(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】搬送物の姿勢制御方法及び搬送システム
(51)【国際特許分類】
B65G 47/28 20060101AFI20240501BHJP
B65G 47/24 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
B65G47/28 L
B65G47/24 F
(21)【出願番号】P 2023038333
(22)【出願日】2023-03-13
(62)【分割の表示】P 2021144824の分割
【原出願日】2021-09-06
【審査請求日】2023-04-07
(31)【優先権主張番号】P 2020196709
(32)【優先日】2020-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】599069507
【氏名又は名称】株式会社ダイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100100055
【氏名又は名称】三枝 弘明
(72)【発明者】
【氏名】赤岩 誠
(72)【発明者】
【氏名】山本 篤史
(72)【発明者】
【氏名】神戸 祐二
【審査官】森林 宏和
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-111451(JP,A)
【文献】特開2006-335487(JP,A)
【文献】特開平11-208872(JP,A)
【文献】特公昭39-014794(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 47/00 - 47/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送物が搬送路に沿って搬送方向に搬送される過程で、前記搬送路上の前記搬送物に気流を吹き付けることによって前記搬送物の搬送姿勢を制御する方法であって、
前記搬送物を前記搬送路上で第1の気流により浮上させるとともに、前記搬送路上で浮上した前記搬送物を第2の気流により前記搬送方向と直交する幅方向に回転させることにより、前記搬送物の姿勢を変更し、
前記搬送路上の搬送方向の所定の領域に搬送物判別部が設定され、
前記搬送路には、前記搬送物判別部において判定された前記搬送物の判別結果に応じて前記搬送物の搬送姿勢が変更可能に構成される搬送姿勢制御部が設けられ、
前記第1の気流を噴出する第1の噴気口の前記搬送方向の開口範囲が前記第2の気流を噴出する第2の噴気口の前記搬送方向の開口位置よりも上流側から形成さ
れ、
前記第1の気流は、前記搬送姿勢制御部に到達する全ての前記搬送物が浮上するように、前記搬送姿勢制御部において連続して生じ、
前記第2の気流の有無は前記搬送姿勢制御部に到達した前記搬送物ごとに前記判別結果に応じて決められる、
搬送物の姿勢制御方法。
【請求項2】
前記搬送物は、前記第1の気流による浮上位置で第2の気流により回転して姿勢が変更された後に、前記第1の気流を受けなくなったときに前記搬送路上に戻る、
請求項1に記載の搬送物の姿勢制御方法。
【請求項3】
前記搬送物は、前記第1の気流を受けなくなったときに前記搬送路上の浮上前の搬送位置に対応する前記幅方向の位置に戻る、
請求項2に記載の搬送物の姿勢制御方法。
【請求項4】
搬送物が搬送される搬送路と、
前記搬送路上において前記搬送物に第1の気流を吹き付けることにより前記搬送物を浮上させる第1の気流吹付手段と、
前記第1の気流により浮上した前記搬送物に第2の気流を吹き付けることにより前記搬送物を前記搬送路に沿った搬送方向と直交する幅方向に回転させる第2の気流吹付手段と、
前記第1の気流と前記第2の気流を生ずるように設定された搬送姿勢制御部において制御すべき前記搬送物を判別する搬送物判別手段と、
前記搬送物判別手段における前記搬送物の判別結果に応じて、前記搬送姿勢制御部における前記第1の気流及び前記第2の気流を用いた搬送姿勢の制御の有無若しくは制御態様の選択を行う搬送姿勢制御手段と、
を具備し、
前記搬送路は、第1の搬送面と、前記第1の搬送面に対して所定の角度を備えることにより前記第1の搬送面との間に前記搬送物を配置可能な第2の搬送面とを有し、
前記第1の気流吹付手段は、前記第1の搬送面に開口する第1の噴気口を備え、
前記第2の気流吹付手段は、前記第2の搬送面に開口する第2の噴気口を備え、
前記第1の噴気口の前記搬送方向の開口範囲が前記第2の噴気口の前記搬送方向の開口位置よりも上流側から形成さ
れ、
前記第1の気流吹付手段が、前記搬送姿勢制御部に到達する全ての前記搬送物が浮上するように、全ての前記搬送物に対して前記第1の気流を流し続ける一方で、前記搬送姿勢制御手段による搬送姿勢の制御の有無は、前記搬送物の判別結果に応じて、前記第2の気流吹付手段が前記第2の気流を前記搬送物の到着タイミングに合わせて生じさせるか否かによって決められる、
搬送システム。
【請求項5】
前記第2の搬送面は前記第1の搬送面より離れるに従って上昇するように構成され、
前記搬送物は、前記第1の気流により、前記第1の搬送面から離れて浮上する、
請求項
4に記載の搬送システム。
【請求項6】
前記搬送物は、前記第1の気流により、前記第2の搬送面に沿って浮上する、
請求項
5に記載の搬送システム。
【請求項7】
前記第2の搬送面は、傾斜面である、
請求項
6に記載の搬送システム。
【請求項8】
前記搬送物判別手段は、前記搬送姿勢制御部の上流側に設定された搬送物判別部において前記搬送物の画像を取得し、当該画像の処理によって前記搬送物を判別する、
請求項
4に記載の搬送システム。
【請求項9】
前記第1の気流吹付手段は、気流を供給するための第1の給気路と、前記第1の給気路に連通し、前記第1の噴気口に向かう第1の吹付路と、前記第1の給気路及び前記第1の吹付路に連通し、前記第1の吹付路とは別の気流排出経路を構成する第1の抜気部とを備える、
請求項
4に記載の搬送システム。
【請求項10】
前記第1の給気路の給気方向と前記第1の吹付路の吹付方向との角度差は、前記給気方向と前記第1の抜気部の抜気方向との角度差よりも小さい、
請求項
9に記載の搬送システム。
【請求項11】
前記第1の吹付路の通気断面積は、前記第1の抜気部の通気断面積よりも小さい、
請求項
9に記載の搬送システム。
【請求項12】
前記第2の気流吹付手段は、気流を供給するための第2の給気路と、前記第2の給気路に連通し、前記第2の噴気口に向かう第2の吹付路と、前記第2の給気路及び前記第2の吹付路に連通し、前記第2の吹付路とは別の気流排出経路を構成する第2の抜気部とを備える、
請求項
4-11のいずれか一項に記載の搬送システム。
【請求項13】
搬送物が搬送される搬送路と、
前記搬送路上において前記搬送物に第1の気流を吹き付けることにより前記搬送物を浮上させる第1の気流吹付手段と、
前記第1の気流により浮上した前記搬送物に第2の気流を吹き付けることにより前記搬送物を前記搬送路に沿った搬送方向と直交する幅方向に回転させる第2の気流吹付手段と、
を具備し、
前記搬送路は、第1の搬送面と、前記第1の搬送面に対して所定の角度を備えることにより前記第1の搬送面との間に前記搬送物を配置可能な第2の搬送面とを有し、
前記第1の気流吹付手段は、前記第1の搬送面に開口する第1の噴気口を備え、
前記第2の気流吹付手段は、前記第2の搬送面に開口する第2の噴気口を備え、
前記第1の噴気口の前記搬送方向の開口範囲が前記第2の噴気口の前記搬送方向の開口位置よりも上流側から形成され、
前記第1の気流吹付手段は、気流を供給するための第1の給気路と、前記第1の給気路に連通し、前記第1の噴気口に向かう第1の吹付路と、前記第1の給気路及び前記第1の吹付路に連通し、前記第1の吹付路とは別の気流排出経路を構成する第1の抜気部とを備え、
前記第1の給気路の給気方向と前記第1の吹付路の吹付方向との角度差は、前記給気方向と前記第1の抜気部の抜気方向との角度差よりも小さい、
搬送システム。
【請求項14】
前記第1の吹付路の通気断面積は、前記第1の抜気部の通気断面積よりも小さい、
請求項
13に記載の搬送システム。
【請求項15】
搬送物が搬送される搬送路と、
前記搬送路上において前記搬送物に第1の気流を吹き付けることにより前記搬送物を浮上させる第1の気流吹付手段と、
前記第1の気流により浮上した前記搬送物に第2の気流を吹き付けることにより前記搬送物を前記搬送路に沿った搬送方向と直交する幅方向に回転させる第2の気流吹付手段と、
を具備し、
前記搬送路は、第1の搬送面と、前記第1の搬送面に対して所定の角度を備えることにより前記第1の搬送面との間に前記搬送物を配置可能な第2の搬送面とを有し、
前記第1の気流吹付手段は、前記第1の搬送面に開口する第1の噴気口を備え、
前記第2の気流吹付手段は、前記第2の搬送面に開口する第2の噴気口を備え、
前記第1の噴気口の前記搬送方向の開口範囲が前記第2の噴気口の前記搬送方向の開口位置よりも上流側から形成され、
前記第1の気流吹付手段は、気流を供給するための第1の給気路と、前記第1の給気路に連通し、前記第1の噴気口に向かう第1の吹付路と、前記第1の給気路及び前記第1の吹付路に連通し、前記第1の吹付路とは別の気流排出経路を構成する第1の抜気部とを備え、
前記第1の吹付路の通気断面積は、前記第1の抜気部の通気断面積よりも小さい、
搬送システム。
【請求項16】
前記第2の気流吹付手段は、気流を供給するための第2の給気路と、前記第2の給気路に連通し、前記第2の噴気口に向かう第2の吹付路と、前記第2の給気路及び前記第2の吹付路に連通し、前記第2の吹付路とは別の気流排出経路を構成する第2の抜気部とを備える、
請求項
13-
