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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】コイルおよびステータの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/12 20060101AFI20240501BHJP
   H02K 15/04 20060101ALI20240501BHJP
   H02K 3/34 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
H02K15/12 D
H02K15/04 A
H02K3/34 B
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022555385
(86)(22)【出願日】2021-09-28
(86)【国際出願番号】 JP2021035731
(87)【国際公開番号】W WO2022075126
(87)【国際公開日】2022-04-14
【審査請求日】2023-04-03
(31)【優先権主張番号】P 2020170168
(32)【優先日】2020-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020207985
(32)【優先日】2020-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】石川 雅大
(72)【発明者】
【氏名】藪井 博昭
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 浩二
(72)【発明者】
【氏名】星野 彰教
【審査官】若林 治男
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-161751(JP,A)
【文献】特開2016-092866(JP,A)
【文献】特開2014-075952(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/12
H02K 15/04
H02K 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スロットを含むステータコアに配置されるコイルの製造方法であって、
絶縁被膜処理が行われていないコイル用線材を前記ステータコアに配置可能に曲げ成形する曲げ成形工程と、
円形形状の断面を有するとともに前記絶縁被膜処理が行われていない前記コイル用線材の前記スロットに収容される部分の外形を変形させる断面成形工程と、
前記曲げ成形工程および前記断面成形工程の後、曲げ成形後でかつ断面成形後の前記コイル用線材に前記絶縁被膜処理を行う絶縁処理工程と、
前記絶縁処理工程の後、前記ステータコアに前記コイル用線材を配置していない状態で、前記絶縁処理後の前記コイル用線材に熱処理を行う熱処理工程と、を備える、コイルの製造方法。
【請求項2】
前記断面成形工程は、前記コイル用線材の断面を前記スロットの内側面に対向する部分の外形が前記スロットの内側面に沿った形状となるように成形する工程である、請求項1に記載のコイルの製造方法。
【請求項3】
前記断面成形工程は、前記曲げ成形工程の後、曲げ成形後の前記コイル用線材の断面を型鍛造によって前記スロットの内側面に対向する部分の外形が前記スロットの内側面に沿った形状となるように成形する工程である、請求項2に記載のコイルの製造方法。
【請求項4】
前記断面成形工程は、前記曲げ成形工程の前に、曲げ成形前の前記コイル用線材の断面を圧延成形によって前記スロットの内側面に対向する部分の外形が前記スロットの内側面に沿った形状となるように成形する工程である、請求項2に記載のコイルの製造方法。
【請求項5】
スロットを含むステータコアに配置されるコイルの製造方法であって、
絶縁被膜処理が行われていないコイル用線材を前記ステータコアに配置可能に曲げ成形する曲げ成形工程と、
円形形状の断面を有するとともに前記絶縁被膜処理が行われていない前記コイル用線材の前記スロットに収容される部分の外形を変形させる断面成形工程と、
前記曲げ成形工程および前記断面成形工程の後、曲げ成形後でかつ断面成形後の前記コイル用線材に前記絶縁被膜処理を行う絶縁処理工程と、
前記断面成形工程の後かつ前記曲げ成形工程の前に、断面成形後でかつ曲げ成形前の前記コイル用線材を焼鈍する焼鈍工程と、を備え、
前記断面成形工程は、前記曲げ成形工程の前に、曲げ成形前の前記コイル用線材の断面を圧延成形によって前記スロットの内側面に対向する部分の外形が前記スロットの内側面に沿った形状となるように成形する工程である、コイルの製造方法。
【請求項6】
前記コイルは、互いに異なる前記スロットに収容される一対のスロット収容部を含み、
前記断面成形工程は、前記一対のスロット収容部のうちの一方となる部分の断面形状と、前記一対のスロット収容部のうちの他方となる部分の断面形状とを異ならせるように、前記コイル用線材の断面を成形する工程である、請求項1~5のいずれか1項に記載のコイルの製造方法。
【請求項7】
前記コイルは、互いに異なる前記スロットに収容される一対のスロット収容部および前記一対のスロット収容部同士を接続するコイルエンド部を有するセグメント導体を含み、
前記断面成形工程は、前記スロット収容部となる部分の断面形状と、前記コイルエンド部となる部分の断面形状とを異ならせるように、前記コイル用線材の断面を成形する工程である、請求項1~6のいずれか1項に記載のコイルの製造方法。
【請求項8】
前記コイルは、前記ステータコアの径方向に並ぶように前記スロットに収容される複数のスロット収容部を含み、
前記断面成形工程は、前記スロットの内側面に対向する部分は内側面に沿った形状になるとともに、前記径方向に隣り合う前記スロット収容部に対して対向する部分は前記ステータコアの軸方向から見て前記径方向に直交する平坦面を有するように、前記コイル用線材の断面を成形する工程である、請求項1~7のいずれか1項に記載のコイルの製造方法。
【請求項9】
前記コイルは、互いに異なる前記スロットに収容される一対のスロット収容部および前記一対のスロット収容部同士を接続するコイルエンド部を有するセグメント導体を含み、
