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  • 特許-消火材及び消火材パッケージ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】消火材及び消火材パッケージ
(51)【国際特許分類】
   A62D 1/06 20060101AFI20240501BHJP
   A62C 2/00 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
A62D1/06
A62C2/00 X
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023150854
(22)【出願日】2023-09-19
【審査請求日】2023-09-19
(31)【優先権主張番号】P 2023067048
(32)【優先日】2023-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(72)【発明者】
【氏名】掛川 駿太
(72)【発明者】
【氏名】椎根 康晴
(72)【発明者】
【氏名】黒川 真登
(72)【発明者】
【氏名】本庄 悠朔
(72)【発明者】
【氏名】磯和 愛実
【審査官】山田 陸翠
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2023/008537(WO,A1)
【文献】特開2018-104683(JP,A)
【文献】特開2020-082437(JP,A)
【文献】特開2021-008584(JP,A)
【文献】特開平09-288214(JP,A)
【文献】特開2009-120727(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62D 1/00- 1/08
A62C 2/00- 2/24
A62C 3/00- 3/16
B32B 27/00-27/42
C08L 29/00-29/14
C09K 21/00-21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子状のクエン酸カリウムを含む消火剤を含有する消火剤層を備え、
前記クエン酸カリウムが、被膜形成剤から形成された被膜を表面に有
前記被膜形成剤が、酸無水物基又はイソシアネート基を有する化合物を含む、消火材。
【請求項2】
前記被膜形成剤が、酸無水物基を有する化合物を含む、請求項1に記載の消火材。
【請求項3】
前記消火剤がさらに塩素酸カリウムを含む、請求項1又は2に記載の消火材。
【請求項4】
前記クエン酸カリウムの平均粒子径D50が1~100μmである、請求項1又は2に記載の消火材。
【請求項5】
前記消火剤層が前記消火剤を70~97質量%含む、請求項1又は2に記載の消火材。
【請求項6】
前記消火剤層が配置された基材をさらに備える、請求項1又は2に記載の消火材。
【請求項7】
下記保管試験後の前記消火剤層の水分含有率が5質量%以下である、請求項1又は2に記載の消火材。
(保管試験)
水蒸気透過度(JIS K 7129準拠 40℃/90%RH条件下)が0.2~0.6g/m/dayである包装材フィルムから形成された包装材内に消火材を封入して得られる消火材パッケージを、85℃/85%RHの環境下に12時間静置保管する。
【請求項8】
包装材と、前記包装材内に封入された請求項1又は2に記載の消火材とを備える、消火材パッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消火材及び消火材パッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
燃焼によりエアロゾルを発生する成分を含む消火剤組成物を用いた、自己消火性成形品が知られている(例えば、特許文献1)。かかる成分としてはカリウム塩が挙げられ、特にクエン酸カリウムが好ましく用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2018/047762号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、クエン酸カリウムは潮解性を有するため、経時により周囲環境の水分を吸収し易い。クエン酸カリウムを消火剤成分として使用する場合、そのような潮解を抑制することができれば、消火材の性状安定性をより向上させることができる。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、クエン酸カリウムを消火剤成分として含む、性状安定性に優れる消火材を提供することを目的とする。また、本発明は、当該消火材が封入された消火材パッケージを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面は、例えば以下の態様を含む。