15のいずれか一項に記載の搬送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は搬送物の姿勢制御方法及び搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、パーツフィーダなどの搬送装置としては、電子部品などの搬送物を搬送しながら既定の姿勢で整列させるように構成されたものが知られている。この種の搬送装置では、搬送路上における搬送物の姿勢を外観測定により判別し、その判別結果に応じて、搬送物に対して気流を吹き付けることなどによって、不適格な姿勢の搬送物を搬送路上から排除したり、搬送物を回転させてその姿勢を変更したりすることにより、搬送物の姿勢を揃えるようにしている。
【0003】
ところで、搬送物の姿勢を変更するには、搬送路上を不適切な姿勢で搬送されてくる搬送物を気流によって反転させた姿勢とし、これを、反転させる必要のなかった搬送物からなる元の搬送列に合流させることによって、搬送物の姿勢を揃えるようにする搬送物の姿勢制御方法が知られている(以下の特許文献1参照)。この場合には、搬送物を確実に反転させるために、搬送路上に段差を形成し、気流を受けた搬送物が段差に係止された状態で確実に回転されるようにしていることが多い。また、搬送物の姿勢変更方法としては、搬送物の底部に気流を当てることによって横滑り状に姿勢を変更する方法(以下の特許文献2を参照)や、左右二方向の気流によって搬送物を回転させる方法(以下の特許文献3を参照)などが種々提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-264430号公報
【文献】特開平7-228332号公報
【文献】特開平10-053320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前述のような搬送物の姿勢変更においては、搬送路上に配置された搬送物を気流によって反転させる必要があるが、多くの場合、搬送物の底面と搬送路の搬送面との対向面積が広いことから、搬送物を反転させるには大きな気流圧が必要になるため、気流圧の不足により反転が生じなかったり、気流圧の過剰により回転し過ぎたりすることを防止するために行う気流圧の調整が難しい。これを解決するための手法として前述のように反転方向に段差を設けて搬送物を反転しやすくすることも行われているものの、搬送物の反転当初の回転動作の開始時に大きな気流圧が必要になる点は変わらないため、気流圧の調整の困難性もあまり変わらないことから、搬送物の姿勢変更の確実性を得ることができないという問題がある。
【0006】
また、従来の方法では、搬送物が反転する際に元の搬送路部分から幅方向に外れた側方に移動するため、反転された搬送物を反転させる必要のなかった搬送物からなる元の搬送列に合流させる必要があり、その際に、元の搬送列の前後の搬送物によって反転された搬送物の姿勢が変わってしまったり、元の搬送列の前後の搬送物の姿勢が変わってしまったりするという、搬送姿勢の乱れが生ずるという問題がある。特に、近年の搬送装置では、微細な搬送物を大量に搬送することが要求されるため、高速、高密度に搬送されてくる元の搬送列に反転された搬送物を合流させること自体が難しくなってきており、上記の問題も深刻になってきている。さらに、反転させた搬送物を丸溝状の搬送路で元の搬送列に合流させる場合には、搬送列の搬送姿勢を揃えるために或る程度の搬送距離が必要となるので、搬送物の搬送姿勢を制御するための搬送方向に或る程度の搬送路の長さが必要になることから、搬送装置のコンパクト化が困難であるという問題もある。
【0007】
そこで、本発明は上記問題を解決するものであり、その課題は、従来よりも搬送物の姿勢制御の確実性を高めることのできる搬送物の姿勢制御方法及びこれを用いた搬送システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る搬送物の姿勢制御方法は、搬送物が搬送路に沿って搬送方向に搬送される過程で、前記搬送路上の前記搬送物に気流を吹き付けることによって前記搬送物の搬送姿勢を制御する方法であって、前記搬送物を前記搬送路上で第1の気流により浮上させるとともに、前記搬送路上で浮上した前記搬送物を第2の気流により前記搬送方向と直交する幅方向に回転させることにより、前記搬送物の姿勢を変更する。これによれば、搬送路上で第1の気流により搬送物を浮上させ、この浮上した搬送物を第2の気流により回転させるようにしたので、搬送物の姿勢変更の際に搬送路の搬送面による干渉が生じにくくなることから、より確実に搬送姿勢を変更することができる。この場合において、前記第1の気流を噴出する第1の噴気口の前記搬送方向の開口範囲が前記第2の気流を噴出する第2の噴気口の前記搬送方向の開口位置よりも上流側から形成されることが好ましい。これにより、前記搬送物は、前記搬送方向に搬送される過程で、前記第1の気流を受けた後により安定した浮上状態で前記第2の気流を受けることができる。
【0009】
本発明において、前記搬送物は、前記第1の気流による浮上位置で前記第2の気流により回転して姿勢が変更された後に、前記第1の気流を受けなくなったときに前記搬送路上に戻ることが好ましい。特に、前記第1の気流を受けなくなったときに、前記搬送路上の浮上前の搬送位置に対応する前記幅方向の位置に戻ることが望ましい。これによれば、従来のように、搬送物を幅方向に反転させて側方に移動させた後に、元の搬送列に合流させる必要がなくなるため、前後の搬送物による姿勢の乱れや前後の搬送物の姿勢の乱れを回避できる。このため、高速、高密度に搬送されてくる搬送物の搬送姿勢を支障なく制御することができる。また、搬送姿勢を揃えるための搬送方向の長さも低減できるため、搬送装置をコンパクトに構成することができる。
【0010】
本発明において、前記搬送路上の搬送方向の所定の領域に搬送物判別部が設定され、前記搬送路には、前記搬送物判別部において判定された前記搬送物の判別結果に応じて前記搬送物の搬送姿勢が変更可能に構成される搬送姿勢制御部が設けられることが好ましい。前記搬送姿勢制御部では、前記第1の気流及び前記第2の気流を用いて前記搬送物の前記搬送姿勢が変更される。例えば、この搬送姿勢制御部では、前記第1の気流及び前記第2の気流により、前記搬送物の搬送姿勢の制御の有無若しくは制御態様の選択が行われる。この場合において、上記搬送物判別部において、前記搬送物の画像が取得され、当該画像の処理によって前記搬送物が判別されることが望ましい。この場合において、前記第1の気流及び前記第2の気流の有無は、前記判別結果に応じて前記搬送物ごとに決められることが望ましい。また、前記第1の気流は前記搬送姿勢制御部において連続して生じ、前記第2の気流の有無は前記搬送姿勢制御部に到達した前記搬送物ごとに前記判別結果に応じて決められることがさらに望ましい。これによれば、第1の気流は搬送姿勢制御部において連続して生じていることから、全ての搬送物を搬送姿勢制御部において浮上させることができるので、搬送姿勢の制御の準備に必要な時間を低減することができ、搬送物ごとの姿勢制御の要否に応じて迅速に搬送姿勢を制御することができる。また、第1の気流が連続して生じることにより、第1の気流を間欠的に発生させる場合の開始タイミングや終了タイミングのずれによる搬送物の浮上姿勢(水平に対する傾斜角)のばらつきなどの不安定性を抑制することができる。
【0011】
本発明において、第1の気流と前記第2の気流を生ずる搬送姿勢制御部が設定され、前記搬送姿勢制御部において、撮像手段により前記搬送物の浮上姿勢若しくは回転姿勢を示す画像を撮影し、前記画像を処理することにより検出した前記浮上姿勢若しくは前記回転姿勢に応じて、前記第1の気流と前記第2の気流の少なくともいずれか一方の強さを制御することが好ましい。これによれば、搬送物の浮上姿勢若しくは回転姿勢を示す画像に基づいて気流の強さを制御することにより、搬送物の搬送姿勢の制御を確実に実施することが可能になる。
【0012】
次に、本発明に係る搬送システムは、搬送物が搬送される搬送路と、前記搬送路上において前記搬送物に第1の気流を吹き付けることにより前記搬送物を浮上させる第1の気流吹付手段と、前記第1の気流により浮上した前記搬送物に第2の気流を吹き付けることにより前記搬送物を前記搬送路に沿った搬送方向と直交する幅方向に回転させる第2の気流吹付手段と、を具備する。なお、本発明においては、上記第1の気流吹付手段及び第2の気流吹付手段は、上述の搬送物の姿勢制御方法に限らず、前記搬送物を前記搬送路上から排除したり、分配したりする場合にも用いることができる。
【0013】
本発明において、前記搬送路は、第1の搬送面と、前記第1の搬送面に対して所定の角度を備えることにより前記第1の搬送面との間に前記搬送物を配置可能な第2の搬送面とを有し、前記第2の搬送面は前記第1の搬送面から離れるに従って上昇するように構成されることが好ましい。この場合において、前記搬送物は、前記第1の気流により、前記第1の搬送面から離れて浮上することが望ましい。また、前記搬送物は、前記第1の気流により、前記第2の搬送面に沿って浮上することがさらに望ましい。これによれば、搬送物が第1の搬送面から離れて第2の搬送面に沿って浮上するように構成することにより、第1の気流により搬送物が第1の搬送面から離れることにより第1の搬送面による干渉を受けにくくなり回転しやすくなるとともに、第2の搬送面に沿って浮上することにより搬送物の浮上時の安定性や浮上位置の再現性を高めることができるので、搬送物の搬送姿勢をより確実に制御することが可能になる。この場合において、前記第2の搬送面が傾斜面であることが好ましい。ここで、前記第2の搬送面の傾斜角度は20度-70度の範囲内であることが好ましく、30度-60度の範囲内であることがさらに望ましい。典型的には40度-50度の範囲内が最も好ましい。搬送面の角度を上記の範囲内とすることで、搬送物の浮上状態の安定性や再現性と、浮上状態における搬送物の搬送面による干渉の回避性や搬送物の回転容易性とを両立することができる。
【0014】
