(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】食品添加用被覆有機酸
(51)【国際特許分類】
A23L 3/3508 20060101AFI20240501BHJP
A23L 3/3517 20060101ALI20240501BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20240501BHJP
【FI】
A23L3/3508
A23L3/3517
A23L5/00 F
(21)【出願番号】P 2020094578
(22)【出願日】2020-05-29
【審査請求日】2023-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】516089979
【氏名又は名称】株式会社ウエノフードテクノ
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(74)【代理人】
【識別番号】100165892
【氏名又は名称】坂田 啓司
(72)【発明者】
【氏名】西村 崇弘
(72)【発明者】
【氏名】古川 陽二郎
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】特開昭55-092661(JP,A)
【文献】特公昭45-032217(JP,B1)
【文献】特開昭55-088666(JP,A)
【文献】特開昭54-080439(JP,A)
【文献】特開昭55-007018(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化油を主成分とする被覆材で有機酸粒子を被覆した被覆有機酸であって、有機酸粒子の平均粒子径が10~40μm、且つ粒度分布における粒子径1.5μm以下の累積頻度が2%未満である、食品添加用被覆有機酸。
【請求項2】
有機酸粒子が、粒度分布における粒子径3μm以下の累積頻度が4%未満である、請求項1に記載の食品添加用被覆有機酸。
【請求項3】
有機酸粒子の割合が10~50重量%である、請求項1または2に記載の食品添加用被覆有機酸。
【請求項4】
被覆有機酸に用いる有機酸粒子がフマル酸、コハク酸、酒石酸、アジピン酸、リンゴ酸、クエン酸、およびソルビン酸からなる群より選ばれる1種以上である、請求項1~3のいずれかに記載の食品添加用被覆有機酸。
【請求項5】
被覆有機酸の平均粒子径が100~400μmである、請求項1~4のいずれかに記載の食品添加用被覆有機酸。
【請求項6】
被覆有機酸の安息角が25~55°である、請求項1~5のいずれかに記載の食品添加用被覆有機酸。
【請求項7】
被覆有機酸の下記計算式で表される圧縮度が8~35%である、請求項1~6のいずれかに記載の食品添加用被覆有機酸。
圧縮度(%)=[固めかさ密度(g/cm
3)-ゆるめかさ密度(g/cm
3)]/固めかさ密度(g/cm
3) ×100
【請求項8】
ゆるめかさ密度が0.40~0.75g/cm
3であり、固めかさ密度が0.60~0.80g/cm
3である、請求項7に記載の食品添加用被覆有機酸。
【請求項9】
被覆材が融点50~70℃のパーム硬化油および/または牛脂硬化油を主成分とするものである、請求項1~8のいずれかに記載の食品添加用被覆有機酸。
【請求項10】
25℃の水中における有機酸の溶出率が3%以下である、請求項1~9のいずれかに記載の食品添加用被覆有機酸。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品に使用される有機酸を、硬化油を主成分とする被覆材で被覆した食品添加用被覆有機酸に関する。
【背景技術】
【0002】
ソーセージやハンバーグ等の食肉加工品や蒲鉾やはんぺん等の水産練り製品の製造においては、従来から食品添加物である有機酸を添加することによって保存性の向上が図られている。しかしながら、有機酸を食品原料に直接添加すると、pHの低下に伴い、製品の弾力が失われ、最終製品の食感が損なわれるばかりか、歩留りも低下する。そのため、有機酸を硬化油等でコーティングした被覆有機酸を用いることによって、加熱前の食品原料のpHを低下させることなく、加熱工程により有機酸が露出しpHが低下することで、食感に与える影響を最小限に留めつつ、加工食品の保存性を改善させる技術が用いられてきた。
【0003】
特許文献1には、有機酸を、硬化油を主成分とするコーティング剤中にコーティング剤の1~1/10倍の重量になるように加え、噴霧冷却法によりコーティング粒子を得る、pH低下用被覆有機酸の製法が記載されている。
【0004】