[1] 粒子状のクエン酸カリウムを含む消火剤を含有する消火剤層を備え、
前記クエン酸カリウムが、被膜形成剤から形成された被膜を表面に有する、消火材。
[2] 前記被膜形成剤が、酸無水物基又はイソシアネート基を有する化合物を含む、[1]に記載の消火材。
[3] 前記消火剤がさらに塩素酸カリウムを含む、[1]又は[2]に記載の消火材。
[4] 前記クエン酸カリウムの平均粒子径D50が1~100μmである、[1]~[3]のいずれか一に記載の消火材。
[5] 前記消火剤層が前記消火剤を70~97質量%含む、[1]~[4]のいずれか一に記載の消火材。
[6] 前記消火剤層が配置された基材をさらに備える、[1]~[5]のいずれか一に記載の消火材。
[7] 下記保管試験後の前記消火剤層の水分含有率が5質量%以下である、[1]~[6]のいずれか一に記載の消火材。
(保管試験)
水蒸気透過度(JIS K 7129準拠 40℃/90%RH条件下)が0.2~0.6g/m/dayである包装材フィルムから形成された包装材内に消火材を封入して得られる消火材パッケージを、85℃/85%RHの環境下に12時間静置保管する。
[8] 包装材と、前記包装材内に封入された[1]~[7]のいずれか一に記載の消火材とを備える、消火材パッケージ。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、クエン酸カリウムを消火剤成分として含む、性状安定性に優れる消火材を提供することができる。また、本発明によれば、当該消火材が封入された消火材パッケージを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、一実施形態に係る消火材の模式断面図である。
図2図2は、一実施形態に係る消火材パッケージの模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本開示は以下の実施形態に限定されない。
【0010】
<消火材>
図1は、一実施形態に係る消火材の模式断面図である。消火材10は、消火剤層1と、消火剤層1が配置された基材2と、を備える。消火材10は、基材2と、基材2上に配置された消火剤層1と、を備えるということができる。消火材10は、シート状の消火材であってよい。消火材10は基材2を備えていなくともよく、その場合消火剤層1そのものであってよい。
【0011】
消火材を所望の位置に設置する観点から、消火材は更に接着層や粘着層を備えていてもよい。接着層や粘着層は、消火剤層1側に設けられていてもよく、基材2側に設けられていてもよい。
【0012】
(消火剤層)
消火剤層は、粒子状の消火剤を含む。消火剤はエアロゾル発生剤を含んでおり、消火剤層からエアロゾル発生剤に由来するエアロゾルが発生することで、消火を行うことができる。
【0013】
消火剤は、エアロゾル発生剤として粒子状のクエン酸カリウムを含む。ここでいうクエン酸カリウムとは、クエン酸一カリウム、クエン酸二カリウム、クエン酸三カリウム、又はそれらの水和物である。クエン酸カリウムは燃焼の負触媒効果を有するカリウムラジカルの発生能に優れる。
消火剤は、その他のエアロゾル発生剤を含んでいてもよく、例えば有機カリウム塩(クエン酸カリウムを除く)、有機ナトリウム塩、有機アンモニウム塩等の有機塩を含んでいてもよい。負触媒効果に対する有用性の観点からは、有機カリウム塩が好ましく、クエン酸カリウム以外の有機カリウム塩としては、酢酸カリウム、酒石酸カリウム、乳酸カリウム、シュウ酸カリウム、マレイン酸カリウム等のカルボン酸カリウム塩が挙げられる。
【0014】
エアロゾル発生剤に含まれるクエン酸カリウムの量は、優れた負触媒効果を得易い観点から、エアロゾル発生剤の全量を基準として80質量%以上とすることができ、100質量%であってもよい。
【0015】
消火剤は、エアロゾル発生剤以外の他の成分として酸化剤を含むことができる。酸化剤はエアロゾル発生剤に作用してエアロゾル発生を促すものである。
【0016】
消火剤は、酸化剤として(粒子状の)塩素酸カリウムを含むことができる。塩素酸カリウムはエアロゾル発生剤からエアロゾルを発生させる作用に優れる。
消火剤は、その他の酸化剤を含んでいてもよく、例えば塩素酸ナトリウム、塩素酸ストロンチウム、塩素酸アンモニウム、塩素酸マグネシウム、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸ストロンチウム、過塩素酸アンモニウム、過塩素酸カリウム、塩基性硝酸銅、酸化銅(I)、酸化銅(II)、酸化鉄(II)、酸化鉄(III)、三酸化モリブデン等を含んでいてもよい。
【0017】
酸化剤に含まれる塩素酸カリウムの量は、優れたエアロゾル発生作用を得易い観点から、酸化剤の全量を基準として80質量%以上とすることができ、100質量%であってもよい。
【0018】
