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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】検査装置および検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 31/00 20060101AFI20240501BHJP
   G01N 33/18 20060101ALI20240501BHJP
   G01N 27/06 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
G01N31/00 D
G01N33/18 B
G01N27/06 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022543278
(86)(22)【出願日】2021-05-06
(86)【国際出願番号】 JP2021017325
(87)【国際公開番号】W WO2022038838
(87)【国際公開日】2022-02-24
【審査請求日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】P 2020139349
(32)【優先日】2020-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢幡 雅人
(72)【発明者】
【氏名】前田 一真
(72)【発明者】
【氏名】片岡 達哉
(72)【発明者】
【氏名】増田 裕一
(72)【発明者】
【氏名】並河 信寛
(72)【発明者】
【氏名】中森 明興
(72)【発明者】
【氏名】岩間 達也
【審査官】高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/132526(WO,A1)
【文献】特開2012-202895(JP,A)
【文献】特開2015-28452(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 31/00 ー 31/22
G01N 33/00 ー 33/46
G01N 27/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料水が格納された試料管を受け、前記試料水を採取するように構成されたサンプリング部と、
採取した前記試料水を処理する処理部と、
処理された前記試料水の導電性を測定する測定部と、
前記測定部に前記試料水を導入するための流入管と、
前記試料管内の前記試料水を前記測定部に送る駆動力を発生させる送液部と、
前記試料管内にガスを送って加圧するための給気部と、
前記送液部および前記給気部の動作を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記送液部および前記給気部の動作を制御して、前記試料管内を前記ガスで加圧した状態で前記流入管を通じて前記測定部に前記試料水を送る、検査装置。
【請求項2】
前記処理部は、前記試料水を酸化させるための酸化部を含み、
前記制御部は、前記送液部および前記給気部の動作を制御して、前記試料管内の圧力を大気圧より高い圧力に保つ、請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記給気部から前記測定部までの流路にかかる少なくとも一部の圧力を測定する圧力計をさらに備える、請求項1または請求項2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記給気部は、前記試料水の導電性を変化させる物質を前記ガスから除去するフィルタを含む、請求項1~請求項3のうちいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項5】
前記サンプリング部は、前記試料管内に挿入され、前記試料管内の前記試料水を採取するための吸引用ニードルを含み、
前記給気部は、前記試料管内に挿入され、前記試料管内に前記ガスを導入するためのガス用ニードルを含み、
前記ガス用ニードルの長さは、前記吸引用ニードルの長さよりも短い、請求項1~請求項4のうちいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項6】
前記吸引用ニードルと前記ガス用ニードルとを固定するための固定部をさらに備え、
前記サンプリング部は、前記吸引用ニードルに接続された吸引用軟質チューブをさらに含み、
前記給気部は、前記ガス用ニードルに接続されたガス用軟質チューブとをさらに含む、請求項5に記載の検査装置。
【請求項7】
試料水が格納された試料管内にガスを送って加圧するステップと、
前記試料管から前記試料水を採取するステップと、
採取された前記試料水を処理するステップと、
