(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】地中熱交換器の設置方法および装置
(51)【国際特許分類】
F24T 10/17 20180101AFI20240501BHJP
E21B 29/00 20060101ALI20240501BHJP
B26D 3/16 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
F24T10/17
E21B29/00
B26D3/16 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019165076
(22)【出願日】2019-09-11
【審査請求日】2022-09-06
(32)【優先日】2018-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519329564
【氏名又は名称】ジオソース エネルギー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Geosource Energy Inc.
【住所又は居所原語表記】1508 Hwy 54, Caledonia, Ontario, CANADA
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】スタンレー レイツマ
【審査官】杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-1525431(KR,B1)
【文献】独国特許出願公開第102015204609(DE,A1)
【文献】特開2003-130471(JP,A)
【文献】米国特許第01801424(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0316296(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24T 10/17
E21B 29/00
B26D 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中熱交換器の設置方法であって、
建設サイトにおいて、地中熱ボアホールを目標深さまで掘削することと、
前記地中熱ボアホールの掘削作業後に、前記地中熱交換器を前記地中熱ボアホールに所望の熱交換器設置深さまで挿入することと、
前記地中熱交換器の前記地中熱ボアホールへの挿入作業後に、前記地中熱交換器を前記地中熱ボアホールにおいて前記所望の熱交換器設置深さに固定することと、
前記地中熱交換器が前記地中熱ボアホールに固定された際、前記地中熱交換器が、遠位閉鎖端と近位開放端とを有するとともに、前記遠位閉鎖端と前記近位開放端との間に少なくとも1つの流体流路を備えており、前記地中熱交換器の各流体流路に作動流体が供給されることと、
前記地中熱ボアホールに前記地中熱交換器を固定した後、前記各流路内部に少なくとも1つの内部シール材を近位開放端から備え付けることで、前記地中熱交換器が遠位閉鎖端と近位開放端との間で一時的に密閉され、前記各流路において、前記内部シール材が地表と前記地中熱ボアホールの底との間の深さ位置である計画的地盤内深さ位置より下方に配置されることと、
前記地中熱交換器の密閉作業後に、前記地中熱交換器を最上部位置のシール材上方で切断し、前記地中熱交換器に少なくとも1つのシール材上側切断部を最上に設けることと、
前記地中熱交換器の切断作業後に、前記地中熱交換器のシール材上側切断部を取り除くことと、
前記地中熱交換器の
密閉作業後に、前記建設サイトの地中熱ボアホール周辺部分を掘削することと、
を含んでいる、
地中熱交換器の設置方法。
【請求項2】
前記建設サイトにおける前記地中熱ボアホール周辺部分が、最下方位置となる前記計画的地盤内深さより上側まで掘削されることと、
前記地中熱ボアホール周辺部分の掘削作業後に、前記地中熱交換器を供給/戻り配管に接続するために前記シール材を取り外すことと、
を含んでいる、
請求項1に記載の地中熱交換器の設置方法。
【請求項3】
前記地中熱交換器の切断作業と前記地中熱交換器の各シール材上側切断部の除去作業が、前記建設サイトの前記地中熱ボアホール周辺部分の掘削作業前に実行される、
請求項2に記載の地中熱交換器の設置方法。
【請求項4】
配管切断器具を前記近位開放端より挿入して、内部から前記地中熱交換器を切断することで、前記地中熱交換器の切断作業が実行される、
請求項2に記載の地中熱交換器の設置方法。
【請求項5】
前記地中熱交換器の切断作業と前記地中熱交換器の各シール材上側切断部の除去作業が、前記建設サイトの前記地中熱ボアホール周辺部分に対する掘削作業中に実行される、
請求項2に記載の地中熱交換器の設置方法。
【請求項6】
前記切断作業が、専用の配管切断器具の使用により実行される、
請求項5に記載の地中熱交換器の設置方法。
【請求項7】
前記切断作業が、前記建設サイトにおける前記地中熱ボアホール周辺部分の掘削作業中に掘削機により付随的に実行される、
請求項5に記載の地中熱交換器の設置方法。
【請求項8】
前記地中熱ボアホール内への前記地中熱交換器の固定作業後であって、前記建設サイトにおける前記地中熱ボアホール周辺部分の掘削作業前に、前記地中熱交換器の検査作業を実行する、
請求項1に記載の地中熱交換器の設置方法。
【請求項9】
前記地中熱ボアホールに前記地中熱交換器を固定して、前記地中熱交換器を一時的に密閉している間、前記地中熱交換器内に作動流体が充填された状態とする、
請求項1に記載の地中熱交換器の設置方法。
【請求項10】
前記地中熱交換器がUループ配管である、
請求項1に記載の地中熱交換器の設置方法。
【請求項11】
前記地中熱交換器が単一のUループ配管である、
請求項10に記載の地中熱交換器の設置方法。
【請求項12】
前記地中熱交換器が複数のUループ配管である、
