(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】フィルタ構造およびフィルタデバイス
(51)【国際特許分類】
H01P 1/205 20060101AFI20240501BHJP
【FI】
H01P1/205 B
H01P1/205 D
H01P1/205 K
(21)【出願番号】P 2022563004
(86)(22)【出願日】2021-04-02
(86)【国際出願番号】 CN2021085213
(87)【国際公開番号】W WO2021208761
(87)【国際公開日】2021-10-21
【審査請求日】2022-10-17
(31)【優先権主張番号】202010306011.8
(32)【優先日】2020-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】518385648
【氏名又は名称】安徽安努奇科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】ANHUI ANUKI TECHNOLOGIES CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】2800 Chuangxin Ave, Rm 602 Flr 6 Block C Bldg J1, Hefei Innovation Industrial Park Phase II, High-Tech Industrial Development Zone, Hefei, Anhui 230088, China
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】牛 建
(72)【発明者】
【氏名】左 成傑
(72)【発明者】
【氏名】何 軍
【審査官】岸田 伸太郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-535617(JP,A)
【文献】米国特許第06366184(US,B1)
【文献】特開2013-225787(JP,A)
【文献】特開平06-291512(JP,A)
【文献】特表2011-507312(JP,A)
【文献】特開昭58-194405(JP,A)
【文献】特開昭62-118604(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 1/205
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド部材と、共振部材と、結合補強部材とを備え、
前記シールド部材は、第1シールド層と第2シールド層とを含み、前記第1シールド層と前記第2シールド層とが対向するとともに間隔をあけて設置され、
前記共振部材は、少なくとも2つであり、各前記共振部材が間隔をあけて設置され、各前記共振部材が、共振柱と前記共振柱と接続される共振盤とを含み、前記共振柱が、前記第1シールド層と前記第2シールド層との間に位置し、前記第1シールド層と接続され、
前記結合補強部材は、前記第1シールド層および前記第2シールド層のそれぞれと間隔をあけて設置されるとともに、前記少なくとも2つの共振柱のそれぞれと接続されることにより、前記少なくとも2つの共振柱間の結合係数を大きくするように構成され、
前記シールド部材は、複数のシールド柱をさらに含み、前記複数のシールド柱は、チャンバー構造を形成するように前記第1シールド層と前記第2シールド層との間に間隔をあけて設置され、前記共振部材および前記結合補強部材が前記チャンバー構造の内部に位置する
ことを特徴とするフィルタ構造。
【請求項2】
前記結合補強部材は、少なくとも1つの結合用接続部材を含み、
各前記結合用接続部材が2つの共振柱のそれぞれと接続されることにより、前記2つの共振柱間の電磁結合係数を大きくするように構成される
ことを特徴とする請求項1に記載のフィルタ構造。
【請求項3】
処理対象信号の各前記共振部材の間での伝送方向に沿って、各前記結合用接続部材が、隣接の2つの共振柱のそれぞれと接続されることにより、隣接の2つの共振柱間の電磁結合係数を大きくするように構成される
ことを特徴とする請求項2に記載のフィルタ構造。
【請求項4】
処理対象信号の各前記共振部材の間での伝送方向に沿って、前記少なくとも1つの結合用接続部材のうち、少なくとも1つの結合用接続部材が、非隣接の2つの共振柱のそれぞれと接続されることにより、前記非隣接の2つの共振柱間の電磁結合係数を大きくするとともに、前記フィルタ構造の通過帯域外で、上限カットオフ周波数に近い位置で伝送零点を形成する
ことを特徴とする請求項2に記載のフィルタ構造。
【請求項5】
前記結合補強部材は、少なくとも1組の結合用接続部材を含み、各組の結合用接続部材が、それぞれ2つの結合用接続部材を含み、
同一組に属する2つの結合用接続部材が2つの共振柱とそれぞれ接続され、前記2つの結合用接続部材が、間隔をあけて重なるように設置されてコンデンサアッセンブリーとして形成され、これによって、前記2つの共振柱間の容量結合係数を大きくするように構成される
ことを特徴とする請求項1に記載のフィルタ構造。
【請求項6】
処理対象信号の各前記共振部材の間での伝送方向に沿って、同一組に属する2つの結合用接続部材が、隣接の2つの共振柱とそれぞれ接続されることにより、前記隣接の2つの共振柱間の容量結合係数を大きくするように構成される
ことを特徴とする請求項5に記載のフィルタ構造。
【請求項7】
処理対象信号の各前記共振部材の間での伝送方向に沿って、少なくとも1組の結合用接続部材の2つの結合用接続部材が、それぞれ非隣接の2つの共振柱と接続されることにより、前記非隣接の2つの共振柱間の容量結合係数を大きくするとともに、前記フィルタ構造の通過帯域外で、下限カットオフ周波数に近い位置で伝送零点を形成するように構成される