消火剤は、エアロゾル発生剤及び酸化剤以外の他の剤(成分)を含んでいてもよい。他の剤としては、着色剤、酸化防止剤、難燃剤、無機充填材、流動性付与剤、防湿剤、分散剤、UV吸収剤、柔軟性付与剤、触媒等が挙げられる。
【0019】
消火剤に含まれるエアロゾル発生剤及び酸化剤(場合によりクエン酸カリウム及び塩素酸カリウム)の量は、優れた消火性能を発現し易い観点から、消火剤の全量を基準として60質量%以上とすることができ、90質量%以上であってもよく、100質量%であってもよい。
【0020】
消火剤に含まれる酸化剤(場合により塩素酸カリウム)の量は、優れた消火性能を発現し易い観点から、エアロゾル発生剤(場合によりクエン酸カリウム)の全量100質量部に対し5~1200質量部とすることができる。
【0021】
クエン酸カリウムの平均粒子径D50は1~100μmであってもよく、また3~40μmであってもよい。平均粒子径D50が上記下限以上であることで系中で分散し易く、また平均粒子径D50が上記上限以下であることで、塗工用に組成物を調製したときの安定性が向上して、塗工面の平滑性が向上する傾向がある。
【0022】
平均粒子径D50は、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて湿式で測定することができる。平均粒子径D50はクエン酸カリウムを乳鉢等で粉砕することで調整することができる。
【0023】
消火剤の量は、消火剤層の全量を基準として、70~97質量%とすることができ、85~92質量%であってもよい。消火剤の量が上記上限以下であることで、塩の潮解を抑制し易くかつ均質な消火材を形成し易く、また消火剤の量が上記下限以上であることで、消火材の消火性能を発揮し易い。
【0024】
消火剤に含まれるクエン酸カリウムは、被膜形成剤から形成された被膜を表面に有する。クエン酸カリウムは、被膜形成剤で表面処理されてなるものということもできる。クエン酸カリウムには、空気中の水分子が付着することでその表面に水酸基(-OH)が形成されており、この水酸基と被膜形成剤が有する反応性基とが反応(縮合、付加)し、クエン酸カリウム表面に被膜形成剤から形成された被膜が形成されると考えられる。このことから、被膜形成剤とは、消火剤(クエン酸カリウム)表面に化学結合により吸着する被覆剤ということもできる。
被膜としては有機シラン膜又は樹脂膜が挙げられる。被膜は疎水性の被膜であることが好ましい。
このように、クエン酸カリウム表面と化学的な力で引き合い、当該表面に吸着して被膜を形成する材料を被膜形成剤と言い、これはクエン酸カリウムを取り囲んで物理的に保持するに過ぎないバインダ等の材料とは異なるものである。
【0025】
被膜形成剤は、少なくとも上記のとおりクエン酸カリウム表面の水酸基と反応する反応性基を有するものが挙げられる。
被膜形成剤としては、酸無水物基、イソシアネート基等の反応性基及びアルコキシシリル基等の加水分解性基を有するシランカップリング剤が挙げられる。シランカップリング剤が、反応性基を介してクエン酸カリウム表面に結合し、さらに加水分解性基の加水分解縮合が進行することで、クエン酸カリウム表面に被膜(有機シラン膜)が形成されると考えられる。そのようなシランカップリング剤としては、信越化学工業株式会社製のX-12-1287A、X-12-967C等が挙げられる。
【0026】
被膜形成剤としては、また、酸無水物基、イソシアネート基等の反応性基及び水酸基等の反応性基を有する樹脂、或いはそれらの基を別個に有する化合物を含む樹脂組成物が挙げられる。そのような樹脂としてはロジン等が、また樹脂組成物としてはポリイソシアネート及びポリオール(アクリルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール等)を含む組成物が、それぞれ挙げられる。これらの樹脂又は樹脂組成物により、クエン酸カリウム表面に被膜(樹脂膜)が形成されると考えられる。そのような樹脂としては、荒川化学工業株式会社製のマルキードNo33等が、樹脂組成物としては、三井化学株式会社製のタケネートD110N及び大成ファインケミカル株式会社製の6AN-5000を含むもの等がそれぞれ挙げられる。
【0027】
被膜形成剤は、被膜の疎水性を向上する観点からアルキル鎖を有することが好ましい。同様の観点から、被膜形成剤は、アルケン骨格(例えばブタジエン骨格)を有していてもよく、また環状アルカン構造を有していてもよい。
【0028】
被膜はクエン酸カリウム表面の全面に(連続的に)形成されていてもよく、部分的に形成されていてもよい。クエン酸カリウムの潮解抑制性及び反応性のバランスに鑑み、被膜による被覆の程度を調整することができる。
【0029】
クエン酸カリウム表面の被膜は、例えば走査型電子顕微鏡JSM―7001F(日本電子株式会社製)を用いて、エネルギー分散型X線分光法(EDS)により消火剤表面(クエン酸カリウム表面)の元素分析を行うことにより、観察することができる。
