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特許7480962石油プロセスにおける熱交換器の汚れ防止方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】石油プロセスにおける熱交換器の汚れ防止方法
(51)【国際特許分類】
   C10G 75/04 20060101AFI20240501BHJP
【FI】
C10G75/04
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021573684
(86)(22)【出願日】2020-01-29
(86)【国際出願番号】 JP2020003148
(87)【国際公開番号】W WO2021152718
(87)【国際公開日】2021-08-05
【審査請求日】2023-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000154727
【氏名又は名称】株式会社片山化学工業研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】505112048
【氏名又は名称】ナルコジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】加藤 慶
【審査官】森 健一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/207708(WO,A1)
【文献】特開2010-163539(JP,A)
【文献】特開平01-247488(JP,A)
【文献】特開昭63-221185(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 75/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンスチール製の貯蔵タンク及び/又は薬注設備を用いる石油プロセスにおける熱交換器の汚れ防止方法であって、
前記熱交換器を通過するプロセス流体に、亜リン酸エステル化合物と分散剤とを添加することを含み、
前記分散剤が、コハク酸イミド化合物である、汚れ防止方法。
【請求項2】
前記コハク酸イミド化合物が、アルケニル基及びアルキル基の少なくとも一方を有するコハク酸イミドである、請求項1記載の汚れ防止方法。
【請求項3】
熱交換器に供給されるプロセス流体における前記亜リン酸エステル化合物と前記コハク酸イミド化合物との含有量(ppm)の比が、5:1~1:5となるように、前記亜リン酸エステル化合物及び前記コハク酸イミド化合物を前記プロセス流体に添加することを含む、請求項1又は2に記載の汚れ防止方法。
【請求項4】
熱交換器に供給されるプロセス流体における亜リン酸エステル化合物の濃度が1~100ppmとなるように、前記亜リン酸エステル化合物を前記プロセス流体に添加することを含む、請求項1から3のいずれかに記載の汚れ防止方法。
【請求項5】
熱交換器に供給されるプロセス流体におけるコハク酸イミド化合物の濃度が1~100ppmとなるように、前記分散剤を前記プロセス流体に添加することを含む、請求項1から4のいずれかに記載の汚れ防止方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の汚れ防止方法に使用するための汚れ防止剤であって、亜リン酸エステル化合物及び分散剤を含有し、
前記分散剤が、コハク酸イミド化合物である、汚れ防止剤。
【請求項7】
カーボンスチール製の貯蔵タンク及び/又は薬注設備を用いる石油プロセスであって、コハク酸イミド化合物である分散剤が添加されたプロセス流体が通過する石油プロセスの熱交換器の汚れを防止するための、亜リン酸エステル化合物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、石油プロセスにおける熱交換器の汚れ防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原油を精製するための石油精製プラントの蒸留工程では、熱交換器及び加熱炉において原油が加熱された後、蒸留塔に送られ蒸留操作が行われる。熱交換器内や加熱炉内では原油が熱履歴を受け、多量の汚れが付着する。汚れ成分の一形態として、アスファルテンやスラッジ等の有機系高分子成分が混合された形態がある。汚れの付着は、熱交換器や加熱炉の熱交換率の低下を引き起こし、出口温度を維持するための燃料使用量を増大させる結果となっている。
【0003】