前記試料管内を前記ガスで加圧した状態で、処理された前記試料水の導電性を測定するための測定部に前記試料水を送るステップと、
前記測定部に送られた前記試料水の導電性を測定するステップとを含む、検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、試料水の導電性を測定する検査装置および検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
試料水の性質を示す指標として、試料水の導電性を測定することがある。試料水の導電性は、試料水中に溶解している電解質の割合を示す指標であって、たとえば、試料水中のTOC(Total Organic Carbon:全有機体炭素)量を測定するために利用される。具体的には、試料水中の有機物を酸化させて得られる分解産物によって試料水の導電性が変わるため、試料水の導電性を測定することで分解産物を検出でき、分解産物を検出することでTOC量を測定できる。
【0003】
特許第6556699号公報(特許文献1)には、UV光線で照射しようとするサンプル体積を収納するための測定チャンバと、測定チャンバとUV光線源の間に位置して、測定チャンバの第1の側を密封して閉止するUV透過性窓とを含む、液体の導電性を測定するための装置が開示されている。特許文献1には、測定チャンバ内に存在する液体と接触するように2つの測定電極がエッチングされていることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6556699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
試料水の導電性を測定する場合に、測定電極上で気泡が発生してしまうことがある。測定電極上で気泡が発生すると、測定電極と試料水との接触面積が変化して測定する導電性が不安定になる。
【0006】
そのため、デガッサなどを用いて減圧し試料水中のガスを事前に抜くことで測定電極上に発生する気泡を抑制することが行われている。しかし、デガッサなどにより試料水からガスを抜くと、試料水の導電性自体が変化してしまうことがある。
【0007】
本開示は、電極上に気泡が発生することを防止して、試料水の導電性を安定して測定することを一の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の検査装置は、試料水が格納された容器を受け、試料水を採取するように構成されたサンプリング部と、採取した試料水を処理する処理部と、処理された試料水の導電性を測定する測定部と、測定部に試料水を導入するための流入管と、試料管内の試料水を測定部に送る駆動力を発生させる送液部と、試料管内にガスを送って加圧するための給気部と、送液部および給気部の動作を制御する制御部とを含む。制御部は、送液部および給気部の動作を制御して、試料管内をガスで加圧した状態で流入管を通じて測定部に試料水を送る。
【0009】
本開示の検査方法は、試料水が格納された試料管内にガスを送って加圧するステップと、試料管から試料水を採取するステップと、採取された試料水を処理するステップと、試料管内をガスで加圧した状態で、処理された試料水の導電性を測定するための測定部に試料水を送るステップと、測定部に送られた試料水の導電性を測定するステップとを含む。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、試料管内をガスで加圧した状態で測定部に試料水を送るようにすることで、試料水に対するガスの溶解度を上げることができる。その結果、送液中のガスの発生を防止でき、試料水の導電性を安定して測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】検査装置1の全体構成を説明するための模式図である。
図2】検査装置1に試料管80を取り付ける方法を説明するための図である。
図3】制御部70が実行する検査処理の一例を示したフローチャートである。
図4】変形例1に係る検査装置に試料管12を取り付ける方法を説明するための図である。
図5】変形例1に係る検査装置に試料管12を取り付けた後の状態を説明するための図である。
図6】変形例2に係る検査装置の構成を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0013】
<検査装置1の全体構成>
図1は、検査装置1の全体構成を説明するための模式図である。検査装置1は、試料水中のTOC量(TOCの濃度)を測定するための装置である。検査装置1は、試料水に紫外線を照射することで試料水中の有機物を酸化させる、いわゆる湿式酸化式の検査装置である。
【0014】
図1を参照して、検査装置1は、給気部20と、サンプリング部30と、処理部40と、測定部50と、送液部60と、制御部70とを備える。