ことを特徴とする請求項5に記載のフィルタ構造。
【請求項8】
同一組に属する2つ結合用接続部材は、平行に設置され、かつ、前記2つの結合用接続部材の重なる部分の、前記2つの結合用接続部材の延伸方向に垂直な方向における投影が重なり合う
ことを特徴とする請求項5に記載のフィルタ構造。
【請求項9】
前記結合補強部材は、金属構造である
ことを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載のフィルタ構造。
【請求項10】
前記第1シールド層および前記第2シールド層は、他の非導電構造に形成されたパターン化導電構造である
ことを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載のフィルタ構造。
【請求項11】
前記シールド部材は、前記第1シールド層と前記第2シールド層との間に設置されるとともに、第1シールド層および第2シールド層と共に密閉のチャンバー構造を形成する複数の他のシールド層をさらに含み、前記共振部材および前記結合補強部材が前記チャンバー構造の内部に位置する
ことを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載のフィルタ構造。
【請求項12】
前記チャンバー構造の内部に各共振部材をそれぞれ設置するための複数のチャンバーサブ構造が形成され、前記チャンバーサブ構造の間に、処理対象信号を各共振部材の間で伝送するためのシールド開口が形成される
ことを特徴とする請求項
1~11のいずれか1項に記載のフィルタ構造。
【請求項13】
前記第1シールド層および前記第2シールド層の互いに対向する面は四角形のものであり、前記他のシールド層は、4つである
ことを特徴とする請求項
11に記載のフィルタ構造。
【請求項14】
第1ポートと第2ポートとを含む接続ポートと、
請求項1~
13のいずれか1項に記載のフィルタ構造とを備え、
前記フィルタ構造は、複数設置され、それぞれ前記第1ポートと前記第2ポートとの間に接続され、前記第1ポートを介して入力される処理対象信号をフィルタリングして前記第2ポートを介して出力し、または前記第2ポートを介して入力される処理対象信号をフィルタリングして前記第1ポートを出力するように構成される
ことを特徴とするフィルタデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、電子デバイスの技術分野に属し、具体的に、フィルタ構造およびフィルタデバイスに関する。
【0002】
(関係出願の相互参照)
本出願は、2020年4月17日に中国専利局に提出された、出願番号が202010306011.8であり、名称が「フィルタ構造およびフィルタデバイス」である中国出願に基づいて優先権を主張し、その内容のすべては本出願に参照として取り込まれる。
【背景技術】
【0003】
電子デバイスの技術分野において、デバイスの集積化において、小型化処理が特に重要である。フィルタデバイスは一般的にフィルタ構造により構成されるため、フィルタ構造の体積によりフィルタデバイスの体積が決められる。しかしながら、従来のフィルタ構造の製造プロセスであれば、フィルタデバイスの集積化において、小型化にする場合、デバイスの通過帯域の帯域幅が制限され、効果的に広げることが困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の内容に鑑みて、本出願は、フィルタデバイスにおいて集積化とデバイスの通過帯域の帯域幅を効果的に広げることとを両立させる課題を解決できるフィルタ構造およびフィルタデバイスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本出願の実施例は、下記の技術案を採用する。
【0006】
フィルタ構造は、シールド部材と、共振部材と、結合補強部材とを備え、前記シールド部材は、第1シールド層と第2シールド層とを含み、前記第1シールド層と前記第2シールド層とが対向するとともに間隔をあけて設置され、前記共振部材は、少なくとも2つであり、各前記共振部材が間隔をあけて設置され、各前記共振部材が、共振柱と前記共振柱と接続される共振盤とを含み、前記共振柱が、前記第1シールド層と前記第2シールド層との間に位置し、前記第1シールド層と接続され、前記結合補強部材は、前記第1シールド層および前記第2シールド層のそれぞれと間隔をあけて設置されるとともに、前記少なくとも2つの共振柱のそれぞれと接続されることにより、前記少なくとも2つの共振柱間の結合係数を大きくするように構成される。
【0007】
任意で、上記のフィルタ構造において、前記結合補強部材は、少なくとも1つの結合用接続部材を含み、各前記結合用接続部材が2つの共振柱のそれぞれと接続されることにより、2つの共振柱間の電磁結合係数を大きくするように構成される。
【0008】
任意で、上記のフィルタ構造において、処理対象信号の各前記共振部材の間での伝送方向に沿って、各前記結合用接続部材が、隣接の2つの共振柱のそれぞれと接続されることにより、前記隣接の2つの共振柱間の電磁結合係数を大きくするように構成される。
【0009】
任意で、上記のフィルタ構造において、処理対象信号の各前記共振部材の間での伝送方向に沿って、前記少なくとも1つの結合用接続部材のうち、少なくとも1つの結合用接続部材が、非隣接の2つの共振柱のそれぞれと接続されることにより、前記非隣接の2つの共振柱間の電磁結合係数を大きくするとともに、前記フィルタ構造の通過帯域外で、上限カットオフ周波数に近い位置で伝送零点を形成する。
