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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】食品改質剤及び改質食品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 5/00 20160101AFI20240501BHJP
   A23L 5/10 20160101ALI20240501BHJP
   A23L 29/212 20160101ALI20240501BHJP
   A23L 29/262 20160101ALI20240501BHJP
   A23L 29/30 20160101ALI20240501BHJP
   A23L 13/00 20160101ALN20240501BHJP
   A23L 17/00 20160101ALN20240501BHJP
   A23L 19/00 20160101ALN20240501BHJP
【FI】
A23L5/00 F
A23L5/10 A
A23L5/10 B
A23L29/212
A23L29/262
A23L29/30
A23L13/00 A
A23L17/00 A
A23L19/00 101
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022579584
(86)(22)【出願日】2022-02-02
(86)【国際出願番号】 JP2022004070
(87)【国際公開番号】W WO2022168878
(87)【国際公開日】2022-08-11
【審査請求日】2023-04-04
(31)【優先権主張番号】P 2021016768
(32)【優先日】2021-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520474783
【氏名又は名称】株式会社ミライ化成
(73)【特許権者】
【識別番号】000227272
【氏名又は名称】日澱化學株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 朋之
(72)【発明者】
【氏名】柏原 貴幸
(72)【発明者】
【氏名】桑田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】中島 徹
【審査官】関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-097393(JP,A)
【文献】特開2015-043709(JP,A)
【文献】特開2004-049037(JP,A)
【文献】特開平07-255422(JP,A)
【文献】特表2017-513533(JP,A)
【文献】米国特許第05897898(US,A)
【文献】国際公開第10/052727(WO,A1)
【文献】特開2019-054763(JP,A)
【文献】特開2017-029111(JP,A)
【文献】特開2011-087490(JP,A)
【文献】特開2009-183194(JP,A)
【文献】国際公開第2017/150390(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 5/00
A23L 5/10
A23L 3/00
A23L 29/30
A23L 29/212
A23L 29/262
A23L 13/00
A23L 17/00
A23L 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可逆熱ゲル化剤及び増粘剤を含む食品被覆用改質剤であって、
前記可逆熱ゲル化剤がメチルセルロース又はヒドロキシプロピルメチルセルロースであり、
前記増粘剤が澱粉及び澱粉分解物の両方を含み、
前記食品被覆用改質剤に水を加えて撹拌混合して固形分5重量%に調製した食品被覆用改質剤液の15℃における粘度が250mPa・s以上である、
食品被覆用改質剤(但し、フライドポテト製造用及び乾燥フィルムコーティング形成用を除く)。
【請求項2】
前記可逆熱ゲル化剤の熱ゲル化温度が40℃以上である、請求項1に記載の食品被覆用改質剤。
【請求項3】
前記増粘剤の15℃における2重量%水溶液の粘度が30mPa・s以上である、請求項1又は2に記載の食品被覆用改質剤。
【請求項4】
結晶セルロースを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の食品被覆用改質剤。
【請求項5】
15℃における2重量%液の粘度が30mPa・s未満である、非増粘性澱粉を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の食品被覆用改質剤。
【請求項6】
食品改質時に食品に添加され、食品改質後には除去可能な、請求項1~のいずれか一項に記載の食品被覆用改質剤。
【請求項7】
ゲル状態で食品を被覆するために用いられる、請求項1~のいずれか一項に記載の食品被覆用改質剤。
【請求項8】
請求項1~のいずれか一項に記載の食品被覆用改質剤に水を加えて撹拌混合して食品被覆用改質剤液を得る工程(1)、前記食品被覆用改質剤液で食品を被覆して被覆食品を得る工程(2)、及び前記被覆食品を可逆熱ゲル化剤の熱ゲル化温度以上で加熱する工程(3)を含む、改質食品の製造方法。
【請求項9】
前記工程(3)における加熱が、茹で、又は蒸しである、請求項に記載の改質食品の製造方法。
【請求項10】
前記食品被覆用改質剤液の粘度が15℃において250mPa・s以上10000mPa・s以下である、請求項8又は9に記載の改質食品の製造方法。
【請求項11】
さらに、前記被覆食品を水で洗浄する工程(4)を含む、請求項8~10のいずれか一項に記載の改質食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は食品改質剤及び改質食品の製造方法に関する。特に食品を加熱した際の歩留まりを向上させ、食品の外観を保持する食品改質剤、及び改質食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品の改質について、特に畜肉食品及び水産食品は、保存期間中に変色や退色、離水等が起こりやすく、商品価値の低下を招いてしまう。さらに、畜肉食品及び水産食品を調理あるいは加工する場合、原料を単に加熱し、あるいは成型する等の加工処理を行うと、加工時に離水や離油が起こり、食品のもつ好ましい食感や外観が損なわれてしまう。そこで、食品の変色、退色、離水等を防止する目的で、食品改質剤を食品に添加することが行われている。とりわけリン酸塩は冷凍耐性の向上、保水力の改善、歩留まりの向上等の目的で従来から配合されている。
【0003】
しかしながら、リン酸塩による方法は体内へのカルシウムや亜鉛の吸収阻害等の問題が指摘され、さらにリン酸塩独特の苦みが残ることから、あまり好ましいものではなく、その使用が忌避される傾向にある。
【0004】