特許文献2には、硬化油とワックスからなるコーティング剤をフマル酸に対し0.4~0.7重量部用いてコーティングしたフマル酸製剤が記載されている。
【0005】
しかしながら、上記のような従来の被覆有機酸においては、硬化油に乳化剤やワックス等の補助的成分を配合することにより、加熱前の有機酸の溶出がより抑制される反面、被覆有機酸の保管中に着色や固結が生じたり、食品の味質に影響を及ぼすなどの課題があった。
【0006】
したがって、食品の味質に影響しにくく、加熱前の有機酸の溶出が抑制された被覆有機酸が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特公昭45-32217号公報
【文献】特開昭54-80439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、食品の味質に影響しにくく、加熱前の有機酸の溶出が抑制された食品添加用被覆有機酸を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、被覆する有機酸粒子を特定の平均粒子径を有し、且つ特定の粒度分布を有するものとすることにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち本発明は、硬化油を主成分とする被覆材で有機酸粒子を被覆した被覆有機酸であって、有機酸粒子の平均粒子径が10~40μm、且つ粒度分布における粒子径1.5μm以下の累積頻度が2%未満である、食品添加用被覆有機酸を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0012】
本明細書において、「硬化油を主成分とする被覆材」とは、被覆材全重量に対して硬化油を80重量%以上含有するものをいい、他の成分を含有せず硬化油のみからなる被覆材も「硬化油を主成分とする被覆材」に含まれる。本発明においては、被覆材全重量に対して硬化油を85重量%以上含有する被覆材を用いることが好ましい。
【0013】
本発明の食品添加用被覆有機酸としては、フマル酸、コハク酸、酒石酸、アジピン酸、リンゴ酸、クエン酸、ソルビン酸等の有機酸粒子を、硬化油を主成分とする被覆材で被覆したもの(それぞれ被覆フマル酸、被覆コハク酸、被覆酒石酸、被覆アジピン酸、被覆リンゴ酸、被覆クエン酸、被覆ソルビン酸と称する)が例示される。その中でも、保存効果と食品の味質への影響の点から被覆フマル酸、被覆コハク酸、被覆クエン酸、被覆ソルビン酸が好ましく、食品のpH調整能力の点から被覆フマル酸がより好ましい。
【0014】
本発明の食品添加用被覆有機酸に含まれる有機酸粒子の割合は特に限定されず、使用する有機酸の種類によっても異なり得るが、被覆有機酸全量に対する有機酸粒子の割合は、10~50重量%であるのが好ましく、15~45重量%であるのがより好ましく、20~40重量%であるのがさらに好ましい。例えば、被覆有機酸に含まれる有機酸粒子がフマル酸の場合であれば、被覆フマル酸全量に対するフマル酸粒子の割合は、25~35重量%であるのが好ましい。
【0015】
本発明の食品添加用被覆有機酸に含まれる有機酸粒子の平均粒子径は、10~40μmが好ましく、13~37μmがより好ましく、15~35μmがさらに好ましい。有機酸粒子の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(マスターサイザー(登録商標)2000、マルバーン社製)で測定した値である。
【0016】
また、本発明の食品添加用被覆有機酸に含まれる有機酸粒子は、粒度分布における粒子径1.5μm以下の累積頻度が2%未満となるように調製される。粒子径1.5μm以下の累積頻度は、1%未満であるのが好ましく、0.5%未満であるのがより好ましく、0.3%未満であるのがさらに好ましい。
【0017】
有機酸粒子の累積頻度を調製する方法としては、粒度毎に篩別した後、粒子径1.5μm以下の有機酸粒子を取り除く方法、粉砕時に微粒子が発生し難い粉砕装置を用いる方法などが挙げられるが、作業効率の点から、微粒子が発生し難い粉砕装置を用いる方法が好ましい。微粒子が発生し難い粉砕装置としては、ピンミル(コロプレックスミル160Z、ホソカワミクロン株式会社製)、ジェットミル(カウンタジェット、ホソカワミクロン株式会社製)等が例示される。
【0018】
本発明の食品添加用被覆有機酸に含まれる有機酸粒子は、さらに粒度分布における粒子径3μm以下の累積頻度が4%未満であるものが好ましく、3%未満であるものがより好ましく、2.5%未満であるものがさらに好ましい。
【0019】
有機酸粒子の粒度分布は、レーザー回折式粒度分布測定装置(マスターサイザー(登録商標)2000、マルバーン社製)で測定する。