本発明において、前記第1の気流吹付手段は、前記第1の搬送面に開口する第1の噴気口を備えることが好ましい。また、前記第2の気流吹付手段は、前記第2の搬送面に開口する第2の噴気口を備えることが望ましい。この場合において、前記第1の噴気口の前記搬送方向の開口範囲が前記第2の噴気口の前記搬送方向の開口位置よりも上流側から形成されることが好ましい。この場合に、上記第2の噴気口は、前記第1の気流による前記第2の搬送面に沿った搬送物の浮上位置に対応する位置(高さ)に形成されることがさらに望ましい。また、前記第1の噴気口は、前記第2の噴気口より搬送方向の長い範囲にわたり形成されることが望ましい。さらに、前記第1の噴気口は、前記第2の噴気口よりも前記搬送路の上流側に配置される部分を備えることが望ましい。
【0015】
本発明において、前記搬送路上の搬送方向の所定の領域に設定された搬送姿勢制御部をさらに具備し、前記第1の気流吹付手段は、前記第1の気流が前記搬送姿勢制御部において連続して生じるように構成され、前記第2の気流吹付手段は、前記第2の気流が前記搬送姿勢制御部に到達した前記搬送物ごとに生ずるように構成されることが好ましい。一方、前記第1の気流吹付手段は、上記搬送姿勢制御部において前記搬送物ごとに第1の気流を生じさせるように構成されても構わない。さらに、前記第1の気流吹付手段が全ての前記搬送物に対して前記第1の気流を流し続ける一方で、前記搬送姿勢制御手段による搬送姿勢の制御の有無は、前記搬送物の判別結果に応じて、前記第2の気流吹付手段が前記第2の気流を前記搬送物の到着タイミングに合わせて生じさせるか否かによって決められる場合もある。
【0016】
本発明において、前記第1の気流と前記第2の気流を生ずるように設定された搬送姿勢制御部において制御すべき前記搬送物を判別する搬送物判別手段と、前記搬送物判別手段における前記搬送物の判別結果に応じて、前記搬送姿勢制御部における搬送姿勢の制御の有無若しくは制御態様の選択を行う前記搬送姿勢制御手段とをさらに具備することが好ましい。この場合において、上記搬送物判別手段は、前記搬送姿勢制御部の上流側に設定された搬送物判別部において前記搬送物の画像を取得し、当該画像の処理によって前記搬送物を判別することが望ましい。
【0017】
本発明において、前記第1の気流と前記第2の気流を生ずるように設定された搬送姿勢制御部において、撮像手段により前記搬送物の浮上姿勢若しくは回転姿勢を示す画像を撮影し、前記画像を処理することにより検出した前記浮上姿勢若しくは前記回転姿勢に応じて、前記第1の気流と前記第2の気流の少なくともいずれか一方の強さを制御する気流制御手段をさらに具備することが好ましい。
【0018】
本発明において、前記第1の気流吹付手段は、気流を供給するための第1の給気路と、前記第1の給気路に連通し、前記第1の噴気口に向かう第1の吹付路と、前記第1の給気路及び前記第1の吹付路に連通し、前記第1の吹付路とは別の気流排出経路を構成する第1の抜気部とを備えることが好ましい。ここで、前記第1の給気路の給気方向と前記第1の吹付路の吹付方向との角度差は、前記給気方向と前記第1の抜気部の抜気方向との角度差よりも小さいことが望ましい。また、前記第1の吹付路の通気断面積は、前記第1の抜気部の通気断面積よりも小さいことが望ましい。さらに、上記第1の給気路、第1の吹付路及び第1の抜気部は、基盤ブロックと第1ブロックとの対向面上において(少なくとも一方の面上の溝構造などによって)構成されることが望ましい。
【0019】
また、前記第2の気流吹付手段は、気流を供給するための第2の給気路と、前記第2の給気路に連通し、前記第2の噴気口に向かう第2の吹付路と、前記第2の給気路及び前記第2の吹付路に連通し、前記第2の吹付路とは別の気流排出経路を構成する第2の抜気部とを備えることが好ましい。ここで、前記第2の給気路の給気方向と前記第2の吹付路の吹付方向との角度差は、前記給気方向と前記第2の抜気部の抜気方向との角度差よりも小さいことが望ましい。また、前記第2の吹付路の通気断面積は、前記第2の抜気部の通気断面積よりも小さいことが望ましい。さらに、上記第2の給気路、第2の吹付路及び第2の抜気部は、基盤ブロックと第2ブロックとの対向面上において(少なくとも一方の面上の溝構造などによって)構成されることが望ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、従来よりも搬送物の姿勢制御に必要な気流圧を低減することによって、搬送物の姿勢制御の確実性を高めることのできる搬送物の姿勢制御方法及びこれを用いた搬送システムを提供することができる。特に、搬送路上で搬送物をそのまま姿勢制御することができる場合には、搬送物を搬送列から引き離すことなしに搬送姿勢を変更できるから、元の搬送列に合流させる必要もなくなるため、搬送姿勢の乱れを回避することができる。また、高速、高密度に搬送されてくる搬送物の搬送姿勢を支障なく制御することができる。さらに、搬送姿勢を揃えるための搬送方向の長さも低減できるため、搬送装置をコンパクトに構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明に係る搬送物の整列方法を実現するための搬送物整列システムの実施形態を構成した振動式搬送装置の一例の平面図である。
【
図3】同実施形態の搬送物の正面図(a)及び側面図(b)である。
【
図4】同実施形態の搬送姿勢制御部における搬送物CAの姿勢の制御態様の例を示す説明図(a)-(d)である。
【
図5】同実施形態の搬送姿勢制御部の他の構成例を示す説明図(a)-(d)である。
【
図6】同実施形態の搬送姿勢制御部における搬送時の姿勢制御態様の手順の例を示す説明図(a)-(d)である。
【
図7】同実施形態の搬送姿勢制御部における搬送時の姿勢制御態様の手順の他の例を示す説明図(a)-(f)である。
【
図8】同実施形態の複数の搬送姿勢制御部における搬送時の姿勢制御態様の組み合わせ例の手順を示す説明図(a)-(d)である。
【
図9】同実施形態の複数の搬送姿勢制御部の配置例を示す概略構成図である。
【
図10】同実施形態の制御系の全体構成を示す概略構成ブロック図である。
【
図11】同実施形態の動作プログラムの全体の概略の制御手順を示す概略フローチャートである。
【
図12】異なる実施形態の気流供給経路を模式的に示す断面図である。
【
図13】搬送物が第2の搬送面に対して間隔を有した状態で搬送されてくる場合(a―1)と、搬送物が第2の搬送面に接近若しくは当接した状態で搬送されてくる場合(b-1)とについて、気流安定化構造を備えていない従来構造における搬送物の浮上位置を示す図(a-2)及び(b-2)と、異なる実施形態の気流安定化構造を用いたときの搬送物の浮上位置を示す図(a-3)及び(b-3)である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、添付図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。最初に、
図1及び
図2を参照して本発明に係る搬送システムを構成する振動式搬送装置を説明する。この振動式搬送装置100は、設置台101上に設置された搬送物供給部110と、この搬送物供給部110から供給された搬送物を搬送する第1搬送部120と、この第1搬送部120から供給された搬送物を搬送する第2搬送部130とを備える。第1搬送部120と第2搬送部130は加振器を備えるため、上記設置台101上に防振用の吸振材(コイルばねなど)を介して設置された支持台102上に取り付けられる。搬送物供給部110は、駆動部111と、この駆動部111上に取り付けられたホッパ112とを備え、ホッパ112上の搬送物を第1搬送部120へ放出する。
【0023】
第1搬送部120は、回転加振機121と、この回転加振機121に搭載されたボウル型の振動体122とを備えている、いわゆるボウル型パーツフィーダである。振動体122は内底部から螺旋状に上昇する搬送路122tを備え、回転加振機121によって与えられた回転振動により、その内底部に供給された搬送物を搬送路122tに沿って徐々に上昇させながら、整列させる。
【0024】
第2搬送部130は、直線加振機131と、この直線加振器131に搭載された直線状の振動体132、133とを備えている、いわゆるリニアフィーダである。ここで、振動体132は上記搬送路122tの出口端に接続された直線状の供給用の搬送路132tを備える。また、振動体133は、搬送路132tと並行して延在する搬送路133tを備え、この搬送路133tは、搬送路132tから排除された搬送物を受入れ、搬送路132tとは逆方向に搬送物を搬送し、当該搬送物を上記振動体122内に戻すための回収用の搬送路である。
【0025】
上記搬送路132tには、搬送姿勢制御部132S1-132S4が設けられる。これらの搬送姿勢制御部132S1-132S4は、後述する搬送物判別部における搬送物CAに対する判別結果に応じて搬送物CAの搬送姿勢を制御する箇所である。具体的には、搬送姿勢制御部132S1-132S4は、搬送路132t上における搬送物CAの或る搬送姿勢を、搬送路132t上で可能な複数の異なる搬送姿勢の中から選ばられた他の搬送姿勢に変更することが可能となるように構成される。
【0026】
本実施形態に係る搬送物CAは、
図3に示すように、直方体状に構成される。図示例の搬送物CAは、両端外部に外部電極OE1,OE2を備え、外部電極OE1,OE2の間に本体部CABが設けられる。この本体部CABには、後述するように、適宜の姿勢判別マークが表示される場合がある。図示例では、搬送物CAの整列方向(図示例では長手方向と一致する。)軸CAxの方向は、正規の搬送姿勢において、搬送路132tの搬送方向Fに向けられる整列方向である。ただし、搬送物CAの正規の搬送姿勢が整列方向軸CAxの方向が搬送方向Fに向いていればよいだけであれば、特に上記姿勢判別マークは不要であるが、搬送物CAの整列方向軸CAxの周りの4つの回転姿勢や、整列方向軸CAxの前後の向きに対応する二つの前後姿勢に区別があり、いずれかの回転姿勢や前後姿勢でないと正規の搬送姿勢には該当しない場合には、これらを区別するために、本体部CABに姿勢判別マークが付けられる。
