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特許7480951強誘電体薄膜の製造方法および強誘電体薄膜製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】強誘電体薄膜の製造方法および強誘電体薄膜製造装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/316 20060101AFI20240501BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20240501BHJP
   C23C 16/40 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
H01L21/316 X
H01L21/31 B
H01L21/316 G
C23C16/40
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019185711
(22)【出願日】2019-10-09
(65)【公開番号】P2021061360
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-09-22
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 発行者名:公益財団法人応用物理学会、刊行物名:2019年第66回応用物理学会春季講演会 講演予稿集,第04-237頁、発行年月日:平成31(2019)年2月25日 集会名:公益財団法人応用物理学会 2019年第66回応用物理学会春季学術講演会、開催日:平成31(2019)年3月11日、開催場所:東京工業大学 大岡山キャンパス 発行者名:ISAF,EMF,ICE,IWPM and PFM、刊行物名:2019 Joint Conference of the IEEE ISAF, EMF,ICE, IWPM and PFM 予稿集,第266頁、発行年月日:令和1(2019)年7月14日 集会名:2019 Joint Conference of the IEEE ISAF, EMF, ICE, IWPM and PFM、開催日:令和1(2019)年7月16日、開催場所:Swiss Tech Convention Center
(73)【特許権者】
【識別番号】504255685
【氏名又は名称】国立大学法人京都工芸繊維大学
(73)【特許権者】
【識別番号】513067727
【氏名又は名称】高知県公立大学法人
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100174388
【弁理士】
【氏名又は名称】龍竹 史朗
(72)【発明者】
【氏名】西中 浩之
(72)【発明者】
【氏名】吉本 昌広
(72)【発明者】
【氏名】野田 実
(72)【発明者】
【氏名】田原 大祐
(72)【発明者】
【氏名】川原村 敏幸
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 翔太
(72)【発明者】
【氏名】劉 麗
【審査官】山口 祐一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-057727(JP,A)
【文献】国際公開第2011/151889(WO,A1)
【文献】特開2008-182183(JP,A)
【文献】特開2018-195767(JP,A)
【文献】特開2005-232574(JP,A)
【文献】特表2015-531996(JP,A)
【文献】米国特許第09793397(US,B1)
【文献】国際公開第2013/161735(WO,A1)
【文献】Daisuke TAHARA et al.,“Mist chemical vapor deposition study of 20 and 100 nm thick undoped ferroelectric hafnium oxide films on n+-Si(100) substrates”,Japanese Journal of Applied Physics,p.SLLB10,2019年08月27日,Vol. 58,No. SL,DOI: 10.7567/1347-4065/ab38d8
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/316
H01L 21/31
C23C 16/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を準備する工程と、
強誘電体薄膜を形成する酸化物の前駆体原料を含む液滴状の材料を利用して、前記基板上に、直方晶構造の酸化ハフニウム結晶を含む強誘電体薄膜を形成する工程と、を含み、
前記前駆体原料は、ハフニウム(Hf)のハロゲン化物、ハフニウム(Hf)を含む硫酸塩、ハフニウム(Hf)を含む硝酸塩の中から選択される、
強誘電体薄膜の製造方法。
