(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】移動式投射装置、移動式投射システム、移動式投射装置の制御方法、及び、制御プログラム
(51)【国際特許分類】
G05D 1/46 20240101AFI20240501BHJP
G05D 1/43 20240101ALI20240501BHJP
H04N 23/56 20230101ALI20240501BHJP
H04N 23/74 20230101ALI20240501BHJP
【FI】
G05D1/46
G05D1/43
H04N23/56
H04N23/74
(21)【出願番号】P 2021179645
(22)【出願日】2021-11-02
【審査請求日】2023-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】今奥 貴志
【審査官】今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】特許第6615394(JP,B1)
【文献】特開2021-175042(JP,A)
【文献】国際公開第2018/230539(WO,A1)
【文献】特開2018-084955(JP,A)
【文献】寺井晴香,空間光位相変調器を用いた投影画素の再配置による画素密度補正,映像情報メディア学会誌,日本,映像情報メディア学会,2021年11月01日,75巻6号,820-823頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自装置の位置情報を取得する位置情報取得部と、
自装置の向きを検出する方向検出部と、
自装置の周辺を撮像する撮像部と、
前記位置情報取得部によって取得される位置情報を基に、指定されたエリアに自装置を移動させる移動制御部と、
光を投射する投射部と、
前記指定されたエリアにおける前記撮像部の撮像画像から対象人物が特定された場合、前記投射部を用いて、前記位置情報取得部によって取得された自装置の位置情報と、前記方向検出部によって検出された自装置の向きと、に基づいて決定されたパターンの光を、前記対象人物が視認可能なエリアに投射させる投射制御部と、
を備え
、
前記投射制御部は、前記撮像部の撮像範囲の照度が所定の照度よりも低い場合には、前記投射部を用いて、前記撮像部の撮像画像の一部又は全部を含むような投射範囲のパターンの光を投射させる、
移動式投射装置。
【請求項2】
前記投射制御部は、前記投射部を用いて、前記対象人物が進むべき移動方向を示す矢印、を表したパターンの光を、前記対象人物が視認可能なエリアに投射させる、
請求項1に記載の移動式投射装置。
【請求項3】
前記投射制御部は、前記撮像部の撮像画像から前記対象人物の周辺エリアにおいて障害物が特定された場合、前記投射部を用いて、前記障害物を回避するような移動方向を示す矢印、を表したパターンの光を、前記対象人物が視認可能なエリアに投射させる、
請求項2に記載の移動式投射装置。
【請求項4】
地図情報が格納されたデータベースをさらに有し、
前記投射制御部は、前記地図情報に基づいて前記対象人物の現在位置から目的位置までの移動経路を決定したうえで、前記投射部を用いて、決定した移動経路に沿った移動方向を示す矢印、を表したパターンの光を、前記対象人物が視認可能なエリアに投射させる、
請求項2に記載の移動式投射装置。
【請求項5】
前記投射部は、
光源と、
前記光源から出射された光を、前記投射制御部の指示に従ったパターンとなるように変調する光空間位相変調器と、
前記光空間位相変調器によって変調された光を投射する光学系と、
を有する、
請求項1~
4の何れか一項に記載の移動式投射装置。
【請求項6】
前記光は、レーザ光である、
請求項1~
5の何れか一項に記載の移動式投射装置。
【請求項7】
請求項1~
6の何れか一項に記載の移動式投射装置と、
前記移動式投射装置に対し、前記指定されたエリアに移動するように指示を与えるとともに、前記光のパターンによって表される標示内容に関する指示を与える管理装置と、
を備えた、移動式投射システム。
【請求項8】
位置情報取得部によって取得される自装置の位置情報を基に、指定されたエリアに自装置を移動させるステップと、
前記指定されたエリアにおいて、撮像部によって自装置の周辺を撮像するステップと、
前記撮像部の撮像画像から対象人物が特定された場合、投射部を用いて、前記位置情報取得部によって取得された自装置の位置情報と、方向検出部によって検出された自装置の向きと、に基づいて決定されたパターンの光を、前記対象人物が視認可能なエリアに投射させるステップと、
を備えた
移動式投射装置の制御方法であって、