クエン酸カリウム表面の被膜の有無は、例えば消火剤を純水に添加(例えば重量比で5%)することにより、簡易に判別することもできる。例えば、疎水性被膜が形成されていない場合、クエン酸カリウムは溶解し塩素酸カリウムは溶解せずに残存する。一方で、疎水性被膜が形成されている場合、純水に溶解し易いクエン酸カリウムの溶解が阻害され、水中に凝集体を形成することから、被膜が有ることを判別できる。また、親水性被膜が形成されている場合は、純水に溶解しない塩素酸カリウムが溶解することから、被膜が有ることを判別できる。
【0030】
消火剤層は、バインダを含むことができる。バインダは、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂の少なくともいずれかを含む。
熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリ(1-)ブテン系樹脂、ポリペンテン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン系樹脂、メチルメタクリレート-ブタジエン-スチレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル樹脂、エチレン-プロピレン樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルアセタール系樹脂等が挙げられる。
熱硬化性樹脂としては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、1,2-ポリブタジエンゴム(1,2-BR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン-プロピレンゴム(EPR、EPDM)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、アクリルゴム(ACM、ANM)、エピクロルヒドリンゴム(CO、ECO)、多加硫ゴム(T)、シリコーンゴム(Q)、フッ素ゴム(FKM、FZ)、ウレタンゴム(U)等のゴム類、ポリウレタン樹脂(例えばエーテル系ポリウレタン樹脂)、ポリイソシアネート樹脂、ポリイソシアヌレート樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルエーテル(PMVE)-無水マレイン樹脂、等が挙げられる。
【0031】
上記樹脂のうち、塗膜形成性の観点から、ポリビニルアセタール系樹脂又はポリウレタン樹脂を好適に用いることができる。ポリビニルアセタール系樹脂としては、ポリビニルブチラール(PVB)等が挙げられる。
【0032】
バインダは、上記樹脂(熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂)以外の他の剤(成分)を含んでいてもよい。他の剤としては硬化剤が挙げられ、その他、性状安定性の観点から、界面活性剤、シランカップリング剤、アンチブロッキング剤等が挙げられる。これらの他の成分は、樹脂の種類により適宜選択することができる。
【0033】
バインダに含まれる上記樹脂の量は、消火剤層形成の観点から、バインダの全量を基準として60質量%以上とすることができ、90質量%以上であってもよく、100質量%であってもよい。
【0034】
バインダの量は、消火剤100質量部に対して2~30質量部とすることができ、4~15質量部であってもよい。バインダの量が上記上限以下であることで、消火材の消火性能を発揮し易く、またバインダの量が上記下限以上であることで均質な消火材を形成し易い。
【0035】
消火剤層の厚さは80~600μmとすることができ、150~300μmであってもよい。厚さが上記下限値以上であることで、消火性能を発揮し易く、上記上限値以下であることで耐屈曲性を得易い。
【0036】
消火剤層の主面の面積は、その用途に応じ調整されるため特に制限されないが、側面の面積に対し充分に広く設定される。主面の面積は、例えば10~624cmとすることができる。
【0037】
(基材)
基材としては、炎の温度が一般的に700~900℃程度であることに鑑み、樹脂基材を選択することができる。例えば、基材の材質としては、ポリオレフィン(LLDPE、PP、COP、CPP等)、ポリエステル(PET等)、フッ素樹脂(PTFE、ETFE、EFEP、PFA、FEP、PCTFE等)、PVC、PVA、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリイミド等が挙げられる。基材側が炎に対向するよう消火材が設置されていた場合でも、これらの樹脂であれば炎の熱(一般的に700~900℃程度)により融解し、消火剤層を露出させ易い。また、これら透明性のある材質を選択することで、消火剤層の外観検査や、消火剤層の交換時期の確認がし易くなる。基材には、上記消火剤が含まれていてもよい。
【0038】
