(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】計算装置、歩容計測システム、計算方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/11 20060101AFI20240501BHJP
【FI】
A61B5/11 230
(21)【出願番号】P 2022543831
(86)(22)【出願日】2020-08-18
(86)【国際出願番号】 JP2020031056
(87)【国際公開番号】W WO2022038664
(87)【国際公開日】2022-02-24
【審査請求日】2023-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】黄 晨暉
(72)【発明者】
【氏名】福司 謙一郎
(72)【発明者】
【氏名】オウ シンイ
【審査官】冨永 昌彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-150329(JP,A)
【文献】国際公開第2018/164157(WO,A1)
【文献】特開2018-121930(JP,A)
【文献】特開2019-198532(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/06 - 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歩行者の一方の足部に設置されたセンサによって計測された足の動きに関する物理量に基づくセンサデータを用いて歩行波形を生成し、生成された前記歩行波形から歩行イベントを検出する検出手段と、
検出された前記歩行イベントのタイミングに基づいて、左右両足のステップ長を計算するステップ長計算手段と、を備え
、
前記検出手段は、
一歩行周期分の進行方向加速度の歩行波形において、
最大値を含む第1ピークと、最小値を含む第2ピークとを検出し、
前記第1ピークと前記第2ピークの間の極大ピークを検出し、
前記極大ピークのタイミングを足交差のタイミングとして検出し、
前記ステップ長計算手段は、
進行方向軌跡の歩行波形を用いて、前記足交差のタイミングを基準として、前記左右両足のステップ長を計算する計算装置。
【請求項2】
前記ステップ長計算手段は、
一歩行周期分の前記進行方向軌跡の歩行波形において、
前記足交差のタイミングにおける進行方向位置と、前記第1ピークに含まれる二つの極大点の間の極小点のタイミングにおける進行方向位置との差を第1ステップ長として算出し、
前記第2ピークに含まれる最小値のタイミングにおける進行方向位置と、前記足交差のタイミングにおける進行方向位置との差を第2ステップ長として算出する請求項
1に記載の計算装置。
【請求項3】
歩行者の一方の足部に設置されたセンサによって計測された足の動きに関する物理量に基づくセンサデータを用いて歩行波形を生成し、生成された前記歩行波形から歩行イベントを検出する検出手段と、
検出された前記歩行イベントのタイミングに基づいて、左右両足のステップ長を計算するステップ長計算手段と、を備え、
前記検出手段は、
一歩行周期分の進行方向加速度の歩行波形において、爪先離地のタイミングと踵接地のタイミングを検出し、
重力方向加速度の歩行波形において、前記爪先離地のタイミングと前記踵接地のタイミングの間に脛骨垂直のタイミングを検出し、
前記進行方向加速度の歩行波形において、前記爪先離地のタイミングと前記脛骨垂直のタイミングの間に足交差のタイミングを検出し、
前記ステップ長計算手段は、
進行方向軌跡の歩行波形を用いて、前記足交差のタイミングを基準として、前記左右両足のステップ長を計算す
る計算装置。
【請求項4】
前記ステップ長計算手段は、
一歩行周期分の前記進行方向軌跡の歩行波形において、
前記足交差のタイミングにおける進行方向位置と、前記爪先離地のタイミングにおける進行方向位置との差を第1ステップ長として算出し、
前記踵接地のタイミングにおける進行方向位置と、前記足交差のタイミングにおける進行方向位置との差を第2ステップ長として算出する請求項
3に記載の計算装置。
【請求項5】
前記左右両足のステップ長の非対称性を計算する非対称性計算手段と、
算出された前記左右両足のステップ長の非対称性に基づいて、前記歩行者の身体状態を推測する推測手段と、を備える請求項1乃至
4のいずれか一項に記載の計算装置。
【請求項6】
前記非対称性計算手段は、
前記左右両足のステップ長の差を、前記左右両足のステップ長の和で割った値を、前記左右両足のステップ長の非対称性として算出する請求項
5に記載の計算装置。
【請求項7】
歩行者の一方の足部に設置されたセンサによって計測された足の動きに関する物理量に基づくセンサデータを用いて歩行波形を生成し、生成された前記歩行波形から歩行イベントを検出する検出手段と、
検出された前記歩行イベントのタイミングに基づいて、左右両足のステップ長を計算するステップ長計算手段と、
前記左右両足のステップ長の非対称性を計算する非対称性計算手段と、
算出された前記左右両足のステップ長の非対称性に基づいて、前記歩行者の身体状態を推測する推測手段と、を備える計算装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の計算装置と、
空間加速度および空間角速度を計測し、計測した前記空間加速度および前記空間角速度に基づいて前記センサデータを生成し、生成した前記センサデータを前記計算装置に送信するデータ取得装置と、を備える歩容計測システム。
【請求項9】
コンピュータが、
歩行者の一方の足部に設置されたセンサによって計測された足の動きに関する物理量に基づくセンサデータを用いて歩行波形を生成し、
生成された前記歩行波形から歩行イベントを検出し、
検出された前記歩行イベントのタイミングに基づいて、左右両足のステップ長を計算
し、
前記検出において、
一歩行周期分の進行方向加速度の歩行波形から、
最大値を含む第1ピークと、最小値を含む第2ピークとを検出し、
前記第1ピークと前記第2ピークの間の極大ピークを検出し、
前記極大ピークのタイミングを足交差のタイミングとして検出し、
前記計算において、
進行方向軌跡の歩行波形を用いて、前記足交差のタイミングを基準として、前記左右両足のステップ長を計算する、計算方法。
【請求項10】
歩行者の一方の足部に設置されたセンサによって計測された足の動きに関する物理量に基づくセンサデータを用いて歩行波形を生成する処理と、
生成された前記歩行波形から歩行イベントを検出する処理と、
検出された前記歩行イベントのタイミングに基づいて、左右両足のステップ長を計算する処理と、
前記検出する処理において、
一歩行周期分の進行方向加速度の歩行波形から、
最大値を含む第1ピークと、最小値を含む第2ピークとを検出する処理と、
前記第1ピークと前記第2ピークの間の極大ピークを検出する処理と、
前記極大ピークのタイミングを足交差のタイミングとして検出する処理と、
前記計算する処理において、
進行方向軌跡の歩行波形を用いて、前記足交差のタイミングを基準として、前記左右両足のステップ長を計算する処理と、をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、歩行イベントに基づいて、ステップ長を計算する計算装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
体調管理を行うヘルスケアへの関心の高まりから、歩行の特徴を含む歩容を計測し、その歩容に応じた情報をユーザに提供するサービスが注目されている。歩行に関するデータから、踵が地面に接地する事象や、爪先が地面から離れる事象などの歩行イベントを検出できれば、歩容に応じたサービスをより的確に提供できる。例えば、歩行時における左右の足のストライド長やステップ長の非対称性は、身体計測の重要項目であり、様々な異常状態の早期発見に役立つ。
【0003】
特許文献1には、歩行者の歩行時の角速度および加速度を用いて、歩行者のストライド長を求めるシステムについて開示されている。特許文献1のシステムは、股関節、膝関節または足関節を挟むよう取り付けられたセンサユニットの測定データから、歩行者の股関節、膝関節または足関節の関節角度を求める。特許文献1のシステムは、足背部に取り付けられたセンサユニットセンサの測定データから、歩行者のストライド長を求める。特許文献1のシステムは、関節角度の特徴点とストライド長との相関係数と、健常者の歩行時の股関節、膝関節または足関節の関節角度の特徴点とストライド長との相関係数とを比較して、歩行者の歩行状態を評価する。
【0004】
特許文献2には、ユーザの腰部などの所定部位に装着される本体部と、本体部の加速度を検出する加速度センサと、制御部とを備え、ユーザの歩行の変化を判定する装置について開示されている。制御部は、加速度センサによって検出された加速度に基づいて、本体部が装着される所定部位の歩行時の軌跡を特定する。特許文献1の装置は、特定された軌跡の時間的変化を算出し、算出された時間的変化に基づいて、時間的変化の度合である変化度合を判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5586050号公報
【文献】特許第5724237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の手法では、両脚の複数箇所に装着されたセンサユニットによって計測された測定データから、歩行者のストライド長を求めることができる。特許文献1の手法では、ストライド長を算出するために、両脚の複数箇所にセンサユニットを装着し、複数のセンサユニットの測定データを統合する必要があった。
【0007】
特許文献2の手法では、単一の本体部を歩行者の所定部位に装着し、本体部が装着された所定部位の歩行時の軌跡を特定することによって、ステップ長に相当する特徴因子を算出できる。しかしながら、特許文献2の手法では、膝や足関節にゆがみがあり、下肢が真っ直ぐな状態ではない場合、算出される特徴因子の精度が著しく低下するという問題点があった。