【0027】
図4には、上記搬送姿勢制御部132S1-132S4(以下、単に「132S」とする。)における搬送物CAの姿勢制御の方法若しくは態様を示す。
図4(a)に示すように、搬送路132tは、第1の搬送面132taと、第2の搬送面132tbとを有し、第1の搬送面132taと第2の搬送面132tbとの間には、搬送物CAに対応する所定の角度が設けられ、当該角度によって第1の搬送面132taと第2の搬送面132tbとの間に搬送物CAが配置可能とされる。図示例では、第1の搬送面132taと第2の搬送面132tbとはいずれも平面であり、上記所定の角度は90度となっている。一般に、第1の搬送面132taと第2の搬送面132tbはいずれも水平面との間に傾斜角θとφを備えた傾斜面となっていることが好ましい。図示例では、θ=φ=45度となっているが、好適には、θ及びφは、20度-70度の範囲内であることが好ましく、30度-60度の範囲内であることが望ましい。例えば、θ=30度、φ=60度である。もっとも、40度-50度の範囲内であることがさらに望ましい。これらの角度範囲は、傾斜角φが小さくなるほど安定する、搬送物CAの浮上状態の安定性と、傾斜角φが大きくなるほど回避しやすくなり回転しやすくなる、浮上高さの確保による搬送物CAの回転動作に対する第1の搬送面132taによる干渉の回避性及び搬送物CAの回転容易性との両立を図るために設定される。また、同じ観点から、第1の搬送面132taの傾斜角θは、第2の搬送面132tbの傾斜角φと同じか、それよりも小さいことが好ましい。
【0028】
第1の搬送面132taには第1の噴気口OP1が設けられ、この第1の噴気口OP1は、気流供給手段を構成する、図示しないボンベやコンプレッサ等の気流源に対して電磁弁などの切替弁を介して接続される通気管に接続されている。また、第2の搬送面132tbには第2の噴気口OP2が設けられ、この第2の噴気口OP2も、気流供給手段を構成する、図示しないボンベやコンプレッサ等の気流源に対して電磁弁などの切替弁を介して接続される通気管に接続されている。搬送物CAは、
図4(a)に示す態様で、搬送路132tの上流側から搬送されてくる。そして、第1の噴気口OP1及び第2の噴気口OP2が設けられた搬送姿勢制御部132Sに到達すると、この搬送物CAの搬送姿勢が変更されるべきものであれば、
図4(b)に示すように、第1の噴気口OP1から与えられる気流J1により、搬送路132t上で浮上させられる。この場合、搬送物CAの浮上の向きは、結果的に搬送物CAの高さが増大する向きであれば、いかなる向きであっても構わない。ただし、搬送物CAの安定性を高める上では、図示例のように、第2の搬送面132tbに沿って浮上することが好ましい。図示例では、上記気流J1の向きも第2の搬送面132tbに沿った向きとなっている。また、第1の噴気口OP1は、第1の搬送面132taに開口しているが、特に、図示例のように、第1の搬送面132taの最低位置に開口することが望ましい。特に、搬送物CAの浮上状態を確実に得るためには、搬送物CAが浮上状態となる範囲を搬送方向に伸ばすために、第1の噴気口OP1を搬送方向(
図4の紙面と直交する方向)に延長した形状とすることが好ましい。
【0029】
この搬送物CAが
図4(b)に示す浮上状態にあるときに、
図4(c)に示すように、第2の噴気口OP2から生ずる気流J2により、搬送物CAの上部が気流圧を受けるため、搬送物CAは図示のように回転する。気流J2の位置は、搬送物CAを容易かつ確実に回転させるために、浮上状態にある搬送物CAの上部に当たるように設定されることが好ましい。このため、第2の噴気口OP2の位置も、
図4(a)に示す通常の搬送位置にある搬送物CAには対応しない高い位置に設けられることが望ましい。一方、気流J2の位置は、搬送物CAを容易かつ確実に回転させるために、浮上状態にある搬送物CAの下部に当たるように設定されてもよく、搬送物CAの前部や後部に当たるように設定されても構わない。これらの場合には、第2の噴気口OP2もそれぞれの設置位置に対応した位置に形成される。
【0030】
このとき、
図4(c)に示すように、搬送物CAは、
図4(b)に示す浮上位置でそのまま自転することが望ましい。図示例では、搬送物CAは、整列方向軸CAxの周りに90度回転する。
図4(d)に示すように、気流J1を受けなくなると、搬送物CAは、上記の整列方向軸CAxの周りに90度回転した姿勢で再び搬送路132t上に配置され、下流側へ搬送されていく。なお、第2の噴気口OP2の開口位置は、第1の噴気口OP1の開口範囲と搬送方向Fに重なる位置であることが好ましい。また、第1の噴気口OP1の開口範囲は、第2の噴気口OP2の開口位置よりも上流側から形成されることが好ましい。さらに、各噴気口OP1,OP2は、いずれも、各搬送面132ta、132tbに開口している場合には、搬送方向Fの前方側の開口縁が
図6-
図8に示すOP2のように、面取処理若しくは丸め処理がなされていることが望ましい。
【0031】
図5には、
図4に示す上記の例以外の他の搬送姿勢の制御方法を説明するための図を示す。まず、
図5(a)に示す例では、
図4に示す例とは異なり、第1の噴気口OP1が、第1の搬送面132taの最低位置ではなく、それよりもやや上方において開口している。ただし、第1の噴気口OP1の開口位置は、搬送物CAが搬送路132t上で搬送時において対向して配置される範囲内に設定される。なお、第2の噴気口OP2の位置は
図4と同じであり、点線で示すように、搬送物CAの回転の向きも
図4と同じである。
【0032】
図5(b)に示す例では、同じ搬送方向に対して、第1の搬送面132taと第2の搬送面132tbとを左右入れ替えることによって、図示点線で示す搬送物CAの回転の向きを逆向きに設定している。この例では、搬送路132tの左右の位置や構造が反転している点を除き、第1の噴気口OP1と第2の噴気口OP2の位置は
図4に示す場合と同等である。また、
図5(c)に示す例では、この左右の位置や構造が反転している例において、
図5(a)に示す例と同様に、第1の噴気口OP1の開口位置を最低位置ではなく、やや上方へ移動させた位置に設定している。
【0033】
図5(d)に示す例では、第1の噴気口OP1を第1の搬送面132taではなく、第1の搬送面132taと第2の搬送面132tbの間の底部に開口させた場合を示す。このように、第1の噴気口OP1は、そこから与えられる気流J1が搬送路132t上の搬送物CAを浮上させることのできる位置であれば、どのような位置であっても構わない。また、この例では、第2の噴気口OP21を第1の搬送面132taに設け、第2の噴気口OP22を第2の搬送面132tbに設けている。このようにすると、第2の噴気口OP21とOP22のいずれから気流J2を吹き付けるかによって、搬送物CAの回転の向きを選択することが可能になる。
【0034】
図6(a)-(d)には、本実施形態の第1実施例による搬送路132t上の搬送物CAの搬送途中における搬送姿勢制御部132Sでの搬送姿勢の変更の態様を示す。前述と同様に構成された搬送姿勢制御部132Sに対応して、その上流側に搬送物判別部ME1が設定され、その下流側に搬送物通過検出部ME2が設定される。本実施形態においては、例えば、この搬送物判別部ME1内に配置された搬送物CAの画像を処理することにより、搬送物CAの搬送姿勢を検出し、この搬送姿勢が正規の搬送姿勢か否かを判別する。例えば、
図6(a)に示すように、搬送物CAの本体部CABに設けられた姿勢判別マークMKが図面上で右下に配置される搬送物CA0が正規の搬送姿勢であるとすれば、搬送物CA0には気流は吹き付けられない。一方、姿勢判別マークMKが右上に配置される搬送物CA1は、正規の搬送姿勢ではないこととなるため、
図6(b)に示すように、第1の噴気口OP1から気流J1が噴出され、その搬送物CA1が浮上する。その後、
図6(c)に示すように、浮上状態にある搬送物CA1に第2の噴気口OP2から気流J2が吹き付けられることにより、搬送物CA1は整列方向軸CAx周りに回転させられる。そして、
図6(d)に示すように、気流J1が停止すると、搬送物CA1は、正規の搬送姿勢となって搬送路132t上に降下し、そのまま、下流側へ搬送されていく。
【0035】
この実施例では、搬送物判別部ME1の画像に基づく判別結果が正規の搬送姿勢を示すOK判定とは異なる場合(NG判定)には、第1の噴気口OP1と第2の噴気口OP2からの気流J1、J2を吹き付けるが、判別結果が正規の搬送姿勢を示すOK判定であれば、気流J1,J2の吹付は行わない。したがって、上述の搬送姿勢を変更した前の搬送物CAに対する気流J1とJ2の吹付により、当該前の搬送物CAの搬送姿勢が変更された後に、次の搬送物CAが正規の搬送姿勢であると判別された場合(OK判定)には、気流J1とJ2を停止する必要がある。このとき、搬送物通過検出部ME2の画像により前の搬送物CAが検出されると、その姿勢変更が完了し、前の搬送物CAが搬送姿勢制御部132Sを脱出したことがわかるので、気流J1,J2を停止することができる。なお、次の搬送物CAも正規の搬送姿勢でないと判別された場合(NG判定)には、そのまま気流J1,J2を流し続けるようにしてもよい。このとき、第1の気流J1を流し続ける一方で、第2の気流J2を搬送物CAの到達タイミングに合わせて生じさせるようにしても構わない。
【0036】
上記の搬送物判別部ME1の画像の取得、当該画像の処理と判別、搬送物通過検出部ME2の通過検出処理、それらの判別結果や通過検出結果に応じた搬送姿勢制御部132Sの制御などは、上記搬送装置100を含む
図10に示す搬送システム10において取得された画像を検査処理ユニットDTUにより処理することによって、
図11に示す動作プログラムに従って実行される。以下には、搬送システム10の一例について、説明を行う。