前記絶縁処理工程の前に、前記コイル用線材を前記セグメント導体の長さに切断する切断工程をさらに備える、請求項1~8のいずれか1項に記載のコイルの製造方法。
【請求項10】
前記絶縁処理工程は、断面成形後の前記コイル用線材に電着塗装によって前記絶縁被膜処理を行う工程である、請求項1~9のいずれか1項に記載のコイルの製造方法。
【請求項11】
スロットを含むステータコアと前記ステータコアに配置されるコイルとを備えるステータの製造方法であって、
絶縁被膜処理が行われていないコイル用線材を前記ステータコアに配置可能に曲げ成形する曲げ成形工程と、
円形形状の断面を有するとともに前記絶縁被膜処理が行われていない前記コイル用線材の前記スロットに収容される部分の外形を変形させる断面成形工程と、
前記曲げ成形工程および前記断面成形工程の後、曲げ成形後でかつ断面成形後の前記コイル用線材に前記絶縁被膜処理を行う絶縁処理工程と、
前記絶縁処理工程の後、前記ステータコアに前記コイル用線材を配置していない状態で、前記絶縁処理後の前記コイル用線材に熱処理を行う熱処理工程と、
前記処理工程の後、曲げ成形後および断面成形後でかつ処理後の前記コイル用線材から形成された前記コイルを前記ステータコアに配置するコイル配置工程と、を備える、ステータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイルおよびステータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コイル用線材の断面を成形するコイルの製造方法が知られている。このようなステータは、たとえば、特開2020-36427号公報に開示されている。
【0003】
特開2020-36427号公報には、ステータに配置されるセグメントコイル(コイル)の製造方法が開示されている。特開2020-36427号公報に記載のセグメントコイルの製造方法では、絶縁性の被膜が予め形成された直線状コイル(コイル用線材)に対して、プレス治具または圧延ロールを用いて、コイル用線材の部分毎に断面形状が異なるように断面を成形(変形)する断面成形工程が行われる。具体的には、断面形成後に比較的複雑な形状に曲げ成形されるコイルエンド部となる部分に形成された絶縁被膜が劣化し易いので、コイルエンド部となる部分に形成された絶縁被膜の薄肉化を抑制するために、断面成形時にコイルエンド部となる部分の変形量がスロット収容部となる部分と比較して小さくなるように、断面が成形される。言い換えると、特開2020-36427号公報に記載のセグメントコイルの製造方法では、断面成形時にスロット収容部となる部分の変形量が比較的大きくなるように、断面が成形される。この場合、断面成形後に、スロット収容部となる部分に形成された絶縁性の被膜が比較的薄くなる(薄肉化する)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-36427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特開2020-36427号公報に記載のセグメントコイルの製造方法では、断面成形後に、スロット収容部となる部分に形成された絶縁性の被膜が比較的薄くなる(薄肉化する)ので、断面成形時の変形量の誤差を考慮して、比較的厚さの大きい絶縁性の被膜が予め形成されている直線状コイルを用いる必要があると考えられる。このため、スロット収容部となる断面成形後の直線状コイルの部分において、絶縁性の被膜の厚さがスロット収容部の絶縁性を確保可能な厚さと比較して必要以上に大きく形成される場合があると考えられる。この場合、絶縁性の被膜の厚さが必要以上に大きいため、スロット内における絶縁性の被膜の占有率が大きくなる。そのため、スロットにおけるスロット収容部の占積率は小さくなってしまう。このため、スロットにおけるスロット収容部の占積率を向上させることが可能なコイルおよびステータの製造方法が望まれている。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、コイルエンド部の絶縁性を向上させながらスロットにおけるスロット収容部の占積率を向上させることが可能なコイルおよびステータの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面におけるコイルの製造方法は、スロットを含むステータに配置されるコイルの製造方法であって、絶縁被膜処理が行われていないコイル用線材をステータに配置可能に曲げ成形する曲げ成形工程と、円形形状の断面を有するとともに絶縁被膜処理が行われていないコイル用線材のスロットに収容される部分の外形を変形させる断面成形工程と、曲げ成形工程および断面成形工程の後、曲げ成形後でかつ断面成形後のコイル用線材に絶縁被膜処理を行う絶縁処理工程と、絶縁処理工程の後、ステータコアにコイル用線材を配置していない状態で、絶縁処理後の前記コイル用線材に熱処理を行う熱処理工程とを備える。
【0008】
この発明の第1の局面におけるコイルの製造方法は、上記のように、絶縁被膜処理が行われていないコイル用線材のスロットに収容される部分の外形を変形させる断面成形工程を備える。これにより、スロット収容部となるコイル用線材の部分の外形をスロットに配置するための所望の形状に変形させることができる。また、上記第1の局面におけるコイルの製造方法は、上記のように、断面成形工程の後、断面成形後のコイル用線材に絶縁被膜処理を行う絶縁処理工程を備える。これにより、予めコイル用線材に絶縁性の被膜が形成されている場合と異なり、断面成形工程における絶縁性の被膜の薄肉化を考慮する必要がないので、絶縁性の被膜の厚みを必要以上に大きくする必要がない。すなわち、断面成形工程において外径がスロットに配置するための所望の形状に変形されたスロット収容部となるコイル用線材の部分に対して、絶縁性の被膜が最適な厚さ(コイルの絶縁性を確保可能な最低限の厚さ)となるように絶縁被膜処理を行うことができる。これにより、絶縁性の被膜の厚さが必要以上に大きくならないので、スロット内における絶縁性の被膜の占有率が大きくなるのを防止することができる。これらの結果、スロットにおけるスロット収容部の占積率を向上させることができる。また、上記第1の局面におけるコイルの製造方法では、上記のように、曲げ成形工程の後、曲げ成形後のコイル用線材に絶縁被膜処理を行う絶縁処理工程を備える。