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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】レベチラセタム含有製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4015 20060101AFI20240501BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20240501BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240501BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20240501BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20240501BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20240501BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20240501BHJP
   A61P 25/08 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
A61K31/4015
A61K47/38
A61K47/26
A61K47/18
A61K47/04
A61K9/14
A61K9/16
A61P25/08
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020027974
(22)【出願日】2020-02-21
(65)【公開番号】P2021130643
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2023-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】592073695
【氏名又は名称】日医工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 大介
【審査官】榎本 佳予子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-177657(JP,A)
【文献】特開2012-116811(JP,A)
【文献】国際公開第2012/074042(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61K 9/00-9/72
A61K 47/00-47/69
A61P 1/00-43/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レベチラセタム及びヒドロキシプロピルセルロースを含み、顆粒剤又は散剤から選択される医薬製剤。
【請求項2】
1.0~3.0質量%のヒドロキシプロピルセルロースを含む、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項3】
さらに賦形剤を含む、請求項1又は2に記載の医薬製剤。
【請求項4】
賦形剤が糖又は糖アルコールである、請求項3に記載の医薬製剤。
【請求項5】
賦形剤がD-マンニトールである、請求項4に記載の医薬製剤。
【請求項6】
さらに矯味剤を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項7】
矯味剤がアスパルテームである、請求項6に記載の医薬製剤。
【請求項8】
さらに流動化剤を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項9】
流動化剤が軽質無水ケイ酸である、請求項8に記載の医薬製剤。
【請求項10】
さらに香料を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項11】
40~60質量%のレベチラセタム、1.0~3.0質量%のヒドロキシプロピルセルロース、30~60質量%のD-マンニトール、2.0~4.0質量%のアスパルテーム、及び0.2~1.0質量%の軽質無水ケイ酸を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項12】
250質量部のレベチラセタム、10質量部のヒドロキシプロピルセルロース、220~230質量部のD-マンニトール、15質量部のアスパルテーム、2.5質量部の軽質無水ケイ酸、及び微量の香料を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項13】
ドライシロップ剤である、請求項1~12のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項14】
(a)所定量のレベチラセタム原薬、賦形剤及び矯味剤を攪拌造粒機に入れ、ヒドロキシプロピルセルロースを適当な溶媒に溶解させたヒドロキシプロピルセルロース溶液の所定量を加えながら造粒する工程、
(b)工程(a)にて造粒された造粒品を整粒機にて解砕する工程、
(c)工程(b)にて解砕された顆粒を乾燥させた後、流動層造粒機を使用して水を噴霧しながら再造粒する工程、及び
(d)工程(c)にて再造粒した顆粒を、適度な目開きの篩で整粒した後、整粒品に対して所定量の流動化剤を添加して混合する工程
を含む、レベチラセタム含有製剤の製造方法。
【請求項15】
レベチラセタム含有製剤の結合剤としてヒドロキシプロピルセルロースを使用することを含む、レベチラセタム含有製剤の加湿条件下での保管中又は保管後における凝集又はブロッキングを低減又は抑制するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レベチラセタムを含有する医薬製剤及びその製造方法、並びにレベチラセタム含有製剤の加湿条件下での保管中又は保管後における凝集又はブロッキングの低減又は抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レベチラセタム(化学名:(2S)-2-(2-オキソピロリジン-1-イル)ブチルアミド)は、以下の式:
【0003】
【化1】