前記光を投射させるステップでは、前記撮像部の撮像範囲の照度が所定の照度よりも低い場合には、前記投射部を用いて、前記撮像部の撮像画像の一部又は全部を含むような投射範囲のパターンの光を投射させる、
移動式投射装置の制御方法。
【請求項9】
位置情報取得部によって取得される自装置の位置情報を基に、指定されたエリアに自装置を移動させる処理と、
前記指定されたエリアにおいて、撮像部によって自装置の周辺を撮像する処理と、
前記撮像部の撮像画像から対象人物が特定された場合、投射部を用いて、前記位置情報取得部によって取得された自装置の位置情報と、方向検出部によって検出された自装置の向きと、に基づいて決定されたパターンの光を、前記対象人物が視認可能なエリアに投射させる処理と、
をコンピュータに実行させる
制御プログラムであって、
前記光を投射させる処理では、前記撮像部の撮像範囲の照度が所定の照度よりも低い場合には、前記投射部を用いて、前記撮像部の撮像画像の一部又は全部を含むような投射範囲のパターンの光を投射させる、
制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動式投射装置、移動式投射システム、移動式投射装置の制御方法、及び、制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、例えば山岳地帯での遭難者や災害発生時の避難者等に対して、ドローン等の飛行体から避難経路等の情報を提供するシステムの開発が進められている。
【0003】
関連する技術は、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1に開示された無人飛行体は、自機の位置を検出する自機位置検出部と、自機の飛行を制御するフライトコントロール部と、誘導経路に沿って走行する無人搬送車のための誘導経路の画像を路面に投影する投影部と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、無人飛行体が、自機の位置情報に応じた無人搬送車用の誘導経路を路面に投影した後、無人搬送車が、無人飛行体によって路面に投影された誘導経路を自ら検出して、検出した誘導経路に沿って走行している。即ち、無人飛行体は、無人搬送車が誘導経路を検出できる程度に近くを走行しているか否かに関わらず、自機の位置情報に応じた無人搬送者用の誘導経路を路面に投影している。そのため、特許文献1の構成では、遭難者や避難者等の対象人物が視認可能なエリアに、避難経路等の情報を適切に投影することができない可能性がある。
【0006】
本開示の目的の一つは、上述した課題を解決する移動式投射装置、移動式投射システム、移動式投射装置の制御方法、及び、制御プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施の形態によれば、移動式投射装置は、自装置の位置情報を取得する位置情報取得部と、自装置の向きを検出する方向検出部と、自装置の周辺を撮像する撮像部と、前記位置情報取得部によって取得される位置情報を基に、指定されたエリアに自装置を移動させる移動制御部と、光を投射する投射部と、前記指定されたエリアにおける前記撮像部の撮像画像から対象人物が特定された場合、前記投射部を用いて、前記位置情報取得部によって取得された自装置の位置情報と、前記方向検出部によって検出された自装置の向きと、に基づいて決定されたパターンの光を、前記対象人物が視認可能なエリアに投射させる投射制御部と、を備える。
【0008】
一実施の形態によれば、移動式投射装置の制御方法は、位置情報取得部によって取得される自装置の位置情報を基に、指定されたエリアに自装置を移動させるステップと、前記指定されたエリアにおいて、撮像部によって自装置の周辺を撮像するステップと、前記撮像部の撮像画像から対象人物が特定された場合、投射部を用いて、前記位置情報取得部によって取得された自装置の位置情報と、方向検出部によって検出された自装置の向きと、に基づいて決定されたパターンの光を、前記対象人物が視認可能なエリアに投射させるステップと、を備える。
【0009】
一実施の形態によれば、制御プログラムは、位置情報取得部によって取得される自装置の位置情報を基に、指定されたエリアに自装置を移動させる処理と、前記指定されたエリアにおいて、撮像部によって自装置の周辺を撮像する処理と、前記撮像部の撮像画像から対象人物が特定された場合、投射部を用いて、前記位置情報取得部によって取得された自装置の位置情報と、方向検出部によって検出された自装置の向きと、に基づいて決定されたパターンの光を、前記対象人物が視認可能なエリアに投射させる処理と、をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0010】