これにより、絶縁被膜が予め形成されたコイル用線材に対してコイルエンド部となる部分に曲げ成形が行われる場合と異なり、絶縁被膜が劣化しないので、コイルエンド部の絶縁性を向上させることができる。これらの結果、コイルエンド部の絶縁性を向上させながらスロットにおけるスロット収容部の占積率を向上させることができる。また、上記目的を達成するために、この発明の第2の局面におけるコイルの製造方法は、スロットを含むステータコアに配置されるコイルの製造方法であって、絶縁被膜処理が行われていないコイル用線材をステータコアに配置可能に曲げ成形する曲げ成形工程と、円形形状の断面を有するとともに絶縁被膜処理が行われていないコイル用線材のスロットに収容される部分の外形を変形させる断面成形工程と、曲げ成形工程および断面成形工程の後、曲げ成形後でかつ断面成形後のコイル用線材に絶縁被膜処理を行う絶縁処理工程と、断面成形工程の後かつ曲げ成形工程の前に、断面成形後でかつ曲げ成形前のコイル用線材を焼鈍する焼鈍工程と、を備え、断面成形工程は、曲げ成形工程の前に、曲げ成形前のコイル用線材の断面を圧延成形によってスロットの内側面に対向する部分の外形がスロットの内側面に沿った形状となるように成形する工程である。
【0009】
また、上記目的を達成するために、この発明の第の局面におけるステータの製造方法は、スロットを含むステータコアとステータコアに配置されるコイルとを備えるステータの製造方法であって、絶縁被膜処理が行われていないコイル用線材をステータコアに配置可能に曲げ成形する曲げ成形工程と、円形形状の断面を有するとともに絶縁被膜処理が行われていないコイル用線材の断面をスロットの内側面に対向する部分の外形がスロットの内側面に沿った形状となるように成形する断面成形工程と、曲げ成形工程および断面成形工程の後、曲げ成形後でかつ断面成形後のコイル用線材に絶縁被膜処理を行う絶縁処理工程と、絶縁処理工程の後、ステータコアにコイル用線材を配置していない状態で、絶縁処理後のコイル用線材に熱処理を行う熱処理工程と、熱処理工程の後、曲げ成形後および断面成形後かつ処理後のコイル用線材から形成されたコイルをステータコアに配置する配置工程と、を備える。
【0010】
この発明の第2の局面におけるステータの製造方法は、上記のように、上記第1の局面におけるコイルの製造方法と同様の断面成形工程と絶縁処理工程とを備える。これにより、上記第1の局面におけるコイルの製造方法と同様に、スロット内における絶縁性の被膜の占有率が大きくなるのを防止することができる。また、上記第2の局面におけるステータの製造方法は、上記のように、断面成形後かつ絶縁被膜処理後のコイル用線材から形成されたコイルをステータコアに配置するコイル配置工程を備える。これにより、スロット内における絶縁性の被膜の占有率が大きくなるのを防止することが可能なコイル用線材から形成されたコイルをステータコアに配置することができる。これらの結果、上記第1の局面におけるコイルの製造方法と同様に、スロットにおけるスロット収容部の占積率を向上させることができる。また、上記第2の局面におけるステータの製造方法は、上記のように、上記第1の局面におけるコイルの製造方法と同様の曲げ成形工程と絶縁処理工程とを備える。これにより、上記第1の局面におけるコイルの製造方法と同様に、コイルエンド部の絶縁性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、上記のように、スロットにおけるスロット収容部の占積率を向上させることが可能であるとともにコイルエンド部の絶縁性を向上させることが可能なコイルおよびステータの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態による回転電機の構成を示す平面図である。
図2】第1実施形態によるステータを径方向内側から見た斜視図である。
図3】第1実施形態によるステータのスロット収容部の構成を示す平面図である。
図4】第1実施形態によるステータのセグメント導体の構成を示す斜視図である。
図5】第1実施形態によるステータのセグメント導体の断面形状の構成を示す平面図である。(図5Aは、一方のスロット収容部の(図4の500-500線に沿った)断面図である。図5Bは、他方のスロット収容部の(図4の600-600線に沿った)断面図である。図5Cは、コイルエンド部の(図4の700-700線に沿った)断面図である。)
図6】第1実施形態によるステータのコイルエンド部の構成を示す部分拡大断面図である。
図7】第1実施形態によるステータの製造方法を示すフロー図である。
図8】第2実施形態によるステータの製造方法を示すフロー図である。
図9】第1実施形態の第1変形例によるステータのスロット収容部の構成を示す平面図である。
図10】第1実施形態の第2変形例によるステータのスロット収容部の構成を示す平面図である。
図11】第1実施形態の第3変形例によるステータの製造方法を示すフロー図である。
図12】第1実施形態の第4変形例によるステータの製造方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
[第1実施形態]
(ステータの構成)
まず、図1図6を参照して、第1実施形態によるステータ100の構成について説明する。
【0015】
以下の説明では、「軸方向」とは、ステータ100が備えるステータコア10(図1参照)の回転軸線(符号O)(Z方向)に沿った方向を意味する。また、「周方向」とは、ステータコア10の周方向(A方向)を意味する。また、「径方向」とは、ステータコア10の径方向(B方向)を意味する。そして、ステータコア10の軸方向(Z方向)の一方側および他方側を、それぞれ、Z1側およびZ2側とする。また、ステータコア10の径方向(B方向)の一方側(内径側)および他方側(外径側)を、それぞれ、B1側およびB2側とする。
【0016】
図1に示すように、ステータ100は、ロータ110と共に、回転電機120の一部を構成する。回転電機120は、たとえば、モータ、ジェネレータ、または、モータ兼ジェネレータである。ロータ110は、ステータ100のB1側に、ロータ110の外周面とステータ100の内周面とが径方向に対向するように配置されている。すなわち、ステータ100は、インナーロータ型の回転電機120の一部として構成されている。
【0017】