で示される構造を有する化合物であり、抗てんかん剤として世界中で広く使用されている。本邦においては、「イーケプラ(登録商標)」の商品名にて錠剤及びドライシロップ剤の剤形にて販売されており、てんかん患者の部分発作(二次性全般化発作を含む)の治療薬として、及び他の抗てんかん薬で十分な効果が認められないてんかん患者の強直間代発作に対する抗てんかん薬との併用療法において使用されている。
【0004】
固形製剤、特に、ドライシロップ剤に代表される顆粒剤又は散剤においては、その製造時及び製造後の保管時における流動性を担保することが肝要である。特に、ドライシロップ剤のような顆粒剤又は散剤を長期間保管した場合、環境中の水分を吸湿することにより、顆粒又は粉末同士の凝集が生じることがあり、その場合、用時調製時に適切に顆粒又は粉末を分配することが困難になる等といった問題が生じる。
【0005】
レベチラセタムは、常温で白色から淡灰白色の結晶性の粉末であり、極めて高い水溶性を示すことが知られている。そのため、レベチラセタム製剤、特に、ドライシロップ剤に代表されるレベチラセタム顆粒剤又は散剤については、長期間にわたってその流動性を担保することが特に重要である。
【0006】
特開2010-024156号公報(特許文献1)では、賦形剤として平均粒子径が75~520μmの比較的大きな粒子のマンニトール(造粒済みマンニトール)を用いることによって、均一な顆粒粒子を得やすくし、結果的にドライシロップ剤の流動性を改善し得ることが報告されている。しかしながら、当該文献には、ドライシロップ剤の加湿条件下での保管中又は保管後における流動性を担保することは示されていない。
【0007】
一方、特開2018-177657号公報(特許文献2)では、レベチラセタム原薬の粒子径を大きくする(具体的には、賦形剤の粒子径(D50)に対するレベチラセタム原薬の粒子径(D50)の比率を2.0以上とする)ことによって、レベチラセタム含有医薬製剤の加湿後の凝集性を改善できることが報告されている。しかしながら、レベチラセタム原薬の大きすぎる粒子径は、含量均一性の観点からは不利になることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2010-024156号公報
【文献】特開2018-177657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、加湿条件下での保管中又は保管後における凝集又はブロッキングを低減又は抑制させたレベチラセタム含有医薬製剤、特に、レベチラセタム原薬粒子径を比較的大きくしなければならないという制約に縛られることなく、加湿条件下での保管中又は保管後における凝集又はブロッキングを低減又は抑制させたレベチラセタム含有医薬製剤及びその製造方法を提供することである。本発明が解決しようとするさらなる別の課題は、レベチラセタム含有製剤の加湿条件下での保管中又は保管後における凝集又はブロッキングの低減又は抑制方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、レベチラセタム含有製剤の結合剤として、市販のレベチラセタム製剤「イーケプラ(登録商標)ドライシロップ」、並びに特許文献1及び2のいずれの実施例製剤においても使用されてきたポリビニルピロリドンに代え、ヒドロキシプロピルセルロースを使用することにより、レベチラセタム含有製剤の加湿条件下での保管中又は保管後における凝集又はブロッキングが低減又は抑制されることを見いだし、本発明を完成させたものである。
【0011】
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
[1] レベチラセタム及びヒドロキシプロピルセルロースを含み、顆粒剤又は散剤から選択される医薬製剤。
[2] 1.0~3.0質量%のヒドロキシプロピルセルロースを含む、[1]に記載の医薬製剤。
[3] さらに賦形剤を含む、[1]又は[2]に記載の医薬製剤。
[4] 賦形剤が糖又は糖アルコールである、[3]に記載の医薬製剤。
[5] 賦形剤がD-マンニトールである、[4]に記載の医薬製剤。
[6] さらに矯味剤を含む、[1]~[5]のいずれか1つに記載の医薬製剤。
[7] 矯味剤がアスパルテームである、[6]に記載の医薬製剤。
[8] さらに流動化剤を含む、[1]~[7]のいずれか1つに記載の医薬製剤。
[9] 流動化剤が軽質無水ケイ酸である、[8]に記載の医薬製剤。
[10] さらに香料を含む、[1]~[9]のいずれか1つに記載の医薬製剤。
[11] 40~60質量%のレベチラセタム、1.0~3.0質量%のヒドロキシプロピルセルロース、30~60質量%のD-マンニトール、2.0~4.0質量%のアスパルテーム、及び0.2~1.0質量%の軽質無水ケイ酸を含む、[1]~[10]のいずれか1つに記載の医薬製剤。
[12] 250質量部のレベチラセタム、10質量部のヒドロキシプロピルセルロース、220~230質量部のD-マンニトール、15質量部のアスパルテーム、2.5質量部の軽質無水ケイ酸、及び微量の香料を含む、[1]~[11]のいずれか1つに記載の医薬製剤。
[13] ドライシロップ剤である、[1]~[12]のいずれか1つに記載の医薬製剤。
[14] (a)所定量のレベチラセタム原薬、賦形剤及び矯味剤を攪拌造粒機に入れ、ヒドロキシプロピルセルロースを適当な溶媒に溶解させたヒドロキシプロピルセルロース溶液の所定量を加えながら造粒する工程、
(b)工程(a)にて造粒された造粒品を整粒機にて解砕する工程、
(c)工程(b)にて解砕された顆粒を乾燥させた後、流動層造粒機を使用して水を噴霧しながら再造粒する工程、及び
(d)工程(c)にて再造粒した顆粒を、適度な目開きの篩で整粒した後、整粒品に対して所定量の流動化剤を添加して混合する工程
を含む、レベチラセタム含有製剤の製造方法。
[15] レベチラセタム含有製剤の結合剤としてヒドロキシプロピルセルロースを使用することを含む、レベチラセタム含有製剤の加湿条件下での保管中又は保管後における凝集又はブロッキングを低減又は抑制するための方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、加湿条件下での保管中又は保管後における凝集又はブロッキングを低減又は抑制させたレベチラセタム含有医薬製剤、特に、レベチラセタム原薬粒子径を比較的大きくしなければならないという制約に縛られることなく、加湿条件下での保管中又は保管後における凝集又はブロッキングを低減又は抑制させたレベチラセタム含有医薬製剤及びその製造方法を提供することが可能となる。さらに、本発明によれば、レベチラセタム含有製剤の加湿条件下での保管中又は保管後における凝集又はブロッキングの低減又は抑制方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