前記一実施の形態によれば、遭難者等の対象人物に対して、自装置の位置情報等に応じた標示内容を表すパターンの光を適切に投射することが可能な移動式投射装置、移動式投射システム、移動式投射装置の制御方法、及び、制御プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態1にかかる移動式投射システムの構成例を示すブロック図である。
【
図2】
図1に示す移動式投射システムに設けられた移動式投射装置の構成例を示すブロック図である。
【
図3】
図2に示す移動式投射装置に設けられた投射部の具体例を示すブロック図である。
【
図4】実施の形態1にかかる移動式投射装置の一部を模式的に示した図である。
【
図5】実施の形態1にかかる移動式投射装置の動作を示すフローチャートである。
【
図6】実施の形態1にかかる移動式投射装置の動作を説明するための概念図である。
【
図7】実施の形態1にかかる移動式投射装置の動作を説明するための概念図である。
【
図8】実施の形態1にかかる移動式投射装置の動作を説明するための概念図である。
【
図9】実施の形態1にかかる移動式投射システムにおける移動式投射装置の制御機能のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について説明する。なお、図面は簡略的なものであるから、この図面の記載を根拠として実施の形態の技術的範囲を狭く解釈してはならない。また、同一の要素には、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0013】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明する。ただし、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、応用例、詳細説明、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
【0014】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(動作ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数等(個数、数値、量、範囲等を含む)についても同様である。
【0015】
<実施の形態1>
図1は、実施の形態1にかかる移動式投射システム1の構成例を示すブロック図である。移動式投射システム1に設けられた移動式投射装置は、撮像部の撮像画像から対象人物(捜索中の遭難者等)を特定した場合に、管理装置によって指定された種類の標示内容(例えば避難方向を示す矢印)、を表したパターンの光を、自装置の位置情報及び向きに基づいて調整したうえで、当該対象人物が視認可能なエリアに投射する。換言すると、この移動式投射装置は、撮像部の撮像画像から対象人物(捜索中の遭難者等)を特定した場合に、自装置の位置情報及び向きに基づいて決定された標示内容、を表したパターンの光を、当該対象人物が視認可能なエリアに投射する。それにより、対象人物は、例えば、投射された光のパターンによって表される矢印の方向に沿って移動することで、遭難エリアから抜け出して目的位置にたどり着くことができる。なお、レーザは目に入ると危険なので、頭上のドローンを見上げた時にレーザが目に入ることの無いように、人体を避けて投射されることが望ましい。以下、具体的に説明する。
【0016】
図1に示すように、移動式投射システム1は、移動式投射装置11と、管理装置12と、ネットワーク50と、を少なくとも備える。移動式投射装置11と管理装置12とは、互いにネットワーク50を介して通信可能に構成されている。なお、管理装置12は、移動式投射装置11に組み込まれていてもよい。
【0017】
移動式投射装置11は、例えばドローン等の飛行体であって、管理装置12からの指示を受けて指定されたエリアの上空に移動可能に構成されている。なお、本実施の形態では、移動式投射装置11が、ドローン等の飛行体である場合を例に説明するが、これに限られず、例えば、管理装置12からの指示に応じて地面を移動可能な車両や移動ロボットなどであってもよい。
【0018】
図2は、移動式投射装置11の構成例を示すブロック図である。
図2に示すように、移動式投射装置11は、位置情報取得部111と、方向検出部112と、制御部113と、撮像部114と、投射部115と、を少なくとも備える。以下、移動式投射装置11と、単に自装置とも称す。
【0019】
位置情報取得部111は、例えばGPS(Global Positioning System)センサであって、移動式投射装置11の位置情報を取得可能に構成されている。