ステータ100は、ステータコア10と、コイル20と、を備える。ステータコア10は、Z方向に沿った中心軸線Oを中心軸とした円筒形状を有する。ステータコア10は、複数の電磁鋼板(たとえば、珪素鋼板)がZ方向に積層されることにより形成されている。
【0018】
ステータコア10は、円環状のバックヨーク11と、バックヨーク11からB1側に突出する複数のティース12と、A方向に隣接するティース12同士の間に形成される複数のスロット13と、を含む。図2に示すように、複数のスロット13の各々は、ステータコア10の軸方向に延びるように設けられている。
【0019】
図1に示すように、コイル20は、複数のセグメント導体30を含む。複数のセグメント導体30同士は、互いに接合されている。具体的には、Z1側に配置されたセグメント導体30の後述するスロット収容部31(図4参照)の端部と、Z2側に配置されたセグメント導体30のスロット収容部31の端部とが、スロット13内において接合されている。また、図3に示すように、セグメント導体30(スロット収容部31およびコイルエンド部32)の断面形状は、矩形状である。すなわち、セグメント導体30は、平角導体である。また、セグメント導体30は、銅により形成されている。なお、セグメント導体30は、アルミニウムにより形成されていてもよい。
【0020】
図2に示すように、複数のセグメント導体30は、それぞれ、複数のスロット13を跨ぐように配置されている。具体的には、複数のセグメント導体30は、それぞれ、互いに異なるスロット13に収容(挿入)される一対のスロット収容部31(図4参照)を含む。一対のスロット収容部31が収容されているスロット13の間には、複数のスロット13が設けられている。また、複数のセグメント導体30は、それぞれ、スロット収容部31に接続されるコイルエンド部32を含む。すなわち、コイルエンド部32は、一対のスロット収容部31同士を接続する。これにより、セグメント導体30は、径方向に見て略U字状(図4参照)に形成されている。
【0021】
また、コイルエンド部32は、ステータコア10の軸方向の外側に設けられる。具体的には、コイルエンド部32は、ステータコア10の軸方向におけるZ1方向側の端面10a、および、ステータコア10の軸方向におけるZ2方向側の端面10bの各々から突出している。
【0022】
図3に示すように、スロット13は、径方向外側に設けられたバックヨーク11の壁部11aと、2つのティース12の周方向側面12aとに囲まれた部分である。そして、スロット13には、径方向内側に開口する開口部13aが設けられている。また、スロット13は、軸方向両側のそれぞれに開口している。なお、壁部11aおよび周方向側面12aは、請求の範囲の「スロット13の内側面」の一例である。
【0023】
開口部13aは、周方向に開口幅W1を有する。開口幅W1は、スロット13のコイル20が配置される部分の周方向における幅W2よりも小さい。すなわち、スロット13は、セミオープン型のスロットとして構成されている。また、スロット13の幅W2は、径方向位置によって異なる。具体的には、幅W2は、径方向外側ほど大きくなる。
【0024】
また、複数の(図3では6つ)スロット収容部31は、スロット13内において、径方向に並んで配置されている。スロット13内のスロット収容部31の周方向の幅W3は、スロット13の形状に合わせるように、径方向外側のスロット収容部31ほど大きい。また、スロット13内のスロット収容部31の断面積は互いに等しいので、スロット13内のスロット収容部31の径方向の幅W4は、径方向外側のスロット収容部31ほど小さい。
【0025】
また、セグメント導体30は、絶縁のために設けられる絶縁被膜40により被覆(コーティング)されている。絶縁被膜40は、たとえば熱硬化性樹脂等の絶縁材料からなる。
【0026】
また、図4に示すように、コイルエンド部32は、軸方向から見て、径方向に1本のセグメント導体30の幅分、階段状に屈曲するクランク状に形成されたクランク部分33を有する。つまり、クランク部分33の径方向の幅は、1本のセグメント導体30の幅の2倍である。
【0027】
これにより、一対のスロット収容部31の一方と他方とは、互いに異なる径方向位置(レーン)に配置される(レーンチェンジされる)。たとえば、一対のスロット収容部31の一方がスロット13において径方向内側から1番目(最も内側のレーン)に配置されているとともに、一対のスロット収容部31の他方が、一対のスロット収容部31の一方とは異なるスロット13において径方向内側から2番目(内側から2番目のレーン)に配置される。このように、一対のスロット収容部31の一方と他方とが径方向において互いに1つずれたレーンに配置されるように、セグメント導体30(コイル20)がステータコア10に配置されている。
【0028】
図5Aおよび図5Bに示すように、一対のスロット収容部31のうち一方の断面形状と、一対のスロット収容部31のうち他方の断面形状とは、互いに異なる。図5Aに示すように、一対のスロット収容部31のうち一方の断面の径方向における幅は、W11である。また、一対のスロット収容部31のうち一方の断面の周方向における幅は、W12である。また、図5Bに示すように、一対のスロット収容部31のうち他方の断面の径方向における幅は、W11とは異なるW21である。また、一対のスロット収容部31のうち他方の断面の周方向における幅は、W12とは異なるW22である。図5Aおよび図5Bに示す例では、W21はW11よりも小さく、W22はW12よりも大きい。なお、この例は、一対のスロット収容部31のうちの一方(図5A参照)が他方(図5B参照)よりも径方向内側に設けられている場合の例である。
【0029】
また、図5A図5Cに示すように、一対のスロット収容部31の断面形状と、コイルエンド部32の断面形状とは、互いに異なる。具体的には、図5Cに示すように、コイルエンド部32の断面は、幅W31の辺と幅W32の辺とにより構成される矩形形状を有する。幅W31および幅W32の各々は、上記の幅W11、幅W12、幅W21、および幅W22とは異なる。コイルエンド部32の断面は、たとえば正方形状に形成される。すなわち、この場合、幅W31と幅W32とが略等しい。
【0030】
また、図6に示すように、径方向に並んで配置される複数のコイルエンド部32の、ステータコア10の端面10aからの高さHは、互いに略等しい。
