(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】電動スケーター
(51)【国際特許分類】
B62K 17/00 20060101AFI20240501BHJP
【FI】
B62K17/00
(21)【出願番号】P 2024040904
(22)【出願日】2024-03-15
【審査請求日】2024-03-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523477211
【氏名又は名称】崔 錚
(74)【代理人】
【識別番号】100125645
【氏名又は名称】是枝 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100145609
【氏名又は名称】楠屋 宏行
(74)【代理人】
【識別番号】100149490
【氏名又は名称】羽柴 拓司
(72)【発明者】
【氏名】崔 錚
【審査官】三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-32991(JP,A)
【文献】特開2005-22631(JP,A)
【文献】特開2015-126552(JP,A)
【文献】米国特許第06286843(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62K 17/00
A63C 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドル軸と踏み板とを連結する連結用フレームを備えると共に、前記踏み板と前記連結用フレームとに、車体の進行方向に対して前記ハンドル軸を左右に傾倒可能とする傾倒機構を備え、前記傾倒機構は、前記連結用フレームに取り付けられる第1のベアリングと、前記踏み板に取り付けられる第2のベアリングと、一端側が前記第1のベアリングに嵌合され、他端側が前記第2のベアリングに嵌合される回動軸と、前記第1のベアリングと前記第2のベアリングとの間の位置の前記連結用フレーム内において、前記回動軸に対して水平方向に交差するように配置されると共に、長手方向の略中央位置で前記回動軸に固定されることで前記回動軸を介して回動可能である回動板と、前記回動板の前記回動軸を挟んだ左右両側のそれぞれの所定位置において、前記回動板と前記連結用フレームの内壁との間で鉛直方向に付勢される弾性部材とを少なくとも備えることを特徴とする電動スケーター。
【請求項2】
回動軸の下面又は上面に、回動軸の軸方向へ回動板が移動することを規制するための凹状又は凸状の移動規制部を設けてあると共に、回動板の上面又は下面に、前記回動軸に対して水平方向に交差する方向に前記回動板が移動することを規制するための凹状又は凸状の移動規制部を設けてあることを特徴とする請求項1に記載の電動スケーター。
【請求項3】
回動板は、回動軸との固定位置に円形の貫通孔を備え、前記回動軸は、前記回動板との固定位置にねじ切加工を施した円形の貫通孔を備え、前記回動板の前記貫通孔と前記回動軸の前記貫通孔とを合わせた状態でねじを貫通させて前記回動板を前記回動軸に固定してあり、連結フレーム内には、前記回動軸から上方に突き出たねじを受け入れると共に、受け入れたねじが前記回動軸を介して回動する回動量を規制するための円弧状の規制用溝を設けてあることを特徴とする請求項1又は2に記載の電動スケーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体の進行方向に対してハンドル軸を左右に傾倒可能な傾倒機構を備えると共に、傾倒したハンドル軸を傾倒前の位置に容易に戻すことが可能な電動スケーターに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、新しい移動手段として、いわゆる電動スケーターや電動キックボードといった乗り物が各種開発されている。
この電動スケーターや電動キックボードは、2輪や3輪で構成される車輪付きの踏み台や座部支持用支柱などに電動モーターやバッテリーを搭載したもので、小型で小回りが利くと共に操作が簡単で、環境にも優しいことから、通勤や買い物等、日常的に使用できる新たな乗り物として注目されている。
このような電動スケーターや電動キックボードを示す従来技術として、例えば下記特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1は、電動キックボードに関する考案で、バッテリー充電する際の煩雑さを軽減することができるというメリットがある。
