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  • 特許-廃棄物の定量供給装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】廃棄物の定量供給装置
(51)【国際特許分類】
   B65G 65/42 20060101AFI20240501BHJP
   B01J 4/02 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
B65G65/42 C
B01J4/02 D
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019106222
(22)【出願日】2019-06-06
(65)【公開番号】P2020200128
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2022-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】519205361
【氏名又は名称】株式会社エヌ・クラフト
(74)【代理人】
【識別番号】110002424
【氏名又は名称】ケー・ティー・アンド・エス弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】林 憲昌
【審査官】大塚 多佳子
(56)【参考文献】
【文献】特許第4571729(JP,B2)
【文献】特開2000-264442(JP,A)
【文献】特開平05-330667(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 65/42
B01J 4/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
材質・形状が不特定の固形状の廃棄物(W)の塊を、複数に分離するための分離用パドル部(1)と、
該分離用パドル部(1)で分離された廃棄物(W)を後工程へと供給する移送部(2)と、
該移送部(2)上の廃棄物(W)の量を測定するセンサ部(3)と、
該センサ部(3)で測定された廃棄物(W)の量が所定量となるように、該分離用パドル部(1)及び該移送部(2)の動きを制御する制御部(4)と、
を備え、
前記分離用パドル部(1)が、平行に複数配置された同形の柱状のパドル(1a)と、前記パドル(1a)をその軸心を中心に繰り返し正逆回転させるための駆動手段(1b)と、を有し、
前記パドル(1a)は、細長の3枚の鋼板を溶接して形成され、前記パドル(1a)は、前記3枚の鋼板で形成された断面が略正三角形状の柱状部分と、前記鋼板の前記柱状部分からはみ出した各一側部であり前記柱状部分から突出して形成されている3つの凸条部(1aa)と、を含み、
前記制御部(4)は、前記廃棄物(W)の塊がホッパ(5)から複数の前記パドル(1a)の上に投入された状態で、複数の前記パドル(1a)を個々に独立して正逆回転させて、前記廃棄物(W)を複数の前記パドル(1a)のうち隣り合う前記パドル(1a)によって挟み込むとともに前記凸条部(1aa)によってもみほぐし、前記移送部(2)に落下させることを特徴とする廃棄物の定量供給装置。
【請求項2】
前記制御部(4)は、前記パドル(1a)に正逆回転のいずれかをさせる際に、前記突条部(1aa)を、前記移送部(2)が前記廃棄物(W)を移送する方向に対して逆向きとなるように前記廃棄物(W)に当接させることを特徴とする
請求項1に記載の廃棄物の定量供給装置。
【請求項3】
パドル(1a)が等間隔に配置されている請求項1または2に記載の廃棄物の定量供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物を処分する際に用いられる廃棄物の定量供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、多くの廃棄物(産業廃棄物及び一般廃棄物)が、十分なリサイクル処理がなされないまま、また焼却等により十分に容積を小さくすることなく、ただ単に埋め立てられることがあった。その結果、埋め立て地が不足し、また埋め立て地における有害物質の発生等などが社会問題として大きく取り上げられるようになり、現在、廃棄物の処理は高い関心を集めている。
【0003】
このような廃棄物の処理では、新しく発生した新規の廃棄物の処理だけでなく、十分な処理が施されずに単に埋め立てられてきた従前の廃棄物に対しても、埋め立て地から掘り起こして処理する必要性が求められるようになりつつある。
【0004】
そのため、各自治体等でも、このような大量の廃棄物をいかに迅速且つ安全に処理していくかが大きな問題となっている。
【0005】
このような処理が必要な廃棄物は、多種多様のものが絡み合いある程度の塊をなしていたり、特に一度埋め立てられていた廃棄物は圧縮され土などともに堅い塊になっていたりするため、一旦、破砕機等で廃棄物を破砕し、細かくした後で処理が行われる。
【0006】
すなわち、このような廃棄物の処理では、有用物を回収するためのリサイクル設備や、リサイクル不能な廃棄物を焼却する焼却設備のような後工程へ、破砕機で廃棄物を破砕して細かくしてから送られる。そしてその際には、迅速に処理ができるように、破砕機で破砕した廃棄物を後工程へ定量的に供給する定量供給装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0007】
