IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ パナソニックオートモーティブシステムズ株式会社の特許一覧

特許7481070車両制御装置、車両用合流支援装置及び車両
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】車両制御装置、車両用合流支援装置及び車両
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20240501BHJP
   B60W 40/04 20060101ALI20240501BHJP
   B60W 30/08 20120101ALI20240501BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20240501BHJP
【FI】
G08G1/16 D
B60W40/04
B60W30/08
B60W60/00
G08G1/16 C
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2020063366
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021163136
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2022-11-14
(73)【特許権者】
【識別番号】322003857
【氏名又は名称】パナソニックオートモーティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡部 吉正
(72)【発明者】
【氏名】河原 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】陌間 純朗
(72)【発明者】
【氏名】山下 裕貴
【審査官】貞光 大樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-172068(JP,A)
【文献】特開2005-173703(JP,A)
【文献】特開2018-108768(JP,A)
【文献】特開2019-89546(JP,A)
【文献】特開2017-173903(JP,A)
【文献】特開平11-175897(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 1/16
B60W 10/00 - 10/30
B60W 30/00 - 60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、前記車両前方で且つ右寄りに配置された右寄り検知範囲を検知するとともに、前記車両前方で且つ左寄りに配置された左寄り検知範囲を検知して検知情報を得る距測部と、
前記距測部が前記車両の前方の先行車を検知しており、前記先行車の進行方向が前記車両の進行方向と交差していて、かつ、前記先行車の進行方向が前記車両の転進すべき方向と一致するとき、前記検知情報を用いて前記先行車を追尾することにより、前記先行車の進行方向に前記車両を合流させる走行制御部と、を備え、
前記右寄り検知範囲は、前記車両のフロントバンパーの中央部を車両の進行方向に延長した領域のうち、車両の進行方向に延長した対称軸よりも右側の領域にあり
前記左寄り検知範囲は、前記車両の前記フロントバンパーの前記中央部を車両の進行方向に延長した領域のうち、車両の進行方向に延長した対称軸よりも左側の前記領域にあり
前記走行制御部は、前記先行車の手前側面を通る線から、一定距離離れた位置に前記車両を停止させ、転進すべき方向と同じ側であり、前記左寄り検知範囲及び前記右寄り検知範囲のいずれか一方の検知範囲で前記先行車を検知し、転進すべき方向と逆の側であり、前記左寄り検知範囲及び前記右寄り検知範囲のいずれか他方の検知範囲で前記先行車を検知しなくなった時に、転進を開始する車両制御装置。
【請求項2】
前記走行制御部は、前記車両の先行車を前記車両が追尾するように、前記車両の舵角を制御する請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記走行制御部は、前記車両の先行車を前記車両が追尾するように、前記車両の速度を制御する請求項1又は2に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記検知情報に基づき前記先行車の座標の変化を追跡して前記先行車の進行方向を推定する座標追跡部を備え、
前記先行車の進行方向と前記車両の進行方向の成す角度が第一の所定値以上であり、かつ、前記先行車の進行方向と前記車両の転進すべき方向の成す角度が第二の所定値以下であるとき、前記先行車の進行方向に前記車両を合流させる走行制御を開始する請求項1からの何れか一項に記載の車両制御装置。
【請求項5】
前記検知情報に基づき前記先行車の座標の変化を追跡して前記先行車の進行方向を推定する座標追跡部を備え、
前記先行車の進行方向と前記車両の進行方向の成す角度が第一の所定値以上であり、かつ、前記先行車の進行方向と方向指示器による指示方向が前記先行車の進行方向と一致するとき、前記先行車の進行方向に前記車両を合流させる走行制御を開始する請求項1からの何れか一項に記載の車両制御装置。
【請求項6】
前記先行車の進行方向に前記車両を合流させる走行制御を、前記車両の車速が所定速度以下である事を条件として、運転者からの要求に応じて開始する請求項1からの何れか一項に記載の車両制御装置。
【請求項7】
前記先行車の進行方向に前記車両を合流させる走行制御を、運転者からの音声による要求に応じて開始する請求項1からの何れか一項に記載の車両制御装置。
【請求項8】
前記先行車の後続車を監視する監視部を備え、
前記監視部が前記車両の前方に前記後続車が進出したことを検知したとき、前記先行車の進行方向に前記車両を合流させる動作を中断し、当該動作を中断した後に、前記後続車を新たな先行車として、当該先行車を前記車両が追尾するように、前記車両の走行を再開する請求項1からの何れか一項に記載の車両制御装置。
【請求項9】