特許文献1は、デソルター前のプロセス流体に添加する熱交換器及び加熱炉の汚れ防止剤及び汚れ防止方法を開示する。特許文献2は、リン酸エステル系防食剤と分散剤とを用いて石油プロセスにおける予熱交のアスファルテン由来の汚れを防止する方法を開示する。特許文献3は、亜リン酸エステル系防食剤と分散剤とを用いて石油プロセスにおける予熱交のアスファルテン由来の汚れを防止する方法を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-163539号公報
【文献】WO2015/022979
【文献】WO2018/207708
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献3では、汚れ防止剤としてリン酸エステルを用いた場合に、リン酸エステルによる貯蔵タンク及び薬注設備の腐食の問題を見出し、その問題を解決するために、リン酸エステルに代えて亜リン酸エステルを使用することを提案している。
一方、本発明者は、特許文献3の方法では、一般的に多用されているカーボンスチール(SPCC)製の貯蔵タンク及び薬注設備では、汚れ防止剤によるそれらの腐食を抑制できない場合があり、特に、貯蔵タンク及び薬注設備が高温下に曝されたり、貯蔵タンク及び薬注設備中の汚れ防止剤の温度が高温になったりする場合に、貯蔵タンク及び薬注設備が汚れ防止剤の腐食に耐えることができず、薬注設備等の材質をステンレス等といった耐食材料に変更しなければならないという問題を見出した。
【0006】
本開示は、一態様において、石油プロセスにおける熱交換器の汚れを防止するにあたり、汚れ防止剤による腐食を抑制可能な新たな方法及び汚れ防止剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、一態様において、石油プロセスにおける熱交換器の汚れ防止方法であって、前記熱交換器を通過するプロセス流体に、亜リン酸エステル化合物と分散剤とを添加することを含み、前記分散剤が、コハク酸イミド化合物である、汚れ防止方法に関する。
【0008】
本開示は、その他の態様において、本開示の汚れ防止方法に使用するための汚れ防止剤であって、亜リン酸エステル化合物及び分散剤を含有し、前記分散剤が、コハク酸イミド化合物である、汚れ防止剤に関する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、汚れ防止剤による薬注設備等の腐食を抑制しつつ、石油プロセスにおける熱交換器の汚れを防止可能な方法及び汚れ防止剤を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、常圧蒸留塔を備える石油精製処理装置の一例を示すブロック図である。
図2図2は、汚れ防止試験に用いた加熱管の断面図である。
図3図3は、汚れ防止試験において加熱管を加熱管保持器に挿入した状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示は、亜リン酸エステル化合物を、アルケニル基を有するコハク酸イミド等といったコハク酸イミド化合物である分散剤と併用することによって、貯蔵タンク及び薬注設備の材質がステンレスと比較して耐食性の低いカーボンスチール等であり、かつ貯蔵タンク及び薬注設備が100℃を超える高温下に曝された場合であっても、汚れ防止剤による腐食を抑制しつつ、石油プロセスの予熱交等の熱交換器の汚れを防止できるという知見に基づく。
本開示は、亜リン酸エステル化合物を、コハク酸イミド化合物である分散剤と併用することによって、原油のアスファルテン含有量に関わらず、アスファルテンやスラッジ等の有機系高分子成分由来の汚れを防止することができるという知見に基づく。
【0012】
本開示によれば、一又は複数の実施形態において、薬注設備の材質を変更することなく従来の一般的に使用されている薬注設備を使用しつつ、石油プロセスの熱交換器における汚れの防止を行うことができる。
本開示によれば、一又は複数の実施形態において、原油のアスファルテン含有量に関わらず、石油プロセスにおける予熱交等の熱交換器の汚れを防止でき、好ましくはアスファルテン由来の汚れのみならずアスファルテン以外の例えばスラッジ等の汚れも防止でき、好ましくは熱交換器の熱交換率の向上/維持が可能となり、燃料コストや清掃コストを抑制できる。
【0013】
本開示において「石油プロセス」とは、原油等の炭化水素を原料とし、これらから各種石油製品が製造されるまでの工程の全部又は一部をいう。石油プロセスは、一又は複数の実施形態において、原油等の炭化水素を加熱すること、加熱したこれらの炭化水素を常圧蒸留装置において沸点の差を利用してLPG、ナフサ等の揮発油及び軽油等といった各種成分に分離することを少なくとも含みうる。本開示における石油プロセスは、一又は複数の実施形態において、石油精製プロセスを含みうる。
【0014】
