(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】作業現場の危険予知装置、危険予知システム、危険予知方法
(51)【国際特許分類】
G08B 25/04 20060101AFI20240501BHJP
【FI】
G08B25/04 K
(21)【出願番号】P 2024012685
(22)【出願日】2024-01-31
【審査請求日】2024-01-31
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520232460
【氏名又は名称】株式会社アクシス
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮腰 行生
(72)【発明者】
【氏名】永松 祐弥
(72)【発明者】
【氏名】山田 眞佐江
【審査官】石井 則之
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-184774(JP,A)
【文献】特開2010-46325(JP,A)
【文献】特開2019-5425(JP,A)
【文献】特開2022-29791(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62B1/00-5/00
35/00-99/00
G08B19/00-31/00
H04M3/00
3/16-3/20
3/38-3/58
7/00-7/16
11/00-11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視対象の身体に装着可能なボディー装着帯と、前記ボディー装着帯に右フック用帯を介して連結された右フック構体と、前記ボディー装着帯に左フック用帯を介して連結された左フック構体を備えた装着具と、
前記ボディー装着帯に取り付けられたボディー姿勢センサと、
前記右フック構体又は前記右フック用帯のいずれかに取り付けられた右姿勢センサと、
前記左フック構体又は前記左フック用帯のいずれかに取り付けられた左姿勢センサと、
前記ボディー姿勢センサに設けられており、前記右姿勢センサと前記左姿勢センサとから無線により送信される右姿勢検出出力と左姿勢検出出力を受信する受信器と、
前記受信器で受信した前記右姿勢検出出力及び前記左姿勢検出出力と、前記ボディー姿勢センサで得られるボディー姿勢検出出力とを用いる演算器及び状態判定器であって、
前記ボディー姿勢センサの基準鉛直面に対する傾斜速度を基準とし、前記右姿勢センサの傾斜速度を前記基準鉛直面に対する右傾斜速度差分に補正し、
また前記ボディー姿勢センサの前記基準鉛直面に対する前記傾斜速度を基準とし、前記左姿勢センサの傾斜速度を前記基準鉛直面に対する左傾斜速度差分に補正し、
設定した期間内で、前記右傾斜速度差分の値が閾値以下の場合と、前記左傾斜速度差分の値が閾値以下の場合の少なくとも一方が成立する場合は、警告信号を出力する演算器及び状態判定器と、
を備える作業現場の危険予知装置。
【請求項2】
前記警告信号は、前記状態判定器に接続されたスピーカ又は発光素子に供給される、請求項1記載の作業現場の危険予知装置。
【請求項3】
前記状態判定器は、前記警告信号の発生を決定するための閾値を外部からの操作で可変可能である、請求項1記載の作業現場の危険予知装置。
【請求項4】
前記右傾斜速度差分と比較される閾値と、前記左傾斜速度差分と比較される閾値とは、異なる値に設定可能である、請求項1記載の作業現場の危険予知装置。
【請求項5】
前記ボディー姿勢センサは、さらに高度計を備える、請求項1記載の作業現場の危険予知装置。
【請求項6】
監視対象の身体に装着可能なボディー装着帯と、前記ボディー装着帯に右フック用帯を介して連結された右フック構体と、前記ボディー装着帯に左フック用帯を介して連結された左フック構体を備えた装着具と、
前記ボディー装着帯に取り付けられ、鉛直面に対する自身のボディー傾斜速度を得るボディー姿勢センサと、
第1の鉛直面センサ、第1の加速度センサ、第1の演算器及び第1の送信器を有し、前記右フック構体又は前記右フック用帯のいずれかに取り付けられ、鉛直面に対する自身の第1の傾斜速度を得て、前記ボディー姿勢センサへ送信する右姿勢センサと、
第2の鉛直面センサ、第2の加速度センサ、第2の演算器及び第2の送信器を有し、前記左フック構体又は前記左フック用帯のいずれかに取り付けられ、鉛直面に対する自身の第2の傾斜速度を得て、前記ボディー姿勢センサへ送信する左姿勢センサと、
前記ボディー姿勢センサに設けられており、
前記第1の傾斜速度、前記第2の傾斜速度を受信する第1の受信器と、
前記ボディー傾斜速度と前記第1の傾斜速度の差に応じた右傾斜速度差分と、前記ボディー傾斜速度と前記第2の傾斜速度の差に応じた左傾斜速度差分とを得る第3の演算器と、
前記第3の演算器の演算結果に応じて、警告信号を発生する状態判定器と、そして、
前記右傾斜速度差分と前記左傾斜速度差分と外部へ送信する第3の送信器と、
前記第3の送信器からの前記右傾斜速度差分と前記左傾斜速度差分とを受信する第2の受信器を有し、受信したデータを送受信器でサーバに向けて送信する中継器とを有し、
前記第1の受信器は、前記第1の送信器と第2の送信器から第1の通信方式で受信する2チャンネルの受信器であり、
前記第2の受信器は、前記第1の通信方式とは異なり、送信頻度が前記第1の通信方式よりも低い第2の通信方式を採用していることを特徴する、
作業現場の危険予知システム。
【請求項7】
前記中継器は、
前記右傾斜速度差分と比較される第1の閾値と、前記左傾斜速度差分と比較される第2の閾値とを、異なる値で前記状態判定器に対して設定可能である、請求項6記載の作業現場の危険予知システム。
【請求項8】
前記中継器は、
携帯電話網を介して、データベースを構築するサーバへ接続されている、請求項6記載の作業現場の危険予知システム。
【請求項9】