運転者のブレーキ操作によって前記車両が停車したときには、前記先行車の進行方向に前記車両を合流させる動作を中断し、前記先行車の後続車を新たな先行車として、当該先行車を前記車両が追尾するように、前記車両の走行を再開する請求項1からの何れか一項に記載の車両制御装置。
【請求項10】
計画された進路の末端位置まで前記車両が進んだとき、前記車両の舵角を0度に戻した上で前記車両を停車させ、前記先行車の進行方向に前記車両を合流させる動作を終了する請求項1からの何れか一項に記載の車両制御装置。
【請求項11】
前記車両の一部が、前記先行車の側面を延長した延長線上を超えた後に、運転者の操作が行われたとき、前記先行車の進行方向に前記車両を合流させる動作を終了する請求項1から1の何れか一項に記載の車両制御装置。
【請求項12】
前記運転者のペダル操作が行われているが前記運転者のハンドル操作が行われていない場合には、前記ハンドル操作が行われるまで前記車両の舵角を維持する請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項13】
前記運転者のハンドル操作が行われているが前記運転者のペダル操作が行われていない場合には、前記ペダル操作が行われるまで前記車両の速度を維持する請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項14】
前記運転者のペダル操作が行われているが前記運転者のハンドル操作が行われていない状態で、計画された進路の末端位置まで前記車両が進んだときに前記車両を停止させる請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項15】
前記運転者のハンドル操作が行われているが前記運転者のペダル操作が行われていない状態で、計画された進路の末端位置まで前記車両が進んだときに前記車両を停止させる請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項16】
記距測部は、前記右寄り検知範囲の前記先行車を検知する第1超音波式物体検知装置と、前記左寄り検知範囲の前記先行車を検知する第2超音波式物体検知装置とを含む、請求項1から1の何れか一項に記載の車両制御装置。
【請求項17】
前記距測部は、光学式物体検知装置である請求項1から1の何れか一項に記載の車両制御装置。
【請求項18】
請求項1から1の何れか一項に記載の車両制御装置と前記距測部とを備えた車両用合流支援装置。
【請求項19】
請求項1に記載の車両用合流支援装置を備えた車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両制御装置、車両用合流支援装置及び車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、交差車線を走行する交差車両が当該交差車線に合流する車両に衝突することを回避する技術が開示される。特許文献1の技術は、交差車両が車両へ衝突する可能性がある場合、交差車両が走行している車線以外の車線に車両を進入させるように車両の操舵をアシストする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-223751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この種の従来技術は、交差車線を走行する交差車両への衝突について考慮しているが、先行車が走行する道路への車両の合流について考慮されていない。例えば、車両が先行車との衝突を防止する機能を有している場合、2台の交差車両の車間距離が狭くなると、この車間に車両を進入させたくても、当該機能が働くことにより強制的に車両が停止され、又は、車両の加速抑制が継続される。そのため、先行車が走行する道路へ車両を合流させたくても、車両を前進させることができない場合がある。また、車線や斜路が表示されていない平面駐車場の出口に向かう時に、出口に向かう車流があって車両の進行方向を塞いでいる場合、つまり、進行方向に先行車があり、その先行車の進行方向が車両の進行方向と交差していて、かつ、その先行車の進行方向が車両の転進すべき方向と一致する場合、先行車の後に車両を割り込ませて先行車の進行方向に合流する必要がある。このように従来技術では、先行車が走行する道路への車両の合流を実現する上で改善の余地がある。
【0005】
本開示の非限定的な実施例は、先行車の進行方向への車両の合流を実現できる車両制御装置、車両用合流支援装置、及び車両の提供に資する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施例に係る車両制御装置は、車両に搭載され、前記車両前方で且つ右寄りに配置された右寄り検知範囲を検知するとともに、前記車両前方で且つ左寄りに配置された左寄り検知範囲を検知して検知情報を得る距測部と、前記距測部が前記車両の前方の先行車を検知しており、前記先行車の進行方向が前記車両の進行方向と交差していて、かつ、前記先行車の進行方向が前記車両の転進すべき方向と一致するとき、前記検知情報を用いて前記先行車を追尾することにより、前記先行車の進行方向に前記車両を合流させる走行制御部と、を備え、前記右寄り検知範囲は、前記車両のフロントバンパーの中央部を車両の進行方向に延長した領域のうち、車両の進行方向に延長した対称軸よりも右側の領域にあり、前記左寄り検知範囲は、前記車両の前記フロントバンパーの前記中央部を車両の進行方向に延長した領域のうち、車両の進行方向に延長した対称軸よりも左側の前記領域にあり、前記走行制御部は、前記先行車の手前側面を通る線から、一定距離離れた位置に前記車両を停止させ、転進すべき方向と同じ側であり、前記左寄り検知範囲及び前記右寄り検知範囲のいずれか一方の検知範囲で前記先行車を検知し、転進すべき方向と逆の側であり、前記左寄り検知範囲及び前記右寄り検知範囲のいずれか他方の検知範囲で前記先行車を検知しなくなった時に、転進を開始する。
【0007】
本開示の一実施例に係る車両用合流支援装置は、上記の車両制御装置を備える。
【0008】
本開示の一実施例に係る車両は、上記の車両用合流支援装置を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一実施例によれば、先行車の進行方向への車両の合流を実現できる車両制御装置、車両用合流支援装置、及び車両を構築できる。