【0008】
本発明の目的は、一方の足の動きに関する物理量に基づいて、両足のステップ長を高精度で計算できる計算装置等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様の計算装置は、歩行者の一方の足部に設置されたセンサによって計測された足の動きに関する物理量に基づくセンサデータを用いて歩行波形を生成し、生成された歩行波形から歩行イベントを検出する検出部と、検出された歩行イベントのタイミングに基づいて、左右両足のステップ長を計算するステップ長計算部と、を備える。
【0010】
本開示の一態様の計算方法においては、コンピュータが、歩行者の一方の足部に設置されたセンサによって計測された足の動きに関する物理量に基づくセンサデータを用いて歩行波形を生成し、生成された歩行波形から歩行イベントを検出し、検出された歩行イベントのタイミングに基づいて、左右両足のステップ長を計算する。
【0011】
本開示の一態様のプログラムは、歩行者の一方の足部に設置されたセンサによって計測された足の動きに関する物理量に基づくセンサデータを用いて歩行波形を生成する処理と、生成された歩行波形から歩行イベントを検出する処理と、検出された歩行イベントのタイミングに基づいて、左右両足のステップ長を計算する処理と、をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、一方の足の動きに関する物理量に基づいて、両脚のステップ長を高精度で計算できる計算装置等を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1の実施形態に係る歩容計測システムの構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】第1の実施形態に係る歩容計測システムのデータ取得装置を履物の中に配置する一例を示す概念図である。
【
図3】第1の実施形態に係る歩容計測システムのデータ取得装置に設定されるローカル座標系と世界座標系について説明するための概念図である。
【
図4】第1の実施形態に係る歩容計測システムの計算装置が検出する歩行イベントについて説明するための概念図である。
【
図5】第1の実施形態に係る歩容計測システムの計算装置12が算出するステップ長などの歩行パラメータについて説明するための概念図である。
【
図6】第1の実施形態に係る歩容計測システムのデータ取得装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図7】第1の実施形態に係る歩容計測システムの計算装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図8】第1の実施形態に係る歩容計測システムの計算装置が生成する足底角の歩行波形について説明するためのグラフである。
【
図9】第1の実施形態に係る歩容計測システムの計算装置によって切り出される一歩行周期分の歩行周期について説明するための概念図である。
【
図10】被験者の歩容を計測する際に靴の周辺に取り付けられる目印の位置について説明するための概念図である。
【
図11】被験者の歩容を計測するためのカメラの配置について説明するための概念図である。
【
図12】第1の実施形態に係る歩容計測システムの計算装置が、進行方向の加速度(Y方向加速度)の歩行波形から足交差のタイミングを検出する一例について説明するためのグラフである。
【
図13】第1の実施形態に係る歩容計測システムの計算装置が、進行方向の加速度(Y方向加速度)の歩行波形から爪先離地と踵接地のタイミングを検出する一例について説明するためのグラフである。
【
図14】第1の実施形態に係る歩容計測システムの計算装置が、重力方向の加速度(Z方向高さ)の歩行波形から脛骨垂直のタイミングを検出する一例について説明するためのグラフである。
【
図15】第1の実施形態に係る歩容計測システムの計算装置が、進行方向の加速度(Y方向加速度)の歩行波形から足交差のタイミングを検出する一例について説明するためのグラフである。
【
図16】モーションキャプチャによって実測されたステップ長と、第1の実施形態に係る歩容計測システムの計算装置が算出したステップ長とを対応付けた回帰直線である。グラフである。
【
図17】第1の実施形態に係る計算装置の動作の一例について説明するためのフローチャートである。
【
図18】第1の実施形態に係る計算装置の歩行イベント検出処理の一例について説明するためのフローチャートである。
【
図19】第1の実施形態に係る計算装置の歩行イベント検出処理の別の一例について説明するためのフローチャートである。
【
図20】第1の実施形態に係る計算装置のステップ長計算部によるステップ長の算出の一例について説明するためのフローチャートである。
【
図21】第2の実施形態に係る歩容計測システムの構成の一例について説明するためのブロック図である。
【
図22】第2の実施形態に係る歩容計測システムの計算装置の構成の一例について説明するためのブロック図である。
【
図23】第2の実施形態に係る歩容計測システムの計算装置が用いる学習済みモデルを機械学習によって生成する一例を示す概念図である。
【
図24】第2の実施形態に係る歩容計測システムの計算装置が学習済みモデルに特徴量を入力することによって、ユーザの身体情報が出力される一例を示す概念図である。
【
図25】第2の実施形態に係る歩容計測システムの計算装置による身体状態の推測の一例について説明するためのフローチャートである。
【
図26】第2の実施形態に係る歩容計測システムの計算装置によって推測された身体状態に関する情報を携帯端末の表示部に表示させる一例を示す概念図である。
【
図27】第2の実施形態に係る歩容計測システムの計算装置によって推測された身体状態に応じたアドバイスを携帯端末の表示部に表示させる一例を示す概念図である。
【
図28】第2の実施形態に係る歩容計測システムの計算装置によって推測された身体状態に関する情報を医療機関等に送信する一例を示す概念図である。
【
図29】第3の実施形態に係る計算装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図30】各実施形態に係る計算装置を実現するハードウェア構成の一例について説明するためのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい限定がされているが、発明の範囲を以下に限定するものではない。なお、以下の実施形態の説明に用いる全図においては、特に理由がない限り、同様箇所には同一符号を付す。また、以下の実施形態において、同様の構成・動作に関しては繰り返しの説明を省略する場合がある。
【0015】
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態に係る歩容計測システムについて図面を参照しながら説明する。本実施形態の歩容計測システムは、歩行者の足部に設置されたセンサによって取得されたセンサデータを用いて、その歩行者の歩行イベントを検出する。特に、本実施形態においては、歩行者の片足の履物に設置されたセンサによって取得されたセンサデータを用いて、その歩行者の両足の歩行イベントを検出する。詳細については後述するが、歩行イベントは、足が地面に着く事象や、足が地面から離れる事象、両足が交差する事象などを含む。本実施形態においては、検出された歩行イベントに基づいて、両足のステップ長を計算する。本実施形態においては、右足を基準の足とする系について説明する。本実施形態の手法は、左足を基準の足とする系についても適用できる。
【0016】
(構成)
図1は、本実施形態の歩容計測システム1の構成の一例を示すブロック図である。
図1のように、歩容計測システム1は、データ取得装置11および計算装置12を備える。データ取得装置11と計算装置12は、有線で接続されてもよいし、無線で接続されてもよい。また、データ取得装置11と計算装置12は、単一の装置で構成してもよい。また、歩容計測システム1の構成からデータ取得装置11を除き、計算装置12だけで歩容計測システム1を構成してもよい。
【0017】
データ取得装置11は、足部に設置される。例えば、データ取得装置11は、右足の履物に設置される。データ取得装置11は、靴等の履物を履くユーザの足の動きに関する物理量として、加速度(空間加速度とも呼ぶ)および角速度(空間角速度とも呼ぶ)を計測する。データ取得装置11が計測する足の動きに関する物理量には、加速度や角速度に加えて、加速度や角速度を積分することによって計算される速度や角度、軌跡も含まれる。データ取得装置11は、計測された物理量をデジタルデータ(センサデータとも呼ぶ)に変換する。データ取得装置11は、変換後のセンサデータを計算装置12に送信する。データ取得装置11によって生成される加速度や角速度などのセンサデータを歩行パラメータとも呼ぶ。また、加速度や角速度を積分することによって計算される速度や角度、軌跡なども歩行パラメータに含まれる。
【0018】
データ取得装置11は、例えば、加速度センサと角速度センサを含む慣性計測装置によって実現される。慣性計測装置の一例として、IMU(Inertial Measurement Unit)が挙げられる。IMUは、3軸の加速度センサと、3軸の角速度センサを含む。また、慣性計測装置の一例として、VG(Vertical Gyro)や、AHRS(Attitude Heading)、GPS/INS(Global Positioning System/Inertial Navigation System)が挙げられる。
【0019】
図2は、データ取得装置11を靴100の中に設置する一例を示す概念図である。