一態様において、本発明は、レベチラセタム及びヒドロキシプロピルセルロースを含む医薬製剤に関する。
【0014】
<レベチラセタム>
レベチラセタム(化学名:(2S)-2-(2-オキソピロリジン-1-イル)ブチルアミド)は、以下の式:
【0015】
【化2】
で示される構造を有する化合物である。本発明に係るレベチラセタムは、市販品を使用してもよく、又は公知の方法により製造されたものを使用してもよい。
【0016】
本発明のレベチラセタム含有医薬製剤におけるレベチラセタムの含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、レベチラセタム含有医薬製剤におけるレベチラセタムの含有量は、1質量%、2質量%、3質量%、4質量%、5質量%、6質量%、7質量%、8質量%、9質量%、10質量%、11質量%、12質量%、13質量%、14質量%、15質量%、16質量%、17質量%、18質量%、19質量%、20質量%、21質量%、22質量%、23質量%、24質量%、25質量%、26質量%、27質量%、28質量%、29質量%、30質量%、31質量%、32質量%、33質量%、34質量%、35質量%、36質量%、37質量%、38質量%、39質量%、40質量%、41質量%、42質量%、43質量%、44質量%、45質量%、46質量%、47質量%、48質量%、49質量%、50質量%、51質量%、52質量%、53質量%、54質量%、55質量%、56質量%、57質量%、58質量%、59質量%、60質量%、61質量%、62質量%、63質量%、64質量%、65質量%、66質量%、67質量%、68質量%、69質量%、70質量%、71質量%、72質量%、73質量%、74質量%、75質量%、76質量%、77質量%、78質量%、79質量%、80質量%、81質量%、82質量%、83質量%、84質量%、85質量%、86質量%、87質量%、88質量%、89質量%、90質量%、91質量%、92質量%、93質量%、94質量%、95質量%、96質量%、97質量%、98質量%又は99質量%である。レベチラセタム含有医薬製剤におけるレベチラセタムの含有量は、上記の質量%の数値のいずれかを下限値及び上限値とした数値範囲として規定することもできる。レベチラセタム含有医薬製剤におけるレベチラセタムの含有量は、好ましくは30質量%~70質量%、より好ましくは40質量%~60質量%、さらに好ましくは45質量%~55質量%、特に好ましくは47質量%~53質量%、さらに特に好ましくは48質量%~52質量%、最も好ましくは約50質量%である。
【0017】
<ヒドロキシプロピルセルロース>
ヒドロキシプロピルセルロースはセルロースの水酸基の一部をヒドロキシプロピルエーテル化したものであり、食品や医薬品の添加剤として広く利用されている。本発明に係るヒドロキシプロピルセルロースは、市販品を使用してもよく、又は公知の方法により製造されたものを使用してもよい。レベチラセタム含有医薬製剤におけるヒドロキシプロピルセルロースの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、レベチラセタム含有医薬製剤におけるヒドロキシプロピルセルロースの含有量は、0.1質量%、0.2質量%、0.3質量%、0.4質量%、0.5質量%、0.6質量%、0.7質量%、0.8質量%、0.9質量%、1.0質量%、1.1質量%、1.2質量%、1.3質量%、1.4質量%、1.5質量%、1.6質量%、1.7質量%、1.8質量%、1.9質量%、2.0質量%、2.1質量%、2.2質量%、2.3質量%、2.4質量%、2.5質量%、2.6質量%、2.7質量%、2.8質量%、2.9質量%、3.0質量%、3.1質量%、3.2質量%、3.3質量%、3.4質量%、3.5質量%、3.6質量%、3.7質量%、3.8質量%、3.9質量%、4.0質量%、4.1質量%、4.2質量%、4.3質量%、4.4質量%、4.5質量%、4.6質量%、4.7質量%、4.8質量%、4.9質量%又は5.0質量%である。レベチラセタム含有医薬製剤におけるヒドロキシプロピルセルロースの含有量は、上記の質量%の数値のいずれかを下限値及び上限値とした数値範囲として規定することもできる。レベチラセタム含有医薬製剤におけるヒドロキシプロピルセルロースの含有量は、好ましくは0.5質量%~4.0質量%、より好ましくは1.0質量%~3.0質量%、さらに好ましくは1.5質量%~2.5質量%、特に好ましくは1.8質量%~2.2質量%、さらに特に好ましくは1.9質量%~2.1質量%、最も好ましくは約2質量%である。
【0018】
ヒドロキシプロピルセルロースは、その基本単位の繰り返し数やヒドロキシプロピル基への置換度に応じて異なる物性を示すことがあるが、本発明においては、所期の効果を達成できる限り、あらゆる種類のヒドロキシプロピルセルロースを使用することができる。用時調製時における水への速やかな溶解性を確保する観点からは、本発明のヒドロキシプロピルセルロースの2%水溶液における20℃での粘度は、好ましくは20mPa・s未満、より好ましくは12mPa・s未満、特に好ましくは6mPa・s未満、最も好ましくは3mPa・s未満である。また、本発明のヒドロキシプロピルセルロースの2%水溶液における20℃での粘度は、好ましくは1.0~20mPa・s、より好ましくは1.2~12mPa・s、特に好ましくは1.5~6mPa・s、最も好ましくは1.8~3mPa・sである。本発明のヒドロキシプロピルセルロースの質量平均分子量(GPC法)は、好ましくは200,000未満、より好ましくは150,000未満、特に好ましくは110,000未満、最も好ましくは50,000未満である。また、本発明のヒドロキシプロピルセルロースの質量平均分子量は、好ましくは10,000~200,000、より好ましくは20,000~150,000、特に好ましくは30,000~110,000、最も好ましくは35,000~50,000である。
【0019】
<その他の添加剤>