【0010】
本開示の一実施例における更なる利点及び効果は、明細書及び図面から明らかにされる。かかる利点及び/又は効果は、いくつかの実施形態並びに明細書及び図面に記載された特徴によってそれぞれ提供されるが、1つ又はそれ以上の同一の特徴を得るために必ずしも全てが提供される必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の実施の形態に係る車両の構成例を示す図
図2】車両用合流支援装置の構成例を示す図
図3】ソナーを利用した物体の位置推定方法について説明するための図
図4】座標追跡部による車両の動きを追跡する方法などについて説明するための図
図5】衝突予測方法について説明するための図
図6】進路計画方法について説明するための図
図7】進路計画のアルゴリズムについて説明するための図
図8】固定舵角で車両を車流へ合流させる場合の動作を説明するためのフローチャート
図9】固定舵角で車流へ合流する車両を示す図
図10】固定舵角で車流へ合流する車両を示す図
図11】固定舵角で車流へ合流する車両を示す図
図12】固定舵角で車流へ合流する車両を示す図
図13】舵角制御をしながら車両を車流へ合流させる動作を説明するためのフローチャート
図14】舵角制御をしながら車流へ合流する車両を示す図
図15】固定舵角か否かの判断について説明するための図
図16】適応的舵角制御の方法について説明するための図
図17】車速制御方法について説明するための図
図18】合流支援を開始するタイミングについて説明するための図
図19】本開示の実施の形態の変形例に係る車両の構成例を示す図
図20】本開示の実施の形態の変形例に係る車両用合流支援装置の構成例を示す図
図21】複眼カメラを利用した物体の位置推定方法について説明するための図
図22】複眼カメラを利用した物体の位置推定方法について説明するための図
図23】複眼カメラを利用した舵角制御方法について説明するための図
図24】複眼カメラを利用した舵角制御方法について説明するための図
図25】複眼カメラを利用して合流支援機能を自動的に起動する第1の方法について説明するための図
図26】合流支援機能を利用している時に、側方から接近する車両に対処する手段を説明するための図
図27】運転者のペダル操作又はハンドル操作が合流支援に介入したときの動作について説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施形態について詳細に説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0013】
(実施の形態)
図1は本開示の実施の形態に係る車両の構成例を示す図である。車両100は、例えば乗用車、貨物車、乗合車などである。車両100は、車両用合流支援装置200を備える。なお車両100は、車両用合流支援装置200以外にも制動装置、電動パワーステアリング、ブレーキペダルなどを備える。以下では、車両100を車両100以外の車両と区別するため「自車」と称する場合があり、また車両100以外の車両を「他車」又は「物体」と称する場合がある。なお、他車には、車流を形成する複数の車両が含まれ、車流を形成する複数の車両には、車両100の前方を走行する先行車、当該先行車の後方を走行する後続車などが含まれる。
【0014】
車両用合流支援装置200は、舵角制御装置1、速度制御装置2、車両制御装置3、HMI(Human Machine Interface)装置4、センサ制御装置5、距測群60、撮像部7-1、及び撮像部7-2を備える。舵角制御装置1、速度制御装置2、車両制御装置3、HMI装置4、センサ制御装置5、距測群60、撮像部7-1、及び撮像部7-2は、車載ネットワークであるCAN(Controller Area Network)を通じて、相互に通信可能に接続される。
【0015】
舵角制御装置1は、車両制御装置3から出力される舵角要求に応じて、ステアリングの操舵を実行し、ステアリングの舵角を示す舵角情報を車両制御装置3へ入力する。速度制御装置2は、車両制御装置3からの指示に応じて車両100の加減速度を制御する装置である。速度制御装置2は、車両100の速度を示す速度情報を車両制御装置3へ送信する。
【0016】
車両制御装置3は、例えば1又は複数のECU(Electronic Control Unit)などで構成され、車両100における各種制御処理を行う制御部である。ECUは、例えばモータECU、ハイブリッドECU、エンジンECUなどであり、車両情報を収集して車両100を統括的に制御する。車両情報は、例えば、車両位置情報、速度情報、車両状態情報、撮像情報などである。車両位置情報は、車両の現在位置を示す情報であり、例えば、車両100が走行している緯度及び経度を示す情報である。車両位置情報は、例えば、カーナビゲーション装置、GPSモジュールなどから送信される。速度情報は、後述する速度制御装置2、車速センサなどから送信される車両100の現在速度を示す情報である。車両状態情報は、例えば、ACC(Auto Crouse Control)スイッチがON状態であるかOFF状態であるかを示す信号などである。車両状態情報は、この他にも、アクセル開度、ブレーキペダルの踏み込み量、ステアリングの操舵量、ADAS(Advanced Driver-Assistance Systems)から取得される情報などを含む。ADASは、道路交通の利便性を高めるため、運転者の運転操作を支援するシステムである。車両制御装置3の機能の詳細については後述する。
【0017】
HMI装置4は、車両100の乗員の入力操作を受け付けるユーザインタフェイスである。HMI装置4は、例えば、乗員が自動運転モードと手動運転モードとを切り替えるためのボタン、車両100の目的地を設定するためのタッチパネルなどである。HMI装置4は、例えば、乗員から合流支援の指示を受け付ける機能、乗員に対して車両100の運行に必要な情報を提供する機能、乗員に対して車両100の動作状態についての通知する機能などを備えるように構成してもよい。なお、HMI装置4は、合流支援動作を開始する際、合流支援に係る操作を促す画像、文字、音声などを提供するように構成してもよい。合流支援動作は、先行車の進行方向に車両100を合流させる運転支援動作である。また、HMI装置4は、車両100が先行車の進行方向に合流する際、当該道路を走行する先行車、後続車などへの車両100の衝突回避を促す画像、文字、音声などを提供するように構成してもよい。