【0020】
方向検出部112は、例えば地磁気センサやジャイロセンサ等の方位センサであって、移動式投射装置11の向きを検出可能に構成されている。
【0021】
撮像部114は、所謂カメラであって、移動式投射装置11の周辺を撮像する。本実施の形態では、移動式投射装置11がドローン等の飛行体であるため、撮像部114は、飛行中の移動式投射装置11から下方のエリアを撮像する。なお、撮像部114は、夜間でも撮像可能な赤外線カメラであってもよい。
【0022】
投射部115は、指定された標示内容、を表したパターンの光を、指定されたエリアに投射する。投射部115の詳細については後述する。
【0023】
制御部113は、管理装置12からの指示に従って移動式投射装置11の各機能を制御する。具体的には、制御部113は、移動制御部1131と、投射制御部1132と、を少なくとも備える。
【0024】
移動制御部1131は、管理装置12からの指示に従って移動式投射装置11の移動を制御する。具体的には、移動制御部1131は、位置情報取得部111によって取得される移動式投射装置11の位置情報を参照しながら、管理装置12によって指定されたエリアの上空まで移動式投射装置11を飛行させる。ここで、指定されたエリアとは、例えば、山岳地帯等で遭難した遭難者の周辺エリア(遭難エリア)や、災害時に避難している避難者の周辺エリア(避難エリア)などである。このようなエリアの情報は、例えば、管理者(ユーザ)の操作によって管理装置12に入力される。
【0025】
投射制御部1132は、管理装置12からの指示に従って投射部115による光の投射を制御する。
【0026】
具体的には、投射制御部1132は、撮像部114の撮像画像を画像解析することによって対象人物(例えば捜索中の遭難者)が特定された場合、管理装置12によって指定された種類の標示内容、を表したパターンの光を、移動式投射装置11の位置情報及び向きに基づいて調整したうえで、投射部115を用いて、当該対象人物が視認可能なエリアに投射させる。ここで、対象人物が視認可能なエリアとは、対象人物が投射光を視認できる程度に対象人物に近いエリア、且つ、対象人物の死角にならないエリアであって、投射面は滑らかな地面又は壁が好ましい。
【0027】
なお、撮像部114の撮像画像の画像解析は、投射制御部1132によって行われてもよいし、移動式投射装置11に別途設けられた画像解析部(不図示)によって行われてもよい。
【0028】
例えば、投射制御部1132は、移動式投射装置11の位置情報及び向きに基づいて決定された、対象人物が進むべき移動方向を示す矢印、を表したパターンの光を、投射部115を用いて、当該対象人物が視認可能なエリアに投射させる。
【0029】
より具体的には、投射制御部1132は、データベース(不図示)に格納された地図情報と、移動式投射装置11の位置情報及び向きと、に基づいて、対象人物の現在位置から目的位置までの移動経路(例えば遭難者の遭難経路)を決定したうえで、決定した移動経路に沿った移動方向を示す矢印、を表したパターンの光を、投射部115を用いて、当該対象人物が視認可能なエリアに投射させる。
【0030】
なお、投射制御部1132は、撮像部114の撮像画像から対象人物の周辺エリアにおいて障害物が特定された場合、当該障害物を回避するような移動方向を示す矢印、を表したパターンの光を、投射部115を用いて、当該対象人物が視認可能なエリアに投射させてもよい。ここで、障害物とは、遭難者の移動を妨げる物体、例えば、川、岩、崖、密集した草木などである。
【0031】
また、投射制御部1132は、夜間等において、撮像部114による撮像範囲の照度が所定の照度よりも低い場合(即ち、撮像部114による撮像範囲の明るさが所定の明るさよりも暗い場合)、周囲を照らすライト(図示せず)を用いて、撮像部114による撮像範囲の一部又は全部を含む範囲を照らしてもよい。それにより、撮像部114による撮像範囲の照度が所定の照度以上になるため、撮像部114により撮像される被写体(遭難者及びその周辺環境)の特定が可能となる。
【0032】
図3は、投射部115の具体的な構成例を示すブロック図である。また、
図4は、移動式投射装置11のうち投射部115を模式的に示した図である。なお、
図4には、移動式投射装置11の動力源である電源116も示されている。
【0033】