しかしながら、例えば1つのプラスチック片や金属片が破砕機により破砕されると、複数に切断されるために、結果的に、リサイクル工程等で処理しなければならないプラスチック片や金属片が大幅に増え、作業効率が著しく低下するという問題がある。
【0008】
また廃棄物中にひも状物(ビニールひも、縄ひも等)がしばしば混在していて、廃棄物を破砕機に投入した際に、破砕機の回転歯にこのひも状物が絡みつき、破砕機が故障したり、破砕機からひも状物を取り除くために作業を停止させなければならないなど、多くの問題を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開平9-240842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は前記の問題に鑑み、簡便に廃棄物を定量供給することができる廃棄物の定量供給装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、廃棄物の定量供給装置を、材質・形状が不特定の固形状の廃棄物の塊を、複数に分離するための分離用パドル部と、該分離用パドル部で分離された廃棄物を後工程へと供給する移送部と、該移送部上の廃棄物の量を測定するセンサ部と、該センサ部で検知された廃棄物の量が所定量となるように、該分離用パドル部及び移送部の動きを制御する制御部とから構成させると共に、該分離用パドル部を、平行に複数配置された同形の柱状のパドルと、廃棄物の塊がホッパから該パドル上に投入された状態でそれぞれの該パドルをその軸心を中心に繰り返し正逆回転させるための駆動手段とから構成させれば、分離用パドル部の上方に投入された廃棄物の塊をパドルが回転して下から押し上げ等をすることで、廃棄物の塊をもみほぐし、更にもみほぐされ分離した廃棄物の一部が、複数配置されたパドルのすき間から移送部へと落下して、廃棄物がある程度大まかな量毎に後工程へと移送されることになるので、その廃棄物の量をセンサ部で検知して、廃棄物の量が所定量となるように該分離用パドル部及び該移送部の動きを制御部で制御すれば、廃棄物を細かく破砕しなくても、廃棄物を定量供給することができることを究明して本発明を完成させたのである。
【0012】
即ち本発明は、材質・形状が不特定の固形状の廃棄物の塊を、複数に分離するための分離用パドル部と、該分離用パドル部で分離された廃棄物を後工程へと供給する移送部と、該移送部上の廃棄物の量を測定するセンサ部と、該センサ部で検知された廃棄物の量が所定量となるように、該分離用パドル部及び該移送部の動きを制御する制御部と、から成る廃棄物の定量供給装置であって、
該分離用パドル部が、平行に複数配置された同形の柱状のパドルと、廃棄物の塊がホッパから該パドル上に投入された状態でそれぞれの該パドルをその軸心を中心に繰り返し正逆回転させるための駆動手段と、から構成されていることを特徴とする廃棄物の定量供給装置である。
【0013】
そして、パドルが三角柱や楕円柱であると、廃棄物の塊をもみほぐす効果が高く、好ましいのである。
【0014】
さらに、パドルにその全長にわたって凸条部が形成されていると、廃棄物の塊をもみほぐす効果がさらに高まり、好ましいのである。
【0015】
またパドルが等間隔に配置されていると、偏ることなく廃棄物の塊をもみほぐしたり、分離された廃棄物の量が安定しやすくて好ましいのである。
【0016】
そして各パドルが個々に独立して正逆回転するように構成されていれば、各パドルが連動して動く場合に比べて、廃棄物の供給量を微調整しやすくて好ましいことも究明したのである。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る廃棄物の定量供給装置は、廃棄物の定量供給装置を、材質・形状が不特定の固形状の廃棄物の塊を、複数に分離するための分離用パドル部と、該分離用パドル部で分離された廃棄物を後工程へと供給する移送部と、該移送部上の廃棄物の量を測定するセンサ部と、該センサ部で検知された廃棄物の量が所定量となるように、該分離用パドル部及び該移送部の動きを制御する制御部とから構成させるので、構造が簡便で高額な特殊な装置を必要としない。
また該分離用パドル部を、平行に複数配置された同形の柱状のパドルと、廃棄物の塊がホッパから該パドル上に投入された状態でそれぞれの該パドルをその軸心を中心に繰り返し正逆回転させるための駆動手段とから構成されているから、該分離用パドル部を、平行に複数配置された同形の柱状のパドルと、廃棄物の塊がホッパから該パドル上に投入された状態でそれぞれの該パドルをその軸心を中心に繰り返し正逆回転させるための駆動手段とから構成させれば、分離用パドル部の上方に投入された廃棄物の塊をパドルが回転して下から押し上げ等をすることで、廃棄物の塊をもみほぐし、更にもみほぐされ分離した廃棄物の一部が、複数配置されたパドルのすき間から移送部へと落下させることができるから、従来の破砕機を使用する必要がないのである。
さらに廃棄物がある程度大まかな量毎に後工程へと移送されることになるので、その廃棄物の量をセンサ部で検知して、廃棄物の量が所定量となるように該分離用パドル部及び該移送部の動きを制御部で制御すれば、廃棄物を細かく破砕しなくても、廃棄物を定量供給することができる
【0018】
そして、パドルが三角柱や楕円柱で態様では、パドルに凹凸があるので廃棄物の塊をもみほぐす効果が高く。好ましいのである。
【0019】
またパドルが等間隔に配置されている態様では、偏ることなく廃棄物の塊をもみほぐしたり、分離された廃棄物の量が安定しやすくて好ましいのである。
【0020】