図2の例では、データ取得装置11は、足弓の裏側に当たる位置に設置される。例えば、データ取得装置11は、靴100の中に挿入されるインソールに設置される。例えば、データ取得装置11は、靴100の底面に設置される。例えば、データ取得装置11は、靴100の本体に埋設される。データ取得装置11は、靴100から着脱できてもよいし、靴100から着脱できなくてもよい。データ取得装置11は、足の動きに関するセンサデータを取得できさえすれば、足弓の裏側ではない位置に設置されてもよい。また、データ取得装置11は、ユーザが履いている靴下や、ユーザが装着しているアンクレット等の装飾品に設置されてもよい。また、データ取得装置11は、足に直に貼り付けられたり、足に埋め込まれたりしてもよい。
図2においては、右足の靴100にデータ取得装置11を設置する例を示す。データ取得装置11は、少なくとも一方の足部に設置されればよく、左右両方の足部に設置されてもよい。両足の靴100にデータ取得装置11を設置すれば、左右の足ごとに歩行イベントを検出できる。
【0020】
図3は、データ取得装置11を足弓の裏側に設置する場合に、データ取得装置11に設定されるローカル座標系(x軸、y軸、z軸)と、地面に対して設定される世界座標系(X軸、Y軸、Z軸)について説明するための概念図である。世界座標系(X軸、Y軸、Z軸)では、ユーザが直立した状態で、ユーザの横方向がX軸方向(右向きが正)、ユーザの正面の方向(進行方向)がY軸方向(前向きが正)、重力方向がZ軸方向(鉛直上向きが正)に設定される。また、本実施形態においては、データ取得装置11を基準とするx方向、y方向、およびz方向からなるローカル座標系を設定する。また、本実施形態においては、x軸を回転軸とする回転をピッチ、y軸を回転軸とする回転をロール、z軸を回転軸とする回転をヨー、と定義する。
【0021】
計算装置12は、ローカル座標系のセンサデータをデータ取得装置11から取得する。計算装置12は、取得したローカル座標系のセンサデータを世界座標系に変換して時系列データを生成する。計算装置12は、生成した時系列データから一歩行周期分または二歩行周期分の波形データ(以下、歩行波形とも呼ぶ)を抽出する。計算装置12は、抽出された歩行波形から、後述する歩行イベントを検出する。計算装置12によって検出される歩行イベントは、歩行者のステップ長の計算に用いられる。
【0022】
図4は、計算装置12が検出する歩行イベントについて説明するための概念図である。
図4は、右足の一歩行周期に対応する。
図4の横軸は、右足の踵が地面に着地した時点を起点とし、次に右足の踵が地面に着地した時点を終点とする右足の一歩行周期を100%として正規化された時間(正規化時間とも呼ぶ)である。一般に、片足の一歩行周期は、足の裏側の少なくとも一部が地面に接している立脚相と、足の裏側が地面から離れている遊脚相とに大別される。立脚相は、さらに、立脚初期T1、立脚中期T2、立脚終期T3、遊脚前期T4に細分される。遊脚相は、さらに、遊脚初期T5、遊脚中期T6、遊脚終期T7に細分される。
【0023】
図4において、(a)は、右足の踵が接地する事象(踵接地)を表す(HS:Heel Strike)。(b)は、右足の足裏が接地した状態で、反対足(左足)の爪先が地面から離れる事象(反対足爪先離地)を表す(OTO:Opposite Toe Off)。(c)は、右足の足裏が接地した状態で、右足の踵が持ち上がる事象(踵持ち上がり)を表す(HR:Heel Rise)。(d)は、反対足(左足)の踵が接地する事象(反対足踵接地)である(OHS:Opposite Heel Strike)。(e)は、反対足(左足)の足裏が接地した状態で、右足の爪先が地面から離れる事象(爪先離地)を表す(TO:Toe Off)。(f)は、反対足(左足)と右足が交差する事象(足交差)を表す(FA:Foot Adjacent)。(g)は、左足の足裏が接地した状態で、右足の脛骨が地面に対してほぼ垂直になる事象(脛骨垂直)を表す(TV:Tibia Vertical)。(h)は、右足の踵が接地する事象(踵接地)を表す(HS:Heel Strike)。(h)は、(a)の踵接地から始まる一歩行周期の終点に相当するとともに、次の歩行周期の起点に相当する。
【0024】
本実施形態においては、右足の動きに関する物理量に基づいて、(a)~(h)で示す事象(歩行イベントとも呼ぶ)の各々を検出する。本実施形態においては、上述した歩行イベント(踵接地HS、反対足爪先離地OTO、踵持ち上がりHR、反対足踵接地OHS、爪先離地TO、足交差FA、および脛骨垂直TVを、歩行者の歩行波形から検出する。
【0025】
図5は、計算装置12が算出するステップ長などの歩行パラメータについて説明するための概念図である。
図5には、右足ステップ長S
R、左足ステップ長S
L、ストライド長T、歩隔W、および足角Fを図示する。右足ステップ長S
Rは、左足の足裏が接地した状態から、進行方向に振り出された右足の踵が着地した状態に遷移した際の、右足の踵と左足の踵のY座標の差である。左足ステップ長S
Lは、右足の足裏が接地した状態から、進行方向に振り出された左足の踵が着地した状態に遷移した際の、左足の踵と右足の踵のY座標の差である。ストライド長Tは、右足ステップ長S
Rと左足ステップ長S
Lの和である。歩隔Wは、右足と左足の間隔である。
図5において、歩隔Wは、接地した状態の右足の踵の中心線のX座標と、接地した状態の左足の踵の中心線のX座標との差である。足角Fは、足裏面が接地した状態において、足の中心線と進行方向(Y軸)が成す角度である。
【0026】
〔データ取得装置〕
次に、データ取得装置11の詳細について図面を参照しながら説明する。
図6は、データ取得装置11の詳細構成の一例を示すブロック図である。データ取得装置11は、加速度センサ111、角速度センサ112、制御部113、およびデータ送信部115を有する。また、データ取得装置11は、図示しない電源を含む。以下においては、加速度センサ111、角速度センサ112、制御部113、およびデータ送信部115の各々を動作主体として説明するが、データ取得装置11を動作主体とみなしてもよい。
【0027】
加速度センサ111は、3軸方向の加速度(空間加速度とも呼ぶ)を計測するセンサである。加速度センサ111は、計測した加速度を制御部113に出力する。例えば、加速度センサ111には、圧電型や、ピエゾ抵抗型、静電容量型等の方式のセンサを用いることができる。なお、加速度センサ111に用いられるセンサは、加速度を計測できれば、その計測方式に限定を加えない。
【0028】
角速度センサ112は、3軸方向の角速度(空間角速度とも呼ぶ)を計測するセンサである。角速度センサ112は、計測した角速度を制御部113に出力する。例えば、角速度センサ112には、振動型や静電容量型等の方式のセンサを用いることができる。なお、角速度センサ112に用いられるセンサは、角速度を計測できれば、その計測方式に限定を加えない。
【0029】
制御部113は、加速度センサ111および角速度センサ112の各々から、3軸方向の加速度および角速度の各々を取得する。制御部113は、取得した加速度および角速度をデジタルデータに変換し、変換後のデジタルデータ(センサデータとも呼ぶ)をデータ送信部115に出力する。センサデータには、アナログデータの加速度をデジタルデータに変換した加速度データ(3軸方向の加速度ベクトルを含む)と、アナログデータの角速度をデジタルデータに変換した角速度データ(3軸方向の角速度ベクトルを含む)とが少なくとも含まれる。なお、加速度データおよび角速度データには、それらのデータの取得時間が紐付けられる。また、制御部113は、取得した加速度データおよび角速度データに対して、実装誤差や温度補正、直線性補正などの補正を加えたセンサデータを出力するように構成してもよい。また、制御部113は、取得した加速度データおよび角速度データを用いて、3軸方向の角度データを生成してもよい。
【0030】
例えば、制御部113は、データ取得装置11の全体制御やデータ処理を行うマイクロコンピュータまたはマイクロコントローラである。例えば、制御部113は、CPU(Central Processing Unit)やRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ等を有する。制御部113は、加速度センサ111および角速度センサ112を制御して角速度や加速度を計測する。例えば、制御部113は、計測された角速度および加速度等の物理量(アナログデータ)をAD変換(Analog-to-Digital Conversion)し、変換後のデジタルデータをフラッシュメモリに記憶させる。なお、加速度センサ111および角速度センサ112によって計測された物理量(アナログデータ)は、加速度センサ111および角速度センサ112の各々においてデジタルデータに変換されてもよい。フラッシュメモリに記憶されたデジタルデータは、所定のタイミングでデータ送信部115に出力される。
【0031】
データ送信部115は、制御部113からセンサデータを取得する。データ送信部115は、取得したセンサデータを計算装置12に送信する。データ送信部115は、ケーブルなどの有線を介してセンサデータを計算装置12に送信してもよいし、無線通信を介してセンサデータを計算装置12に送信してもよい。例えば、データ送信部115は、Bluetooth(登録商標)やWiFi(登録商標)などの規格に則した無線通信機能(図示しない)を介して、センサデータを計算装置12に送信するように構成される。なお、データ送信部115の通信機能は、Bluetooth(登録商標)やWiFi(登録商標)以外の規格に則していてもよい。
【0032】
〔計算装置〕
次に、歩容計測システム1が備える計算装置12の詳細について図面を参照しながら説明する。
図7は、計算装置12の構成の一例を示すブロック図である。計算装置12は、検出部121およびステップ長計算部123を有する。
【0033】
検出部121は、歩行者の履いている履物に設置されたデータ取得装置11(センサ)からセンサデータを取得する。検出部121は、センサデータを用いて、データ取得装置11が設置された履物を履いた歩行者の歩行に伴う時系列データを生成する。検出部121は、生成した時系列データから、一歩行周期分または二歩行周期分の歩行波形データを抽出する。
