(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】リモコン用モジュール及び見守りシステム
(51)【国際特許分類】
G08B 25/04 20060101AFI20240501BHJP
G08B 21/02 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
G08B25/04 K
G08B21/02
(21)【出願番号】P 2019137550
(22)【出願日】2019-07-26
【審査請求日】2022-06-29
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500356267
【氏名又は名称】志幸技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【氏名又は名称】右田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】吉川 裕
【審査官】田畑 利幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-283669(JP,A)
【文献】特開2017-182198(JP,A)
【文献】特開2019-106130(JP,A)
【文献】特開2016-115055(JP,A)
【文献】特開2012-155465(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B 19/00-31/00
H04M 3/00
H04M 3/38- 3/58
H04M 11/00-11/10
H03J 9/00- 9/06
H04Q 9/00- 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気調和機器を遠隔操作するための操作部を備えるリモートコントロール装置に取付けるための装置取付部と、前記操作部が操作されたことを検出する操作検出部と、前記操作検出部によって検出された操作に関する操作信号を送信する第一通信部と、を有するリモコン用モジュールと、
環境温度を検出し、検出された環境温度に関する環境温度信号を出力する温度センサと、
前記操作信号及び前記環境温度信号を受信する第二通信部と、前記第二通信部により受信された前記操作信号及び前記環境温度信号に基づいて、前記空気調和機器が置かれた建物に居住する居住者の状態を推定する状態推定部と、前記状態推定部の推定結果に応じた状態信号を出力する状態出力部と、
を含み、
前記状態推定部は、前記第二通信部が前記操作信号を受信した時間間隔と、前記環境温度信号が示す環境温度と予め定められている閾値温度とを比較した比較結果とを組み合わせて前記居住者の状態を推定し、
前記状態推定部が前記居住者の状態を推定する推定処理は、
前記環境温度が前記閾値温度以上であるか否か判定する第1ステップと、
前記時間間隔が予め定められている閾値時間間隔以上であるか否か判定する第2ステップと、
前記環境温度が前記閾値温度以上に達したと前記第1ステップで判定されたのと同日かつそれよりも前の時間帯である所定の期間に前記操作信号を受信していたか否かを判定する第3ステップと、
を含み、
前記時間間隔は、前記状態推定部が前記第1ステップにおいて前記環境温度が前記閾値温度以上であると判定したタイミングよりも前に受信した前記操作信号のうち、直近の前記操作信号を受信した時刻と、当該直近の前記操作信号の一つ前の前記操作信号を受信した時刻と、の時刻差であり、
前記状態推定部は、
前記推定処理では、
前記第1ステップにおいて前記環境温度が前記閾値温度以上であると判定した場合は選択的に、前記第2ステップを実行し、
前記第2ステップにおいて前記時間間隔が前記閾値時間間隔以上であると判定した場合は選択的に、前記第3ステップを実行し、
前記第3ステップにおいて前記所定の期間に前記操作信号を受信していたと判定した場合は選択的に、前記環境温度に起因する異常が前記居住者に発生した可能性があると推定する、見守りシステム。
【請求項2】
前記空気調和機器において使用される電力を計測する使用電力計測部をさらに含み、
前記状態推定部は、前記操作信号の受信タイミングと、前記環境温度信号が示す環境温度と共に前記使用電力計測部によって計測された前記電力を組み合わせて前記居住者の状態を推定する、請求項1に記載の見守りシステム。
【請求項3】
前記環境温度と比較される前記閾値温度を、前記環境温度が検出された月または時間に応じて変更するカレンダー管理部をさらに備える、請求項1または2に記載の見守りシステム。
【請求項4】
前記リモコン用モジュールは、電池を収容する電池収容部を備え、前記操作検出部は、前記電池収容部に収容されている電池の電力が使用されたことにより前記操作部が操作されたことを検出する、請求項1から3のいずれか一項に記載の見守りシステム。