【0031】
(ステータの製造方法)
次に、図7を参照して、ステータ100の製造方法について説明する。
【0032】
<準備工程>
図7に示すように、まず、ステップS11において、セグメント導体30として用いられる銅線(略円形形状の断面を有するとともに絶縁被膜処理が行われていない裸銅線)の準備工程が行われる。準備工程(S11)では、銅線は、たとえば、ボビンに巻かれた状態(ロール状の状態)で準備される。なお、銅線は、請求の範囲の「コイル用線材」の一例である。
【0033】
<真直・切断工程>
次に、ステップS12において、絶縁被膜処理が行われていない銅線を真直および切断する真直・切断工程が行われる。具体的には、真直・切断工程(S12)では、ロール状の銅線が真っ直ぐな状態に矯正される。そして、真っ直ぐな状態の銅線が、セグメント導体30(図4参照)の長さに切断される。
【0034】
<曲げ成形工程>
次に、ステップS13において、セグメント導体30の長さに切断された(絶縁被膜処理が行われていない)銅線をステータ100に配置可能に曲げ成形する曲げ成形工程が行われる。具体的には、曲げ成形工程(S13)では、セグメント導体30の長さに切断された銅線が、ステータコア10に配置するための形状(略U字形状かつクランク部分33を有する形状)(図4参照)となるように、治具により曲げ成形される。すなわち、曲げ成形工程(S13)において、セグメント導体30の長さに切断された銅線を略U字形状となるように曲げ成形するU字曲げ工程と、セグメント導体30の長さに切断された銅線をクランク部分33を有する形状となるように曲げ成形するレーンチェンジ曲げ工程とが、連続して行われる。なお、U字曲げ工程とレーンチェンジ曲げ工程とは、いずれから行ってもよい。
【0035】
<鍛造工程>
次に、ステップS14において、セグメント導体30の長さに切断された(円形形状の断面を有するとともに絶縁被膜処理が行われていない)銅線を圧縮することによりセグメント導体30の長さに切断された銅線の断面を成形する断面成形工程が行われる。断面成形工程(S14)は、(円形形状の断面を有するとともに絶縁被膜処理が行われていない)銅線のスロット13に収容される部分の外形を変形させる工程である。詳細には、断面成形工程(S14)は、(セグメント導体30の長さに切断された)銅線の断面をスロット13の内側面(バックヨーク11の壁部11a、2つのティース12の周方向側面12a)に対向する部分の外形がスロット13の内側面に沿った形状となるように成形する工程である。具体的には、断面成形工程(S14)では、図3に示すように、複数のスロット収容部31をスロット13内においてB方向(径方向)に並ぶように収容した場合に、Z方向(軸方向)に見て、B方向に並ぶ複数のスロット収容部31のスロット13の内側面(バックヨーク11の壁部11a、2つのティース12の周方向側面12a)側となる部分が、スロット13の内側面の近傍においてスロット13の内側面と略平行に対向するように、(セグメント導体30の長さに切断された)銅線の断面が成形される。これにより、スロット収容部31となる銅線の部分の外形をスロット13に配置するための所望の形状に変形させることができる。
【0036】
断面成形工程(S14)は、曲げ成形工程(S13)の後に行われる。また、曲げ成形工程(S13)は、金型を用いて行われる。すなわち、断面成形工程(S14)は、曲げ成形工程(S13)の後、曲げ成形後の銅線の断面を型鍛造(型成形)によってスロット13の内側面(バックヨーク11の壁部11a、2つのティース12の周方向側面12a)に対向する部分の外形がスロット13の内側面に沿った形状となるように成形する工程である。これにより、断面成形工程(S14)による圧縮に起因して銅線の内部応力が大きくなる(加工硬化する)前に曲げ成形工程(S13)が行われるので、銅線の内部応力が大きくなった状態(加工硬化した状態)で銅線に曲げ成形工程(S13)が行われることによって銅線に破損(割れ等)が生じるのを防止することができる。また、断面成形工程(S14)の後に、曲げ成形工程(S13)が行われる場合と異なり、曲げ成形工程(S13)の前に、銅線の内部応力(加工硬化)を除去するための焼鈍を行わなくてもよいので、後述する熱処理工程(セグメント導体30の内部応力(加工硬化)を除去するための銅線の焼鈍と絶縁被膜40の焼き付けとを兼ねる共通熱工程(S16))を容易に実現することができる。また、型鍛造(型成形)によって、曲げ成形後の銅線の断面をスロット13(バックヨーク11の壁部11a、2つのティース12の周方向側面12a)の内側面に対向する部分の外形がスロット13の内側面に沿った形状となるように容易に成形することができる。なお、断面成形工程(S14)では、密閉型鍛造によって銅線の断面が成形される。
【0037】
断面成形工程(S14)は、一対のスロット収容部31のうちの一方となる部分の断面形状(図5A)と、一対のスロット収容部31のうちの他方となる部分の断面形状(図5B)とを異ならせるように、(セグメント導体30の長さに切断された)銅線の断面を成形する工程である。具体的には、断面成形工程(S14)では、図5Aおよび図5Bに示すように、一対のスロット収容部31のうちの一方となる部分の断面の径方向における幅(W11)および周方向における幅(W12)と、一対のスロット収容部31のうちの他方となる部分の断面の径方向における幅(W21)および周方向における幅(W22)とが、それぞれ、互いに異なるように銅線の断面が成形される。これにより、互いに異なる径方向位置(レーン)に配置される一対のスロット収容部31の一方となる部分の断面と他方となる部分の断面とを、それぞれ、スロット13の内側面(バックヨーク11の壁部11a、2つのティース12の周方向側面12a)に沿った形状となるように成形することができる。
【0038】
また、断面成形工程(S14)は、スロット収容部31の断面形状(図5Aおよび(b)参照)と、コイルエンド部32の断面形状(図5C参照)とを異ならせるように、(セグメント導体30の長さに切断された)銅線の断面を成形する工程である。具体的には、断面成形工程(S14)では、図5A図5Cに示すように、一対のスロット収容部31となる部分の断面の径方向における幅(W11、W21)および周方向における幅(W12、W22)と、コイルエンド部32となる部分の断面の径方向における幅(W31)および周方向における幅(W32)とが、それぞれ、互いに異なるように銅線の断面が成形される。これにより、(セグメント導体30の長さに切断された)銅線の断面形状を、スロット収容部31となる部分の断面とコイルエンド部32となる部分の断面とが、任意の形状となるように成形することができる。その結果、セグメント導体30の設計の自由度を向上させることができる。