【0010】
任意で、上記のフィルタ構造において、前記結合補強部材は、少なくとも1組の結合用接続部材を含み、各組の結合用接続部材が、それぞれ2つの結合用接続部材を含み、同一組に属する2つの結合用接続部材が2つの共振柱とそれぞれ接続され、前記2つの結合用接続部材が、間隔をあけて重なるように設置されてコンデンサアッセンブリーとして形成され、これによって、前記2つの共振柱間の容量結合係数を大きくするように構成される。
【0011】
任意で、上記のフィルタ構造において、処理対象信号の各前記共振部材の間での伝送方向に沿って、同一組に属する2つの結合用接続部材が、隣接の2つの共振柱とそれぞれ接続されることにより、前記隣接の2つの共振柱間の容量結合係数を大きくするように構成される。
【0012】
任意で、上記のフィルタ構造において、処理対象信号の各前記共振部材の間での伝送方向に沿って、少なくとも1組の結合用接続部材の2つの結合用接続部材が、それぞれ非隣接の2つの共振柱と接続されることにより、前記非隣接の2つの共振柱間の容量結合係数を大きくするとともに、前記フィルタ構造の通過帯域外で、下限カットオフ周波数に近い位置で伝送零点を形成するように構成される。
【0013】
任意で、上記のフィルタ構造において、同一組に属する2つの結合用接続部材は、平行に設置され、かつ、前記2つの結合用接続部材の重なる部分の、前記2つの結合用接続部材の延伸方向に垂直な方向における投影が重なり合う。
【0014】
任意で、上記のフィルタ構造において、前記結合補強部材は、金属構造である。
【0015】
任意で、上記のフィルタ構造において、前記第1シールド層および前記第2シールド層は、他の非導電構造に形成されたパターン化導電構造である。
【0016】
任意で、上記のフィルタ構造において、前記シールド部材は、複数のシールド柱をさらに含み、複数の前記シールド柱は、チャンバー構造を形成するように前記第1シールド層と前記第2シールド層との間に間隔をあけて設置され、前記共振部材および前記結合補強部材が前記チャンバー構造の内部に位置する。
【0017】
任意で、上記のフィルタ構造において、前記シールド部材は、前記第1シールド層と前記第2シールド層との間に設置されるとともに、第1シールド層と第2シールド層と共に密閉のチャンバー構造を形成する複数の他のシールド層をさらに含み、前記共振部材および前記結合補強部材が前記チャンバー構造の内部に位置する。
【0018】
任意で、上記のフィルタ構造において、前記チャンバー構造の内部に各共振部材をそれぞれ設置するための複数のチャンバーサブ構造が形成され、前記チャンバーサブ構造の間に、処理対象信号を各共振部材の間で伝送するためのシールド開口が形成される。
【0019】
任意で、上記のフィルタ構造において、前記第1シールド層および前記第2シールド層の互いに対向する面は四角形のものであり、前記他のシールド層は、4つである。
【発明の効果】
【0020】
上記の内容をもとに、本出願の実施例は、フィルタデバイスをさらに提供し、前記フィルタデバイスは、第1ポートと第2ポートとを含む接続ポートと、上記のフィルタ構造とを備え、前記フィルタ構造は、複数設置され、それぞれ前記第1ポートと前記第2ポートとの間に接続され、前記第1ポートを介して入力される処理対象信号をフィルタリングして前記第2ポートを介して出力し、または前記第2ポートを介して入力される処理対象信号をフィルタリングして前記第1ポートを出力するように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本出願の実施例によるフィルタデバイスの構成ブロック図である。
【
図2】本出願の実施例によるフィルタ構造の模式的構成図である。
【
図3】本出願の実施例によるシールド部材の模式的構成図である。
【
図4】本出願の実施例によるシールド柱により形成されるチャンバー構造と共振柱との位置分布関係を示す模式図である。
【
図5】本出願の実施例による共振部材の模式的構成図である。
【
図6】本出願の実施例による、電磁結合係数を大きくするための結合補強部材を備えるフィルタ構造の模式的構成図である。
【
図7】本出願の実施例による、
図6に示す結合用接続部材と、隣接の2つの共振柱との接続関係を示す模式図である。
【
図8】本出願の実施例による、
図6に示す結合用接続部材と、非隣接の2つの共振柱との接続関係を示す模式図である。
【
図9】本出願の実施例による容量結合係数を大きくするための結合補強部材を備えるフィルタ構造の模式的構成図である。
【
図10】本出願の実施例による
図9に示す結合用接続部材と、隣接の2つの共振柱との接続関係を示す模式図である。
【
図11】本出願の実施例による
図9に示す結合用接続部材と、非隣接の2つの共振柱との接続関係を示す模式図である。
【
図12】従来のフィルタ構造の模式的構成図である。
【
図13】本出願の実施例による電磁結合係数を大きくするための結合用接続部材を備えるフィルタ構造の模式的構成図である。
【
図14】
図12および
図13が示す2種のフィルタ構造に基づくシミュレーション結果を示す模式図である。
【
図15】本出願の実施例による容量結合係数を大きくするための結合用接続部材を備えるフィルタ構造の模式的構成図である。
【
図16】
図12および
図15が示す2種のフィルタ構造に基づくシミュレーション結果を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本出願の実施例の目的、技術案および利点をより明瞭に説明するため、以下、本出願の実施例に用いられる図面を参照しながら、本出願の実施例における技術案を明瞭かつ完全に説明し、説明される実施例が本出願の一部の実施例にすぎず、すべての実施例ではないことは無論である。ここで図面を用いて示した本出願の実施例における部品は、様々な配置方法で配置、設計することが可能である。