【請求項2】
前記強誘電体薄膜を形成する工程では、ミストCVD法により、前記前駆体原料を前記基板の表面へ供給する、
請求項1に記載の強誘電体薄膜の製造方法。
【請求項3】
前記強誘電体薄膜を形成する工程では、前記前駆体原料をエタノール、イソプロパノール、アセトンから選択される有機溶媒、水または前記有機溶媒と水との混合物に溶解させてなる原料溶液を霧状にして前記基板の表面へ供給する、
請求項1または2に記載の強誘電体薄膜の製造方法。
【請求項4】
強誘電体薄膜の前駆体原料を含む液滴状の材料を利用して、基板上に、直方晶構造の酸化ハフニウム結晶を含む強誘電体薄膜を形成する強誘電体薄膜製造装置であって
前記前駆体原料は、ハフニウム(Hf)のハロゲン化物、ハフニウム(Hf)を含む硫酸塩、ハフニウム(Hf)を含む硝酸塩の中から選択される、
強誘電体薄膜製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強誘電体薄膜の製造方法および強誘電体薄膜製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板上にALD(Atomic layer Deposition)法を利用して酸素(O)とハフニウム(Hf)およびジルコニウム(Zr)のうちの少なくとも一方を含むアモルファス層を形成した後、アモルファス層が結晶化する温度以上の温度で熱処理を行う強誘電体メモリセルを有する集積回路の製造方法が提案されている(例えば特許文献1参照)。ここで、アモルファス層を結晶化することにより生成される酸化ハフニウム(HfOx)膜は、その厚さを薄くしても強誘電性を示す逆サイズ効果を有するため、特許文献1に記載されているように、酸化ハフニウム膜を強誘電体メモリ等の強誘電体膜として使用することで強誘電体メモリ等の微細化を実現できる。ところで、酸化ハフニウム膜に強誘電性を発現させるためには、酸化ハフニウム膜を斜方晶(直方晶)構造の酸化ハフニウム結晶を含むものとする必要がある。しかしながら、酸化ハフニウムの直方晶構造は、準安定的であるため、例えばアモルファス層を、RTA(Rapid Termal Annealing)法のような熱処理方法で熱処理を行うと、単斜晶構造の酸化ハフニウム膜が形成されてしまう。
【0003】
これに対して、半導体基板上に、HfおよびZrの少なくとも一方とOとを主成分とする金属酸化膜を堆積する工程と、金属酸化膜上に導体膜を堆積する工程と、金属酸化膜にマイクロ波加熱処理を施す工程と、を含む半導体装置の製造方法が提案されている(例えば特許文献2参照)。このように、マイクロ波を用いて金属酸化膜を加熱することにより、直方晶構造の酸化ハフニウムを含む金属酸化膜を形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2009/0261395号明細書
【文献】特開2018-195767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2に記載された半導体装置の製造方法では、金属酸化膜をマイクロ波で加熱する工程が必要となるため、その分、製造効率が制限されてしまう。
【0006】
本発明は、上記事由に鑑みてなされたものであり、製造効率が高い強誘電体薄膜の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る強誘電体薄膜の製造方法は、
基板を準備する工程と、
強誘電体薄膜を形成する酸化物の前駆体原料を含む液滴状の材料を利用して、前記基板上に、直方晶構造の酸化ハフニウム結晶を含む強誘電体薄膜を形成する工程と、を含み、
前記前駆体原料は、ハフニウム(Hf)のハロゲン化物、ハフニウム(Hf)を含む硫酸塩、ハフニウム(Hf)を含む硝酸塩の中から選択される
【0008】
他の観点から見た本発明に係る強誘電体薄膜製造装置は、
強誘電体薄膜の前駆体原料を含む液滴状の材料を利用して、基板上に、直方晶構造の酸化ハフニウム結晶を含む強誘電体薄膜を形成する強誘電体薄膜製造装置であって、
前記前駆体原料は、ハフニウム(Hf)のハロゲン化物、ハフニウム(Hf)を含む硫酸塩、ハフニウム(Hf)を含む硝酸塩の中から選択される
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、基板上に酸化ハフニウムを含む薄膜を形成した後に薄膜を熱処理することなく、基板上に、直方晶構造の酸化ハフニウム結晶を含む強誘電体薄膜を形成する。従って、直方晶構造の酸化ハフニウム結晶を含む強誘電体薄膜を形成する際、熱処理工程を省略することができるので、その分、強誘電体薄膜の製造効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係るミストCVD装置の概略構成図である。
図2】実施例1、2および比較例に係る試料の構造を示す図である。
図3】実施例1、2および比較例に係る試料についてのXRDの結果を示す図である。
図4】(A)は実施例1に係る薄膜表面のAFM画像を示す図であり、(B)は実施例2に係る薄膜表面のAFM画像を示す図である。