本開示の汚れ防止方法において「熱交換器」は、石油プロセスに使用される熱交換器である。熱交換器としては、限定されない一又は複数の実施形態において、予熱交(予備加熱熱交又は予熱交換器ともいう)、プレヒーター、及びリボイラー等が挙げられる。これらの熱交換器において、特に汚れが発生し蓄積しやすいのは、約200℃以上の高温部分である。本開示の汚れ防止方法は、一又は複数の実施形態において、処理時に約200℃付近、例えば、180℃以上、190℃以上、200℃以上、210℃以上、又は220℃以上となる高温部分がある熱交換器の汚れ防止方法である。本開示の汚れ防止方法は、一又は複数の実施形態において、約200℃以上になった部分での汚れ防止効果をより効果的に発揮する。
石油プロセスにおける熱交換器としては、一又は複数の実施形態において、石油精製プロセスの熱交換器、又は石油プロセスの予熱交等が挙げられる。
【0015】
本開示において「プロセス流体」とは、石油プロセスにおいて供される液体又は気体をいう。プロセス流体としては、一又は複数の実施形態において、石油プロセスにおいて処理される原油又はこれら由来の炭化水素等が挙げられる。プロセス流体としては、特に限定されない一又は複数の実施形態において、石油精製プロセスにおいて予熱交に供給される液体、又は予熱交内の液体等が挙げられる。
【0016】
本開示の汚れ防止方法において「汚れ」は、限定されない一又は複数の実施形態において、アスファルテン(asphaltene)やスラッジ等の有機系高分子成分を含むものをいい、又は、熱交換器内で付着及び/又は蓄積するアスファルテンやスラッジ等の有機系高分子成分を含む汚れをいう。したがって、本開示における熱交換器における汚れ防止は、一又は複数の実施形態において、熱交換器内におけるアスファルテンやスラッジ等の有機系高分子成分の付着及び/又は蓄積の抑制である。
【0017】
原油中のアスファルテンの含有量は、産油地及び産油時期等によって変動する。原油中のアスファルテンの含有量は、例えば、15重量%以下、10重量%以下、5重量%以下、3重量%以下、又は1重量%以下である。プロセス流体中のアスファルテンの含有量は、一又は複数の実施形態において、使用する原油及び精製工程によって変動する。本開示の汚れ防止方法は、亜リン酸エステル化合物を、コハク酸イミド化合物である分散剤と併用することから、プロセス流体のアスファルテンの含有量に関わらず、熱交換器の汚れを防止することができる。
【0018】
[汚れ防止方法]
本開示は、一態様において、石油プロセスにおける熱交換器の汚れ防止方法(本開示の汚れ防止方法)に関する。本開示の汚れ防止方法は、石油プロセスにおける熱交換器を通過するプロセス流体に、亜リン酸エステル化合物と分散剤とを添加することを含み、前記分散剤は、コハク酸イミド化合物である。
【0019】
[亜リン酸エステル化合物]
本開示の汚れ防止方法において使用される亜リン酸エステル化合物としては、一又は複数の実施形態において、石油プロセスにおいて使用される亜リン酸エステル化合物が挙げられる。
【0020】
亜リン酸エステル化合物としては、特に限定されない一又は複数の実施形態において、式(I)~(IV)で表される亜リン酸エステル化合物、式(II)の構造を2つ含むもの、又は式(II)の化合物の二量体(二量化物)等が挙げられる。
【化1】
【0021】
式(I)において、R1及びR2は1~30個の炭素原子を有する基である。R1及びR2は、互いに同一でも異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
【0022】
式(II)において、R3、R4及びR5は1~30個の炭素原子を有する基である。R3、R4及びR5は、互いに同一でも異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
【0023】
式(III)において、R6、R7、R8及びR9は1~30個の炭素原子を有する基であり、R10及びR11は1~30個の炭素原子を有する二価の置換基であり、X1は酸素原子、炭素原子又は1~5個の炭素原子を有する二価の置換基である。R6、R7、R8及びR9は、それぞれ互いに同一でも異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。R10及びR11は、それぞれ互いに同一でも異なっていてよい。
【0024】
式(IV)において、R12及びR13は1~30個の炭素原子を有する基であり、R14、R15、R16及びR17は1~30個の炭素原子を有する二価の置換基であり、X2は炭素原子である。R12及びR13は、それぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。R14、R15、R16及びR17は、それぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。
【0025】