【0018】
センサ制御装置5は、例えば複数の撮像部7-1,7-2のそれぞれで撮影された画像の内容を示す情報である撮像情報、距測群60から送信される情報などを入力し、これらの情報を利用することで、車両100周囲の物体の有無、車両100周囲の物体の位置、車両100から物体までの距離などを算出し、算出結果を、車両制御装置3に入力する。物体は、例えば、車両100が合流しようとする交差車線を走行する複数の車両などである。
【0019】
距測群60は、車両100の前方の一定領域を交差車両の検知範囲とする距測部の一例である。距測群60は、車両100の前方に存在する物体の有無や、車両100から物体までの距離などを測定して、測定結果の内容を示す測定情報を車両制御装置3へ入力する。距測群60は、複数の距測部6-1,6-2,6-3,6-4を備える。複数の距測部6-1,6-2,6-3,6-4のそれぞれは、例えばソナーである。複数の距測部6-1,6-2,6-3,6-4は、例えば、フロントバンパーの右側角部から左側角部に向かって、距測部6-1、距測部6-2、距測部6-3、距測部6-4の順で、互いに離れて配列される。
【0020】
距測部6-1及び距測部6-2は、右寄り検知範囲60Rに存在する物体を検知する。右寄り検知範囲60Rは、車両100の前方の領域の内、車両100の対称軸を延長した線よりも右側の領域である。対称軸は、車両100の左右方向の中心を通り、かつ、車両100の進行方向に平行な仮想線である。
【0021】
距測部6-1は、検知範囲6-1aに存在する物体を検出するための物体検出手段である。検知範囲6-1aは、例えば、右寄り検知範囲60Rの内、フロントバンパーの右側角部付近の領域である。
【0022】
距測部6-2は、検知範囲6-2aに存在する物体を検出するための物体検出手段である。検知範囲6-2aは、例えば、右寄り検知範囲60Rの内、フロントバンパーの中央部付近の領域である。
【0023】
距測部6-3及び距測部6-4は、左寄り検知範囲60Lに存在する物体を検知する。左寄り検知範囲60Lは、車両100の前方の領域の内、上記の対称軸を延長した線よりも左寄りの領域である。
【0024】
距測部6-3は、検知範囲6-3aに存在する物体を検出するための物体検出手段である。検知範囲6-3aは、例えば、左寄り検知範囲60Lの内、フロントバンパーの中央部付近の領域である。
【0025】
距測部6-4は、検知範囲6-4aに存在する物体を検出するための物体検出手段である。検知範囲6-4aは、例えば、左寄り検知範囲60Lの内、フロントバンパーの左側角部付近の領域である。
【0026】
撮像部7-1及び撮像部7-2のそれぞれは、CCD(Charge Coupled Device)、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などの撮像素子を備え、車両100の外部を撮像する撮像手段である。撮像部7-1及び撮像部7-2で撮影された画像は、例えば、車両100の前部と後部に設置された撮像手段(不図示)で撮影された画像と合成して、車両100と車両100の周囲とを上方から見下ろしたトップビュー表示画像として、タッチパネルなどに表示される。
【0027】
撮像部7-1は、例えば右サイドミラーの斜め下方に向けて設けられており、視野範囲7-1aを撮影した画像(右側画像)の内容を示す撮像情報をセンサ制御装置5に入力する。視野範囲7-1aは、車両100の右側前方(右斜め前方)から車両100の右側後方(右斜め後方)までの領域である。
【0028】
撮像部7-2は、例えば左サイドミラーの斜め下方に向けて設けられており、視野範囲7-2aを撮影した画像(左側画像)の内容を示す撮像情報をセンサ制御装置5に入力する。視野範囲7-2aは、車両100の左側前方(車体の前部側面で遮蔽されない範囲)から車両100の左側後方(車体の後部側面で遮蔽されない範囲)までの領域である。
【0029】
図2は車両用合流支援装置の構成例を示す図である。車両制御装置3は、座標追跡部31、衝突予測部32、進路計画部33、及び走行制御部34を備える。なお、これらの機能の詳細については後述する。
【0030】
次に図3を参照して、ソナーを利用して物体の位置を推定する方法について説明する。図3はソナーを利用した物体の位置推定方法について説明するための図である。まずソナーの原理について簡単に説明する。ソナーは圧電素子を備え、圧電素子に例えば50kHzの電圧が印加されることにより、一定周波数のパルス状の音波が発振される。パルス状の音波は、車両100が走行する路面、車両100の周囲の物体(例えば図3に示す車流300に存在する先行車100A)などに当たると反射し、パルス状の音波の一部がソナーに戻る。圧電素子はこの音波の圧力に対応する電圧を発生するため、その電圧を整流して音波受信強度に変換したものが、エコー波形となる。車両100から物体までの距離が長くなるほど、ソナーからパルス状の音波が発振されてからその一部がソナーに戻るまでの時間が長なる。この関係性を利用して、時間を距離に換算できる。なお、路面も音波を反射するが、音圧と比較する閾値をソナーに設定することにより、閾値以下の音波が無視されて、路面が先行車100Aと区別される。音波は空気中で急速に減衰するため、閾値は距離(時間)が長くなるほど低くなるように設定される。
【0031】
センサ制御装置5は、ソナーがパルス状の音波を発振してから、物体で反射したエコーがソナーに戻るまでの往復時間を測定することにより、物体までの距離を推定する。エコーは、物体で反射した音波である。なお、ソナーから発振された音波は、1つの物体に対して複数箇所で反射するため、複数箇所で反射したそれぞれのエコーは時間差を持つことが多い。そのため、センサ制御装置5は、一定幅を持つエコーの立ち上がり時刻をエコーがソナーで受信された時刻とすることで、物体の表面の内、車両100に最も近い部分から車両100までの距離(最短距離)を算出できる。図3の例では、先行車100Aのリアバンパーの左側角部が、車両100に最も近い部分である。
【0032】