請求項10に記載の地中熱交換器の設置方法。
【請求項13】
前記地中熱交換器は、少なくとも外側チューブを備えた同芯型の地中熱交換器である、
請求項1に記載の地中熱交換器の設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中熱交換器に関するもので、より詳細には、地中熱交換器の設置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地中熱交換器は、地下に設置され、建築物の冷暖房システム(例えば、HVACシステム:Heating, Ventilating and Air-Conditioning)に結合されたチューブ(「ループ」と呼ばれることもある)である。建築物の冷暖房システムからの流体は、チューブ内を循環して地中におけるチューブ周辺の地盤と熱交換する。通常、大気温度と地中(地盤)温度との間では勾配があり、夏では、地中温度が大気温度よりも低く、冬では、地中温度が大気温度よりも高い。そのため、地中で熱交換を行うことにより、建築物内の温度を気候にあわせて調節でき、建築物内でのエネルギー消費量を低減できる。
【0003】
地中熱交換器の設置前に、地中熱ボアホール(地中熱交換井)を設ける必要がある。建設予定の建築物の下側に地中熱交換器を設置する場合、通常、建設サイト(建設現場)における掘削作業の完了後に地中熱交換器を設置する。これにより、掘削作業がループに妨げられるという問題が回避できるとともに、掘削破片がチューブに入ってチューブ内を流れる流体の流れを妨げるリスクも回避できる。しかしながら、このような設置方法(アプローチ)では、少なくともボアホール周辺の建設作業について、地中熱交換器の設置から検収が完了するまでの間、遅延させる必要があった。
【発明の概要】
【0004】
本発明の一態様として、地中熱交換器の設置方法を開示する。建設サイトにおいて、地中熱ボアホールが目標深さまで掘削された後、地中熱交換器が地中熱ボアホールに目標深さまで挿入されて固定される。熱交換器は、例えば、単一のUループ配管又は複数のUループ配管などといったUループ配管で構成されるものであっても良いし、少なくとも外側チューブを備えた同芯型熱交換器であってもよい。
【0005】
地中熱交換器が地中熱ボアホールに固定された際、地中熱交換器が、遠位閉鎖端と近位開放端とを有するとともに、遠位閉鎖端と近位開放端との間に少なくとも1つの流体流路を備えており、地中熱交換器の各流体流路に作動流体が供給される。地中熱ボアホールに地中熱交換器を固定した後であって、建設サイトにおける地中熱ボアホール周辺部分を掘削する前に、各流路内部に少なくとも1つの内部シール材を近位開放端から備え付けることで、地中熱交換器が遠位閉鎖端と近位開放端との間で一時的に密閉されており、各流路において、内部シール材が計画的地盤内深さ位置より下方に配置される。
【0006】
好ましい実施例として、地中熱交換器の密閉作業後に、地中熱交換器を最上部位置のシール材上方で切断し、地中熱交換器に少なくとも1つのシール材上側切断部を最上に設け、地中熱交換器の切断作業後に、地中熱交換器のシール材上側切断部を取り除いて、建設サイトにおける地中熱ボアホール周辺部分を掘削するとともに、建設サイトにおける地中熱ボアホール周辺部分が、最下方位置となる計画的地盤内深さより上側まで掘削される。地中熱ボアホール内への地中熱交換器の固定作業後であって、建設サイトの掘削作業前に、地中熱交換器の検査作業を実行するものとしてもよい。建設サイトにおける前記地中熱ボアホール周辺部分の掘削作業後に、地中熱交換器を供給/戻り配管に接続するためにシール材を取り外すものとしてもよい。好ましい実施例において、地中熱ボアホールに地中熱交換器を固定して、地中熱交換器を一時的に密閉している間、地中熱交換器内に作動流体が充填された状態とすることが好ましい。
【0007】
地中熱交換器の切断作業と地中熱交換器の各シール材上側切断部の除去作業が、建設サイトの掘削前、又は、建設サイトの掘削中に実行されるものとしてもよい。上記の各実施例において、建設サイトにおける地中熱ボアホール周辺部分に対する掘削作業中に掘削機により付随的に実行されるものとしてもよい。
【0008】
配管切断器具を前記近位開放端より挿入して、内部から前記地中熱交換器を切断することで、前記地中熱交換器の切断作業が実行されるものとしてもよい。
【0009】
本発明の別の態様として、配管切断器具を開示する。配管切断器具は、軸方向に延びる外側ガイド面を有するとともに、管軸に沿う軸方向に配管内側に沿って移動するように前記外側ガイド面により案内される本体と、切断アームとを備えるとともに、本体のガイド面にアーム用凹部が設けられている。切断アームは、カム面を有する枢軸端と、背側辺縁と、切刃側辺縁と、枢軸端の反対側に位置するとともに前記切刃側辺縁に沿わせて配置された切刃ヘッドを備える切刃端とを有する。アーム用凹部は停止面が設けられており、切断アームは、アーム用凹部内においてその枢軸端で本体に連結することで、管軸と実質的に平行となる回転軸を中心として本体に対して旋回可能となっている。切断アームは、切刃側辺縁が前記停止面に面した状態で切断アームがアーム用凹部内に格納される格納位置と、切断アームの切刃端を外側ガイド面よりも外側まで伸ばすことで切刃ヘッドを露出させるとともに、カム面を停止面に当接させて切刃ヘッドにかかる力に対して切断アームを支持させる延伸位置との間で、旋回可能となっている。付勢部材が、本体と前記切断アームとの間で付勢力を作用させることで、前記切断アームを延伸位置への回転を促す。
【0010】