前記サーバの前記データベースは、スマートフォーンを用いて参照可能である、請求項8記載の作業現場の危険予知システム。
【請求項10】
装着具が、作業員の身体に装着可能なボディー装着帯と、前記ボディー装着帯に右フック用帯を介して連結された右フック構体と、前記ボディー装着帯に左フック用帯を介して連結された左フック構体を備ええおり、
ボディー姿勢センサを前記ボディー装着帯に取り付け、鉛直面に対する自身のボディー傾斜速度を得、
右姿勢センサに、第1の鉛直面センサと第1の加速度センサ及び第1の演算器を設け、この右姿勢センサを前記右フック構体又は前記右フック用帯のいずれかに取り付け、鉛直面に対する自身の第1の傾斜速度を得て、前記ボディー姿勢センサへ送信するようにし、
左姿勢センサに、第2の鉛直面センサと第2の加速度センサ及び第2の演算器を設け、この左姿勢センサを前記左フック構体又は前記左フック用帯のいずれかに取り付け、鉛直面に対する自身の第2の傾斜速度を得て、前記ボディー姿勢センサへ送信するようにし、
前記ボディー姿勢センサに、受信器、第3の演算器、状態判定器、送信器を設けており、
前記第1の傾斜速度、前記第2の傾斜速度を受信し、
前記ボディー傾斜速度と前記第1の傾斜速度の差に応じた右傾斜速度差分と、前記ボディー傾斜速度と前記第2の傾斜速度の差に応じた左傾斜速度差分とを取得し、
前記第3の演算器の前記右傾斜速度差分及び又は左傾斜速度差分に応じて、警告信号を発生し、そして、前記右傾斜速度差分と前記左傾斜速度差分とを外部の中継器へ送信する、
ことを特徴する作業現場の危険予知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、作業現場の危険予知装置、危険予知システム、危険予知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工事現場において、作業者による高所作業が行われる場合、作業者の落下を防止するために安全帯使用状況確認システムが開発されている。このシステムは、作業者の身体に直接装着される装着帯と、装着帯に一端が固定され他端にフックが設けられたロープを有する。
【0003】
フックには姿勢センサが取り付けられている。フックが、作業者により固定位置に係止されたとき、所定値以上の加速度が、姿勢センサにより検出される。検出装置は、前記所定値以上の加速度が得られた事象を、作業者がフックを固定具に引っ掛けたものとして判定する。
【0004】
このシステムは、作業内容に応じて、前記所定値以上の加速度が所定期間内に得られる回数を予め記憶している。このシステムは、前記回数が前記所定期間内に得られない場合は、適正にフックが係止されていないと判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-5425号公報
【文献】特開2019-67207号公報
【文献】特開2017-108822号公報
【文献】特開2017-93515号公報
【文献】特開2017-51271号公報
【文献】特開2020-56134号公報
【文献】特開2021-109015号公報
【文献】特開2022-139618号公報
【文献】特開2022-29791号公報
【発明の概要】
【0006】
作業内容として、建築物の外壁の清掃や塗装が行われる場合がある。この作業では、建築物の外壁に沿って、鉄パイプによる足場が組み立てられる。足場は、板状の歩行用板と、この歩行用板を支える鉄パイプと、鉄パイプ同士を連結する連結具などで構成される。
【0007】
作業員は、歩行用板の上に立ちながら、外壁の清掃、塗装、補修などを行う。このような作業においても安全のために作業者の落下防止用の対策が求められている。
【0008】
そこで本発明の実施形態では、早い時期に危険を予知することができる、作業現場の危険予知装置、危険予知システム、危険予知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態によれば、
監視対象の身体に装着可能なボディー装着帯と、前記ボディー装着帯に右フック用帯を介して連結された右フック構体と、前記ボディー装着帯に左フック用帯を介して連結された左フック構体を備えた装着具と、
前記ボディー装着帯に取り付けられたボディー姿勢センサと、
前記右フック構体又は前記右フック用帯のいずれかに取り付けられた右姿勢センサと、
前記左フック構体又は前記左フック用帯のいずれかに取り付けられた左姿勢センサと、
前記ボディー姿勢センサに設けられており、前記右姿勢センサと前記左姿勢センサとから無線により送信される右姿勢検出出力と左姿勢検出出力を受信する受信器と、
前記受信器で受信した前記右姿勢検出出力及び前記左姿勢検出出力と、前記ボディー姿勢センサで得られるボディー姿勢検出出力とを用いる演算器及び状態判定器であって、
前記ボディー姿勢センサの基準鉛直面に対する傾斜速度を基準とし、前記右姿勢センサの傾斜速度を前記基準鉛直面に対する右傾斜速度差分に補正し、
また前記ボディー姿勢センサの前記基準鉛直面に対する前記傾斜速度を基準とし、前記左姿勢センサの傾斜速度を前記基準鉛直面に対する左傾斜速度差分に補正し、
設定した期間内で、前記右傾斜速度差分の値が閾値以下の場合と、前記左傾斜速度差分の値が閾値以下の場合の少なくとも一方が成立する場合は、警告信号を出力する演算器及び状態判定器と、
を備える作業現場の危険予知装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は本実施形態に係るシステムで使用されるフック構体の構成説明図である。
【
図2】
図2は本実施形態に係るシステムで使用されるフック構体であり、
図1とは視点を変えて示す構成説明図である。
【
図3】
図3は本実施形態に係るシステムで使用される装着具の一部をさらに示す説明図である。
【
図4】
図4は本実施形態に係るシステムにおいて、右姿勢センサ及び左姿勢センサの姿勢検出を行う原理の一例を説明するために示した説明図である。
【
図5】