投射部115は、光源1151と、光空間位相変調器1152と、光学系1153と、を少なくとも備える。光源1151は、位相がそろったコヒーレントな光であって、可視領域の特定波長の光を出射する。例えば、光源1151は、可視領域のレーザ光を出射する。それにより、夜間はもちろんのこと、日中でも視認可能となる。光源1151から出射された光は、光空間位相変調器1152に入射される。光空間位相変調器1152は、光源から出射された光を、投射制御部1132の指示に従ったパターンとなるように変調する。光学系1153は、レンズ、反射鏡、プリズム等の組み合わせによって構成され、光空間位相変調器1152によって変調された光を対象人物が視認可能なエリアに投射する。ここで、投射部115は、光空間位相変調器1152の変調度合いを調整することにより、投射される光のパターンを変更することができる。
【0034】
(移動式投射装置11の動作)
続いて、
図5~
図8を用いて、移動式投射システム1における移動式投射装置11の動作について説明する。
図5は、移動式投射装置11の動作を示すフローチャートである。
図6~
図8は、移動式投射装置11の動作を説明するための概念図である。なお、本実施の形態では、対象人物である捜索中の遭難者TGが、山岳地帯の遭難エリアA1において遭難している場合を例に説明する。
【0035】
まず、移動式投射装置11は、管理装置12からの指示を受けて、位置情報取得部111によって取得される自装置の位置情報を参照しながら、遭難エリアA1に移動する(ステップS101→S102)。
【0036】
移動式投射装置11は、遭難エリアA1の上空に到着すると、遭難エリアA1のうち、撮像部114によって未だ撮像されていない任意のエリアの上空で停止する(ステップS103)。
【0037】
ここで、移動式投射装置11は、撮像部114による撮像範囲の照度が所定の照度より低い場合(ステップS104のYES)、撮像部114による撮像範囲の一部又は全部を含むような投射範囲の広いパターンの光を投射する(ステップS105)。それにより、撮像部114による撮像範囲の照度が所定の照度以上になるため、撮像部114により撮像される被写体(遭難者及びその周辺環境)の特定が可能となる。なお、撮像部114による撮像範囲の照度が所定の照度以上である場合(ステップS104のNO)、光を投射する必要は無い。
【0038】
その後、移動式投射装置11は、撮像部114による撮像を行う(ステップS106)。
【0039】
例えば、撮像部114の撮像画像から遭難者TGが特定されなかった場合(ステップS107のNO;
図6参照)、移動式投射装置11は、遭難エリアA1内を移動する(ステップS108)。そして、遭難エリアA1のうち、撮像部114によって未だ撮像されていない任意のエリアの上空で停止した後(ステップS103)、再びステップS104~S107の処理が行われる。
【0040】
そして、撮像部114の撮像画像から遭難者TGが特定された場合(ステップS107のYES;
図7参照)、移動式投射装置11は、管理装置12によって指定された種類の標示内容、を表したパターンの光を、自装置の位置情報及び向きに基づいて調整したうえで、遭難者TGが視認可能なエリアに投射する(ステップS109)。
【0041】
例えば、移動式投射装置11は、データベース(不図示)に格納された地図情報と、自装置の位置情報及び向きに基づいて、遭難者TGの現在位置から目的位置までの避難経路を決定したうえで、決定した避難経路に沿った移動方向(避難方向)を示す矢印、を表したパターンの光を、当該遭難者TGが視認可能なエリアに投射する(
図8参照)。なお、移動式投射装置11は、遭難者TGの移動に伴って移動しつつ、遭難経路に沿った移動方向を示す矢印、を表したパターンの光を、当該遭難者TGが視認可能なエリアに投射することができる。それにより、遭難者TGは、矢印の方向に沿って移動することにより、遭難エリアA1から抜け出して目的位置(例えば山の麓)にたどり着くことができる。
【0042】
このように、本実施の形態に係る移動式投射装置は、撮像部の撮像画像から対象人物(捜索中の遭難者等)を特定した場合に、管理装置によって指定された種類の標示内容(例えば避難方向を示す矢印)、を表したパターンの光を、自装置の位置情報及び向きに基づいて調整したうえで、当該対象人物が視認可能なエリアに投射する。換言すると、本実施の形態に係る移動式投射装置は、撮像部の撮像画像から対象人物(捜索中の遭難者等)を特定した場合に、自装置の位置情報及び向きに基づいて決定された標示内容、を表したパターンの光を、当該対象人物が視認可能なエリアに投射する。それにより、対象人物は、例えば、投射された光のパターンによって表される矢印の方向に沿って移動することで、遭難エリアから抜け出して目的位置にたどり着くことができる。
【0043】
なお、本実施の形態では、移動式投射装置11が、移動方向を示す矢印、を表したパターンの光を投射する場合を例に説明したが、これに限られず、避難情報等を示す文字や図形、を表したパターンの光を投射してもよい。