駆動ロッドが螺合されるように螺設された駆動ロッド用凹部が、軸方向に延びるように本体の第1軸端部に設けられているものとしてもよい。特定の実施例において、切断アームの枢軸端に設けた枢軸用穴に枢軸ピンを通すことで、切断アームが本体に旋回可能に連結されている。枢軸ピンの第1端部が、軸方向におけるアーム用凹部に対する位置が駆動ロッド用凹部と同じ側となる位置に設けられた枢軸ピン用凹部に挿入される。枢軸ピンの第2端部が、軸方向におけるアーム用凹部に対する位置が駆動ロッド用凹部と逆側となる位置に設けられるとともにブッシュが収容されたブッシュ収容部に挿入される。ブッシュが、軸方向におけるアーム用凹部に対する位置が駆動ロッド用凹部と逆側となる位置の止めネジ用凹部に螺合された止めネジによってブッシュ収容部に保持される。
【0011】
切刃ヘッドは、前記切刃側辺縁と同一面にある切刃と連結できる構成であってもよく、切刃側辺縁と同一面にある切刃と一体の構成であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
上記特徴及びその他の特徴を明らかにすべく、以下に示す添付図面を参照して後述する。
【
図1A】は、本発明の一実施形態における、ボアホールの掘削(ボーリング)工程を示す図である。
【
図1B】は
図1Aのボアホールへの地中熱交換器の挿入工程を示す図である。
【
図1Ba】は
図1Aのボアホールへの地中熱交換器の挿入工程を示す図である。
【
図1G】は、
図1B又は
図1Baの地中熱交換器における
図1Fのシール最上部よりも上部となる部分の切断工程を示す図である。
【
図1I】は建設サイトにおける
図1のボアホール直近の周辺位置となる部分の掘削工程を示す図である。
【
図1Ia】は建設サイトにおける
図1のボアホール直近の周辺位置となる部分の掘削工程を示す図である。
【
図1L】は
図1B又は
図1Baの地中熱交換器をHVACシステムへ接続する工程を示す図である。
【
図1M】は
図1B又は
図1Baの地中熱交換器をHVACシステムへ接続する工程を示す図である。
【
図2A】は、単一Uループ構造を備えた閉ループ型地中熱交換器の一例を示す断面図である。
【
図2B】は、二重Uループ構造を備えた閉ループ型地中熱交換器の一例を示す断面図である。
【
図2C】は、同芯構造を備えた閉ループ型地中熱交換器の一例を示す断面図である。
【
図3A】は、本発明の一実施形態におけるパイプ切断ツールの実施例を示す図であって、切断アームを格納位置に収納した状態を示す斜視図である。
【
図3B】は、切断アームを延伸位置まで延伸させた
図3Aに示すパイプ切断ツールの構成を示す斜視図である。
【
図3C】は、
図3Aのパイプ切断ツールの
図3Bにおける3C-3C断面図であって、パイプ内部の構成を示す図である。
【
図3D】は、切断アームを格納位置に位置させた際の、
図3Aのパイプ切断ツールの、
図3Bにおける3D-3D断面図である。
【
図3E】は、切断アームを延伸位置に位置させた際の、
図3Aのパイプ切断ツールの、
図3Bにおける3E-3E断面図である。
【
図3F】は、切断アームを格納位置に位置させた際の、
図3Aのパイプ切断ツールの上部断面図である。
【
図3G】は、切断アームを延伸位置に位置させた際の、
図3Aのパイプ切断ツールの上部断面図である。
【
図3H】は、切断アームを格納位置に位置させた際の、
図3Aのパイプ切断ツールの第1側面図である。
【
図3I】は、切断アームを延伸位置に位置させた際の、
図3Aのパイプ切断ツールの
図3Hと同一位置の側面図である。
【
図3J】は、切断アームを格納位置に位置させた際の、
図3Aのパイプ切断ツールの第2側面図である。
【
図3K】は、切断アームを延伸位置に位置させた際の、
図3Aのパイプ切断ツールの
図3Jと同一位置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下で、本発明の一実施形態となる地中熱交換器の設置方法の実施例について、
図1A~
図1Mを参照して説明する。
【0014】
図1Aに示すように、新しい建築物の建設が計画された地盤104といった建設サイト102において、ボアホール(地中熱交換井)106がボアホール目標深さDまで掘削(ボーリング)される。
図1Aに図示した実施形態では、油圧ドリルリグ(油圧掘削装置)110を用いてボアホール106を形成させる。油圧ドリルリグ110は、例えば、シングル式、デュアル式、またはソニック式のトップドライブを装備するものであってもよい。
【0015】
必要に応じて、表土層(通常、主に粘土、砂、および砂利でからなる)を崩壊させることなく安定させるために、ケーシング(不図示)を使用するものとしてもよいし、岩盤が露出している場合は岩盤に貫通穴(すなわち、ケーシングなしの穴)が掘削されるものとしてもよい。空気又は泥水によるロータリー掘削が使用される場合、表土層(土被り)の掘削後にケーシングを設置してもよい。また、デュアルロータリー式トップドライブ又はソニックトップドライブを備えたドリルリグや表土掘削システムを使用して、表土層の掘削と同時にケーシングを設置するものとしてもよい。地中熱ボアホールを構成する際に使用されるケーシングは、通常、仮設ケーシング、即ち、地中熱交換器をボアホールに設置した後に取り外されるケーシングである。ケーシングの大きさは、岩盤の掘削に使用されるドリルビットの大きさに適応させた大きさである必要があり、通常、外径(OD)133mm(5.5インチ)のケーシングや外径165mm(6.5インチ)のケーシングが用いられる。通常、岩盤は、(花崗岩などの硬い岩用の)ダウンザホールハンマーや(柔らかい堆積岩用の)PDC(多結晶ダイヤモンド焼結体)ビットにより掘削される。岩石の掘削のための流体として、多くの場合は圧縮空気が使用されるものの、水又は泥水を使用したロータリー式掘削についても岩石の掘削に適用される。泥水によるロータリー式掘削が、表土層の貫通穴の掘削に使用されるものとしてもよい。このロータリー式掘削による表土層の貫通穴は、通常、最大深さが150メートルまでの穴であり、100メートル未満の深さとなるものが多い。穴の深さが更に深くなると、穴を安定して掘削して目標となる深さに地中熱交換器を設置することが非常に困難になるため、一般に、泥水によるロータリー式掘削は使用されない。地中熱ボアホールの大きさは、地中熱交換機の形状とグラウチングの要件によって決定される。一般的に、32mm(1.25インチ)のシングルUループ(シングルUチューブ)式の地中熱交換器に対して、地中熱ボアホールの最小サイズが98mmとなり、38mm(1.5インチ)シングルUループ熱交換器に対しては、地中熱ボアホールの最小サイズが108mmとなる。掘削機の代表的な設備に対して更に大きな穴(ボアホール)を構成することが多く、井戸掘削機では152mm(6インチ)の大きさの穴が一般的である。地中熱ボアホールは、一般的に垂直に形成されるが、斜めに傾斜して掘削するものとしてもよいし、操縦可能な掘削技術により特定の方向に掘削するものとしてもよい。