ソナーから発振された音波は広がりながら空間を伝搬するため、特定のソナーが発振した音波に対応するエコーが、当該ソナー以外の他のソナーで受信されることがある。この場合、センサ制御装置5は、これらのソナーから物体までの距離を計算できるため、三辺測量の原理により、車両100の位置を基準にした物体の相対位置を特定できる。
【0033】
特定のソナーから発振された音波に対応するエコーが、当該ソナー以外の他のソナーで検知できない場合、センサ制御装置5は、当該他のソナーの軸線上の往復時間から算出した距離に物体が存在すると推定する。この場合、センサ制御装置5は、複数のソナーで特定された座標よりも、劣性(信頼度が低いこと)の座標情報として扱う。
【0034】
図4は座標追跡部による車両の動きを追跡する方法などについて説明するための図である。座標追跡部31は、舵角制御装置1が出力する舵角情報と、速度制御装置2が出力する速度情報とに基づき、絶対座標上の車両100の動きを追跡する。
【0035】
絶対座標は、前述した対称軸と車両100の後輪の車軸とが交わる交点の、合流支援を開始した時点における位置を原点とし、当該原点から合流支援を開始した車両100の進行方向をY軸方向とし、Y軸方向と直交する方向をX軸方向とする座標である。なお、合流支援を開始した時点で車両が走行中であると、位置情報が現実の位置より遅れて処理されるために座標の誤差が大きくなることがあるが、本実施の形態では、車両100が静止しているときに合流支援の開始を受け付けることにより、座標の誤差を抑えている。
【0036】
座標追跡部31は、車両100に対する各ソナー(距測群60)の相対座標を記憶しており、これに、センサ制御装置5から得た物体の相対座標をベクトル加算することにより、各ソナーが得た物体の相対座標を、絶対座標上の位置に換算する。座標追跡部31は、各ソナーが物体の検知を繰り返す毎に、絶対座標上の物体の位置情報を更新し、その変化速度を算出することにより、物体の進行方向と速度を推定できる。また座標追跡部31は、センサ制御装置5から得た物体の相対座標が劣化している(相対座標の精度が低い)場合、物体の進行方向と速度を推定する際、重み付けを減じて速度推定に反映することにより、結果の信頼性を改善する。
【0037】
図4に示すように、車体最外側回転半径の中心は、車両100の内側後輪回転半径の中心と等しい。また、車両100の右前角の移動ベクトルの角度は、車両100が回転するにつれて変化する。座標追跡部31は、例えば、車流300の切れ目を待つため、車両100が所定の位置Pに一旦停止して、その後に再び移動を開始した時点から、車両100が前進する毎にY軸方向の移動量を積算する。Y軸方向の移動量が、所定の距離を超えた時点で、車両100の右前角は、車流300内の領域に入る。所定の位置Pは、車流300上の車両との干渉を避ける為に、少なくとも車流300上の車両の側面より手前である必要がある。さらに、所定の位置Pは、好ましくは接触の危惧を持たれない為に前記車両の側面から所定の距離離れた位置とし、この位置で車流300の切れ目を待つために車両100を一時停車させる。所定の距離は、例えば、車両100の横幅の半分程度が望ましく、例えば1m程度である。
【0038】
図5は衝突予測方法について説明するための図である。距測群60は、車両100の前方に向けて設けられているため、図5に示すように、例えば、車両100の前方の右45度方向の領域は、距測群60の検知範囲に入らない。そのため、距測群60の検知範囲外の領域に存在する後続車100Bが加速した場合、距測群60が後続車100Bを検知できず、物体検知による自動ブレーキが働かないため、車両100が後続車100Bに衝突する可能性が高くなる。
【0039】
例えば、車両100の前方の右45度方向の領域を物体検知範囲とするソナーを車両100に追加することで、後続車100Bを検知できる様にしても良いが、トップビュー表示に対応した車両であれば、当該ソナーを追加しなくとも、車両100に設けられる撮像部7-1で撮像された画像を利用して、後続車100Bを検知できる。これにより、ソナーを追加する必要がないため、車両100の構造が簡素化され、車両100の製造コストを低減しつつ車流300に存在する後続車100Bを検出可能である。
【0040】
以下では、撮像部7-1で撮影された画像を利用した衝突予測方法について説明する。撮像部7-1は、例えば右サイドミラーの位置に斜め下方に向けて設けられている魚眼レンズを備えたカメラであるため、車両100の右側面とその周囲の路面(車両100の右側の側面から数m~十数m程度離れた地点までの路面)を含む範囲を同時に撮像できる。そのため、車両100の右前方に存在する後続車100Bが車両100に接近したとき、撮像部7-1は、車両100の右側の側面と、当該路面上に存在する物体とを同時に捉えた画像を撮像できるので、この画像から、車両100の右前角と物体(例えば後続車の先端)が、図5に示すような位置関係(車両100の右前角の像が、後続車の先端の像よりも左側に写る)になっているか否か、を判断できる。このように、車両100の右前方と後続車の先端(フロントバンパー)との位置関係を判断する上で、撮像部7-1の撮像情報は有用である。
【0041】
衝突予測部32は、撮像部7-1の撮像情報に基づき、後続車100Bの位置と動きを検出し、例えば次の様な判定を行う。
【0042】
(1)衝突予測部32は、後続車100Bの先端が、車両100の右前角よりも右側に存在し、かつ、後続車100Bが停止している場合、衝突リスク無し、と判定する。
(2)衝突予測部32は、後続車100Bの先端が、車両100の右前角よりも右側に存在し、かつ、後続車100Bが前進している場合、衝突リスク有り、と判定する。
(3)衝突予測部32は、後続車100Bの先端が、撮像部7-1から見て車両100の右前角に隠れ、かつ、車両100から後続車100Bまでの距離が衝突判定距離以下(例えば数m以下)の場合、衝突リスク有り、と判定する。
(4)衝突予測部32は、後続車100Bの先端が、撮像部7-1から見て車両100の右前角に隠れ、かつ、車両100から後続車100Bまでの距離が上記の衝突判定距離を超えている場合、衝突リスク無し、と判定する。
【0043】
