(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】カプラー
(51)【国際特許分類】
E02F 3/36 20060101AFI20240501BHJP
E02F 3/40 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
E02F3/36 B
E02F3/40 E
(21)【出願番号】P 2021531336
(86)(22)【出願日】2019-11-27
(86)【国際出願番号】 AU2019051300
(87)【国際公開番号】W WO2020107069
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2022-11-25
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NZ
(73)【特許権者】
【識別番号】521234618
【氏名又は名称】ヒューズ・アセット・グループ・ピーティーワイ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HUGHES ASSET GROUP PTY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ヒューズ,ノエル・ロバート
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0301779(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0148903(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0247228(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0237656(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 3/36
E02F 3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔を置いて配置された第1および第2の平行なピンを有する器具を、車両または機械のアームに、連結するためのカプラーであって、
前記車両または機械のアームに取り付けるための本体と、
前記本体に対して固定され、前記第1の器具用のピンを受容するための開口部およびシートを規定する第1の顎状部と、
前記第2の器具用のピンを受容するための開口部およびシートを規定する可動の第2の顎状部であって、前記第1および第2の顎状部は互いに反対側を向いている、第2の顎状部と、
前記第2の顎状部が前記第1の顎状部に対して遠位にある伸長位置と、前記第2の顎状部が前記第1の顎状部の近位にある収縮位置と、の間で、移動軸に沿って、前記第2の顎状部を、前記第1の顎状部に近づけたり遠ざけたりするように選択的に移動させるように動作可能なアクチュエータと、
第1のロック部材であって、前記第1のロック部材の一部分が前記第1の顎状部の前記開口部内に突出するロック位置と、前記ロック部材が前記第1の顎状部の前記開口部から実質的にまたは完全に引っ込められるロック解除位置と、の間で、前記第1の顎状部に対して移動可能である、第1のロック部材と、
第2のロック部材であって、前記第2のロック部材の一部分が前記第2の顎状部の前記開口部を狭窄させるロック位置と、前記第2のロック部材が前記第2の顎状部の前記開口部から実質的にまたは完全に引っ込められるロック解除位置と、の間で、前記第2の顎状部に対して枢動可能である、第2のロック部材と、を含み、
前記伸長位置から前記収縮位置に向かう前記第2の顎状部の移動は、前記第1のロック部材の前記ロック解除位置から前記ロック位置に向かう移動を引き起こし、
前記第1の顎状部は、前記第1のピンのための前記シートの前方のリップ部を含み、前記リップ部は、前記第1のロック部材に略対向する方向に突出しており、
前記第2の顎状部は、前記アクチュエータの故障の際に前記カプラーに取り付けられた器具の回転を防止するために、前記第2の顎状部の開口部に隣接する平坦で、前記移動軸に実質的に平行である、延長面を含む、
カプラー。
【請求項2】
前記第1の顎状部の前記リップ部は、前記第1の顎状部の上方に前記第2の顎状部がある状態の前記カプラーの垂直方向において、前記カプラーに固定された器具からの重力が前記リップ部に少なくとも部分的に支持されるような形状である、請求項1に記載のカプラー。
【請求項3】
前記第1のロック部材は、前記第1の顎状部に対して、前記ロック位置と、前記ロック解除位置と、の間で、枢動可能である、請求項1または2に記載のカプラー。
【請求項4】
前記第1の顎状部と器具用のピンとの係合は、前記第1の顎状部の前記リップ部を通過するために、前記第1の顎状部または前記器具用のピンの運動の方向の変更を必要とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のカプラー。
【請求項5】
前記第1の顎状部の前記シート上へまたは前記シートから離れる器具用のピンの移動は、前記移動軸に垂直な運動成分を有する方向への前記ピンまたはカプラーの移動を必要とする、請求項4に記載のカプラー。
【請求項6】
前記可動の顎状部は、可動部材上に設けられ、前記可動部材は、前記第1のロック部材の第1のカム面と摺動可能に係合するように配置された延長部を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のカプラー。
【請求項7】
前記可動部材の延長部は、実質的に中実である、請求項6に記載のカプラー。
【請求項8】
前記アクチュエータは、前記可動部材の延長部に入れ子にならない、請求項6または7に記載のカプラー。
【請求項9】
前記係合部分は、前記可動部材の延長部の端部または端部付近に突起を含み、前記突起は、前記第1のロック部材の表面に沿って摺動可能な表面を有する、請求項6、7、または8のいずれか一項に記載のカプラー。
【請求項10】
第1のロック部材は、ピボットであって、前記ピボットは、前記第1の顎状部の開口部に最も近い前記ピボット側にある前記第1のロック部材の顎状部側部分を規定する、ピボットと、前記ピボットと反対側に位置するリリースタブと、を有する、請求項6~9のいずれか一項に記載のカプラー。
【請求項11】
前記第1のロック部材は、前記可動部材の延長部を摺動可能に受容するために、前記顎状部側部分の少なくとも主要部に沿って延びる第1のカム面と、前記リリースタブに沿って延びる第2のカム面と、を有する、請求項10に記載のカプラー。
【請求項12】