【0015】
給気部20は、試料管80内にガスを送って、試料管80内を加圧する。給気部20は、加圧ポンプ22と、ガス用ニードル24とを備える。加圧ポンプ22は、ガスを試料管80内に送る駆動力を発生させる。ガス用ニードル24は、試料管80内に挿入され、加圧ポンプ22よって送られるガスを試料管80内に導入する。加圧ポンプ22とガス用ニードル24とは、チューブT4を介して接続される。加圧ポンプ22は、加圧ポンプ22に接続されたチューブT5を介してガスを取り込む。ガスは、たとえば、大気であるものの、大気とは別の気体であってもよい。
【0016】
サンプリング部30は、試料管80に格納された試料水Sを採取するように構成されている。サンプリング部30は、試料管80内に挿入される吸引用ニードル32を備える。吸引用ニードル32は、試料管80内の試料水Sを吸引するためのニードルであって、チューブT1を介して処理部40に接続される。
【0017】
処理部40は、採取した試料水を処理する。本実施の形態にかかる処理部40は、試料水Sを酸化させるための酸化部42を備える。酸化部42は、UV光源であって、図示していないものの、試料水Sが内部空間を通過する内管と、内管の外周に間隔をあけて配置された外管とを備える。外管と内管との間の放電空間内には、放電ガスが封入されている。放電ガスを励起させることで発生する紫外線は、内管の内部空間に照射される。すなわち、酸化部42は、二重筒型のエキシマランプである。酸化部42の内部空間内を通る試料水Sに紫外線を照射することで、試料水S中の有機物が酸化される。
【0018】
なお、処理部40は、採取した試料水を処理するものであればよく、たとえば、試料水に試薬を添加するための処理を行うものであってもよい。また、酸化部42は、試料水に紫外線を照射することで試料水S中の有機物を酸化するものとしたが、たとえば、酸化剤等を用いて化学的に試料水Sを酸化してもよい。
【0019】
吸引用ニードル32と酸化部42の内管の上流側とは、チューブT1によって接続されている。また、酸化部42の内管の下流側には、チューブT2が接続されている。なお、内管は、試料水Sが通る流路の一部ともいえる。
【0020】
測定部50は、処理部40によって処理された後の試料水Sの導電性を測定する導電率計であって、チューブT2と接続可能な流路を備える。測定部50が備える流路の下流側にはチューブT3が接続されている。すなわち、チューブT2を通過した試料水Sが測定部50内に流入し、測定部50を通過した試料水Sは、チューブT3を通って排出される。たとえば、測定部50は、試料水Sと接触するように測定部50が備える流路上に配置された一対の電極を備え、二端子法で試料水Sの導電率を測定する。なお、測定部50は、試料水の導電性を示す指標を測定するものであればよく、導電率を測定するものに限られない。たとえば、測定部50は、抵抗率を測定するものであってもよい。また、測定部50は、2つの電極を備えるものを例に挙げたが、4つの電極を備え、四探針法、四端子法など他の方法で試料水の導電率を測定するものであってもよい。
【0021】
送液部60は、試料管80内の試料水Sを測定部50に送る駆動力を発生させる。たとえば、送液部60は、ポンプであって、一例として、測定部50の下流側のチューブT3に接続されている。送液部60は、たとえば、測定部50よりも上流側に配置されていてもよい。なお、給気部20を試料管80の上流に配置し、送液部60を測定部50の下流に配置することで、試料管80から測定部50の出口までの流路にかかる圧力を給気部20および送液部60の駆動によって制御できる。
【0022】
制御部70は、検査装置1の全体を制御する。制御部70は、図示していないものの、主たる構成要素として、CPU(Central Processing Unit)と、プログラムおよびデータを格納する記憶部と、通信I/F(Interface)とを有する。各構成要素はデータバスによって相互に接続されている。
【0023】
記憶部は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)およびHDD(Hard Disk Drive)を含む。ROMは、CPUにて実行されるプログラムを格納する。RAMは、CPUにおけるプログラムの実行により生成されるデータ、および通信I/Fを経由して入力されたデータを一時的に格納する。RAMは、作業領域として利用される一時的なデータメモリとして機能できる。HDDは、不揮発性の記憶装置である。また、HDDに代えて、フラッシュメモリなどの半導体記憶装置を採用してもよい。
【0024】
また、ROMに格納されているプログラムは、記憶媒体に格納されて、プログラムプロダクトとして流通されてもよい。または、プログラムは、情報提供事業者によって、いわゆるインターネットなどによりダウンロード可能なプログラムプロダクトとして提供されてもよい。