【0023】
このため、以下の図面に示された本出願の実施例に対する詳細な説明は、本出願の選択された実施例を示すものにすぎず、保護しようとする本出願の範囲を限定するものではない。本出願の実施例をもとに、当業者が発明能力を用いることなく得たすべての他の実施例も、本出願の保護範囲に属する。
【0024】
図1に示すように、本出願の実施例は、フィルタデバイス10を提供する。該フィルタデバイス10は、接続ポート200とフィルタ構造100とを備える。
【0025】
具体的に、接続ポート200は、第1ポート210と第2ポート230とを含み、フィルタ構造100は、複数設置することができる。このように、複数のフィルタ構造100は、第1ポート210と第2ポート230との間に接続され、第1ポート210を介して入力される処理対象信号をフィルタリングして第2ポート230を介して出力し(すなわち、第1ポート210が入力ポートとされ、第2ポート230が出力ポートとされる)、または、第2ポート230を介して入力される処理対象信号をフィルタリングして第1ポート210を介して出力する(すなわち、第1ポート210が出力ポートとされ、第2ポート230が入力ポートとされる)ように構成される。
【0026】
接続ポート200は、個数が限定されなく、第1ポート210および第2ポート230のほか、第3ポート、第4ポートなどをさらに含んでもよく、実際の応用ニーズに応じて設置すればよい。
【0027】
また、複数のフィルタ構造100同士の接続関係も限定されなく、実際の応用ニーズに応じて選択することができる。
【0028】
例えば、選択可能な例において、複数のフィルタ構造100は、直列接続してもよい。また、他の選択可能な例において、複数のフィルタ構造100は、並列接続してもよい。他の選択可能な例において、複数のフィルタ構造100は、直並列接続(すなわち、直列接続と並列接続とを含む)してもよい。
【0029】
なお、フィルタデバイス10の具体的なタイプは限定されなく、実際の応用ニーズに応じて選択することができ、例えば、ミリ波フィルタがあり得る。
【0030】
図2を参照すると、本出願の実施例は、上記のフィルタデバイス10に適用するフィルタ構造100をさらに提供する。フィルタ構造100は、シールド部材110と、共振部材120と、結合補強部材130とを備える。
【0031】
具体的に、シールド部材110は、第1シールド層111と第2シールド層113とを含み、該第1シールド層111と該第2シールド層113とが対向するとともに間隔をあけて設置される。共振部材120は、少なくとも2つであり、各共振部材120が間隔をあけて設置される。各共振部材120は、共振柱121と、該共振柱121と接続される共振盤123とを含み、該共振柱121が、第1シールド層111と第2シールド層113との間に位置し、該第1シールド層111と接続される。結合補強部材130は、第1シールド層111および第2シールド層113のそれぞれと間隔をあけて設置されるとともに、少なくとも2つの共振柱121のそれぞれと接続されることにより、該少なくとも2つの共振柱121間の結合係数を大きくするように構成される。
【0032】
このようにして、一方、フィルタ構造100の体積が、結合補強部材130の設置により増加することなく、他方、結合補強部材130が設置されるため、接続される共振柱121間の結合係数を大きくして、該フィルタ構造100の通過帯域の帯域幅を広げることができ、したがって集積化とデバイスの通過帯域の帯域幅を効果的に広げることとを両立させる課題を解決することができる。
【0033】
シールド部材110について、シールド部材110の具体的な構造(例えば、第1シールド層111、第2シールド層113および他の構造)は限定されなく、実際の応用ニーズに応じて選択することができる。
【0034】
例えば、選択可能な一例において、シールド部材110が含む第1シールド層111と第2シールド層113とは、互いに少し傾斜して設置し、すなわち非平行に設置する。また、他の選択可能な例において、第1シールド層111と第2シールド層113とは、平行に設置してもよい。
【0035】
第1シールド層111および第2シールド層113の具体的な構成も限定されなく、実際の応用ニーズに応じて選択することができる。
【0036】
例えば、選択可能な一例において、第1シールド層111および第2シールド層113は、金属製層状構造である。また、他の選択可能な例において、第1シールド層111および第2シールド層113は、電磁シールド効果を有する非金属シールド構造であってもよい。
【0037】
また、第1シールド層111および第2シールド層113は、他の非導電構造に形成されたパターン化導電構造(すなわち、該パターン化導電構造のみが電磁シールド効果を有する)であってもよく、層状導電構造であってもよい(すなわち、該層状導電構造全体も電磁シールド効果を有する)。
【0038】
なお、シールド部材110は、第1シールド層111および第2シールド層113のほか、他のシールド構造をさらに含んでもよい。このようにして、第1シールド層111、第2シールド層113および他のシールド構造からなるシールド構造によりチャンバーが形成され、共振部材120および結合補強部材130が該シールド構造のチャンバーの内部に配置され、これによって、外部干渉信号の遮断を実現する。
【0039】
任意で、チャンバーを構成するための他のシールド構造の具体的な構成も限定されなく、実際の応用ニーズに応じて選択することができる。