図5】比較例に係る薄膜表面のAFM画像を示す図である。
図6】(A)は実施例1に係るX線反射率のプロファイルを示す図であり、(B)は比較例に係るX線反射率のプロファイルを示す図である。
図7】(A)は実施例1に係る薄膜の誘電分極の印加電圧依存性を示す図であり、(B)は実施例2に係る薄膜の誘電分極の印加電圧依存性を示す図である。
図8】比較例に係る薄膜の誘電分極の印加電圧依存性を示す図である。
図9】(A)は実施例1に係る薄膜100に±3MV/cmの矩形パルス状の電界を交互に複数回繰り返し印加した後における誘電分極の印加電圧依存性を示す図であり、(B)は誘電分極の前述の繰り返し回数依存性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に係る強誘電体薄膜の製造方法について図面を参照しながら説明する。本実施形態に係る強誘電体薄膜の製造方法では、基板上に強誘電体薄膜を形成する。ここで、基板としては、例えばシリコン(Si)基板を採用することができる。基板がSi基板の場合、少なくとも強誘電体薄膜が形成される側の表面が平坦であれば表面の面方位は特に限定されない。また、基板としては、Si基板上に窒化チタン(TiN)膜、白金(Pt)膜が形成された基板であってもよい。或いは、安定化ジルコニア(YSZ)基板上にITO膜が形成された基板であってもよい。
【0013】
強誘電体薄膜は、直方晶構造の酸化ハフニウム(HfO)結晶を含む。なお、強誘電体膜としては、Zr、Si、Al、Ga、N、Y、Gd、Sc、Geの中から選択される少なくとも1種類を添加したHfO結晶であってもよい。また、この強誘電体薄膜は、厚さが100nm以下である。
【0014】
本実施形態に係る薄膜の製造方法では、ミストCVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いて、強誘電体薄膜の前駆体原料を含む液滴状(霧状)の材料を利用して、Si基板上に直方晶構造のHfO結晶を含む薄膜を成膜する。ここでは、例えば図1に示すようなミストCVD装置が使用される。このミストCVD装置は、強誘電体薄膜の前駆体原料を含む霧状の材料を蒸気(気相)にしてSi基板の表面へ供給することにより、Si基板上に、直方晶構造の酸化ハフニウム結晶を含む強誘電体薄膜を形成する強誘電体薄膜製造装置に相当する。また、このミストCVD装置は、ガス供給源21、24と流量調整機構22、25と流量計23、26と原料供給容器31と貯水容器33と超音波振動子35と反応容器41とを備える。反応容器41は、粒径が3μm程度のミスト状の原料を一時的に貯留する貯留室S12が設けられた貯留部412と、貯留室S12に連通し内側に基板Wが配置される成膜室S11が設けられた成膜部411と、を有する。また、成膜部411は、成膜室S11内に配置された基板Wを加熱するためのヒータ42を有する。ここで、成膜室S11は、基板Wが載置される載置部411aに基板Wが載置された状態で基板Wの表面と載置部411aに対向する内壁411bとの間の距離が1mm程度となるように設定されている。これにより、強誘電体薄膜の成膜中、基板Wの成膜面側に原料の層流を形成させることができる。
【0015】
キャリアガスを供給するガス供給源21と原料供給容器31とは第1ガス供給管P1を介して接続されている。原料供給容器31と反応容器41とは第2ガス供給管P2を介して接続されている。また、原料希釈用ガスを供給するガス供給源24に接続された第3ガス供給管P3が、第2ガス供給管P2に接続されている。更に、反応容器41には、反応容器41内の余分なガスを排出するための排気管P4が接続されている。
【0016】
原料供給容器31には、強誘電体薄膜を形成する酸化物の前駆体原料を溶媒に溶解させてなる原料溶液32が貯留されている。強誘電体薄膜を形成する酸化物の前駆体原料は、ハフニウム(Hf)と酸素(O)を含む少なくとも1種類の有機化合物とを含む化合物、ハフニウム(Hf)のハロゲン化物、ハフニウム(Hf)を含む硫酸塩、ハフニウム(Hf)を含む硝酸塩の中から選択される。また、少なくとも1種類の有機化合物は、アルコール、アルデヒド、ケトン、ジケトン、カルボニル化合物、カルボン酸、エステルの中から選択される。溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトンから選択される有機溶媒、水またはこれらの混合物である。特に、有機溶媒としてメタノールを採用することが好ましい。この場合、強誘電体薄膜を比較的強い酸化環境で基板上に成膜することができるので、通常、準安定相である強誘電体薄膜中の直方晶構造を有するHfO結晶が安定相になり易くなるという利点がある。
【0017】