【0025】
記憶媒体は、DVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)、CD-ROM(compact disc read-only memory)、FD(Flexible Disk)、ハードディスクに限られず、磁気テープ、カセットテープ、光ディスク(MO(Magnetic Optical Disc)/MD(Mini Disc)/DVD(Digital Versatile Disc))、光カード、マスクROM、EPROM(Electronically Programmable Read-Only Memory)、EEPROM(Electronically Erasable Programmable Read-Only Memory)、フラッシュROMなどの半導体メモリなどの固定的にプログラムを担持する媒体としてもよい。また、記録媒体は、プログラムなどをコンピュータが読取可能な非一時的な媒体である。
【0026】
制御部70は、試料管80内をガスで加圧した状態で測定部50に試料水Sが送られるように、給気部20および送液部60の動作を制御する。このように、試料管80内をガスで加圧した状態で測定部50に試料水Sを送るようにすることで、試料水Sに対するガスの溶解度を上げることができる。その結果、送液中のガスの発生を防止でき、試料水Sの導電性を安定して測定できる。
【0027】
また、制御部70は、処理部40を制御して処理部40に試料水Sを処理させ、測定部50からの検出値を受信して試料水Sの導電性を測定する処理を行う。
【0028】
なお、制御部70は、試料管80内の圧力を大気圧よりも高い状態に維持するようにしてもよい。本実施の形態において、酸化部42により試料水Sが酸化されて分解産物が生成されるため、測定部50までの流路内でのガス濃度が上昇する。そこで、試料管80内の圧力を大気圧よりも高い状態にして試料水Sに対するガスの溶解度を上げておくことで、流路内でのガス濃度が上昇したとしても、送液中にガスが発生することを防止できる。
【0029】
<検査装置1に試料管80を取り付ける方法>
図2は、検査装置1に試料管80を取り付ける方法を説明するための図である。なお、以下では、重力方向を下とし、その反対方向を上とする。図2を参照して、ガス用ニードル24は、ガス用ニードル24のガスの噴出口が上を向くように、検査装置1の筐体10に固定されている。同様に、吸引用ニードル32は、吸引用ニードル32の吸引口が上を向くように、検査装置1の筐体10に固定されている。また、筐体10内には、図示していないものの、加圧ポンプ22、処理部40、測定部50、送液部60、制御部70、およびこれらをつなぐチューブT1~チューブT5が配置されている。
【0030】
試料管80は、本体82と、キャップ84とからなる。キャップ84は、ゴム製である。そのため、キャップ84にガス用ニードル24および吸引用ニードル32を貫通させることができる。
【0031】
たとえば、ユーザは、吸引用ニードル32およびガス用ニードル24がキャップ84を貫通するように、試料管80のキャップ84を下に向けた状態で、試料管80を上から下に向けて筐体10に押し付けることで、試料管80を検査装置1に取り付けることができる。
【0032】
このように、本実施の形態において、吸引用ニードル32およびガス用ニードル24を筐体10に固定させることで、ユーザは、試料管80を上から下に向けて筐体10に押し付けることで、試料管80を検査装置1に取り付けることができる。試料管80を取り付けるためには、重力方向に試料管80を動かす動作で済むため、試料管80の取り付けが容易である。
【0033】
ガス用ニードル24は、吸引用ニードル32よりも長く、試料管80を検査装置1に取り付けたときに、ガス用ニードル24のガスの噴出口が試料水Sの液面よりも上に位置する長さである。一方、吸引用ニードル32は、ガス用ニードル24よりも短く、試料管80を検査装置1に取り付けたときに、吸引用ニードル32の試料水Sの吸引口が試料水S内に位置する長さである。
【0034】
ガス用ニードル24の長さを、試料管80を検査装置1に取り付けたときに、ガス用ニードル24のガスの噴出口が試料水Sの液面よりも上に位置するような長さにすることで、試料管80内で気泡が発生することを防止できる。試料管80内での気泡の発生を防ぐことで、当該気泡が吸引用ニードル32を通って、測定部50に送られてしまうことを防止できる。また、試料管80内での気泡の発生を防ぐことで、気体と試料水Sとの接触面積を下げることができ、コンタミの発生を抑えることができる。
【0035】
<検査処理>
図3は、制御部70が実行する検査処理の一例を示したフローチャートである。検査処理は、たとえば、制御部70のCPUがプログラムを実行することで実現する処理である。
【0036】