【0040】
例えば、選択可能な一例において、
図3を参照すると、シールド部材110が含む第1シールド層111、第2シールド層113および他のシールド構造により非密閉のチャンバーを形成できるため、該シールド部材110は、複数のシールド柱115をさらに含み、この場合、該複数のシールド柱115が上記の他のシールド構造である。
【0041】
複数のシールド柱115は、収容空間(すなわち、上記のチャンバー)を形成するように第1シールド層111と第2シールド層113との間に間隔をあけて設置され、該収容空間に配置される共振部材120および結合補強部材130に対して電磁シールドを行うように構成される。
【0042】
他の選択可能な例において、シールド部材110が含む第1シールド層111、第2シールド層113および他のシールド構造により密閉のチャンバーを形成できるため、該シールド部材110は、他のシールド層をさらに含んでもよく、この場合、該他のシールド層が上記の他のシールド構造である。
【0043】
具体的な一応用例において、第1シールド層111および第2シールド層113の互いに対向する面が四角形(例えば、長方形または正方形)のものであり、他のシールド層が4つであり、したがって、第1シールド層111、第2シールド層113および4つの他のシールド層により、密閉の収容空間(すなわち、上記のチャンバー)を形成でき、該収容空間に共振部材120および結合補強部材130を設置する。
【0044】
なお、上記の例において、第1シールド層111および第2シールド層113の互いに対向する面を四角形のもので例示したが、他の例において、応用ニーズに応じて、三角形、五角形、六角形などのものであってもよい。
【0045】
上記の他のシールド構造としてのシールド柱115または他のシールド層の具体的な構成も限定されなく、実際の応用ニーズに応じて選択することができ、例えば、金属シールド層または金属シールド柱(あるいは、非金属シールド層、非金属シールド柱)である。
【0046】
さらに、シールド部材110について、共振部材120が少なくとも2つあるので、処理対象信号を各共振部材120により順次にフィルタリングできるように、本実施例において、第1シールド層111、第2シールド層113および他のシールド構造により形成されるチャンバー構造の内部に、各共振部材120のそれぞれを設置するための少なくとも2つのチャンバーサブ構造がさらに形成される。
【0047】
処理対象信号を少なくとも2つの共振部材120の間で順次に伝送できるため、上記のチャンバーサブ構造の間にシールド開口が形成され、これによって、前のチャンバーサブ構造において共振部材120により処理された処理対象信号が、該シールド開口を介して後のチャンバー構造内に伝送されてさらに共振部材120により処理される。
【0048】
任意で、チャンバーサブ構造の具体的な形成方式が限定されなく、実際の応用ニーズに応じて選択することができる。例えば、選択可能な一例において、上記の他のシールド構造としてのシールド層を採用する。他の選択可能な例において、上記の他のシールド構造としてのシールド柱115を採用してもよい(
図4を参照)。
【0049】
上記の設置により上記のチャンバー構造の内部に形成される少なくとも2つのチャンバーサブ構造において、上記のシールド開口を形成するため、相応のチャンバーサブ構造に対してさらに処理を行う必要がある。例えば、該チャンバーサブ構造が複数のチャンバーシールド柱115により形成される場合、該チャンバーシールド柱115の位置関係を設計することによりシールド開口を形成し、これによって処理対象信号を該シールド開口を介して伝送する。
【0050】
なお、チャンバーシールド柱115の位置関係が限定されなく、実際の応用ニーズに応じて設置することができ、ここで具体的に限定しない。
【0051】
第1シールド層111と第2シールド層113との間に(例えば、上記で例示する、チャンバー構造により形成された収容空間)、媒体材料をさらに充填してもよい。
【0052】
上記の媒体材料の具体的な種類が限定されなく、実際の応用ニーズに応じて選択することができ、例えば、比誘電率が3.0、3.5または4.0などである媒体を含むが、これらに限定されない。
【0053】
共振部材120の具体的な個数は、限定されなく、実際の応用ニーズに応じて選択することができ、少なくとも2つあればよい。
【0054】
例えば、選択可能な一例において、共振部材120は、2つであり、すなわち2つの共振柱121と2つの共振盤123とを含む。また、他の選択可能な例において、共振部材120は、3つであり、すなわち3つの共振柱121と3つの共振盤123とを含む。他の選択可能な例において、共振部材120は、4つであり、すなわち4つの共振柱121と4つの共振盤123とを含む。
【0055】
また、共振部材120の具体的な構成(例えば、共振柱121と共振盤123との接続関係)も限定されなく、実際の応用ニーズに応じて選択することができる。
【0056】
例えば、選択可能な一例において、
図5に示すように、共振部材120が含む共振柱121と共振盤123は、側面で接続される。また、他の選択可能な例において、
図2に示すように、共振柱121と共振盤123は、端面(端部の面)で接続される。共振柱121と共振盤123との有効な電気的な接続を保証できればよい。
【0057】
共振柱121と共振盤123とが端面で接続される場合、ニーズに応じて、共振柱121は、該共振盤123を貫通し、すなわち共振柱121が共振盤123の第2シールド層113に近接した面まで延伸する(あるいは、該面を貫通する)ように設置されてもよく、共振柱121は、該共振盤123の第2シールド層113から離間した面まで延伸するように設置されてもよい。