水蒸気透過度の調整の観点から、基材には水蒸気バリア性を有する蒸着層(アルミナ蒸着層やシリカ蒸着層)が設けられていてもよい。蒸着層は、基材の一面に設けられていてもよく、両面に設けられていてもよい。
【0039】
基材の厚さは、想定される出火時の熱量、衝撃、許容される設置スペース等に応じて適宜調整することができる。例えば、厚い基材であれば消火材としての強度や剛性が得られ易く、ハンドリングが容易となる。また、薄い基材であれば狭いスペースに消火材を設けることができ、また炎により熱せられた際に短時間で融解するため初期消火性が向上する。基材の厚さは、例えば4.5~100μmとすることができ、12~50μmであってよい。基材は複数の層を備える積層体であってもよい。
【0040】
<消火材の製造方法>
消火材は、消火剤層形成用組成物(塗液)を用いて形成することができる。消火材の製造方法を以下に例示する。
【0041】
消火材の第一の製造方法は、
消火剤、被膜形成剤及びバインダを液状媒体と混合して消火剤層形成用組成物を調製する工程と、
基材上に消火剤層形成用組成物を塗布し、これを乾燥することにより消火剤層を形成する工程と、を備えることができる。
【0042】
消火材の第二の製造方法は、
消火剤を被膜形成剤で処理する工程と、
被膜形成剤で処理された消火剤及びバインダを液状媒体と混合して消火剤層形成用組成物を調製する工程と、
基材上に消火剤層形成用組成物を塗布し、これを乾燥することにより消火剤層を形成する工程と、を備えることができる。
【0043】
消火材の第三の製造方法は、
クエン酸カリウムを被膜形成剤で処理する工程と、
被膜形成剤で処理されたクエン酸カリウムを含む消火剤及びバインダを液状媒体と混合して消火剤層形成用組成物を調製する工程と、
基材上に消火剤層形成用組成物を塗布し、これを乾燥することにより消火剤層を形成する工程と、を備えることができる。
【0044】
液状媒体としては、有機溶媒が挙げられる。有機溶媒としては、水溶性の溶媒が挙げられ、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n-プロピルアルコール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール等のグリコール類;N-メチルピロリドン(NMP)、テトラヒドロフラン、ブチルセロソルブ等のグリコールエーテル類等が挙げられる。クエン酸カリウムが潮解性を有する観点から、液状媒体はアルコール系溶媒であってもよく、具体的にはエタノール、イソプロピルアルコール、又はそれらの混合溶媒であってもよい。
【0045】
消火剤及びバインダの量は、消火剤層におけるそれらの量が上記所望の量となるように調整すればよい。液状媒体の量は、消火剤層形成用組成物の使用方法に応じて適宜に調整すればよいが、消火剤層形成用組成物の全量を基準として30~70質量%とすることができる。液状媒体を含む消火剤層形成用組成物を、消火剤層形成用塗液ということができる。
【0046】
被膜形成剤で対象物を処理する方法としては、対象物と被膜形成剤とを混合することが挙げられる。被膜形成剤の量は、クエン酸カリウム表面に所望の被膜が形成されるように調整すればよい。被膜形成剤の量は、クエン酸カリウムの潮解を抑制し易い観点から、クエン酸カリウム100質量部に対して1質量部以上であることが好ましく、5質量部以上であることがより好ましい。また、被膜形成剤の量は、クエン酸カリウムからのエアロゾル発生が抑制され難い観点から、クエン酸カリウム100質量部に対して30質量部以下であることが好ましく、20質量部以下であることがより好ましい。
【0047】
消火剤或いは消火剤に含まれる各成分は、上記の各工程に供される前に、所望の粒径となるよう乳鉢等で粉砕されてよい。
【0048】
消火剤層形成用組成物の塗布はウェットコーティング法にて行うことができる。ウェットコーティング法としては、グラビアコーティング法、コンマコーティング法、ディップコーティング法、カーテンコート法、スピンコート法、スポンジロール法、ダイコート法等が挙げられる。
【0049】
塗布により得られた塗膜の乾燥温度は特に制限されないが、例えば60~100℃とすることができる。
【0050】
上記のとおり得られた消火材の消火剤層のみを基材から剥がして消火材として用いてもよく、その場合基材上には離型処理が施されていることが好ましい。
【0051】
上記のように消火剤層形成用組成物(塗液)を用いて消火材を作製する方法の他、例えば消火剤を消火剤用包装袋内に充填して消火剤層とした後、これを接着剤や粘着剤により基材に貼り付けることで、消火材を製造することもできる。
或いは消火剤を消火剤用包装袋内に充填した消火剤層自体を、消火材として用いることもできる。
【0052】