【0016】
掘削方法は、地質、機器の利用可能性、地中熱交換器の目標深さ、及び規制要件により選択されるものであって、当業者の実施可能な範囲において選択される。
【0017】
図1B及び1Baに示すように、地中熱ボアホール106を掘削した後、地中熱交換器112は地中熱ボアホール106に所望の熱交換深さまで挿入される。該熱交換深さは、地中熱ボアホールの深さと同様の深さD又は地中熱ボアホールの深さより少し浅い深さである。
【0018】
地中熱交換器112は、一般的に、1本以上のU字形状(「Uループ」と呼ばれる)の管状配管で構成される。最も一般的な閉ループ地中熱交換器は、
図2Aに示すシングルUループ型によるものである。シングルUループ型の地中熱交換器112は、熱交換器112の終端(遠位端)にある180度エルボ継手118で結合された2本の配管114から成り、2本の配管114により地中熱交換器112の全長にわたって延びる2本の連続した平行なアーム部116が形成される。
図2Bに示すダブルUループ型の地中熱交換器は、ヨーロッパで一般的なものであり、2つの180度エルボ継手
118それぞれによって2対の配管114A、114Bが接合され、2対の平行なアーム部116A、116Bが形成されている。即ち、ダブルUループ型の構成では、地中熱交換器112の終端に2つの180度エルボ継手
118を備えるとともに地中熱交換器112の全長にわたって延びた4本の連続した平行アーム部116A、116Bを有する。別の実施形態として、
図2Cに示すように、互いに連通した外側チューブ214と内側チューブ216で構成される同芯型又は同軸型熱交換器といった、別方式の地中熱交換器212としてもよい。地中熱交換器212は、外側チューブ214に閉鎖された終端(遠位閉鎖端)218を設ける一方、内側チューブ216に外側チューブ214の閉鎖終端218よりも浅い(短い)位置に開放(開口)された終端(遠位開放端)を設ける。同芯型の地中熱交換器212を使用する場合、
図1B及び
図1Baに示す工程で、外側チューブ214のみが選択的に挿入される。また、他の構成として、一般的ではないが、例えば、GI4(商標)のように、地中熱交換器を構成する配管の管断面を円形でないものとしてもよく、例えば、Twister(商標)のように、2本以上の配管に複数Uループ型を採用してもよい。
【0019】
一般的なUループ配管は、パイプ肉厚がSDR(Standard Dimension Ratio:パイプ肉厚に対するパイプ外径の比)9~13.5となるIPS(Iron Pipe Size)3/4~1.5インチの範囲の大きさとなる。また、Uループ配管の配管材料として、HDPE3608やHDPE4710などの高密度ポリエチレンが最も一般的に用いられ、高密度ポリエチレン以外の材料や耐熱強化HDPEなどが時折用いられる。
【0020】
Uループ型地中熱交換器112や同芯型地中熱交換器212を含むいずれの構成であっても、地中熱交換器は、エルボ継手118、または外側チューブ214の閉鎖終端218のように閉鎖終端(遠位閉鎖端)を備える。
【0021】
図1B及び
図1Baでは、エルボ継手118が閉鎖終端(遠位閉鎖端)を形成する可撓性配管114を備えたシングルUループ型の地中熱交換器112を例示する。
【0022】
地中熱交換器112の地中熱ボアホール106への挿入工程は、
図1Bに示すように手動で実行されるものであってもよいし、
図1Baに示されるように機械システム120により実行されるものであってもよい。例えば、1.25インチや1.5インチのように地中熱交換器112のパイプ径が太い場合や地中熱ボアホールが深い場合には、一般的に機械による挿入作業が必要となる。手動による挿入作業及び機械による挿入作業のいずれについても、当業者の実施可能な範囲によるものである。
【0023】
地中熱交換器112は、地中熱ボアホール106に挿入された後、所望の熱交換器深さで地中熱ボアホール106内に設置固定される。地中熱交換器112と地中熱ボアホール106の壁との間に形成される環状空間128(
図1C~
図1E参照)と、地中熱交換器112のアーム部116間の空間130は、一般的に、ベントナイト系グラウト材又はセメント系グラウト材によりグラウチングされる。なお、使いやすさと性能改善により、ベントナイト系グラウト材がより多く採用されている。また、熱交換能力を向上させるために、ベントナイト系グラウト材と共に、熱伝導性の高い材料が使用されることがある。この熱伝導性の高い材料として、珪砂が主に使用されており、最近ではグラファイト材も使用されている。グラウト材を注入(グラウチング)する前に、地中熱交換器112には、配管114の構造を完全な状態で維持させる(すなわち、配管114の内側への陥没を防ぐ)ために最適な圧力がかかるように、水などの作動流体115が充填される。
【0024】
グラウト材を注入(グラウチング)するために、トレミー管122が地中熱ボアホール106に挿入される。通常、配管114及びトレミー管122は、それぞれのコイル124、126から供給され、同時に地中熱ボアホール
106に挿入される(
図1B及び
図1Ba参照)。
図1C~