1~30個の炭素原子を有する基としては、一又は複数の実施形態において、炭素数1以上30以下のアルキル基、炭素数1以上30以下のアルケニル基、炭素数6以上30以下のアリール基、炭素数7以上30以下のアルアルキル基、又は炭素数7以上30以下のアルキルアリール基が挙げられる。アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルアルキル基、及びアルキルアリール基は、一又は複数の実施形態において、置換基を有していてもよい。アルキル基は、一又は複数の実施形態において、直鎖アルキル基であってもよいし、分岐鎖アルキル基であってもよい。
1~30個の炭素原子を有する二価の置換基としては、一又は複数の実施形形態において、炭素数1以上30以下のアルキレン基等が挙げられる。アルキレン基は、一又は複数の実施形態において、置換基を有していてもよい。アルキレン基は、一又は複数の実施形態において、直鎖アルキレン基であってもよいし、分岐鎖アルキレン基であってもよい。
【0026】
式(I)で表される亜リン酸エステル化合物としては、一又は複数の実施形態において、ジエチルハイドロゲンホスファイト、ビス(2-エチルヘキシル)ハイドロゲンホスファイト、ビス(トリデシル)ハイドロゲンホスファイト、ジラウリルハイドロゲンホスファイト、及びジオレイルハイドロゲンホスファイト、及びジフェニルハイドロゲンホスファイト等が挙げられる。
【0027】
式(II)で表される亜リン酸エステル化合物としては、一又は複数の実施形態において、トリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリス(2-エチルヘキシル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、トリオレイルホスファイト、トリステアリルホスファイト、ジフェニルモノ(2-エチルヘキシル)ホスファイト、ジフェニルモノデシルホスファイト、ジフェニルモノ(トリデシル)ホスファイト、及びトリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト等が挙げられる。
【0028】
式(III)で表される亜リン酸エステル化合物としては、一又は複数の実施形態において、テトラフェニルジプロピレングリコールジホスファイト、及びテトラ(C1215アルキル)-4,4'-イソプロピリデンジフェニルジホスファイト等が挙げられる。
【0029】
式(IV)で表される亜リン酸エステル化合物としては、一又は複数の実施形態において、ビス(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイトとビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリコールジホスファイトとの混合物、ビス(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(デシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、及びジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、テトラフェニル(テトラトリデシル)ペンタエリスリトールテトラホスファイト、及び水添ビスフェノールA・ペンタエリスリトールホスファイトポリマー等が挙げられる。
【0030】
亜リン酸エステル化合物としては、一又は複数の実施形態において、石油プロセスにおける熱交換器のさらなる汚れ防止、及び/又は貯蔵タンクや薬注設備のさらなる腐食抑制の観点から、トリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリス(2-エチルヘキシル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、トリオレイルホスファイト、トリステアリルホスファイト、ジフェニルモノ(2-エチルヘキシル)ホスファイト、ジフェニルモノデシルホスファイト、ジフェニルモノ(トリデシル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、ジエチルハイドロゲンホスファイト、ビス(2-エチルヘキシル)ハイドロゲンホスファイト、ビス(トリデシル)ハイドロゲンホスファイト、ジラウリルハイドロゲンホスファイト、ジオレイルハイドロゲンホスファイト又はこれらの組み合わせが好ましい。同様の観点から、亜リン酸エステル化合物としては、ホスホン酸型亜リン酸エステル化合物が好ましく、ジエチルハイドロゲンホスファイト、ビス(2-エチルヘキシル)ハイドロゲンホスファイト、ビス(トリデシル)ハイドロゲンホスファイト、ジラウリルハイドロゲンホスファイト、ジオレイルハイドロゲンホスファイト又はこれらの組み合わせがより好ましい。
【0031】
亜リン酸エステル化合物は、一又は複数の実施形態において、一種類で使用しもよいし、複数種類を組み合わせて使用してもよい。