【0034】
例えば、検出部121は、データ取得装置11からセンサデータを取得する。検出部121は、取得されたセンサデータの座標系を、ローカル座標系から世界座標系に変換する。ユーザが直立した状態では、ローカル座標系(x軸、y軸、z軸)と世界座標系(X軸、Y軸、Z軸)は一致する。ユーザが歩行している間、データ取得装置11の空間的な姿勢が変化するため、ローカル座標系(x軸、y軸、z軸)と世界座標系(X軸、Y軸、Z軸)は一致しない。そのため、検出部121は、データ取得装置11によって取得されたセンサデータを、データ取得装置11のローカル座標系(x軸、y軸、z軸)から世界座標系(X軸、Y軸、Z軸)に変換する。
【0035】
例えば、検出部121は、空間加速度や空間角速度などの時系列データを生成する。また、検出部121は、空間加速度や空間角速度を積分し、空間速度や空間角度(足底角)、空間軌跡などの時系列データを生成する。検出部121は、一般的な歩行周期や、ユーザに固有の歩行周期に合わせて設定された所定のタイミングや時間間隔で時系列データを生成する。検出部121が時系列データを生成するタイミングは、任意に設定できる。例えば、検出部121は、ユーザの歩行が継続されている期間、時系列データを生成し続けるように構成される。また、検出部121は、特定の時刻において、時系列データを生成するように構成されてもよい。
【0036】
検出部121は、検出部121によって生成された歩行波形データから、データ取得装置11が設置された履物を履いて歩行する歩行者の歩行イベントを検出する。例えば、検出部121は、足の動きに関する物理量の歩行波形から、歩行イベントごとの特徴を抽出する。例えば、検出部121は、抽出された歩行イベントごとの特徴のタイミングを、それぞれの歩行イベントのタイミングとして検出する。検出部121は、歩行イベントのうち、爪先離地、踵接地、および足交差を検出する。本実施形態においては、右足を基準とした場合、右足の爪先が、左足の爪先と踵の中点の位置を通過するタイミングを足交差と定義する。また、検出部121は、歩行イベントのうち、脛骨垂直、反対足爪先離地、および反対足踵接地を検出してもよい。
【0037】
ステップ長計算部123は、一歩行周期分のY方向軌跡の歩行波形から、爪先離地と踵接地の間の区間を、一歩分のY方向軌跡の歩行波形として抽出する。ステップ長計算部123は、一歩分のY方向軌跡の歩行波形を用いて、足交差における空間位置と、爪先離地における空間位置との差の絶対値を計算する。足交差における空間位置と、爪先離地における空間位置との差の絶対値は、左足が前、右足が後ろの状態の左足ステップ長SL(第1ステップ長とも呼ぶ)に相当する。また、ステップ長計算部123は、一歩分のY方向軌跡の歩行波形を用いて、足交差のタイミングにおける空間位置と、踵接地における空間位置との差の絶対値を計算する。足交差のタイミングにおける空間位置と、踵接地における空間位置との差の絶対値は、右足が前、左足が後ろの状態の右足ステップ長SR(第2ステップ長とも呼ぶ)に相当する。例えば、ステップ長計算部123は、検出した右足ステップ長SRおよび左足ステップ長SLを、図示しないシステムや装置に出力する。
【0038】
〔歩行イベント〕
次に、計算装置12による歩行イベントの検出例について図面を参照しながら説明する。本実施形態においては、立脚相の中央のタイミング(立脚終期の開始)を、一歩行周期の起点に設定する。本実施形態においては、踵接地、爪先離地、足交差、および脛骨垂直を歩行イベントとして検出する。以下においては、一歩行周期の歩行波形における時系列の順番ではなく、歩行イベントの検出の順番に沿って説明する。
【0039】
以下においては、データ取得装置11が設置された履物を履いた被験者の歩容を検証した例について説明する。本検証では、一方の足(右足)にデータ取得装置11を設置した。本検証は、年齢が20~50代、身長が150~180センチメートル、体重が45~100キログラムの男女32名の被験者を母集団とする。本検証においては、32名の被験者を母集団とし、データ取得装置11が設置された履物を履いた歩行者の歩容を、モーションキャプチャと計算装置12によって計測した。本検証においては、モーションキャプチャによって計測された歩容(Y方向位置、Z方向高さ、ロール角)と、データ取得装置11によって計測された物理量に基づくセンサデータを用いて計算装置12が計測した歩容とを比較した。
【0040】
図8は、足底角の歩行波形について説明するためのグラフである。
図8においては、爪先が踵よりも上に位置する状態(背屈)を負と定義し、爪先が踵よりも下に位置する状態(底屈)を正と定義する。足底角の歩行波形が極小となる時刻t
dは、立脚相開始のタイミングに相当する。足底角の歩行波形が極大となる時刻t
bは、遊脚相開始のタイミングに相当する。立脚相開始の時刻t
dと遊脚相開始の時刻t
bとの中点の時刻が、立脚相の中央のタイミングに相当する。本実施形態においては、立脚相の中央のタイミングの時刻を、一歩行周期の起点の時刻t
mに設定する。また、本実施形態においては、時刻t
mのタイミングの次の立脚相の中央のタイミングの時刻を、一歩行周期の終点の時刻t
m+1に設定する。
【0041】
図9は、時刻t
mを起点とし、時刻t
m+1を終点とする一歩行周期について説明するためのグラフである。検出部121は、一歩行周期分の足底角の歩行波形から、極小(第1背屈ピーク)となる時刻t
dと、第1背屈ピークの次に極大(第1底屈ピーク)となる時刻t
bとを検出する。さらに、検出部121は、その次の一歩行周期分の足底角の歩行波形から、第1底屈ピークの次に極小(第2背屈ピーク)となる時刻t
d+1と、第2背屈ピークの次に極大(第2底屈ピーク)となる時刻t
b+1とを検出する。検出部121は、時刻t
dと時刻t
bの中点の時刻を、一歩行周期の起点の時刻t
mに設定する。また、検出部121は、時刻t
d+1と時刻t
b+1の中点の時刻を、一歩行周期の終点の時刻t
m+1に設定する。
【0042】
検出部121は、データ取得装置11によって計測された足の動きに関する物理量に基づくセンサデータの時系列データに関して、時刻tmから時刻tm+1までの一歩行周期分の歩行波形を切り出す。例えば、検出部121は、第1背屈ピークの時刻tdと第1底屈ピークの時刻tbの中点(時刻tm)を起点とし、第2背屈ピークの時刻td+1と第2底屈ピークの時刻tb+1の中点(時刻tm+1)を終点とする一歩行周期分の歩行波形データを切り出す。同様に、検出部121は、データ取得装置11によって計測された足の動きに関する物理量(空間加速度、空間角速度、空間軌跡)に基づくセンサデータの時系列データに関して、時刻tmから時刻tm+1までの一歩行周期分の歩行波形を切り出す。
【0043】
例えば、検出部121は、切り出された一歩行周期分の歩行波形を、時刻t
mから時刻t
bまでの区間と、時刻t
bから時刻t
d+1までの区間と、時刻t
d+1から時刻t
m+1までの区間とに分割する。時刻t
mから時刻t
bまでの区間の波形を第1歩行波形W1、時刻t
bから時刻t
d+1までの区間の波形を第2歩行波形W2、時刻t
d+1から時刻t
m+1までの区間の波形を第3歩行波形、と呼ぶ。歩行イベントで表現すると、踵持ち上がりHRから爪先離地TOまでの区間の波形が第1歩行波形W1、爪先離地TOから踵接地HSまでの区間の波形が第2歩行波形W2、踵接地HSから踵持ち上がりHRまでの区間の波形が第3歩行波形W3である。
図9において、一歩行周期の30%は爪先離地のタイミングに相当し、一歩行周期の70%は踵接地のタイミングに相当する。なお、各歩行イベントが発現するタイミングは、人物や身体状態に応じて異なるため、爪先離地や踵接地のタイミングは、
図9の歩行周期と完全に一致するわけではない。
【0044】
図10は、モーションキャプチャのための目印131および目印132を取り付けた靴100の概念図である。本検証においては、両足の靴100の各々に、5つの目印131と1つの目印132を取り付けた。靴の開口の周囲の側面には、5つの目印131を配置した。5つの目印131は、踵の動きを検出するための目印である。5つの目印131を剛体とみなす剛体モデルの重心が、踵の位置として検出される。靴100の爪先の位置には、目印132を配置した。目印132は、爪先の位置として検出される。また、右足の足弓の裏側に当たる位置にデータ取得装置11を設置した。
【0045】
図11は、目印131および目印132を取り付けた靴100を履いた歩行者の歩容をモーションキャプチャで検証する際の歩行線と、複数のカメラ150を配置した位置について説明するための概念図である。本検証では、歩行線を挟んだ両側に5台ずつ(計10台)のカメラ150を配置した。複数のカメラ150の各々は、歩行線から3mの位置に3m間隔で配置した。複数のカメラ150の各々の高さは、水平面(XY平面)から2mの高さに固定した。複数のカメラ150の各々の焦点は、歩行線の位置に合わせた。
【0046】
歩行線に沿って歩行する歩行者の靴100に設置された目印131および目印132の動きは、複数のカメラ150によって撮影された動画を用いて解析した。踵の動きは、複数の目印131を一つの剛体とみなし、それらの重心の動きを解析することで検証した。爪先の動きは、目印132の動きを解析することで検証した。本検証においては、踵と爪先の重力方向の高さ(以下、Z方向高さと呼ぶ)、体の中心軸に対する爪先および踵の進行方向の位置(以下、Y方向位置と呼ぶ)、足裏の角度(ロール角)をモーションキャプチャによって計測した。
【0047】
以下において、計算装置12が、データ取得装置11によって計測された足の動きに関する物理量に基づいて足交差のタイミングを検出し、検出された足交差のタイミングに基づいてステップ長を計算する例を挙げる。以下においては、足交差を検出する方法として、第1検出処理と第2検出処理を例示する。第1検出処理において、計算装置12は、Y方向加速度の歩行波形から、ピークの位置関係に基づいて足交差のタイミングを検出する。第2検出処理において、計算装置12は、歩行波形から歩行イベントのタイミングを順次特定し、足交差のタイミングを検出する。