【請求項5】
前記状態信号により前記建物の外部または前記居住者に向けて文字、光、音、音声の少なくとも一つを出力する警告装置をさらに備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の見守りシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リモコン用モジュール及び見守りシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
居住者の状態を遠隔地から観測し、異常を検出して居住者を保護するシステムが運用されている。このようなシステムは、例えば、特許文献1、特許文献2に記載されている。特許文献1に記載の見守りシステムは、見守り対象世帯内の測定器(スマートメーター(登録商標))で測定された電力消費量の変動と共に、同じ対象世帯内のテレビリモコンの手動操作の有無を併用して居住者の安否を判定することが記載されている。スマートメーター(登録商標)は、安否見守り対象世帯の家屋に設置される分電盤に接続される。さらに、特許文献1には、単三電池規格に準じたハウジングを有する電池型通信機器を備え、電池型通信機器の円筒中心軸とハウジングの円筒中心軸とのオフセット部分に電子回路基板を収納することが記載されている。引用文献2に記載の安否見守りシステムでは、回路基板に搭載された電子部品によって手動操作ボタンが押されたことを検出する。
【0003】
特許文献2には、室温信号から5℃以下もしくは30℃以上の状態が60分継続したときは室内温度異常信号が検出され、室温信号及び湿度信号から計算される暑さ指数が28℃以上となったときに熱中症アラート信号が検出されることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-106130号公報
【文献】特開2017-168098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、日本の夏季の温度は従前に比べて高まる傾向にあり、室内においても熱中症を予防するために空調機器を使用することが奨励されている。しかしながら、特許文献1のように、分電盤に電力使用量を計測する装置を取付けることは、分電盤の構成や仕様に関する知識が必要になり、取付け作業が煩雑であるとの印象を居住者に与える可能性がある。このため、特許文献1に記載の発明は、居住者の活動状況を観測するシステムを促進することに不利である。
【0006】
また、特許文献2のように、室温や湿度を測定して異常を検出する構成は、誤報を防ぐためにアラートを出力する閾値となる温度や温度の継続時間を比較的高く設定する傾向がある。このため、特許文献2に記載の見守りシステムでは、居住者の異常を早期に検出する、あるいは異常を未然に防ぐことが難しかった。
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、設置が簡易であって、しかも熱中症を早期に検出、または未然に防ぐことに好適な見守りシステム及びリモコン用モジュールに関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の見守りシステムは、機器を遠隔操作するための操作部を備えるリモートコントロール装置に取付けるための装置取付部と、前記操作部が操作されたことを検出する操作検出部と、前記操作検出部によって検出された操作に関する操作信号を送信する第一通信部と、を有するリモコン用モジュールと、環境温度を検出し、検出された環境温度に関する環境温度信号を出力する温度センサと、前記操作信号及び前記環境温度信号を受信する第二通信部と、前記第二通信部により受信された前記操作信号及び前記環境温度信号に基づいて、前記機器が置かれた建物に居住する居住者の状態を推定する状態推定部と、前記状態推定部の推定結果に応じた状態信号を出力する状態出力部と、を含む。
【0008】
本発明のリモコン用モジュールは、機器を遠隔操作するための操作部を備えるリモートコントロール装置の外表面に取付けるための装置取付部と、前記操作部が操作されたことを検出する操作検出部と、前記操作検出部によって検出された操作に関する操作信号を送信する第一通信部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、設置が簡易であって、しかも熱中症を早期に検出、または未然に防ぐことに好適な見守りシステム及びリモコン用モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態の見守りシステムを説明するための模式図である。
【
図2】
図1に示すリモコン用モジュールを説明するための斜視図である。