なお、後続車100Bの先端が車両100の右前角の前方に存在する場合、後続車100Bの先端がソナー群の検知範囲内に存在するため、車両100から後続車100Bまでの距離が、物体検知による自動ブレーキが働く設定値以下になるまでは、車両100を前進させても、車両100が後続車100Bに衝突する虞はない。
【0044】
また、後続車100Bの先端が車両100の右前角の前方よりも右側に存在していても、後続車100Bが停止していれば、車両100は左に舵を切って前進するため、車両100が前進しても車両100が後続車100Bに衝突する虞はない。
【0045】
図6は進路計画方法について説明するための図である。進路計画部33は、例えば乗員が合流支援を開始する操作を、HMI装置4に対して行ったことにより、HMI装置4が合流支援を開始する指示を出力したことをトリガーにして、合流支援が開始された時点から、車流への車両100の合流が完了する時点までの進路を計画する。なお、車流は、道路に形成されるもの以外にも、例えば、駐車場や、駐車場代りの空き地などに形成されるものでもよい。車両100の進行方向に先行車があって、車両100から見て先行車の側面が見える状況があれば、先行車を含む車流への車両100の合流支援を開始すべき状況に当たると言える。
【0046】
進路計画の方法には、第1進路計画方法と第2進路計画方法がある。第1進路計画方法は、一度設定した舵角で車両100を転進させる進路を計画する方法である。転進は、車両100が進行方向を変えて進むことである。以下では、第1進路計画方法で設定される舵角を「固定舵角」と称する。第1進路計画方法では、前述した所定の位置Pに車両100が停止したときに進路が計画され、その後、固定舵角で車両100が転進する。
【0047】
第2進路計画方法は、舵角を変化させながら車両100を転進させる進路を計画する方法である。舵角を変化させることを「舵角制御」と称する。第2進路計画方法では、前述した所定の位置Pに車両100が停止したときに進路が計画され、その後、転進が開始されてから、車流への車両100の合流が完了するまで、車流に存在する先行車100Aの動きに応じて舵角を変化させて、舵角の変化に応じて車両100の進路が再計画される。以下では、第2進路計画方法による舵角の制御を「適応的舵角制御」と称する。図6に示すように固定舵角の進路と適応的舵角制御による進路は互いに異なる。固定舵角と適応的舵角制御の詳細については後述する。
【0048】
舵角制御装置1は、座標追跡部31が管理する絶対座標上での車両100の位置を、進路計画部33が計画した進路に照合し、進路上の車両100の位置に応じて、ステアリングの舵角を制御する。進路計画部33は、例えば、計画した進路の直進区間に車両100が存在する場合、ステアリングの舵角を0度に設定するよう、舵角制御装置1に対して要求する。そして、走行制御部34の制御によって、車両100が転進を開始する位置Pに達したら、進路計画部33は、進路計画部33が計画した回転半径に対応する舵角となるように、舵角制御装置1に要求する。
【0049】
走行制御部34は、距測群60の検知範囲で交差車両が検知されたことを示す検知情報(前述した測定情報)を用いて、2以上の交差車両の内、車両100の先行車を車両100が追尾するように、車両100の走行を制御することにより、車流300へ車両100を合流させる。走行制御部34は、例えば、衝突予測部32が衝突のリスクが無いと判断したとき、速度制御装置2に加速を要求したり、既に走行中であれば車速に応じて速度維持を指示したりする。速度制御装置2は、常時車速情報を出力しており、走行制御部34は、車速情報に基づき算出される車速を基準速度と比較し、車速が基準速度未満のとき、速度制御装置2に対する加速要求を維持する。そして、走行制御部34は、車速が基準速度を超えたとき、速度制御装置2に与える要求を速度維持に変更する。基準速度は例えば徐行速度(8km/hなど)である。
【0050】
走行制御部34は、衝突予測部32が衝突のリスクがあると判断したときに、車両100が停車中であれば、速度制御装置2に対して制動を要求し、車両100が走行中であれば、速度制御装置2に対して減速又は制動を要求する。なお、走行制御部34は、ソナーが検知した物体までの距離に応じて、速度制御装置2に対して、減速を要求するか制動を要求するかを判断する。速度制御装置2は、ソナーが検知した物体までの距離が自動ブレーキが働く設定値以下の場合、最大の減速率で制動し、物体までの距離が当該設定値を超えている場合、物体までの距離に応じて、減速率を連続的又は段階的に下げることにより、乗員に与える不快感を低減する。
【0051】
次に図7を参照して、進路計画部33における進路計画のアルゴリズムについて説明する。図7は進路計画のアルゴリズムについて説明するための図である。車両100の進路計画は、通常は車両100の対称軸を基準に行われるが、車流300への合流の際、合流先の先行車100Aの対称軸の位置が分かり難い。そのため、進路計画部33は、車両100から見える先行車100Aの側面(例えば先行車100Aの左側の側面)を基準にして車両100の進路を計画し、車両100の移動軌跡については、車両100の側面(例えば車両100の左側の側面)、より具体的には車両100の内側後輪が移動する軌跡を基準とする。
【0052】
図7に示すように、車両100が左方向に転進する場合、車両100の左側の側面に平行な直線をL1とし、合流先の先行車100Aの手前側(左側)の側面と平行な直線をL2として、直線L1と直線L2の交点Aを求める。
【0053】
次に、交点Aを通り、直線L1と直線L2とが成す角を二等分する直線をL3とし、車両100の後輪車軸を延長した線を直線L4として、直線L4と直線L3の交点を点Oとする。
【0054】
次に、点Oから車両100の内側(左側)後輪までの距離を求め、この距離を点Oからの半径とする円を描くと、この円は直線L1と直線L2に接する。この円と直線L2との接点をCとすると、車両100が車流300に合流するまでに車両100の内側後輪が通る進路は、弧BCとして求まる。車両100の内側後輪の回転半径Rは、舵角の関数であるため、内側後輪回転半径Rから舵角を逆算すれば、車両100の内側後輪を弧BCに沿って移動させるために必要な舵角が求まる。内側後輪回転半径Rの最小値である内側後輪最小回転半径は、通常の車両設計ではトレッド長、すなわち前輪から後輪までの距離と同程度である。