前記第1のカム面は、前記第1のロック部材の前記顎状部側部分の少なくとも主要部分に沿って実質的に平坦であり、前記顎状部側部分から前記リリースタブへの移行部またはその付近に窪みがある、請求項11に記載のカプラー。
【請求項13】
前記第2のロック部材は、そのロック位置に向かって付勢され、前記付勢されたロック部材は、前記可動部材および任意の取り付けられた構成要素の重量を支持するのに十分である、請求項6~12のいずれか一項に記載のカプラー。
【請求項14】
前記第1の顎状部の開口部内に突出する前記第1のロック部材の前記一部分は、前記移動軸に対して非垂直な角度で傾斜する傾斜面の前面を含む、
請求項1~13のいずれか一項に記載のカプラー。
【請求項15】
前記第1のロック部材は、フック形状を有さない、請求項
14に記載のカプラー。
【請求項16】
前記傾斜面の前面は、前記第1のロック部材のテーパー状の端部によって提供される、請求項
14又は15に記載のカプラー。
【請求項17】
前記第2のロック部材は、傾斜面の前面と傾斜面の後面とを含み、前記前面および後面は、前記移動軸に対して反対方向に傾斜している、請求項1~16のいずれか一項に記載のカプラー。
【請求項18】
前記第2のロック部材をそのロック位置に付勢するように配置された板ばねを含む、請求項1~17のいずれか一項に記載のカプラー。
【請求項19】
前記第1の枢動ロック部材は、器具用のピンの円周上の単一の点で、またはそれに沿って、前記第1の顎状部に着座する前記器具用のピンにのみ接触するような形状である、請求項1~18のいずれか一項に記載のカプラー。
【請求項20】
前記第1の枢動ロック部材は、前記第1の顎状部に着座した前記器具用のピンと接触するための実質的に平面のロック面を含む、請求項19に記載のカプラー。
【請求項21】
前記アクチュエータは、線形アクチュエータである、請求項1~20のいずれか一項に記載のカプラー。
【請求項22】
前記アクチュエータは、油圧ラムである、請求項21に記載のカプラー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、掘削機、掘削具、または他の土木機械もしくは車両のアームに器具を連結するためのカプラーに関する。特に、カプラーは、油圧障害の場合に連結解除を防止する安全機構を備えた油圧カプラーである。
【背景技術】
【0002】
一般に「ヒッチ」とも呼ばれるカプラーは、掘削バケットまたは他の土木器具などの器具を、掘削機、掘削具、またはバックホーなどの機械のアームに取り外し可能に接続するために使用される。これらのカプラーは、典型的に、アームの自由端に装着され、アームに器具を接続するために土木器具に通常提供される一対の平行なピンと係合するように構成されている。
【0003】
最新のカプラーは、油圧アクチュエータを使用して操作される。これにより、車両の操作者が、器具をアームから迅速かつ遠隔に取り換えて、ある器具をカプラーから解放し、別の器具のピンに係合させることができる。使用中、器具は油圧下でカプラーによってしっかりと保持されている。ただし、故障により油圧の損失がある場合、器具が緩むか、またはアームから落下する危険性がある。器具の緩みまたは落下は、安全上の問題があり、重大な怪我につながる可能性がある。
【0004】
このリスクを軽減するために、油圧カプラーには通常、油圧または他の障害があった場合に器具の一方または両方のピンがカプラーと係合したままになるように、1つ以上の安全ロック機能を有する。一方のピンのみをロックする安全ロックは、両方のピンをロックする安全ロックよりも望ましくない。これは、器具がカプラーから部分的に落下し、ロックされたピンの周りを揺動することで怪我をする可能性があるためである。
【0005】
両方のピンをカプラーにロックする既存の安全ロックシステムは、信頼性に関する課題に直面している。カプラーおよびそのロックシステムは通常、過酷な環境で使用され、土、砂、セメント、および/またはグリットにさらされる。これらの破片粒子により、例えば、ロック性能の低下、ジャミングの発生、ならびにカプラーからの器具の取り外しの阻害、および/または構成要素の力ならびに摩耗の増加により、ロックシステムが動作不能になる可能性がある。カプラーと安全機構には、掘削機器で一般的に経験される大きな負荷に耐えるのに十分に堅牢でなくてはならない。
【0006】
本発明の少なくとも好ましい実施形態の目的は、上述の欠点のうちの1つ以上に対処すること、および/または少なくとも公衆に有用な代替案を提供することである。
【0007】
特許明細書、他の外部文書、または他の情報源が参照されているこの明細書では、一般に、本発明の特徴を議論するための文脈を提供するためのものである。特に明記されていない限り、そのような外部文書または情報源への参照は、そのような文書またはそのような情報源が、いかなる司法管轄においても、先行技術であるか、または当該技術における一般常識の一部を形成することを認めるものとして解釈されるべきではない。
【発明の概要】
【0008】
第1の態様では、本発明は、概して、間隔を置いて配置された第1および第2の平行なピンを有する器具を車両または機械のアームに連結するためのカプラーにある。カプラーは、車両または機械のアームに取り付けるための本体と、本体に対して固定され、第1の器具用のピンを受容するための開口部およびシートを規定する第1の顎状部と、第2の器具用のピンを受容するための開口部およびシートを規定する可動の第2の顎状部であって、第1および第2の顎状部は互いに反対側を向いている、第2の顎状部と、第2の顎状部が第1の顎状部に対して遠位にある伸長位置と、第2の顎状部が第1の顎状部の近位にある収縮位置との間で、移動軸に沿って第2の顎状部を第1の顎状部に近づけたり遠ざけたりするように選択的に移動させるように動作可能なアクチュエータと、第1のロック部材であって、ロック部材の一部分が第1の顎状部の開口部内に突出するロック位置と、ロック部材が第1の顎状部の開口部から実質的にまたは完全に引っ込められるロック解除位置との間で、第1の顎状部に対して枢動可能である、第1のロック部材と、第2のロック部材であって、第2のロック部材の一部分が第2の顎状部の開口部を狭窄させるロック位置と、第2のロック部材が第2の顎状部の開口部から実質的にまたは完全に引っ込められるロック解除位置との間で、第2の顎状部に対して枢動可能である、第2のロック部材と、を含む。伸長位置から収縮位置に向かう第2の顎状部の移動は、第1のロック部材のロック解除位置からロック位置に向かう移動を引き起こす。第1の顎状部は、第1のピンのためのシートの前方のリップ部を含み、リップ部は、第1のロック部材に略対向する方向に突出している。
【0009】