【0058】
任意で、共振柱121と共振盤123との相対的な位置関係も限定されなく、実際の応用ニーズに応じて選択することができる。
【0059】
例えば、選択可能な一例において、共振柱121と共振盤123とは非垂直に設置され、すなわち各端面同士が0°でない夾角をなす。また、他の選択可能な例において、共振柱121と共振盤123とは、垂直に設置されてもよく、すなわち各端面同士が互いに平行である。
【0060】
任意で、共振柱121と共振盤123の具体的な構成も限定されなく、実際の応用ニーズに応じて選択することができる。
【0061】
例えば、選択可能な一例において、共振柱121および共振盤123は、それぞれ非金属導電柱および非金属導電盤である。また、他の選択可能な例において、共振柱121および共振盤123は、それぞれ金属柱および金属盤である。
【0062】
非金属導電柱または金属柱の具体的な形状も限定されなく、実際の応用ニーズに応じて選択することができる。例えば、非金属導電円柱、金属円柱、非金属導電角柱または金属角柱などの規則的または不規則な柱状構造を含むが、これらに限定されない。
【0063】
そして、非金属導電盤または金属盤の具体的な形状が限定されなく、例えば、非金属導電円盤、金属円盤、非金属導電角盤または金属角盤などの規則的または不規則な盤状構造を含むが、これらに限定されない。
【0064】
任意で、共振柱121と第1シールド層111との相対的な位置関係も限定されなく、実際の応用ニーズに応じて選択することができる。
【0065】
例えば、選択可能な一例において、共振柱121と第1シールド層111とは、非垂直に設置される。
【0066】
また、他の選択可能な例において、共振柱121と第1シールド層111とは、垂直に設置されてもよく、すなわち、該共振柱121は、一端が該第1シールド層111に設置され、他端が該第1シールド層111に垂直な方向に沿って延伸する。
【0067】
共振柱121が共振盤123に対して垂直をなす(すなわち、第1シールド層111と共振盤123とが平行に設置される)とき、該共振柱121が該共振盤123に垂直な方向に沿って延伸する。
【0068】
なお、上記の例において、各共振柱121に対して、特定の製造プロセスにより、該共振柱121と共振盤123との、共振柱121の延伸方向における投影が完全に重なり合ってもよく、部分的に重なり合ってもよく、該共振柱121と共振盤123とが接続されればよい。
【0069】
結合補強部材130について、該結合補強部材130の具体的な構成が限定されなく、実際の応用ニーズに応じて選択することができ、例えば、実際の異なる結合効果を得るため、異なって構成することができる。
【0070】
例えば、選択可能な一例において、フィルタ構造100の通過帯域全体の周波数を比較的に高くするため、結合補強部材130により共振柱121間の電磁結合係数を大きくするように構成することができる。
【0071】
また、他の選択可能な例において、フィルタ構造100の通過帯域全体の周波数を比較的に低くするため、結合補強部材130により共振柱121間の容量結合係数を大きくするように構成することができる。
【0072】
このように、電磁結合係数を大きくすることを実現するため、任意で、
図6に示すように、結合補強部材130は、少なくとも1つの結合用接続部材131を含む。
【0073】
具体的に、各結合用接続部材131がそれぞれ2つの共振柱121と接続されることにより、該2つの共振柱121間の電磁結合係数を大きくする。すなわち、1つの結合用接続部材131が2つの共振柱121と直接電気的に接続されることにより、該2つの共振柱121の間に電磁結合を形成する。
【0074】
任意で、各結合用接続部材131により接続される2つの共振柱121の相対的な関係が限定されなく、実際の応用ニーズに応じて選択することができ、2つの共振柱121であればよい。
【0075】
例えば、選択可能な一例において、フィルタ構造100の通過帯域全体の周波数を高くするため、下記のように設置することができる。
【0076】
処理対象信号の各共振部材120の間での伝送方向に沿って、各結合用接続部材131が、隣接の2つの共振柱121のそれぞれと接続されることにより、該隣接の2つの共振柱121間の電磁結合係数を大きくする。
【0077】
具体的に、具体的な一応用例において、
図7に示すように、少なくとも2つの共振アッセンブリーを備え、共振アッセンブリーは、共振柱1と、共振柱2と、共振柱3とを備え、処理対象信号が共振柱1、共振柱2および共振柱3の順の方向に沿って伝送する。この場合、結合用接続部材131が共振柱1および共振柱2のそれぞれと電気的に接続するように構成することができる(すなわち、共振柱1と共振柱2との間に共振柱121の設置がない)。
【0078】
また、他の選択可能な例において、フィルタ構造100の通過帯域全体の周波数を高くするとともに、上限カットオフ周波数に近い位置で信号抑制を行うため、下記のように設置することができる。
【0079】
処理対象信号の各共振部材120の間での伝送方向に沿って、結合用接続部材131のうち、少なくとも1つの結合用接続部材131が、非隣接の2つの共振柱121のそれぞれと接続されることにより、該非隣接の2つの共振柱121間の電磁結合係数を大きくするとともに、フィルタ構造100の通過帯域外で、上限カットオフ周波数に近い位置で伝送零点を形成する。
【0080】
具体的な一応用例において、
図8に示すように、少なくとも2つの共振アッセンブリーを備え、共振アッセンブリーは、共振柱1と、共振柱2と、共振柱3とを備え、処理対象信号が共振柱1、共振柱2および共振柱3の順の方向に沿って伝送する。この場合、結合用接続部材131が共振柱1および共振柱3のそれぞれと電気的に接続するように構成することができる(すなわち、共振柱1と共振柱3との間に共振柱2が設置されている)。