本発明に係るレベチラセタム含有医薬製剤は、本発明の効果を損なわない限り、薬学的に許容されるその他の任意の添加剤を1種又は2種以上含んでいてもよい。その他の添加剤としては、日本薬局方、医薬品添加物規格及び日本薬局方外医薬品規格に収載されているような、製剤分野において通常使用される添加剤を目的に応じて適宜選択することができ、例えば、安定(化)剤、界面活性剤、改良剤、可塑剤、滑沢(化)剤、カプセル皮膜、可溶(化)剤、還元剤、緩衝剤、甘味剤、基剤、揮散補助剤、吸収促進剤、吸着剤、矯味剤、共力剤、結合剤、懸濁(化)剤、硬化剤、抗酸化剤、光沢化剤、効力増強剤、コーティング剤、剤皮、支持体、持続化剤、湿潤剤、湿潤調整剤、充填剤、消泡剤、清涼(化)剤、摂食促進剤、接着剤、増強剤、咀嚼剤、帯電防止剤、着香剤・香料、着色剤、糖衣剤、等張化剤、軟化剤、乳化剤、燃焼剤、粘着剤、粘着増強剤、粘稠(化)剤、炎症抑制剤、発熱剤、発泡剤、pH調整剤、pH調節剤、皮膚保護剤、賦形剤、浮遊剤、分散剤、噴射剤、崩壊剤、崩壊補助剤、芳香剤、防錆剤、防湿剤、放出制御膜、防腐剤、捕捉剤、保存剤、無痛化剤、誘引剤、溶解剤、溶解補助剤、溶剤、ライナー、離形剤、流動化剤等を挙げることができるが、これらに限定されない。本発明に係るその他の添加剤は、市販品を使用してもよく、又は公知の方法により製造されたものを使用してもよい。
【0020】
一態様において、本発明に係るレベチラセタム含有医薬製剤は、1種又は2種以上の賦形剤を含有する。前記賦形剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、
・糖及び糖アルコール(無水物又は水和物であってもよい乳糖、砂糖、白糖(ショ糖)、粉糖、ブドウ糖、トレハロース、デキストラン、デキストリン、マンニトール(特に、D-マンニトール)、キシリトール、ソルビトール、エリスリトール等)、
・デンプン及びデンプン誘導体(トウモロコシデンプン(コーンスターチ)、バレイショデンプン、αデンプン、カルボキシメチルデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、部分アルファ化デンプン、ヒドロキシプロピルスターチ等)、
・セルロース及びセルロース誘導体(結晶セルロース、エチルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、内部架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム等)、
・無機塩類(軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、合成ヒドロタルサイト、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、リン酸カルシウム、無水リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、リン酸水素カルシウム水和物、炭酸水素ナトリウム等)、
・その他、アラビアゴム、プルラン、精製ゼラチン、ヒドロキシプロピルスターチ、ポリビニルピロリドン、グリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0021】
本発明に係る好ましい賦形剤は、糖及び糖アルコールであり、特に好ましい賦形剤はD-マンニトールである。レベチラセタム含有医薬製剤における賦形剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、レベチラセタム含有医薬製剤における賦形剤の含有量は、1質量%、2質量%、3質量%、4質量%、5質量%、6質量%、7質量%、8質量%、9質量%、10質量%、11質量%、12質量%、13質量%、14質量%、15質量%、16質量%、17質量%、18質量%、19質量%、20質量%、21質量%、22質量%、23質量%、24質量%、25質量%、26質量%、27質量%、28質量%、29質量%、30質量%、31質量%、32質量%、33質量%、34質量%、35質量%、36質量%、37質量%、38質量%、39質量%、40質量%、41質量%、42質量%、43質量%、44質量%、45質量%、46質量%、47質量%、48質量%、49質量%、50質量%、51質量%、52質量%、53質量%、54質量%、55質量%、56質量%、57質量%、58質量%、59質量%、60質量%、61質量%、62質量%、63質量%、64質量%、65質量%、66質量%、67質量%、68質量%、69質量%、70質量%、71質量%、72質量%、73質量%、74質量%、75質量%、76質量%、77質量%、78質量%、79質量%、80質量%、81質量%、82質量%、83質量%、84質量%、85質量%、86質量%、87質量%、88質量%、89質量%、90質量%、91質量%、92質量%、93質量%、94質量%、95質量%、96質量%、97質量%、98質量%又は99質量%である。レベチラセタム含有医薬製剤における賦形剤の含有量は、上記の質量%の数値のいずれかを下限値及び上限値とした数値範囲として規定することもできる。レベチラセタム含有医薬製剤における賦形剤の含有量は、好ましくは20質量%~70質量%、より好ましくは30質量%~60質量%、さらに好ましくは40質量%~50質量%、特に好ましくは43質量%~47質量%、さらに特に好ましくは44質量%~46質量%、最も好ましくは約45質量%である。
【0022】
一態様において、本発明に係るレベチラセタム含有医薬製剤は、1種又は2種以上の矯味剤を含有する。前記矯味剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、白糖(ショ糖)、スクラロース、糖アルコール(マンニトール、ソルビトール等)、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、サッカリンナトリウム、ソーマチン、クエン酸、アスコルビン酸などが挙げられる。本発明に係る好ましい矯味剤は、アスパルテームである。レベチラセタム含有医薬製剤における矯味剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、0.1質量%、0.2質量%、0.3質量%、0.4質量%、0.5質量%、0.6質量%、0.7質量%、0.8質量%、0.9質量%、1.0質量%、1.1質量%、1.2質量%、1.3質量%、1.4質量%、1.5質量%、1.6質量%、1.7質量%、1.8質量%、1.9質量%、2.0質量%、2.1質量%、2.2質量%、2.3質量%、2.4質量%、2.5質量%、2.6質量%、2.7質量%、2.8質量%、2.9質量%、3.0質量%、3.1質量%、3.2質量%、3.3質量%、3.4質量%、3.5質量%、3.6質量%、3.7質量%、3.8質量%、3.9質量%、4.0質量%、4.1質量%、4.2質量%、4.3質量%、4.4質量%、4.5質量%、4.6質量%、4.7質量%、4.8質量%、4.9質量%又は5.0質量%である。レベチラセタム含有医薬製剤における矯味剤の含有量は、上記の質量%の数値のいずれかを下限値及び上限値とした数値範囲として規定することもできる。レベチラセタム含有医薬製剤における矯味剤の含有量は、好ましくは1.0質量%~5.0質量%、より好ましくは2.0質量%~4.0質量%、さらに好ましくは2.5質量%~3.5質量%、特に好ましくは2.7質量%~3.3質量%、さらに特に好ましくは2.9質量%~3.1質量%、最も好ましくは約3質量%である。