S100において、制御部70は、検査の開始指示を受け付けたか否かを判定し、受け付けていない場合(S100においてNO)、検査処理を終了する。開始指示は、たとえば、ユーザが、試料管80を筐体10に取り付けて、図示していないスタートスイッチなどを操作することで受け付けられる。制御部70は、開始指示を受け付けたと判定した場合(S100においてYES)、S120の処理を実行する。
【0037】
S120において、制御部70は、試料管80内にガスを送って加圧する。より具体的には、制御部70は、制御部70は、給気部20に対してガスを試料管80内に送るように指示して、加圧ポンプ22を駆動させる。このとき、給気部20によって試料管80内に送られるガスの流量は、試料管80から処理部40に送り出される試料水Sの流量よりも多い。なお、S120において、制御部70は、試料管80から処理部40に試料水Sを送らないようにするために、送液部60を駆動させないようにしてもよい。
【0038】
S140において、制御部70は、試料水Sを採取する。より具体的には、制御部70は、吸引用ニードル32の吸引口から試料水Sが吸引用ニードル32内に吸引されるように送液部60を駆動させる。このとき、吸引用ニードル32内に吸引される試料水Sの流量は、給気部20によって試料管80内に送られるガスの流量と同程度になるように制御されることが好ましい。このように制御することで、S120で加えた圧力を維持することができる。
【0039】
S160において、制御部70は、採取された試料水Sを処理する。より具体的には、制御部70は、処理部40に対して、試料水Sを酸化するための処理を実行するように指示する。本実施の形態においては、制御部70は、処理部40の酸化部42に対して紫外線の照射を開始することを指示する。なお、S160の処理は、採取した試料水SがチューブT1と通過して酸化部42に到達したタイミングで開始される。また、S160の処理を実行している間、制御部70は、試料水Sが酸化部42に留まるように、給気部20(加圧ポンプ22)の駆動と、送液部60の駆動とを停止させることが好ましい。
【0040】
S180において、制御部70は、試料管80内をガスで加圧した状態で、試料水Sを測定部50に送る。たとえば、制御部70は、試料管80内に送られるガスの流量と測定部50に送られる試料水Sの流量とが、同じになるように給気部20および送液部60を制御することで、S120で加えた圧力を維持した状態で試料水Sを測定部50に送ることができる。なお、試料水Sが流路内を流れることで圧力損失が生じる。そのため、測定部50に到達した試料水Sにかかっている圧力は、試料管80内の試料水Sにかかっている圧力よりも下がることになる。そこで、制御部70は、試料管80内に送られるガスの流量が測定部50に送られる試料水Sの流量よりも多くなるよう給気部20および送液部60を制御してもよい。このように制御することで、試料水Sが流路内を流れることで生じる圧力損失分をガスによる加圧で補填することができ、流路内の圧力変動を抑えることができる。
【0041】
S200において、制御部70は、試料水Sの導電性を測定する。より具体的には、制御部70は、測定部50が検出した検出値を受信する。なお、S180の処理とS200の処理とは、同時に実行されてもよい。
【0042】
<変形例1>
上記実施の形態において、吸引用ニードル32およびガス用ニードル24を筐体10に固定させ、試料管80を上から下に向けて筐体10に押し付けることで、試料管80を検査装置1に取り付けるものとした。なお、接続部の構成は、上記実施の形態にかかる構成に限られない。
【0043】
図4および図5を参照して、変形例1にかかる検査装置について説明する。図4は、変形例1に係る検査装置に試料管80を取り付ける方法を説明するための図である。図5は、変形例1に係る検査装置に試料管80を取り付けた後の状態を説明するための図である。
【0044】
図4を参照して、変形例1にかかる検査装置は、ガス用ニードル24および吸引用ニードル32に代えてガス用ニードル24aおよび吸引用ニードル32aを備える点で、上記実施の形態にかかる検査装置1と異なる。
ガス用ニードル24aおよび吸引用ニードル32aは、ガス用ニードル24aの方が吸引用ニードル32aよりも短い点で、上記実施の形態のガス用ニードル24および吸引用ニードル32と異なる。
【0045】
また、変形例1にかかる検査装置は、ガス用ニードル24aおよび吸引用ニードル32aを固定するための固定部90と、ガス用ニードル24aに接続されたガス用軟質チューブ25aと、吸引用ニードル32aに接続された吸引用軟質チューブ33aとをさらに備える。
【0046】
吸引用軟質チューブ33aは、図示していないものの、筐体10内に配置された処理部40と接続されているチューブT1と接続されている。すなわち、吸引用ニードル32aは、吸引用軟質チューブ33aを介して処理部40へ試料水Sを導入するチューブT1に接続されている。