図5は本実施形態に係るシステムにおいて、右フック構体が綱(安全用係止具)に係止し、左フック構体がボディーと一体の場合において得られた、ボディー姿勢センサ、右姿勢センサ及び左姿勢センサから得られる鉛直面傾斜速度の検出信号例を示す説明図である。
【
図6】
図6は本実施形態に係るシステムにおいて、右フック構体が綱(安全用係止具)に係止し、左フック構体がボディーと一体の場合において得られた、ボディー姿勢センサからの鉛直面傾斜速度に対する、右姿勢センサ及び左姿勢センサから得られる各鉛直面傾斜速度の検出信号を、差分演算しした結果に、さらに閾値を付加して示す説明図である。
【
図7】
図7は本実施形態に係るシステムにおいて、装着具からの各姿勢センサの出力が、中継器に送信され、さらに中継器からサーバへ監視データが送信され、サーバの監視データがスマートフォーンでモニタ可能となっているシステム構成例を示す説明図である。
【
図8】
図8は本実施形態に係るシステムにおいて、ボディー姿勢センサ、右姿勢センサ及び左姿勢センサと、中継器601の内部構成例を示すと共に、サーバ701のデータベースを用いて、スマートフォーンへサービスを提供した例を示す説明図である。
【
図9】
図9は、本システムのサーバにおけるデータベース例を示し、その説明とその利用方法を説明するための図である。
【
図10】
図10は、本システムのサーバにおけるデータベース例を示し、その説明とその利用方法を説明するための図である。
【
図11】
図11は、本システムのサーバにおける時系列データ記録例を示し、その説明とその利用方法の他の例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
図1、
図2を参照して、危険予知システムで使用されるフック構体100の構成を説明する。フック構体100は、釣り針形を有したフック金具10を有する。フック金具10の基端部は、フック用帯200と連結されている。フック用帯200の他端は、後で説明するように、例えば胴帯(
図3の左側の50-2参照)に接続されている。
【0012】
フック金具10には、このフック金具10の開口(基端部と反対側)を開閉する開閉レバー11が取り付けられている。開閉レバー11の基端部は、フック金具10の基端部に軸11aにより取り付けられ、開閉レバー11の回動先端がフック開口を開閉可能となっている。さらにフック金具10の基端部には、軸12aを中心に回動自在なロックレバー12が取り付けられている。ロックレバー12の突起12bが、開閉レバー11の突起11bに突き当たり、開閉レバー11をロックすることができる。これにより、フック金具10の開口が自由に開放しないように、フック金具10をロックすることができる。
【0013】
ロックレバー12は、通常は、軸12aを中心にして図示矢印D方向へスプリングにより付勢されている、このときは、開閉レバー11は図示矢印B方向へ自由に回動できない。開閉レバー11は、軸11aを中心にして図示矢印A方向へ図示しないスプリングにより付勢されており、その先端がフック金具10の開口の内側で停止されている。開閉レバー11の先端11Cを図示矢印B方向へ回動させて、フック金具10の開口を開くためには、ロックレバー12を図示矢印C方向へ強制的に回動させる。すると、開閉レバー11のロック状態が解放され、開閉レバー11が、矢印B方向へ回動し、フック金具10の開口が解放される。
【0014】
上記のフック構体100には、姿勢センサ300が取り付けられる。姿勢センサ300は、フック用帯200に取り付けられてもよい。この場合、フック構体100に近い位置に取り付けられることが望ましい。
【0015】
姿勢センサ300は、角速度センサと、加速度センサと、さらに演算器を含む。角度センサと、加速度センサと、演算器の個々の役割や機能については、先に説明した通りである。
【0016】
図3の左側は、作業者111が装着具122を身体に装着した状態を示している、右側は、作業者111のボディー近辺を拡大して示している。なお作業者111は、ロボットの場合もあり、「監視対象」と称してもよい。
【0017】
装着具122は、5つのパーツに分類可能なボディー装着帯を有する。このボディー装着帯は、胴回りに装着する胴帯50-2と、太もも周りに装着する太もも帯50-3R、50-3Lを有する。さらに、ボディー装着帯は、太もも帯50-3R、50-3Lと胴帯50-2とが連結しており、さらに作業者に対する肩当て部分を有した肩帯50-1R、50-1Lを有する。
【0018】
さらに一端が胴帯50-2に取り付けられ、他端には右フック構体100Rが取り付けられた右フック用帯200Rと、同じく一端が胴帯50-2に取り付けられ、他端には左フック構体100Lが取り付けられた左フック用帯200Lと、を有する。
【0019】
また、図では現れていないが、肩帯50-1R、50-1Lは、作業者の背面(背中)で一体化されて、胴帯50-2に結合されている。
【0020】
右フック用帯200Rと左フック用帯200Lには、それぞれ右フック構体100Rと左フック構体100Lのフック金具をそれぞれ係止させるためのリングが設けられている。
図3では、右フック構体100Rと左フック構体100Lとがそれぞれ、リングに係止し、休止状態にある。
【0021】
ボディー姿勢センサ300Cは、例えば肩帯50-1R、50-1Lの何れかであって、作業者の胸の位置近辺に取り付けられる、この例では、肩帯50-1Lに取り付けられている。なお右姿勢センサ300R、左姿勢センサ300Lは、この例では、フック用帯200R,200Lであって、それぞれフック構体に近い位置に取り付けられている。
【0022】
図4は、作業者111が装着具122を装着した状態を模式的に示している。説明を分かり易くするために、この図では、
図3で説明した装着具122の図をさらに簡素化して示している。
【0023】