【0020】
本発明の食品添加用被覆有機酸の被覆材の主成分として用いる硬化油としては、融点50~70℃程度のものが好ましく、硬化油の種類としては菜種硬化油、大豆硬化油、パーム硬化油、牛脂硬化油、やし油硬化油、ニシン油硬化油等が挙げられる。その中でも入手が容易で、融解し易く、かつ流通安定性が良いパーム硬化油、牛脂硬化油が好ましい。
【0021】
本発明の食品添加用被覆有機酸の被覆材には、被覆性を向上させるための補助的成分は特に必要としないが、目的に応じて、レシチン、モノグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ミツロウ、カルナバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス、第三リン酸カルシウム等の補助的成分を含有させてもよい。これらの補助的成分を含有させる場合、被覆材全重量に対して1~15重量%程度含有させるのがよい。
【0022】
被覆有機酸の調製には、噴霧冷却法、コーティングパン法、気中懸濁被覆法、真空蒸着被覆法、静電的合体法、融解分散冷却法等の方法が採用される。例えば、噴霧冷却法を採用する場合、加熱溶融した硬化油に、必要によりその他の補助的成分を添加して被覆材を作製した後、該被覆材に有機酸粒子を添加して十分に混合して均一に懸濁させた後、空気中に噴霧して冷却固化することによって調製される。
【0023】
一つの好ましい態様において、本発明の食品添加用被覆有機酸の製造方法は、以下の工程:
a)融点50~70℃の極度硬化油を融点以上の温度で加熱溶融する工程、
b)加熱溶融した油脂に有機酸粒子を混合する工程、
c)b)工程で得られたスラリーを回転数3500~7000rpmのディスクに滴下し、45℃以下の雰囲気中に噴霧且つ冷却することにより被覆する工程、および
d)得られた食品添加用被覆有機酸を、該油脂の温度が40~47℃に達するまで加温する工程
を含む方法である。
【0024】
さらに、上記の製造方法をより具体的に説明する。まず、工程a)において、融点50~70℃の硬化油を融点以上の温度、例えば75~95℃で加熱溶融し、被覆材とする。
【0025】
工程b)において、加熱溶融した油脂に、例えばフマル酸粒子を混合し、スラリーとする。
【0026】
次いで、工程c)において、スラリーを噴霧冷却装置(ロータリーアトマイザ方式)のディスクに滴下する。噴霧冷却装置のディスク回転数は、3500~7000rpmが好ましく、3700~6800rpmがより好ましく、3900~6600rpmがさらに好ましい。ディスク回転数が3500rpmより遅い場合、安定して球状に噴霧できない傾向があり、7000rpmより速い場合、粒子径が小さくなる傾向がある。噴霧冷却装置内の温度は45℃以下が好ましく、40℃以下がより好ましい。温度が45℃を超える場合、被覆が不十分となるおそれがある。
【0027】
工程d)において、食品添加用被覆有機酸を、その温度が40~47℃、好ましくは41~46℃、より好ましくは42~45℃に達するまで加温する。食品添加用被覆有機酸の全体がかかる温度に到達すればよく、該温度で一定時間保持することを要するものではない。また、一度加温処理を行えば、食品添加用被覆有機酸を溶融させない限り、該処理の効果(耐ケーキング性等の所望の粉体特性)が失われることはない。加温の温度および時間は、食品添加用被覆有機酸の量に応じて適宜設定し得る。例えば、20kg程度の量の食品添加用被覆有機酸を一まとまりとして加温する場合、45℃の温度条件下に24時間程度おくことにより、食品添加用被覆有機酸の温度を上記の範囲内にすることができる。食品添加用被覆有機酸の温度が47℃を超える場合、加温中に油脂が溶融するおそれがあり、40℃未満の場合、ケーキングが生じやすい食品添加用被覆有機酸となる傾向がある。
【0028】
本発明の食品添加用被覆有機酸における平均粒子径は、目開きが600μm、300μm、150μm、106μm、75μmのJISふるいを用い、ミクロ形電磁振動式ふるい振とう器 M-2型(筒井理化学器械株式会社製)により所定量の粉末を10分間振とうさせ、ふるい分け法により粒度分布を測定し、重量の累積%をふるい目開きに対してロジンラムラー線図にプロットした際に累積50%(D50)となる値を指すものである。
【0029】
本発明の食品添加用被覆有機酸は、平均粒子径が100~400μmとなるように調製され、平均粒子径が130~370μmであるのが好ましく、平均粒子径が150~350μmであるのがより好ましい。
【0030】