【0047】
同様に、ガス用軟質チューブ25aは、図示していないものの、筐体10内に配置されている加圧ポンプ22と接続されているチューブT4と接続されている。すなわち、ガス用ニードル24aは、ガス用軟質チューブ25aを介して加圧ポンプ22からの気体が通過するチューブT4に接続されている。
【0048】
さらに、変形例1にかかる検査装置は、吸引用ニードル32aおよびガス用ニードル24aの周囲に形成された筒92をさらに備える。筒92は、一端に固定部90が設けられており、他端が開放されている。図4に示すように、試料管80にガス用ニードル24aおよび吸引用ニードル32aを挿入して試料管80を検査装置に接続する場合、キャップ84を上向きにした状態で、筒92を上から下に向けて動かすか、試料管80を下から上に向けて動かすか、あるいは、筒92と試料管80との両方を動かすことで、吸引用ニードル32aおよびガス用ニードル24aをキャップ84に貫通させて、試料管80を検査装置に取り付ける。
【0049】
図5を参照して、変形例にかかる検査装置は、筐体10に取り付けられたホルダ94および台96をさらに備える。ホルダ94は、筒92を固定する。台96は、筒92をホルダ94に取り付けたときに、試料管80を設置するための設置場所として機能する。
【0050】
ガス用ニードル24aは、吸引用ニードル32aよりも短く、試料管80を検査装置に取り付けたときに、ガス用ニードル24aのガスの噴出口が試料水Sの液面よりも上に位置する長さである。一方、吸引用ニードル32aは、ガス用ニードル24aよりも長く、試料管80を検査装置に取り付けたときに、吸引用ニードル32aの試料水Sの吸引口が試料水S内に位置する長さである。
【0051】
変形例1にかかる検査装置において、試料管80は各ニードルの下から当該ニードルに取り付けられる。取り付けたときにガス用ニードル24aの噴出口が試料水Sの液面よりも上に位置するため、取り付け作業中にガス用ニードル24aの噴出口に試料水Sが接触することがない。そのため、別の試料水Sが格納された試料管80に付けかえたときに、ガス用ニードル24a側からコンタミが発生することを防止できる。
【0052】
また、吸引用ニードル32aおよびガス用ニードル24aは、チューブT1,T4と吸引用軟質チューブ33aおよびガス用軟質チューブ25aを介して接続されている。また、吸引用ニードル32aおよびガス用ニードル24aは、固定部90に固定されている。そのため、吸引用ニードル32aおよびガス用ニードル24aを一緒に動かすことができ、試料管80にニードルを容易に貫通させることができる。
【0053】
<変形例2>
上記実施の形態にかかる検査装置1は、大気中の物質を除去するためのフィルタをさらに備えていてもよい。また、上記実施の形態にかかる検査装置1は、加圧ポンプ22から送液部60までの流路上にかかる圧力を測定する圧力計をさらに備えていてもよい。
【0054】
図6は、変形例2に係る検査装置の構成を説明するための模式図である。図6において、上記実施の形態にかかる検査装置1と共通する構成については、記載を省略している。図6を参照して、変形例2に係る検査装置は、フィルタ26および圧力計28をさらに備える。
【0055】
フィルタ26は、試料管80内に送られるガスからから導電率の測定に影響を与える物質を除去する。たとえば、フィルタ26は、大気中の二酸化炭素を除去する。フィルタ26は、二酸化炭素に代えて、または二酸化炭素に加えて、揮発した有機炭素を除去してもよい。なお、フィルタ26は、二酸化炭素および有機炭素を完全に除去できなくとも、少なくとも一部を除去できればよい。これにより、大気からのコンタミを防止でき、より精度の高い導電率測定を行うことができる。なお、フィルタ26は、試料管80よりも上流に配置されていればよく、たとえば、加圧ポンプ22の上流に配置されていてもよい。
【0056】
圧力計28は、加圧ポンプ22(給気部)から測定部50までの流路にかかる少なくとも一部の圧力を測定する。図6に示す例では、圧力計28は、フィルタ26と試料管80との間に配置されており、加圧ポンプ22と試料管80との間の流路にかかる圧力を測定する。なお、圧力計28は、加圧ポンプ22(給気部)から測定部50までの流路上のいずれに配置されていてもよい。
【0057】
たとえば、制御部70は、圧力計28の計測結果に応じて、加圧ポンプ22および送液部60を制御してもよい。また、圧力計28が配置されることで、ユーザは、加圧ポンプ22から測定部50までの流路内での漏れをテストすることができる。たとえば、加圧ポンプ22により流路上にかかる圧力を所定値にした後、加圧ポンプ22および送液部60を停止させた状態で、圧力の経時変化を圧力計28で測る。圧力の経時変化に基づいて、流路内での漏れをテストできる。
【0058】