一実施形態では、第1の顎状部のリップ部は、第1の顎状部の上方に第2の顎状部がある状態のカプラーの垂直方向において、カプラーに固定された器具からの重力がリップ部に少なくとも部分的に支持されるような形状である。好ましくは、第1の顎状部と器具用のピンとの係合は、第1の顎状部のリップ部を通過するために、第1の顎状部または当該器具用のピンの動きの方向の変更を必要とする。追加的または代替的に、第1の顎状部のシート上へまたはシートから離れる器具用のピンの移動は、好ましくは、移動軸に垂直な移動成分を有する方向へのピンまたはカプラーの移動を必要とする。
【0010】
一実施形態では、第2の顎状部は、アクチュエータの故障の際にカプラーに取り付けられた器具の回転を防止するために、第2の顎状部の開口部に隣接する平坦な延長面を含み、延長面は、移動軸に実質的に平行である。
【0011】
可動の顎状部は、可動部材上に設けられてもよく、可動部材は、第1のロック部材の第1のカム面と摺動可能に係合するように配置された延長部を含む。一実施形態では、可動部材の延長部は、実質的に中実であり、および/またはアクチュエータは、可動部材の延長部に入れ子にならない。
【0012】
一実施形態では、係合部分は、可動部材の延長部の端部または端部付近に突起を含み、突起は、第1のロック部材の表面に沿って摺動可能な表面を有する。
【0013】
一実施形態では、第1のロック部材は、ピボットであって、ピボットは、第1の顎状部の開口部に最も近いピボット側にある第1のロック部材の顎状部側部分を規定する、ピボットと、ピボットの反対側に位置するリリースタブと、を有する。
【0014】
可動部材の延長部を摺動可能に受容するために、第1のカム面は、第1のロック部材の顎状部側部分の少なくとも主要部分に沿って延びてもよく、第2のカム面は、リリースタブに沿って延びてもよい。一実施形態では、第1のカム面は、第1のロック部材の顎状部側部分の少なくとも主要部分に沿って実質的に平坦であり、顎状部側部分からリリースタブへの移行部またはその付近に窪みがある。
【0015】
一実施形態では、第1の顎状部の開口部内に突出する第1のロック部材の部分は、移動軸に対して非垂直な角度で傾斜する傾斜面の前面を含む。傾斜面の前面は、第1のロック部材のテーパー状の端部によって提供されてもよい。
【0016】
第2のロック部材は、そのロック位置に向かって付勢されることが好ましく、付勢されたロック部材は、可動部材および任意の取り付けられた構成要素の重量を支持するのに十分である。例えば、第2のロック部材をそのロック位置に付勢するように板ばねを配置してもよい。
【0017】
第2のロック部材は、傾斜面の前面および傾斜面の後面を有することができ、前面および後面は、移動軸に対して反対方向に傾斜している。
【0018】
一実施形態では、第1の枢動ロック部材は、器具用のピンの円周上の単一の点で、またはそれに沿って、第1の顎状部に着座する器具用のピンにのみ接触するような形状である。例えば、第1の枢動ロック部材は、第1の顎状部に着座した器具用のピンに接触するための実質的に平面のロック面、または凹面を含んでもよい。
【0019】
一実施形態では、アクチュエータは、油圧ラムなどの線形アクチュエータである。
【0020】
本発明が関係する当業者には、添付の特許請求の範囲に定義された本発明の範囲から逸脱することなく、本発明の構造ならびに広く異なる実施形態および用途における多くの変更が示唆されるであろう。本明細書の開示および説明は例示であり、いかなる意味においても限定を意図するものではない。本発明が関係する技術分野において既知の等価物を有する特定の整数が本明細書で言及される場合、そのような既知の等価物は、あたかも個別に記載されているかのように本明細書に組み込まれるものとみなされる。
【0021】
本明細書および特許請求の範囲で使用される「含む」という用語は、「少なくとも部分的に~からなる」ことを意味する。「含んでいる」という用語を含む本明細書および特許請求の範囲の記述を解釈するときに、この用語で始まるもの以外の他の特徴も存在する可能性がある。「含む」および「含まれた」などの関連用語も同様に解釈される。
【0022】
本明細書に開示されている数値の範囲(例えば、1~10)への参照は、その範囲内のすべての有理数およびその範囲内の任意の有理数の範囲(例えば、1~6、1.5~5.5、および3.1~10)への参照も組み込まれることを意図する。したがって、本明細書に明示的に開示されたすべての範囲のすべての部分範囲は、本明細書に明示的に開示されている。
【0023】
本明細書で使用される場合、名詞に続く「(複数可)」という用語は、その名詞の複数形および/または単数形を意味する。本明細書で使用される場合、「および/または」という用語は、「および」、「または」、または文脈が許す場合にはその両方を意味する。
【0024】
本発明は、添付の図面を参照し、例としてのみ説明される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】例示的なカプラーの正面/底面斜視図を示す。
【
図3】
図1および
図2のカプラーの側面図であり、カプラーはロック構成にあり、一対の器具用のピンと係合している。
【
図4】
図1~
図3のカプラーの側面斜視図であり、可動部材、アクチュエータ、および第2のラッチを明らかにするために固定顎状部構成要素および前ラッチが隠されている。
【
図5】
図1~
図4のカプラーの安全機構の組み立てられた構成要素の側面図であり、第2の顎状部が部分収縮位置にある。
【
図6】
図1~
図4のカプラーの安全機構の組み立てられた構成要素の側面図であり、第2の顎状部が伸長位置にある。
【
図7】
図1~
図6のカプラーの中間面で取った側断面図である。
【
図9A】カプラーを器具の平行なピンに連結するステップを示す側面図であり、
図9Aは、ピンのうちの第1のものを受容するロック解除構成にあるカプラーを示す。
【
図9B】カプラーを器具の平行なピンに連結するステップを示す側面図であり、
図9Bは、カプラーが第1のピンにロックされて、第2のピンを受容する準備が整った引っ込んだ構成にあるカプラーを示す。
【
図9C】カプラーを器具の平行なピンに連結するステップを示す側面図であり、
図9Cは、第2のピンと整列するように回転したカプラーを示す。
【
図9D】カプラーを器具の平行なピンに連結するステップを示す側面図であり、
図9Dは、第2のピンに係合し、両方のピンがカプラーにロックされたロック構成にあるカプラーを示す。
【
図10】掘削機のアームの端に取り付けた
図1~
図8のカプラーを掘削機バケットの平行なピンに連結する過程を示す側面図であり、(
図10の)Aは、バケットに取り付けられる準備が整ったロック解除構成にあるカプラーを示し、(
図10の)Bは、ピンのうちの第1のものを受容するロック解除構成にあるカプラーを示し、(