【
図3】(a)は
図2に示すリモコン用モジュールの正面図、(b)はリモコン用モジュールの下面図、(c)はリモコン用モジュールの側面図である。
【
図4】リモートコントロール装置へのリモコン用モジュールの取付けを説明するための図である。
【
図5】
図1に示すリモコン用モジュールを説明するための機能ブロック図である。
【
図6】
図1に示す電力監視モジュールを説明するための機能ブロック図である。
【
図7】
図1に示す状態管理モジュールを説明するための機能ブロック図である。
【
図8】
図1に示す状態管理モジュールのMPUにおいて行われる処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を説明する。本実施形態では、同一の構成については同一の符号を付し、その説明の一部を略すものとする。また、本実施形態及び本実施形態で用いる図面は、本発明の構成を例示するものであって、その具体的な構成、形状、寸法、配置等を限定するものではない。
【0012】
図1は、本実施形態の見守りシステム100を説明するための模式図である。見守りシステム100は、リモートコントロール装置2に取付けられて使用されるリモコン用モジュール3と、状態管理モジュール5と、温度センサとを備えている。本実施形態では、後述するように、温度センサを温度と共に湿度を測定する温・湿度センサ74(
図4)とし、電力監視モジュール7に設けている。本実施形態では、空気調和機器1、リモートコントロール装置2及びリモコン用モジュール3、状態管理モジュール5及び電力監視モジュール7を共に一つの建物の同一の室内に配置している。以降、本実施形態における「環境」の語句は、この「室内」を指す。
【0013】
図1に示す見守りシステム100は、さらに、電力監視モジュール7、ルーター8、警告装置9を含んでいる。電力監視モジュール7は、空気調和機器1が消費する電力を管理する。ルーター8は、クラウドCを通じて見守りシステム100のサーバと通信する。このようなルーター8は、例えば、ネットミル(登録商標)のサービスを提供するための無線LANルータを利用することができる。
【0014】
リモートコントロール装置2は、機器を遠隔操作するための操作部21を備えるものであればよく、本実施形態では、室温及び室内の空気の湿度を調整する空気調和機器1を操作するものとする。
リモートコントロール装置2の操作部21は、空気調和機器1に対して冷房、暖房、除湿等の動作を指示する指示信号s3を送るための機器である。操作部21には、このような指示に対応した複数のボタンが設けられている。リモートコントロール装置2は、さらに表示画面22を備え、空気調和機器1に指示した動作をリモートコントロール装置2の操作者が視認できるようになっている。
【0015】
リモコン用モジュール3は、リモートコントロール装置2の操作部21が操作されたことを検出し、操作されたことを示す操作信号s1を状態管理モジュール5に出力する。状態管理モジュール5は、操作信号s1を受信する。また、状態管理モジュール5は、電力監視モジュール7から電力・温度信号s4を受信する。状態管理モジュール5は、操作信号s1及び電力・温度信号s4に基づいて空気調和機器1等の置かれた室内に居住している居住者の状態を推定する。そして、状態管理モジュール5は、推定の結果に応じて状態信号s2を送信する。なお、状態信号s2は、警告装置9に送信されるものであってもよい。警告装置9は、室内、室外のいずれに設けられるものであってもよい。さらに、状態信号s2は、ルーター8を介してクラウドCに送信されるものであってもよい。
【0016】
なお、上記の「居住者」は、施設を住居にする者に限定されず、この施設に勤務する者、施設を訪問、立ち寄る等の施設を一時的に居所とする者も含む。また、上記の送信、あるいは受信は、互いに隔てて配置された別個の構成間で信号を無線または有線によって授受する構成に限定されず、同一の機器内に設けられて信号を互いに授受することをも含む。
【0017】
操作信号s1、状態信号s2、指示信号s3及び電力・温度信号s4は、いずれも有線で送受信されるものであってもよいし、無線で送受信されるものであってもよいが、無線通信を行う場合には操作信号s1、電力・温度信号s4にはBluetooth(登録商標)の方式で送受信されるものが好適である。さらに、状態信号s2は、状態管理モジュール5に不図示のリレーを設けておき、リレー接点をオンにする接点通知を用いるものであってもよい。
【0018】
次に、上記の構成をより詳細に説明する。
(リモコン用モジュール)
図2は、リモコン用モジュール3を説明するための斜視図である。
図3(a)は
図2に示すリモコン用モジュール3の正面図、
図3(b)はリモコン用モジュール3の下面図、
図3(c)はリモコン用モジュール3の側面図である。