そこで、リン酸塩を含まずに、リン酸塩を配合した食品用品質向上剤と同等以上の効果を有する、食品改質剤の報告がなされている。特許文献1には、タンパク質とアルカリ剤とを含有することを特徴とする食品改質剤が記載されている。特許文献2には、グリシンの可食性金属塩又はグリシンの可食性金属塩及びグリシンの混合水溶液に魚介類を浸漬して含浸させることを特徴とする魚介類の処理方法が記載されている。特許文献3には、穀物タンパク質部分分解物と、アルカリ金属炭酸塩及びアルカリ金属炭酸水素塩から選ばれた少なくとも1種とを有効成分として含有することを特徴とする食肉加工食品の改質剤が記載されている。特許文献4には、膨張剤と食物繊維及び/又はグルコン酸塩とを有効成分として含有することを特徴とする畜肉用改質剤が記載されている。特許文献5には、炭酸塩、酢酸及び有機酸を含有することを特徴とする畜肉又は水産物の日持ち及び歩留まり向上剤が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-050945号公報
【文献】特開2000-300219号公報
【文献】特開2007-267652号公報
【文献】特開2001-000148号公報
【文献】特開2016-029914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の改質剤を使用すると、歩留まりは向上するものの、食品がアルカリ性になってしまうことでアルカリ特有の苦みが感じられ、食品本来の風味を損なってしまうといった問題があった。
【0007】
そこで、リン酸塩を使用する必要なく、なおかつ食品をアルカリ性にすることなく加熱時の歩留まりを向上させ、風味を損なうことなくその外観を保持できる食品改質剤が求められていた。
【0008】
本開示は、リン酸塩を使用する必要がなく、なおかつ、食品をアルカリ性にすることなく食品を加熱した際の歩留まりを向上させ、食品の外観を保持する食品改質剤、及び食品改質方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は上記目的の達成のために鋭意検討を行った結果、可逆熱ゲル化剤と、増粘剤とを含有する食品改質剤を使用した場合に、食品を加熱した際の歩留まりを向上させ、風味を損なうことなく食品の外観を保持することが出来ることを見出し、本開示を完成させるに至った。
【0010】
本開示の一態様は以下のとおりである。
[項1]
可逆熱ゲル化剤及び増粘剤を含む、食品改質剤。
[項2]
前記可逆熱ゲル化剤の熱ゲル化温度が40℃以上である、項1に記載の食品改質剤。
[項3]
前記増粘剤の15℃における2重量%水溶液の粘度が30mPa・s以上である、項1又は2に記載の食品改質剤。
[項4]
前記可逆熱ゲル化剤がメチルセルロース又はヒドロキシプロピルメチルセルロースである、項1~3のいずれか一項に記載の食品改質剤。
[項5]
前記増粘剤が澱粉、澱粉分解物、カルボキシメチルセルロース、キサンタンガム、グァーガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、ネイティブジェランガム、タマリンドシードガム、カラギーナン、ペクチン、アルギン酸ナトリウム、海藻粉末、海藻抽出物、グルコマンナン、及び寒天からなる群から選択される少なくとも一種である、項1~4のいずれか一項に記載の食品改質剤。
[項6]
前記増粘剤が前記澱粉及び前記澱粉分解物の両方を含む、項1~5のいずれか一項に記載の食品改質剤。
[項7]
結晶セルロースを含む、項1~6のいずれか一項に記載の食品改質剤。
[項8]
非増粘性澱粉を含む、項1~7のいずれか一項に記載の食品改質剤。
[項9]
前記食品改質剤に水を加えて撹拌混合して固形分5重量%に調製した食品改質剤液の15℃における粘度が250mPa・s以上である、項1~8のいずれかに記載の食品改質剤。
[項10]
可逆熱ゲル化剤を含む食品改質剤であって、食品改質時に食品に添加され、食品改質後には除去可能な食品改質剤。
[項11]
食品被覆に用いられる、項10に記載の食品改質剤。
[項12]
項1~11のいずれか一項に記載の食品改質剤に水を加えて撹拌混合して食品改質剤液を得る工程(1)、前記食品改質剤液で食品を被覆して被覆食品を得る工程(2)、及び前記被覆食品を可逆熱ゲル化剤の熱ゲル化温度以上で加熱する工程(3)を含む、改質食品の製造方法。
[項13]
前記工程(3)における加熱が、茹で、又は蒸しである、項12に記載の改質食品の製造方法。
[項14]
前記食品改質剤液の粘度が15℃において250mPa・s以上10000mPa・s以下である、項12又は13に記載の改質食品の製造方法。
[項15]
さらに、前記被覆食品を水で洗浄する工程(4)を含む、項12~14のいずれか一項に記載の改質食品の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、リン酸塩を使用せず、なおかつ食品をアルカリ性にすることなく加熱した際の歩留まりを向上させることが出来る。また、加熱時に生じる食品の外観の劣化を防ぎ、綺麗な見た目を保持することが可能である。さらに、例えばなめこ等の特徴的なぬめり感を有する食品に関して、加熱後にもそのぬめり感を保持することが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示を実施するための形態について説明する。なお、以下の説明は、本開示の実施形態の一例を示したものであり、これにより本開示の範囲が狭く解釈されることはない。
【0013】
<食品改質剤>
本開示における食品改質剤は可逆熱ゲル化剤を含み、さらに増粘剤を含むことが好ましい。本開示において「食品改質剤」とは、食品の品質を改変又は向上させるために食品の加工又は製造段階において用いられる添加剤である。ここで、食品の品質の例としては、食感、うまみ、外観、歩留まり、加工安定性、製造適性等が挙げられる。
【0014】
[可逆熱ゲル化剤]
本開示における食品改質剤は可逆熱ゲル化剤を含有する。本開示において「可逆熱ゲル化剤」とは水中において可逆的にゾル化/ゲル化する熱相転移性を有するゲル化剤である。可逆熱ゲル化剤は、水中において加熱するとゲル化温度以上より高温でゲル状態であり、ゲル化温度以下まで冷却するとゾル状態となる。
【0015】
可逆熱ゲル化剤の熱ゲル化温度は40℃以上、45℃以上、50℃以上、55℃以上、60℃以上、65℃以上、70℃以上、又は75℃以上であってよい。可逆熱ゲル化剤の熱ゲル化温度は95℃以下、90℃以下、85℃以下、又は75℃以下であってよい。熱ゲル化温度は、化学修飾基の種類、化学修飾率、分子量等を変更することにより、変更することが可能である。
【0016】
可逆熱ゲル化剤は多糖類であってよく、好ましくは化学修飾多糖類である。多糖類の例としては、セルロースが挙げられる。化学修飾の例としてはアルキル化、ヒドロキシアルキル化等が挙げられる。可逆熱ゲル化剤の具体例としてはメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等が挙げられる。可逆熱ゲル化剤は1種単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