図1Eに示すように、一般的に、Uループ構造の場合、トレミー管122は、地中熱交換器112のアーム部116間に配置される。
【0025】
図1Cに示すように、グラウチングの開始時、トレミー管122の出口端132が最初に地中熱交換器の終端近傍に配置される。図示するように、地中熱交換器112のエルボ継手118が支持体134上に載せた状態としてもよく、支持
体134がおもりの役割を果たすものとしてもよい。また、地中熱交換器112のエルボ継手118が、直接、地中熱ボアホール106の底についた状態であってもよいし、グラウト材が注入されている間、地中熱交換器112が地中熱ボアホール106内に単に懸架されていてもよい。
【0026】
図1Dに示すように、グラウト材136は、トレミー管122の出口端132がグラウト材136の表面またはメニスカス(曲面)の数メートル下まで沈むまで、地中熱ボアホール106内に注入される。このようにすることで、グラウト材136が地中熱ボアホール106からグラウト材136以外の水や他の物質を押し出し、その結果、地中熱ボアホール106内に連続したグラウト材による柱が形成される。地中熱ボアホール106へグラウチングを実行する際、
図1Eに示すように、地中熱ボアホール106にグラウト材が実質的に充填されるまで、トレミー管122の出口端をグラウト材136の中に沈めた状態を維持しながら、トレミー管122を地中熱ボアホールから引き上げる。グラウト材136が充填されると、
図1Fに例示するように、地中熱ボアホール106の開口部から突出した配管114のアーム部116の残部(余った長さ部分)が切断されて、地中熱ボアホール106が形成される地盤104の表面とほぼ同一平面に、熱交換器112に接続される開放始端(近位開放端)138が形成される。なお、配管114について、地中熱ボアホール106の深さに対応する長さで事前に切断するものとしてもよいし、グラウチング前に切断するものとしてもよい。
【0027】
ケーシングが使用される場合、ケーシングが地中熱ボアホールから引き抜かれる直前にグラウト材が注入される。これにより、注入されたグラウト材が柱状に形成される前や硬化する前にケーシングが地中熱ボアホールから引き抜かれるため、グラウト材がケーシング外側に崩れ落ちる。ケーシングの引き抜き工程において、地中熱ボアホールをグラウト材で充填させる。これにより、全てのケーシングを地中から回収すると同時に、ボアホールがグラウト材で完全に満たされる。
【0028】
地中熱交換器112が挿入された後に、地中熱ボアホール106がグラウチングされると(又は、地中熱交換器112が地中熱ボアホール106に固定されると)、地中熱交換器112の状態(破損の有無)及び地中熱交換器112の深さ位置について、場合によっては、地中熱交換器112周辺のグラウト材
136の品質についても、検査した方がよい。地中熱交換器112の深さ位置とグラウト材の品質を検査する際、地中熱交換器112に対して、建設サイト102の表面(地盤表面)104から最深部位(終端位置)まで確認する必要がある。圧力試験については、表面位置での確認と液状流体圧力の連続性が必要となるが、必ずしもループ(配管114)の底部まで
確認する必要がなく、内部シールやプラグ(栓)を地中熱交換機内のある程度の深さに配置できる。上述の検査は、本明細書で開示するように、当業者の実施可能な範囲によるものである。このようにして、地中熱ボアホール106に地中熱交換器112を固定した後、建設サイト102における地中熱ボアホール106周辺部分140(
図1I)の掘削前に、地中熱交換器112に対する通常の検査を実行できる。
【0029】
上記のように、地中熱交換器は、例えば、エルボ継手118または外側チューブ214の閉鎖端218といった閉鎖終端(遠位閉鎖端)を有する。また、地中熱交換器は、地中熱交換器が設置後にボアホール106に固定された後に、例えば、エルボ継手118から遠位となる配管114、114A、114Bの端部、又は閉鎖終端(遠位閉鎖端)端から遠位となる外側チューブ214の端部といった、開放始端(近位開放端)138が形成される。開放始端(近位開放端)138は、建設サイト102の地盤104表面近くに位置している。地中熱交換器112は、閉鎖終端(遠位閉鎖端)118と開放始端(近位開放端)138との間に少なくとも1本の流体流路(例えば、配管114、114A、114B、214、216によって設けられる流路)を備える。
【0030】
設置工程(
図1B又は
図1Ba)、グラウチング工程(
図1C~
図1E)、及び検査工程に続いて、例えば、プラグ(栓)といった内部シール材を、開放始端(近位開放端)138から地中熱交換器112内における1つ以上となる計画的地盤内深さ位置に配置し、掘削破片のチューブ内への進入を防止する。ここで、上記「計画的地盤内深さ位置」は、建設サイト102における少なくとも地中熱ボアホール106周辺部分140において建設のための掘削がなされないと予想される深さ位置を示す。後述するように、予防策として、シール材が設置される複数の計画的地盤内深さ位置を設けるものとしてもよい。計画的地盤内深さ位置を任意に追加することで、建設工程における緊急事態や建設機械の操作によるエラーなどにより予想以上の深さまで掘削する必要がある場合にも対応可能となる。計画的地盤内深さのうち最も深い位置にのみシール材を配置させた場合、地中熱交換機内のシール上部に掘削破片が進入する恐れが高くなる。
【0031】
図1Fに示すように、地中熱ボアホール106への地中熱交換器112の固定後、建設サイト102における地中熱ボアホール106周辺部分140(
図1I参照)の掘削前に、地中熱交換器112が一時的に密閉されることとなる。ここで、上記「建設サイトにおける地中熱ボアホール周辺部分」は、地中熱ボアホール106の外周から放射状に測定して、5メートル以内の領域、好ましくは3メートル以内の領域、より好ましくは1メートル以内の領域(建設サイトの部分)を示す。建設サイト102の他の部分、すなわち、建設サイト102における地中熱ボアホール106周辺部分140以外の部分の掘削については、地中熱交換器112を一時的に密閉する前に実行してもよい。地中熱交換器112を一時的に密閉させる前に、例えば、地中熱ボアホール106の形成、地中熱交換器112の設置、及び地中熱交換器112のグラウチングなどの作業を進行させながら、建設サイト102の他の部分で建設作業を実行するものとしてもよい。