図4は、リモートコントロール装置2へのリモコン用モジュール3の取付けを説明するための図である。
【0019】
図2、
図4に示すように、リモコン用モジュール3は、空気調和機器1を遠隔操作するための操作部21を備えるリモートコントロール装置2の外表面に取付けるための装置取付部である装置取付部33及びリモコン接続部35と、操作部21が操作されたことを検出する操作検出部である検出回路37を備えている。また、リモコン用モジュール3は、検出回路37によって検出された操作に関する操作信号s
1を送信する第一通信部である無線通信部36を備えている。
このように、本実施形態は、リモコン用モジュール3をリモートコントロール装置2の外表面に取り付けるため、リモコン用モジュール3をリモートコントロール装置2の内部に設けるよりもリモコン用モジュール3のサイズや形状の設計の自由度を大きくすることができる。
【0020】
リモコン用モジュール3は、表示画面22がある側の面と反対の裏面に接するようにリモートコントロール装置2に取付けられる。リモコン用モジュール3は、
図2、
図3(a)から
図3(c)に示すように、正面視において長方形の基台32と、基台32の表面30aに設けられたボックス31と、を有するカバー30を有している。基台32の二つの長辺は側面30cに続いており、側面30cの端部は図中に示すx、y、z座標のx方向に湾曲している。このような構成によって装置取付部33が構成される。
【0021】
カバー30によれば、裏面30bの側に二方が装置取付部33に囲まれた空間Sが形成される。本実施形態では、空間Sにリモートコントロール装置2をライドするように挿入し、リモートコントロール装置2にリモコン用モジュール3を取付けることができる。
ボックス31は、基台32を底面とする筐体であり、筐体の内部にはリモコン用モジュール3を制御するための制御部が収容されている。制御部は、電子部品と、電子部品を搭載した回路基板とにより構成され、電子部品は回路基板に形成された配線や端子により互いに電気的に接続されている。
【0022】
また、
図3(b)、
図4に示すように、リモコン用モジュール3の裏面30bにはリモコン接続部35が設けられている。リモコン接続部35は、ボックス31の内部から裏面30bに露出する導電性の端子である。本実施形態では、リモートコントロール装置2の電池が収容される電池ボックス25の蓋(不図示)を開けてリモコン接続部35が電池ボックス内の導体と接触するようにリモコン用モジュール3を取付ける。電池ボックス内の導体としては、例えば、乾電池の端子に接触するバネがある。
なお、本実施形態は、必要に応じてリモコン接続部35と共にリモコン接続部35が取付け可能な専用のリモートコントロール装置2を提供するようにしてもよい。また、本実施形態は、リモコン接続部35をリモートコントロール装置2に対して汎用的に取付け可能な形状に構成するものであってもよい。
このような本実施形態は、電池ボックス39をリモートコントロール装置2の電池ボックスより大きく設計し、より容量の大きい乾電池を利用することができる。
【0023】
図5は、ボックス31内に収容されている回路を説明するための機能ブロック図である。
図5に示すように、リモコン用モジュール3は、操作部21が操作されたことを検出する操作検出部である検出回路37と、検出回路37よって検出された操作に関する操作信号を送信する第一通信部である無線通信部36と、を有している。また、リモコン用モジュール3は、このような構成を統括的に制御するMPU(Micro Processing Unit)38を備えている。
【0024】
また、リモコン用モジュール3は、電池を収容する電池収容部である電池ボックス39を有している。リモートコントロール装置2は、電池ボックス39に収容される不図示の電池から電力の供給を受けて動作する。電池の電力は、リモコン接続部35を介してリモートコントロール装置2の指示信号s3を出力する不図示の回路に供給される。
また、電池ボックス39に収容されている電池は、リモコン用モジュール3の側の検出回路37、無線通信部36及びMPU38にも電力を供給している。
【0025】
検出回路37は、電池ボックス39に収容されている電池の電力が使用されたことにより操作部21が操作されたことを検出する。このような構成は、電池ボックス39とリモコン接続部35との間に検出回路37を設け、電力を供給する配線のうちのリモートコントロール装置2に供給される電流を観測することによって実現することができる。検出回路37は、リモコン接続部35との間に流れる電流を検出することにより信号s5をMPU38に出力する。
【0026】