【0044】
また、本実施の形態では、対象人物が、山岳地帯などでの遭難者である場合を例に説明したが、これに限られない。対象人物は、移動式投射装置11によって投射される光のパターンによって情報を得ることを必要とする、任意の状況に置かれた人物であってよい。
【0045】
(移動式投射装置11の制御機能のハードウェア構成)
なお、移動式投射システム1によって実現される移動式投射装置11の制御処理、具体的には、管理装置12による移動式投射装置11の制御処理、及び、移動式投射装置11に設けられた制御部113による制御処理、の一方又は両方は、汎用的なコンピュータシステムにより実現可能である。以下、
図9を用いて簡単に説明する。
【0046】
図9は、移動式投射装置11の制御機能のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。コンピュータ100は、例えば、制御装置であるCPU(Central Processing Unit)101と、RAM(Random Access Memory)102と、ROM(Read Only Memory)103と、を備える。コンピュータ100は、さらに、外部とのインターフェースであるIF(Inter Face)104と、不揮発性記憶装置の一例であるHDD(Hard Disk Drive)105と、を備える。さらに、コンピュータ100は、その他図示しない構成として、キーボードやマウス等の入力装置やディスプレイ等の表示装置を備えていてもよい。
【0047】
HDD105には、OS(Operating System)(不図示)と、制御プログラム106と、が記憶されている。制御プログラム106は、本実施の形態に係る移動式投射装置11の制御処理が実装されたコンピュータプログラムである。
【0048】
CPU101は、コンピュータ100における各種処理、RAM102,ROM103,IF104及びHDD105へのアクセス等を制御する。コンピュータ100は、CPU101がHDD105に記憶されたOS、制御プログラム106を読み込み、実行する。これにより、コンピュータ100は、移動式投射装置11の制御機能を実現する。
【0049】
上述の実施の形態では、本開示をハードウェアの構成として説明したが、本開示は、これに限定されるものではない。本開示は、移動式投射装置11の制御処理を、CPUにコンピュータプログラムを実行させることにより実現することも可能である。
【0050】
また、上述したプログラムは、コンピュータに読み込まれた場合に、実施形態で説明された1又はそれ以上の機能をコンピュータに行わせるための命令群(又はソフトウェアコード)を含む。プログラムは、非一時的なコンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体に格納されてもよい。限定ではなく例として、コンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体は、RAM、ROM、フラッシュメモリ、SSD(Solid-State Drive)又はその他のメモリ技術、CD-ROM、DVD(Digital Versatile Disc)、Blu-ray(登録商標)ディスク又はその他の光ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ又はその他の磁気ストレージデバイスを含む。プログラムは、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体上で送信されてもよい。限定ではなく例として、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体は、電気的、光学的、音響的、またはその他の形式の伝搬信号を含む。
【0051】
以上、図面を参照して、本開示の実施の形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等が可能である。
【0052】
上記の実施の形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0053】
(付記1)
自装置の位置情報を取得する位置情報取得部と、
自装置の向きを検出する方向検出部と、
自装置の周辺を撮像する撮像部と、
前記位置情報取得部によって取得される位置情報を基に、指定されたエリアに自装置を移動させる移動制御部と、
光を投射する投射部と、
前記指定されたエリアにおける前記撮像部の撮像画像から対象人物が特定された場合、前記投射部を用いて、前記位置情報取得部によって取得された自装置の位置情報と、前記方向検出部によって検出された自装置の向きと、に基づいて決定されたパターンの光を、前記対象人物が視認可能なエリアに投射させる投射制御部と、