【0032】
引き続き、
図1Fに示すように、地中熱交換器112は、開放始端(近位開放端)138を通して、例えば配管114(又は、114A、114B、214、216)といった各流路に対して少なくとも1つの内部シール材が設置されることで、閉鎖終端(遠位閉鎖端)118(又は
、218)と開放始端(近位開放端)138との間が一時的に密閉される。内部シール材は、形状に限定されるものではなく、特定タイプの地中熱交換器に最適な形状を有するものであってもよい。以下の例示に限定されるものではないが、例えば、内部シール材として、後述するように、
図1Fの主要部分に図示した、圧縮発泡体ボール栓142を採用してもよいし、
図1Fの右下拡大図に示した、1つ以上の圧縮発泡体シリンダー栓142Aを採用してもよいし、
図1Fの右上拡大図に示した、ゲルプラグ142Bを採用してもよい。また、シール材(例えば、ボール栓142)は、複数の計画的地盤内深さ位置144A、144B、144Cそれぞれの下方位置に配置される。
【0033】
上述したように、本発明の実施形態において、複数の計画的地盤内深さ位置を設け、各計画的地盤内深さ位置にシール材が配置されるものとしてもよい。例えば、地表104から深さ10メートルの位置より下方に掘削されない予定として設定され、この深さ10メートル位置に第1の計画的地盤内深さ位置144Aを設けるだけでなく、深さ10.5メートル位置となる第2の計画的地盤内深さ位置144Bと深さ11メートル位置となる第3の計画的地盤内深さ位置144Cも設けるものとしてもよい。なお、第1~第3の計画的地盤内深さ位置144A~144Cの深さ位置については単に例示するものであり、上記深さ位置に限定するものではない。ボール栓142で例示されるシール材は、第1の計画的地盤内深さ位置144Aと第2の計画的地盤内深さ位置144Bとの間、第2の計画的地盤内深さ位置144Bと第3の計画的地盤内深さ位置144Cとの間、及び第3の計画的地盤内深さ位置144C下方のそれぞれに配置される。したがって、第1~第3の計画的地盤内深さ位置144A~144Cそれぞれの下方に、ボール栓142で例示されるシール材が配置されている。なお、計画的地盤内深さ位置とそれに対応するシール材の数については、任意に所望されるものであっても良い。
【0034】
また、
図1Fに示すように、圧縮発泡体ボール栓142は、深さ目盛り148を有する棒146により配管114内部に沿って押し込まれることで、所望の計画的地盤内深さ位置144A~144C下方に配置されるものとしてもよい。
【0035】
上述したように、本発明の実施形態において、1つ以上のシール材として、圧縮発泡体シリンダー栓142Aを備えるものとしてもよい。圧縮発泡体シリンダー栓142Aは、ボール型シール材(例えば、ボール栓142)と同様、棒146により所定の位置に押し込んで配置するものとしてもよい。また、圧縮発泡体シリンダー栓142Aは、気体不透過性の隔膜に圧縮又は真空密封により充填されて、配管114内部に容易に設置できる圧縮型パケット(包体)を形成するものであってもよい。このパケット(包体)は、配管114内部の所望の深さまで押し込まれた後、隔膜を破裂させてシリンダー栓142Aを配管114内壁に対して拡張させる。
【0036】
上述したように、本発明の実施形態において、1つ以上のシール材として、ゲルプラグ142Bを備えるものとしてもよい。ゲルプラグ142Bは、吸水性糸が充填密封された水溶性チューブで構成されてもよい。当該水溶性チューブは、紐(ストリングライン)により希望深さまで降ろして所定位置で吊り下げることができる。水溶性チューブは、水溶性チューブ自身が溶解するまで所定位置に滞在し、水溶性チューブが溶解すると、水が吸水性糸に到達する。この吸水性糸が配管114内壁に対して拡張することで、所望のタイミングでゲルプラグが設けられる。
【0037】
図1Gを参照して以下に説明する。地中熱交換器112を密閉した後、地中熱交換器112は、最上部位置のシール材142上方で切断される。最上部位置のシール材142が、必然的に最下部位置のシール材142の上側に位置するので、地中熱交換器112を最上部位置のシール材142上方で切断すると、地中熱交換器112は、必然的に最下部位置のシール材の上方で切断されることは明らかである。図示された実施形態では、配管114の各アーム部116が、第1の計画的地盤内深さ位置144A下方に配置されたボール型シール材(例えばボール栓142)上で切断されることとなる。地中熱交換器112の切断は、適切な技術を選択的に使用して実行されるものであればよい。好ましくは、
図1Gで示すように、開放始端(近位開放端)138から地中熱交換器112内部に挿入されて内側より地中熱交換器112(本例では、配管114のアーム部116)を切断する専用の配管切断器具300により、地中熱交換器112が切断されるものとしてもよい。
図1Gにおける拡大図で例示する配管切断器具300は、本体302と格納式切断アーム304とを備え、所望深さまで進めるように深さ目盛り付きの棒146の端部へ取り付け可能に構成されている。図示した配管切断器具300について、以下で詳細に説明する。
【0038】