このような従来の電動キックボードや電動スケーターにおいては、車体の進行方向に対してハンドル軸を左右に傾倒可能な傾倒機構を備えるものがなかった。
よって、方向転換するための転舵は、ハンドルを操作することで進行方向を変えるだけであった為、走行時の操作性に欠けることから、車体の進行方向に対してハンドル軸を左右に傾倒可能な傾倒機構を備える電動スケーターや電動キックボードの開発が望まれるところであった。
【0005】
そこで、本発明は上記従来における問題点を解決し、車体の進行方向に対してハンドル軸を左右に傾倒可能な傾倒機構を備えると共に、傾倒したハンドル軸を傾倒前の位置に容易に戻すことが可能な電動スケーターの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を達成するため、本発明の電動スケーターは、ハンドル軸と踏み板とを連結する連結用フレームを備えると共に、前記踏み板と前記連結用フレームとに、車体の進行方向に対して前記ハンドル軸を左右に傾倒可能とする傾倒機構を備え、前記傾倒機構は、前記連結用フレームに取り付けられる第1のベアリングと、前記踏み板に取り付けられる第2のベアリングと、一端側が前記第1のベアリングに嵌合され、他端側が前記第2のベアリングに嵌合される回動軸と、前記第1のベアリングと前記第2のベアリングとの間の位置の前記連結用フレーム内において、前記回動軸に対して水平方向に交差するように配置されると共に、長手方向の略中央位置で前記回動軸に固定されることで前記回動軸を介して回動可能である回動板と、前記回動板の前記回動軸を挟んだ左右両側のそれぞれの所定位置において、前記回動板と前記連結用フレームの内壁との間で鉛直方向に付勢される弾性部材とを少なくとも備えることを第1の特徴としている。
また、本発明の電動スケーターは、上記第1の特徴に加えて、回動軸の下面又は上面に、回動軸の軸方向へ回動板が移動することを規制するための凹状又は凸状の移動規制部を設けてあると共に、回動板の上面又は下面に、前記回動軸に対して水平方向に交差する方向に前記回動板が移動することを規制するための凹状又は凸状の移動規制部を設けてあることを第2の特徴としている。
また、本発明の電動スケーターは、上記第1又は第2の特徴に加えて、回動板は、回動軸との固定位置に円形の貫通孔を備え、前記回動軸は、前記回動板との固定位置にねじ切加工を施した円形の貫通孔を備え、前記回動板の前記貫通孔と前記回動軸の前記貫通孔とを合わせた状態でねじを貫通させて前記回動板を前記回動軸に固定してあり、連結フレーム内には、前記回動軸から上方に突き出たねじを受け入れると共に、受け入れたねじが前記回動軸を介して回動する回動量を規制するための円弧状の規制用溝を設けてあることを第3の特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
上記第1の特徴による電動スケーターによれば、傾倒機構を備えることで、連結用フレームを車体の進行方向に対して左右の何れかに傾倒させることが可能となり、これによって連結用フレームと連結されるハンドル軸を車体の進行方向に対して左右の何れかに傾倒させることができる。よって、走行時の操作性を向上させることができる。
更に、傾倒機構を構成する部材として弾性部材を備えることで、ハンドル軸を傾倒させた際、ハンドル軸を傾倒させる前に鉛直方向に付勢されていた弾性部材に伸縮方向の応力や、車体の進行方向に対して左右方向の応力が負荷される。よって、ハンドル軸を傾倒させる際に加えた力を解除するだけで、ハンドル軸を傾倒させる前の状態に戻ろうとする復帰力を弾性部材に働かせることができる。従って、傾倒させた状態にあるハンドル軸を自動的に或いは僅かな力で傾倒前の状態に容易に戻すことが可能となる。よって、男性はもとより、非力な女性であってもハンドル軸の傾倒操作を容易に行うことができ、走行時の操作性を一段と向上可能な電動スケーターとすることができる。
【0008】
また、上記第2の特徴による電動スケーターによれば、上記第1の特徴による作用効果に加えて、回動軸の軸方向や回動軸に対して水平方向に回動板が移動することを一段と確実に防止することができる。よって、ハンドル軸の傾倒操作の操作精度が高く、傾倒機構が損傷し難い電動スケーターとすることができる。
【0009】