【0037】
搬送システム10は、搬送装置100として、前述のように、パーツフィーダである第1搬送部120とリニアフィーダである第2搬送部130とを具備する振動式搬送装置を有する。本実施形態の搬送システム10では、第2搬送部130の搬送路132t上の搬送物CAを撮影画像GPXに基づいて検出し、その検出された画像部分を対象として、検査、判定する。ここで、本実施形態の搬送システム10は、本発明に係る構成を備える搬送システムにおける搬送物の姿勢制御方法の対応部分だけでなく、当該対応部分以外に、搬送物に対する種々の検査部、判別部、選別部、反転部、排除部などを含み得る。なお、本発明において、振動式搬送装置に限られない構成については、搬送物CAが搬送路に沿って搬送される各種の搬送装置に用いることができる。また、振動式搬送装置であっても、上記パーツフィーダ120とリニアフィーダ130の組み合せに限定されるものではなく、循環式パーツフィーダなどの他の形式の搬送装置に用いることが可能である。さらに、上記の組み合せにあっても、リニアフィーダ130の搬送路132t上の搬送物CAを検査、判別、選別、反転、排除等するものに限らず、パーツフィーダ120の搬送路122t上の搬送物CAを検査等するものであっても構わない。
【0038】
パーツフィーダ120はコントローラCL12によって駆動、制御される。また、リニアフィーダ130はコントローラCL13によって駆動、制御される。これらのコントローラCL12、CL13はパーツフィーダ120やリニアフィーダ130の加振手段(電磁駆動体や圧電駆動体などを含む。)を交流駆動し、搬送体122,132を搬送路122t,132t上の搬送物CAが所定の搬送方向Fに移動する態様となるように振動させる。また、コントローラCL12、CL13は、搬送制御システムの主体となる画像処理機能を有する検査処理ユニットDTUに入出力回路(I/O)を介して接続されている。
【0039】
また、コントローラCL12,CL13は、下記の動作プログラムを実行する後述する演算処理装置MPUに対して、マウスなどの後述する操作入力装置SP1,SP2などを介して所定の操作入力(デバッグ操作)が行われると、上記の動作プログラムに従って搬送装置100の駆動を停止する。このとき、上記の動作プログラムに従って、例えば、検査処理ユニットDTUにおける画像計測処理も停止される。このデバッグ操作及び当該操作に応じた各所の動作については後に詳述する。
【0040】
検査処理ユニットDTUは、パーソナルコンピュータ等の演算処理装置MPU(マイクロプロセシングユニット)を中核構成とし、図示例では、上記演算処理装置MPUは、中央処理ユニットCPU1,CPU2、キャッシュメモリCCM、メモリコントローラMCL、チップセットCHSなどから構成される。また、この検査処理ユニットDTUには、撮像手段CMであるカメラCM1,CM2にそれぞれ接続された画像処理を行うための画像処理回路GP1,GP2が設けられている。これらの画像処理回路GP1,GP2はそれぞれ画像処理メモリGM1,GM2に接続されている。画像処理回路GP1,GP2の出力は上記演算処理装置MPUにも接続され、カメラCM1,CM2から取り込んだ撮影画像GPXの画像データを処理し、適宜の処理画像(例えば後述する画像エリアGPY内の画像データ)を演算処理装置MPUに転送する。主記憶装置MMには予め搬送制御システムの動作プログラムが格納されている。検査処理ユニットDTUが起動されると、演算処理装置MPUにより上記動作プログラムが読み出されて実行される。また、この主記憶装置MMには、演算処理装置MPUにより、後述する画像計測処理を実行した対象となる撮影画像GPX若しくは画像エリアGPYの画像データが保存される。
【0041】
また、検査処理ユニットDTUは、入出力回路(I/O)を介して液晶モニタ等の表示装置DP1,DP2や操作入力装置SP1,SP2に接続される。表示装置DP1,DP2は、上記演算処理装置MPUによって処理された撮影画像GPX若しくは画像エリアGPYの画像データ、画像計測処理の結果、すなわち、上記の搬送物判別部ME1の画像に対する搬送物判別処理の他に、上記の搬送物通過検出部ME2の画像に対する搬送物通過検出処理などの各場所における搬送物検出処理や搬送物判別処理の結果などが、所定の表示態様で表示される。なお、この表示機能は、実際に搬送物が搬送されている場合に限らず、後述するように、過去のデータを読みだして再生している場合にも機能する。また、表示装置DP1,DP2の画面を見ながら操作入力装置SP1,SP2を操作することにより、各種の操作指令、設定値などの処理条件を上記演算処理装置MPUに入力することができる。
【0042】
なお、本実施形態では、
図10に模式的に示すように、二つのカメラCM1,CM2、二つの画像処理回路GP1,GP2、二つの画像処理メモリGM1,GM2、二つの表示装置DP1,DP2,二つの操作入力装置SP1,SP2などを備えるが、このような二つの構成を備えるものは一例であり、単一の各構成を備えていてもよく、三つ以上の各構成を備えていてもよい。
【0043】
次に、前述の
図6に示す実施例や後述する
図7-
図9に示す実施例を構成するための前提として、検査処理ユニットDTUの処理内容、並びに、搬送物判別部ME1や搬送物通過検出部ME2の画像を処理する搬送物判別手段や搬送物通過検出手段の設定について説明する。本実施形態では、前述のように取得された画像GPXやGPYに対して、搬送物判別部ME1内の画像処理によって搬送物判別処理を行うとともに、搬送物通過検出部ME2内の画像処理によって搬送物通過検出処理を行う必要があるため、搬送物判別部ME1や搬送物通過検出部ME2内の画像データにより、搬送路上における搬送物CAが検出されなければならない。したがって、搬送路121上を通過する全ての搬送物CAが、上記画像GPX、GPYのいずれかの上記各計測エリアME1、ME2内に撮影されている必要がある。これにより、各計測エリアME1、ME2は、搬送物CAの搬送速度Vsと撮影間隔Tsに関係する制約として、少なくとも以下の条件を満たしていなければならない。
【0044】
本実施形態では、カメラCM1,CM2が予め設定された既定の撮影周期で連続して撮影を実行し、当該撮影周期ごとに撮影画像GPX若しくは上記画像エリアGPY内の画像データが画像処理装置GP1,GP2を介して上記演算処理装置MPUに転送される。演算処理装置MPUでは、転送された上記画像データのうち、演算処理用メモリRAMを用いて、計測エリアME内の画像データを上述のように処理し、搬送物占有範囲判別処理を行う。ただし、本実施形態では、別途トリガセンサを設けたり、搬送物CAの画像データ中から搬送物CAの所定の形状パターンを所定の領域内でサーチし、当該形状パターンが検出されたときに内部トリガを発生させたりするのではなく、既定の撮影周期を示す外部トリガを導入したり、演算処理装置MPUから一定周期のトリガ信号をカメラCM1,CM2に出力したりするなどの方法で、既定の撮影周期で連続して撮影を実行している。このため、搬送路132t上を搬送されてくる全ての搬送物CAを漏れなく判定しようとすれば、全ての搬送物CAが、いずれかの撮影画像GPX又は画像エリアGPYにおいて、各計測エリアME1、ME2内に含まれるようにする必要がある。
【0045】
そこで、撮影周期をTs[sec]、搬送物CAの搬送方向Fの長さをL[mm]、搬送物CAの搬送速度をVs[mm/sec]とした場合、全ての搬送物CAの画像が必ずいずれかの画像データの上記計測エリアME内に含まれるようにするためには、計測エリアME1、ME2の搬送方向Fの範囲LDを以下の式(1)のように設定する。
LD≧L+β=L+Ts・Vs…(1)
例えば、搬送物CAの搬送方向Fの長さLが0.6[mm]、搬送速度Vsが50[mm/sec]、撮影周期Tsが1[msec]であるとすれば、L=0.6[mm]、β=0.05[mm]であり、LD≧0.65[mm]となる。また、撮影周期Tsを0.5[msec]とすれば、L=0.6[mm]、β=0.025とすることで、LD≧0.625[mm]となる。
【0046】
実際には、搬送物CAの搬送速度には、個体ごとに、場所により、或いは、経時的に、ばらつきが存在するため、搬送物CAの全体若しくは一部が2回以上、好ましくは3回以上の画像データに撮影されるように設定することが望ましい。一般的には、n(nは自然数)回以上の画像データに撮影されるようにするには、
LD≧L+n・β=L+n・Ts・Vs…(2)
が成立するようにLDを設定する。本実施形態の場合には、nを3-7の範囲になるように設定している。これは、nが小さくなると搬送速度のばらつきによる搬送物CAの撮影漏れが生ずる虞が高くなり、逆にnが大きくなると画像処理の負荷が増大するからである。一般的には、自然数nは1-10の範囲内であることが好ましい。なお、本実施形態では画像処理時間は一般的に150-300μsec程度である。また、撮影間隔Tsは500-840[μsec]程度である。
【0047】
次に、
図11を参照して、本実施形態の全体の動作プログラムの流れについて説明する。
図11は、上記検査処理ユニットDTUの演算処理装置MPUにより、動作プログラムに従って実行される処理の概略フローチャートである。この動作プログラムを起動すると、まず、上記の画像撮影及び画像計測処理が開始されるとともに、コントローラCL12、CL13により振動式搬送装置100(パーツフィーダ120及びリニアフィーダ130)の駆動が開始される。そして、前述のデバッグ操作に応じたデバッグ設定がOFFであれば、撮影画像GPX又は画像エリアGPYに対して画像計測処理が実行され、搬送物判別部ME1の画像に基づく搬送物判別処理の判別結果がOK判定であれば、デバッグ操作が行われない限り、そのまま次の撮影画像GPX又は画像エリアGPYの画像計測処理が実施される。一方で、カメラCM1,CM2等により撮像された画像に基づいて不正姿勢と判定された搬送物CAについては、搬送姿勢制御部132Sにおいて第1の噴気口OP1の気流J1及び第2の噴気口OP2の気流J2により搬送姿勢を制御し、搬送路132t上で姿勢を反転させる。なお、搬送物通過検出部ME2における画像処理により搬送物CAが搬送姿勢制御部132Sを通過したことを検知する場合や、搬送物排除部において、搬送物CAを搬送路132t上から気流等を吹き付けることによって排除するか否かを判定する搬送物CAの不良や不正姿勢の判別処理も、上述と同様に行われる。このようにして、搬送路132t上で搬送物CAの搬送姿勢が制御されることにより、下流側へは、変更後の搬送姿勢のもののみが整列した状態で供給されていく。