本発明の食品添加用被覆有機酸の安息角は、25~55°であり、好ましくは27~50°であり、より好ましくは30~45°である。安息角が25°未満の場合、該被覆有機酸の飛散性が高くなる傾向がある。55°を超える場合、流動性が低くなりハンドリングが悪くなる傾向がある。
【0031】
本発明の食品添加用被覆有機酸の圧縮度は、8~35%であり、好ましくは9~30%であり、より好ましくは10~25%である。圧縮度が8%未満の場合、該被覆有機酸の流動性が悪くなる傾向があり、35%を超える場合、該被覆有機酸の飛散性が高くなる傾向がある。圧縮度は、下記計算式により、算出された数値である。
圧縮度(%)=[固めかさ密度(g/cm3)-ゆるめかさ密度(g/cm3)]/固めかさ密度(g/cm3) ×100
【0032】
上記圧縮度を算出するためのゆるめかさ密度および固めかさ密度は、好ましくは、ゆるめかさ密度が0.40~0.75g/cm3、固めかさ密度が0.60~0.80g/cm3であり、より好ましくは、ゆるめかさ密度が0.45~0.70g/cm3、固めかさ密度が0.63~0.77g/cm3であり、さらに好ましくは、ゆるめかさ密度が0.55~0.65g/cm3、固めかさ密度が0.65~0.75g/cm3である。
【0033】
上記、安息角、ゆるめかさ密度および固めかさ密度は、パウダテスタ(登録商標)(PT-X、ホソカワミクロン株式会社製)により測定した数値である。
【0034】
本発明の食品添加用被覆有機酸は、25℃の水中における有機酸の溶出率が3%以下であるのが好ましく、0.5~2.5%であるのがより好ましく、1~2%であるのがさらに好ましい。溶出率が3%を超える場合、食品の味質と物性に与える影響が増大する傾向がある。
【0035】
本発明の食品添加用被覆有機酸の25℃の水中における有機酸の溶出率は、下記の方法により測定した数値である。
【0036】
(溶出率の測定)
食品添加用被覆有機酸0.1gをメタノール30mlに加え、80℃で溶解させた後、イオン交換水を30ml加え、25℃になるまで冷却する。冷却後、0.1重量%フェノールフタレイン液0.5ml(10滴)を添加し、0.1mol/l水酸化カリウム(エタノール溶媒)で中和滴定することにより、有機酸全量を測定する。
次に、イオン交換水500mlにラウリル硫酸ナトリウム1gを溶解させ、三枚翼プロペラを用いて25℃、400rpmの条件で攪拌しながら、食品添加用被覆有機酸1gを加え、10分間撹拌する。撹拌後の懸濁液40mlを濾紙で濾過した後、濾液20gを正確に量りとり、イオン交換水60mlおよび0.1重量%フェノールフタレイン液0.25ml(5滴)を添加し、0.01mol/l水酸化ナトリウムで中和滴定することにより、有機酸の溶出量を測定する。
有機酸全量と溶出量から、下記計算式により溶出率を算出する。
溶出率(%)=(食品添加用被覆有機酸1g当たりの溶出量)/(食品添加用被覆有機酸1g当たりの有機酸全量)×100
【0037】
本発明の食品添加用被覆有機酸は、他の粉末状有機酸およびその塩と混合することにより、食品用日持ち向上剤とすることができる。
【0038】
本発明の食品添加用被覆有機酸と混合し得る粉末状有機酸およびその塩としては、食品に使用可能なものであれば、特に限定されないが、例えば、酢酸、プロピオン酸、ソルビン酸、乳酸およびこれらのナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩が挙げられる。これらの中でも、静菌効果の点で、酢酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、ソルビン酸、ソルビン酸カリウムが好ましく、酢酸ナトリウムがより好ましい。
【0039】
粉末状有機酸およびその塩の割合は、上記食品添加用被覆有機酸100重量部に対し、50~500重量部が好ましく、60~450重量部がより好ましく、70~400重量部がさらに好ましい。
【0040】
粉末状有機酸およびその塩は、平均粒子径が100~400μmであるものが好ましく、130~370μmであるものがより好ましく、150~350μmであるものがさらに好ましい。平均粒子径が100μm未満、あるいは400μmを超える場合、保管中や輸送中に偏析が生じやすい傾向がある。尚、粉末状有機酸およびその塩の平均粒子径は、上記、本発明の食品添加用被覆有機酸と同様のふるい分け法によって測定された値である。
【0041】
食品用日持ち向上剤を調製する場合、本発明の食品添加用被覆有機酸、粉末状有機酸およびその塩以外に、目的に応じて、他の粉末成分を配合してもよい。配合可能な粉末成分としては、食品に添加可能なものであれば特に限定されないが、例えば、グリシン、チアミンラウリル硫酸塩、リゾチーム等の抗菌剤、澱粉、デキストリン等の賦形剤、第三リン酸カルシウム、微粒二酸化ケイ素、プルラン、乳酸カルシウム、炭酸カルシウム等の固結防止剤が例示される。