リモートコントロール装置2に供給される電力がリモートコントロール装置2の側の複数の電子部品によって消費される場合、検出回路37の検出電流に予め閾値を定め、閾値以上の電流が検出された場合に検出回路37がMPU38に検出信号を出力するようにしてもよい。閾値は、例えば、リモートコントロール装置2が定常的に使用する電力に指示信号s
3
の出力に使用される電力を加算した電力に基づいて決定される。
【0027】
信号s5は、空気調和機器1に対する指示の種別によらず一定の信号であり、MPU38は、信号s5によりリモートコントロール装置2が操作されたことを検出する。MPU38は、信号s5を入力すると、無線通信部36に信号s6を出力する。無線通信部36は、信号s6の入力により操作信号s1を出力する。操作信号s1は、状態管理モジュール5に受信される。状態管理モジュール5は、リモコン用モジュール3によって送信された操作信号s1と共に、電力監視モジュール7から送信された電力・温度信号s4を受信する。
【0028】
(電力監視モジュール)
図6は、電力監視モジュール7を説明するための機能ブロック図である。電力監視モジュール7は、電源プラグ62から空気調和機器1のACコンセント61に供給される電力を測定する電力測定部71、供給電力を制御する電圧制御部72を備えている。電圧制御部72は、空気調和機器1に供給される電力に応じて電圧を制御し、空気調和機器1に大電流が流れることを防止している。電力測定部71は、空気調和機器1の使用電力を測定する測定回路である。
【0029】
また、見守りシステム100は、環境温度を検出し、検出された温度に関する温度信号を出力する温度センサを備えている。本実施形態では、温度センサを温度と共に湿度を測定可能な温・湿度センサ74とし、これを電力監視モジュール7の内部に設けるものとした。環境温度は、空気調和機器1やリモートコントロール装置2、状態管理モジュール5等が置かれた室内の温度を指す。
このような本実施形態は、空気調和機器1の比較的近くに温・湿度センサ74を設け、空気調和機器1による室内の温度調整効果を正確に判定することができる。また、一般的に室内の上方の温度は下方の温度より高いため、本実施形態は、居住者のいる床面における環境温度の上昇を早期に検出することができる。
【0030】
さらに、電力監視モジュール7は、無線通信部75を備えている。無線通信部75は、電力測定部71によって測定された電力使用量と、温・湿度センサ74によって測定された温度及び湿度を示す電力・温度信号s4を状態管理モジュール5に送信する構成である。MPU73は、電力測定部71、温・湿度センサ74の出力信号を定期的に取得し、電力・温度信号s4を一定の周期で送信するようにしてもよい。
【0031】
(状態管理モジュール)
図7は、状態管理モジュール5を説明するための機能ブロック図である。状態管理モジュール5は、操作信号s
1及び電力・温度信号s
4を受信する第二通信部である無線通信部52を備えている。また、状態管理モジュール5は、無線通信部52において受信された操作信号s
1と電力・温度信号s
4に基づいて、空気調和機器1が置かれた建物に居住する居住者の状態を推定する状態推定部であるMPU55、MPU55の推定結果に応じた状態信号s
2を出力する状態出力部である接点制御部53を備えている。
上記接点制御部53は、遠隔操作によってルーター8のリレーをオン、オフさせるリレーリモートコントローラであってもよい。
【0032】
MPU55は、無線通信部52が操作信号s1を受信した受信タイミングと、電力・温度信号s4が示す環境温度とを組み合わせて居住者の状態を推定する。このとき、本実施形態は、操作信号s
1
が入力されていることによって居住者が活動していると判断し、操作信号s
1
が一定の期間入力されない(リモートコントロール装置2が操作されない)ことを居住者に異常が発生する可能性があると判断する条件の一つとする。
また、本実施形態は、電力・温度信号s4から温・湿度センサ74が測定した温度を判定し、温度が居住者にとって不快であると思われる温度に達したことを居住者に異常が発生する可能性があると判断する条件の一つとする。
【0033】
さらに、本実施形態は、上記したように、電力監視モジュール7が使用電力計測部である電力測定部71を含んでいる。MPU55は、操作信号s1の受信タイミングと、電力・温度信号s4が示す環境温度と電力測定部71によって測定された使用電力とを組み合わせて居住者の状態を推定することもできる。このような推定は、例えば、空気調和機器1において使用される電力が少なすぎる、または0である場合に異常が発生していると判定することによって行われる。居住者がリモートコントロール装置2を操作しているにも関わらず空気調和機器1の消費電力が低い、または0である事態は、例えば、空気調和機器1がオフ状態でリモートコントロール装置2を操作している、居住者が意図したとおりに空気調和機器1を操作していない(冷房運転を意図しているにも関わらず暖房設定になっている)、あるいは空気調和機器1の設定温度が高すぎる場合に発生する。