また、上記第3の特徴による電動スケーターによれば、上記第1又は第2の特徴による作用効果に加えて、規制用溝を連結用フレーム内に設けることで、必要以上に連結用フレームが回動することを防止でき、これによって、ハンドル軸が必要以上に傾倒することを効果的に防止することができる。よって、運転者が必要以上にハンドル軸を傾倒させることを防止できることで、安全性が高く、傾倒機構が損傷し難い電動スケーターとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る折り畳み式電動スケーターを示す図で、(a)は正面図、(b)は斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る折り畳み式電動スケーターと折り畳み式電動スケーターを構成する連結用フレームを示す図で、(a)は折り畳み式電動スケーターの右側面図、(b)は折り畳み式電動スケーターの折り畳んだ状態を示す斜視図、(c)は連結用フレームの斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る折り畳み式電動スケーターに設けられる傾倒機構を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る折り畳み式電動スケーターに設けられる傾倒機構を示す図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る折り畳み式電動スケーターに設けられる傾倒機構の動きを模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、各図面を参照して、本発明の実施形態に係る折り畳み式電動スケーターを説明し、本発明の理解に供する。しかし、以下の説明は特許請求の範囲に記載の本発明を限定するものではない。
【0012】
まず、
図1、
図2を参照して、本発明の実施形態に係る折り畳み式電動スケーター100は、ハンドル200、ハンドル軸300、座部400、座部支持用支柱500、金属製の踏み板600、3つのタイヤ700、ハンドル軸300と踏み板600とを連結する金属製の連結用フレーム800、前輪固定用フレーム900を主に備え、座部支持用支柱500や踏み板600などに図示しない電動モーターやバッテリー等を搭載したいわゆる折り畳み式電動3輪スケーターである。
また、本実施形態における折り畳み式電動スケーター100は、折り畳み用レバー301を操作することでハンドル軸300を踏み板600側へと折り畳むことができ、また、折り畳み用レバー501を操作することで座部支持用支柱500を踏み板600側へと折り畳むことができる構成となっている。
また、座部400については、詳細には図示していないが、スライド板Sをスライド溝401に沿ってスライドさせることで座部400を座部支持用支柱500の内側に折り畳み収納できる構成となっている。
なお、本実施形態においては、電動スケーターとして、折り畳み式電動スケーターを用いる構成としたが、必ずしもこのような構成に限るものではなく、折り畳み式ではない電動スケーターを用いる構成としてもよい。
また、踏み板600及び連結用フレーム800を形成する金属としては、耐久性を考慮すれば、鋼やステンレスを用いることが望ましいが、他の金属を用いる構成としてもよいし、金属ではなく、例えば樹脂等、他の素材を用いる構成としてもよい。
【0013】
また、本実施形態における折り畳み式電動スケーター100は、
図2(a)に破線で示すように、車体の進行方向に対してハンドル軸300を左右に傾倒可能とする傾倒機構を備えるものである。
具体的には、
図1、
図2に示すように、ハンドル軸300及び踏み板600とは別部材で形成されると共に、ハンドル軸300と踏み板600とを連結する連結用フレーム800を備え、この連結用フレーム800と踏み板600とに傾倒機構を備える構成としてある。
なお、
図2(b)、
図2(c)に示すように、連結用フレーム800の上方側の端部において車体の前方側へ略直方体形状に延出した部分には、鉛直方向に円形の貫通孔801を設けてあり、この貫通孔801に、ハンドル軸300内に配置されると共に、前輪固定用フレーム900と連結される回転軸302を挿通させることで、連結用フレーム800をハンドル軸300に連結させてある。
また、
図2(c)、
図4(b)に示すように、連結用フレーム800の下方側端部における車体の下方側へ略直方体形状に延出した部分には、前方側の端面に第1のベアリング1を嵌合させるための嵌合用孔802を設けてあり、後方側の端面に第1のベアリング1に嵌合される回動軸3を挿通させるための貫通孔803を設けてある。そして、回動軸3の一端側を嵌合させてある第1のベアリング1を嵌合用孔802に嵌合させてあると共に、貫通孔803を通過して連結用フレーム800の外部へと出た回動軸3の他端側を嵌合させてある第2のベアリング2を踏み板600に設けた嵌合用孔601に嵌合させてある。