を備えた、移動式投射装置。
【0054】
(付記2)
前記投射制御部は、前記投射部を用いて、前記対象人物が進むべき移動方向を示す矢印、を表したパターンの光を、前記対象人物が視認可能なエリアに投射させる、
付記1に記載の移動式投射装置。
【0055】
(付記3)
前記投射制御部は、前記撮像部の撮像画像から前記対象人物の周辺エリアにおいて障害物が特定された場合、前記投射部を用いて、前記障害物を回避するような移動方向を示す矢印、を表したパターンの光を、前記対象人物が視認可能なエリアに投射させる、
付記2に記載の移動式投射装置。
【0056】
(付記4)
地図情報が格納されたデータベースをさらに有し、
前記投射制御部は、前記地図情報に基づいて前記対象人物の現在位置から目的位置までの移動経路を決定したうえで、前記投射部を用いて、決定した移動経路に沿った移動方向を示す矢印、を表したパターンの光を、前記対象人物が視認可能なエリアに投射させる、
付記2に記載の移動式投射装置。
【0057】
(付記5)
前記投射制御部は、前記撮像部の撮像範囲の照度が所定の照度よりも低い場合には、前記投射部を用いて、前記撮像部の撮像画像の一部又は全部を含むような投射範囲のパターンの光を投射させる、
付記1~4の何れか一項に記載の移動式投射装置。
【0058】
(付記6)
前記投射部は、
光源と、
前記光源から出射された光を、前記投射制御部の指示に従ったパターンとなるように変調する光空間位相変調器と、
前記光空間位相変調器によって変調された光を投射する光学系と、
を有する、
付記1~5の何れか一項に記載の移動式投射装置。
【0059】
(付記7)
前記光は、レーザ光である、
付記1~6の何れか一項に記載の移動式投射装置。
【0060】
(付記8)
前記移動式投射装置は、飛行可能に構成されている、
付記1~7の何れか一項に記載の移動式投射装置。
【0061】
(付記9)
付記1~8の何れか一項に記載の移動式投射装置と、
前記移動式投射装置に対し、前記指定されたエリアに移動するように指示を与えるとともに、前記光のパターンによって表される標示内容に関する指示を与える管理装置と、
を備えた、移動式投射システム。
【0062】
(付記10)
位置情報取得部によって取得される自装置の位置情報を基に、指定されたエリアに自装置を移動させるステップと、
前記指定されたエリアにおいて、撮像部によって自装置の周辺を撮像するステップと、
前記撮像部の撮像画像から対象人物が特定された場合、投射部を用いて、前記位置情報取得部によって取得された自装置の位置情報と、方向検出部によって検出された自装置の向きと、に基づいて決定されたパターンの光を、前記対象人物が視認可能なエリアに投射させるステップと、
を備えた、移動式投射装置の制御方法。
【0063】
(付記11)
前記撮像部によって自装置の周辺を撮像するステップでは、前記撮像部の撮像範囲の照度が所定の照度よりも低い場合には、前記投射部を用いて前記撮像部の撮像画像の一部又は全部を含むような投射範囲のパターンの光を投射させながら、前記撮像部によって自装置の周辺を撮像する、
付記10に記載の移動式投射装置の制御方法。
【0064】
(付記12)
位置情報取得部によって取得される自装置の位置情報を基に、指定されたエリアに自装置を移動させる処理と、
前記指定されたエリアにおいて、撮像部によって自装置の周辺を撮像する処理と、
前記撮像部の撮像画像から対象人物が特定された場合、投射部を用いて、前記位置情報取得部によって取得された自装置の位置情報と、方向検出部によって検出された自装置の向きと、に基づいて決定されたパターンの光を、前記対象人物が視認可能なエリアに投射させる処理と、
をコンピュータに実行させる制御プログラム。
【0065】
(付記13)
前記撮像部によって自装置の周辺を撮像する処理では、前記撮像部の撮像範囲の照度が所定の照度よりも低い場合には、前記投射部を用いて前記撮像部の撮像画像の一部又は全部を含むような投射範囲のパターンの光を投射させながら、前記撮像部によって自装置の周辺を撮像する、
付記12に記載の制御プログラム。
【符号の説明】
【0066】
1 移動式投射システム
11 移動式投射装置
12 管理装置
50 ネットワーク
100 コンピュータ
101 CPU
102 RAM
103 ROM
104 IF
105 HDD
106 制御プログラム
111 位置情報取得部
112 方向検出部
113 制御部
114 撮像部
115 投射部
116 電源
1131 移動制御部
1132 投射制御部
1151 光源
1152 光空間位相変調器
1153 光学系