【0048】
〔第1検出処理〕
まず、Y方向加速度の歩行波形から、ピークの位置関係に基づいて足交差のタイミングを検出する第1検出処理について図面を参照しながら説明する。
図12は、モーションキャプチャによって計測された左足の踵と爪先、右足の爪先のY方向位置(左軸)の波形と、データ取得装置11によって生成されたセンサデータを用いて計算装置12が生成したY方向加速度の歩行波形(右軸)とを対応させたグラフである。モーションキャプチャで計測された左足の踵のY方向位置の波形を二点鎖線で示す。モーションキャプチャで計測された左足の爪先のY方向位置の波形を破線で示す。モーションキャプチャで計測された右足の爪先のY方向位置の波形を一点鎖線で示す。計算装置12が生成したY方向加速度の歩行波形を実線で示す。
【0049】
本実施形態では、地面に接地している左足が右足に対して前にある状態において、右足の爪先が左足の踵の位置を通過するタイミングをaと定義し、右足の爪先が左足の爪先の位置を通過するタイミングをbと定義する。そして、タイミングaとタイミングbの間の中央のタイミングを足交差のタイミングと定義する。
図12のように、足交差のタイミングは、20~40%の間の二つの極大点と一つの極小点を含む第1ピークと、60~70%に極大点を含む第2ピークの間にある、緩やかな凸のピークが最大値を示すタイミングに相当する。
【0050】
検出部121は、一歩行周期分のY方向加速度の歩行波形において、第1ピークと第2ピークの間の緩やかなピークが最大値を示すタイミングを、足交差のタイミングとして検出する。
【0051】
ステップ長計算部123は、一歩行周期分のY方向軌跡の歩行波形から、第1ピークと第2ピークの間の区間を、一歩分のY方向軌跡の歩行波形として抽出する。ステップ長計算部123は、一歩分のY方向軌跡の歩行波形を用いて、足交差のタイミングにおける空間位置と、第1ピークの極小点のタイミングにおける空間位置との差の絶対値を計算する。足交差のタイミングにおける空間位置と、第1ピークの極小点のタイミングにおける空間位置との差の絶対値は、右足が前、左足が後ろの状態の右足ステップ長SRに相当する。また、ステップ長計算部123は、一歩分のY方向軌跡の歩行波形を用いて、足交差における空間位置と、第2ピークの極大点のタイミングにおける空間位置との差の絶対値を計算する。足交差における空間位置と、第2ピークの極大点のタイミングにおける空間位置との差の絶対値は、左足が前、右足が後ろの状態の左足ステップ長SLに相当する。
【0052】
図12には、モーションキャプチャによって計測された波形から実測された右足ステップ長S
Rと左足ステップ長S
Lを示す。足の動きの物理量に関する歩行波形から検出された歩行イベントは、モーションキャプチャによって実測される歩行イベントとは完全に一致するわけではない。そのため、モーションキャプチャによって計測されたステップ長と、歩行波形に基づいて算出されたステップ長とは、完全には一致しない。
【0053】
〔第2検出処理〕
歩行波形から歩行イベントのタイミングを順次特定し、足交差のタイミングを検出する第2計算方法について図面を参照しながら説明する。第2計算方法において、まず、計算装置12は、一歩行周期分のY方向加速度の歩行波形から爪先離地と踵接地のタイミングを検出する。次に、計算装置12は、Z方向加速度の歩行波形から脛骨垂直のタイミングを検出する。そして、計算装置12は、Y方向加速度の歩行波形から足交差のタイミングを検出する。以下において、爪先離地、踵接地、脛骨垂直、および足交差のタイミングを順番に検出する例を示す。
【0054】
まず、検出部121は、一歩行周期分のY方向加速度の歩行波形から爪先離地と踵接地を検出する。
図13は、モーションキャプチャによって計測された爪先および踵のZ方向高さと、データ取得装置11によって生成されたセンサデータを用いて計算装置12が生成したY方向加速度の歩行波形とを対応させたグラフである。モーションキャプチャによって計測された爪先のZ方向高さの波形を破線で示す。モーションキャプチャによって計測された踵のZ方向高さの波形を一点鎖線で示す。計算装置12が生成したY方向加速度の歩行波形を実践で示す。
【0055】
図13のように、Y方向加速度(実線)の歩行波形においては、歩行周期が20~40%のあたりに検出される最大ピーク(第1ピーク)に、二つの極大ピーク(ピークP
T1、ピークP
T2)と、一つの極小ピーク(ピークP
TV)が検出された(点線で囲った範囲内)。爪先離地のタイミングは、ピークP
T1が検出されるタイミングT
T1と、ピークP
T2が検出されるタイミングT
T2との間のピークP
TVが検出されるタイミングT
Tに相当する。
【0056】
モーションキャプチャで計測された踵のZ方向高さ(一点鎖線)が最小となるタイミングが、踵接地のタイミングに相当する。しかしながら、Y方向加速度(実線)には、踵接地において特徴的なピークは表れない。そのため、本実施形態においては、踵接地のタイミングの近傍に表れる特徴的なピークを用いて、踵接地のタイミングを特定する。
【0057】
図13のように、Y方向加速度(実線)の歩行波形においては、歩行周期が60%を超えたあたりに最小ピーク(ピークP
H1)が検出された。このピークP
H1は、遊脚終期における足の急減速のタイミングに相当する。また、Y方向加速度(実線)の歩行波形においては、歩行周期が70%のあたりに極大となるピークP
H2が検出された。このピークP
H2は、ヒールロッカーのタイミングに相当する。データ取得装置11が足弓の位置に設置されていると、踵関節の回転軸よりも爪先側にデータ取得装置11が位置するため、ヒールロッカー(回転)の動作の際に、進行方向(+Y方向)の加速度分量が生じる。そのため、ヒールロッカーの動作の期間には、踵接地後に、接地した踵の外周に沿った回転によって、重力方向(Z方向)の加速度が進行方向(Y方向)に変換される期間が含まれる。
図13のように、ピークP
H1が検出されるタイミングT
H1から、ピークP
H2が検出されるタイミングT
H2までの期間に、踵接地のタイミングが含まれる。本実施形態においては、ピークP
H1が検出されるタイミングT
H1と、ピークP
H2が検出されるタイミングT
H2との中点のタイミングT
Hを、踵接地のタイミングに設定する。
【0058】
次に、計算装置12は、一歩行周期分のZ方向加速度の歩行波形から脛骨垂直のタイミングを検出する。
図14は、モーションキャプチャによって計測されたロール角(左軸)の波形と、データ取得装置11によって生成されたセンサデータを用いて計算装置12が生成したZ方向加速度の歩行波形(右軸)とを対応させたグラフである。モーションキャプチャで計測されたロール角の波形を破線で示す。計算装置12が生成したZ方向加速度の歩行波形を実線で示す。
【0059】
脛骨垂直は、地面に対して脛骨がほぼ垂直になる状態である。脛骨垂直において、踵関節は、ニュートラル状態となり、脛骨に対して足裏面が垂直になる。すなわち、脛骨垂直においては、踵関節の回転に伴うロール角が0度になる。
図14のように、モーションキャプチャによって計測されたロール角が0度のタイミングにおいて、Z方向加速度の歩行波形のピークが最大になる。脛骨垂直は、Z方向加速度の歩行波形における、爪先離地と踵接地の間の最大値のタイミングに相当する。検出部121は、Z方向加速度の歩行波形における、爪先離地と踵接地の間の最大値のタイミングを、脛骨垂直のタイミングとして検出する。
【0060】
次に、計算装置12は、一歩行周期分のY方向加速度の歩行波形から足交差のタイミングを検出する。
図15は、モーションキャプチャによって計測された左足の踵と爪先、右足の爪先のY方向位置(左軸)の波形と、データ取得装置11によって生成されたセンサデータを用いて計算装置12が生成したY方向加速度の歩行波形(右軸)とを対応させたグラフである。モーションキャプチャで計測された左足の踵のY方向位置の波形を二点鎖線で示す。モーションキャプチャで計測された左足の爪先のY方向位置の破線を破線で示す。モーションキャプチャで計測された右足の爪先のY方向位置の波形を一点鎖線で示す。計算装置12が生成したY方向加速度の歩行波形を実線で示す。
【0061】
本実施形態では、地面に接地している左足が右足に対して前にある状態において、右足の爪先が左足の踵の位置を通過するタイミングをaと、右足の爪先が左足の爪先の位置を通過するタイミングをbの間の中央のタイミングを足交差のタイミングと定義する。
図15のように、足交差のタイミングは、Y方向加速度の歩行波形における爪先離地と脛骨垂直の間において、脛骨垂直に近い側の緩やかなピークの最大値のタイミングに相当する。検出部121は、脛骨垂直に近い側の緩やかなピークが最大になるタイミングを、足交差のタイミングとして検出する。第1検出処理で検出される足交差のタイミングと、第2検出処理で検出される足交差のタイミングは同一である。
【0062】
そして、ステップ長計算部123は、一歩行周期分のY方向軌跡の歩行波形から、爪先離地と踵接地の間の区間を、一歩分のY方向軌跡の歩行波形として抽出する。ステップ長計算部123は、一歩分のY方向軌跡の歩行波形を用いて、足交差のタイミングにおける空間位置と、踵接地における空間位置との差の絶対値を計算する。足交差のタイミングにおける空間位置と、踵接地における空間位置との差の絶対値は、右足が前、左足が後ろの状態の右足ステップ長SRに相当する。また、ステップ長計算部123は、一歩分のY方向軌跡の歩行波形を用いて、足交差における空間位置と、爪先離地における空間位置との差の絶対値を計算する。足交差における空間位置と、爪先離地における空間位置との差の絶対値は、左足が前、右足が後ろの状態の左足ステップ長SLに相当する。
【0063】
図15には、モーションキャプチャによって計測された波形から計測された右足ステップ長S
Rと左足ステップ長S