そして各パドルが個々に独立して正逆回転するように構成されている態様では、各パドルが連動して動く場合に比べて、廃棄物の供給量を微調整しやすくて好ましいことも究明したのである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係る廃棄物の定量供給装置の一態様を示す平面図である。
図2図1の廃棄物の定量供給装置の右側面図である。
図3図1のパドルを示す斜視図である。
図4図1の廃棄物の定量供給装置で廃棄物の塊を揉みほぐす様子を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る廃棄物の定量供給装置について詳細に説明する。
【0023】
1は、材質・形状が不特定の固形状の廃棄物Wの塊を、複数に分離するための分離用パドル部であり、平行に複数配置された同形の柱状のパドル1aと、廃棄物Wの塊が後述するホッパ5から該パドル1a上に投入された状態でそれぞれの該パドル1aをその軸心を中心に駆動手段1bによって繰り返し正逆回転させる。このように正逆回転を繰り返すことで、ひも状物によって絡まるなどの不具合を防止できるのである。
【0024】
2は、分離用パドル部1で分離された廃棄物Wを後工程へと供給する移送部であり、例えばベルトコンベヤなどが使用できる。図4のごとく分離用パドル部1で廃棄物Wをもみほぐすことで、廃棄物Wは複数配置されたパドル1aのすき間から下方の移送部2(図2及び図4参照。)へと落下するのである。
【0025】
3は、移送部2上の廃棄物Wの量を測定するセンサ部であり、特にセンサの種類等は限定されない。また4は、センサ部3で検知された廃棄物Wの量が所定量となるように該分離用パドル部1及び該移送部2の動きを制御する制御部であり、コンピュータ等が使用できる。なお分離用パドル部1の制御では、パドル1aを正逆回転させたり、一時的に停止させたり、また場合によってはパドル1aを振動させて廃棄物Wの量が所定量となるようにすることができる。そして、移送部2の制御では、例えば移送速度の増減や一時停止などをすることができる。
【0026】
5は、廃棄物Wの塊をパドル1a上に投入するためのホッパである。
【実施例
【0027】
(実施例)
本発明に係る廃棄物の定量供給装置として、先ず図3のごとく細長の3枚の鋼板を使用して各一側部が順にはみ出るように略正三角形状にして溶接しパドル1aを作製した。このようにすることで、はみ出た鋼板の各一側部が凸条部1aaとなる。そして図1のごとくパドル1aを4本配置したもの(実施例1)と、図示していないが同一のパドル1aを3本配置したもの(実施例2)を使用して、廃棄物Wの定量供給を8時間行った。なお、廃棄物Wはバックホウで、時間間隔を置きながらホッパ5に投入した。また駆動手段1bとしては、正逆回転自在のモータを、各パドル1a毎に設けた。図1のごとくセンサ部3を設け、制御部4としてコンピュータを使用して、駆動手段1bのモータを制御した。
【0028】
(比較例)
比較例として人力(1人)による廃棄物Wの定量供給を行った(比較例1)。各実施例と同じ移送部2(ベルトコンベヤ)に、バックホウを使用して廃棄物Wを直接投入し、その後、移送部2を停止させた状態で、人力により廃棄物Wを均して廃棄物Wを後工程へと送った。そのため、人力でバックホウ作業と均し作業とを行わなければならないため、移送部2(ベルトコンベヤ)を低速で動かす必要があった。また各実施例と同様に実働8時間作業を行った。
【0029】
【表1】
【0030】
(廃棄物の供給量)
表1のとおり、8時間当たり、4本のパドル1aを使用した実施例1では73m、また3本のパドル1aを使用した実施例2では62mの廃棄物Wを定量供給することができた。一方、人力により均し作業等行った比較例1では、13mの廃棄物Wしか供給することができなかった。これは人力による均し作業等のために、移送部2(ベルトコンベヤ)を停止等させたため、処理能力が著しく低くなったからである。
【0031】
(定量供給)
表1のとおり、後工程へ廃棄物Wを定量供給ができた場合を○、できなかった場合を×で示した。
実施例1及び2では、移送部2上の廃棄物Wの量をセンサ部3で測定して、分離用パドル部1及び移送部2の動きを制御部4で制御しているので、廃棄物Wを問題なく定量供給することができた。またパドル1aを正逆回転させて処理を行うことで、装置の故障等が起こることなく、安定して定量供給できた。一方、比較例1では移送部2を停止させて人力でならし作業等を行ったので、移送部2を停止させる必要があり、その間、廃棄物Wを供給することができなかったので定量供給は困難であった。
【0032】
(安全性)
表1のとおり、作業の安全性が高かった場合を○、作業の安全性が必ずしも高くなかった場合を×で示した。
実施例1及び2では、廃棄物Wはバックホウで、時間間隔を置きながらホッパ5に投入しただけあり、作業者及び作業自体はとても安全に行うことができた。一方、比較例1では、作業者が移送部2上でならし作業等をしなければならないので、必ずしも作業の安全性が高いとは言えなかった。
【0033】
以上のとおり、本発明に係る廃棄物の定量供給装置を使用した場合、人力を必要とするのは廃棄物Wをバックホウによってホッパ5に投入する作業だけであり、ほとんどオートメーション化することが可能で、長時間の作業も可能であるだけでなく、廃棄物Wを安全に定量供給されることが可能で、また廃棄物Wを破砕等しないので、その後の後工程で選別等する廃棄物の数が増えることがなく、後工程においても大きな効果が得られるのである。
【符号の説明】
【0034】
1 分離用パドル部
1a パドル
1aa 凸条部
1b 駆動手段
2 移送部
3 センサ部
4 制御部
5 ホッパ
W 廃棄物
図1
図2
図3
図4