【0048】
上記の途中でデバッグ操作が行われ、デバッグ設定がONになると、上記ルーティンから抜け出して、搬送装置100の駆動が停止され、画像計測処理も停止される。そして、この状態において適宜の操作を行うと、前述のように画像ファイルを選択可能な状態となる。このとき、選択表示される画像ファイルは、直前の運転モードにおいて記録していた複数の撮影画像GPX又は画像エリアGPYを含む画像ファイルである。これをそのまま選択して適宜の操作をすると、再実行モードに移行する。このモードでは、すでに実行された制御動作を記録した画像ファイルに基づいて、画像の表示や検出及び判定を再実行させることができる。すなわち、搬送装置100の搬送物CAの検査、判定、制御に不具合が生じた場合には、この不具合を解消するために、まず、過去の画像データに基づいて画像計測処理を再実行することによって、画像計測処理の問題箇所を探る。当該問題箇所が判明すれば、それに応じて検出や判定の設定内容(設定値)を変更、調整し、再び過去の画像データに対して画像計測処理を再実行することで調整、改善作業の結果を確認することができる。その後、適宜の復帰操作を行うと、デバッグ設定がOFFに戻され、画像計測処理が再開されるとともに、搬送装置100の駆動が再開される。また、表示装置の画面は運転モードの表示画面に戻る。
【0049】
なお、本実施形態では、上述のように、上記各計測エリアである搬送物判別部ME1と搬送物通過検出部ME2を用いたトリガレスの画像取得手法に基づく画像の処理による判別や検出を行っているが、本発明はこのような搬送物判別処理等に限らず、単なる通過センサなどを用いたトリガ信号に対応するタイミングで取得された画像の処理による搬送物判別処理等によっても構わない。
【0050】
次に、
図7を参照して、本実施形態の第2実施例による搬送路132t上の搬送物CAの搬送途中における搬送姿勢制御部132Sでの搬送姿勢の変更の態様を示す。この第2実施例では、搬送物判別部ME1の画像処理による搬送物CAの判別結果によらず、第1の噴気口OP1から気流J1を連続して(常時)吹き付け、搬送路132t上を搬送されてくる全ての搬送物CAを浮上させるようにしている。このようにすると、全ての搬送物CAを搬送姿勢制御部132Sにおいて浮上状態とするため、判別結果に応じた搬送姿勢の変更の有無は、第2の噴気口OP2から気流J2を生じさせるか否かによって決められる。
【0051】
図7(a)に示すように、搬送物CA2は、気流J1によって一旦は浮上状態になるが、正規の搬送姿勢であるため、気流J2が生じないことから、そのままの搬送姿勢で搬送姿勢制御部132Sを通過すると降下し、下流側へ搬送されていく。一方、
図7(b)に示すように、搬送物CA3は、気流J1によって一旦浮上状態になると、正規の搬送姿勢でないことから、
図7(c)に示すように、第2の噴気口OP2から生ずる気流J2によって回転し、
図7(d)に示すように正規の搬送姿勢に変更された後に、搬送姿勢制御部132Sを通過すると降下し、下流側へ搬送されていく。さらに、
図7(e)に示すように、搬送物CA4は、搬送姿勢制御部132Sで気流J1により浮上状態となるが、正規の搬送姿勢であると判定されるため、そのままの姿勢で搬送姿勢制御部132Sを通過すると降下し、下流側へ搬送されていく。
【0052】
この第2実施例では、気流J1を連続して(常時)生じさせ、全ての搬送物CAを搬送姿勢制御部132Sで浮上状態としているので、気流J1の有無の切替による搬送物CAの位置や姿勢の不安定性を回避できる。また、気流J1(の強さや分布)を定常化できることから、搬送物CAの浮上や降下の位置や姿勢を制御することも容易化される。搬送物CAの浮上状態の安定性を高めるためには、第1の噴気口OP1は、第2の噴気口OP2よりも搬送方向Fに長い範囲を有することが好ましい。また、通常、第2の噴気口OP2よりも上流側から第2の噴気口OP2の位置の前後まで延在することが好ましい。このとき、気流J1の強さ(気流圧)が搬送方向Fに沿って徐々に増大し、一定化され、その後、徐々に減少することがさらに望ましい。さらに、上述のように搬送物CAの浮上状態の安定性を高めることができることから、気流J2による搬送物CAの搬送姿勢の変更(回転)の安定性、変更精度や再現性をさらに向上できる。
【0053】
本実施形態では、気流J1の供給圧は、気流J2の供給圧の0.01倍-1.0倍の範囲内であることが好ましく、特に、0.05-0.5倍の範囲内であることが望ましい。これは、気流J1は搬送物CAを浮上させることが目的であり、搬送姿勢の変更などの積極的な作動を主な目的としていないことと、気流J1が強くなりすぎると搬送物CAの浮上状態が不安定になるためである。また、気流J1の供給圧は、搬送物CAの浮上位置(高さ)を定めるため、第2の噴気口OP2の浮上位置との関係が整合するように調整する必要がある。すなわち、気流J1によって浮上した搬送物CAの浮上位置が、第2の噴気口OP2から生ずる気流J2により回転しやすい位置となっている必要がある。なお、搬送物CAの搬送姿勢の変更時には、気流J1と気流J2が併存することが好ましい。このとき、搬送物CAの回転が、気流J2だけでなく、気流J1によっても促進されるように、気流J1によって搬送物CAに与えられる回転トルクが、気流J2によって搬送物CAに与えられる回転トルクと同じ向きに作用することが望ましい。例えば、
図4に示す気流J1とJ2はいずれも、搬送物CAを整列方向軸CAx周りに同じ回転の向き(図示例では時計回りの向き)に作用する。
【0054】
なお、第1の噴気口OP1の開口範囲については、搬送物CAの浮上状態の安定性や再現性を高めるために、当該開口範囲の幅方向(搬送方向Fと直交する方向)には、搬送物CAの搬送時の幅Wの範囲内で或る程度広く設定することが好ましい。また、第2の噴気口OP2の開口範囲については、搬送物CAの姿勢変更態様(回転動作)の安定性や再現性を考慮して設定される。
【0055】
図8には、本実施形態の第3実施例による搬送路132t上の搬送物CAの搬送途中における搬送姿勢制御部132S、132S′での搬送姿勢の変更の態様を示す。この実施例では、搬送方向Fに沿って複数の搬送姿勢制御部が設定されている。搬送姿勢制御部132Sと132S′は、上記第2実施例と同様に気流J1を常時生じさせる場合の例を示しているが、第1実施例と同様に、搬送物判別部ME1,ME1′に基づく判別結果によって搬送姿勢を変更する必要があるときのみ気流J1を生じさせるようにしてもよい。
【0056】
この実施例では、上流側の搬送姿勢制御部132S′では、下流側の搬送姿勢制御部132Sの気流J2とは逆の、搬送物CAを逆回転させる気流J2′を生じることにより、搬送物CAを逆回転させるように構成される。なお、搬送姿勢制御部132Sと132S′のいずれが上流側、下流側に配置されていても構わない。このようにすると、搬送物CAの整列方向軸CAxの周りの4つの回転姿勢A-Dのうちの、正規の搬送姿勢Aに対して、順回転で変更可能な搬送姿勢Bと、逆回転で変更可能な搬送姿勢Dのいずれについても、一階の姿勢変更(90度の回転)で直ちに正規の搬送姿勢Aに変更することが可能となる。
【0057】
次に、
図9を参照して、本実施形態の第4実施例による搬送路132t上の搬送物CAの搬送途中における搬送姿勢制御部132S1-132S4での搬送姿勢の変更の態様を示す。この実施例では、上流側の搬送路部分132tpでは底面部132tpbが幅広に構成されるため、整列方向軸CAxが搬送路部分132tpの幅方向に向いた横姿勢の搬送物CAも含まれた状態で搬送されていく。その後、底面部132tsbの幅が低下した搬送路部分132tsが設けられる。この搬送路部分132tsでは、上記横姿勢の搬送物CAが自重により落下することで、搬送路132tから排除される。その結果、搬送路部分132tsでは、整列方向軸CAxが搬送方向Fに向いた搬送物CAのみが搬送されていく。
【0058】
上記搬送路部分132tsは、搬送物CAの選別用の搬送部分であり、搬送物判別部ME11-ME14に対応する搬送姿勢制御部132S1-132S4が設けられる。搬送物判別部ME11,ME12、ME13,ME14は、前述と同様に搬送物CAの整列方向軸CAx周りの搬送姿勢A-Dを検出し、それが正規の搬送姿勢Aであるか否かを判別する。搬送姿勢制御部132S1、132S2,132S3では、それぞれ、正規の搬送姿勢A以外の搬送姿勢B-Dの搬送物CAを90度ずつ回転させることができる。この場合、回転の向きは前述の順回転でも逆回転でも構わないが、3つの搬送姿勢制御部132S1-132S3によって、搬送姿勢B-Dのいずれの搬送物CAでも、最終的に全て正規の搬送姿勢Aに変更することができるように構成されていればよい。
【0059】
最後の搬送姿勢制御部132S4では、正規の搬送姿勢Aでない搬送物CAを全て搬送路部分132ts上から排除する。排除先は回収用の搬送路133tである。この搬送姿勢制御部132S4では、上流側の搬送姿勢制御部132S1-132S3において何等かの姿勢変更ミスにより正規の搬送姿勢Aにならなかった搬送物CA、一旦は正規の搬送姿勢Aにはなったものの、その後、搬送路部分132tsで搬送される過程で姿勢が変更されてしまった搬送物CA、或いは、上記の横姿勢の搬送物CAを全て排除することによって、下流側に向けて、正規の搬送姿勢Aの搬送物CAのみを搬送させる。