【0032】
熱交換器に供給されるプロセス流体における亜リン酸エステル化合物(複数種類の亜リン酸エステル化合物を使用する場合はその合計)の濃度としては、一又は複数の実施形態において、1~100ppm、2~80ppm、又は3~50ppmが挙げられる。本開示の汚れ防止方法は、一又は複数の実施形態において、熱交換器に供給されるプロセス流体における亜リン酸エステルの濃度が1~100ppm、2~80ppm、又は3~50ppmとなるように、プロセス流体に亜リン酸エステルを添加することを含む。
【0033】
[分散剤]
本開示の汚れ防止方法において使用されうる分散剤は、コハク酸イミド化合物であって、石油プロセス又は石油プロセスの熱交換器の汚れ防止の分散剤として使用されうるコハク酸イミド化合物である。
【0034】
コハク酸イミド化合物は、一又は複数の実施形態において、アルケニル基及びアルキル基の少なくとも一方を有する。
【0035】
アルケニル基を有するコハク酸イミド化合物としては、一又は複数の実施形態において、コハク酸イミド基の少なくとも一つの炭素原子が長鎖アルケニル基で置換されたコハク酸イミド化合物、コハク酸イミド基の少なくとも一つの炭素原子が長鎖アルケニル基で置換され、かつ該コハク酸イミド基の窒素原子がアルキレンイミン基又はアミノアルキレン基で置換されたコハク酸イミド化合物、2つの長鎖アルケニル基置換コハク酸イミドのそれぞれの窒素原子が炭化水素鎖又は含窒素炭化水素鎖を介して結合したコハク酸イミド化合物等が挙げられる。長鎖アルケニル基としては、一又は複数の実施形態において、炭素数が8以上、9以上、10以上、12以上、15以上又は16以上のアルケニル基が挙げられる。炭化水素鎖としては、炭素数が2以上、4以上、10以上、12以上、15以上又は16以上の直鎖アルキレン基が挙げられる。含窒素炭化水素鎖としては、1以上又は2以上の窒素原子と、2以上、4以上、10以上、12以上、15以上又は16以上の炭素原子とを有する二価の置換基が挙げられる。含窒素炭化水素鎖としては、ジエチレンアミノ基、及びエチレンポリエチレンイミン基等が挙げられる。
【0036】
アルキル基を有するコハク酸イミド化合物としては、一又は複数の実施形態において、コハク酸イミド基の少なくとも一つの炭素原子が長鎖アルキル基で置換されたコハク酸イミド化合物、コハク酸イミド基の少なくとも一つの炭素原子が長鎖アルキル基で置換され、かつ該コハク酸イミド基の窒素原子がアルキレンイミン基又はアミノアルキレン基で置換されたコハク酸イミド化合物、2つの長鎖アルキル基置換コハク酸イミドのそれぞれの窒素原子が炭化水素鎖又は含窒素炭化水素鎖を介して結合したコハク酸イミド化合物等が挙げられる。長鎖アルキル基としては、一又は複数の実施形態において、炭素数が8以上、9以上、10以上、12以上、15以上又は16以上のアルキル基が挙げられる。
【0037】
アルケニル基及びアルキル基の少なくとも一方を有するコハク酸イミド化合物としては、一又は複数の実施形態において、下記式(V)~(VIII)で表される化合物が挙げられる。
【化2】
【0038】
式(V)において、R21及びR22は、数平均分子量300以上7000以下のアルキル基、又は数平均分子量300以上7000以下のアルケニル基を示し、nは0~8の整数を示す。R21及びR22は、互いに同一でも異なっていてよい。
【0039】
式(VI)において、R23は、数平均分子量300以上7000以下のアルキル基、又は数平均分子量300以上7000以下のアルケニル基を示し、mは0~8の整数を示す。
【0040】
式(VII)において、R24、R26及びR27は、数平均分子量300以上7000以下のアルキル基、又は数平均分子量300以上7000以下のアルケニル基を示し、R25は、炭素数1~5のアルキレン基である。R26及びR27は、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0041】
式(VIII)において、R28は、数平均分子量300以上7000以下のアルキル基、又は数平均分子量300以上7000以下のアルケニル基を示し、R29は、炭素数1~5のアルキレン基である。
【0042】
アルキル基及びアルケニル基の数平均分子量は、一又は複数の実施形態において、500以上5000以下、500以上5000未満、500以上4000以下、700以上4000以下、又は800以上3500以下である。
【0043】
アルキル基及びアルケニル基は、一又は複数の実施形態において、直鎖であってもよいし、分岐鎖であってもよい。R21、R22、R23、R24及びR28としては、一又は複数の実施形態において、ポリエチレン基、ポリイソプロピル基、ポリイソプレン基、ポリブテン基、ポリイソブテン基、ポリブテニル基、及びポリイソブテニル基等が挙げられ、好ましくはポリブテニル基及びポリイソブテニル基等である。