図10の)Cは、カプラーが第1のピンにロックされて、第2のピンを受容する準備が整った引っ込んだ構成にあるカプラーを示し、(
図10の)Dは、第2のピンと整列するように掘削機アームによって回転したカプラーを示し、(
図10の)Eは、第2のピンに係合し、両方のピンがカプラーにロックされたロック構成にあるカプラーを示し、(
図10の)Fは、連結したバケットを持ち上げる掘削機アームを示す。
【
図11】
図10Eのピックアップ位置における、掘削機アームと掘削機バケットとの間の連結の正面斜視図である。
【
図12】バケットを後方に回転させた、掘削機アームと掘削機バケットとの間の連結の正面斜視図である。
【
図13】バケットを前方に回転させた、掘削機アームと掘削機バケットとの間の連結の正面斜視図である。
【
図15】取り付けられた器具が最も伸ばされた使用中の位置に対応する配向に垂直に配向されている
図1~
図9Dのカプラーの側面図である。
【
図16】
図15に示す配向の
図1~
図9Dのカプラーの側断面図であり、掘削機のアームの端に取り付けられ、掘削機バケットの平行なピンに連結されたカプラーを追加的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1~
図16は、本発明の一実施形態による例示的なカプラー1を示す。カプラー1は、間隔を置いて配置された第1および第2の平行なピン2a、2bを有する器具を車両または機械のアームに連結するのに好適である。横断する平行なピン2a、2bは、掘削バケット、リッピングアタッチメント、シーブバケット、クランプ、ワイドバケット、油圧ハンマー、スクリューオーガなどのような器具の標準機能として一般的に提供され、
図11~
図14に示すように、車両または他の機械におけるアーム/ブームへの器具の取り付けを支援する。
【0027】
「F」とマークされた矢印が、カプラー1の前方方向を適切に示すために図に挿入されている。開示される実施形態におけるカプラー1の前部Fは、器具の前部(
図10A~
図14における掘削機バケットの開いた側)に対応する側である。カプラー1の絶対的な配向は、それが装着されているアームが移動するにつれて、その使用中に変化する。したがって、前方、後方、左側、および右側(またはその類義語)という用語は、カプラーの前方方向Fを基準として解釈されるべきであり、必ずしも所与の図に示されている配向を基準として解釈される必要はなく、これらの用語の使用は、説明を簡単にするためであり、限定を意図したものではない。
【0028】
カプラー1は、本体3と、本体3に対して固定された第1の顎状部5と、本体に対して移動可能な可動の第2の顎状部7と、第2の顎状部7を第1の顎状部に近づけたり遠ざけたりするように選択的に移動させるように動作可能なアクチュエータ9と、を有する。第2の顎状部7の移動は、図に示す移動軸MAで示すように、カプラーの長手方向の前後方向に延びる移動経路に沿っている。本体3は、例えば取付機構を介して車両または機械アーム71に取り付けるように構成されている。開示される実施形態では、本体3は、プレート4の間でアームの端またはアームからのリンクを受容するために、間隔を置いて配置された2つの平行プレート4を含む。プレート4は、カプラー本体3をアームまたはアームリンクにボルト締めするための装着開口部6を含むが、他の取り付け方法も可能である。持ち上げラグ8(
図2)が、好ましくはカプラー本体3の後部に設けられ、例えばラグ8の開口部を通して置かれたチェーンを使用して、作業現場での様々なアイテムの持ち上げを容易にする。
【0029】
第1の顎状部5はフック状であり、カプラーの前側Fへの開口部11を規定する。第1の顎状部5の内面は、第1の器具用のピン2aを受容するためのシート13を提供する。第1および第2の器具用のピン2a、2bは実質的に円筒形であり、したがって、器具用のピン2aに対してシート13を提供する第1の顎状部5の表面は、ピン2aの曲率に実質的に対応する曲率を有する凹面である。
【0030】
開示される実施形態では、第1の顎状部5は、カプラーの本体3に対して固定されているか、または一体化されている距離を置いて配置された2つの側板15から延びるフックによって提供される。フックのシート面に隣接する上面を有するウェブ16は、2つのプレート15のフック間を橋渡しして、器具用のピン2aのためのシートの少なくとも一部を形成するとともに、第1の顎状部5に剛性を提供する。
【0031】
図3を参照すると、第1の顎状部5は、ピンシート13の前方に隆起リップ部17を含む。リップ部17は、第1の顎状部の開口部11内に突出しており、リップ部17に隣接する開口部のサイズを低減し、シート13を形成するリップ部17の後側にくぼみを規定する。リップ部17は、器具用のピン2aが、開口部11を通ってシート13に完全に着座した位置に出入りする途中で、カプラー1に対して非線形の出入り経路をナビゲートすることを必要とする。つまり、リップ部17を通過する器具用のピン2aの相対移動(または、器具用のピン2aを通過するリップ部17の移動)の場合、その移動は、カプラー1の前後方向に垂直な方向の移動の成分を有さなくてはならず、器具用のピン2aが、移動軸MAと平行の純粋な「前方」または「後方」の移動によって、第1顎状部との係合状態または係合解除状態に移動する(または第1顎状部5が器具用のピンとの係合状態または係合解除状態に移動する)ことは不可能である。
【0032】
開示される実施形態では、リップ部17は、それ自体の周りを曲がる第1の顎状部フックの部分、すなわち、
図3を参照すると、第1のピン2aの垂直中心線VCaの前方のフックの部分によって形成されており、リップ部17の表面が、シート面に隣接している。しかしながら、代替の実施形態では、リップ部は、代わりに別個の突起であってもよい。リップ部17は、好ましくは、ウェブ16によって形成される2つの側板15の間でカプラー1の幅全体に延びる。
【0033】
第1のロック部材19が第1の顎状部5に設けられている。第1のロック部材19は、
図3、
図5、および
図7に示す、ロック部材19の一部分が第1の顎状部5の開口部に突出するロック位置と、
図6に示す、ロック部材19が第1の顎状部5の開口部11から実質的にまたは完全に引っ込められるロック解除位置との間で移動可能である。第1のロック部材19がロック解除位置にある状態で、第1の顎状部5を移動させて器具用のピン2aと係合させることができるが、ロック位置では、第1のロック部材19は、第1の顎状部5からの器具用のピンの出入りを防止する。
【0034】
第1のロック部材19は、例えば、第1の顎状部5またはカプラー本体3に枢動可能に装着されることにより、第1の顎状部5に対して枢動可能である。示される実施形態では、第1のロック部材19の枢動は、第1の顎状部の2つの側板15の間に延びるピン21によって提供され、第1のロック部材19はこれらの側板15の間に位置する。