【0055】
内側後輪最小回転半径がトレッド長と同じである場合、車両100が車流300に対して直交する角度で前進し、車両100の前輪が車流300の境界を踏んだ時に、最大舵角まで転舵し、車両100が90度転回すると、車流300上に車両100を乗せることができる。
【0056】
本実施の形態では、車両100のステアリングが転舵される位置が、車流300の境界より手前の位置Pとされる。そのため、車両100の進行方向と車流300とが成す角(θ)が、直角又は鈍角であれば、車両100の内側後輪が描く半径Rは、内側後輪最小回転半径より大きくなる。すなわち、車両100の内側後輪を弧BCに沿って移動させるために必要な舵角は、最大舵角より小さくなる。
【0057】
次に図8から図12を参照して固定舵角で車両100を転進させる場合の動作について説明する。図8は固定舵角で車両を車流へ合流させる場合の動作を説明するためのフローチャートである。図9から図12は固定舵角で車流へ合流する車両を示す図である。
【0058】
図9に示すように、走行制御部34は、車流300から所定の距離離れた位置Pまで自車を接近させる(ステップS1)。具体的には、合流支援が開始されると、走行制御部34は、車両100を交差する車流300に向かって直進させ、車流300上の車両(例えば先行車100A)の側面から所定の距離離れた位置Pに、車両100を一時停車させる。合流のために車両100を転進させるときの舵角の計算は、合流支援が開始されたタイミングから位置Pに車両100が一時停車するタイミングまでの間の、任意の時点で行えばよい。
【0059】
図10に示すように、舵角制御装置1は、進路計画部33で算出した舵角に転舵する(ステップS2)。具体的には、舵角制御装置1は、車両100が一時停車した位置Pで据え切りして、車両100の内側後輪を車流300上の先行車100Aの手前側面(先行車100Aの左側の側面)を通る直線に乗せるために必要な舵角にする。据え切りを避ける場合は、舵角制御装置1は、前のステップS1で停車する直前に転舵するか、次のステップS3で動き始める時に転舵させるようにしてもよい。
【0060】
図11に示すように、走行制御部34は、車流300の切れ目Cを待って車両100を前進させる(ステップS3)。例えば、図11に示すように、車両100の前方の右寄り検知範囲から先行車100Aが出たとき、走行制御部34は、舵角を維持して車両100を前進させる。
【0061】
図12を参照してステップS4及びステップS5の処理について説明する。図12の上から1つめの図に示すように、走行制御部34は、車両100が車流300に入るまで後続車100Bを監視しつつ、舵角を保ちながら車両100を前進させる(ステップS4)。このとき走行制御部34は、車両100の速度が前述した基準速度を超えないように、車両100の速度を制御する。
【0062】
図12の上から2つめの図に示すように、車両100は、転進するに従って、右前角を先頭として、車流300に接近する。走行制御部34は、車両100が車流300に入るまでは、車両100の右方向に存在する後続車100Bを監視する。後続車100Bが加速して、車両100が転進する進路を塞ぐ虞がある場合、走行制御部34は、車両100を停車させ、転進を中止させる。
【0063】
図12の上から3つめの図に示すように、車両100が車流300に入ると、車両100が後続車100Bの進路を塞ぐため、後続車100Bの監視と制動は不要になる。
【0064】
図12の上から4つめの図に示すように車両100が進み、車両100の内側後輪が、進路計画で計画した末端位置(合流経路の末端)まで進んだとき、舵角制御装置1は舵角を0度に戻し、車両制御装置3は運転者に合流完了を報告して、合流支援制御を完了する(ステップS5)。
【0065】
図13は適応的舵角制御をしながら車両を車流へ合流させる動作を説明するためのフローチャートである。図14は適応的舵角制御をしながら車流へ合流する車両を示す図である。ステップS11~ステップS13の処理は、ステップS1~ステップS3の処理と同様のため、以下では説明を割愛する。
【0066】
図14の上から1つめの図に示すように車両100が一時停止した後、図14の上から2つめの図に示すように、走行制御部34は、車両100が車流300に入るまで後続車100Bを監視しつつ、安全距離を保ち、舵角を制御しながら車両100を前進させる(ステップS14)。この舵角制御の具体例は以下の通りである。
【0067】
例えば、車両100は一時停車した位置Pで据え切りして、車両100の内側後輪を車流300上の先行車100Aの手前側面を通る直線に乗せるために必要な舵角まで転舵する。この時の舵角が転進時の舵角の初期値である。車両100が一時停車した位置Pで車流の切れ目を待っているときに、左寄り検知範囲と右寄り検知範囲の双方に先行車100Aが存在する状態から、左寄り検知範囲には先行車100Aが存在し、かつ、右寄り検知範囲には先行車100Aが存在しない状態に変化したとき、舵角制御装置1は舵角を初期値に保ち、速度制御装置2は車両を徐行の速度まで加速する。この後、さらに車両100が前進して、この状態から、左寄り検知範囲と右寄り検知範囲の双方に先行車100Aが存在しない状態に変化したとき、舵角制御装置1は、舵角を最大舵角に設定する。逆に、左寄り検知範囲と右寄り検知範囲の双方に先行車100Aが存在する状態に変化したとき、舵角制御装置1は、前進中の舵角を初期値の半分の舵角を設定する。
【0068】
なお、車両100が一時停止した後、車両100が車流300に向かって前進している間に、左寄り検知範囲と右寄り検知範囲の双方から先行車100Aが出る場合と、左寄り検知範囲と右寄り検知範囲の双方に先行車100Aが入っている場合の、いずれの場合も発生しなかった場合には、舵角の初期値が維持される。そのため、車両100の軌道は、舵角固定の場合の軌道と同一になる。
【0069】
図14の上から3つめの図に示すように、進路計画部33は、車流300に車両100の角が入った時点で、合流の進路を再計算する(ステップS15)。車流300に車両100の角が入ることにより、車流300上の後続車100Bによって車両100の進行が妨げられることが無くなるなるため、先行車の動きに合わせた適応的舵角制御が必要無くなるからである。進路計画部33は、この時点での車両100の位置と角度に合わせた合流の進路を再計算し、以後は適応的舵角制御や進路の再計算をせずに前進すればよい。
