各クロマトグラムに含まれる各ピークが、試料に含まれるいずれの物質に所属するかを示す所属確率に基づくスコアデータを算出する工程と、
算出された前記スコアデータをディスプレイに表示する工程と、を含む。
【0075】
(第7項)
本発明の他の態様に係るピークトラッキングプログラムは、
複数の分析条件データを分析装置に与えることによって得られた複数の測定データに基づいて、複数のクロマトグラムを取得する処理、
各クロマトグラムに含まれる各ピークが、試料に含まれるいずれの物質に所属するかを示す所属確率に基づくスコアデータを算出する処理、
算出された前記スコアデータをディスプレイに表示する処理、をコンピュータに実行させる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16