【0034】
MPU55の上記推定は、予め設定される閾値等の推定条件を用いて行われる。推定条件は、例えば、シリアルコンソール端末を設定用コネクタ54に接続してMPU55に与えられるものであってもよい。推定条件としては、例えば、閾値温度、使用電力の閾値、日時、リモートコントロール装置2が操作される時間間隔の閾値(閾値時間間隔)、さらにはこのような各条件を複数組み合わせて決定されるアラーム条件が考えられる。また、閾値温度は、夏季と冬季で異なる値を設定するものであってもよい。
【0035】
リモートコントロール装置2が操作された時間間隔は、状態管理モジュール5の無線通信部52に操作信号s1が受信された時間間隔に等しい。MPU55は、操作信号s1が受信された時間間隔をカウントし、時間間隔を設定された閾値時間間隔と比較する。そして、受信の時間間隔が閾値時間間隔に満たない場合には居住者が正常に活動していると判定する。一方、MPU55は、受信の時間間隔が閾値時間間隔に達した場合には居住者の活動が不活発であると判定する。
【0036】
本実施形態では、MPU55が、上記時間間隔と、無線通信部52が受信した電力・温度信号s4に含まれる環境温度と予め定められている閾値温度とを比較した比較結果と、を組み合わせて居住者の状態を推定する。ここで、閾値温度は、人にとって一般に好ましいとされる温度の範囲外から選択される温度から選択される。本実施形態は、時間間隔により居住者の活動の状態が不活発であると判定されて、かつ環境温度が閾値温度以上、または閾値温度に満たない場合、居住者に異常が生じる可能性があると判定する。
【0037】
ただし、本実施形態は、受信タイミングを上記のように操作信号を受信した時間間隔に限定するものではない。受信タイミングは、時刻によって定めるものであってもよい。操作信号の受信時刻により居住者の活動状況を判定する場合、例えば、温度が上昇し始めるとして予め設定された時刻(例えば11:00)を過ぎてもリモートコントロール装置2の操作が行われないことにより居住者に異常が生じる可能性があると判定することが考えられる。また、受信タイミングを外気の温度と関連付けて、外気の温度が30℃以上になった後も一時間以上操作信号が受信されない場合に居住者に異常が生じる可能性があると判定することが考えられる。
【0038】
また、本実施形態は、操作信号s1の受信時刻を複数の日について記録するようにしてもよい。このような場合、MPU55は、過去において凡そ操作信号s1が受信される時刻を過ぎてもリモートコントロール装置2の操作が行われないことにより居住者に異常が生じている可能性があると判定することが考えられる。
【0039】
また、状態管理モジュール5は、環境温度と比較される閾値温度を、環境温度が検出された月または時間に応じて変更するカレンダー管理部(RTC:Real-Time Clock)58をさらに備えている。カレンダー管理部58は、MPU55に設定された日時を起点として年、月日を自動的にカウントする機器である。本実施形態では、例えば夏季と冬季とで閾値温度をそれぞれ異なる温度に設定し、カレンダー管理部58により判定された現在の月日に応じた閾値温度と環境温度とを比較するようにしてもよい。
【0040】
また、カレンダー管理部58は、停電の発生により日時のカウントが停止することを防ぐため電池59により電力の供給を受けている。さらに、状態管理モジュール5は、復旧ボタン57及び温・湿度センサ56を備えている。復旧ボタン57は、状態管理モジュール5をリセットして再起動するためのボタンである。温・湿度センサ56は、状態管理モジュール5の内部の温度及び湿度を測定するセンサである。温・湿度センサ56によれば、空気調和機器1よりも下方の環境温度を測定することができる。環境温度は上方と下方とで差異が生じている場合もある。この点を考慮し、本実施形態は、電力監視モジュール7の温・湿度センサ74と温・湿度センサ56との平均値を閾値温度と比較するようにしてもよい。
【0041】
夏季と冬季とで異なる閾値温度を設定する場合、例えば、夏季の閾値温度を28℃とし、環境温度が28℃以上になったことにより操作信号s1の受信タイミングの監視を開始するようにしてもよい。また、例えば、冬季の閾値温度を5℃とし、環境温度が5℃未満になったことにより受信タイミングの監視を開始するようにしてもよい。夏季の閾値温度は、相対的に比較的低く設定することによって熱中症を未然に防ぐことができ、高く設定することによって誤報の発生を抑えることができる。熱中症の危険性を早期に発見して、かつ誤報の発生を抑えるため、本実施形態は、例えば、閾値温度を相対的に低く設定した場合には操作の時間間隔の閾値を相対的に長く設定する、あるいは閾値温度を相対的に高く設定した場合には操作の時間間隔の閾値を相対的に短く設定することが考えられる。