【0023】
一態様において、本発明に係るレベチラセタム含有医薬製剤は、1種又は2種以上の流動化剤を含有する。前記流動化剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、軽質無水ケイ酸、ケイ酸カルシウム、タルク、含水二酸化ケイ素、酸化チタン、水酸化アルミナマグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムなどが挙げられる。本発明に係る好ましい流動化剤は、軽質無水ケイ酸、ケイ酸カルシウム、タルク及び含水二酸化ケイ素であり、特に好ましい流動化剤は軽質無水ケイ酸である。レベチラセタム含有医薬製剤における流動化剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、0.1質量%、0.2質量%、0.3質量%、0.4質量%、0.5質量%、0.6質量%、0.7質量%、0.8質量%、0.9質量%、1.0質量%、1.1質量%、1.2質量%、1.3質量%、1.4質量%、1.5質量%、1.6質量%、1.7質量%、1.8質量%、1.9質量%又は2.0質量%である。レベチラセタム含有医薬製剤における流動化剤の含有量は、上記の質量%の数値のいずれかを下限値及び上限値とした数値範囲として規定することもできる。レベチラセタム含有医薬製剤における流動化剤の含有量は、好ましくは0.1質量%~2.0質量%、より好ましくは0.2質量%~1.0質量%、さらに好ましくは0.3質量%~0.8質量%、特に好ましくは0.4質量%~0.6質量%、最も好ましくは約0.5質量%である。
【0024】
一態様において、本発明に係るレベチラセタム含有医薬製剤は、1種又は2種以上の香料を含有する。前記香料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、柑橘系香料、レモン、レモンパウダー、レモン油、レモンライム、オレンジ、オレンジエッセンス、オレンジ油、スペアミント油、ペパーミントエッセンス、ミントフレーバー、メントール、カンフル、ケイヒ油、トウヒ油、パインオイル、ハッカ油、ミックスフレーバーローズ油、乳製品系香料、バニリン、バニラフレーバー、コーヒー香料、チョコレートエッセンス、ヨーグルトミクロン、茶系香料、チェリーフレーバー、フルーツフレーバー、カラメル、ストロベリーエッセンス、ストロベリーミクロン、りんご系香料、トロピカルフルーツ系香料、チェリー香料、ビターエッセンスなどが挙げられる。本発明に係る好ましい香料は、ストロベリーミクロン及びヨーグルトミクロンである。レベチラセタム含有医薬製剤における香料の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、好ましくは、微量である。例えば、レベチラセタム含有医薬製剤における香料の含有量は、0.01質量%、0.02質量%、0.03質量%、0.04質量%、0.05質量%、0.06質量%、0.07質量%、0.08質量%、0.09質量%、0.10質量%、0.11質量%、0.12質量%、0.13質量%、0.14質量%、0.15質量%、0.16質量%、0.17質量%、0.18質量%、0.19質量%又は0.20質量%である。レベチラセタム含有医薬製剤における香料の含有量は、上記の質量%の数値のいずれかを下限値及び上限値とした数値範囲として規定することもできる。
【0025】
本発明の一態様において、本発明に係るレベチラセタム含有医薬製剤は、30~70質量%のレベチラセタム、0.5~4.0質量%のヒドロキシプロピルセルロース、20~70質量%の賦形剤、1.0~5.0質量%の矯味剤、及び0.1~2.0質量%の流動化剤を含み、好ましくは、40~60質量%のレベチラセタム、1.0~3.0質量%のヒドロキシプロピルセルロース、30~60質量%の賦形剤、2.0~4.0質量%の矯味剤、及び0.2~1.0質量%の流動化剤を含み、より好ましくは、45~55質量%のレベチラセタム、1.5~2.5質量%のヒドロキシプロピルセルロース、40~50質量%の賦形剤、2.5~3.5質量%の矯味剤、及び0.3~0.8質量%の流動化剤を含み、さらに好ましくは、47~53質量%のレベチラセタム、1.8~2.2質量%のヒドロキシプロピルセルロース、43~47質量%の賦形剤、2.7~3.3質量%の矯味剤、及び0.4~0.6質量%の流動化剤を含み、特に好ましくは、48~52質量%のレベチラセタム、1.9~2.1質量%のヒドロキシプロピルセルロース、44~46質量%の賦形剤、2.9~3.1質量%の矯味剤、及び0.4~0.6質量%の流動化剤を含み、最も好ましくは、約50質量%のレベチラセタム、約2質量%のヒドロキシプロピルセルロース、約45質量%の賦形剤、約3質量%の矯味剤、及び約0.5質量%の流動化剤を含む。本発明の一態様において、上記の本発明に係るレベチラセタム含有医薬製剤は、それぞれ微量の香料を含んでいてもよい。
【0026】