【0060】
この搬送路部分132tsでは、複数の搬送物判定部ME11-ME14を個々にカメラCMによって撮影し、各画像を個々に画像処理することによって搬送物CAの判別を行ってもよいが、複数の搬送物判定部ME11-ME14の全体を一つのカメラCMで撮影し、一体の画像の各箇所をそれぞれ処理することによって搬送物CAの判別を行ってもよい。
【0061】
また、本実施形態の画像取得方法により、搬送物CAの浮上状態や回転状態を取得した画像に基づいて、上記気流J1や気流J2の供給圧、供給タイミング、供給時間などを調整し、最適な浮上状態や回転状態が得られるように制御する気流制御手段を設けてもよい。この気流制御手段は、気流J1とJ2のいずれか一方のみを調整するものであってもよく、或いは、気流J1とJ2の双方をそれぞれ調整することができるものであってもよい。特に、気流J1は、前述のように、従来よりもかなり弱い値に調整しなければならない場合があるとともに、搬送物CAの浮上状態を安定させるために微妙で細やかな調整が必要になる場合もあるので、気流の供給経路上に設けた流量調整弁を精密に制御可能な調整手段を構成することが好ましい。
【0062】
本実施形態では、搬送路132t上で第1の気流J1により搬送物CAを第1の搬送面132taから離れるように浮上させ、この浮上した搬送物CAを第2の気流J2により回転させるようにしたので、搬送物CAの姿勢変更の際に搬送路132tの第1の搬送面132taによる干渉が生じにくくなることから、より確実に搬送姿勢を変更することができる。特に、搬送物CAを第2の搬送面132tbに沿って浮上させることにより、搬送物CAの浮上状態を安定させることができ、特に、第2の搬送面132tbが傾斜面である場合にはなおさらである。
【0063】
また、本実施形態によれば、第1の気流により浮上した状態の搬送物CAに第2の気流を当てることにより、従来よりも弱い気流圧でも搬送物を回転させることが可能になり、搬送姿勢を変更することができる。したがって、搬送物の姿勢変更の失敗を防止するために気流の強さの調整範囲を高いレベルに設定する必要がなくなることから、過剰な気流の強さによる障害を生じる可能性も低減できるので、調整範囲を広くすることが可能になり、気流の強さの調整作業も容易化される。また、搬送物の適切な姿勢制御が可能な気流の強さの調整範囲が広がることにより、搬送物の姿勢制御の確実性を高めることが可能になる。ここで、気流の強さの調整とは、例えば、気流圧の調整や気流量の調整、或いは、気流の吹付時間の調整を含む。
【0064】
さらに、本実施形態では、搬送物CAは、第1の気流J1による浮上位置で第2の気流J2により回転して姿勢が変更された後に、第1の気流J1を受けなくなったときに搬送路132t上に戻り、好ましくは、第1の気流J1を受けなくなったときに、搬送路132t上の浮上前の搬送位置に対応する幅方向の位置に戻る。これにより、従来のように、搬送物を幅方向に反転させて側方に移動させた後に、元の搬送列に合流させる必要がなくなるため、前後の搬送物CAによる姿勢の乱れや前後の搬送物の姿勢の乱れを回避できる。このため、高速、高密度に搬送されてくる搬送物CAの搬送姿勢を支障なく制御することができる。また、搬送姿勢を揃えるための搬送方向Fの長さも低減できるため、搬送装置をコンパクトに構成することができる。
【0065】
次に、
図12及び
図13を参照して、異なる実施形態について説明する。なお、この実施形態の搬送路132tの構造は、上記の他の実施形態の搬送路132tに適宜に置換して用いることができるという意味で同じ符号を用いている。
【0066】
図12は、異なる実施形態において採用された気流安定化構造を模式的に示す断面図である。本実施形態では、振動式搬送装置の振動基台(トラフ)上に、一方側と他方側にそれぞれ傾斜姿勢で、背中合わせ状に配置された支持面132Ba1及び132Ba2を備えた基盤ブロック132Baと、この基盤ブロック132Baの一方側の支持面132Ba1上に固定された第1ブロック132Bbと、基盤ブロック132Baの他方側の支持面132Ba2上に固定された第2ブロック132Bcとが設けられる。第1ブロック132Bbには搬送路132tの第1の搬送面132taが設けられる。また、第2ブロック132Bcには搬送路132tの第2の搬送面132tbの一部が設けられる。ただし、第2の搬送面132tbは、後述する第2の噴気口OP2の下方にある部分が基盤ブロック132Baの支持面132Ba1の上部によって構成される。第1の搬送面132taと第2の搬送面132tbは隣接し、相互に角度差(図示例では90度)を有することで、搬送路132tを構成する。
【0067】
さらに、第1の搬送面132taの一部である下部には、支持面132Ba1の上端に隣接し、全体として凹状に構成され、支持面132Ba1より離れる側が凹曲面状に構成された搬送保持面132tcが設けられる。この搬送保持面132tcの下端位置(支持面132Ba1に隣接する位置)には、第1の噴気口OP1が開口している。また、支持面132Ba1と第2の搬送面132tbの間には、第2の噴気口OP2が開口している。上記搬送保持面132tcは、第1の噴気口OP1から吹き付けられる気流で浮上した搬送物CAが第2の噴気口OP2から吹き付けられる気流によって回転(反転)し、異なる姿勢とされた後に、上記凹曲面に沿ってスムーズに元の搬送位置に戻るように、搬送物CAを案内する。
【0068】
この実施形態では、基盤ブロック132Baに設けられた第1の給気路PAs1が支持面132Ba1上に開口し、上記支持面132Ba1と、これに対向する第1ブロック132Bbの対向面に形成された溝によって、上記第1の給気路PAs1に連通する第1の吹付路PAc1と、上記第1の給気路PAs1に連通する第1の抜気路PAe1とが構成されている。第1の吹付路PAc1は、上記第1の噴気口OP1において開口し、第1の給気路PAs1から供給された気流の一部を搬送路132t上に噴出する。第1の抜気路PAe1は、上記第1の給気路PAs1から供給された気流の残部を排出する。なお、第1の抜気路PAe1は図示例では通気路状に構成されるが、気流を排出することができる構造であれば、単なる隙間であっても構わない。ここで、第1の給気路PAs1の給気方向と、第1の吹付路PAc1の吹付方向とは、相互に傾斜し、図示例では時計回りに約45度の角度差を備える。また、第1の給気路PAs1の給気方向と、第1の抜気路PAe1の抜気方向とは、相互に傾斜し、図示例では反時計回りに約135度の角度差を備える。さらに、第1の吹付路PAc1の吹付方向と、第1の抜気路PAe1の抜気方向は、反対向きとなっている。また、第1の吹付路PAc1は、第1の給気路PAs1よりも小さな通気断面積を備える。ここで、第1の給気路PAs1の通気断面積は、第1の吹付路PAc1及び第1の抜気路PAe1のいずれの通気断面積よりも大きい。ここで、三つの通気路は一つの位置で合流(接続)することが好ましい。この場合、第1の給気路PAs1は、第1の吹付路PAc1よりも通気断面積の大きい第1の抜気路PAe1の側に接続されることが望ましい。
【0069】
また、第2ブロック132Bcに設けられた第2の給気路PAs2が基盤ブロック132Baの支持面132Ba2上に開口し、上記支持面132Ba2と、これに対向する第2ブロック132Bcの対向面に形成された溝によって、上記第2の給気路PAs2に連通する第2の吹付路PAc2と、上記第2の給気路PAs2に連通する第2の抜気路PAe2とが構成されている。第2の吹付路PAc2は、上記第2の噴気口OP2において開口し、第2の給気路PAs2から供給された気流の一部を搬送路132t上に噴出する。第2の抜気路PAe2は、上記第2の給気路PAs2から供給された気流の残部を排出する。なお、第2の抜気路PAe2は図示例では通気路状に構成されるが、気流を排出することができる構造であれば、単なる隙間であっても構わない。ここで、第2の給気路PAs2の給気方向と、第2の吹付路PAc2の吹付方向とは、相互に傾斜し、図示例では時計回りに約45度の角度差を備える。また、第2の給気路PAs2の給気方向と、第2の抜気路PAe2の抜気方向とは、相互に傾斜し、図示例では反時計回りに約135度の角度差を備える。なお、本明細書において、「角度差」とは、気流の向きが変化する角度(絶対値)をいう。さらに、第2の吹付路PAc2の吹付方向と、第2の抜気路PAe2の抜気方向は、反対向きとなっている。また、第2の吹付路PAc2は、第2の抜気路PAe2よりも小さな通気断面積を備える。ここで、第2の給気路PAs2の通気断面積は、第2の吹付路PAc2及び第2の抜気路PAe2のいずれの通気断面積よりも大きい。ここで、三つの通気路は一つの位置で合流(接続)することが好ましい。この場合、第2の給気路PAs2は、第2の吹付路PAc2よりも通気断面積の大きい第2の抜気路PAe2の側に接続されることが望ましい。
【0070】
図13は、搬送路132tにおける搬送物CAの配置を模式的に示す説明図である。本実施形態においては、振動式搬送装置による加振機構により、搬送路132tは搬送方向斜め上方へ沿って往復振動を繰り返すことにより、搬送物CAは、搬送路132tに沿って移動する。このとき、搬送物CAは、
図13(a-1)に示すように、第2の搬送面132tbより離間した状態で搬送姿勢制御部に到達する場合と、
図13(b-1)に示すように、第2の搬送面132tbに近接若しくは当接した状態で搬送姿勢制御部に到達する場合がある。これは、振動式搬送装置では、搬送物CAが搬送路132tの第1の搬送面132ta又は第2の搬送面132tbに当接することによって搬送物CAが斜め前方に押し出されて空中を飛翔するといったサイクルを繰り返しつつ搬送されていくため、搬送中の搬送物CAの位置が搬送路132t内においてばらつくからである。
【0071】
ところが、本実施形態の気流安定化構造がない場合には、上記のように搬送物CAが