以上の構成を備えることにより、連結用フレーム800が回動軸3を中心にして回動自在となる。これによって、連結用フレーム800の上方側端部と連結されるハンドル軸300を車体の進行方向に対して左右に傾倒可能な構成とすることができる。
【0014】
以下、本発明の傾倒機構を更に詳細に説明することとする。
図2~
図4に示すように、本発明の実施形態に係る折り畳み式電動スケーター100が備える傾倒機構は、第1のベアリング1と、第2のベアリング2と、回動軸3と、回動板4と、スプリングばね5と、ねじ6と、スプリングばね固定用部材7と、スプリングばね当接用部材8とで構成される。
【0015】
前記第1のベアリング1は、第2のベアリング2と協働して、回動軸3を介して連結用フレーム2を回動可能とするための部材である。
本実施形態においては
図2(c)に簡略化して示すように、この第1のベアリング1は、連結用フレーム800の下方側の端部における車体の下方側へ略直方体形状に延出した部分の前方側の端面に設けられる円形の嵌合用孔802に嵌合されて固定される。
なお、本実施形態においては
図3(c)に示すように、第1のベアリング1として、いわゆるボールベアリングを用いる構成としたが、必ずしもこのような構成に限るものではなく、第1のベアリングとして、ボールベアリングに替えて他の汎用されているベアリングを用いる構成としてもよい。
また、
図3(a)、
図4においては、説明の便宜上、第1のベアリング1を簡略化して図示するものとする。
【0016】
前記第2のベアリング2は、第1のベアリング1と協働して、回動軸3を介して連結用フレーム2を回動可能とするための部材である。
本実施形態においては
図2(c)、
図4(b)に簡略化して示すように、この第2のベアリング2は、踏み板600の前方側の端面に突出した状態で設けられる円形の嵌合用孔601に嵌合されて固定される。
なお、本実施形態においては第2のベアリング2として、いわゆるボールベアリングを用いる構成としたが、必ずしもこのような構成に限るものではなく、第2のベアリング2として、ボールベアリングに替えて他の汎用されているベアリングを用いる構成としてもよい。
【0017】
前記回動軸3は、先端側(一端側)において第1のベアリング1と嵌合されると共に、後端側(他端側)において第2のベアリング2と嵌合されて回動自在となる金属製の軸部材である。
本実施形態においては
図3(c)に示すように、回動軸3の下面Bに回動板4の短手方向の幅と同じ幅の矩形状の凹所を設けてある。この凹所は、回動軸3の軸方向へ回動板4が移動することを制止するための移動規制部3bを形成するものである。
また、移動規制部3b内には、回動軸3を鉛直方向に貫通する円形の貫通孔3aを設けてある。この貫通孔3aは、ねじ6を貫通させて回動板4を回動軸3に固定するためのものであり、図示していないが、貫通孔3aの内壁には、ねじ6と螺合するようにねじ切り加工を施してある。
なお、本実施形態においては、移動規制部3bの構成として、回動軸3の下面Bに回動板4の短手方向の幅と同じ幅の矩形状の凹所を設ける構成としたが、必ずしもこのような構成に限るものではない。例えば、移動規制部3bの構成として、回動軸3の上面Tに回動板4の短手方向の幅と同じ幅の矩形状の凹所を設ける構成や、回動板4を挟持可能な一対の凸部を回動軸3の下面B又は上面Tに設ける構成としてもよい。
更に、本実施形態においては
図2(c)、
図3(b)に示すように、第1のベアリング1と第2のベアリング2との間においては円柱形状で、第2のベアリング2よりも後方側においては略直方体形状の回動軸3を用いる構成としてある。勿論、このような構成に限るものではなく、第1のベアリング1及び第2のベアリング2と嵌合可能な形状であれば、回動軸3の形状は如何なる形状であってもよい。
また、回動軸3を形成する金属としては、耐久性を考慮すれば、鋼やステンレスを用いることが望ましい。
【0018】
前記回動板4は、ハンドル軸300に従動させて連結用フレーム800を傾倒させるための部材である。
本実施形態においては、金属製の細長い板状部材で回動板4を形成する構成としてある。また、連結用フレーム800に形成してある空洞部K内において、第1のベアリング1と第2のベアリング2との間の位置の回動軸3に対して水平方向に交差(本実施形態においては直交)するように回動板4を配置してある。
また、
図3、
図4に示すように、回動板4の長手方向の中央位置には、回動板4を回動軸3に固定するためのねじ6を挿通させるための円形の貫通孔4aを設けてある。