本開示におけるメチルセルロースは、木材、竹、藁、コットン、バガス、バクテリア等から得られるセルロースをメチルエーテル化し、その水溶性を高めたものであってよい。本開示におけるヒドロキシプロピルメチルセルロースは、メチルセルロースにヒドロキシプロポキシル基を導入したものであってよい。いずれの水溶液も通常、常温、常圧で液状である。メチルセルロースの製品例としては、メトローズMCEタイプ(信越化学工業株式会社製)が挙げられる。ヒドロキシプロピルメチルセルロースの製品例としては、メトローズSFEタイプ(信越化学工業株式会社製)、メトローズSEタイプ(信越化学工業株式会社製)、メトローズNEタイプ(信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0018】
[増粘剤]
本開示における食品改質剤は増粘剤を含むことが好ましい。本開示において「増粘剤」とは常温で水に溶解又は分散して粘稠性を生じる高分子物質のことである。本開示において増粘剤は上記可逆熱ゲル化剤を含まない、つまり、可逆熱ゲル性を有しない。
【0019】
増粘剤の15℃における2重量%水溶液の粘度が30mPa・s以上、100mPa・s以上、250mPa・s以上、500mPa・s以上、1000mPa・s以上、2500mPa・s以上、又は5000mPa・s以上であってよく、好ましくは250mPa・s以上である。増粘剤の15℃における2重量%水溶液の粘度が50000mPa・s以下、25000mPa・s以下、10000mPa・s以下、5000mPa・s以下、2500mPa・s以下、1000mPa・s以下、又は500mPa・s以下であってよく、好ましくは25000mPa・s以下である。上記粘度は15℃においてBM型回転粘度計を用いて30rpmの回転速度で10秒後に測定した値である。測定にあたっては粘度域に応じて適切なローター(No.1~4)を用いて測定することが出来る。
【0020】
増粘剤の具体例として、澱粉、澱粉分解物、カルボキシメチルセルロース、キサンタンガム、グァーガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、ネイティブジェランガム、タマリンドシードガム、カラギーナン、ペクチン、アルギン酸ナトリウム、海藻粉末、海藻抽出物、グルコマンナン、寒天等が挙げられる。これらの物質は1種単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
増粘剤は分散性の観点から澱粉及び澱粉分解物のいずれか一方を含むことが好ましい。特に増粘効果の調整が容易であり、澱粉の分散性を高める効果も得られることから、増粘剤は澱粉と澱粉分解物との両方を含むことが好ましい。
【0022】
澱粉としては、例えば、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、ハイアミロースコーンスターチ、タピオカ澱粉、ワキシータピオカ澱粉、小麦澱粉、米澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、エンドウ澱粉、緑豆澱粉、サゴ澱粉、クズ澱粉等が挙げられる他、コーングリッツ、小麦粉、米粉、切干甘藷粉末、切干タピオカ粉末等、穀粉に代表される澱粉含有粉末も用いることができる。また、澱粉は加工澱粉であってもよい。加工澱粉は酸化処理、エステル化処理、エーテル化処理、架橋処理、エステル化架橋処理、エーテル化架橋処理といった、化学修飾を施して得られる加工澱粉、アルファ化処理、乾熱処理、湿熱処理、ボールミル処理、微粉砕処理、高電圧電場処理、超音波処理、温水処理、漂白処理、殺菌処理、酸処理、アルカリ処理、酵素処理といった、化学修飾を伴わない加工がなされた加工澱粉等であってよい。澱粉は増粘作用が発現するように、必要によりアルファ化処理、ボールミル処理、焙焼酸処理、焙焼アルカリ処理、酵素処理より選ばれる1以上の加工処理を行ってもよい。
【0023】
澱粉分解物としては、熱処理、酸処理、アルカリ処理、酸化処理、酵素処理等の方法で分解して得られる可溶性澱粉、デキストリン、マルトデキストリン、水飴等と称されるものが挙げられる。
【0024】
増粘剤の量は、可逆熱ゲル化剤100重量部に対して1重量部以上、5重量部以上、10重量部以上、50重量部以上、75重量部以上、100重量部以上、250重量部以上、500重量部以上、750重量部以上、又は1000重量部以上であってよく、好ましくは50重量部以上である。増粘剤の量は、可逆熱ゲル化剤100重量部に対して3000重量部以下、2000重量部以下、1000重量部以下、750重量部以下、500重量部以下、250重量部以下、又は100重量部以下であってよく、好ましくは500重量部以下である。
【0025】
増粘剤中、澱粉の比率は10重量%以上、25重量%以上、35重量%以上、45重量%以上、55重量%以上、65重量%以上、75重量%以上、85重量%以上、又は95重量%以上であってよい。増粘剤中、澱粉の比率は100重量%以下、90重量%以下、80重量%以下、70重量%以下、60重量%以下、50重量%以下、又は40重量%以下であってよい。
【0026】
増粘剤中、澱粉分解物の比率は10重量%以上、25重量%以上、35重量%以上、45重量%以上、55重量%以上、65重量%以上、75重量%以上、又は85重量%以上であってよい。増粘剤中、澱粉分解物の比率は100重量%以下、90重量%以下、80重量%以下、70重量%以下、60重量%以下、50重量%以下、又は40重量%以下であってよい。
【0027】
増粘剤が澱粉及び澱粉分解物の両方を含んでもよい。澱粉分解物の量は澱粉100重量部に対して10重量部以上、25重量部以上、50重量部以上、75重量部以上、又は100重量部以上であってよい。澱粉分解物の量は澱粉100重量部に対して、300重量部以下、200重量部以下、150重量部以下、100重量部以下、80重量部以下、60重量部以下、40重量部以下、又は20重量部以下であってよい。
【0028】
[結晶セルロース]
本開示における食品改質剤はさらに、結晶セルロースを含むことが好ましい。結晶セルロースの構造が、食品改質剤の被覆状態における食材との親和性を高め、表面付着を補助すると考えられる。また、結晶セルロースは水に不溶で耐熱性があるため、可逆熱ゲル化剤が形成するゲル構造を補強することにより、歩留まりを向上させると推定される。結晶セルロースとして、その表面を水溶性高分子でコーティングした結晶セルロース製剤を使用してもよい。結晶セルロース製剤を使用する場合、結晶セルロースの含有率は60%以上であってよく、70%以上が好ましく、80%以上がより好ましい。
【0029】
結晶セルロースの量は、可逆熱ゲル化剤100重量部に対して1重量部以上、5重量部以上、10重量部以上、25重量部以上、50重量部以上、75重量部以上、100重量部以上、200重量部以上、又は300重量部以上であってよく、好ましくは10重量部以上、より好ましくは25重量部以上である。結晶セルロースの量は、可逆熱ゲル化剤100重量部に対して1000重量部以下、750重量部以下、500重量部以下、400重量部以下、300重量部以下、200重量部以下、100重量部以下、又は50重量部以下であってよく、好ましくは500重量部以下、より好ましくは300重量部以下、である。