【0039】
また、断面成形工程(S14)は、スロット13の内側面(バックヨーク11の壁部11a、2つのティース12の周方向側面12a)に対向する部分は内側面に沿った形状になるとともに、B方向(径方向)に隣り合うスロット収容部31に対して対向する部分はZ方向(軸方向)から見てB方向に直交する平坦面31a(図3参照)を有するように、銅線の断面を成形する工程である。具体的には、図3に示すように、断面成形工程(S14)では、B方向(径方向)に隣り合うスロット収容部31となる部分が、Z方向(軸方向)から見てB方向に直交する2つの平坦面31aを有するように、銅線の断面が成形される。これにより、スロット13に収容される複数のスロット収容部31同士が各々の平坦面31aで面接触するように複数のスロット収容部31をスロット13に配置することができるので、複数のスロット収容部31同士の間に隙間が形成されない分だけ、スロット13におけるスロット収容部31の占積率を向上させることができる。
【0040】
<絶縁処理工程>
次に、ステップS15において、断面成形後の(絶縁被膜処理が行われていない)銅線に絶縁被膜40を塗装する塗装工程が行われる。すなわち、ステップS15において、曲げ成形後でかつ断面成形後の銅線に絶縁被膜処理を行う絶縁処理工程(S15)が行われる。これにより、予め銅線に絶縁被膜40が形成されている場合と異なり、断面成形工程(S14)における絶縁被膜40の薄肉化を考慮する必要がないので、絶縁被膜40の厚みを必要以上に大きくする必要がない。すなわち、断面成形工程(S14)において外径がスロット13に配置するための所望の形状に変形されたスロット収容部31となる銅線の部分に対して、絶縁被膜40が最適な厚さ(コイル20の絶縁性を確保可能な最低限の厚さ)となるように絶縁被膜処理を行うことができる。これにより、絶縁被膜40の厚さが必要以上に大きくならないので、スロット13内における絶縁被膜40の占有率が大きくなるのを防止することができる。その結果、スロット13におけるスロット収容部31の占積率を向上させることができる。また、絶縁被膜40が予め形成された銅線に対してコイルエンド部32となる部分に曲げ成形が行われる場合と異なり、絶縁被膜40が劣化しないので、コイルエンド部32の絶縁性を向上させることができる。これらの結果、コイルエンド部の絶縁性を向上させながらスロットにおけるスロット収容部の占積率を向上させることができる。
【0041】
絶縁処理工程(S15)は、断面成形後の銅線に電着塗装によって絶縁被膜処理を行う工程である。具体的には、絶縁処理工程(S15)では、断面成形後の銅線が液体状の塗料に浸漬される。液体状の塗料は、熱硬化性樹脂である。熱硬化性樹脂は、たとえば、ポリイミド、ポリアミドイミド等である。そして、液体状の塗料に浸漬された断面成形後の銅線に電圧を印加することによって、断面成形後の銅線の表面に液体状の塗料を析出させる。そして、断面成形後の銅線の表面に絶縁被膜40が形成される。これにより、断面成形後の銅線に対して、電着塗装によって、絶縁被膜40が最適な厚さとなるように容易に絶縁被膜処理を行うことができる。
【0042】
<熱処理工程>
次に、ステップS16において、断面成形工程(S14)において断面が成形された銅線の焼鈍と、絶縁処理工程(S15)において銅線に塗装(電着塗装)された(液体状の)絶縁被膜40の焼き付けとを兼ねる共通熱処理工程が行われる。すなわち、断面成形工程(S14)および絶縁処理工程(S15)の後、共通熱処理工程(S16)が行われる。
【0043】
共通熱処理工程(S16)は、断面成形工程(S14)において断面が成形された銅線を焼鈍可能で、かつ、塗装工程(S15)において銅線に塗装された絶縁被膜40を焼き付け可能な温度により、熱処理を行う工程である。詳細には、共通熱処理工程(S16)は、塗装工程(S15)において銅線に塗装された絶縁被膜40としての熱硬化性樹脂を焼き付けて硬化する硬化温度よりも高い、銅線の焼鈍温度により、熱処理を行う工程である。
【0044】
具体的には、セグメント導体30に用いられる銅(銅線)の一般的な焼鈍温度は、350℃~500℃である。しかしながら、350℃~500℃は、銅に対する焼鈍の効果が比較的高い温度であり、350℃を下回っていても(たとえば、300℃であっても)、銅に対する焼鈍の一定の効果はある。すなわち、銅の焼鈍温度は、350℃~500℃よりも比較的広範囲に渡っている。一方、絶縁被膜40に用いられる熱硬化性樹脂の硬化温度は、たとえば、ポリイミドおよびポリアミドイミドの場合で、それぞれ、略300℃および略250℃である。ここで、ポリイミドおよびポリアミドイミド等の熱硬化性樹脂は、硬化温度において硬化するものの、硬化温度よりも温度が高くなるにしたがって弾性率が低下する。すなわち、熱硬化性樹脂は、硬化温度よりも温度が高くなるにしたがって、曲げや延ばし等に対する脆さが上昇する。したがって、共通熱処理工程(S16)では、絶縁被膜40としての熱硬化性樹脂の硬化温度よりも高いものの、硬化温度よりも著しく高くない焼鈍温度によって熱処理を行うことが好ましい。たとえば、熱硬化性樹脂としてポリイミドおよびポリアミドイミドを用いた場合、略300℃~略350℃の範囲で熱処理を行うことが考えられる。
【0045】
<コイル配置工程>
次に、ステップS17において、曲げ成形工程および断面成形後でかつ絶縁被膜処理後の銅線から形成されたセグメント導体30(コイル20)をステータコア10に配置するコイル配置工程が行われる。コイル配置工程(S17)は、セグメント導体30のスロット収容部31をステータコア10のスロット13内に収容するとともにセグメント導体30のコイルエンド部32をステータコア10のスロット13外に配置する工程である。配置工程(S17)では、複数のセグメント導体30の各々がステータコア10の所定の位置に配置される。これにより、スロット13内における絶縁被膜40の占有率が大きくなるのを防止することが可能な銅線から形成されたコイル20をステータコア10に配置することができる。