ガス供給源21は、霧状の原料溶液を、反応容器41内に送り込むための空気、窒素または酸素等のキャリアガスを原料供給容器31へ供給する。ガス供給源24は、霧状の原料溶液を含むガスを希釈するための空気、窒素または酸素等の希釈用ガスを第2ガス供給管P2へ供給する。貯水容器33には、超音波整合用の水34が貯められており、原料供給容器31は、その一部が貯水容器33に貯められた水34に浸かった状態で貯水容器33の内側に配置されている。貯水容器33には、超音波振動子35が固定されている。超音波振動子35で発生した超音波は、貯水容器33に貯められた整合用の水34を介して原料供給容器31に貯められた原料溶液32に伝達する。
【0018】
次に、ミストCVD装置の動作について説明する。まず、超音波振動子35が振動することにより、整合用の水34を介して原料溶液32に振動エネルギが伝達し、その振動エネルギにより原料溶液32が霧状(ミスト)になる。そして、霧状になった原料溶液が、ガス供給源21から原料供給容器31内に供給されるキャリアガスにより、第2ガス供給管P2を通じて反応容器41内に送り込まれる(図1中の矢印AR1参照)。このとき、流量計23を確認しながら第1ガス供給管P1を流れるキャリアガスの流量を調節することにより、反応容器41に送り込む原料溶液の量を調節する。また、流量計26を確認しながら第3ガス供給管P3を流れる希釈用ガスの流量を調節することにより、反応容器41に送り込む原料溶液を含むガスの濃度を調節する。霧状の原料溶液は、反応容器41内に送り込まれた段階において蒸気(気相)となっている。そして、反応容器41内に送り込まれた原料は、反応容器41の成膜室S11内に配置された基板Wの表面に供給される(図1中の矢印AR2参照)。基板Wの表面に供給された原料が、ヒータ42により加熱され、その原料中の金属化合物と水とが化学反応し、基板Wの表面に金属酸化物が成長する。
【0019】
基板上に強誘電体薄膜を成膜する工程では、原料溶液として、ハフニウムアセチルアセトナート(Hf(C)を含む前駆体原料を溶媒に溶解させたものを使用する。また、溶媒としては、メタノール(CHOH)を使用する。基板としては、成膜面に(100)面が露出したSi基板を使用する。基板は、300℃以上400℃以下の温度範囲内の温度に加熱される。この工程では、直方晶構造のHfO結晶を含む強誘電体薄膜が形成される。
【0020】
以上説明したように、本実施形態に係る強誘電体薄膜の製造方法では、基板上にHfO結晶を含む薄膜を形成した後に薄膜を熱処理することなく、基板上に直方晶構造のHfO結晶を含む強誘電体薄膜を形成する。従って、強誘電体薄膜を形成する際、熱処理工程を省略することができるので、その分、強誘電体薄膜の製造効率を向上させることができる。
【0021】
また、本実施の形態に係る強誘電体薄膜の製造方法によれば、厚さが100nm以下であり且つ直方晶構造の酸化ハフニウム(HfO)結晶を含む強誘電体薄膜を成膜することができる。従って、強誘電体薄膜を薄くできる分、強誘電体薄膜を用いた半導体装置の薄型化または小型化を図ることができる。
【0022】
また、本実施形態に係る強誘電体薄膜の製造方法で採用するミストCVD法は、非真空プロセスからなる手法であるので、真空雰囲気を実現するための構成が不要であるため装置の簡素化を図ることができる。
【0023】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は前述の実施の形態の構成に限定されるものではない。例えば、ミストCVD法の代わりに、スプレーノズルを使用して、基板の表面に液滴状の前駆体原料を含む材料を堆積させる方法を採用してもよい。この場合、前駆体原料を含む材料の粒子サイズは、ミストCVD法を採用した場合の粒子サイズに比べて大きくなる。
【実施例
【0024】
本発明について、実施例および比較例に基づいて説明する。実施例1、2および比較例に係る試料は、いずれも図2に示すような構造を有する。実施例1、2に係る試料は、基板Wと、基板W上に形成された薄膜100と、薄膜100上に形成された一対の電極200と、を備えるものである。実施例1、2および比較例に係る試料に用いる基板としては、N型不純物がドーピングされ比抵抗率が1.7×10-3Ω・cmであり、表面に(100)面が露出したSi基板を採用した。
【0025】
実施例1、2に係る薄膜100は、実施の形態で説明した製造方法により形成した。ここで、前述のミストCVD装置の超音波振動子として2.4MHzの周波数で振動する超音波振動子(本多電子社製、HM-2412)を採用した。原料溶液は、Hf(CのCHOH溶液を使用した。ここで、原料溶液中のHf(Cの濃度は、0.02Mとした。キャリアガスおよび希釈用ガスとして窒素を採用した。また、成膜中のキャリアガスの流量は、2.5L/minとし、希釈用ガスの流量は、4.5L/minとした。成膜中において、基板Wは、成膜室S11に配置してからヒータ42により400℃に加熱された状態にした。実施例1および比較例に係る強誘電体薄膜の成膜時間は、2minに設定し、実施例2に係る強誘電体薄膜の成膜時間は、10minに設定した。これにより、実施例1に係る試料の薄膜100の厚さTHを20nmとし、実施例2に係る薄膜100の厚さTHを100nmとした。また、比較例に係る試料の作製では、実施例1、2の強誘電体薄膜と同様に、実施の形態で説明した製造方法により基板W上に強誘電体薄膜を成膜した後、基板および強誘電体薄膜を800℃に加熱した状態で30min間維持した。比較例に係る薄膜100の厚さTHは、14nmとした。実施例1、2および比較例に係る一対の電極200は、全て白金(Pt)により形成し、電極200間の距離INは、200μmとした。また、電極200は、スパッタリング法により形成した。