図4では例えば右姿勢センサ300Rを有する右フックが綱に係止し、各種の位置に移動した例を示している。即ち、右姿勢センサ300Rのフックが、綱511に係止し、作業者111が移動したために、作業者との位置関係が、位置100-P2、位置100-P3、位置100-P4に変化した場合を模式的に示している。なおここで、綱511は、鉄パイプであっても構わない。このように作業者111が、移動すると、作業者111の移動に追従して右姿勢センサ300の傾き、移動位置が変化することになる。
【0024】
フック構体100Rが、位置100-P2、位置100-P3、位置100-P4に変化すると、右姿勢センサ300Rの傾きがそれぞれの位置へ移動したときに変化する。この変化に伴い姿勢センサの姿勢検出信号が変化する。つまり、角速度と加速度の変化を示す検出信号が得られる。
【0025】
図5は、作業現場において、作業者111が
図4に示したように、右フック構体100Rを綱511に係止させて、足場を移動(約1分間)した場合のボディー姿勢センサ出力、左姿勢センサ出力、右姿勢センサ出力を示している。各姿勢センサは、後(
図8)で説明するように演算器の演算結果として各出力を得ている。
【0026】
図5において、縦軸は、各姿勢センサの変位した角度(deg/s)を示し、横軸は経過時刻(s)を示している。また、実線は、ボディー姿勢センサ300Cの演算器からの出力信号、であり、一点鎖線は、左姿勢センサ300Lの演算器からの出力信号であり、点線は、右姿勢センサ300Rの演算器からの出力信号である。
【0027】
各出力信号を見ると、約5秒から11秒の間は、作業者111が、少しの距離移動したことが推定される(理由:右姿勢センサ300Rの鉛直平面(平行面)傾斜速度が変化している)。
【0028】
約11秒から19秒の間は、作業者111が、ほとんど移動しなかったことが推定される(理由:各センサの鉛直平面傾斜速度の変化がほとんどない)。
【0029】
約19秒から29秒の間は、作業者111は、立ち止まった位置で、例えば身体を屈伸させるような作業(運動)を行ったことが推定される(理由:ボディー姿勢センサ300Cと左姿勢センサ(休止状態にある)300Lの鉛直平面(平行面)傾斜速度が同期して大きく変化している)。
【0030】
その後(約30秒から55秒の間)、作業者111が少しの距離を、間欠的に移動したことが推定される(理由:右姿勢センサ300Rの鉛直平面(平行面)傾斜速度が間欠的に大きく変化している)。
【0031】
図6の波形は、
図5の3つの鉛直平面傾斜速度(具体的にはデータ)をさらに演算処理した結果を示している。即ち、左姿勢センサ300Lの鉛直平面傾斜速度からボディー姿勢センサ300Cの鉛直平面傾斜速度を減じた波形(一点鎖線)と、右姿勢センサ300Rの鉛直平面傾斜速度からボディー姿勢センサ300Cを減じた波形(点線)と、を示している、これらの波形を、鉛直平面傾斜速度差分と称する。
【0032】
これらの波形データに対して、さらに閾値TH2(図に示す太線)を設けることにより、右姿勢センサ300Rによる鉛直平面傾斜速度をデータとして効果的に取り出し、視覚化する場合も有効となる。
【0033】
なお
図6の波形を得るための処理は、例えば後述するサーバ(
図7の701)で実行される。しかし、必ずしもサーバ701で行う必要はなく、途中の中継器601で行ってもよいし、任意のモニタで行ってもよい。
【0034】
閾値TH2の値は、管理者(ユーザ)が任意に調整することが可能であり、この調整信号も、ボディー姿勢センサ300Cの演算器(後述する)に対して設定される。そして、閾値TH2は、警告信号を発生するための感度調整データとして利用される。風の強い日は、閾値を高くしてもよい。また、静かな屋内で行う作業では、閾値を小さくして、感度を高くしてもよい。つまり本システムでは周囲環境に応じて感度調整が可能である。
【0035】
図4-
図6で説明したテスト結果により明らかなように、綱にフック構体が係止されていれば、作業者が移動した場合、閾値を超えたレベルの鉛直平面傾斜速度差が明確に得られる。しかし綱にフック構体が係止されていなければ、閾値を超えたレベルの鉛直平面傾斜速度差が得られないことが明確に分かる。綱にフック構体が係止されているか否かを検知する時間帯(監視する時間帯)としては、現場管理者が任意に切り替えたり、設定することが可能である。例えば、例えば現場の作業が開始される前に、予め設定した位置から作業者が現場へ移動する時間帯(点検或は計測期間)がある。予め設定した位置は、例えば、現場へエレベータ或は運搬機が到着した時点から、一定期間がある。或は、無線での音声交信器を用いて、現場の作業員が状況方向を行った後から数分間がある。状況報告としては、「作業エリアの入口に到着しました、これから作業現場に向かいます」などの報告を受けたときから、数分間である。または、「作業現場Aから次の作業現場Bへ移動します」などの報告を受けたときから、数分間である。勿論、作業中は、常に監視する時間帯として、システムが設定されていてもよい。
【0036】
上記の閾値TH2を可変することは、鉛直平面(平行面)傾斜速度の変化に対する感度調整を行うことに相当する。感度調整は、現場のニーズに応じて調整可能とされている。例えば、ボディー姿勢センサ300Cの状態判定器に対して、外部から上記した調整信号を与えることができきる。
【0037】
なお上記説明では、フック構体が綱に係止されることを前提として説明したが、フック構体は、作業現場において、安定した固定のものに係止されてもよい。例えば、鉄柱や鉄棒などでもよいし、さらに建造物に安定して取り付けられている桟などでもよい。
【0038】
図7は、上述した右姿勢センサ300Rと、左姿勢センサ300Lからの個別姿勢検出信号が、ボディー姿勢センサ300Cで集約され、監視用姿勢検出信号となり、中継器601に送信される現場の様子を示している。さらに中継器601は、携帯電話網NET-Wを介してサーバ701と接続している。
【0039】