【0030】
[非増粘性澱粉]
本開示における食品改質剤は、結晶セルロースに代えて又は結晶セルロースに加えて、非増粘性澱粉を含むことが好ましい。非増粘性澱粉は増粘性を示さない澱粉のことであり増粘剤としては機能しない。非増粘性澱粉は、水に難溶で耐熱性が高く、可逆熱ゲル化剤が形成するゲル構造を補強することにより、歩留まりを向上させると推定される。
【0031】
非増粘性澱粉の15℃における2重量%液の粘度は0.01mPa・s以上、0.1mPa・s以上、又は1mPa・s以上であってよい。非増粘性澱粉の15℃における2重量%液の粘度は30mPa・s未満、20mPa・s以下、10mPa・s以下、5mPa・s以下、2.5mPa・s以下、又は1mPa・s以下であってよく、好ましくは10mPa・s以下である。上記粘度は15℃においてBM型回転粘度計を用いて30rpmの回転速度で10秒後に測定した値である。測定にあたっては粘度域に応じて適切なローター(No.1~4)を用いて測定することが出来る。
【0032】
非増粘性澱粉は非増粘性を示すために澱粉に非増粘処理を施したものであってよい。
【0033】
非増粘処理は、非増粘性を示すことができれば、特に限定されないが、典型的には架橋処理である。架橋処理の例としては、リン酸架橋処理、アセチル化アジピン酸架橋処理で代表されるエステル化架橋処理、ヒドロオキシプロピル架橋処理で代表されるエーテル化架橋処理、等が挙げられる。架橋処理に用いられる架橋剤の例としては、トリメタリン酸ナトリウム、メタリン酸塩、トリメタリン酸ナトリウム/トリポリリン酸ナトリウム、オキシ塩化リン、アジピン酸/酢酸混合無水物、エピクロロヒドリン、アクロレイン、シアヌリッククロライド、ホルムアルデヒド、グリオキザール、アジピン酸ジヒドラジド、ジイソシアネート、ビスエチレン尿素、ジアルデヒド化合物、ジエポキシド化合物、ポリエポキシド化合物、及びそれらの組合せ等が挙げられる。
【0034】
非増粘性澱粉の原料澱粉の種類は特に限定されず、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、ハイアミロースコーンスターチ、タピオカ澱粉、ワキシータピオカ澱粉、小麦澱粉、米澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、エンドウ澱粉、緑豆澱粉、サゴ澱粉、クズ澱粉等が挙げられる他、コーングリッツ、小麦粉、米粉、切干甘藷粉末、切干タピオカ粉末等、穀粉に代表される澱粉を使用することができる。
【0035】
非増粘性澱粉は、加工処理、例えば、酸化処理、エステル化処理、エーテル化処理等の化学加工処理、アルファ化処理、乾熱処理、湿熱処理、ボールミル処理、微粉砕処理、高電圧電場処理、超音波処理、温水処理、漂白処理、殺菌処理、酸処理、アルカリ処理、酵素処理といった化学修飾を伴わない加工処理を施されていてもよく、好ましくはアルファ化処理が施されている。
【0036】
非増粘性澱粉の量は、可逆熱ゲル化剤100重量部に対して1重量部以上、5重量部以上、10重量部以上、25重量部以上、50重量部以上、75重量部以上、100重量部以上、200重量部以上、又は300重量部以上であってよく、好ましくは10重量部以上、より好ましくは25重量部以上である。非増粘性澱粉の量は、可逆熱ゲル化剤100重量部に対して1000重量部以下、750重量部以下、500重量部以下、400重量部以下、300重量部以下、200重量部以下、100重量部以下、又は50重量部以下であってよく、好ましくは500重量部以下、より好ましくは300重量部以下、である。
【0037】
非増粘性澱粉と結晶セルロースの両方が食品改質剤に含まれていてもよい。非増粘性澱粉と結晶セルロースの合計中、非増粘性澱粉の比率は、1重量%以上、3重量%以上、5重量%以上、10重量%以上、20重量%以上、30重量%以上、50重量%以上、80重量%以上、90重量%以上であってよい。非増粘性澱粉と結晶セルロースの合計中、非増粘性澱粉の比率は、99重量%以下、75重量%以下、50重量%以下、25重量%以下、10重量%以下、又は5重量%以下であってよい。
【0038】
[その他成分]
本開示の食品改質剤には、その効果を阻害しない範囲で、乳酸カルシウム、塩化ナトリウム、グルタミン酸ナトリウム、みりん、料理酒等の調味料、砂糖、果糖、ぶどう糖、水飴、はちみつ、キシロース、乳糖、異性化糖、アスパルテーム、ステビア、グリシン、アラニン、ソーマチン、サッカリン等の甘味料、ソルビトール、マルチトール、キシリトール等、還元水飴、還元澱粉分解物等の糖アルコール、オールスパイス、ペッパー、ナツメグ、メース等の香辛料、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、パラオキシ安息香酸エステル等の保存料、還元デキストリン、還元オリゴ糖、還元水飴等の還元澱粉分解物、環状デキストリン、グリセリン、ヒアルロン酸、イヌリン等の製造用剤、アスコルビン酸、アスコルビン酸カルシウム、ミックストコフェロール、カテキン等の酸化防止剤、オクテニルコハク酸澱粉ナトリウム、レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等の乳化剤、酢酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、塩化カルシウム、貝カルシウム等の強化剤、大豆タンパク、乾燥卵白、小麦グルテン、乳タンパク、血漿タンパク製剤等のタンパク質、カラメル色素、クチナシ色素、カロテノイド色素、コチニール色素等の着色料、香料等を併用してもよい。
【0039】
[食品改質剤の粘度特性]
食品改質剤に水を加えて撹拌混合して固形分5重量%となるように調製した食品改質剤液の15℃における粘度は、30mPa・s以上、100mPa・s以上、250mPa・s以上、300mPa・s以上、500mPa・s以上、1000mPa・s以上、2500mPa・s以上、又は5000mPa・s以上であってよく、好ましくは250mPa・s以上、より好ましくは1000mPa・s以上である。食品改質剤に水を加えて撹拌混合して、固形分5重量%となるように調製した食品改質剤液の15℃における粘度は、50000mPa・s以下、25000mPa・s以下、10000mPa・s以下、5000mPa・s以下、2500mPa・s以下、1000mPa・s以下、又は500mPa・s以下であってよく、好ましくは10000mPa・s以下、より好ましくは5000mPa・sである。粘度範囲が上記範囲にあることが実用上の歩留まり向上性や作業性の観点から適切である。上記粘度は15℃においてBM型回転粘度計を用いて30rpmの回転速度で10秒後に測定した値である。測定にあたっては粘度域に応じて適切なローター(No.1~4)を用いて測定することが出来る。例えば、粘度は公知の方法により調整できる。例えば、増粘剤の組み合わせや添加量により粘度調整できる。また、粘度調整は粉砕化・造粒等の手段により、改質剤の粒径又は分散性を変化させることにより、行われてもよい。ここで、粉体化・造粒の方法としては、特に限定されず、凍結粉砕、乾式粉砕、湿式粉砕、低温粉砕、篩押出造粒、攪拌造粒、流動層造粒、転動造粒、シート造粒、乾式造粒、スプレードライ、真空ドラムドライ等が挙げられる。