【0019】
また、回動板4の上面Tにおける貫通孔4aを挟む左右両側には、回動軸3を挟持可能な一対の矩形状の凸片を設けてある。つまり、本実施形態においては、一対の凸片の内壁間の長さを回動板4の短手方向の幅(直径)と同じ長さとしてある。この一対の凸片は、回動軸3に対して水平方向に交差する方向に回動板4が移動することを制止するための移動規制部4bを形成するものである。
なお、本実施形態においては、移動規制部4bの構成として、回動板4の上面Tに、一対の凸片の幅が回動軸3の短手方向の幅(直径)と同じ幅である矩形状の一対の凸片を設ける構成としたが、必ずしもこのような構成に限るものではない。例えば、移動規制部4bの構成として、回動板4の下面Bに、一対の凸片の内壁間の長さが回動軸3の短手方向の幅(直径)と同じ長さの矩形状の一対の凸片を設ける構成や、回動軸3の短手方向の幅(直径)と同じ幅である凹所を回動板4の上面T又は下面Bに設ける構成としてもよい。
更に、
図3、
図4に示すように、回動板4の長手方向の左右両端部には、円形の凹所4cを設けてある。この凹所4cは、スプリングばね5を固定するためのスプリングばね固定用部材7を載置させると共に、スプリングばね固定用部材7が水平方向に移動することを防ぐための空間を形成するものである。よって、凹所4cの形状は円形に限るものではないが、凹所4cの形状、大きさ、深さは、スプリングばね固定用部材7と同じ形状、大きさで、スプリングばね固定用部材7を載置させた状態でスプリングばね固定用部材7が水平方向に動かないだけの深さとすることが必要である。
なお、移動規制部4b、凹所4cは、例えば、型を用いて回動板4上に一体成形することが可能である。
また、回動板4を形成する金属としては、耐久性を考慮すれば、鋼やステンレスを用いることが望ましい。
【0020】
前記スプリングばね5は、回動板4と連結用フレーム800の内壁との間で鉛直方向に付勢される弾性部材で、傾倒させた状態にあるハンドル軸300を自動的に或いは僅かな力で傾倒前の状態に戻すための復帰力を発現させるための部材である。
本実施形態においては、一対のスプリングばね5を用いて、回動板4の長手方向の左右両端部に一対のスプリングばね5を配置する構成としてある。
具体的には
図3に示すように、スプリングばね5の下端をスプリングばね固定用部材7に嵌合させた状態で凹所4cにスプリングばね固定用部材7を嵌合させることで、回動板4の長手方向の左右端部に一対のスプリングばね5を配置する構成としてある。
更に、ねじ6を用いて回動板4を回動軸3に固定する際に、スプリングばね当接用部材8の下面にスプリングばね5の上端を当接させると共に、スプリングばね5に鉛直方向の付勢力を負荷させる構成としてある。
なお、本実施形態においては、弾性部材としてスプリングばねを用いる構成としたが、必ずしもこのような構成に限るものではなく、スプリングばね5と同様の機能、効果を発揮するものであれば、板ばねなど、他の弾性部材を用いる構成としてもよい。但し、好適には、弾性部材としてスプリングばねを用いることが望ましい。
また、スプリングばねを含めて弾性部材の強度は、通常の運転時に不意にハンドル軸300が傾倒することを防ぐ観点においては、折り畳み式電動スケーター100に乗車する老若男女の平均的な腕力を備えた運転者がハンドル軸300を左右に傾倒させる操作を行った際(傾倒させるための荷重を負荷させた際)、鉛直方向に付勢力が負荷された状態にある弾性部材に、弾性部材が伸縮する方向と、左右に傾倒する方向とに応力が発生する(例えば、本実施形態の折り畳み式電動スケーター100のハンドル軸300を右側に傾倒させた場合においては、回動板4の右側に配置されるスプリングばね5ではスプリングばね5が収縮する方向と、スプリングばね5が右側に傾倒する方向とに応力が発生し、回動板4の左側に配置されるスプリングばね5ではスプリングばね5が伸長する方向と、スプリングばね5が右側に傾倒する方向とに応力が発生する)強度とすることが望ましい。
【0021】
前記ねじ6は、回動板4を回動軸3に固定するための部材である。
本実施形態においては
図3に示すように、ねじ6として、回動板4を回動軸3に固定した状態において、ねじ6の先端部分が回動軸3から所定長さだけ突出する長さの金属製の皿ねじを用いる構成としてある。