【0035】
図5および
図6を参照すると、ピボット21は、第1のロック部材19を、第1の顎状部開口部11に最も近いピボット21側にある前側顎状部側部分19aと、ピボット21と反対側に位置するリリース部分19bとに名目上分割する。以下でより詳細に説明するように、第1のロック部材19の上面は、可動の第2の顎状部7の延長部37を摺動可能に受容するための1つ以上のカム面23a、23bを提供する。
【0036】
実質的に平坦な第1のカム面23aが、第1のロック部材19の顎状部側部分19aの上部に沿って延びている。開示される実施形態では、第1のカム面23aが、顎状部側部分19aの長さの主要部に沿って延びている。第2のカム面23bがリリース部分19bに設けられ、第1のカム面23aに対して傾斜している。第1および第2のカム面23a、23bは、隣接していてもよいか、または離れていてもよい。
【0037】
図8を参照すると、開示される実施形態では、第1および第2のカム面23a、23bは別個の表面である。第1のロック部材19は、ロック部材19の側面の隆起したレール上に位置する2つの平行な第1のカム面23aを含む。リリース部分19bは、2つの第1のカム面23aの間であるが、それらの後方に位置付けられたリリースタブ25を含み、リリースタブ25の前面には傾斜した第2のカム面23bが設けられている。第2のカム面23bの少なくとも前側導入部23cは、曲率半径を有する凹面であり、平坦な第1のカム面23aに沿って可動の顎状部の延長部37が摺動してから、可動の顎状部の延長部が傾斜した第2のカム面23bに沿って係合および摺動するまでの段階的な移行部を提供する。第1のロック部材19が回転する際に、可動の第2の顎状部7の延長部37を通過することを可能にするクリアランスのために、顎状部側部分19aからリリースタブ19bへの移行部付近の第1のカム面23aの端部に窪み24が設けられている。
【0038】
第1のロック部材19は、第1のカム面23aとは反対側を向いているロック面27ロック面27をロック部材19の表面にさらに含む。ロック部材19がそのロック位置にあるときに、ロック面27は、器具用のピン2aと接触する。ロック部材19がそのロック位置にあるとき、ロック面27は、第1の顎状部の開口部11内に突出する第1のロック部材19の部分に位置する。
【0039】
ロック面27は、そのロック位置で係合したときに、器具用のピン2aとの接触が単一の点のみになるような形状になっている。開示される実施形態では、実質的に平坦な/平面のロック面を使用することにより、単一の接触点が達成される。ロック面27は、器具用のピン2aに対してロックされたときに、円筒状で器具用のピンに対して接線方向であるため、単一点CPでのみピンと接触する(
図9Bおよび
図9Cを参照)。代替の実施形態では、ロック面27は、器具用のピン2aとの単一の接触点のみを達成する方法で代替的な形状を有してもよく、例えば、ロック面27は、凸面であり得るか、または代替的には、器具用のピンの半径よりも著しく大きい曲率を有する凹面であってもよい。最も好ましい実施形態は、ロック面27が平坦であるか、または任意の曲率が最小であり、ロック面が「フック」形状を形成しないものである。フック状のロック面、特に器具用のピン2bの曲率に密接に従うものは、ロック面と器具用のピンとの間に破片を閉じ込める可能性があり、それにより、第1のロック部材を所定の位置に固定するときに、ロック部材が固定されるのが妨げられるか、またはそれを所定の位置に押し込むことで、ロック部材および関連付けられた構成要素に大きな負荷がかかり、構成要素の潜在的な変形および/または故障をもたらし得るという問題を引き起こす。
【0040】
第1のロック部材19は、その前側端部、すなわち、ピボット21に対して最も遠位のロック部材の端部においてテーパー状になっている。テーパーは、カプラー1の長手方向/移動軸MAに対して非垂直な角度で傾斜する傾斜面の導入面29を含む。導入面29は、第1のロック部材19がそのロック位置にあるときに、顎状部の開口部11の上部まで延びることが好ましく、ロック位置では、長手方向/移動軸MAに垂直な、第1の顎状部の開口部内に突出する第1のロック部材19の表面が存在しないようする。
【0041】
既存のカプラーの損傷または故障の一般的な原因は、経験の浅い操作者による誤用、特に操作者が繰り返しかつ強制的にロック状態にあるカプラーを器具に無理やり係合させようとすることによる誤用によるものである。本実施形態では、第1のロック部材19がそのロック位置にロックされている状態で、操作者がカプラー1を器具用のピン2aに無理やり係合させようとする場合、第1のロック部材のテーパー29は、カプラー1をピン2aに押す力が、ピボット21周りの回転力としてロック部材19に伝達されて、可動の顎状部延長部37によって抵抗されることを意味する。これは、ロック部材が、力をピボットピン21に直接伝達する鈍い端面(典型的に、可動の顎状部延長部よりも小さく、したがってより弱い)を含む場合、ピン21の剪断または変形を引き起こす可能性があるのとは対照的である。
【0042】
可動の第2の顎状部7は、第2の器具用のピン2bを受容するための開口部31およびシート32を規定するフック状の部材である。第2の顎状部7は、カプラー1の後側に開いており、すなわち、第1および第2の顎状部5、7は、互いに反対方向を向いている。可動の第2の顎状部7は、第2の顎状部が第1顎状部に対して遠位にある伸長位置、第1および第2の顎状部5、7がそれぞれの器具用のピンに係合する係合位置、および第2の顎状部が第1の顎状部に対して近位にある収縮位置の間で移動可能である。
【0043】
伸長位置では、固定顎状部5の口の仮想中心と可動の顎状部7の口の仮想中心との間の間隔は、第1および第2の器具用のピン2a、2bの中心間の間隔よりも大きい。
【0044】
可動の顎状部7は、可動部材35に設けられ、可動の顎状部7は、可動部材35に固定されているか、または一体化されている。可動部材35は、第2の顎状部7から前方に、顎状部の開口部31とは反対方向に延びる延長部37と、可動部材35をアクチュエータ9に連結するための駆動部分38と、を有する。可動部材35は、運動軸MAに沿って、固定された第1の顎状部5に近づいたり遠ざかったりするように、カプラー本体3に対して直線運動するようにカプラー1に摺動可能に装着されている。カプラーが器具用のピン2a、2bとの係合のために整列されるときに、第2の顎状部の移動は、横断する器具用のピン2a、2bに対して垂直である。
【0045】
開示される実施形態では、第1の顎状部側板15の対向する内面は各々、線形ガイドチャネル43を含む(