サーバ701は、作業現場における作業員に関する姿勢検出データをログデータとして蓄積し、各種の用途に利用できるように加工している。例えば、サーバ701は、所定の作業員の過去の作業実績データなどを可視化して提供できる。したがって、電話回線網NET-Wを介して、スマートフォーン702へ可視化データを提供することも可能である。この場合、スマートフォーン702の所有者は、サーバの管理者から所定のアプリケーションをダウンロードできるように、建築DX契約をおこなっている。
【0040】
上記の中継器601は、作業現場に近い(例えば100mから300mのエリア内)、例えば仮の執務室に設置される。この中継器601は、基本的には、ボディー姿勢センサ300Cで処理された出力信号(左姿勢センサ出力、右姿勢センサ出力、ボディー姿勢センサ出力、または、左傾斜速度差分、右傾斜速度差分である)を、サーバ701に送信する機能を持てばよい。
【0041】
しかし、現場監督者がデータを可視化して作業の様子を確認したり、先の閾値H2を調整するために、中継器601は、操作・表示装置711を接続可能に構成されてもよい。
操作・表示装置711は、例えば
図6に示した左傾斜速度差分、右傾斜速度差分を表示し、現場監督者が、閾値TH2を操作可能としている。この操作情報は、中継器601を介して、ボディー姿勢センサ300Cの状態判定器3C6(
図8に示す)に与えられる。
【0042】
操作・表示装置711は、サーバ701にも接続されており、その操作情報(操作したときの時間情報、閾値の値情報など)がログデータとして送信される。サーバ701は、各種のログデータを格納するテーブルを備える。
【0043】
さらに中継器601には、第1の気圧計712(3C7)が接続されてもよい。第1の気圧計712は、例えば、作業者の装着具122に取り付けられている。第1の気圧計712からの第1の気圧データは、現場の作業者の高さ(又はフロア階)を検知するためのデータであり、サーバ701の所定のメモリに記録される。また、作業現場の地上にも第2の気圧計713が設置されており、この第2の気圧計713からの第2の気圧データも中継器601を介してサーバ701に送信されている。サーバ701では、第2の気圧データは、基準データとして扱われる。第2の気圧データと第1の気圧データの差分から、作業者が作業を行っている、高さ(高度)を推定可能である。作業者が作業を行った高度のデータと、その作業時間などのデータもサーバ701のメモリに蓄積される。
【0044】
さらに、サーバ701に送信されるデータとしては、ボディー姿勢センサ300C、右姿勢センサ300R、左姿勢センサ300Lのそれぞれの電源の電池残容量データがある。電池残容量が低下した場合、作業者に警告信号が送信される通信系路を設置してもよい。
【0045】
またサーバ701は、特定のURLに基づきスマートフォーン702からアクセスされることができる。これにより、スマートフォーン702は、サーバ701のデータベースを参照し、ディー姿勢センサ300C、右姿勢センサ300R、左姿勢センサ300Lのそれぞれの電源の電池残容量をチェックすることができ、また作業者の高度をチェックすることが可能である。
【0046】
図8は、ボディー姿勢センサ300C、右姿勢センサ300R、左姿勢センサ300Lと、中継器601の内部をさらに示している。また、中継器601が、携帯電話網NET-Wを介してサーバ701に接続されている様子、並びに、スマートフォーン702は、携帯電話網NET-Wを介してサーバ701をアクセス可能であることを示している。さらにまた操作・表示装置711も携帯電話網NET-Wを介して中継器601に接続可能であり、先に説明した閾値H2を調整可能である。
【0047】
さらに
図8では、グランドの気圧計713は、中継器601に直接又は携帯電話網NET-Wを介して接続されている。一方、作業現場の気圧計712は、ここでは、ボディー姿勢センサ300Cに内蔵された例を示している。
【0048】
先ず通信系統を説明する。本システムは、右姿勢センサ300Rと左姿勢センサ300Lとからボディー姿勢センサ300Cへの第1の通信NET-1は、高速通信機能(例えばブルートゥース(登録商標)の高域周波数帯2403-2480MHz)が採用され、データ転送頻度が高い頻度である。
【0049】
データ処理速度は、140Hzであり、その中にボディー姿勢センサ300C内の処理時間も含めると、3つのセンサのデータの処理時間が必要である。そのため1つのセンサのデータ処理に割り当てられる実質的なデータ転送(処理)速度は46.7Hzである。またデータサイズは、8バイトであり、3周期でセンサ1組分のデータが処理されるので、8×3=24バイトである。この24バイトが通信されるので、通信速度は、24バイト×46.7Hzとなる。
【0050】
これに対して、ボディー姿勢センサ300Cと中継器601との間の第2の通信NET-2は、先の高速通信機能よりもデータ転送頻度が低い頻度である低速通信機能が採用される。例えば5秒間隔で20バイトのデータが中継器601へ送信される。また中継器601に対しては、気圧計713からの計測データも送信されている。ここでは、低消費電力の例えばLoRaWANの機能が採用されている。中継器601は、ボディー姿勢センサ300Cの送信器CTと相互通信を行うための送受信器602、携帯電話網NET-Wに接続される送受信器603を備える。
【0051】
また、中継器601とサーバ701との間、及び、サーバ701とスマートフォーン702との間、サーバ701と操作・表示装置711との間の通信は、携帯電話網NET-Wが利用される。
【0052】
右姿勢センサ300Rの構成と動作
左姿勢センサ300Rは、電源3R1、加速度センサ3R2、角速度センサ3R3、演算器3R4、高速送信を行う送信器RTを有する。右姿勢センサ300R内の角速度センサ3R3は、鉛直平面傾斜速度を得ることができる。
また右姿勢センサ300R内の加速度センサ3R2からは、重力方向の成分gを得ることができ、この成分gが鉛直平面傾斜速度の信号内の成分(ドリフト成分)を補正するために利用される。つまり右姿勢センサ300Rの内部で自律的なキャリブレーションが行われている。