詳しくは図示していないが、この突出部分は、連結フレーム800の空洞部Kの内壁におけるねじ6と対向する面に設けられる円弧状の規制用溝805の中に受け入れられる部分となるものである。このような構成とすることで、ねじ6の突出部分が回動軸3を介して回動する際に、円弧状の規制用溝805の範囲内だけでねじ6の突出部分の移動が許容される構成とすることができる。つまりは、回動板4の回動範囲を規制用溝805の範囲内に留めることができ、必要以上に連結用フレーム800が回動することを防止可能な構成することができる。
よって、ねじ6の長さは、回動板4を回動軸3に固定した状態において、ねじ6の先端部分が回動軸3から所定長さだけ突出する長さであることが必要である。また、連結用フレーム800に設ける規制用溝805の深さは、回動板4を回動軸3にねじ6を介して固定した際にねじ6の先端部分を受け入れることが可能な深さであることが必要で、規制用溝805の円弧長さは、回動板4の回動範囲に合わせた長さとすることが必要である。
なお、ねじ6を形成する金属としては、耐久性を考慮すれば、鋼やステンレスを用いることが望ましい。
更に、図示していないが、本実施形態においては、回動板4が必要以上に回動した際に、連結用フレーム800の空洞部Kの下方側の内面と回動板4が当接するように、空洞部Kの下方側の内面の配置位置を調整して設計してある。
【0022】
前記スプリングばね固定用部材7は、スプリングばね5を回動板4に固定すると共に、スプリングばね5が水平方向に移動することを制止するための部材である。
本実施形態においては
図3(c)に示すように、円柱形状の基台7aと、基台7aの上面に設ける円柱形状の凸部7bとを備える金属製部材で形成されるスプリングばね固定用部材7を用いる構成としてある。
なお、基台7aの大きさは凹所4cに嵌合可能な大きさとしてあり、凸部7bの大きさはスプリングばね5内に嵌合可能な大きさとしてある。
なお、スプリングばね固定用部材7を用いずにスプリングばね5を凹所4cに直接嵌合させる構成としてもよいが、ハンドル軸300を傾倒させた際にスプリングばね5が回動板4から容易に脱落することや、移動することを防止する観点においては、スプリングばね固定用部材7を用いることが望ましい。
また、スプリングばね固定用部材7を形成する金属としては、耐久性を考慮すれば、鋼やステンレスを用いることが望ましい。
【0023】
前記スプリングばね当接用部材8は、スプリングばね5の上端と当接し、スプリングばね5を介して連結用フレーム800の傾倒動作を回動板4に伝達させるための部材である。また、スプリングばね5の損傷を防止しつつ、スプリングばね5が移動することを制止するための部材である。
本実施形態においては
図3に示すように、硬質樹脂製の円柱状部材でスプリングばね当接用部材8を形成する構成としてある。また、このスプリングばね当接用部材8は、接着剤を用いて連結用フレーム800の空洞部Kの内壁に設けられる円柱形状の凹所804に嵌合させた状態で接着固定させる構成としてある。
なお、スプリングばね当接用部材8の形状、大きさ(直径)は、凹所804の形状、大きさ(直径)と略同じとしてある。また、スプリングばね当接用部材8の厚みと凹所804の深さは、スプリングばね当接用部材8が凹所804に嵌合した状態において、凹所804から容易に脱落し難い厚み、深さとしてある。よって、スプリングばね当接用部材8の形状、大きさ、厚みは、本実施形態のものに限るものではなく、凹所804の形状、大きさ、深さに合わせて適宜変更可能である。
また、スプリングばね当接用部材8を用いずにスプリングばね5を凹所804に直接嵌合させる構成としてもよいが、スプリングばね5の耐久性を考慮すれば、スプリングばね当接用部材8を用いることが望ましい。加えて、スプリングばね当接用部材8を用いる場合においては、ハンドル軸300を傾倒させた際にスプリングばね5がスプリングばね当接用部材8から容易に脱落することを防止する観点から、スプリングばね当接用部材8の下面にスプリングばね5の上端が嵌合する凹所を設けることが望ましい。
また、スプリングばね当接用部材8を形成する硬質樹脂としては、アクリル、ポリカーボネイトなど、汎用されているいかなる硬質樹脂を用いてもよい。
【0024】
次に、
図2(c)、
図3を参照して、このような構成からなる傾倒機構の取り付け方法の一例を説明する。
まず、連結用フレーム800に設ける嵌合用孔802に第1のベアリング1を嵌合させる。
そして、連結用フレーム800の空洞部Kの内壁に設ける凹所804に接着剤を用いて一対のスプリングばね当接用部材8を接着固定させる。
その後、一対のスプリングばね5の下端にスプリングばね固定用部材7の凸部7bを嵌合させた状態で回動板4の凹所4cに一対のスプリングばね固定用部材7を嵌合させる。