図8を参照)。これらのガイドチャネル43は、例えば、可動部材35から横方向に突出するガイドタブ45などの可動部材上の相補的なガイド特徴を受容する。可動部材がアクチュエータ9によって前方または後方に移動する際に、可動部材35のガイドタブ45は、ガイドチャネル43内で前方および後方に摺動し、可動の第2の顎状部7の運動をガイドおよび拘束する。ガイドチャネル43は、可動部材35の移動の限界を規定するストップを含んでもよいか、または代替的には、可動部材の移動は、アクチュエータ9のストロークなどの他の制約によって決定されてもよい。
【0046】
可動部材の延長部37は、第1および第2の顎状部の開口部11、31の上方に位置するが、アクチュエータ9の下方にある(カプラーが
図1~
図8に示されるように配向されるとき)。延長部37は、特にカム面23a、23bと摺接することにより、第1のロック部材19と相互作用するように配置されている。延長部37は、平坦な第1のカム面23aに摺接する延長部37の下側の面を有する係合部分を有する。可動の顎状部7が固定顎状部5に向かって移動する際に、可動部材の延長部37が第1のロック部材19上を摺動する。
【0047】
係合部分は、第1のロック部材19のリリース部分19bと相互作用するために、可動部材の延長部37の端部またはその付近の下側に突起49をさらに含む。突起49は、第1のロック部材19のリリース部分19bと摺動係合する先端が湾曲した傾斜面を有している。傾斜面の角度または曲率は、リリース部分19bの傾斜面の角度または曲率と実質的に同じであることが好ましい。
【0048】
可動の顎状部7が固定顎状部5から離れる方向に移動する際に、突起49はリリース部分19bに向かって移動して、リリース部分19bと接触し、突起49の連続した移動により、突起が、リリース部分19bの傾斜面に沿って摺動し、第1のロック部材19を回転させる。好ましくは、可動の顎状部7がその伸長位置にあるときに、突起49は依然として第1のロック部材19のリリース部分と接触しており、第1のロック部材をそのロック解除位置に保持する。
【0049】
可動部材の延長部35は、アクチュエータ9に隣接して位置する実質的に中実の本体を有することが好ましい。中実の本体はカプラーを強化し、特に誤用されるときに、カプラーが堅牢であることを保証するのに役立つ。一部の既存のカプラーは、アクチュエータが入れ子になる中空またはフレーム状の可動構成要素を含む。このような構成要素は故障しがちである。
【0050】
開示される実施形態では、駆動部分38は、第2の顎状部の開口部31の前方に設けられ、左側および右側耳部39を備え、アクチュエータ連結ピン41がこれらの耳部の間に延びている。代替の実施形態では、連結部分は、異なる形態をとってもよいか、または他の方法で可動部材35上に位置付けられてもよいと理解されるであろう。
【0051】
アクチュエータ9は、好ましくは複動油圧ラムの形態の線形アクチュエータである。アクチュエータ9は、第1の顎状部側板15間のカプラー本体3に収納されている。アクチュエータの一端はカプラー本体3に対して固定され、その他端は可動部材に固定されている。開示される実施形態では、油圧ラム9のシリンダはピン10を介して第1の顎状部側板15にピン止めされており、油圧ラムロッドは可動部材35にピン止め41されている。
【0052】
好ましくは、油圧シリンダ9のラムは、伸長(または収縮)位置に機械的に付勢されない。一部の既存のカプラーでは、例えばロッドのばねを使用して、アクチュエータを伸張位置に機械的に付勢し、油圧の損失が発生した際にアクチュエータが延ばされたままにすることを保証することによって、カプラーの安全機能が提供される。アクチュエータの機械的付勢に依存する設計には、いくつかの欠点があり、(例えば、連結解除中に、)例えば、油圧ラムがそのようなばねの付勢に抗して作用するために必要なより大きな力に対応するために、構成要素をより強くしなければならない。加えて、作業環境には、簡単に閉じ込められ、ラムを付勢するばねの故障の原因となる適切な動作を妨げる可能性のある破片が定期的に含まれる。このようなばねはカプラーハウジング内またはアクチュエータの内部に含まれていることが多いため、ばねの状態を監視して、それらが目的またはメンテナンス目的に合っているかどうかを知ることは難しい。
【0053】
可動の第2の顎状部7には、第2のロック部材51が設けられている。第2のロック部材51は、第2のロック部材51の一部分が第2の顎状部7の開口部31を狭窄させるロック位置と、第2のロック部材51が開口部31から実質的にまたは完全に引っ込められるロック解除位置との間で、第2の顎状部7に対して枢動可能である。
【0054】
開示される実施形態では、第2のロック部材51は、ピボットピン53を介して可動部材35に枢動可能に装着されており、その結果、第2のロック部材51は、可動部材35および第2の顎状部7と協力して第1の顎状部5に対して前後に移動する。第2のロック部材51は、ばね55によってそのロック位置に付勢されている。ばね55は、可動部材35の反作用面と第2のロック部材51との間に作用して、第2のロック部材を可動部材から離れる方向に付勢する。可動部材35に設けられたストッパ57(
図7参照)は、第2のロック部材がロック位置に到達したときに第2のロック部材51の表面に当接し、この点を超える第2のロック部材51の回転を制限する。
【0055】
開示される実施形態では、ばね55は、第2のロック部材ピボット53の周りに延びる板ばねである。板ばねは、他の種類のばねに比べてゴミまたはホコリによる詰まりが少ないため、ほこりの多い環境でカプラー1を使用した場合でも、故障または詰まりが起こりにくい。代替の実施形態では、ばね55は、代わりに、ピボット53の周りに位置付けられたねじりばね、ロック部材51と可動部材35との間の圧縮ばね、または別の好適な付勢構成要素を含んでもよい。図面の実施形態には単一のばねのみが示されているが、代替的には、第2のロック部材51を付勢する複数のばね55があってもよい。
【0056】
第2のロック部材51は、第2のロック部材51を可動部材35に向かってばね力に抗して押し込むことにより、そのロック位置からそのロック解除位置に移動することができる。第2のロック部材51の下側は、傾斜面の前面59と傾斜面の後面61とを有する。表面59、61は、移動軸MAに対して非垂直な角度に角度付けられており、例えば、各表面は、20度~60度、好ましくは30度~50度の角度で反対方向に傾斜している。傾斜面59、61は、移動軸に平行な力が第2のロック部材51に加えられたときに、力がピボット58周りに作用することを保証し、それにより、力がばね55の付勢に打ち勝つように十分に高い場合、ロック部材をロック解除位置に向けて回転させる。
【0057】