図1Hに示すように、地中熱交換器112が切断されると、2つのシール材上側切断部150が地中熱交換器112に設けられる。シール材上側切断部150は、配管114の各アーム部116に1つずつ設けられる。(同軸型の地中熱交換器の場合は、単一の切断部分のみとなり、複数Uループ型の地中熱交換器の場合は、切断部分は3つ以上となる。)切断部分150は、最上部位置のシール材よりも上方にあることから、「シール材上側」と呼ぶものとし、図示の実施形態では、この切断部分は、第1の計画的地盤内深さ位置144Aの直下に位置するボール型シール材(例えば、ボール栓142)の上方に位置する。次に、地中熱交換器112の切断部分150は、例えば、機械又は手動で引き上げることで、地中熱ボアホール106から取り外し、地中熱交換器112の切断位置上側はグラウト材136のみを残した構成とする。したがって、
図1H及び
図1Iで図示された実施形態では、建設サイト102における地中熱ボアホール106周辺部分140の掘削作業前に、地中熱交換器112の切断作業と、地中熱交換器112の各シール材上側切断部150の除去作業とが実行される。
【0039】
図1Iに示すように、地中熱交換器112を最上部位置のシール材よりも上側で切断して、地中熱交換器112のシール材上側切断部150を除去した後、建設サイト102における地中熱ボアホール106周辺部分140に対する掘削作業を実行する。掘削作業前に、地中熱交換器112を切断してシール材上側切断部150を除去することにより、地中熱交換器の配管作業と干渉することなく建設作業を進めることができる。例えば、第2又は第3の計画的地盤内深さ位置144B、144Cまで掘削する必要が生じた場合、計画的地盤内深さ位置144B、144Cそれぞれの下方にあるボール栓142(または他のシール材)上側で、地中熱交換器の切断作業を繰り返し実行できる。
【0040】
また、本発明の実施形態において、建設サイト102における地中熱ボアホール106周辺部分140に対する掘削作業中に、地中熱交換器112を切断し、地中熱交換器112の各シール材上側切断部150を除去するものとしてもよい。より具体的には、地中熱交換器112を構成する材料に応じて、シール材の上側部分(すなわち、シール材上側切断部150)の切断作業と除去作業とを、例えば、建設機器、掘削機、ブルドーザー、バックホーなどの設備による掘削作業によって実行したほうが、作業効率や費用効率が向上する場合がある。このように、建設サイト102における地中熱ボアホール106周辺部分140の掘削作業中に、掘削機152によって切断作業を付随的に実行されるものとしてもよい。当該切断作業については、
図1Iaに図示している。当該切断作業は、例えば、第1の計画的地盤内深さ位置144Aより下方の第2又は第3の計画的地盤内深さ位置144B、144Cまで掘削する必要がある場合、地中熱交換器が最下方位置となる計画的地盤内深さ位置よりも下方で切断されない限り、掘削作業を継続するものとしてもよい(すなわち、掘削作業は、地中熱交換器112の最下方位置に位置するシール材142の上方位置まで続けられる)。
【0041】
図1J及び
図1Kに示すように、掘削作業前にシール材上側切断部150を除去する場合、又は、掘削作業中にシール材上側切断部150を除去する場合のいずれにおいても、建設サイト102における地中熱ボアホール106周辺部分140の掘削を完了した後に、シール材(例えば、ボール栓142など)を除去するものとしてもよい。図中に示すように、好ましい実施形態として、地中熱ボアホール106に地中熱交換器112を固定した際に地中熱交換器112に導入した作動流体115は、地中熱交換器112の一時的な密閉作業、地中熱交換器112の切断作業、建設サイト102における地中熱ボアホール106周辺部分140の掘削作業などを進めている間も、地中熱交換器112内に残留させている。
図1Kの矢印154で示すように、加圧流体を地中熱交換器112の一方のアーム部116における一方の開放端138に供給することで、シール材(例えば、ボール栓142)を除去できる。すなわち、熱交換器112の一方のアーム部116から供給される加圧流体により、熱交換器112の他方のアーム部116の開放端138からボールプラグ142(または他のシール材)を押し出すこととなる。このようにして、シール材(例えば、ボール栓142)を取り外せるため、
図1L及び
図1Mに示すように、例えば多層式駐車場162に設けた機械室160内のHVACシステム158に
おける供給/戻り配管156を地中熱交換器112に接続できる。これにより、矢印166で図示するように、地中熱交換器を流れる流体(例えば、エタノールまたはプロピレングリコールなどの腐食防止剤と不凍液を含む水)が、HVACシステムから地中熱交換器112を循環できる。
【0042】
図3A~
図3Kを参照して、配管切断器具300の構成例を示し、その詳細について以下に説明する。上述したように、図示した配管切断器具300は、本体302と切断アーム304とを備える。本体302は、軸方向に延びる外側ガイド面306を有している。そして、当該外側ガイド面306は、配管308(
図3C~
図3E参照)の内周面に沿って本体302を案内することで、管軸PA(
図3A~
図3B参照)に沿う軸方向に本体302を移動させる。管軸PAは、配管308が伸びる長手方向に対応している。本実施形態では、本体302が、テーパー状の端部を備えた実質的に円筒形状により構成されるものとしているが、他の形状としても構わない。例えば、上記ガイド面に配管の内周面に当接(係止)するように設けられたベアリングを有するものとしてもよい。
【0043】
本体302の軸方向における一方の端部には、深さ目盛り付きの棒146といった駆動ロッドが螺合されるように螺設された駆動ロッド用凹部310(
図3D及び
図3E参照)が軸方向に延びるように設けられている。
【0044】