消火剤用包装袋は、例えば2枚の樹脂フィルムの4辺をヒートシール(熱融着)することにより形成することができる。樹脂フィルムを構成する樹脂としては、ポリオレフィン(LLDPE、PP、COP、CPP等)、ポリエステル(PET等)、フッ素樹脂(PTFE、ETFE、EFEP、PFA、FEP、PCTFE等)、PVC、PVA、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリイミド等が挙げられる。これらの樹脂であれば炎の熱(一般的に700~900℃程度)により融解し、内部の消火剤を露出させ易い。
【0053】
<消火材パッケージ>
図2は、一実施形態に係る消火材パッケージの模式断面図である。消火材パッケージ100は、包装材3と、包装材3内に封入された消火材10とを備える。なお、同図では、消火材10は消火剤層1及び基材2を備えるものであるが、基材2を用いずに消火材10が消火剤層1そのものであってもよい。
包装材3は袋状であってよく、すなわち包装袋と言うこともできる。
【0054】
(包装材)
包装材は、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、ビニル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ウレタン樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート、ケトン樹脂、スルフォン系樹脂、セルロース系樹脂等の樹脂基材や、アルミ箔等の金属基材を備える包装材フィルムからなる。
【0055】
包装材フィルムは、上記基材に加えて、ヒートシール性を有するシーラント層を備えることができる。シーラント層としては特に制限されず、例えばCPP(無延伸ポリプロピレン)フィルムや、L-LDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)フィルムが挙げられる。
【0056】
包装材フィルムは水蒸気バリア性を有することが望ましく、いわゆるバリアフィルム(水蒸気バリアフィルム)であってよい。包装材フィルムの水蒸気透過度(JIS K 7129準拠 40℃/90%RH条件下)は、10g/m/day以下とすることができ、1g/m/day以下であってよく、0.6g/m/day以下であってよい。水蒸気透過度の下限は特に限定されないが、例えば0.2g/m/dayとすることができる。水蒸気透過度の調整の観点から、包装材フィルムとしては、アルミナ蒸着層、シリカ蒸着層等の金属酸化物蒸着層を備える樹脂基材(例えばPET層等のポリエステル樹脂層)を備えるものが挙げられる。樹脂基材が金属酸化物蒸着層を備える場合、金属酸化物蒸着層は消火材側を向いていてよい。
【0057】
包装材は、包装材フィルムを製袋してなるものである。包装材周縁の包装材フィルム同士が対向する部分には、封止部が設けられる。封止部では、例えば包装材フィルム同士がヒートシール材、接着剤、粘着剤等の接合材料により接合されていてよく、或いは包装材フィルムがシーラント層を備える場合のように包装材フィルム自体がヒートシール性(熱融着性)を有する場合は、包装材フィルム同士がヒートシールにより接合されていてよい。このような封止部により消火材が空気に触れなくなり、消火材に含まれる消火剤の劣化を抑制することができる。
【0058】
消火材パッケージは、予め準備した包装材に消火材を封入することで作製してもよく、或いは包装材フィルムと消火材とを積層した後に包装材フィルム周縁を封止(或いは全面熱ラミネート)することで作製してもよい。
【0059】
封止部における包装材フィルム間の密着強度は5N/15mm以上であってよく、消火剤を安定して封入しておく観点から、7N/15mm以上であってよく、10N/15mm以上であってよい。密着強度は、基材の調整、接着剤等の接合材料の調整、ヒートシール条件(ヒートシール温度、圧力、時間)の調整などにより変動させることができる。
包装材フィルム間の密着強度は、以下のようにして測定される。すなわち、包装材フィルム同士が熱融着、或いは接合材料により貼り合されたサンプルを準備する。このサンプルの熱融着部或いは接合部を15mm幅に切り出し、JIS K6854-3に準拠し、室温23℃の環境下に置かれた引張試験機で300mm/分の剥離速度でT字剥離したときの、剥離開始から熱融着部、或いは接合部が離れるまでの平均強度を、包装材フィルム間の密着強度とする。
【0060】
上述の消火材は性状安定性に優れるため、例えば消火材パッケージを用いた下記保管試験後の消火剤層の水分含有率を5質量%以下、好ましくは4質量%以下、又は3質量%以下とすることができる。
(保管試験)
水蒸気透過度(JIS K 7129準拠 40℃/90%RH条件下)が0.2~0.6g/m/dayである包装材フィルムから形成された包装材(包装袋)内に消火材を封入して得られる消火材パッケージを、85℃/85%RHの環境下に12時間静置保管する。保管後に消火材パッケージを開封して消火材を取り出し、消火剤層の水分含有率(%)を以下のようにして算出する。