本発明のさらなる一態様において、本発明に係るレベチラセタム含有医薬製剤は、30~70質量%のレベチラセタム、0.5~4.0質量%のヒドロキシプロピルセルロース、20~70質量%のD-マンニトール、1.0~5.0質量%のアスパルテーム、及び0.1~2.0質量%の軽質無水ケイ酸を含み、好ましくは、40~60質量%のレベチラセタム、1.0~3.0質量%のヒドロキシプロピルセルロース、30~60質量%のD-マンニトール、2.0~4.0質量%のアスパルテーム、及び0.2~1.0質量%の軽質無水ケイ酸を含み、より好ましくは、45~55質量%のレベチラセタム、1.5~2.5質量%のヒドロキシプロピルセルロース、40~50質量%のD-マンニトール、2.5~3.5質量%のアスパルテーム、及び0.3~0.8質量%の軽質無水ケイ酸を含み、さらに好ましくは、47~53質量%のレベチラセタム、1.8~2.2質量%のヒドロキシプロピルセルロース、43~47質量%のD-マンニトール、2.7~3.3質量%のアスパルテーム、及び0.4~0.6質量%の軽質無水ケイ酸を含み、特に好ましくは、48~52質量%のレベチラセタム、1.9~2.1質量%のヒドロキシプロピルセルロース、44~46質量%のD-マンニトール、2.9~3.1質量%のアスパルテーム、及び0.4~0.6質量%の軽質無水ケイ酸を含み、最も好ましくは、約50質量%のレベチラセタム、約2質量%のヒドロキシプロピルセルロース、約45質量%のD-マンニトール、約3質量%のアスパルテーム、及び約0.5質量%の軽質無水ケイ酸を含む。本発明の一態様において、上記の本発明に係るレベチラセタム含有医薬製剤は、それぞれ微量の香料を含んでいてもよい。
【0027】
本発明の一態様において、本発明に係るレベチラセタム含有医薬製剤は、200~300質量部のレベチラセタム、8~12質量部のヒドロキシプロピルセルロース、180~270質量部の賦形剤、12~18質量部の矯味剤、及び2~3質量部の流動化剤を含み、好ましくは、225~275質量部のレベチラセタム、9~11質量部のヒドロキシプロピルセルロース、202~248質量部の賦形剤、13~17質量部の矯味剤、及び2.2~2.8質量部の流動化剤を含み、より好ましくは、237~263質量部のレベチラセタム、9.5~10.5質量部のヒドロキシプロピルセルロース、213~237質量部の賦形剤、14~16質量部の矯味剤、及び2.3~2.7質量部の流動化剤を含み、特に好ましくは、245~255質量部のレベチラセタム、9.8~10.2質量部のヒドロキシプロピルセルロース、220~230質量部の賦形剤、14~16質量部の矯味剤、及び2.4~2.6質量部の流動化剤を含み、最も好ましくは、250質量部のレベチラセタム、10質量部のヒドロキシプロピルセルロース、220~230質量部の賦形剤、15質量部の矯味剤、及び2.5質量部の流動化剤を含む。本発明の一態様において、上記の本発明に係るレベチラセタム含有医薬製剤は、それぞれ微量の香料を含んでいてもよい。
【0028】
本発明のさらなる一態様において、本発明に係るレベチラセタム含有医薬製剤は、200~300質量部のレベチラセタム、8~12質量部のヒドロキシプロピルセルロース、180~270質量部のD-マンニトール、12~18質量部のアスパルテーム、及び2~3質量部の軽質無水ケイ酸を含み、好ましくは、225~275質量部のレベチラセタム、9~11質量部のヒドロキシプロピルセルロース、202~248質量部のD-マンニトール、13~17質量部のアスパルテーム、及び2.2~2.8質量部の軽質無水ケイ酸を含み、より好ましくは、237~263質量部のレベチラセタム、9.5~10.5質量部のヒドロキシプロピルセルロース、213~237質量部のD-マンニトール、14~16質量部のアスパルテーム、及び2.3~2.7質量部の軽質無水ケイ酸を含み、特に好ましくは、245~255質量部のレベチラセタム、9.8~10.2質量部のヒドロキシプロピルセルロース、220~230質量部のD-マンニトール、14~16質量部のアスパルテーム、及び2.4~2.6質量部の軽質無水ケイ酸を含み、最も好ましくは、250質量部のレベチラセタム、10質量部のヒドロキシプロピルセルロース、220~230質量部のD-マンニトール、15質量部のアスパルテーム、及び2.5質量部の軽質無水ケイ酸を含む。本発明の一態様において、上記の本発明に係るレベチラセタム含有医薬製剤は、それぞれ微量の香料を含んでいてもよい。
【0029】
<製剤>
本発明に係るレベチラセタム含有製剤は、顆粒剤又は散剤から選択される。本発明において、「顆粒剤」は、経口投与する粒状に造粒した製剤を意味するものであり、「散剤」は、経口投与する粉末状の製剤を意味するものである。本発明において、顆粒剤のうち、第十七改正日本薬局方の<6.03>において記述されている製剤の粒度の試験法を行うとき、18号(850μm)ふるいを全量通過し、30号(500μm)ふるいに残留するものが全量の10%以下のものを特に「細粒剤」と呼ぶこともある。また、第十七改正日本薬局方に従い、微粒状に造粒したものであって、第十七改正日本薬局方の<6.03>において記述されている製剤の粒度の試験法を行うとき、18号(850μm)ふるいを全量通過し、30号(500μm)ふるいに残留するものが全量の5%以下のものを「散剤」と呼ぶこともある。
【0030】
本発明の一態様において、本発明に係るレベチラセタム含有製剤はドライシロップ剤である。本発明において、「ドライシロップ剤」は、水を加えるとシロップ剤となる顆粒状又は粉末状の製剤を意味するものである。ドライシロップ剤は、通例、用時溶解又は用時懸濁して用いられる。本発明に係る医薬製剤としては顆粒剤又は散剤であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、レベチラセタムが本邦においてドライシロップ剤の剤形にて市販されていることを考慮すれば、本発明に係るレベチラセタム含有医薬製剤は典型的にはドライシロップ剤である。しかしながら、本発明によりもたらされる効果が、ヒドロキシプロピルセルロースを使用することに伴う加湿条件下での保管中又は保管後における凝集又はブロッキングの低減又は抑制であることに鑑みれば、その性質上、ドライシロップ剤以外の顆粒剤又は散剤であっても、本発明による有利な効果を享受できることは明白である。
【0031】
本発明に係るレベチラセタム含有製剤のうち、直接治療の用に供されるものを特にレベチラセタム含有医薬製剤と呼ぶこともあるが、特段の言及がない限り、本明細書において、レベチラセタム含有製剤とレベチラセタム含有医薬製剤は交換可能に用いられる。レベチラセタム含有製剤は、製剤からの有効成分の放出性を特に調節していない即放性製剤とすることもできるし、適切な方法により、放出性を調節した徐放性製剤、腸溶性製剤等とすることもできる。
【0032】
<製造方法>