Lを示す。足の動きの物理量に関する歩行波形から検出された歩行イベントは、モーションキャプチャによって実測される歩行イベントと一致する。そのため、第2検出処理を用いれば、モーションキャプチャによって計測されたステップ長と、歩行波形に基づいて算出されたステップ長とが一致する。すなわち、第2検出処理を用いて算出されたステップ長の方が、第1検出処理を用いて算出されたステップ長よりも正確である。
【0064】
図16は、32名の被験者を母集団とし、モーションキャプチャで実測されたステップ長と、計算装置12が第2検出処理を用いて計算したステップ長の回帰直線である。モーションキャプチャで実測されたステップ長と、計算装置12が第2検出処理を用いて計算したステップ長の回帰直線の二乗平均平方根誤差(RMSE:Root Mean Squared Error)は0.093メートルであった。すなわち、モーションキャプチャで検出された足交差のタイミングと、計算装置12が検出した足交差のタイミングとの間には、相関関係が確認された。
【0065】
図12~
図15を用いて説明したように、検出部121は、データ取得装置11によって計測された足の動きに関する物理量に基づくセンサデータから歩行波形を生成し、生成した歩行波形から歩行イベントのタイミングを検出する。歩行イベントのタイミングを特定できれば、左右両足のステップ長を計算できる。ステップ長を算出できれば、歩行における左右両足のステップ長の非対称性等について検証できる。例えば、検出部121によって算出された左右両足のステップ長やそれらの非対称性は、図示しない別のシステムや表示装置などに出力されてもよい。検出部121によって算出された左右両足のステップ長は、歩容を計測する種々の用途や、歩容に基づいて身体状態を推測する種々の用途に応用できる。
【0066】
(動作)
次に、本実施形態の歩容計測システム1の計算装置12の動作について図面を参照しながら説明する。以下においては、計算装置12の検出部121やステップ長計算部123を動作の主体とする。なお、以下に示す動作の主体は、計算装置12であってもよい。
【0067】
〔検出部〕
まず、検出部121の動作について図面を参照しながら説明する。
図17は、検出部121の動作の一例について説明するためのフローチャートである。
【0068】
図17において、まず、検出部121は、データ取得装置11が設置された履物を履いて歩行する歩行者の足の動きの物理量に関するセンサデータをデータ取得装置11から取得する(ステップS11)。検出部121は、データ取得装置11のローカル座標系のセンサデータを取得する。例えば、検出部121は、足の動きに関するセンサデータとして、3次元の空間加速度や3次元の空間角速度をデータ取得装置11から取得する。
【0069】
次に、検出部121は、センサデータの座標系を、データ取得装置11のローカル座標系から世界座標系に変換する(ステップS12)。
【0070】
次に、検出部121は、世界座標系に変換後のセンサデータの時系列データを生成する(ステップS13)。
【0071】
次に、検出部121は、空間加速度および空間角速度のうち少なくともいずれかを用いて空間角度(足底角)を計算し、足底角の時系列データを生成する(ステップS14)。検出部121は、必要に応じて、空間速度や空間軌跡の時系列データを生成する。
【0072】
次に、検出部121は、二歩行周期分の足底角の歩行波形において、極小となる時刻(時刻td、時刻td+1)と極大になる時刻(時刻tb、時刻tb+1)を検出する(ステップS15)。
【0073】
次に、検出部121は、時刻tdと時刻tbの中点の時刻tmと、時刻td+1と時刻tb+1の中点の時刻tm+1を計算する(ステップS16)。
【0074】
次に、検出部121は、時刻tmから時刻tm+1までの波形を、一歩行周期分の歩行波形として切り出す(ステップS17)。
【0075】
そして、検出部121は、抽出部によって切り出された一歩行周期分の歩行波形から歩行イベントを検出する歩行イベント検出処理を実行する(ステップS18)。
【0076】
〔歩行イベント検出処理〕
次に、検出部121の歩行イベント検出処理(
図17のステップS18)について図面を参照しながら説明する。検出部121は、第1計算処理または第2計算処理によって歩行イベントを検出する。
図18は、第1検出処理について説明するためのフローチャートである。
図19は、第2検出処理について説明するためのフローチャートである。
【0077】
<第1検出処理>
図18において、まず、検出部121は、一歩行周期分のY方向加速度の歩行波形において、第1ピークと第2ピークを検出する(ステップS111)。
【0078】
次に、検出部121は、Y方向加速度の歩行波形において、第1ピークと第2ピークの間の極大ピークを検出する(ステップS112)。
【0079】
次に、検出部121は、Y方向加速度の歩行波形において、第1ピークと第2ピークの間の極大ピークのタイミングを、足交差のタイミングとして検出する(ステップS113)。
【0080】
<第2検出処理>
図19において、まず、検出部121は、一歩行周期分のY方向加速度の歩行波形において、爪先離地と踵接地のタイミングを検出する(ステップS121)。
【0081】
次に、検出部121は、Z方向加速度の歩行波形において、爪先離地のタイミングと踵接地のタイミングの間の区間から脛骨垂直のタイミングを検出する(ステップS122)。
【0082】
次に、検出部121は、Y方向加速度の歩行波形において、爪先離地のタイミングと脛骨垂直のタイミングの間の区間から、足交差のタイミングを検出する。
【0083】
〔ステップ長計算部〕
次に、ステップ長計算部123の動作の一例について図面を参照しながら説明する。
図20は、ステップ長計算部123の動作の一例について説明するためのフローチャートである。ステップ長計算部123は、第1計算処理または第2計算処理によって検出された歩行イベントのタイミングを用いて、左右両足のステップ長を計算する。
【0084】
図20において、まず、ステップ長計算部123は、一歩行周期分のY方向軌跡の歩行波形から、爪先離地と踵接地の間の区間を、一歩分のY方向軌跡の歩行波形として抽出する(ステップS141)。
【0085】
次に、ステップ長計算部123は、足交差のタイミングを基準として、一歩分のY方向軌跡の歩行波形を用いて、右足ステップ長SRと左足ステップ長SLを算出する(ステップS142)。
【0086】
以上のように、本実施形態の歩容計測システムは、データ取得装置と計算装置を備える。データ取得装置は、空間加速度および空間角速度を計測し、計測した空間加速度および空間角速度に基づいてセンサデータを生成し、生成したセンサデータを計算装置に送信する。計算装置は、検出部とステップ長計算部を有する。検出部は、歩行者の一方の足部に設置されたセンサによって計測された足の動きに関する物理量に基づくセンサデータを用いて歩行波形を生成し、生成された歩行波形から歩行イベントを検出する。ステップ長計算部は、検出された歩行イベントのタイミングに基づいて、左右両足のステップ長を計算する。
【0087】
本実施形態においては、歩行者の一方の足部に設置されたセンサによって計測された足の動きに関する物理量に基づくセンサデータを用いて生成された時系列データから歩行波形を抽出し、抽出された歩行波形から両足の歩行イベントを検出する。そして、本実施形態においては、検出された歩行イベントに基づいて、左右両足のステップ長を計算する。そのため、本実施形態によれば、片足に装着されたセンサによって計測される足の動きに関する物理量に基づいて、左右両足のステップ長を高精度で算出できる。
【0088】
本実施形態の一態様において、検出部は、一歩行周期分の進行方向加速度の歩行波形において、最大値を含む第1ピークと、最小値を含む第2ピークとを検出する。検出部は、第1ピークと第2ピークの間の極大ピークを検出し、極大ピークのタイミングを足交差のタイミングとして検出する。ステップ長計算部は、進行方向軌跡の歩行波形を用いて、足交差のタイミングを基準として、左右両足のステップ長を計算する。
【0089】
例えば、ステップ長計算部は、一歩行周期分の進行方向軌跡の歩行波形において、足交差のタイミングにおける進行方向位置と、第1ピークに含まれる二つの極大点の間の極小点のタイミングにおける進行方向位置との差を第1ステップ長として算出する。ステップ長計算部は、第2ピークに含まれる最小値のタイミングにおける進行方向位置と、足交差のタイミングにおける進行方向位置との差を第2ステップ長として算出する。
【0090】
本態様によれば、進行方向軌跡の歩行波形から検出されるピークのタイミングに基づいて、左右両足のステップ長を高精度で算出できる。
【0091】
本実施形態の一態様において、検出部は、一歩行周期分の進行方向加速度の歩行波形において、爪先離地のタイミングと踵接地のタイミングを検出する。検出部は、重力方向加速度の歩行波形において、爪先離地のタイミングと踵接地のタイミングの間に脛骨垂直のタイミングを検出する。検出部は、進行方向加速度の歩行波形において、爪先離地のタイミングと脛骨垂直のタイミングの間に足交差のタイミングを検出する。ステップ長計算部は、進行方向軌跡の歩行波形を用いて、足交差のタイミングを基準として、左右両足のステップ長を計算する。
【0092】
例えば、ステップ長計算部は、一歩行周期分の進行方向軌跡の歩行波形において、足交差のタイミングにおける進行方向位置と、爪先離地のタイミングにおける進行方向位置との差を第1ステップ長として算出する。ステップ長計算部は、踵接地のタイミングにおける進行方向位置と、足交差のタイミングにおける進行方向位置との差を第2ステップ長として算出する。
【0093】
本態様によれば、歩行波形から検出される爪先離地、踵接地、脛骨垂直、および足交差等の歩行イベントのタイミングに基づいて、左右両足のステップ長を算出できる。