【0026】
また、実施例1、2および比較例に係る試料それぞれについて、薄膜100の結晶構造、薄膜100の表面のモフォロジおよびラフネス、膜密度、誘電分極の印加電圧依存性を評価した。実施例1、2および比較例に係る薄膜100の結晶構造は、X線回折(XRD)測定装置(BRUKER社製、D8 DISCOVER)を用いて測定される回折ピークの位置により確認した。実施例1、2および比較例に係る薄膜100の表面のモフォロジおよびラフネスは、AFM(atomic force microscopy)(SII Nano Technology社製、Nanonavi/E-sweep)を用いて観察した。
【0027】
実施例1、2および比較例に係る薄膜100の誘電分極の印加電圧依存性は、強誘電体特性評価テスタ(東洋テクニカ社製、FCE-3)を用いて室温(25℃)下で、一対の電極200間に周波数1kHzの交流電圧を印加したときの挙動を観察することにより行った。実施例1、2および比較例に係る薄膜100の膜密度は、X線回折(XRD)測定装置(BRUKER社製、D8 DISCOVER)を用いて得られる回折強度プロファイルに基づいて、各回折角度におけるX線反射率を算出することにより評価した。
【0028】
以下、実施例1、2および比較例に係る薄膜100に対して行った評価の結果について個別に詳述する。XRDによると、図3に示すように、実施例1、2に係る薄膜100では、20度から40度の間の直方晶構造に特徴的なピーク群が存在する付近にブロードなピークが観察された。一方、比較例に係る薄膜100では、単斜晶構造に特徴的なピークが観察された。
【0029】
また、図4(A)および(B)並びに図5に示すAFM画像を比較すると、実施例1、2に係る薄膜100に比べて比較例に係る薄膜100では、結晶粒径が拡大しており且つ粒界が減少していることが観測できた。このことから、薄膜100に熱処理を施すことにより、薄膜100の結晶化が促進されることが判る。また、実施例1に係る薄膜100のRMSは、0.2nmであり、実施例2に係る薄膜100のRMSは、0.3nmであった。なお、比較例に係る薄膜100表面のRMSは、0.5nmであり、実施例1、2および比較例に係る薄膜100表面のラフネスは同等であった。
【0030】
また、図6(A)および(B)に示すように、X線強度の実測値から算出されたX線反射率のプロファイルに、膜密度をパラメータとするX線反射率プロファイルの計算式から得られた理論値をフィッティングすることにより、実施例1および比較例に係る薄膜100の膜密度を算出した。比較例に係る薄膜100の膜密度が9.7g/cmであるのに対して、実施例1に係る薄膜100の膜密度は、6.8乃至7.0g/cmであった。このことから、実施の形態で説明した製造方法により作製した薄膜100に熱処理を施すことにより薄膜100が緻密になることが判った。
【0031】
図7(A)および(B)に示すように、実施例1、2に係る薄膜100について、強誘電体に特有のヒステリシスを示す誘電分極の印加電圧依存性が得られた。一方、図8に示すように、比較例に係る薄膜100では、線形な印加電圧依存性が得られた。このことから、比較例に係る薄膜100では、強誘電体特性が発現しないのに対して、実施例1、2に係る薄膜100では、強誘電体特性が発現することが判った。即ち、薄膜100の膜密度が9.7g/cm以上になると、強誘電体特性が損なわれることが判った。
【0032】
また、図9(A)および(B)に示すように、実施例1に係る薄膜100に±3MV/cmの矩形パルス状の電界を繰り返し印加したときの誘電分極の印加電圧依存性は、10回繰り返し印加後と、1×10回繰り返し印加後と、1×10回繰り返し印加後と、1×10回繰り返し印加後とで大きな差異は観測されなかった。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明に係る薄膜は、FeRAM(Ferroelectric Random-Access Memory)、FeFETs(Ferroelectric Field Effect Transistors)等に好適である。
【符号の説明】
【0034】
21、24:ガス供給源、22、25:流量調整機構、23、26:流量計、31:原料供給容器、33:貯水容器、35:超音波振動子、41:反応容器、42:ヒータ、100:薄膜、200:電極、411:成膜部、412:貯留部、P1:第1ガス供給管、P2:第2ガス供給管、P3:第3ガス供給管、P4:排気管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9