そして、回動軸3の一端側(先端側)を第1のベアリング1に嵌合させると共に、ねじ6を用いて回動板4を回動軸3に固定する。この際、ねじ6の螺合力を介して、回動板4と連結用フレーム800の内壁との間で一対のスプリングばね5に鉛直方向の付勢力を負荷させる。
その後、第2のベアリング2を踏み板600に設ける嵌合用孔601に嵌合させる。
以上により、踏み板600と連結用フレーム800とに、車体の進行方向に対してハンドル軸300を左右に傾倒可能で、且つ傾倒させたハンドル軸300を自動的に或いは僅かな力で傾倒前の状態に容易に戻すことが可能な傾倒機構が取り付けられる(装備される)。
なお、傾倒機構の取り付け方法は上記の順序に限るものではなく、踏み板600と連結用フレーム800とに傾倒機構を配設できるものであれば、他の順序で取り付けるものであってもよい。
【0025】
次に、
図5を参照して、このような構成からなる本発明の実施形態に係る折り畳み式電動スケーター100において、車体の進行方向に対してハンドル軸300を傾倒させた際の動きについて説明する。
なお、以下においては車体の進行方向に対してハンドル軸300を右側に傾倒させた際の説明を行うこととする。しかしながら、車体の進行方向に対してハンドル軸300を左側に傾倒させた際の動きについては、ハンドル軸300を右側に傾倒させた際の動きとハンドル軸300を対称軸として線対称な動きとなることから、車体の進行方向に対してハンドル軸300を左側に傾倒させた際の説明は省略するものとする。
まず、運転者がハンドル軸300を車体の進行方向に対して右側に傾倒させる(ハンドル軸300が右側に傾倒するだけの力をハンドル軸300に負荷する)ことで、連結用フレーム800がハンドル軸300に従動して右側に傾倒する。その際、回動板4が回動軸3を中心に時計回りに所定量だけ回動する。
具体的には、
図5(a)に示す回動前の傾倒機構に矢印方向の力が加わり、これに伴って
図5(b)に示すように、スプリングばね当接用部材8、スプリングばね5を介して回動板4が回動軸3を介して時計周りに回動する。この際、連結用フレーム800、回動板4、回動軸3の位置関係によって、回動板4の右側に配置されるスプリングばね5においては、スプリングばね5が収縮する方向と、スプリングばね5が右側に傾倒する方向とに応力が発生する。一方、回動板4の左側に配置されるスプリングばね5においては、スプリングばね5が伸長する方向と、スプリングばね5が右側に傾倒する方向とに応力が発生する。
そして、右側に傾倒されたハンドル軸300に対して運転者が力の負荷を解除する或いはハンドル軸300を左側に戻そうとする動作を行うことで、
図5(b)に示す回動後の傾倒機構に矢印方向の力が加わり、これに伴って
図5(b)から
図5(c)に示すように、一対のスプリングばね5に傾倒前の当初の状態に戻ろうとする復帰力がそれぞれ働き、スプリングばね当接用部材8、スプリングばね5を介して回動板4が回動軸3を介して反時計周りに
図5(c)(
図5(a))に示す当初の位置まで回動する。同時に、連結用フレーム800がスプリングばね5及びスプリングばね当接用部材8を介して反時計周りに、ハンドル軸300の傾倒前の当初の位置まで回動する。
以上により、ハンドル軸300がまっすぐの位置から右側に傾倒した位置へと動き、その後再びまっすぐの位置へと戻る動作が完了する。
【0026】
以上の構成からなる本発明の実施形態にかかる折り畳み式電動スケーター100は以下の効果を奏する。
【0027】
踏み板600と連結用フレーム800とに傾倒機構を備えることで、連結用フレーム800を車体の進行方向に対して左右の何れかに傾倒させることが可能となり、これによって連結用フレーム800と連結されるハンドル軸300を車体の進行方向に対して左右の何れかに傾倒させることができる。よって、走行時の操作性を向上させることができると共に、運転時の面白みを増加させることが可能な折り畳み式電動スケーター100とすることができる。
更に、弾性部材としてのスプリングばね5を備えることで、ハンドル軸300を左右のいずれかに傾倒させた際、ハンドル軸300を傾倒させる前に鉛直方向に付勢されていたスプリングばね5に伸縮方向の応力や、車体の進行方向に対して左右のいずれかの方向の応力が負荷される。よって、ハンドル軸300を傾倒させる際に加えた力を解除するだけで、ハンドル軸300を傾倒させる前の状態に戻ろうとする復帰力をスプリングばね5に働かせることができる。従って、傾倒させた状態にあるハンドル軸300を自動的に或いは僅かな力で傾倒前の状態に容易に戻すことが可能となる。よって、男性はもとより、非力な女性であってもハンドル軸300の傾倒操作を容易に行うことができ、走行時の操作性を一段と向上可能な折り畳み式電動スケーター100とすることができる。