【0061】
[消火材が消火剤層のみを備える場合]
加熱乾燥式水分計を用いて、消火剤層を140℃で5分間加熱し、加熱前後の消火剤層の重量差分から、以下の計算式により消火剤層の水分含有率を算出する。
水分含有率(%)=(消火剤層の水分含有量(g)/加熱前の消火剤層の重量(g))×100
[消火材が基材及び消火剤層を備える場合]
加熱乾燥式水分計を用いて、消火材を140℃で5分間加熱し、加熱前後の重量差分から消火材の水分含有量を測定する。同様にして、加熱前後の重量差分から基材単体の水分含有量を測定する。そして、以下の計算式により消火剤層の水分含有率を算出する。
水分含有率(%)={(消火材の水分含有量(g)-基材の水分含有量(g))/(加熱前の消火材重量(g)-加熱前の基材重量(g))}×100
【0062】
消火材は、発火する虞のある対象物或いはその近辺に設置することができる。消火材パッケージも同様に設置することができるが、包装材を除去して消火材のみ設置してもよい。設置方法としては貼付や載置、同梱等が挙げられる。発火する虞のあるものとしては、例えば、電線、配電盤、分電盤、制御盤、蓄電池(リチウムイオン電池等)、建材用壁紙、天井材等の建材、リチウムイオン電池回収用箱、ごみ箱、自動車関連部材、コンセント、コンセントカバーなどの各部材が挙げられる。
例えば、消火材又は消火材パッケージが設置された装置では、装置における発火に対し自動的に初期消火が行われるため、そのような装置を自動消火機能を有する装置ということができる。
【実施例
【0063】
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0064】
(実施例1)
塩素酸カリウム(KClO)とクエン酸三カリウムとを、メノウ乳鉢にて平均粒子径D50が12μm以下となるように粉砕することで消火剤を準備した。この消火剤を以下の配合比で各種材料と混合することで消火剤層形成用組成物を得た。
・消火剤成分(塩素酸カリウム、クエン酸三カリウム) 87質量部
・ポリビニルブチラール樹脂溶液(ポリビニルブチラール樹脂11質量部をエタノール80質量部、イソプロピルアルコール9質量部に溶解させた溶液) 81質量部
・被膜形成剤(シランカップリング剤 X-12-1287A、信越化学工業株式会社) 4質量部
・エタノール 87質量部
【0065】
ポリエチレンテレフタレート(PET)基材(商品名:E7002、東洋紡株式会社製、厚さ50μm)の一方の面に、消火剤層形成用組成物を、アプリケータを用いて乾燥後の消火剤層厚さが150μmとなるように塗布し、75℃で7分間乾燥することにより、消火材を得た。
【0066】
(実施例2)
各種材料を以下のとおり準備したこと以外は、実施例1と同様にして消火材を得た。
・消火剤成分(塩素酸カリウム、クエン酸三カリウム) 87質量部
・ポリビニルブチラール樹脂溶液(ポリビニルブチラール樹脂11質量部をエタノール80質量部、イソプロピルアルコール9質量部に溶解させた溶液) 45質量部
・被膜形成剤(シランカップリング剤 X-12-1287A、信越化学工業株式会社) 8質量部
・エタノール 87質量部
【0067】
(実施例3)
各種材料を以下のとおり準備したこと以外は、実施例1と同様にして消火材を得た。
・消火剤成分(塩素酸カリウム、クエン酸三カリウム) 87質量部
・ポリビニルブチラール樹脂溶液(ポリビニルブチラール樹脂11質量部をエタノール80質量部、イソプロピルアルコール9質量部に溶解させた溶液) 81質量部
・被膜形成剤(シランカップリング剤 X-12-967C、信越化学工業株式会社) 4質量部
・エタノール 87質量部
【0068】
(実施例4)
各種材料を以下のとおり準備したこと以外は、実施例1と同様にして消火材を得た。
・消火剤成分(塩素酸カリウム、クエン酸三カリウム) 87質量部
・ポリビニルブチラール樹脂溶液(ポリビニルブチラール樹脂11質量部をエタノール80質量部、イソプロピルアルコール9質量部に溶解させた溶液) 81質量部
・被膜形成剤(ロジン マルキードNo33、荒川化学工業株式会社) 4質量部
・エタノール 87質量部
【0069】
(実施例5)
各種材料を以下のとおり準備したこと以外は、実施例1と同様にして消火材を得た。
・消火剤成分(塩素酸カリウム、クエン酸三カリウム) 87質量部
・ポリビニルブチラール樹脂溶液(ポリビニルブチラール樹脂11質量部をエタノール80質量部、イソプロピルアルコール9質量部に溶解させた溶液) 81質量部
・被膜形成剤(6AN-5000(アクリルポリオール樹脂 大成ファインケミカル株式会社) 7.8質量部、タケネートD110N(イソシアネート樹脂 三井化学株式会社) 1.1質量部) 8.9質量部
・エタノール 87質量部
【0070】
(実施例6)