【0094】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る歩容計測システムについて図面を参照しながら説明する。本実施形態の歩容計測システムは、歩行波形に基づいて算出された左右両足のステップ長を用いて、左右両足のステップ長の非対称性を計算する。本実施形態の歩容計測システムは、算出された歩行者の左右両足のステップ長の非対称性に基づいて、歩行者の身体状態を推定する。
【0095】
図21は、本実施形態の歩容計測システム2の構成の一例を示すブロック図である。
図21のように、歩容計測システム2は、データ取得装置21および計算装置22を備える。データ取得装置21と計算装置22は、有線で接続されてもよいし、無線で接続されてもよい。また、データ取得装置21と計算装置22は、単一の装置で構成してもよい。また、歩容計測システム2の構成からデータ取得装置21を除き、計算装置22だけで歩容計測システム2を構成してもよい。データ取得装置21は、第1の実施形態のデータ取得装置11と同様の構成である。以下においては、第1の実施形態とは異なる計算装置22について、第1の実施形態との相違点に着目して説明する。
【0096】
〔計算装置〕
図22は、計算装置22の構成の一例を示すブロック図である。計算装置22は、検出部221、ステップ長計算部223、非対称性計算部225、および推測部227を有する。
【0097】
検出部221は、履物に設置されたデータ取得装置21(センサ)からセンサデータを取得する。検出部221は、センサデータを用いて、データ取得装置21が設置された履物を履いた歩行者の歩行に伴う時系列データを生成する。検出部221は、生成した時系列データから、一歩行周期分または二歩行周期分の歩行波形データを抽出する。検出部221は、第1の実施形態の検出部121と同様の構成である。
【0098】
検出部221は、検出部221によって生成された歩行波形データから、データ取得装置21が設置された履物を履いて歩行する歩行者の歩行イベントを検出する。例えば、検出部221は、足の動きに関する歩行波形データから、歩行イベントごとの特徴を抽出する。例えば、検出部221は、抽出された歩行イベントごとの特徴のタイミングを、それぞれの歩行イベントのタイミングとして検出する。
【0099】
ステップ長計算部223は、一歩行周期分のY方向軌跡の歩行波形から、爪先離地と踵接地の間の区間を、一歩分のY方向軌跡の歩行波形として抽出する。ステップ長計算部123は、足交差のタイミングを基準として、一歩分のY方向軌跡の歩行波形を用いて、右足ステップ長SRと左足ステップ長SLを算出する。ステップ長計算部223は、第1の実施形態のステップ長計算部123と同様の構成である。
【0100】
非対称性計算部225は、検出部221によって検出された歩行イベントの時刻を特定する。非対称性計算部225は、特定された歩行イベントの時刻に基づいて、左右両足のステップ長の非対称性を算出する。例えば、非対称性計算部225は、特定された歩行イベントの時刻に基づいて、右足ステップ長SRと左足ステップ長SLの差(ステップ差とも呼ぶ)の絶対値を、右足ステップ長SRと左足ステップ長SLの和(ストライド長とも呼ぶ)で割った値を、左右両足のステップ長の非対称性として算出する。
【0101】
非対称性計算部225は、ステップ差をストライド長で割った値を、左右両足のステップ長の非対称性としてもよい。左右両足のステップ長の非対称性が正の場合は右足ステップ長の方が大きく、左右両足のステップ長の非対称性が負の場合は左足ステップ長の方が大きいことになる。ステップ差をストライド長で割った値を用いれば、左右両足のステップ長の非対称性の正負に基づいて、右足ステップ長と左足ステップ長の大小関係を評価できる。
【0102】
推測部227は、非対称性計算部225が算出した左右両足のステップ長の非対称性に基づいて、歩行者の身体状態を推測する。例えば、推測部227は、左右両足のステップ長の非対称性に基づいて、歩行者のエネルギーコストや、疼痛の具合、筋力低下状況、脳卒中の回復度といった身体状態を推測する。推測部227は、推測した歩行者の身体状態を、図示しないシステムや装置に出力する。
【0103】
左右両足のステップ長の非対称性は、エネルギーコストの大きさの指標になりうる。例えば、メタボリックシンドロームの傾向があり、エネルギーコストが大きい人は、歩行が不安定であり、左右両足のステップ長の非対称性が大きい傾向がみられる。例えば、メタボリックシンドロームの経過観察下にある人に関して、左右両足のステップ長の非対称性が大きくなる傾向がある場合、その人が使用する携帯端末等に対して、診察を勧める通知を送信する。診察を勧める通知を閲覧した人が、その通知に応じて診察を受ければ、症状の悪化を低減できる可能性がある。
【0104】
左右両足のステップ長の非対称性は、脚の異常の進行状況の指標になりうる。例えば、いずれか一方の脚に、疼痛があったり、怪我や脳卒中等の後遺症があったりする場合、左右両足のステップ長の非対称性が大きくなる傾向がある。例えば、症状の経過観察下にある人に関して、左右両足のステップ長の非対称性が大きくなる傾向がある場合、その人が使用する携帯端末等に対して、診察を勧める通知を送信する。診察を勧める通知を閲覧した人が、その通知に応じて診察を受ければ、脚の異常に対して適切な処置を行うことができる可能性がある。例えば、症状の経過観察下にある人が通院する医療機関の管理者の管理端末に疼痛のレベルを送信する。疼痛のレベルを閲覧した管理者が、疼痛のレベルに応じたアドバイスを管理端末に入力し、管理端末からその人の携帯端末にそのアドバイスを送信する。そのアドバイスを閲覧した人が、そのアドバイスに応じて行動すれば、疼痛を軽減できる可能性がある。例えば、脳卒中のリハビリ中の人に関する左右両足のステップ長の非対称性を、医学療法士の管理端末に送信する。ステップ長の非対称性を閲覧した管理者が、非対称性の値や変化に応じて、リハビリの状況を確認できる。
【0105】
左右両足のステップ長の非対称性は、脚の筋力低下の指標になりうる。例えば、脚の筋力が低下している人は、歩行が不安定であり、左右両足のステップ長の非対称性が大きい傾向がみられる。例えば、脚の筋力に低下がみられる人に関して、左右両足のステップ長の非対称性が大きくなる傾向がある場合、その人が使用する携帯端末等に対して、脚の筋力のトレーニングを勧める通知を送信する。脚の筋力のトレーニングを勧める通知を閲覧した人が、その通知に応じてトレーニングをすれば、脚の筋力を向上できる可能性がある。
【0106】
左右両足のステップ長の非対称性は、健康や美容の指標になりうる。例えば、健康であり、歩容の美しい人は、歩行のバランスがよく、左右両足のステップ長の非対称性が小さい傾向がある。例えば、健康や美容を気遣う人に対して、左右両足の非対称性が小さくなるような歩行に関するアドバイスを、その人の携帯端末等に通知すれば、その人の歩容を改善できる可能性がある。
【0107】
推測部227は、歩行波形から抽出された特徴量を学習させた学習済みモデルを用いて、歩行者の身体状態を推定してもよい。例えば、推測部227は、学習対象の歩行波形から抽出された特徴量を学習させた学習済みモデルに、推測対象の歩行波形から抽出される特徴量を入力し、歩行者の身体状態を推測する。例えば、学習済みモデルは、学習対象の歩行波形から抽出された特徴量(予測子とも呼ぶ)を組み合わせた予測子ベクトルを学習させたモデルである。例えば、学習済みモデルは、3軸方向の加速度や、3軸方向の角速度、3軸方向の軌跡、3軸方向の足底角のうち少なくともいずれかの歩行波形から抽出された特徴量(予測子)を組み合わせた予測子ベクトルを学習させたモデルである。
【0108】
図23は、学習装置25が、予測子ベクトル(時間因子)と身体状態を学習する一例を示す概念図である。例えば、身体状態は、左右両足のステップ長の非対称性に関する指標である。
図24は、学習装置25に学習させた学習済みモデル250に、歩行波形から抽出された特徴量1~nを入力し、身体状態が出力される一例を示す概念図である(nは自然数)。
【0109】
学習装置25は、足の動きに関する物理量に基づく歩行波形から抽出された特徴量(予測子)を組み合わせた予測子ベクトルと、身体状態とを訓練データとした学習を行う。学習装置25は、学習によって、実測された歩行波形から抽出された特徴量を入力した際に、身体状態を出力する学習済みモデル250を生成する。例えば、学習装置25は、爪先離地や踵接地、脛骨垂直、足交差の発生時刻等の特徴量を説明変数とし、身体状態を応答変数とする教師あり学習によって、学習済みモデル250を生成する。例えば、学習装置25は、爪先離地や踵接地、脛骨垂直、足交差の歩行イベントの発生時刻を学習済みモデル250に入力した際の学習済みモデル250からの出力を、身体状態の推測結果として出力する。
【0110】
(動作)
次に、本実施形態の歩容計測システム2の動作について図面を参照しながら説明する。以下においては、歩容計測システム2の計算装置22が、歩行波形から検出された歩行イベントに基づいて計算された左右両足のステップ長の非対称性を用いて、歩行者の身体状態を推測する処理について説明する。以下においては、計算装置22を動作の主体として説明する。
図25は、計算装置22が、歩行者の身体状態を推測する処理について説明するためのフローチャートである。
【0111】
図25において、まず、計算装置22は、身体状態の推測対象の歩行波形を取得する(ステップS201)。
【0112】
次に、計算装置22は、取得した歩行波形を用いて、左右両足のステップ長(右足ステップ長SR、左足ステップ長SL)を計算する(ステップS202)。
【0113】
次に、計算装置22は、左右両足のステップ長の非対称性を算出する(ステップS203)。
【0114】
次に、計算装置22は、左右両足のステップ長の非対称性に基づいて、身体状態を推測する(ステップS204)。
【0115】
そして、計算装置22は、推測された身体状態を出力する(ステップS205)。
【0116】
(適用例)