本発明のレベチラセタム含有製剤は、常法に従って製造できる。例えば、(ア)粉末状のレベチラセタム原薬にヒドロキシプロピルセルロース等の添加剤を加えて混和して均質にした後、適切な方法により粒状とする、(イ)あらかじめ粒状に製したレベチラセタム原薬にヒドロキシプロピルセルロース等の添加剤を加えて混和し均質とする、又は、(ウ)あらかじめ粒状に製したレベチラセタム原薬にヒドロキシプロピルセルロース等の添加剤を加えて混和し適切な方法により粒状とする等の方法により本発明のレベチラセタム含有製剤を製造することできる。本発明のレベチラセタム含有製剤の造粒方法としては、例えば、攪拌造粒、押出造粒、転動造粒、流動層造粒、噴霧乾燥造粒等の湿式造粒法、乾式造粒機や破砕造粒機等を利用する乾式造粒法を挙げることができる。
【0033】
本発明のレベチラセタム含有製剤は、上記のとおり、あらゆる公知の方法に従って製造することが可能であるが、比較的小さな粒径の原薬、賦形剤を用いる場合には、最終品であるレベチラセタム含有製剤の嵩を低くする観点から、攪拌造粒法によって製造することが好ましい。攪拌造粒法では、例えば、以下の(a)~(d):
(a)所定量のレベチラセタム原薬、賦形剤及び矯味剤を攪拌造粒機に入れ、ヒドロキシプロピルセルロースを適当な溶媒に溶解させたヒドロキシプロピルセルロース溶液の所定量を加えながら造粒する工程、
(b)工程(a)にて造粒された造粒品を整粒機にて解砕する工程、
(c)工程(b)にて解砕された顆粒を乾燥させた後、流動層造粒機を使用して水を噴霧しながら再造粒する工程、及び
(d)工程(c)にて再造粒した顆粒を、適度な目開きの篩で整粒した後、整粒品に対して所定量の流動化剤を添加して混合する工程
を含む方法によって、本発明のレベチラセタム含有製剤を製造することができる。
【0034】
上記方法における工程(a)では、レベチラセタム原薬及び賦形剤を攪拌造粒機に入れる前に、適宜篩過する工程を加えることもできる。その場合、例えば、目開き8.6~22M、好ましくは10~18M、特に好ましくは12M~16M、最も好ましくは14Mの篩を使用することができる。また、目的とするレベチラセタム含有製剤の最終組成に応じて、レベチラセタム原薬、賦形剤及び矯味剤を攪拌造粒機に入れる工程においては、適宜、その他の添加剤を加えることも可能である。本工程において、ヒドロキシプロピルセルロースを溶解させるための溶媒としては、ヒドロキシプロピルセルロースが溶解するものであれば特に制限はないが、揮発性や操作性の高さの観点から、好ましくは、精製水又はエタノール、特に好ましくはエタノール(例えば、90%エタノール等)を挙げることができる。ヒドロキシプロピルセルロースを溶解させるための溶媒の量に特に制限はないが、例えば、適用対象の粉末の全質量に対して1~20質量%、好ましくは3~18質量%、より好ましくは5~15質量%、特に好ましくは7~13質量%、最も好ましくは9~11質量%程度に設定することができる。攪拌造粒における造粒機としては、特に制限はなく、市販されている造粒機であればいずれも使用することができるが、例えば、株式会社奈良機械製作所製の「NMG-5」を挙げることができる。
【0035】
上記方法における工程(b)において、造粒品を整粒する際の整粒機としては、特に制限はなく、市販されている整粒機・破砕機であればいずれも使用することができるが、例えば、株式会社パウレック製の「コーミル」(スクリーン径:800μm)を挙げることができる。
【0036】
上記方法における工程(c)において、顆粒を乾燥させる方法には特に制限はないが、工程の単純化の観点からは、再造粒工程において使用する流動層造粒機を使用することが好ましい。顆粒を乾燥及び再造粒するための流動層造粒機としては、特に制限はなく、市販されている流動層造粒機であればいずれも使用することができるが、例えば、株式会社パウレック製の「MP-01」を挙げることができる。また、再造粒の際に使用する水は、特に制限はないが、好ましくは精製水である。再造粒の際に使用する水の量にも特に制限はないが、例えば、噴霧対象の顆粒の全質量に対して好ましくは10~80質量%、より好ましくは15~70質量%、さらに好ましくは17~60質量%、特に好ましくは18~50質量%、最も好ましくは20~40質量%程度に設定することできる。
【0037】
上記方法における工程(d)において、整粒に使用するための「適度な目開きの篩」は、目的に応じて適宜選択可能であるが、例えば、目開き425~1,700μm、好ましくは500~1,400μm、より好ましくは600~1,180μm、さらに好ましくは710~1,000μm、最も好ましくは850μmの篩を使用することできる。また、整粒品に対して添加するための流動化剤は、事前に篩過することもでき、その際の篩の目開きは特に限定されないが、例えば、10~42M、好ましくは14~36M、より好ましくは16~30M、さらに好ましくは18~26M、最も好ましくは22Mを挙げることができる。また、目的とするレベチラセタム含有製剤の最終組成に応じて、整粒品に対して所定量の流動化剤を添加して混合する工程では、適宜、その他の添加剤、例えば、香料を加えることも可能である。
【0038】
<使用方法>
レベチラセタムは抗てんかん剤として知られているため、本発明のレベチラセタム含有医薬製剤は、てんかんを予防又は治療する用途において使用可能であり、特に、てんかん患者の部分発作(二次性全般化発作を含む)の治療薬として、及び他の抗てんかん薬で十分な効果が認められないてんかん患者の強直間代発作に対する抗てんかん薬との併用療法において使用することができる。本発明のレベチラセタム含有医薬製剤は、成人のみならず、小児にも適用可能である。成人及び小児に適用するに際しては、本発明のレベチラセタム含有医薬製剤は、市販されている「イーケプラ(登録商標)」の用法・用量に準じた用法・用量にて適用することが可能である。
【0039】
<凝集又はブロッキング>
本発明のレベチラセタム含有製剤は、加湿条件下での保管中又は保管後において、低減又は抑制された凝集又はブロッキング生成能を示す。したがって、一態様において、本発明は、レベチラセタム含有製剤の結合剤としてヒドロキシプロピルセルロースを使用することを含む、レベチラセタム含有製剤の加湿条件下での保管中又は保管後における凝集又はブロッキングを低減又は抑制するための方法に関する。本発明において「凝集」は、各粒子が集まってより大きな粒子になることを意味し、また、このような凝集が生じた場合、粉末又は顆粒がブロック(塊)を形成したという意味において「ブロッキング」が生じたと呼ぶこともある。本発明において、「凝集」又は「ブロッキング」が生じているか否かは、これらの用語の一般的な意味に従い、例えば、粉体又は顆粒検体を一定期間保管した後の状態を目視にて観察すること、又は、粉体又は顆粒検体を一定期間保管した後、当該検体を収容した容器を傾けた際に流動性が損なわれているか否かを確認することによって判断することができる(ただし、以下の実施例においては、用語「ブロッキング」に特別な意味を与えている)。製剤において、加湿条件下での保管中又は保管後に凝集やブロッキングが生じると、流動性が損なわれ、結果として、例えば、用時調製時に適切に粉末又は顆粒を分配することが困難になるといった問題を生じ得ることから、これを低減又は抑制できることは製剤設計上、極めて大きな利点となる。