【0081】
上限カットオフ周波数に近い伝送零点の具体的な位置が限定されなく、実際の応用ニーズに応じて設置することができる。
【0082】
例えば、選択可能な一例において、伝送零点の周波数が上限カットオフ周波数により近いようにするため、結合用接続部材131と第1シールド層111との間の距離(すなわち、結合用接続部材131の高さ)および該結合用接続部材131の幅の少なくとも一方を増加させることができる。
【0083】
また、他の選択可能な例において、伝送零点の周波数が上限カットオフ周波数からより離れるようにするため、結合用接続部材131と第1シールド層111との間の距離(結合用接続部材131の高さ)および該結合用接続部材131の幅の少なくとも一方を減少させることができる。
【0084】
もう一つのニーズに応じて、容量結合係数を大きくするため、本実施例において、
図9に示すように、結合補強部材130は、少なくとも1組の結合用接続部材131を含み、各組の結合用接続部材131が、それぞれ2つの結合用接続部材131を含む。
【0085】
具体的に、各組の結合用接続部材131に対して、同一組に属する2つの結合用接続部材131が2つの共振柱121とそれぞれ接続され、該2つの結合用接続部材131が、間隔をあけて重なるように設置されてコンデンサアッセンブリーとして形成され、これによって、該2つの共振柱121間の容量結合係数を大きくする。
【0086】
すなわち、同一組の2つの結合用接続部材131の非直接な電気的接続により、1つのコンデンサアッセンブリーを形成し、これによって、接続される2つの共振柱121間の容量結合係数を大きくする。
【0087】
任意で、各組の結合用接続部材131により接続される2つの共振柱121の相対的な関係が限定されなく、実際の応用ニーズに応じて選択することができる。
【0088】
例えば、選択可能な一例において、フィルタ構造100の通過帯域全体の周波数を低減するため、下記のように設置することができる。
【0089】
処理対象信号の各共振部材120の間での伝送方向に沿って、同一組に属する2つの結合用接続部材131が、隣接の2つの共振柱121とそれぞれ接続されることにより、該隣接の2つの共振柱121間の容量結合係数を大きくする。
【0090】
具体的に、具体的な一応用例において、
図10に示すように、少なくとも2つの共振アッセンブリーを備え、共振アッセンブリーは、共振柱1と、共振柱2と、共振柱3とを備え、処理対象信号が共振柱1、共振柱2および共振柱3の順の方向に沿って伝送する。この場合、1組の結合用接続部材131の2つの結合用接続部材131がそれぞれ共振柱1および共振柱2と電気的に接続するように構成することができる(すなわち、共振柱1と共振柱2との間に共振柱121の設置がない)。
【0091】
また、他の選択可能な例において、フィルタ構造100の通過帯域全体の周波数を低減するとともに、下限カットオフ周波数に近い位置での信号を抑制するため、下記のように設置することができる。
【0092】
処理対象信号の各共振部材120の間での伝送方向に沿って、少なくとも1組の結合用接続部材131の2つの結合用接続部材131が、それぞれ非隣接の2つの共振柱121と接続されることにより、該非隣接の2つの共振柱121間の容量結合係数を大きくするとともに、フィルタ構造100の通過帯域外で、下限カットオフ周波数に近い位置で伝送零点を形成する。
【0093】
具体的に、具体的な一応用例において、
図11に示すように、少なくとも2つの共振アッセンブリーを備え、共振アッセンブリーは、共振柱1と、共振柱2と、共振柱3とを備え、処理対象信号が共振柱1、共振柱2および共振柱3の順の方向に沿って伝送する。この場合、1組の結合用接続部材131の2つの結合用接続部材131がそれぞれ共振柱1および共振柱3と電気的に接続するように構成することができる(すなわち、共振柱1と共振柱3との間に共振柱2が設置されている)。
【0094】
下限カットオフ周波数に近い伝送零点の具体的な位置が限定されなく、実際の応用ニーズに応じて設置することができる。
【0095】
例えば、選択可能な一例において、伝送零点の位置の周波数が下限カットオフ周波数により近いようにするため、2つの結合用接続部材131と第1シールド層111との間の距離(すなわち、2つの結合用接続部材131の高さ)および2つの結合用接続部材131の重なる部分の面積(すなわち、形成されるコンデンサアッセンブリーにおける2つの結合用接続部材131の対向する部分の面積)の少なくとも一方を増加させることができる。
【0096】
また、他の選択可能な例において、伝送零点の位置の周波数が下限カットオフ周波数からより離れるようにするため、2つの結合用接続部材131と第1シールド層111との間の距離(すなわち、2つの結合用接続部材131の高さ)および2つの結合用接続部材131の重なる部分の面積(すなわち、形成されるコンデンサアッセンブリーにおける2つの結合用接続部材131の対向する部分の面積)の少なくとも一方を減少させることができる。
【0097】
なお、同一組の結合用接続部材131に属する2つの結合用接続部材131の相対的な位置関係も限定されなく、実際の応用ニーズに応じて選択することができる。
【0098】
例えば、選択可能な一例において、同一組の結合用接続部材131に属する2つの結合用接続部材131は、非平行に設置してもよく、例えば、比較的に小さい夾角をなすように設置する。
【0099】