【0040】
[食品改質剤の用途]
上述の可逆熱ゲル化剤を含む食品改質剤は、食品改質時に食品に添加され、食品改質後には除去可能な食品改質剤であることが好ましい。特に本開示における食品改質剤は、下記の改質食品の製造方法の説明にあるように、食品改質の際の食品被覆に用いられることが好適であり、特に加熱による食品改質の際の食品被覆に好適に用いられる。食品改質剤は食品改質後には除去されてもよいし、食品改質後に除去されずにさらなる食品改質工程(食品加工工程)に供されたり、食品の最終形態に存在したりしてもよい。食品改質剤の除去の方法は、洗浄による除去であってよい。
【0041】
<改質食品の製造方法>
本開示における改質食品の製造方法は食品改質剤に水を加えて撹拌混合して食品改質剤液を得る工程(1)、食品を前記食品改質剤液で被覆して被覆食品を得る工程(2)、及び前記被覆食品を可逆熱ゲル化剤の熱ゲル化温度以上で加熱する工程(3)を含む。本開示における改質食品の製造方法はさらに前記被覆食品を水で洗浄する工程(4)を含んでよい
【0042】
[食品改質剤液を得る工程(1)]
本開示における改質食品の製造方法は食品改質剤に水を加えて撹拌混合して食品改質剤液を得る工程(1)を含む。上述した食品改質剤に水を加えて撹拌混合することで食品改質剤液を作成することができる。食品改質剤液の粘度は、30mPa・s以上、100mPa・s以上、250mPa・s以上、300mPa・s以上、500mPa・s以上、1000mPa・s以上、2500mPa・s以上、又は5000mPa・s以上であってよく、好ましくは250mPa・s以上、より好ましくは300mPa・s以上である。食品改質剤液の粘度は、50000mPa・s以下、25000mPa・s以下、10000mPa・s以下、5000mPa・s以下、2500mPa・s以下、1000mPa・s以下、又は500mPa・s以下であってよく、好ましくは10000mPa・s以下、より好ましくは5000mPa・sである。粘度範囲が上記範囲にあることが実用上の歩留まり向上性や作業性の観点から適切である。上記粘度は15℃においてBM型回転粘度計を用いて30rpmの回転速度で10秒後に測定した値である。測定にあたっては粘度域に応じて適切なローター(No.1~4)を用いて測定することが出来る。
【0043】
食品改質剤液における水分量は食品改質剤液の粘度を上記範囲に調節するために適宜調節できる。食品改質剤液における水分量は、50重量%以上、75重量%以上、85重量%以上、90重量%以上、92.5重量%以上、95重量%以上、又は97.5重量%以上であってよく、好ましくは90重量%以上である。食品改質剤液における水分量は、99重量%以下、98重量%以下、96重量%以下、94重量%以下、92重量%以下、90重量%以下、85重量%以下、75重量%以下であってよく、好ましくは98重量%以下である。
【0044】
食品改質剤液における固形分量は食品改質剤液の粘度を上記範囲に調節するために適宜調節できる。食品改質剤液における固形分量は、1重量%以上、2重量%以上、4重量%以上、6重量%以上、8重量%以上、10重量%以上、15重量%以上、又は25重量%以上であってよく、好ましくは2重量%以上である。食品改質剤液における固形分量は、50重量%以下、25重量%以下、15重量%以下、10重量%以下、7.5重量%以下、5重量%以下、又は2.5重量%以下であってよく、好ましくは10重量%以下である。
【0045】
食品改質剤液のpHは中性、弱酸性又は弱アルカリ性であってよい。食品改質剤液のpHは5.0以上、6.0以上、6.5以上、6.7以上、又は6.9以上であってよい。食品改質剤液のpHは9.0以下、8.0以下、7.5以下、8.0以下、7.3以下、又は7.1以下であってよい。
【0046】
[被覆食品を得る工程(2)]
本開示における改質食品の製造方法は食品を前記食品改質剤液で被覆して被覆食品を得る工程(2)を含む。食品を前記食品改質剤液で被覆する方法は、限定されないが、食品改質剤液に食品を浸漬する浸漬塗布であってよい。浸漬塗布を用いることが好ましいが、その他の方法として、食品改質剤液に食品を噴霧する方法、インジェクションによる方法、食品改質剤を粉末のままで食品に添加する方法も可能である。
【0047】
本開示における「食品」とは、例えば、牛肉、豚肉、鶏肉、羊肉、馬肉、猪肉等の畜肉食品や、エビ、イカ、タコ、白身魚、赤身魚、カニ、ホタテ、アワビ等の水産食品、なめこ、しいたけ、まいたけ、えのき、エリンギ、ブナシメジ、マッシュルーム等のきのこ類、ブロッコリー、カリフラワー、キャベツ、アスパラガス、タマネギ、ハクサイ、レタス等の葉菜類、ジャガイモ、サツマイモ、ダイコン、ニンジン、サトイモ、ゴボウ等の根菜類等が挙げられる。畜肉食品や水産食品については、切断、挽肉、すり身等の加工処理が施された食品、例えば、ソーセージ、ハム、カマボコ、ちくわ、はんぺん等を含む。加熱処理後の食品を、さらなる加工食品の原材料として使用する場合、あらかじめ使用する加工食品の原材料として好ましい大きさにカットしてあってもよい。
【0048】
食品改質剤液に食品を浸漬する時間は食品の形態によって異なってよく、1秒以上、15秒以上、30秒以上、1分以上、10分以上、1時間以上、又は12時間以上であってよく、24時間以内、15時間以内、5時間以内、30分以内、5分以内、1分以内、又は30秒以内であってよい。本開示における食品改質剤は浸漬時間が短い(例えば、1分未満)場合であっても、歩留まり向上や外観の保持といった本開示の目的を達成することが出来る点において非常に優れている。
【0049】
食品改質剤液に食品を浸漬する際の食品改質剤液の温度は、0℃以上、3℃以上、10℃以上、15℃以上、又は20℃以上であってよく、40℃以下、30℃以下、25℃以下、20℃以下、15℃以下、10℃以下、又は5℃以下であってよい。長時間浸漬における、食品の変質、雑菌の繁殖の恐れを抑制する観点から、低温(例えば15℃以下、10℃以下)であってよい。
【0050】
[被覆食品を加熱する工程(3)]
本開示における改質食品の製造方法は被覆食品を熱ゲル化温度以上で加熱する工程(3)を含む。熱ゲル化剤の熱ゲル化作用を発現させるために、加熱温度は熱ゲル化剤の熱ゲル化温度以上である。加熱温度は熱ゲル化温度よりも1℃以上、3℃以上、5℃以上、10℃以上、15℃以上、20℃以上、25℃以上高くてもよい。加熱時間は食品及び食品の加工目的によって適宜決定されてよい。
【0051】
被覆食品の加熱方法としては、焼成、揚げ、ゆで、蒸し、電子レンジによる加熱、燻製、燻煙等が挙げられるが、本開示に好適な加熱方法としては、茹で、又は蒸しが挙げられる。
【0052】
[前記被覆食品を水洗浄する工程(4)]