【0040】
一態様において、本発明のレベチラセタム含有製剤は、加湿条件下での保管中又は保管後において、従来報告されてきたレベチラセタム含有製剤、特に、結合剤としてポリビニルピロリドン(以下、「ポビドン」又は「PVP」とも呼ぶこともある)が配合されているレベチラセタム含有製剤(典型的には、市販されている「イーケプラ(登録商標)ドライシロップ」)と比較して、低減又は抑制された凝集又はブロッキング生成能を示す。顆粒剤や散剤において凝集又はブロッキングが発生するか否かは、各成分の吸湿性のみに基づき機械的に予測できるような単純なものではなく、例えば、各成分の吸湿時の粘着性や有効成分と結合剤との関係性等といったその他の様々な要因に左右され得るものと予想されるところ、レベチラセタム含有製剤の加湿条件下での凝集又はブロッキングの低減又は抑制における、ポリビニルピロリドンに対するヒドロキシプロピルセルロースの優位性を予測させるような報告はこれまでに一切なされていない。特に、レベチラセタム含有製剤における結合剤の質量割合が相対的に小さいことに鑑みても、これまでレベチラセタム含有製剤(特に、レベチラセタム含有ドライシロップ剤)には最適であると考えられてきた結合剤であるポビドンを、ヒドロキシプロピルセルロースに置換することによって、最終製剤の凝集又はブロッキングを低減又は抑制できることは全く予想外のことであった。
【実施例
【0041】
以下、実施例において、本発明をより詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0042】
<実施例製剤及び比較例製剤の製造>
実施例製剤及び比較例製剤の処方は以下のとおりであった。
【0043】
【表1】
【0044】
250gのレベチラセタム原薬(D50=55μm)と225gのD-マンニトール(マンニットP、三菱商事ライフサイエンス株式会社製、D50=29μm)をそれぞれ目開き14Mの篩にて篩過した後、15gのアスパルテーム(味の素ヘルシーサプライ株式会社製)と共に攪拌造粒機(NMG-5、株式会社奈良機械製作所製)に入れ、各10gの結合剤(実施例:HPC-SSL、日本曹達株式会社製、比較例:ポビドン(PVP-K30、Ashland社製)を50gのエタノールに溶解させたエタノール溶液を加えながら攪拌造粒した。造粒品を整粒機(コーミル、株式会社パウレック製)で解砕し、流動層乾燥機(MP-01、株式会社パウレック製)を使用して乾燥させた。さらに流動層造粒機(MP-01、株式会社パウレック製)を使用して180gの水を噴霧して造粒した。造粒品を目開き850μmの篩で整粒した。整粒品に対して、目開き22Mの篩にて篩過した2.5gの軽質無水ケイ酸(アドソリダ-101、フロイント産業株式会社製)を添加して混合した。なお、レベチラセタム原薬及びマンニットPのD50値は、レーザ回折式粒度分布測定装置(Mastersizer、スペクトリス株式会社製)を用いて決定した。
【0045】
<ブロッキング試験>
ガラス製デシケーターの中に塩化ナトリウム(NaCl)の飽和水溶液を調製し、デシケーター内の相対湿度を75%に調節した。ガラス製の秤量瓶(直径30mm、高さ30mm)に、上記実施例製剤、比較例製剤を各1gずつ入れ、次いで、秤量瓶の蓋をすることなく、各製剤を入れた秤量瓶を、温度:25℃、相対湿度(RH):75%に調節したデシケーター内に入れ、2週間保管した。保管後、各検体を入れた秤量瓶を90度傾け、顆粒が全く流動しない状態を「ブロッキング有り」、保管前と変わりなく顆粒がスムーズに流動する状態を「ブロッキング無し」と判定した。
【0046】
<試験結果>
【0047】
【表2】
【0048】
結合剤としてヒドロキシプロピルセルロース(HPC-SSL)を使用した実施例製剤では、温度:25℃、RH:75%という苛酷条件下で2週間保管した後でもブロッキングは観察されず、保管前と同程度の流動性が観察された。対照的に、市販のレベチラセタム製剤「イーケプラ(登録商標)ドライシロップ」、並びに特許文献1及び2のいずれの実施例製剤においても結合剤として使用されているポビドンを使用した比較例製剤では、同条件で保管した後にブロッキングが観察され、その流動性が完全に損なわれた。このことから、レベチラセタム製剤の結合剤としてポビドンに代えて、ヒドロキシプロピルセルロースを使用することにより、レベチラセタム原薬や賦形剤の粒子径にかかわらず、加湿条件下での保管中又は保管後における凝集又はブロッキングを抑制できることが確認された。
【0049】
<製造例>
本発明のレベチラセタム含有製剤の一態様として、以下の処方のドライシロップ剤を製造した。
【表3】
【0050】
500質量部のレベチラセタム原薬と445質量部のD-マンニトール(マンニットP、三菱商事ライフサイエンス株式会社製)をそれぞれ目開き14Mの篩にて篩過した後、30質量部のアスパルテーム(味の素ヘルシーサプライ株式会社製)と共に攪拌造粒機(NMG-5、株式会社奈良機械製作所製)に入れ、20質量部のヒドロキシプロピルセルロース(HPC-SSL)を100質量部の90%エタノール(精製水:10質量部+エタノール:90質量部)に溶解させたヒドロキシプロピルセルロースエタノール溶液を加えながら攪拌造粒した。造粒品を整粒機(コーミル、株式会社パウレック製)で解砕し、流動層乾燥機(MP-01、株式会社パウレック製)を使用して乾燥させた。さらに流動層造粒機(MP-01、株式会社パウレック製)を使用して200質量部の精製水を噴霧して造粒した。造粒品をスクリーン径:ヘリンボーン0.8mmの篩で整粒した。整粒品に対して、目開き22Mの篩にて篩過した5質量部の軽質無水ケイ酸(アドソリダ-101、フロイント産業株式会社製)及び微量の香料を添加して混合し、レベチラセタムドライシロップ剤を製造した。