以下でより詳細に説明するように、第2のロック部材51は、アクチュエータ9の油圧が失われた場合に、第2の顎状部7が第2の器具用のピン2bに取り付けられたままであることを保証する安全機能である。第2のロック部材51は、第2の顎状部の開口部31を狭窄させて、第2の顎状部がそのような場合に第2の器具用のピンから滑り落ちないようにする。ばね55からの付勢力は、少なくとも、前面59が器具用のピン2bに当接しているときに、可動部材35からの重力により、第2のロック部材51をロック解除位置まで回転させないように十分でなければならない。
【0058】
ここで、カプラーの動作について、
図9A~
図9Dおよび
図10A~
図10Fを参照して説明する。
図10A~
図10Fは、掘削機のアーム71の端部に取り付けられたカプラーを示す。アーム71は、装着孔6を介してカプラー1が取り付けられるリンクを含む。リンクは、油圧ラムを使用して操作して、リンク、ひいてはカプラー1を移動させることができる。
【0059】
図9A、
図10A、および
図10Bに示すように、カプラー1を器具に連結する前に、器具用のピンが第1の顎状部5に入ることができるように、第1のロック部材19がそのロック解除位置にあることを保証する必要がある。第1のロック部材19は、アクチュエータ9を延ばしてロック解除位置に移動し、それにより、第2の顎状部7および可動部材35を第1の顎状部5から離れる方向の伸長位置(
図6にも示す)に移動させる。可動部材35が伸長位置に向かって移動する際に、係合部分の突起49が第1のロック部材19のリリースタブ25の傾斜カム面23bに接触するように移動する。可動部材35が伸長位置に移動する際に、突起49がリリースタブ面35上を摺動し、リリースタブを下向きに回転させ、それに対応して第1のロック部材19の本体を上向きに回転させてロック解除位置にする。
【0060】
カプラー1がこのロック解除構成にある状態で、カプラーが全体として移動し、必要に応じてアーム71のリンクを使用して回転して、第1の顎状部5を第1の器具用のピン2aと位置合わせするが、第2の顎状部7を第2の器具用のピン2bから離したままにすることができる。次いで、カプラー1は、第1の顎状部5が第1の器具用のピン2aと係合するように移動し、ピン2aが顎状部リップ部17の後方のシート面13に着座する。リップ部17の前方の第1の顎状部の面取りまたは傾斜面18は、ピン直径よりも広く、リップ部17に隣接する顎状部の開口部に徐々に狭まる第1顎状部への入口を作成することによって、第1の顎状部5をピン2a上にガイドするのに役立つ。リップ部17の後側にある傾斜面の内側上面20は、ピン2aをシート面13に向けてガイドする。
【0061】
第1の器具用のピン2aと第1の顎状部5との間の相対運動は、リップ部17が移動の方向の変化を必要とするため、それらが係合状態、または係合解除状態に運動する際に非線形である。第1の器具用のピン2aと第1の顎状部5との間の相対運動は、リップ部17の前方で直線的かつ移動軸MAと平行であってもよいか、または第1の顎状部5の前方の面取り面18で対応されるようにわずかに角度付けされていてもよい。しかしながら、リップ部17の後側、リップ部17とシート面13との間では、移動ベクトルが変化し、移動軸MAに垂直な方向成分を必要とする。
【0062】
第1のピン2aが第1の顎状部5に着座すると、アクチュエータ9を引っ込ませて、可動部材35および関連付けられた第2の顎状部7を固定された第1の顎状部5に向けて移動させる。可動部材35が伸長位置から移動する際に、可動部材の延長部35の摺動面47(
図4)は、第1のロック部材19の顎状部側19aのそれぞれの平坦なカム面23aと接触するように移動する。摺動面47は、平坦なカム面23a上を摺動し、第1のロック部材19の本体を下向きに回転させてロック位置に回転させる。第1のロック部材19のそのロック位置へのこの移動は、第2の顎状部7がその伸長位置とその収縮位置との間の中間位置にあるときに生じる。中間位置は、第1および第2の顎状部の係合間隔に対応してもよい(係合位置と伸張位置との間であってもよい)。
【0063】
ロック位置では、第1のロック部材19は、第1の顎状部5の開口部内に突出し、接触点CPで第1の器具用のピン2aに接触して、カプラー1を第1のピン2aに固定する。この構成では、第1の顎状部のリップ部17とロック部材のロック面27との間の開口部の幅が、第1のピン2aの直径よりも小さく、第1のピン2aがリップ部17を通過する移動を防止するように、第1のロック部材19が第1の顎状部5の開口部11を狭窄させているため、カプラー1を第1のピン2aから取り外すことができない。
【0064】
第2の顎状部7が伸長位置、係合位置、または中間位置にあるときに、第2の顎状部7が第2の器具用のピン2bを超えないため、カプラー1は、
図9Cおよび
図10Dの配向まで下向きに回転することができない。したがって、第1のロック部材19がロック位置にある中間位置から、可動部材35および第2の顎状部7は、アクチュエータ9が引っ込む際に収縮位置に向かって移動し続ける。第1のロック部材19の顎状部側のカム面23aの平坦な性質により、この継続的な移動は、第1のロック部材19のさらなる回転を引き起こさない。
【0065】
図7、
図9B、および
図10Cに示すように、第2の顎状部7がその収縮位置に達すると、第2の顎状部7は、第2の器具用のピン2bの邪魔にならない。次いで、カプラー1は、
図9Cおよび
図10Dに示すように、第1顎状部の側板15の下面が第2のピン2bに当接するまで第1のピン2a周りで回転し、第2の顎状部7は、第2の器具用のピン2bの前方で、これと整列させられる。第1の顎状部側板15またはカプラー本体3は、第2のピン2bを位置付けるための窪み65を含む。このステップ中、第2のロック部材51の傾斜面の後方の「後」面が第2のピン2bと接触するように移動する。カプラーが第2のピン2b上に降ろされると、第2のロック部材51は、第2のピン2bによって、ばね55の付勢に抗して引っ込み/ロック解除位置に押される。
【0066】
最終ステップでは、アクチュエータ9が再び延ばされ、第2の顎状部7が第2のピン2bと係合するまで、第2の顎状部7を第1の顎状部5から離れる方向に移動させる。第2の顎状部がこの伸長位置に移動する際に、第2のロック部材51は第2のピン2b上を移動し、角度の付いた前方「前」面59によって可能になるように、ばね55からの付勢の下で徐々に下方に枢動してそのロック位置になる。カプラー1は、第2のピン2bが可動の第2の顎状部7のシート面33に着座し、第2のロック部材の前面59が単一の接触点で第2のピン2bと接触している状態で、第2のロック部材51がそのロック位置に完全に付勢されたときに、その最終的な結合構成になる。したがって、固定された第1の顎状部5の第1のロック部材19および可動の第2の顎状部7の第2のロック部材51である前方および後方の両方の安全機構の操作は、アクチュエータ9を介した可動部材35の移動によって操作される。追加の油圧ラムまたはソレノイドなどのような他のアクティブアクチュエータは、第1および第2のロック部材19、51を動作するために必要なく、アクチュエータ9のいかなる機械的付勢も必要ないため、カプラーを機械的に単純にし、視覚的に検査しやすくし、堅牢にする。