【0042】
また、状態管理モジュール5は、電力・温度信号s4に含まれる電力の使用に関する情報に基づいて、電力監視モジュール7の電源をオンまたはオフする電源制御部51を備えている。電源制御部51は、例えば、空気調和機器1で使用される電力が規定の値より小さい場合に空気調和機器1をオンさせる電源制御信号s7を無線通信部52を介して出力するものであってもよい。
このようにすれば、本実施形態は、夏季に空気調和機器1の使用電力が小さくて、かつ環境温度が閾値温度以上に上昇している場合に空気調和機器1を作動させ、居住者が操作しなくても環境温度の過剰な上昇を抑えることができる。
【0043】
(警告装置)
また、見守りシステム100は、状態信号s2により建物の外部または居住者に向けて文字、光、音、音声の少なくとも一つを出力する警告装置9を備えている。警告装置9は、接点制御部53から出力される状態信号s2により作動して文字、光、音、音声の少なくとも一つをアラームとして出力するものであればよい。文字を出力するものとしては、電光掲示板、ディスプレイ画面等が考えられる。光を発生するものとしては、ランプが考えられる。音を発生するものとしては、ブザー、音声を発生するものとしてはスピーカーがある。また、警告装置9は、光や音等を併せて出力するものであってもよい。音としては、ブザー音や警告音等の人の注意を喚起するものが好ましい。
また、警告装置9は、文字、光、音、音声の少なくとも一つを建物の外部に向けて出力するものであってもよいし、居住者に向けて出力するものであってもよい。警告装置9が音声を出力する場合、建物の外部に向けて「居住者に異常が発生した可能性があります」等の救援を求める音声を出力するようにしてもよい。また、警告装置9は、居住者に向けて「室温が28℃を超えました、エアコンの設定温度を下げましょう」等の指示をする音声を出力するようにしてもよい。
【0044】
(ルーター)
また、本実施形態は、警告装置9の他、ルーター8に状態信号s2を出力して居住者の状態を通知するようにしてもよい。通知の具体的な方法としては、例えば、区や市町村の機関、あるいは予め設定されている病院や家族といった連絡先に向けてメールを送信することが考えられる。
【0045】
(動作)
次に、以上説明した本実施形態の見守りシステム100の動作を説明する。
図8は、状態管理モジュール5のMPU55において行われる処理を説明するためのフローチャートである。なお、
図8は、夏季に居住者の熱中症を予防することを目的とした処理を例示するものとする。見守りシステム100がオンすると、MPU55は、カレンダー管理部58から現在の月日を検出し、閾値温度t
thを設定する。そして、電力・温度信号s
4に含まれる環境温度が閾値温度t
th以上であるか否か判断する(ステップS801)。環境温度が閾値温度t
th以上である場合(ステップS801:Yes)、MPU55は、直前にリモートコントロール装置2が操作された
時刻と前回リモートコントロール装置2が操作された
時刻との差(時間間隔)を操作信号s
1により検出する。なお、このような処理にあたり、MPU55は、操作信号s
1を受信した時刻を繰り返し図示しないメモリに記録している。
【0046】
そして、MPU55は、時間間隔を予め設定されている閾値時間間隔tinと比較し、時間間隔が閾値時間間隔tin以上であるか否か判定する(ステップS802)。操作の時間間隔が閾値時間間隔tin以上である場合(ステップS802:Yes)、このとき、本実施形態では、例えばリモートコントロール装置2が操作されていたにも関わらず操作がされなくなったのか否かを判断する(ステップS803)。この判断は、例えば、この日の朝リモートコントロール装置2が操作された場合に「リモートコントロール装置2が操作されていた」とするものであってもよい。また、この判断は、環境温度が閾値温度tthに達する以前にリモートコントロール装置2が操作されていたことによって行うものであってもよい。
【0047】
そして、MPU55は、リモートコントロール装置2が操作されていたにも関わらず、測定された時間間隔が閾値時間間隔tinを超えた場合に接点制御部53から状態信号s2を出力して警告装置9やルーター8から居住者に異常が発生した可能性があることをアラームとして出力するようにしてもよい(ステップS804)。
ステップ803の処理によれば、本実施形態は、居住者が建物に不在でリモートコントロール装置2が操作されず、環境温度が上昇した場合にアラームが発生することを防ぐことができる。
【0048】