また、他の選択可能な例において、同一組の結合用接続部材131に属する2つの結合用接続部材131は、平行に設置し、かつ、該2つの結合用接続部材131の重なる部分の、該2つの結合用接続部材131の延伸方向に垂直な方向における投影が重なり合う。
【0100】
このようにすれば、同一組の結合用接続部材131に属する2つの結合用接続部材131の対向する面積が比較的大きく、形成されるコンデンサアッセンブリーの容量を高めることができ、したがって、接続される2つの共振柱121間の容量結合係数を大きくすることができる。
【0101】
結合補強部材130について、該結合補強部材130の具体的な構造も限定されなく、実際の応用ニーズに応じて選択することができる。
【0102】
例えば、選択可能な一例において、結合補強部材130は、金属構造である(例えば、上記の結合用接続部材131は、金属接続線があり得る)。また、他の選択可能な例において、結合補強部材130は、非金属導電構造であってもよい。
【0103】
上記の例で示す内容によれば、共振柱121間の結合係数を大きくして、フィルタ構造100の通過帯域の帯域幅を増加することができる。通過帯域の帯域幅の増大効果を十分に説明するため、本出願では、上記の例に示すフィルタ構造100および従来のフィルタ構造のそれぞれに対してシミュレーション分析を行った。
【0104】
結合補強部材130を備えない従来のフィルタ構造100を比較例とし、
図12に示すように、該フィルタ構造100は、2つの共振柱121を備える。
【0105】
ここで、電磁結合係数を大きくすることができるフィルタ構造100を実験例とし、
図13に示すように、該フィルタ構造100は、2つの共振柱121と、1つの結合用接続部材131とを備え、2つの共振柱121が結合用接続部材131により電気的に接続されて電磁結合を実現する。該フィルタ構造100および上記の従来フィルタ構造に対してシミュレーション分析を行って、
図14に示すシミュレーション結果を得た。2つのピークの間の距離がフィルタ構造の通過帯域の帯域幅を表すことができ、したがって、結合用接続部材131が設置されていないフィルタ構造に対して、結合用接続部材131が設置されたフィルタ構造100の通過帯域の帯域幅がより大きいことを確認することができた。
【0106】
ここで、容量結合係数を大きくすることができるフィルタ構造100を実験例とし、
図15に示すように、該フィルタ構造100は、2つの共振柱121と、1組の結合用接続部材131とを備え、2つの共振柱121がそれぞれ該1組の結合用接続部材131における2つの結合用接続部材131と電気的に接続されて容量結合を実現する。該フィルタ構造100および上記の従来のフィルタ構造に対してシミュレーション分析を行って、
図16に示すシミュレーション結果を得た。2つのピークの間の距離がフィルタ構造の通過帯域の帯域幅を表すことができ、したがって、結合用接続部材131が設置されていないフィルタ構造に対して、結合用接続部材131が設置されたフィルタ構造100の通過帯域の帯域幅がより大きいことを確認することができた。
【0107】
また、本出願の発明者らは、研究により、結合補強部材130を接地するように設置すれば、共振柱121間の結合係数を効果的に大きくすることができなくなり、通過帯域の帯域幅を効果的に広げることもできないことを判明した。
【0108】
同様に、結合補強部材130が接地されるか否かによる異なる効果を説明するため、本出願では相応のシミュレーション分析を行った。
図17は、
図12が示す比較例、
図13が示す実験例、および該実験例において結合用接続部材131と第1シールド層111とを接触して設置された他の実験例に対するシミュレーション結果をそれぞれ示すものである。結合用接続部材131が接地されたフィルタ構造に対して、結合用接続部材131が接地されていないフィルタ構造100は、通過帯域の帯域幅がより大きいことを確認することができた。
【0109】
上記のように、本出願に係るフィルタ構造100およびフィルタデバイス10は、シールド部材110および共振部材120のほか、結合補強部材130を設置することにより、少なくとも2つの共振部材120の共振柱121間の結合係数を大きくする。このようにして、一方、フィルタ構造100の体積が、結合補強部材130の設置により増加することなく、他方、結合補強部材130が設置されるため、接続される共振柱121間の結合係数を大きくして、該フィルタ構造100の通過帯域の帯域幅を広げることができ、したがって集積化とデバイスの通過帯域の帯域幅を効果的に広げることとを両立させる課題を解決することができ、実用価値が比較的に高く、特に精密機器において応用効果が比較的に良い。
【0110】
上記は、本出願の好ましい実施例にすぎず、本出願を限定するものではない。当業者にとって、本出願に各種の変更や変化を有してもよい。本出願の精神および原理から逸脱しない限り、行った如何なる変更、均等置換、改良なども、本出願の保護範囲に属する。
産業上の利用可能性
【0111】
本出願に係るフィルタ構造およびフィルタデバイスは、シールド部材および共振部材のほか、結合補強部材を設置することにより、少なくとも2つの共振部材の共振柱間の結合係数を大きくする。このようにして、フィルタデバイスにおいて集積化とデバイスの通過帯域の帯域幅を効果的に広げることとを両立させる課題を解決することができ、実用価値が比較的に高い。
【符号の説明】
【0112】
10 フィルタデバイス
100 フィルタ構造
110 シールド部材
111 第1シールド層
113 第2シールド層
115 シールド柱
120 共振部材
121 共振柱
123 共振盤
130 結合補強部材
131 結合用接続部材
200 接続ポート
210 第1ポート
230 第2ポート