クエン酸三カリウムに被膜形成剤(X-12-1287A 信越化学工業株式会社)を添加し、これをメノウ乳鉢にてクエン酸三カリウムの平均粒子径D50が12μm以下となるように粉砕混合することで、被膜(有機シラン膜)が表面に形成されたクエン酸三カリウムを得た。このクエン酸三カリウムを以下の配合比で各種材料と混合することで得られる消火剤層形成用組成物を用いて、実施例1と同様にして消火材を得た。
・消火剤成分(塩素酸カリウム、クエン酸三カリウム・被膜形成剤混合物) 91質量部
・エーテル系ウレタン樹脂溶液(エーテル系ポリウレタン樹脂100質量部をイソプロピルアルコール210質量部に溶解させた溶液) 28質量部
・エタノール 148質量部
【0071】
(比較例1)
各種材料を以下のとおり準備したこと以外は、実施例1と同様にして消火材を得た。
・消火剤成分(塩素酸カリウム、クエン酸三カリウム) 87質量部
・ポリビニルブチラール樹脂溶液(ポリビニルブチラール樹脂11質量部をエタノール80質量部、イソプロピルアルコール9質量部に溶解させた溶液) 118質量部
・エタノール 87質量部
【0072】
(比較例2)
各種材料を以下のとおり準備したこと以外は、実施例1と同様にして消火材を得た。
・消火剤成分(塩素酸カリウム、クエン酸三カリウム) 87質量部
・ポリビニルブチラール樹脂溶液(ポリビニルブチラール樹脂11質量部をエタノール80質量部、イソプロピルアルコール9質量部に溶解させた溶液) 81質量部
・シランカップリング剤 X-12-1267B(信越化学工業株式会社) 4質量部
・エタノール 87質量部
【0073】
(評価:被膜観察)
走査型電子顕微鏡JSM―7001F(日本電子株式会社)を用いて、エネルギー分散型X線分光法(EDS)により、クエン酸三カリウム粒子表面の元素分析を行い、被膜の有無を確認した。結果を表1に示す。
【0074】
(評価:性状安定性)
シーラント層(L-LDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)樹脂、厚さ30μm)及び基材層(シリカ蒸着膜を有するPET(ポリエチレンテレフタラート)樹脂、厚さ12μm)を備えるバリアフィルム(水蒸気透過率は0.2~0.6g/m/day,40℃/90%RH条件下)を準備した。
このバリアフィルムを2枚用いて各例の消火材を覆い、バリアフィルムの4辺をヒートシールすることで、包装材内に消火材を封入した。ヒートシール条件は140℃で2秒間、シール幅は10mmとした。これを評価サンプル(消火材パッケージ)とした。
評価サンプルを85℃/85%RH下で所定時間静置保管し、保管前後の全光線透過率から全光線透過率変化量Δを算出した。全光線透過率の測定にはヘイズメーターBYK-Gardner Haze-Guard Plus(BYK社製)を用い、光源から積分球に入る光が消火材を通過するように試料を固定した状態で、全光線透過率を測定した。
全光線透過率変化量Δ(%)=保管後の全光線透過率の値-保管前の全光線透過率の値
得られた全光線透過率変化量Δから、性状安定性を以下の基準に従って評価した。結果を表1に示す。
A:168時間保存し、全光線透過率変化量Δが40%以下であった。
B:12時間保存し、全光線透過率変化量Δが40%以下であった。
C:12時間保存し、全光線透過率変化量Δが40%超であった。
【0075】
(評価:水分含有率)
各例で得られた消火材を5cm角にカットし、上記性状安定性評価と同様にして包装材内に封入し、消火材パッケージを得た。この消火材パッケージを85℃/85%RH下で12時間静置保管した後に開封し、包装材中の消火材を評価サンプルとした。
各評価サンプルを、加熱乾燥式水分計(METTLER TOLEDO社製、HB43-S)を用いて140℃で5分間加熱し、加熱前後の重量差分から消火材の水分含有量を測定した。同様にして、加熱前後の重量差分から基材単体の水分含有量を測定した。そして、以下の計算式により消火剤層の水分含有率を算出した。結果を表1に示す。
水分含有率(%)={(消火材の水分含有量(g)-基材の水分含有量(g))/(加熱前の消火材重量(g)-加熱前の基材重量(g))}×100
【0076】
【表1】
【0077】
実施例の消火材は、潮解性を有するクエン酸三カリウムに被膜が形成されていたことにより、良好な性状安定性を示した。実施例の消火材では、被膜形成剤が疎水構造を形成するアルケン骨格(ブタジエン骨格)や、環状アルカン構造を有しているため、いずれも優れた性状安定性が示された。
比較例の消火材では、クエン酸三カリウムに被膜が形成されなかったため、性状安定性は実施例に劣る結果となった。
【符号の説明】
【0078】
1…消火剤層、2…基材、3…包装材、10…消火材、100…消火材パッケージ。
【要約】
【課題】クエン酸カリウムを消火剤成分として含む、性状安定性に優れる消火材を提供すること。
【解決手段】粒子状のクエン酸カリウムを含む消火剤を含有する消火剤層を備え、クエン酸カリウムが、被膜形成剤から形成された被膜を表面に有する、消火材。
【選択図】図1
図1
図2