切断アーム304を受け入れるためアーム用凹部312が、本体302のガイド面306に形成されており、アーム用凹部312には停止面314が設けられる。切断アーム304は、枢軸端316と、枢軸端316の反対側にある切刃端318とを備えるとともに、枢軸端316と切刃端318とをつなぐように延在する背側辺縁320と切刃側辺縁322とを備える。通常、背側辺縁320と切刃側辺縁322とは互いに対向配置されている。枢軸端316がカム面324を有するとともに、切刃端318が切刃側辺縁322に沿って配置された切刃ヘッド326を有する。切刃ヘッド326は、切刃側辺縁322と同一面にある切刃328を備える。切刃ヘッド326は、切刃を交換可能とするものとしてもよいし、切刃と一体に構成されて切刃ヘッド326自体が交換可能であるものとしてもよい。また、切刃328が鈍くなった場合に、切断アーム304自体を交換するものとしてもよい。
【0045】
切断アーム304は、アーム用凹部312内において枢軸端316により本体302に対して旋回可能に連結されている。すなわち、切断アーム304は、管軸PAと実質的に平行となる旋回軸Pを中心として、本体302に対して旋回可能に構成されている。切断アーム304の旋回軸Pが、本体302の中心軸Rから横方向(側方)にオフセットすることで、配管308内において、本体302の中心軸Rは、管軸PAに対して平行となり、その軸位置を管軸PAと概して一致させる。このように、切断アーム304の旋回軸Pが、管軸PAから横方向にオフセットしている。切断アーム304は、
図3A、
図3D、
図3F、
図3H及び
図3Jに示す格納位置と、
図3B、
図3C、
図3E、
図3G、
図3I及び
図3Kに示す延伸位置との間で旋回できる。格納位置では、切断アーム304がアーム凹部312内に格納され、切刃側辺縁322が停止面314に面した状態となる。このとき、切刃側辺縁322が停止面314に当接(係止)するものとしてもよい。延伸位置では、切断アーム304の切刃端318はガイド面306よりも外側まで伸びる。これにより、切刃ヘッド326及び切刃328が露出するとともに、枢軸端316上のカム面324が停止面314と当接(係止)する。カム面324が停止面314と当接することで、その切断辺縁側の切刃ヘッド326に加えられる力(すなわち、ブレード328に加えられる圧力)に対して、切断アーム304を支持させることができる。
【0046】
図示の実施形態において、
図3D及び
図3Eに示すように、切断アーム304の枢軸端316に設けた枢軸用穴332に枢軸ピン330を通すことで、切断アーム304が本体302に旋回可能に連結される。枢軸ピン330の端部334は、軸方向におけるアーム用凹部312に対する位置が駆動ロッド用凹部310と同じ側となる位置に設けられた枢軸ピン用凹部336に挿入される。枢軸ピン330の他端は、ブッシュ収容部340に挿入される。ブッシュ収容部340に収容されるブッシュ342(叉はニードルベアリングなどの軸受)が、軸方向におけるアーム凹部312に対する位置が駆動ロッド用凹部310と逆側となる位置に設けられたブッシュ収容部340に収容される。そして、枢軸ピン330の他端が、ブッシュ342により枢支される。ブッシュ342は、軸方向におけるアーム凹部312に対する位置が駆動ロッド用凹部310と逆側となる位置の止めネジ用凹部346に螺合された止めネジ344によってブッシュ収容部340に保持される。より詳細には、止めネジ344によって、ブッシュ342がブッシュショルダー(段差部)348に当接するようにして固定される。
【0047】
付勢部材が本体302と切断アーム304との間で付勢力を作用させることで、切断アーム304が延伸位置への回転を促す。図示された実施形態において、付勢部材をコイルバネ350としている。コイルバネ350は、枢軸ピン330を取り囲むように設置されている。そして、コイルバネ350一端のアーム部が本体302に係止される一方で、コイルバネ350の他端のアーム部が切断アーム304に係止される。
【0048】
配管切断器具300を使用する際、切断アーム304が格納位置に配置された状態で、配管切断器具300が配管308内に挿入される。コイルバネ348の弾性力が働いているにもかかわらず、配管切断器具300が回転することなく配管308に沿って軸方向に移動している限り、実質上、配管308の内壁により切断アーム304が格納位置に位置し続ける。すなわち、切断アーム304の後端320が配管308の内面350に当接(係止)している。そのため、切断アーム304が格納位置からわずかに外れた位置にずれたとしても、切断アーム304は延伸位置に完全に移動することがないので、切刃328を有する切刃ヘッド326の切刃側辺縁が外側ガイド面より露出することがない。また、配管308に沿って配管切断器具300を移動させる際、切断アーム304が格納位置から延伸位置へ旋回する回転方向と同じ方向に本体302を回転させることで、切断アーム304の延伸位置への旋回を防げる。
【0049】
配管切断器具300が配管308内の所望の位置まで移動すると、
図3E及び
図3Fにおける矢印352で示すように、切断アーム304が格納位置から延伸位置へ旋回する方向とは反対方向に本体302を回転させることにより、切断アーム304を延伸位置に移動させることができる。旋回軸Pは本体302の中心回転軸Rから横方向にオフセットしているため、この本体302の回転動作により、コイルバネ348による付勢が働くことで切断アーム304が延伸位置へ回転し、切刃ヘッド326及び切刃328が外側ガイド面より露出する。この切断アーム304の回転は、
図3Gの矢印354で示している。
図3C及び
図3Eに示すように、切断アーム304が延伸位置に到達し、カム面324と停止面314との当接(係止)により切断アーム304が支持されると、本体302の回転を続けることで、切刃328が配管308を切断する。切刃328が配管308を完全に一周するまで本体302の回転を継続することで、配管308が切断される。次に、延伸した切断アーム304はフックとして機能し、切断された配管308の上部(シール材上側切断部150)を引き上げて下部の配管308から離間させる。
【0050】
図示した実施形態を一例として説明したが、本願の特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。