【0046】
<セグメント導体接合工程>
次に、ステップS18において、セグメント導体30同士を接合する接合工程が行われる。具体的には、セグメント導体接合工程(S18)では、コイル配置工程(S17)においてステータコア10の所定の位置に配置された複数のセグメント導体30同士が接合される。具体的には、Z1側に配置されたセグメント導体30のスロット収容部31の端部と、Z2側に配置されたセグメント導体30のスロット収容部31の端部とが、スロット13内において接合される。
【0047】
[第2実施形態]
(ステータの製造方法)
次に、図8を参照して、第2実施形態によるステータ100の製造方法について説明する。なお、ステップS21、S24、S25、S26、S28およびS29は、それぞれ、上記第1実施形態によるステータ100の製造方法におけるステップS11、S12、S13、S15、S17およびS18と略同様の工程であるので、説明を省略する。
【0048】
<圧延工程>
図8に示すように、ステップS22において、セグメント導体30として用いられる銅線(略円形形状の断面を有するとともに絶縁被膜処理が行われていない裸銅線)の断面を成形する断面成形工程が行われる。断面成形工程(S22)は、上記第1実施形態と同様に、銅線のスロット13に収容される部分の外形を変形させる工程である。これにより、上記第1実施形態と同様に、スロット収容部31となる銅線の外形をスロット13に配置するための所望の形状に変形させることができる。
【0049】
断面成形工程(S22)は、曲げ成形工程(S25)の前に行われる。また、断面成形工程(S22)は、圧延ローラを用いて行われる。すなわち、断面成形工程(S22)は、曲げ成形工程(S25)の前に、曲げ成形前の銅線の断面を圧延成形によってスロット13の内側面(バックヨーク11の壁部11a、2つのティース12の周方向側面12a)に対向する部分の外形がスロット13の内側面に沿った形状となるように成形する工程である。これにより、圧延成形によって、スロット収容部31となる銅線の部分の断面を、スロット13(バックヨーク11の壁部11a、2つのティース12の周方向側面12a)の内側面に対向する部分の外形がスロット13の内側面に沿った形状となるように容易に成形することができる。
【0050】
<焼鈍工程>
次に、ステップS23において、断面成形後の銅線を焼鈍する焼鈍工程が行われる。すなわち、焼鈍工程(S23)は、断面成形工程(S22)の後かつ曲げ成形工程(S25)の前に、断面成形後でかつ曲げ成形前の銅線を焼鈍する工程である。これにより、断面成形後の銅線が焼鈍されることによって、断面成形工程(S22)における圧縮に起因する銅線内部の残留応力(加工硬化)が除去されるので、断面成形後の銅線が加工硬化した状態で曲げ成形工程(S25)が行われることによって銅線が破損するのを防止することができる。
【0051】
<焼付工程>
ステップS27において、曲げ成形された銅線に塗装(電着塗装)された(液体状の)絶縁被膜40を焼き付ける焼付工程が行われる。焼付工程(S27)では、曲げ成形された銅線に塗装(電着塗装)された(液体状の)絶縁被膜40が焼き付けられることによって、絶縁被膜40が熱硬化して、曲げ成形された銅線の表面に絶縁被膜40が形成される。
【0052】
なお、第2実施形態のステータ100の製造方法のその他の構成は、上記第1実施形態のステータ100の製造方法と同様である。
【0053】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく請求の範囲によって示され、さらに請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0054】
たとえば、上記第1および第2実施形態では、絶縁処理工程(S15、S26)を、銅線(コイル用線材)に電着塗装によって絶縁被膜処理を行う工程として構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、絶縁処理工程を、電着塗装以外の手法(たとえば、テープ巻き、押出成形(樹脂成形)、粉体塗装、噴霧、塗布等)によって、コイル用線材に絶縁被膜処理を行う工程として構成してもよい。
【0055】
また、上記第1および第2実施形態では、断面成形工程(S14、S22)を、スロット13の内側面に対向する部分は内側面に沿った形状になるとともに、径方向に隣り合うスロット収容部31に対して対向する部分は軸方向から見て径方向に直交する平坦面31aを有するように、銅線(コイル用線材)の断面を成形する工程として構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、断面成形工程を、スロットの内側面に対向する部分は内側面に沿った形状になるとともに、径方向に隣り合うスロット収容部に対して対向する部分が上記平坦面を有さないように、コイル用線材の断面を成形する工程として構成してもよい。
【0056】
また、上記第1および第2実施形態では、セグメント導体30の断面形状が矩形状である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、図9に示す第1変形例によるステータ300または図10に示す第2変形例によるステータ400のように、セグメント導体330(430)の断面形状が矩形状以外の形状を有していてもよい。図9に示すように、ステータ300のステータコア310では、スロット313の内側面(バックヨーク311の壁部311a、2つのティース312の周方向側面312a)が、Z方向(軸方向)に見て、ラウンド形状となっている。そして、セグメント導体330の断面形状は、B方向(径方向)に並ぶように配置された複数のスロット収容部331が、Z方向(軸方向)に見て、ラウンド形状のスロット313の内側面に沿った形状を有する。また、図10に示すように、ステータ400のステータコア410では、スロット413の内側面のうちのバックヨーク411の壁部411aが、Z方向(軸方向)に見て、ラウンド形状となっている。また、スロット413の内側面のうちのティース412の周方向側面412aが、Z方向(軸方向)に見て、傾斜角度が互いに異なる2つの部分が連続する形状(2段テーパ形状)となっている。そして、セグメント導体430の断面形状は、B方向(径方向)に並ぶように配置された複数のスロット収容部431が、Z方向(軸方向)に見て、2段テーパ形状のスロット413の内側面に沿った形状を有する。