言い換えると、角速度センサンサ3L3は、鉛直平面を表す角速度信号を得て、これを積分処理することで、生(なま)の鉛直平面傾斜速度の成分を生成している。この積分処理により、生の鉛直平面傾斜速度の成分には、ノイズ(ドリフト)成分が含まれている。加速度センサの出力成分は、重力方向の成分である。この加速度センサの重力方向の成分gが鉛直平面傾斜速度の信号内の成分(ドリフト成分)を補正するために利用されている。
【0053】
左姿勢センサ300Lの構成と動作
左姿勢センサ300Lも、右姿勢センサ300Rと同様な構成であり、電源3L1、加速度センサ3L2、角速度センサ3L3、演算器3L4、高速送信を行う送信器LTを有する。左姿勢センサ300L内の角速度センサ3L3は、
図1で説明したように鉛直平面傾斜速度を得ることができる。
また左姿勢センサ300L内の加速度センサ3L2からは、重力方向の成分gを得ることができ、この成分gが鉛直平面傾斜速度の成分を補正するために利用される。この成分gが鉛直平面傾斜速度の信号内の成分(ドリフト成分)を補正するために利用される。つまり左姿勢センサ300Lの内部で自律的なキャリブレーションが行われている。
【0054】
言い換えると、角速度センサンサ3L3は、鉛直平面を表す角速度信号を得て、これを積分処理することで、生(なま)の鉛直平面傾斜速度の成分を生成している。この積分処理により、生の鉛直平面傾斜速度の成分には、ノイズ(ドリフト)成分が含まれている。加速度センサの出力成分は、重力方向の成分である。この加速度センサの重力方向の成分gが鉛直平面傾斜速度の信号内の成分(ドリフト成分)を補正するために利用されている。
【0055】
ボディー姿勢センサ300Cの構成と動作
ボディー姿勢センサ300Cは、高速通信の2チャンネルの受信器CR、電源3C1、加速度センサ3C2、角速度センサ3C3、演算器3C4、メモリ3C5、状態判定器3C6、低速通信の送受信器CTを有する。またボディー姿勢センサ300Cは、気圧計3C7(
図7では713)を備える。
【0056】
なお上記した右姿勢センサ300R、左姿勢センサ300L、ボディー姿勢センサ300C内には、図示していないが、それぞれ機能を実現するための制御プログラムが内蔵されている。
【0057】
そしてボディー姿勢センサ300Cは、右姿勢センサ300Rからの鉛直平面傾斜速度(右姿勢センサのもの)を受信器CRで受信し、メモリ3C5に格納する。また左姿勢センサ300Lからの鉛直平面傾斜速度(左姿勢センサのもの)を受信器CRで受信し、メモリ3C5に格納する。
【0058】
ボディー姿勢センサ300Cのさらなるデータ処理
ボディー姿勢センサ300Cも、角速度センサ3C3は、
図1で説明したように鉛直平面傾斜速度を得ることができる。またボディー姿勢センサ300C内の加速度センサ3C2からは、重力方向の成分gを得ることができ、この成分gが鉛直平面傾斜速度の成分を補正するために利用されている。
【0059】
そして、メモリ制御プログラムにより、メモリ3C5には、各センサからの鉛直平面傾斜速度の波形データ(右姿勢センサ出力、左姿勢センサ出力、ボディー姿勢センサ出力)が格納される。
【0060】
また演算器3C4は、右姿勢センサ出力とボディー姿勢センサ出力との差分演算(右傾斜速度差分の取得)、左姿勢センサ出力とボディー姿勢センサ出力との差分演算(左傾斜速度差分の取得)を行う。さらにこの結果は、状態判定器3C6にて、閾値TH2と比較されることが可能である。
【0061】
このような演算処理、つまり、ボディー姿勢センサの傾斜速度を基準にした右姿勢センサの傾斜速度の大きさと、ボディー姿勢センサの傾斜速度を基準にした左姿勢センサの傾斜速度の大きさと、を監視することが可能である。
【0062】
*ボディー姿勢センサの傾斜速度に対して、右姿勢センサの傾斜速度が大きい場合(閾値以上の場合)は、右姿勢センサが綱に係止されていると言える。逆に右姿勢センサの傾斜速度が閾値以下の場合は、右姿勢センサが綱に係止されていない可能性が高いと言える。
【0063】
*ボディー姿勢センサの傾斜速度に対して、左姿勢センサの傾斜速度が大きい場合(閾値以上の場合)は、左姿勢センサが綱に係止されていることである。逆に左姿勢センサの傾斜速度が閾値以下の場合は、左姿勢センサが綱に係止されていない可能性が高いと言える。
【0064】
ボディー姿勢センサ300Cの、状態判定器3C6は、警告発生器と称してもよい。この状態判定器3C6は、
図6で示した閾値TH2を超えない(閾値以下のレベルの)鉛直平面傾斜速度差があった場合、スピーカ321及び又は発光素子323に対して警告信号(通知信号)を出力する。スピーカ321に警告信号が与えられた場合、マイクは、例えば、「フック注意」、「右フック注意」、「左フック注意」などの音声、或は単純に「ピッー・ピッ―」などを出力する。また発光素子323に警告信号が与えられた場合、発光素子323は、点滅、或は、色を変化させる。発光素子323は、複数であってもよい。このように本システムは、危険予知システムとして高速動作する。
【0065】
上記説明のように、本システムは、作業現場の危険予知装置、システム、及び方法として特徴を備える。
【0066】
作業者が使用しているフック構体が、綱に係止しているか否かを示す判定結果は、ボディー姿勢センサ300Cから、中継器601を介して、サーバ701に蓄積される。サーバ701においては、姿勢センサの識別データとともに、上記の判定結果が記録される。
【0067】
また演算器3C4は、気圧計3C7が計測した気圧データを中継器601に送信し、さらに中継器601は、気圧データをサーバ701へ送信する。さらに作業現場の近くのグランド(基準位置例えば1階のフロアー)などに設置されている気圧計713が計測した気圧データも中継器601を介してサーバ701に送信される。
【0068】