以上説明したように、本実施形態は、空気調和機器1を遠隔操作するためのリモートコントロール装置の操作に関する操作信号s1及び温・湿度センサ74が測定した温度に基づいて居住者の状態を推定することができる。このため、本実施形態は、例えば分電盤等に機器を取付けることがないために設置が簡易な見守りシステム100を提供することができる。また、本実施形態は、温度と共にリモートコントロール装置2の操作を検出しているので、誤報を発生する可能性が低く、異常を検出する際の環境温度を低く設定することができる。このため、本実施形態は、熱中症等の異常を早期に、あるいは未然に検出することができる。
【0049】
なお、本実施形態は、以上説明した実施形態に限定されるものではない。例えば、温度センサは状態管理モジュール5や電力監視モジュール7に設けることに限定されるものでなく、リモコン用モジュール3に内蔵するようにしてもよい。また、本実施形態のリモコン用モジュール3は、空気調和機器1を操作するリモートコントロール装置に取付けられるものに限定されず、テレビや照明装置を操作するリモートコントロール装置に取付けられるものであってもよい。
【0050】
さらに、上記した本実施形態は、以上説明したように、操作間隔が閾値時間間隔以上になったことを検出したときに状態信号s2を出力している。しかし、本実施形態は、状態管理モジュール5が常時状態信号s2を送信し、操作信号s1が受信されなくなった場合に状態信号s2を停止するようにしてもよい。このような構成では、ルーター8及び警告装置9は状態信号s2が停止したことによってアラームを出力する。
【0051】
上記実施形態は、以下の技術思想を包含するものである。
(1)機器を遠隔操作するための操作部を備えるリモートコントロール装置に取付けるための装置取付部と、前記操作部が操作されたことを検出する操作検出部と、前記操作検出部によって検出された操作に関する操作信号を送信する第一通信部と、を有するリモコン用モジュールと、環境温度を検出し、検出された環境温度に関する環境温度信号を出力する温度センサと、前記操作信号及び前記環境温度信号を受信する第二通信部と、前記第二通信部により受信された前記操作信号及び前記環境温度信号に基づいて、前記機器が置かれた建物に居住する居住者の状態を推定する状態推定部と、前記状態推定部の推定結果に応じた状態信号を出力する状態出力部と、を含む、見守りシステム。
(2)前記状態推定部は、前記第二通信部が前記操作信号を受信した受信タイミングと、前記環境温度信号が示す環境温度とを組み合わせて前記居住者の状態を推定する、(1)の見守りシステム。
(3)前記状態推定部は、前記第二通信部が前記操作信号を受信した時間間隔と、前記環境温度と予め定められている閾値温度とを比較した比較結果とを組み合わせて前記居住者の状態を推定する、(2)の見守りシステム。
(4)前記機器において使用される電力を計測する使用電力計測部をさらに含み、
前記状態推定部は、前記操作信号の受信タイミングと、前記環境温度信号が示す環境温度と共に前記使用電力計測部によって計測された前記電力を組み合わせて前記居住者の状態を推定する、(2)または(3)の見守りシステム。
(5)前記環境温度と比較される前記閾値温度を、前記環境温度が検出された月または時間に応じて変更するカレンダー管理部をさらに備える、(3)または(4)のいずれか一つの見守りシステム。
(6)前記リモコン用モジュールは、電池を収容する電池収容部を備え、前記操作検出部は、前記電池収容部に収容されている電池の電力が使用されたことにより前記操作部が操作されたことを検出する、(1)から(5)のいずれか一つの見守りシステム。
(7)前記状態信号により前記建物の外部または前記居住者に向けて文字、光、音、音声の少なくとも一つを出力する警告装置をさらに備える、(1)から(6)のいずれか一つの見守りシステム。
(8)機器を遠隔操作するための操作部を備えるリモートコントロール装置の外表面に取付けるための装置取付部と、前記操作部が操作されたことを検出する操作検出部と、
前記操作検出部によって検出された操作に関する操作信号を送信する第一通信部と、を備えるリモコン用モジュール。
【符号の説明】
【0052】
1・・・空気調和機器
2・・・リモートコントロール装置
3・・・リモコン用モジュール
5・・・状態管理モジュール
7・・・電力監視モジュール
8・・・ルーター
9・・・警告装置
21・・・操作部
22・・・表示画面
25・・・電池ボックス
30・・・カバー
30a・・・表面
30b・・・裏面
30c・・・側面
31・・・ボックス
32・・・基台
33・・・装置取付部
35・・・リモコン接続部
36、52、75・・・無線通信部
37・・・検出回路
39・・・電池ボックス
51・・・電源制御部
53・・・接点制御部
54・・・設定用コネクタ
56、74・・・温・湿度センサ
57・・・復旧ボタン
58・・・カレンダー管理部
59・・・電池
61・・・ACコンセント
62・・・電源プラグ
71・・・電力測定部
72・・・電圧制御部
100・・・見守りシステム