図13(a-1)に示す状態にあるときには、第1の噴気口OP1から吹き付けられる気流J1によって、搬送物CAは、
図13(a-2)に示すように第2の噴気口OP2に対応する位置まで浮上する。一方、搬送物CAが
図13(b-1)に示す状態にあるときには、第1の噴気口OP1から吹き付けられる気流J1によって、搬送物CAは、
図13(b-2)に示すように第2の噴気口OP2に対応する位置よりもさらに高い位置まで浮上する。これは、
図13(b-1)に示すように、搬送物CAと第2の搬送面132tbとの間の隙間が小さくなっているか、或いは、当該隙間が存在しないため、気流J1が上記隙間を通して抜けることが少なくなり、その結果、
図13(a-2)の場合に比べると、搬送物CAの受ける気流圧が増大するためである。
【0072】
上記のような気流J1による搬送物CAの浮上高さのばらつきは、搬送物CAの第1の噴気口OP1に対する搬送方向の位置の変化や、搬送物CAの第1の搬送面132taに対する間隔、搬送物CAの搬送姿勢(傾斜姿勢など)の変化によっても生ずる。
【0073】
しかしながら、気流安定化構造を備える本実施形態では、上述のように、第1の気流吹付手段において、第1の抜気路PAe1によって構成される気流排出経路が存在することにより、上記搬送路132tにおける搬送物CAの位置や姿勢の変化に起因する気流J1と搬送物CAとの間に生ずる気流圧の変化が第1の吹付路PAc1の内圧の変化を生じさせ、これによって、第1の吹付路PAc1の通気抵抗が変化するので、第1の給気路PAs1から第1の吹付路PAc1へ流れる気流の増減と、第1の抜気路PAe1へ流れる気流の増減とが、相互に逆の相関を有する態様でそれぞれ変化する。このため、第1の噴気口OP1から吹き付けられる気流J1により搬送物CAが受ける気流圧の変化は、上記気流排出経路によって吸収され、緩和される。これによって、
図13(a-3)及び(b-3)に示すように、上記の
図13(a-1)と(b-1)のいずれの場合においても、ほぼ同様の搬送物CAの浮上高さを得ることができる。
【0074】
また、通常、第1の給気路PAs1の上流側には、図示しない開閉弁や流量調整弁などの気流調整手段が設けられる。この場合、気流調整手段に対する調整操作量によって第1の吹付路PAc1の気圧や流量が増減されるので、最終的に第1の噴気口OP1から吹き付けられる気流J1の圧力や流量が増減する。このとき、上記調整操作量は、第1の吹付路PAc1の気圧や流量だけでなく、第1の抜気路PAe1の気圧や流量をも増減させる。このため、本実施形態では、従来構造と比べると、上記調整操作量に対する第1の噴気口OP1から吹き付けられる気流J1の気圧や流量の変化率が小さくなる。すなわち、気流調整手段による第1の噴気口OP1の気流J1の調製感度が低くなるので、調整操作が容易になるとともに、従来よりも高精度かつ安定的に気流J1の気圧や流量を調整可能になる。特に、気流J1は、搬送物CAを第2の噴気口OP2に対応する位置(高さ)に浮上させるために、精密に調整、設定される必要があるため、調整操作が困難であるとともに、上記位置(高さ)の安定性は外因(例えば、圧縮空気源や流量調整弁の圧力変動によっても影響を受けやすいから、気流排出経路の存在は重要であり、効果的である。ここで、気流J1が常時(連続して)吹き付けられることが好ましい点は、先の実施形態と同様である。この場合には、気流J1の過渡特性よりも、搬送物CAの位置や姿勢に対する対応性や安定性が重要となる。
【0075】
なお、給気路PAs1の給気方向に対する第1の吹付路PAc1の吹付方向の角度差が、給気方向に対する第1の抜気路PAe1の抜気方向の角度差よりも小さいことにより、気流を第1の吹付路PAc1に優先して供給できるので、気流J1の供給圧をさらに確保しやすくなり、安定させることができる。また、第1の吹付路PAc1の通気断面積が、第1の抜気路PAe1の通気断面積よりも小さいことにより、第1の吹付路PAc1の気圧変化を第1の給気路PAs1側に迅速に伝えやすくなるとともに、第1の抜気路PAe1の気流排出作用を高めることができるため、気流J1の気圧や流量の安定性を向上できるとともに搬送物CAに対する気流作用の安定性も向上できる。また、所定の調整操作量に対する気流J1の気圧や流量の変化量をさらに低減できるため、気流J1の調整をさらに容易化でき、気圧や流量の高精度化を図ることができる。
【0076】
一方、本実施形態では、第2の噴気口OP2から気流J2を吹き付ける第2の気流吹付手段においても、上記と同様に、第2の給気路PAs2、第2の吹付路PAc2、第2の抜気路PAe2を有する気流安定化構造を有する。このため、基本的には、搬送物CAを回転(反転)させるための気流J2についても、上記と同様に、搬送物CAが受ける気流圧が安定し、ばらつきも減少し、さらに、気流調整手段による気圧や流量の調整についても、調整作業の容易化や調整の高精度化や安定化を図ることができる。ただし、この第2の噴気口OP2から吹き付けられる気流J2に関しては、上記気流J1とは異なり、常時流し続けることができず、上記第2の給気路PAs2の上流側に設置される開閉弁などによってオンオフ制御される。このため、オンオフ制御される過渡応答性については、上記第2の抜気路PAe2による気流排出経路を設けることによって、第2の給気路PAs2に供給される気流が停止された際に、第2の吹付路PAc2内の気圧が抜けやすくなるため、気流J2の圧力を迅速に低下させることができる。このため、気流J2の作用によって回転(反転)させた搬送物CAの次に搬送されてくる正常姿勢の搬送物にも誤って気流J2を吹き付けてしまう虞を低減することができる。なお、第2の給気路PAs2の給気方向に対する第2の吹付路PAc1の吹付方向の角度差が、給気方向に対する第2の抜気路PAe2の抜気方向の角度差よりも小さいことによる作用効果と、第2の吹付路PAc2の通気断面積が、第2の抜気路PAe2の通気断面積よりも小さいことによる作用効果は、第1の気流吹付手段と同様である。
【0077】
なお、本発明の搬送姿勢の制御方法及び搬送システムは、上述の図示例のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、上記実施形態では、搬送路132tの第1の搬送面132taと第2の搬送面132tbはいずれも平坦な面を備えるが、搬送路132tとしては、凹曲面状や凸曲面状の搬送面を備えるものであってもよく、また、複数の搬送面ではなく、一体の凹状の溝構造などを有するものであってもよい。
【0078】
また、上記実施形態では、搬送路132tの搬送面に開口した噴気口OP1,OP2から気流J1,J2を生じさせているが、搬送面以外の箇所、例えば、気流管から気流を生ずるように構成してもよい。さらに、上記実施形態では、搬送物CAの整列方向軸CAx周りの回転姿勢を変更する場合について説明しているが、本発明は、搬送物CAの前後姿勢を変更するなど、他の搬送姿勢の変更態様を実現する場合にも適用できる。
【0079】
さらに、上記実施形態では、搬送姿勢制御部において搬送姿勢を一定の態様で変更する場合のみを示しているが、搬送姿勢の複数の制御態様から選択して実施するようにしても構わない。例えば、搬送物CAの回転角度を90度、180、270度のように複数の角度のいずれにもすることができるように気流の強さや時間を設定しておき、判別結果に応じて選択した回転角度で搬送姿勢が変更されるように構成してもよい。
【0080】
また、上記気流安定化構造では、給気路PAs1,PAs2及び吹付路PAc1,PAc2からなる気流導入経路の途中に抜気路PAe1,PAe2からなる気流排出経路を設けることによって、第1の噴気口OP1や第2の噴気口OP2上における搬送物CAの有無や、搬送物CAの位置や姿勢に起因する気流の圧力の変動が抑制される。すなわち、第1の噴気口OP1や第2の噴気口OP2上の搬送物の有無や位置や姿勢に応じて気流の流出抵抗が変化しても、当該変化による吹付路PAc1,PAc2の圧力変化(通気抵抗の変化)は、給気路PAs1,PAs2から吹付路PAc1,PAc2に供給される気流の量と、抜気路PAe1,PAe2へ排出される気流の量との相対的変化によって吸収、緩和される。このため、気流により搬送物CAが受ける気流圧が安定する。また、給気路PAs1,PAs2の上流側には開閉弁や流量調整弁などの気流調整手段が設けられるが、これらの気流調節手段によって給気路PAs1,PAs2の流量を調整する場合、上記抜気路PAe1,PAe2による気流排出経路が設けられることによって、所定の調整操作量に対する気流の圧力や量の変化度合が相対的に小さくなるため、流量調整が容易化されるという利点もある。さらには、給気路PAs1,PAs2の気流の供給が停止した際には、吹付路PAc1,PAc2内の気圧が上記気流排出経路によって迅速に低下するため、気流J1,J2の停止を迅速に行うことができることから、後続の正常な搬送物CAを誤って姿勢制御してしまう虞を低減できる。以上の気流安定化構造の採用により、気流による搬送物CAの姿勢制御ミスを大幅に低減することが可能となった。
【符号の説明】
【0081】
10…搬送システム、100…振動式搬送装置、101…設置台、102…支持台、110…搬送物供給部、112…ホッパ、120…第1搬送部(パーツフィーダ)、130…第2搬送部(リニアフィーダ)、132…振動体、132t…搬送路、132S(132S1-132S4)、132S′…搬送姿勢制御部、132ta…第1の搬送面、132tb…第2の搬送面、OP1…第1の噴気口、OP2…第2の噴気口、132tp…上流側の搬送路部分、132ts…選別用の搬送路部分、CA…搬送物、CAx…整列方向軸、L…長さ、W…幅、H…高さ、J1、J2,J2′…気流、132tc…搬送保持面、132Ba…基盤ブロック、132Ba1、132Ba2…支持面、132Bb…第1ブロック、132Bc…第2ブロック、PAs1,PAs2…給気路、PAc1,PAc2…吹付路、PAe1、PAe2…抜気路