本開示における改質食品の製造方法は、上記加熱後において、前記被覆食品を水で洗浄する工程(4)を含んでよい。洗浄に用いる水の温度は、0℃以上、3℃以上、10℃以上、15℃以上、又は20℃以上であってよく、40℃以下、30℃以下、25℃以下、20℃以下、15℃以下、10℃以下、又は5℃以下であってよい。
【0053】
<作用効果>
本開示によれば、加熱によって食品から流出する水分や油分を防ぎ、歩留まりを向上させたり、食品の外観を綺麗に保持したり、食品のもつ食感やぬめり感等の特性が失われるのを防ぐ効果がある。本方法の原理を説明すると、食品改質剤に水を加える際、増粘剤の効果により食品改質剤液に粘度が発現することで、食品への付着が容易になり、液だれし難くする効果が得られる。さらに、結晶セルロースの作用によって食品との親和性が高まり、付着作用をより強固にする。食品改質剤液に食品を浸した後、加熱を行っていくと、可逆熱ゲル化剤の作用で、食品改質剤液がゲル化を始める。ゲル化した食品改質剤液が食品を被覆することにより、食品内部への加熱が緩やかに行われ、急激な温度変化によるドリップ(水分や油分の流出)を防ぐことが出来る他、食品の外観が損なわれてしまうのを防ぐ効果が得られる。また、結晶セルロースがゲル構造を補強することで、加熱の最中に食品改質剤液が剥がれるのを防ぐ作用がある。食品との加熱後、食品を冷水で洗い流すことによりゲルの温度が低下し、可逆熱ゲル化剤が形成するゲルがほどけ、被覆されていた食品改質剤が食品から離れることで、食品改質剤そのものを食すことなく、本開示の目的を達成することが出来る。
【実施例
【0054】
以下、実施例に基づいて本開示を更に詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、本開示の代表的な実施例の一例を示したものであり、本開示は以下の実施例に限定されるものではない。また、特に記載のない限り、「部」とは「重量部」を意味するものとする。
【0055】
<甘えび>
[実施例1]
(食品改質剤液の調製)
可逆熱ゲル化剤としてメチルセルロース(メトローズMCE-4000:信越化学工業株式会社製)2.0部を、増粘剤として馬鈴薯澱粉をドラムドライヤーで乾燥し粉砕して14meshを通過したアルファ化澱粉2.0部及び馬鈴薯澱粉を酵素処理により分解した澱粉分解物(分散剤)1.0部を、粉体の状態で混合し、食品改質剤とした。15℃の冷水を、食品改質剤と合わせて100部になるように加え、すぐに撹拌混合した。得られた食品改質剤液(以下、単に「液」と表記することがある)を、液1とした。液1の粘度を、15℃においてBM型回転粘度計(VISCOMETER MODEL BMII;東機産業株式会社製)を用いて30rpmの回転速度で10秒後に測定した。また、pHメーター(LAQUA F-71S;株式会社堀場製作所製)を用いて、液1のpHを測定した。
【0056】
(浸漬)
生のホッコクアカエビ(以下、甘えびと表記。2.0~3.0g/匹)の殻と尾を取り、重量を測定した。重量測定後の甘えびを液1に1分間浸漬した。
【0057】
(ボイル槽への投入)
液1に浸漬した甘えびを、90±2℃に調整したボイル槽に投入した。30秒間ボイルし、その後甘えびの周りを被覆している液1を流水で洗浄した。甘えびの形が崩れない程度に網で水を切り、重量を測定した。[ボイル前の重量測定、浸漬、ボイル槽への投入、流水洗浄、水切り、ボイル・洗浄後の重量測定]の一連の操作を独立に3回行った。液1を用いて一連の操作を行ったものを、実施例1とした。
【0058】
[比較例1]
食品改質剤液を用いずに甘えびをそのままボイル槽に投入した以外は実施例1と同様の方法で一連の操作を行ったものを、比較例1とした。なお、ボイル後の甘えびには液が付着していないが、流水で洗浄する工程は実施例1と同様に行った。
【0059】
[実施例2]
実施例1と同様の方法で、メチルセルロースを1.0部、アルファ化澱粉を4.0部に変更して食品改質剤液を調製した実施例2の組成について、実施例1とともに表1に示した。なお、実施例2に対応する、食品改質剤と冷水の混合液を液2とした。
【0060】
[実施例3~10]
実施例1と同様の方法で、さらに結晶セルロース製剤を追加して試験を行った。結晶セルロース製剤としてセオラスRC-591S(旭化成株式会社製、結晶セルロースを89%含む)、あるいはセオラスCL-611S(旭化成株式会社製、結晶セルロースを85%含む)を用いた。メチルセルロース、結晶セルロース製剤、アルファ化澱粉の量を変更して液を調製した、実施例3~10の組成について、表1に示した。なお、実施例3~10に対応する、食品改質剤と冷水の混合液を、それぞれ液3~10とした。
【0061】
【表1】
【0062】
[評価]
歩留まり向上とボイル・洗浄後の甘えびの外観を下記基準で評価した。歩留まり率は、重量測定器としてEK-410i(株式会社エー・アンド・デイ製)を使用し、ボイル前の平均重量とボイル・洗浄後の平均重量との重量変化率として定義した。
(歩留まり向上の評価基準)
◎:比較例1を基準とした際の歩留まり率の向上が6ポイント以上である。
○:比較例1を基準とした際の歩留まり率の向上が3ポイント以上6ポイント未満である。
△:比較例1を基準とした際の歩留まり率の向上が0ポイント以上3ポイント未満である。
×:比較例1を基準とした際の歩留まり率の向上が0ポイント未満である。
(外観の評価基準)
◎:身の剥がれが全くなく(全長の0%)、非常に良好。
○:わずかに身の剥がれが見られるが(全長の5%未満)、良好。
×:身の剥がれが目立ち(全長の5%以上)、不良。
【0063】
実施例1~10及び比較例1について、液の粘度、pH、甘えびの歩留まり率、歩留まり向上の評価、外観の評価を表2に示した。
【0064】
【表2】
【0065】
液を調製せず、甘えびをそのままボイル槽に投入した比較例1は、甘えびの身が大きく剥がれてしまい、不良という結果になった。一方、メチルセルロース、アルファ化澱粉、澱粉分解物を含む液を用いた実施例1及び2は、比較例1より歩留まり率が向上し、甘えびの外観も良好であった。
【0066】
メチルセルロース、結晶セルロース製剤、アルファ化澱粉、澱粉分解物を含む液を用いた実施例3~10は、結晶セルロース製剤を含まない液を用いた対応する組成の実施例1及び2よりも、歩留まり率あるいは外観の評価がより良好であった。例えば、実施例1と固形分が同一であり、かつ結晶セルロース製剤を含む実施例7及び8は、実施例1より歩留まり率が高く、外観の評価がより良好であった。同様に、実施例2と固形分が同一であり、かつ結晶セルロース製剤を含む実施例9についても、実施例2より歩留まり率が高く、外観の評価がより良好であった。
【0067】
<赤えび-1>
[実施例11]
(浸漬)
生のアルゼンチンアカエビ(以下、赤えびと表記。10.8~14.6g/匹)の頭、殻、尾を取り、重量を測定した。重量測定後の赤えびを、実施例7の液7に1分間浸漬した。
【0068】
(ボイル槽への投入)
実施例7の液7に浸漬した赤えびを、90±2℃に調整したボイル槽に投入した。1分間ボイルし、その後赤えびの周りを被覆している液7を流水で洗浄した。赤えびの形が崩れない程度に網で水を切り、重量を測定した。[ボイル前の重量測定、浸漬、ボイル槽への投入、流水洗浄、水切り、ボイル・洗浄後の重量測定]の一連の操作を独立に3回行った。液7を用いて一連の操作を行ったものを、実施例11とした。