【0028】
また、回動軸3の下面Bに、回動軸3の軸方向へ回動板4が移動することを規制するための凹状の移動規制部3bを設けてあると共に、回動板4の上面Tに、回動軸3に対して水平方向に交差する方向に回動板4が移動することを規制するための一対の凸状の移動規制部4bを設けてある構成とすることで、回動軸3の軸方向や回動軸3に対して水平方向に回動板4が移動することを一段と確実に防止することができる。よって、ハンドル軸300の傾倒操作の操作精度が高く、傾倒機構が損傷し難い折り畳み式電動スケーター100とすることができる。
【0029】
また、連結用フレーム800内に規制用溝805を設けることで、必要以上に連結用フレーム800が回動することを防止でき、これによって、ハンドル軸300が必要以上に傾倒することを効果的に防止することができる。よって、運転者が必要以上にハンドル軸300を傾倒させることを防止できることで、安全性が高く、傾倒機構が損傷し難い折り畳み式電動スケーター100とすることができる。
更に、回動板4が必要以上に回動した際に、連結用フレーム800の空洞部Kの下方側の内面と回動板4が当接するように、空洞部Kの下方側の内面の配置位置を調整して設計してある構成とすることで、規制用溝805と合わさって運転者が必要以上にハンドル軸300を傾倒させることを一段と防止できる。よって、一段と安全性が高く、一段と傾倒機構が損傷し難い折り畳み式電動スケーター100とすることができる。
【0030】
なお、連結用フレーム800の形状、大きさは本実施形態のものに限るものではなく、上方側の端部においてハンドル軸300に連結可能であると共に、下方側の端部で踏み板600に連結可能あり、且つ傾倒機構を内部に配設するだけの空洞部を備えるものであれば、適宜変更可能である。
また、連結用フレーム800に設ける規制用溝805の形状や大きさ、深さも本実施形態のものに限るものではなく、ねじ6の形状、大きさ、突出部分の長さに合わせて適宜変更可能である。
また、本実施形態においては、回動板4に設ける凹所4cを回動板4の長手方向の左右端部に設ける構成としたが、必ずしもこのような構成に限るものではなく、貫通孔4aの左右に一対配置されるものであれば、凹所4cを設ける位置は適宜変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明によれば、車体の進行方向に対してハンドル軸を左右に傾倒可能な傾倒機構を備えると共に、傾倒したハンドル軸を傾倒前の位置に容易に戻すことが可能な電動スケーターとすることができることから、電動スケーターの分野における産業上の利用性が高い。
【符号の説明】
【0032】
1 第1のベアリング
2 第2のベアリング
3 回動軸
3a 貫通孔
3b 移動規制部
4 回動板
4a 貫通孔
4b 移動規制部
4c 凹所
5 スプリングばね
6 ねじ
7 スプリングばね固定用部材
7a 基台
7b 凸部
8 スプリングばね当接用部材
100 折り畳み式電動スケーター
200 ハンドル
300 ハンドル軸
301 折り畳み用レバー
302 回転軸
400 座部
401 スライド溝
500 座部支持用支柱
501 折り畳み用レバー
600 踏み板
601 嵌合用孔
700 タイヤ
800 連結用フレーム
801 貫通孔
802 嵌合用孔
803 貫通孔
804 凹所
805 規制用溝
900 前輪固定用フレーム
B 下面
K 空洞部
S スライド板
T 上面
【要約】
【課題】車体の進行方向に対してハンドル軸を左右に傾倒可能な傾倒機構を備えると共に、傾倒したハンドル軸を傾倒前の位置に容易に戻すことが可能な電動スケーターの提供を課題とする。
【解決手段】踏み板600と連結用フレーム800とに、ハンドル軸を左右に傾倒可能とする傾倒機構を備え、傾倒機構は、第1のベアリング1と、第2のベアリング2と、一端側が第1のベアリング1に嵌合され、他端側が第2のベアリング2に嵌合される回動軸3と、連結用フレーム800内において、回動軸3に対して水平方向に交差するように配置されると共に、長手方向の略中央位置で回動軸3に固定されることで回動軸3を介して回動可能である回動板4と、回動板4の回動軸3を挟んだ左右両側のそれぞれの所定位置において、回動板4と連結用フレーム800の内壁との間で鉛直方向に付勢されるスプリングばね5とを少なくとも備える折り畳み式電動スケーター100である。
【選択図】
図3