【0057】
また、上記第1および第2実施形態では、断面成形工程(S14、S22)を、スロット収容部31の断面形状と、コイルエンド部32の断面形状とを異ならせるように、銅線(コイル用線材)の断面を成形する工程として構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、断面成形工程を、スロット収容部の断面形状と、コイルエンド部の断面形状とが同じになるように、コイル用線材の断面を成形する工程として構成してもよい。
【0058】
また、上記第1および第2実施形態では、断面成形工程(S14、S22)を、一対のスロット収容部31のうちの一方となる部分の断面形状と、一対のスロット収容部31のうちの他方となる部分の断面形状とを異ならせるように、銅線(コイル用線材)の断面を成形する工程として構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、断面成形工程を、一対のスロット収容部のうちの一方となる部分の断面形状と、一対のスロット収容部のうちの他方となる部分の断面形状とが同じになるように、コイル用線材の断面を成形する工程として構成してもよい。
【0059】
また、上記第2実施形態のステータ100の製造方法では、断面成形工程(S22)の後かつ曲げ成形工程(S25)の前に、断面成形後でかつ曲げ成形前の銅線(コイル用線材)を焼鈍する焼鈍工程(S23)を備える例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、上記第2実施形態のステータの製造方法において、上記焼鈍工程を省略してもよい。
【0060】
また、上記第1および第2実施形態では、U字曲げ工程とレーンチェンジ曲げ工程とが連続して行われる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、U字曲げ工程とレーンチェンジ曲げ工程とが、他の工程(たとえば、断面成形工程)を間に挟んで行われるようにしてもよい。
【0061】
また、上記第1実施形態のステータ100の製造方法では、断面成形工程(S14)が、曲げ成形工程(S13)の後に行われる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、図11に示す第3変形例によるステータ100の製造方法のように、断面成形工程(S33)が、曲げ成形工程(S34)の前に行われてもよい。なお、断面成形工程(S33)では、セグメント導体30のうちのスロット収容部31となる部分のみに対して型鍛造によって断面が成形される。この場合、断面成形工程(S33)では、上記第1実施形態のステータ100の製造方法の断面成形工程(S14)の密閉型鍛造と異なり、部分型鍛造が行われる。また、図12に示す第4変形例によるステータ100の製造方法のように、断面成形工程(S42)が、真直・切断工程(S42)および曲げ成形工程(S44)の前に行われてもよい。なお、断面成形工程(S42)では、第3変形例によるステータ100の製造方法と同様に、セグメント導体30のうちのスロット収容部31となる部分のみに対して型鍛造によって断面が成形される。また、第3変形例によるステータ100の製造方法と同様に、部分型鍛造が行われる。
【0062】
また、上記第1実施形態のステータ100の製造方法では、真直・切断工程(S12)のうちの銅線を切断する工程(以下、切断工程)と、曲げ成形工程(S13)と、断面成形工程(S14)(鍛造)と、をこの順に行う例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、断面成形工程(鍛造)と切断工程と曲げ成形工程とを、この順に行ってもよい。この場合、断面成形工程(鍛造)は、上記部分型鍛造となる。また、断面成形工程(鍛造)と曲げ成形工程と切断工程とを、この順に行ってもよい。この場合、断面成形工程(鍛造)は、上記部分型鍛造となる。また、曲げ成形工程と切断工程と断面成形工程(鍛造)とを、この順に行ってもよい。この場合、密閉型鍛造が行われる。また、曲げ成形工程と断面成形工程(鍛造)と切断工程とを、この順に行ってもよい。この場合、密閉型鍛造となる。
【0063】
また、上記第2実施形態のステータ100の製造方法では、断面成形工程(S22)(圧延成形)と、焼鈍工程(S23)と、真直・切断工程(S24)のうちの銅線を切断する工程(以下、切断工程)と、曲げ成形工程(S25)と、をこの順に行う例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、断面成形工程(圧延成形)と、切断工程と、焼鈍工程と、曲げ成形工程とを、この順に行ってもよい。また、曲げ成形工程と、切断工程と、断面成形工程(圧延成形)とを、この順に行ってもよい。この場合、焼鈍工程が省略される。また、切断工程と、曲げ成形工程と、断面成形工程(圧延成形)とを、この順に行ってもよい。この場合、焼鈍工程が省略される。また、切断工程と、断面成形工程(圧延成形)と、焼鈍工程と、曲げ成形工程とを、この順に行ってもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、互いに異なるセグメント導体30のスロット収容部31同士が、スロット13内において接合されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、互いに異なるセグメント導体のスロット収容部同士が、スロット外において接合されていてもよい。
【符号の説明】
【0065】
10…ステータコア、11a、311a、411a…(バックヨークの)壁部(スロットの内側面)、12a、312a、412a…(ティースの)周方向側面(スロットの内側面)、13、312、412…スロット、20…コイル、30、330、430…セグメント導体、31、331、431…スロット収容部、31a…平坦面、32…コイルエンド部、40…絶縁被膜、100、300、400…ステータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12