【0069】
[比較例2]
食品改質剤液を用いずに赤えびをそのままボイル槽に投入した以外は実施例11と同様の方法で一連の操作を行ったもの比較例2とした。なお、ボイル後の赤えびには液が付着していないが、流水で洗浄する工程は実施例11と同様に行った。
【0070】
[評価]
実施例11及び比較例2について、歩留まり向上とボイル・洗浄後の赤えびの外観を下記基準で評価した。歩留まり率は、重量測定器としてEK-410i(株式会社エー・アンド・デイ製)を使用し、ボイル前の平均とボイル後の平均との重量変化率として定義した。
(歩留まり向上の評価基準)
◎:比較例2を基準とした際の歩留まり率の向上が6ポイント以上である。
○:比較例2を基準とした際の歩留まり率の向上が3ポイント以上6ポイント未満である。
△:比較例2を基準とした際の歩留まり率の向上が0ポイント以上3ポイント未満である。
×:比較例2を基準とした際の歩留まり率の向上が0ポイント未満である。
(外観の評価基準)
◎:身の剥がれが全くなく(全長の0%)、非常に良好。
○:わずかに身の剥がれが見られるが(全長の5%未満)、良好。
×:身の剥がれが目立ち(全長の5%以上)、不良。
【0071】
実施例11及び比較例2について、赤えびの歩留まり率、歩留まり向上の評価、外観の評価を表3に示した。
【0072】
【表3】
【0073】
液を調製せず、赤えびをそのままボイル槽に投入した比較例2は、赤えびの身が大きく剥がれてしまい、不良という結果になった。一方、液7を用いた実施例11は、ボイル時間を同じくする比較例2より歩留まり率が向上し、赤えびの外観も良好であった。
【0074】
<赤えび-2>
[実施例12]
ボイル時間を1分から2分に変更した以外は実施例11と同様の方法で行ったものを、実施例12とした。
【0075】
[比較例3]
食品改質剤液を用いずに赤えびをそのままボイル槽に投入した以外は実施例12と同様の方法で一連の操作を行ったものを、比較例3とした。
【0076】
[評価]
実施例12及び比較例3について、歩留まり向上とボイル・洗浄後の赤えびの外観を下記基準で評価した。外観の評価基準については、実施例11及び比較例2と同様とした。なお、歩留まり率は、重量測定器としてEK-410i(株式会社エー・アンド・デイ製)を使用し、ボイル前の平均とボイル後の平均との重量変化率として定義した。
(歩留まり向上の評価基準)
◎:比較例3を基準とした際の歩留まり率の向上が6ポイント以上である。
○:比較例3を基準とした際の歩留まり率の向上が3ポイント以上6ポイント未満である。
△:比較例3を基準とした際の歩留まり率の向上が0ポイント以上3ポイント未満である。
×:比較例3を基準とした際の歩留まり率の向上が0ポイント未満である。
【0077】
実施例12及び比較例3について、赤えびの歩留まり率、歩留まり向上の評価、外観の評価を表4に示した。
【0078】
【表4】
【0079】
液を調製せず、赤えびをそのままボイル槽に投入した比較例3は、赤えびの身が大きく剥がれてしまい、不良という結果になった。一方、液7を用いた実施例12は、ボイル時間を同じくする比較例3より歩留まり率が向上し、赤えびの外観も良好であった。
【0080】
<なめこ>
[実施例13]
(浸漬)
なめこ20部を、100部の実施例7の液7に投入し、1分間浸漬した。
【0081】
(ボイル槽への投入)
実施例7の液7に浸漬したなめこをザルですくい、90±2℃に調整したボイル槽に投入した。1分間ボイルし、その後なめこの周りを被覆している液7を流水で洗浄した。ザルに移して10分間水を切り、再度[浸漬、ボイル槽への投入]の操作を行った後、なめこを網の上に広げて室温で4時間以上風乾した。すなわち、本操作は下記の順番で行った。
(1)液7を調製、(2)なめこを液7に1分間浸漬、(3)浸漬したなめこをボイル槽に投入して1分間ボイル、(4)ボイルしたなめこを流水で洗浄、(5)ザルに移して10分間水切り、(6)水切りしたなめこを再度液7に1分間浸漬、(7)再浸漬したなめこをボイル槽に投入して1分間ボイル、(8)再ボイルしたなめこを流水で洗浄、(9)網の上に広げて室温で4時間以上風乾。
一連の操作を行ったものを、実施例13とした。
【0082】
[比較例4]
食品改質剤液を用いずになめこをそのままボイル槽に投入した以外は実施例13と同様の方法で一連の操作を行ったものを、比較例4とした。すなわち、本操作は下記の順番で行った。
(1)なめこをボイル槽に投入して1分間ボイル、(2)ボイルしたなめこを流水で洗浄、(3)ザルに移して10分間水切り、(4)水切りしたなめこをボイル槽に投入して1分間ボイル、(5)再ボイルしたなめこを流水で洗浄、(6)網の上に広げて室温で4時間以上風乾。
【0083】
[評価]
ボイル、風乾後のなめこについて、ぬめり感を下記基準で評価した。
(ぬめり感の評価基準)
○:ボイル前と同等のぬめり感があり、ぬめり感が強い。
×:ボイル前より明らかにぬめり感が弱い。
【0084】
実施例13及び比較例4について、なめこのぬめり感の評価を表5に示した。
【0085】
【表5】
【0086】
液を調製せず、なめこをそのままボイル槽に投入した比較例4は、ボイル前に比べてなめこのぬめり感が明らかに弱くなり、なめこ特有のツヤも失われていた。一方、液7を用いた実施例13は、ボイル前のなめこのぬめり感を保持しており、なめこ特有のツヤがあった。
【0087】
<バナメイエビ>
[実施例14]
(食品改質剤液の調製)
可逆熱ゲル化剤としてメチルセルロース(メトローズMCE-4000:信越化学工業株式会社製)0.96部を、増粘剤として馬鈴薯澱粉をドラムドライヤーで乾燥し粉砕して42meshを通過したアルファ化澱粉1.12部及び馬鈴薯澱粉を酵素処理により分解した澱粉分解物(分散剤)0.96部を、結晶セルロース製剤としてセオラスRC-591S(旭化成株式会社製、結晶セルロースを89%含む)あるいはセオラスCL-611S(旭化成株式会社製、結晶セルロースを85%含む)0.96部を混合・造粒し、食品改質剤とした。15℃の冷水を、食品改質剤と合わせて100部になるように加え、すぐに撹拌混合した。得られた食品改質剤液を、液14とした。液14の粘度を、15℃においてBM型回転粘度計(VISCOMETER MODEL BMII;東機産業株式会社製)を用いて30rpmの回転速度で10秒後に測定した。また、pHメーター(LAQUA F-71S;株式会社堀場製作所製)を用いて、液14のpHを測定した。液14の組成について表6に示した。
【表6】
【0088】
(浸漬)
生のバナメイエビの殻と尾を取り、重量を測定した。重量測定後のバナメイエビを液14に1分間浸漬した。
【0089】
(ボイル槽への投入)
液14に浸漬したバナメイエビを、90±2℃に調整したボイル槽に投入した。2分間ボイルし、その後バナメイエビの周りを被覆している液1を流水で洗浄した。バナメイエビの形が崩れない程度に網で水を切り、重量を測定した。[ボイル前の重量測定、浸漬、ボイル槽への投入、流水洗浄、水切り、ボイル・洗浄後の重量測定]の一連の操作を独立に少なくとも3回行った。液14を用いて一連の操作を行ったものを、実施例14とした。