【0067】
ピン2aおよび2bがカプラー1と係合すると、第1および第2のロック部材がそれらのロック位置にある状態で、器具73は、
図10F~
図14に示すように、カプラー1が取り付けられているアームまたはブーム71を使用して操作することができる。第1および第2のロック部材19、51は、アクチュエータ9の油圧損失などのカプラーの故障が生じしてしまった状態で、第1および第2の器具用のピン2a、2bがカプラー1との係合から抜け落ちるのを防止する。
【0068】
最悪の場合の故障シナリオは、
図15および
図16に示すように、器具用のピン2a、2bが垂直に整列した状態で、車両または機械のアーム71が伸ばされたときに発生する。このシナリオでは、アクチュエータ9への完全な油圧損失が生じていると、第1の器具用のピン2aは、第1の顎状部5内に固定されたままとなる。第1のロック部材19は、そのロック位置に留まり、可動部材の延長部37によってそのロック位置から回転することが防止される。第1のロック部材19およびリップ部17によって作成される第1の顎状部の開口部における狭窄させることは、第1の器具用のピンが第1の顎状部5から出るのを防止する。リップ部17は、器具73の重力を支え、第1のロック部材19に伝達される重力は無視できるほどである。
【0069】
この垂直の配向では、可動部材35および第2の顎状部7の自重W(および潜在的にアクチュエータロッドおよび他の接続された構成要素の重量)は、可動部材35を下向きに付勢するように作用する。第2のロック部材51の傾斜面の前面59(
図16を参照)は、第2のピン2bと接触して、この重力に対抗し、可動部材35の下向きの移動を防止または制限する。器具73の重量の実質的にすべてが第1の顎状部のリップ部17によって支えられるので、安全率を考慮して、ばねの付勢が可動部材および取り付けられた構成要素の重量を十分に支持することだけが必要である。
【0070】
この伸ばされた位置では、器具73の重心はカプラー1から間隔を置かれている(
図16に示すようにカプラー1の右側)。したがって、器具73からの重力BWは、第1の器具用のピン2a周りに回転する。
【0071】
任意の回転力を移動軸MAに沿って可動部材に伝達することができないことを保証するために、可動の第2の顎状部7は、移動軸MAに平行な平面63を有する延長部分を含む。この平坦な表面63は、好ましくは、半円筒形の第2の顎状部のシート面13から接線方向に延びる。
【0072】
延長部分の平面63は、回転力に対する反作用面を提供する。反力は、移動軸MAに対して垂直(すなわち、
図15および
図16のシナリオでは水平)であるため、移動軸MAに沿った可動部材35の移動を引き起こさず、代わりにカプラー本体3に伝達される。開示される実施形態では、反力は可動部材のガイドタブ45を介してカプラー本体に伝達される。したがって、両方のピン2a、2bは、油圧故障の場合、器具のすべての可能な配向に対してカプラー1に保持される。
【0073】
器具73をカプラー1から連結解除するために、上記のプロセスは逆に実行される。第1のステップとして、第2の可動の顎状部を第2の器具用のピン2bとの係合から外れるように移動させる必要がある。これをするには、アクチュエータ9を引っ込めることによって可動部材35に加えられる力が、第2のロック部材51上のばね55からの付勢に打ち勝つのに十分でなければならない。ロック部材51の傾斜面の前面59は、器具用のピン2bに対する可動部材35の直線移動により、第2のロック部材51がそのロック解除位置までそのピボット53の周りに枢動することを意味する。連結解除プロセス中、アクチュエータ9が完全な油圧動力を利用することができるようになると予想される。したがって、アクチュエータ9が、ばねの付勢に打ち勝つために必要な力を提供し、第2のロック部材51をその引っ込んだロック位置に回転させることは難しくないだろう。
【0074】
可動の顎状部7が第2の器具用のピン2bから係合解除されると、カプラー1は第1のピン2aの周りで回転することができるため、第2の顎状部7が第2の器具用のピンから離れる。次いで、第1のロック部材は、可動部材および第2の顎状部7を伸長位置に移動させ、第1のロック部材を回転させて第1のピンとの係合を解除することによりロック解除され、カプラーを第1のピン2aから取り外すことができる。
【0075】
いくつかの実施形態では、連結された器具73に油圧動力を提供することが望ましい場合がある。器具73への油圧動力の提供は、手動で接続される別個のホース接続を介してもよいか、またはより好ましくは、カプラー1に組み込まれることができる業界で入手可能ないくつかのクイック接続油圧カプラーがあり、機械的に器具を連結するときに両方の油圧連結が生じることを可能にする。
【0076】
カプラー1の構成要素は、当業者には明らかなように、任意の好適な材料を含んでもよい。例えば、ハウジング本体3、顎状部板15、可動部材35、およびロック部材19、51などの主要構成要素は、好ましくは鋼を含む。構成要素は、機械加工もしくは鋳造、またはその両方の混合で行われ得る。ただし、一部またはすべての構成要素は、代替の金属または複合材料などの代替の材料を含んでもよいことが想定される。同様に、油圧アクチュエータアレンジメントは、任意の好適な材料を含むことができ、圧力ホースと関連付けられるように適合されている。
【0077】
本発明が関係する当業者には、添付の特許請求の範囲に定義された本発明の範囲から逸脱することなく、本発明の構造ならびに広く異なる実施形態および用途における多くの変更が示唆されるであろう。例えば、第1の顎状部5は、例示的な実施形態において前側顎状部として説明されているが、第1の顎状部5が代わりに後側顎状部であってもよいし、第2の顎状部7が第1の顎状部の前方であってもよいことは明らかである。
【0078】
本発明はまた、広義には、本出願の明細書において個別にまたは集合的に言及または開示される部分、要素、ならびに特徴、およびその部分、要素、または特徴のうちのいずれか2つ以上の任意またはすべての組み合わせに存すると言ってもよく、本発明が関係する技術分野において既知の等価物を有する特定の整数が本明細書で言及される場合、そのような既知の等価物は、あたかも個別に記載されているかのように本明細書に組み込まれるものとみなされる。