【0042】
本発明の食品添加用被覆有機酸が適用可能な食品としては、加熱工程を含む加工食品であればいずれにも適用可能であるが、例えば、ソーセージ、ハンバーグ、肉団子、餃子、シュウマイ、コロッケ、トンカツ、フライドチキン、唐揚げ等の食肉加工品類や、蒲鉾、竹輪、はんぺん、魚肉ハム、魚肉ソーセージなどの水産練り製品類、うどん、そば、中華麺等の麺類、食パン、フランスパン等のパン類、フィリング類等が例示される。
【0043】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0044】
試験例1
有機酸粒子の調製
フマル酸(扶桑化学工業株式会社製)をピンミル(コロプレックスミル160Z、ホソカワミクロン株式会社製)により、10000rpmで粉砕し(スクリューフィード20kg/h)、フマル酸粒子1を得た。
【0045】
次に、フマル酸(扶桑化学工業株式会社製)をパルベライザー(登録商標)(ACM-30、ホソカワミクロン株式会社製)により、4800rpmで粉砕し(スクリューフィード600kg/h)、フマル酸粒子2を得た。また、フマル酸粒子2を280メッシュ(目開き53μm)のふるいで篩別し、フマル酸粒子3を得た。
【0046】
粉砕前のフマル酸およびフマル酸粒子1~3の平均粒子径(D50)およびフマル酸粒子1~3の粒度分布をレーザー回折式粒度分布測定装置(マスターサイザー(登録商標)2000、マルバーン社製)を用いて測定した。結果を表1~4に示す。
【0047】
【0048】
【0049】
【0050】
【0051】
実施例1および比較例1~3
食品添加用被覆有機酸の調製
表5に示す割合で被覆有機酸A~Dを調製した。尚、各被覆有機酸の調製には、上記試験例で得られたフマル酸粒子の他、下記材料を用いた。
【0052】
・パーム硬化油(融点:58℃、横関油脂工業株式会社製)
・乳化剤(グリセリン脂肪酸エステル ポエムM200、理研ビタミン株式会社製)
【0053】
90℃で加熱溶融したパーム硬化油またはパーム硬化油に乳化剤を添加した被覆材に、フマル酸粒子を加え、回転円盤型噴霧冷却装置(ロータリーアトマイザ方式)を用いて回転数6000rpm、直径75mmのディスクに、流量500g/mにて滴下し、送風温度10℃、庫内温度16~20℃の装置内に噴霧し、被覆フマル酸を得た。
【0054】
【0055】
平均粒子径(D50)の測定
600μm、300μm、150μm、106μm、75μmのJISふるいを用い、ミクロ形電磁振動式ふるい振とう器 M-2型(筒井理化学器械株式会社製)により所定量の粉末を10分間振とうさせ、ふるい分け法により、平均粒子径を測定した。結果を表6に示す。
【0056】
安息角、ゆるめかさ密度、固めかさ密度および圧縮度の測定
パウダテスタ(登録商標)(PT-X、ホソカワミクロン株式会社製)により測定した。安息角は、目開き710μmの篩を用い、振動時間180秒間の条件で測定した。ゆるめかさ密度は、目開き710μmの篩を用い、静置した100mL容円筒形容器に、直上からサンプルを振幅1.5mm、動作時間30秒間の条件で供給し、過剰サンプルは摺り切り、内容量を精秤することにより求めた。固めかさ密度は、ストローク幅18mmで180回タッピングした後の比重である。圧縮度は、下記計算式により算出した。結果を表6に示す。
圧縮度(%)=[固めかさ密度(g/cm3)-ゆるめかさ密度(g/cm3)]/固めかさ密度(g/cm3) ×100
【0057】
溶出率の測定
被覆有機酸A~D0.1gにメタノールを30mL加えた後、80℃で溶解させた。イオン交換水を30mL加え、室温になるまで冷却(約30分間)する。0.1%フェノールフタレイン液を0.5ml(10滴)添加し、0.1mol/l 水酸化カリウム(エタノール溶媒)を用いた中和滴定によりフマル酸全量を測定した。次いで1Lのビーカーにイオン交換水を500ml入れ、ラウリル硫酸ナトリウム1gを溶解させ、室温で三枚翼プロペラ(穴径×羽根径:6×45mm)を用いて400rpmで攪拌する。これに被覆有機酸A~D約1gを投入し、10分間撹拌した。撹拌後の懸濁液40mlを採取し、濾紙で濾過した後、濾液20gを正確に量りとり、イオン交換水60mlおよび0.1重量%フェノールフタレイン液0.25ml(5滴)を添加し、0.01mol/L水酸化ナトリウムで中和滴定することによりフマル酸の溶出量を測定した。有機酸全量と溶出量から、下記計算式により溶出率を算出した。結果を表6に示す。
溶出率(%)=(食品添加用被覆有機酸1g当たりの溶出量)/(食品添加用被覆有機酸1g当たりのフマル酸全量)×100
【0058】