【0044】
25及びR29としては、一又は複数の実施形態において、メチレン基、エチレン基、プロピル基、及びイソプロピル基等が挙げられる。
【0045】
n及びmは、一又は複数の実施形態において、0、1、2、3、又は4である。式(V)における“-CH2CH2-[NHCH2CH2n-”及び式(VI)における“-CH2CH2-[NHCH2CH2m-”としては、エチレン基、ジエチレンアミノ基、及びエチレンポリエチレンイミン基等が挙げられる。
【0046】
コハク酸イミド化合物は、一又は複数の実施形態において、一種類で使用してもよいし、複数種類を組み合わせて使用してもよい。
【0047】
本開示の汚れ防止方法において使用されうるコハク酸イミド化合物の重量平均分子量は、一又は複数の実施形態において、3,000~15,000、又は5,000~12,000である。分散剤の重量平均分子量は、サイズ排除クロマトグラフィーによるものであり、具体的には、実施例に記載の方法により測定できる。
【0048】
熱交換器に供給されるプロセス流体におけるコハク酸イミド化合物(複数種類のコハク酸イミド化合物を使用する場合はその合計)の濃度としては、一又は複数の実施形態において、1~100ppm、2~80ppm、又は3~50ppmが挙げられる。本開示の汚れ防止方法は、一又は複数の実施形態において、熱交換器に供給されるプロセス流体における分散剤が1~100ppm、2~80ppm、又は3~50ppmとなるように、プロセス流体に分散剤を添加することを含む。
【0049】
熱交換器に供給されるプロセス流体における亜リン酸エステル化合物(複数種類の亜リン酸エステル化合物を使用する場合はその合計)の含有量(ppm)とコハク酸イミド化合物(複数種類のコハク酸イミド化合物を使用する場合はその合計)の含有量(ppm)との比としては、一又は複数の実施形態において、5:1~1:5、3:1~1:3、又は2:1~1:2が挙げられる。本開示の汚れ防止方法は、一又は複数の実施形態において、熱交換器に供給されるプロセス流体における亜リン酸エステル化合物の含有量(ppm)とコハク酸イミド化合物の含有量(ppm)との比が、5:1~1:5、3:1~1:3、又は2:1~1:2となるように、プロセス流体に亜リン酸エステル化合物及びコハク酸イミド化合物を添加することを含む。
【0050】
本開示の汚れ防止方法は、一又は複数の実施形態において、本開示の汚れ防止方法で使用する汚れ防止剤(上記亜リン酸エステル化合物と上記コハク酸イミド化合物とを含む汚れ防止剤)を貯蔵する貯蔵タンク及び/又は汚れ防止剤をプロセス流体に注入する薬注設備の材質が、ステンレスと比較して耐食性の低いカーボンスチール等の鉄系材質であっても、貯蔵タンク及び薬注設備の汚れ防止剤による腐食を抑制することができる。また、これらの貯蔵タンク及び薬注設備は、汚れ防止剤の注入点付近である熱交換器近くに配置されることから、高温下、例えば、100℃以上又は140℃以上に曝される。しかし、本開示の汚れ防止方法によれば、貯蔵タンク及び薬注設備が高温下に曝された場合であっても、貯蔵タンク及び薬注設備の汚れ防止剤による腐食を抑制することができる。よって、本開示の汚れ防止方法は、一又は複数の実施形態において、カーボンスチール製の貯蔵タンクに保存された亜リン酸エステル化合物及び/又は分散剤を、プロセス流体に添加することを含む。本開示の汚れ防止方法は、一又は複数の実施形態において、亜リン酸エステル化合物及び/又は分散剤を、カーボンスチール製の薬注設備を用いて、プロセス流体に添加することを含む。
【0051】
亜リン酸エステル化合物と分散剤をプロセス流体に添加する場所は特に限定されず、一又は複数の実施形態において、上記の濃度の亜リン酸エステル化合物と分散剤が、汚れ防止の対象の熱交換器に導入されうる場所が挙げられ、又は、対象の熱交換器の手前が挙げられる。亜リン酸エステル化合物及び分散剤の添加順序は特に制限されず、一又は複数の実施形態において、同時に添加されてもよく、別々に添加されてもよく、互いに異なる場所で添加されてもよい。
亜リン酸エステル化合物及び分散剤は、一又は複数の実施形態において、連続添加であってもよいし、間欠添加であってもよい。
【0052】
図1は、常圧蒸留塔を備える石油精製処理装置の一例を示すブロック図である。この石油精製処理装置では、ポンプ6を介して供給された原油は、脱塩装置1で脱塩された後、予熱交2(熱交換器2)で150~180℃に加熱され、さらに予熱交3(熱交換器3)に導入され240~280℃に加熱され、加熱炉4で350~380℃に加熱されて、常圧蒸留塔5に導入される。常圧蒸留塔5の塔底から缶出液はポンプ7を介して熱交換器3及び2に熱源として送られる。
【0053】