サーバ701は、作業者が作業を行っている気圧と、基準位置の気圧との差から、作業者の作業現場のフロア階を推定することができる。
【0069】
サーバ701は、上記の各種データを、データベースとして構築する。ボディー姿勢センサ300Cのセンサ識別IDに対しては、使用したユーザのユーザ識別IDも追加されている。
【0070】
なお、サーバ701に中継器601から送信されるデータは、上記のデータに限らず、任意選択可能であってもよい。サーバでは各種のデータが存在する場合、種々のデータ解析を行う場合に有効である。
【0071】
図9は、サーバ701に蓄積されている各種データを用いて、例えば現場監督のスマートフォーン702に提供される可視化データの一例を示している。
【0072】
サーバ701は、左姿勢センサ300Lと、右姿勢センサ300Rが、安全な係止状態にあること、警告を要する非係止状態にあることを、それぞれスコアとし、このスコアを時間経過と共に時間軸上で表示可能とするソフトウェアーを備える。図の表示エリア721の例は、左姿勢センサ300Lが警告を要する状態であり、右姿勢センサ300Rが安全な状態であることを示している。
【0073】
また、サーバ701は、現場の作業者が使用しているボディー姿勢センサ300C、左姿勢センサ300L、右姿勢センサ300Rの電池残量を示すインジケータを表示するためのソフトウェアーを備える(表示エリア722の例)。また電池残量が一定値以下に低下した場合は、点滅などの警告表示を行うようにしてもよい。この警告を危険予知として捉えることにより、姿勢センサの安定した動作維持の管理を行うことができる。さらにまた、サーバ701は、作業者が作業を行っている作業現場の気圧(フロア階)を表示するためのソフトウェアーを備える(表示エリア723の例)。
【0074】
さらに本システムは、上記の実施形態に限定されるものではない。ボディー姿勢センサ300Cには、状態判定器3C6が設けられており、これにスピーカ321及び又は発光素子323が接続されていると説明した。しかし、さらに状態判定器3C6とスピーカ321及び又は発光素子323とは無線接続でもよい。さらに、マイク、スピーカを有するヘッドセットを状態判定器3C6に接続して、現場監督と無線で更新できるようにしてもよい。
【0075】
作業員と現場監督とは、無線通信により、次の作業工程の連絡、作業内容の状況報告が行われるようにしてもよい。特に、この機能は、現場の作業員が急遽交代することになった場合は、特に有効である。
【0076】
また、ボディー姿勢センサ300Cに、体温センサ及び又は脈動センサを装備し、作業員の健康状態をサーバ、現場監督へ連絡できる機能を追加してもよい。これにより、現場監督は現場の作業員の健康状態を把握することができ、大きな事故が発生するのを防止することができる。例えば作業員の体調がすぐれないと現場監督が判断した場合、現場監督は、交代の作業員を現場へ派遣する処置を行うことができる。
【0077】
図10は、サーバ701のメモリに蓄積されるデータベースDBの一例を示す。しかしデータベースDBの構造やデータの種類は、この例に限定されるものではない。
【0078】
ここに示す例は、データベースが、例えば現場で作業を行う現場作業員毎に作成された例を示している。即ち、1ユニットのデータシートが、一人の現場作業員用として作成されている。以下、各データシートに割り当てられた記述領域のデータ名を説明する。
【0079】
1つのデータシートの記述領域DB11には、作業対象建造物の名称が記述され、記述領域DB12には、作業員が行う作業個所の識別コードが記述される。作業員が作業する作業個所としては例えば、建造物の南側壁面、その面積、高さ(フロア位置)、東側壁面、その面積、高さ(フロア位置)、西側壁面、その面積、高さ(フロア位置)などがある。記述データは、それぞれの作業個所に割り当てられた識別コードが利用される。記述領域DB13には、作業員が行う作業項目の識別コードが記述される。作業項目としては、窓清掃、窓ガラス修理、外壁清掃、外壁修理、外壁塗装などがあり、その識別コードが記述される。
【0080】
またデータシートの記述領域DB14には、上記設定された作業個所で、設定された作業を行う作業員のIDが記述され、記述領域DB15には、この作業員が装着する装着具のIDが記述される。さらにまた、記述領域DB16には、この装着具のボディー姿勢センサ、右姿勢センサ、左姿勢センサの各IDが記述される。
【0081】
記述領域DB11-DB16までは、作業員が出勤するまでに事前に現場の監督が準備していてもよい。
【0082】
次に、記述領域DB21、DB22、DB23、DB24には、作業員が作業を行うことにより発生したデータのデータベースが蓄積される。記述領域DB21には、作業員の移動位置(移動位置は作業個所の識別データである)と作業を行ったと推定される時間情報が記述される。記述領域DB22には、ボディー姿勢センサの出力データが記述されている。また、記述領域DB23と記述領域DB24には、それぞれ右姿勢センサと、左姿勢センサの出力データが記述されている。
【0083】
記述領域DB28には、警告信号が発生した時の作業個所、警告信号の発生源となった姿勢センサのIDが記述され、記述領域DB29には、作業員の体調データ(体温、脈拍など)が記述される。
【0084】
記述領域DB25(安全性)、DB26(作業効率)、DB27(作業の仕上がり)は、作業が終了して例えば現場監督が評価したスコアが記述される。なおこのスコアの発生は、作業員の作業開始から作業終了までの作業時間と監視カメラによる仕上がり加味した評価ポイントを発生するように学習させたソフトウェアーが実施してもよい。
【0085】
上記したようなデータベースを構築することにより、後々に作業員に対して仕事を割り当てる場合の参考情報として利用可能となる。つまり、安全性、効率、仕上がり、警告などの評価が参考情報となる。また、事故が発生した場合は、作業員の体調データが参考となる。また警告と体調データの相関性などを参考情報として構築することも可能である。その他、上記のデータベースは、各種の目的を持った解析データとして活用することが可能である。