[態様]
上述した実施の形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0059】
(第1項)一態様に係る検査装置は、試料水が格納された試料管を受け、試料水を採取するように構成されたサンプリング部と、採取した試料水を処理する処理部と、処理された試料水の導電性を測定する測定部と、測定部に試料水を導入するための流入管と、試料管内の試料水を測定部に送る駆動力を発生させる送液部と、試料管内にガスを送って加圧するための給気部と、送液部および給気部の動作を制御する制御部とを備える。制御部は、送液部および給気部の動作を制御して、試料管内をガスで加圧した状態で流入管を通じて測定部に試料水を送る。
【0060】
第1項に記載の検査装置によれば、試料管内をガスで加圧した状態で測定部に試料水を送るようにすることで、試料水に対するガスの溶解度を上げることができる。その結果、送液中のガスの発生を防止でき、試料水の導電性を安定して測定できる。
【0061】
(第2項)第1項に記載の検査装置において、処理部は、試料水を酸化させるための酸化部を含む。制御部は、送液部および給気部の動作を制御して、試料管内の圧力を大気圧より高い圧力に保つ。
【0062】
第2項に記載の検査装置によれば、酸化部により試料水が酸化されて分解産物が生成されるため、測定部までの流路内でのガス濃度が上昇するものの、圧力を上げて試料水に対するガスの溶解度を上げておくことで、送液中にガスが発生することを防止できる。
【0063】
(第3項)第1項または第2項に記載の検査装置は、給気部から測定部までの流路にかかる少なくとも一部の圧力を測定する圧力計をさらに備える。
【0064】
第3項に記載の検査装置によれば、圧力計を備えることで、流路内での漏れをテストしたり、あるいは、圧力計の測定結果を制御部に送るように構成して圧力計の計測結果に応じて、給気部および測定部を制御するようにしたりできる。
【0065】
(第4項)第1項~第3項のうちいずれか1項に記載の検査装置において、給気部は、試料水の導電性を変化させる物質をガスから除去するフィルタを含む。
【0066】
第4項に記載の検査装置によれば、ガスからのコンタミを防止でき、より精度の高い導電率測定を行うことができる。
【0067】
(第5項)第1項~第4項のうちいずれか1項に記載の検査装置において、サンプリング部は、試料管内に挿入され、試料管内の試料水を採取するための吸引用ニードルを含む。給気部は、試料管内に挿入され、試料管内にガスを導入するためのガス用ニードルとを含む。ガス用ニードルの長さは、吸引用ニードルの長さよりも短い。
【0068】
第5項に記載の検査装置によれば、試料管に対してニードルを重力方向に挿入すれば、ガス用ニードルを試料水に接触させることなく試料管と接続部とを接続でき、別の試料水が格納された試料管に取り付けかえたときに、ガス用ニードル側からコンタミが発生することを防止できる。
【0069】
(第6項)第5項に記載の検査装置は、吸引用ニードルとガス用ニードルとを固定するための固定部をさらに備える。サンプリング部は、吸引用ニードルに接続された吸引用軟質チューブをさらに含む。給気部は、ガス用ニードルに接続されたガス用軟質チューブとをさらに含む。
【0070】
第6項に記載の検査装置によれば、吸引用ニードルおよびガス用ニードルを一緒に動かすことができ、試料管にニードルを容易に挿入させることができる。
【0071】
(第7項)一態様に係る検査方法は、試料水が格納された試料管内にガスを送って加圧するステップと、試料管から試料水を採取するステップと、採取された試料水を処理するステップと、試料管内をガスで加圧した状態で、処理された試料水の導電性を測定するための測定部に試料水を送るステップと、測定部に送られた試料水の導電性を測定するステップとを含む。
【0072】
第7項に記載の検査方法によれば、試料管内をガスで加圧した状態で測定部に試料水を送るようにすることで、試料水に対するガスの溶解度を上げることができる。その結果、送液中のガスの発生を防止でき、試料水の導電性を安定して測定できる。
【0073】
今回開示された各実施の形態は、技術的に矛盾しない範囲で適宜組合わせて実施することも予定されている。そして、今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0074】
1 検査装置、10 筐体、20 給気部、22 加圧ポンプ、24,24a ガス用ニードル、25a ガス用軟質チューブ、26 フィルタ、28 圧力計、30 サンプリング部、32,32a 吸引用ニードル、33a 吸引用軟質チューブ、40 処理部、42 酸化部、50 測定部、60 送液部、70 制御部、80 試料管、82 本体、84 キャップ、90 固定部、92 筒、94 ホルダ、96 台、S 試料水。
図1
図2
図3
図4
図5
図6