次に、本実施形態の歩容計測システム2の適用例について図面を参照しながら説明する。本適用例では、計算装置22によって出力された身体状態に関する指標を表示させたり、健康管理システム等に送信させたりする例である。以下の例においては、歩行者の靴の中にデータ取得装置が設置され、そのデータ取得装置によって計測された足の動きに関する物理量に基づくセンサデータが、歩行者の所持する携帯端末に送信されるものとする。携帯端末に送信されたセンサデータは、携帯端末にインストールされたプログラムによってデータ処理されるものとする。
【0117】
図26は、データ取得装置(図示しない)が設置された靴200を履いた歩行者の携帯端末210の画面に、その歩行者の身体状態に関する情報を表示させる例である。
図26の例では、「非対称性が大きくなっています」という身体状態に関する情報を表示される。携帯端末210の画面に表示された身体状態に関する情報を閲覧した歩行者は、その情報に応じた行動をとることができる。例えば、携帯端末210の画面に表示された身体状態に関する情報を閲覧した歩行者は、その情報に応じて、医療機関等に自身の身体状態について連絡できる。例えば、携帯端末210の画面に表示された身体状態に関する情報を閲覧した歩行者は、その身体状態に応じて、脚の筋力をトレーニングするきっかけを得ることができる。
【0118】
図27は、データ取得装置(図示しない)が設置された靴200を履いた歩行者の携帯端末210の画面に、身体状態に応じたアドバイスを表示させる例である。例えば、疼痛のレベルやリハビリの回復度などに応じて、病院で診察を受けることを勧めるアドバイスを携帯端末210の画面に表示させる。例えば、疼痛のレベルやリハビリの回復度などに応じて、受診可能な医療機関のサイトへのリンク先や電話番号を携帯端末210の画面に表示させてもよい。
【0119】
図28は、データ取得装置(図示しない)が設置された靴200を履いた歩行者の携帯端末210から、身体状態に応じた情報を、医療機関等に設置された管理システムに送信する例である。例えば、管理システムを扱う医療従事者等は、歩行者の身体状態に応じて、その歩行者に対して診察を受けることを勧める情報を、管理システムを介して携帯端末210に送信する。例えば、診察を受けることを勧める情報を閲覧した歩行者は、その情報に応じて病院に診察を受けに出向くことができる。
【0120】
以上のように、本実施形態の歩容計測システムは、データ取得装置と計算装置を備える。データ取得装置は、空間加速度および空間角速度を計測し、計測した空間加速度および空間角速度に基づいてセンサデータを生成し、生成したセンサデータを計算装置に送信する。計算装置は、検出部、ステップ長計算部、非対称性計算部、および推測部を備える。検出部は、歩行者の一方の足部に設置されたセンサによって計測された足の動きに関する物理量に基づくセンサデータを用いて歩行波形を生成し、生成された歩行波形から歩行イベントを検出する。ステップ長計算部は、検出された歩行イベントのタイミングに基づいて、左右両足のステップ長を計算する。非対称性計算部は、左右両足のステップ長の非対称性を計算する。推測部は、算出された左右両足のステップ長の非対称性に基づいて、歩行者の身体状態を推測する。例えば、非対称性計算部は、左右両足のステップ長の差を、左右両足のステップ長の和で割った値を、左右両足のステップ長の非対称性として算出する。
【0121】
本実施形態においては、歩行者の歩行波形から検出された歩行イベントの発生タイミングに基づいて左右両足のステップ長の非対称性を算出し、算出された非対称性を解析する。人間の身体状態は、左右両足のステップ長の非対称性に影響を及ぼすことがある。そのため、本実施形態によれば、歩行者の左右両足のステップ長の非対称性を解析することによって、その歩行者の身体情報を推測できる。
【0122】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係る計算装置について図面を参照しながら説明する。本実施形態の計算装置は、各実施形態の計算装置を簡略化した構成である。
【0123】
図29は、本実施形態の計算装置32の構成の一例を示すブロック図である。計算装置32は、検出部321とステップ長計算部323を備える。検出部321は、歩行者の一方の足部に設置されたセンサによって計測された足の動きに関する物理量に基づくセンサデータを用いて歩行波形を生成し、生成された歩行波形から歩行イベントを検出する。ステップ長計算部323は、検出された歩行イベントのタイミングに基づいて、左右両足のステップ長を計算する。
【0124】
本実施形態においては、歩行者の一方の足部に設置されたセンサによって計測された足の動きに関する物理量に基づくセンサデータを用いて生成された時系列データから歩行波形を抽出し、抽出された歩行波形から両足の歩行イベントを検出する。そして、本実施形態においては、検出された歩行イベントに基づいて、左右両足のステップ長を計算する。そのため、本実施形態によれば、片足に装着されたセンサによって計測される足の動きに関する物理量に基づいて、左右両足のステップ長を高精度で算出できる。
【0125】
(ハードウェア)
ここで、実施形態に係る計算装置等の処理を実行するハードウェア構成について、
図30の情報処理装置90を一例として挙げて説明する。なお、
図30の情報処理装置90は、各実施形態の計算装置等の処理を実行するための構成例であって、本発明の範囲を限定するものではない。
【0126】
図30のように、情報処理装置90は、プロセッサ91、主記憶装置92、補助記憶装置93、入出力インターフェース95、および通信インターフェース96を備える。
図30においては、インターフェースをI/F(Interface)と略して表記する。プロセッサ91、主記憶装置92、補助記憶装置93、入出力インターフェース95、および通信インターフェース96は、バス98を介して互いにデータ通信可能に接続される。また、プロセッサ91、主記憶装置92、補助記憶装置93および入出力インターフェース95は、通信インターフェース96を介して、インターネットやイントラネットなどのネットワークに接続される。
【0127】
プロセッサ91は、補助記憶装置93等に格納されたプログラムを主記憶装置92に展開し、展開されたプログラムを実行する。本実施形態においては、情報処理装置90にインストールされたソフトウェアプログラムを用いる構成とすればよい。プロセッサ91は、本実施形態に係る計算装置による処理を実行する。
【0128】
主記憶装置92は、プログラムが展開される領域を有する。主記憶装置92は、例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory)などの揮発性メモリとすればよい。また、MRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)などの不揮発性メモリを主記憶装置92として構成・追加してもよい。
【0129】
補助記憶装置93は、種々のデータを記憶する。補助記憶装置93は、ハードディスクやフラッシュメモリなどのローカルディスクによって構成される。なお、種々のデータを主記憶装置92に記憶させる構成とし、補助記憶装置93を省略することも可能である。
【0130】
入出力インターフェース95は、情報処理装置90と周辺機器とを接続するためのインターフェースである。通信インターフェース96は、規格や仕様に基づいて、インターネットやイントラネットなどのネットワークを通じて、外部のシステムや装置に接続するためのインターフェースである。入出力インターフェース95および通信インターフェース96は、外部機器と接続するインターフェースとして共通化してもよい。
【0131】
情報処理装置90には、必要に応じて、キーボードやマウス、タッチパネルなどの入力機器を接続するように構成してもよい。それらの入力機器は、情報や設定の入力に使用される。なお、タッチパネルを入力機器として用いる場合は、表示機器の表示画面が入力機器のインターフェースを兼ねる構成とすればよい。プロセッサ91と入力機器との間のデータ通信は、入出力インターフェース95に仲介させればよい。
【0132】
また、情報処理装置90には、情報を表示するための表示機器を備え付けてもよい。表示機器を備え付ける場合、情報処理装置90には、表示機器の表示を制御するための表示制御装置(図示しない)が備えられていることが好ましい。表示機器は、入出力インターフェース95を介して情報処理装置90に接続すればよい。
【0133】
以上が、本発明の各実施形態に係る計算装置を可能とするためのハードウェア構成の一例である。なお、
図30のハードウェア構成は、各実施形態に係る計算装置の演算処理を実行するためのハードウェア構成の一例であって、本発明の範囲を限定するものではない。また、各実施形態に係る計算装置に関する処理をコンピュータに実行させるプログラムも本発明の範囲に含まれる。
【0134】
さらに、各実施形態に係るプログラムを記録した非一過性の記録媒体(プログラム記録媒体とも呼ぶ)も本発明の範囲に含まれる。例えば、記録媒体は、例えば、CD(Compact Disc)やDVD(Digital Versatile Disc)などの光学記録媒体で実現できる。また、記録媒体は、USB(Universal Serial Bus)メモリやSD(Secure Digital)カードなどの半導体記録媒体や、フレキシブルディスクなどの磁気記録媒体、その他の記録媒体によって実現してもよい。
【0135】
各実施形態の計算装置の構成要素は、任意に組み合わせることができる。また、各実施形態の計算装置の構成要素は、ソフトウェアによって実現してもよいし、回路によって実現してもよい。
【0136】
以上、実施形態を参照して本発明を説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0137】
1、2 歩容計測システム
11、21 データ取得装置
12、22、32 計算装置
111 加速度センサ
112 角速度センサ
113 制御部
115 データ送信部
121、221、321 検出部
123、223、323 ステップ長計算部
225 非対称性計算部
227 推測部