図1の石油プロセスの熱交換器3において本開示の汚れ防止方法を行う場合、亜リン酸エステル化合物及び分散剤の添加場所としては、限定されない一又は複数の実施形態において、熱交換器3の手前である図1の矢印Aで示す場所が挙げられるが、さらに手前の矢印Cで示す場所であってもよい。図1の熱交換器3において、加熱側で本開示の汚れ防止方法を行う場合、亜リン酸エステル化合物と分散剤の添加場所としては、限定されない一又は複数の実施形態において、熱交換器3の手前である図1の矢印Bで示す場所が挙げられる。本開示における亜リン酸エステル化合物及び分散剤の添加場所は、上記個所に限定されず、例えば、脱塩装置1の前(例えば、脱塩装置1の前に配置された熱交換器の前)であってもよい。
【0054】
[汚れ防止剤]
本開示は、一態様において、本開示の汚れ防止方法に使用するための汚れ防止剤に関する。本開示の汚れ防止剤は、亜リン酸エステル及び分散剤を含有し、分散剤が、コハク酸イミド化合物である。汚れ防止剤の形態は、一又は複数の実施形態において、粉末、錠剤等の固体であってもよく、溶媒に溶解された状態、すなわち、濃縮液の形態であってもよい。
本開示の汚れ防止剤における亜リン酸エステル及びコハク酸イミド化合物は、上述の通りである。
【0055】
[使用]
本開示は、一態様において、本開示の汚れ防止方法における亜リン酸エステル化合物の使用に関する。また、本開示は、その他の態様において、コハク酸イミド化合物である分散剤が添加されたプロセス流体が通過する石油プロセスの熱交換器の汚れを防止するための、亜リン酸エステル化合物の使用に関する。亜リン酸エステル化合物及びコハク酸イミド化合物としては、上述の通りである。
【0056】
本開示は、以下の一又は複数の実施形態に関しうる;
[1] 石油プロセスにおける熱交換器の汚れ防止方法であって、
前記熱交換器を通過するプロセス流体に、亜リン酸エステル化合物と分散剤とを添加することを含み、
前記分散剤が、コハク酸イミド化合物である、汚れ防止方法。
[2] 前記イミド化合物が、アルケニル基及びアルキル基の少なくとも一方を有するコハク酸イミドである、[1]記載の汚れ防止方法。
[3] 熱交換器に供給されるプロセス流体における前記亜リン酸エステル化合物と前記コハク酸イミド化合物との含有量(ppm)の比が、5:1~1:5となるように、前記亜リン酸エステル化合物及び前記コハク酸イミド化合物を前記プロセス流体に添加することを含む、[1]又は[2]に記載の汚れ防止方法。
[4] 熱交換器に供給されるプロセス流体における亜リン酸エステル化合物の濃度が1~100ppmとなるように、前記亜リン酸エステル化合物を前記プロセス流体に添加することを含む、[1]から[3]のいずれかに記載の汚れ防止方法。
[5] 熱交換器に供給されるプロセス流体におけるコハク酸イミド化合物の濃度が1~100ppmとなるように、前記分散剤を前記プロセス流体に添加することを含む、[1]から[4]のいずれかに記載の汚れ防止方法。
[6] [1]から[5]のいずれかに記載の汚れ防止方法に使用するための汚れ防止剤であって、亜リン酸エステル化合物及び分散剤を含有し、
前記分散剤が、コハク酸イミド化合物である、汚れ防止剤。
[7] コハク酸イミド化合物である分散剤が添加されたプロセス流体が通過する石油プロセスの熱交換器の汚れを防止するための、亜リン酸エステル化合物の使用。
【0057】
以下の実施例及び比較例に基いて本開示を説明するが、本開示はこれに限定されるものではない。
【実施例
【0058】
[薬剤]
亜リン酸エステル1:式(I)で表される亜リン酸エステル化合物
亜リン酸エステル2:亜リン酸エステル1とは異なる式(I)で表される亜リン酸エステル化合物
コハク酸イミド1:式(V)で表されるコハク酸イミド化合物、分子量10,000
コハク酸イミド2:式(V)で表されるコハク酸イミド化合物、分子量6,000
コハク酸エステル:ポリアルケニル置換コハク酸エステル化合物、分子量10,000
ポリオレフィン無水マレイン酸共重合体(ポリオレフィンエステル):分子量10,000
【0059】
上記化合物の分子量は重量平均分子量であって、サイズ排除クロマトグラフィーによって測定できる。測定条件は以下のとおりである。
測定条件
カラム:スチレン-ジビニルベンゼン架橋ゲル
溶離液:テトラヒドロフラン
流量:0.7ml/min
カラム温度:40℃
【0060】
[薬剤の調製]
亜リン酸エステル1又は2が10重量%であって、有効成分の量として亜リン酸エステル1又は2と表1に示す分散剤との比率(重量比)が1:3となるようにこれらを混合して薬剤を調製した。
【0061】
[防食効果確認試験1]
カーボンスチール(SPCC)製のテストピースを用い、以下の手順で防食効果確認試験を行った。
JIS K2276(石油製品-航空燃料油試験方法)の酸化安定度試験方法に記載されている酸化安定度試験器とボンベ一式と試験容器一式を用いた。