【0086】
図11は、本システムのサーバにおける時系列データ記録例を示し、その説明とその利用方法の他の例を説明するための図である。
【0087】
作業現場においては、例えばビルなどの壁面にペンキを手作業で塗布する場合がある。この作業においては、職人により仕上がりにばらつきが生じることが多い。そこで、本システムでは、職人は、刷毛を持ってペンキを塗る腕(以降、利き腕と称することにする)に腕姿勢センサを装着する。そして、職人が作業しているときに、利き腕の鉛直平面傾斜速度(又は鉛直平面傾斜速度差)のデータを収集することにしている。
図11の速度又は速度差データは、二人の職人801と職人802から取得したデータを示している。
【0088】
このデータから言えることは、職人801の場合、期間S11、期間S14で、刷毛をペンキタンクにつけて刷毛にペンキを付着されている期間と言える。次に期間S12、S15では、職人は、細かいピッチで壁面の複数個所にペンキを塗りつけていると判断できる。また期間S13,S16では、職人は、大きなストロークでペンキを塗りつけていると言える。即ち、この職人は、ペンキを付着させようとしているターゲットの壁面に対して、最初は、細かいピッチで、ペンキを付着させ、次に、同じターゲットの壁面に対して、大きなストロークで刷毛を動かしてペンキを延ばしてしていると考えられる。
【0089】
一方、職人801の場合、期間S31、期間S35で、刷毛をペンキタンクにつけて刷毛にペンキを付着されている期間と言える。次に期間S32、S33では、職人は、大きなストロークでペンキを塗りつけていると言える。また期間S34,S38では、職人は、細かいピッチで壁面の複数個所にペンキを塗りつけていると判断できる。即ち、この職人は、ペンキを付着させようとしているターゲットの壁面に対して、最初は、大きなストロークで刷毛を動かしてペンキを延ばし、次に、同じターゲットの壁面に対して、細かいピッチで、ペンキを付着させていると考えられる。細かいピッチで、ペンキを付着させているのは、塗り残しがある個所に、ペンキを塗っていると考えられる。このように職人の作業の周波数パターンを取得することができる。そして、周波数パターンと職人のペンキ処理の出来栄えを学習することも可能である。
【0090】
上記の例は、一例であり、職人により様々なパターンがあるので、各職人のペンキ塗り作業のパターンを学習してデータ化することが望ましい。そして、各職人によるペンキ塗りの仕上がりの良し悪しに対して例えば現場監督がスコアを付けることで、以後の職人の採用や報酬の設定行う際の参考スコアにすることが可能となる。
【0091】
<上記したシステムのまとめ>
1-1)例えば工事現場における作業者の振る舞いの監視システムとして可能である。このシステムは互いに異なった動きが可能な複数動体(姿勢センサ)が1個の個体(作業者)を監視する例である。つまり、1個の個体は、胴体と肢体を持つ動物(人間も含む)や、可動部を有する可動機械(ロボットも含む)、ジョイスティックや操作ボタンが設置された操作端末/制御端末(リモートコントローラも含む)などが相当する、
1-2)作業現場では、安全帯のフックの使用状況を監視するシステムに利用される、
1-3)作業現場でのクレーンの使用状態のチェックがある、即ち、クレーンが吊り上げるメインロープの延長線上に複数接続されている枝ロープが、荷物に確実に係止しているかどうかをチェックするシステムに利用される、
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。さらにまた、請求項の各構成要素において、構成要素を分割して表現した場合、或いは複数を合わせて表現した場合、或いはこれらを組み合わせて表現した場合であっても本発明の範疇である。また、複数の実施形態を組み合わせてもよく、この組み合わせで構成される実施例も発明の範疇である。
【0092】
また、図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べて、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合がある。また請求項を制御ロジックとして表現した場合、コンピュータを実行させるインストラクションを含むプログラムとして表現した場合、及び前記インストラクションを記載したコンピュータ読み取り可能な記録媒体として表現した場合でも本発明の装置を適用したものである。また、使用している名称や用語についても限定されるものではなく、他の表現であっても実質的に同一内容、同趣旨であれば、本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0093】
100・・・フック構体、100R・・・右フック構体、100L・・・左フック構体、111・・・作業者、122・・・装着具、
300・・・姿勢センサ、300R・・・右姿勢センサ、300L・・・左姿勢センサ、300C・・・ボディー姿勢センサ、
601・・・中継器、701・・・サーバ、70、702・・・スマートフォーン。
【要約】
【課題】建築物などの作業現場において、早い時期に危険を予知することができる、作業現場の危険予知装置、危険予知システム、危険予知方法を提供する。
【解決手段】作業員の装着具は、作業員が身体に装着するボディー装着帯と、前記ボディー装着帯に連結された右フック構体と、前記ボディー装着帯に連結された左フック構体を備える。ボディー装着帯にボディー姿勢センサ300C、右フック構体に右姿勢センサ300R,左フック構体に左姿勢センサ300Lが取り付けられる。ボディー姿勢センサ300Cは、左右の姿勢センサ300L、300Rから姿勢検知出力信号を受信し、左右の姿勢センサ300L、300Rが、安全な個所に係止されているか否かを高速で検知する。
【選択図】
図6