【0090】
[比較例5]
食品改質剤液を用いずにバナメイエビをそのままボイル槽に投入した以外は実施例14と同様の方法で一連の操作を行ったものを、比較例5とした。なお、ボイル後のバナメイエビには液が付着していないが、流水で洗浄する工程は実施例14と同様に行った。
【0091】
[評価]
歩留まり向上(比較例5との歩留まり率の差)を評価した。歩留まり率は、重量測定器としてEK-410i(株式会社エー・アンド・デイ製)を使用し、ボイル前の平均重量とボイル・洗浄後の平均重量との重量変化率として定義した。
【0092】
表面質感を下記基準で評価した。
◎:比較例5と比較して、表面の艶(みずみずしさ)が明らかに増大している。
○:比較例5と比較して、表面の艶(みずみずしさ)が同程度である。
×:比較例5と比較して、表面の艶(みずみずしさ)が明らかに減少している。
【0093】
食感を下記基準で評価した。
◎:比較例5と比較して、弾力(噛み応え)が明らかに増大している。
○:比較例5と比較して、弾力(噛み応え)が同程度である。
×:比較例5と比較して、弾力(噛み応え)が明らかに減少している。
【0094】
味の濃さを下記基準で評価した。
◎:比較例5と比較して、味の濃さが明らかに増大している。
○:比較例5と比較して、味の濃さが同程度である。
×:比較例5と比較して、味の濃さが明らかに減少している。
【0095】
実施例14及び比較例5について、液の粘度、pH、バナメイエビの歩留まり率、並びに、歩留まり向上、表面質感、食感、及び味の評価を表7に示した。
【0096】
【表7】
【0097】
本開示の改質剤を用いた実施例14は、ブランクである比較例5と比較して、歩留まりが向上し、表面質感、食感、及び味の評価においても良好であった。
【0098】
実施例14及び比較例5の方法で得られたボイル後のバナメイエビそれぞれ20匹についてアミノ酸分析を行い、ボイル後のバナメイエビ一匹あたりのアミノ酸量を求めた。結果を下記表8に示した。
【表8】
【0099】
表8から明らかなように、本開示の改質剤を用いた実施例14はブランクサンプルである比較例5よりもアミノ酸量が約18%多く、アミノ酸の流出を抑えることができることがわかった。
【0100】
<その他食材>
[実施例15]
(浸漬)
生の豚ひれ肉を約3cm角×1cmにカットし、重量を測定した。重量測定後の豚ひれ肉を液14に1分間浸漬した。
【0101】
(ボイル槽への投入)
液14に浸漬した豚ひれ肉を、90±2℃に調整したボイル槽に投入した。4分間ボイルし、その後豚ひれ肉の周りを被覆している液1を流水で洗浄した。豚ひれ肉の形が崩れない程度に網で水を切り、重量を測定した。[ボイル前の重量測定、浸漬、ボイル槽への投入、流水洗浄、水切り、ボイル・洗浄後の重量測定]の一連の操作を独立に少なくとも3回行った。液14を用いて一連の操作を行ったものを、実施例15とした。
【0102】
[ブランクサンプル]
食品改質剤液を用いない以外は実施例15と同様の方法で、豚ひれ肉をそのままボイル槽に投入し、一連の操作を行ったものを、ブランクサンプルとした。なお、ボイル後の豚ひれ肉には液が付着していないが、流水で洗浄する工程は実施例15と同様に行った。
【0103】
[評価]
歩留まり向上(ブランクサンプルとの歩留まり率の差)を評価した。歩留まり率は、重量測定器としてEK-410i(株式会社エー・アンド・デイ製)を使用し、ボイル前の平均重量とボイル・洗浄後の平均重量との重量変化率として定義した。また、実施例15で得られたサンプルと、ブランクサンプルとで、外観、味の濃さや、食感等についても比較評価した。結果を表9にまとめた。
【0104】
[実施例16~25]
豚ひれ肉に代えて、豚ロース肉、豚もも肉、豚レバー、牛ロース肉、鶏むね肉、鶏もも肉、いか足、赤貝開き、ほたて貝柱、又は本マグロ中トロを用い、茹で時間を食材に合わせて変更した以外は、実施例15と同様に一連の操作を行ったものをそれぞれ実施例16~25とした。実施例16~25について実施例15と同様の評価を行ったものを表9に示す。
【0105】
[実施例26]
豚ひれ肉に代えて冷凍タコを用い、茹で時間を2分とし、液14に代えて液7を用いた以外は、実施例15と同様に一連の操作を行ったものを実施例26とした。実施例26について実施例15と同様の評価を行ったものを表9に示す。各実施例の全体的な風味の傾向として、ブランクと比較した歩留り率は向上しているが、味が薄くなる又は水っぽくなるということはなく、食感・味の濃さは同等であり、良好な味わいを示した。



【表9】
【0106】
<非増粘性澱粉の使用>
[実施例27]
(食品改質剤液の調製)
実施例1と同様の方法で、さらに非増粘性澱粉を追加して試験を行った。非増粘性澱粉として15℃における2重量%水溶液の粘度が2.0mPa・sのアルファ化リン酸架橋澱粉を用いた。メチルセルロース、アルファ化澱粉、澱粉分解物、非増粘性澱粉を用いて液を調製した、実施例27の組成について、表10に示した。なお、実施例27に対応する、食品改質剤と冷水の混合液を、液27とした。
【表10】
【0107】
液1に代えて液27を用いたほか、ボイル時間を30秒から2分に変更した以外は実施例1と同様の方法で甘えびに試験を行ったものを、実施例27とした。
【0108】
[比較例6]
食品改質剤液を用いずに甘えびをそのままボイル槽に投入した以外は実施例27と同様の方法で一連の操作を行ったものを、比較例6とした。なお、ボイル後の甘えびには液が付着していないが、流水で洗浄する工程は実施例27と同様に行った。
【0109】
[評価]
歩留まり向上とボイル・洗浄後の甘えびの外観を下記基準で評価した。歩留まり率は、重量測定器としてEK-410i(株式会社エー・アンド・デイ製)を使用し、ボイル前の平均重量とボイル・洗浄後の平均重量との重量変化率として定義した。
(歩留まり向上の評価基準)
◎:比較例6を基準とした際の歩留まり率の向上が6ポイント以上である。
○:比較例6を基準とした際の歩留まり率の向上が3ポイント以上6ポイント未満である。
△:比較例6を基準とした際の歩留まり率の向上が0ポイント以上3ポイント未満である。
×:比較例6を基準とした際の歩留まり率の向上が0ポイント未満である。
(外観の評価基準)
◎:身の剥がれが全くなく(全長の0%)、非常に良好。
○:わずかに身の剥がれが見られるが(全長の5%未満)、良好。
×:身の剥がれが目立ち(全長の5%以上)、不良。
【0110】
[評価]
実施例27及び比較例6について、液の粘度、pH、甘えびの歩留まり率、歩留まり向上の評価、外観の評価を表11に示した。
【0111】
【表11】
【0112】
液を調製せず、甘えびをそのままボイル槽に投入した比較例6は、甘えびの身が大きく剥がれてしまい、不良という結果になった。一方、メチルセルロース、アルファ化澱粉、澱粉分解物、非増粘性澱粉を含む液を用いた実施例27は、比較例6より歩留まり率が向上し、甘えびの外観も良好であった。