まず、下記薬剤100mlを、ガラス製の試験容器に入れた。アセトン脱脂及び乾燥を行った後、前重量を測定したテストピースを試験容器に入れてカバーをかけ、その試験容器をボンベに入れた。その後、ボンベ内の酸素を窒素置換するために0.5MPaで窒素を注入して開放する操作を3回繰り返し3回目は窒素を圧入した状態で密閉した。酸化安定度試験器に窒素置換後のボンベを入れて190℃の恒温槽で3日間静置した。
【0062】
[評価]
試験終了後、テストピースを回収し、15%塩酸水溶液及び水道水にて赤錆を除去し、試験前後のテストピースの重量差から腐食度(mdd)及び侵食度(mm/y)を下記式から算出した。その結果を下記表1に示す。
腐食度(mdd)=(M1-M2)/(S×T)
侵食度(mm/y)=mdd×{365×10-4}/d
1:テストピースの試験前の重量(mg)
2:テストピースの試験後の重量(mg)
S:テストピースの表面積(dm2
T:試験日数
d:テストピースの密度(g/cm3
【0063】
【表1】
【0064】
表1に示すように、亜リン酸エステルとコハク酸イミド1(式(V)で表される2つのアルケニル基置換コハク酸イミドの窒素原子がエチレンアルキレンイミンを介して結合したコハク酸イミド化合物)とを併用した実施例1及び2では、いずれもカーボンスチールの腐食がほとんど確認されなかった。
【0065】
[汚れ(ファウリング)防止試験]
汚れ(ファウリング)防止試験は、石油精製用汚れ防止剤の汚れ防止効果を調べたるための試験であり、汚れを付着させるための試験部材として、図2に示す加熱管(ヒートロッド)21を用い、加熱管を油に接触させて、その汚れの付着状況を測定することにより行うものである。この加熱管21は、JIS K2276に規定された熱安定度試験器に使用されるものであり、軟鋼製で端部21a、21bが大径とされ、中間部21cが小径とされた、くびれた管形状をなしている。この加熱管21を図3に示す管形状の加熱管保持器22の中へ挿入する。加熱管保持器22の上部及び下部には流入管23aと流出管23bとが接続されており、加熱管21の中央部には熱電対24が挿入されており、図示しない温度調節器により、熱電対24によって感知される温度が所定の温度となるように、加熱管21の両部21a、21bから電流を流すことが可能とされている。試験装置は、上述の加熱管21を備えたアルコア(Alcor)社製のHotLiquidProcessSimurator試験器を用いた。
【0066】
前記試験装置により、下記条件のように加熱管21を加熱し、サンプルを流入管23aから導入して、試験を行った。
サンプル:下記表2の亜リン酸エステル化合物及び分散剤の濃度がそれぞれ10ppm及び20ppmになるように、アスファルテン含有量の異なる原油1及び2にそれぞれ添加して調製した。
原油1:アスファルテン含有量 0.5重量%以下
原油2:アスファルテン含有量 2.0~3.0重量%以下
加熱管21の温度:330~340℃(20分かけて昇温)
タンク、ライン、ポンプの温度:100℃
サンプル量:500ml(タンク内で仕切られているため戻ったサンプルは混合しない)
サンプル導入流速:1ml/分
系内圧力:500~600psi(窒素で圧力調整)
試験時間:5時間
【0067】
汚れ防止効果は、サンプルの出口温度変化(Δt)に基づき、下記の評価基準で評価した。その結果を下記表2に示す。
〔サンプルの出口温度変化:Δt〕
流出管23b(加熱部出口)における試験開始後最高温度のサンプル温度と、5時間経過後のサンプル温度の温度変化(Δt)を測定した。加熱管21に汚れが付着するほど、Δtが大きくなる。
評価基準 A:Δtが5以下
B:Δtが5を超え8未満
C:Δtが8以上15未満
D:Δtが15以上
【0068】
【表2】
【0069】
表2に示すように、亜リン酸エステルとコハク酸イミド1とを併用した実施例3では、原油のアスファルテン含有量に関わらず、汚れの付着を抑制できた。つまり、亜リン酸エステルとコハク酸イミド化合物とを併用することで、石油プロセスにおける熱交換器の汚れを十分に防止できることが確認できた。
【0070】
[防食効果確認試験2]
亜リン酸エステル1とコハク酸イミド1(式(V)で表されるコハク酸イミド化合物、分子量:10,000)との配合比率を下記表3のようにした以外は、防食効果確認試験1と同様に試験及び評価を行った。その結果を下記表3に示す。
【0071】
【表3】
【0072】
表3に示すように、配合比率に関わらずカーボンスチールの腐食がほとんど確認されなかった。
【0073】
[防食効果確認試験3]
分散剤として、コハク酸イミド2(式(V)で表されるコハク酸イミド化合物、分子量:6,000)を使用した以外は、防食効果確認試験1と同様に試験及び評価を行った(亜リン酸エステル1とコハク酸イミド2との配合比率(重量比):1:3)。
その結果、カーボンスチールの腐食は確認されなかった(mm/y:0.01)。
図1
図2
図3