【0070】
図14の上から4つめの図に示すように、走行制御部34は、再計算した舵角を保ち、車両100と先行車100Aとの車間距離に応じた車速制御を行って、再計画した進路上に車両100を前進させる。車両100の内側後輪が、進路計画で計画した末端位置(合流経路の末端)まで進んだとき、舵角制御装置1は舵角を0度に戻し、車両制御装置3は運転者に合流完了を報告して、合流支援制御を完了する(ステップS16)。
【0071】
固定舵角と適応的舵角制御の効果についてまとめると以下の通りである。舵角を固定にすると、制御が容易になる利点がある。舵角が固定であれば、ガイダンスにより運転者に操舵させることも可能である。先行車100Aの移動速度が速く、車両100の左寄り検知範囲から先行車100Aが出た場合、舵角を増して先行車100Aを追尾する様にすると、より早く先行車100Aを距測群60で捉えることができる。この効果は、例えば検知範囲が狭いソナーを利用する場合に顕著である。例えば、先行車100Aが車両100の側方に移動してしまい、検知範囲が狭いソナーでは当該先行車両100Aを捉えることができなくなると、車両100から先行車100Aまでの距離を検知できず、先行車100Aへの衝突防止のための緊急制動ができなくなる虞がある。そこで、例えば先行車100Aが車両100の左側に移動したとき、舵角を増すことによって車両100の前端を左方向に振る適応的舵角制御を加えることで、検知範囲が狭いソナーでも先行車100Aを捉えることができる。このように、車両100の前端を適応的に振ることによって、衝突防止のための緊急制動ができる状態へ早く戻すことができる。
【0072】
また、先行車100Aの移動速度が速い場合、後続車100Bも早く移動する可能性が高くなる。この場合でも、舵角を増すことによって、後続車100Bから離れた位置(例えば数m~十数m程度離れた位置)で、車両100の右前角を車流300に入れることができる。従って、車流300の切れ目への車両100の割込みが、後続車100Bに妨げられ難くなる、という効果も得られる。
【0073】
図15は固定舵角か否かの判断について説明するための図である。車両制御装置3が固定舵角の合流シーケンスにしか対応しない場合には、無論、車両用合流支援装置200は固定舵角にしか対応できない。固定舵角の合流シーケンスのみに対応するように、車両用合流支援装置200を構成することにより、舵角の操作を車両100の運転者任せにできるため、車両用合流支援装置200の制御が簡素化され、車両用合流支援装置200の製造コストを低減できる。
【0074】
車両制御装置3が舵角制御の合流シーケンスにも対応する場合には、車両用合流支援装置200は、車両100の周囲の状況に応じて、固定舵角で車両100を車流300へ合流させるか、適応的舵角制御で車両100を車流300へ合流させるかを選択できる。車両100の周囲の状況は、先行車100Aの動きで決まる。
【0075】
例えば、図15の上段の図に示すように、車両100の右前方の領域に先行車100Aが存在せず、かつ、車両100の左前方の領域に先行車100Aが存在する状態になると、車両100は舵角を維持して前進する。そして、車両100の右前角が、車流300に入るまで上記の状態が続くと、結果的に固定舵角で車両100が転回することになる。
【0076】
図15の下段の図に示すように、車両100が前進中に、車両100の左前方及び右前方の双方の領域に先行車100Aが存在しない状態になると、車両100は舵角を切り増すことにより先行車100Aを追尾する制御を行う。
【0077】
図16は適応的舵角制御の方法について説明するための図である。図16の上段の図に示すように、車両100が前進中に、車両100の左前方及び右前方の双方の領域に先行車100Aが存在しない状態になると、車両100は、舵角が不足しているので、走行しつつ舵角を最大舵角まで切り増す。
【0078】
図16の中段の図に示すように、車両100が前進中に、車両100の左前方の領域に先行車100Aが存在し、かつ、車両100の右前方の領域に先行車100Aが存在しない状態になると、車両100は、舵角が適正なため、走行しつつ当初の固定舵角の舵角に戻す。
【0079】
図16の下段の図に示すように、車両100が前進中に、車両100の左前方及び右前方の双方の領域に先行車100Aが存在する状態になると、車両100は、舵角が過剰なので、走行しつつ当初の固定舵角の半分の舵角まで戻す。
【0080】
このように舵角制御を車両100の前進中に限定して行うのは、車両100の停車中は舵角を変えても車両100の向きが変化せず、先行車100Aへの追尾のためのフィードバックが成立しないからである。例えば、先行車100Aが停車した為に車両100が続いて停車した時、車両100の左前方及び右前方の双方の領域に先行車100Aが存在する状態になっていたとしても、車両100が停車した状態では舵角を固定舵角の半分の舵角まで戻す動作は行わない。その様な舵角の変更を行っても車両100の前端の方向は変わらないので、全く無駄である。この場合、先行車100Aが前進して車間距離が開き、車両100が前進を再開した時点での、先行車100Aが検知される位置に応じた舵角制御を行えばよい。
【0081】
図16の中段の図に示すように、車両100の左前方に先行車100Aを捉えた状態で追尾すると、車両100の進行方向に対する先行車100Aの進行方向の角度は、車両100の正面が先行車100Aの真後ろを指向する角度になる。車両100が、この角度で移動する先行車100Aを追うと、車両100の右前角は、先行車100Aの手前側面(左側の側面)を先行車100Aの後方に延長した線を、車両100の左前角よりも先に超える。これが、いわゆる「角入れ」に成功した状態であり、後続車100Bは、車両100によって前方を塞がれた形になるので、車両100は、後続車100Bの前進を牽制して、先行車100Aに続いて、車流300の切れ目を進むことができる。なお、ここまで舵角制御の例を説明する中で、舵角を増す際に最大舵角にする例や、舵角を減ずる際に舵角を半分にする様な制御例を示したが、これらは詳細な説明を避ける為に用いた安易な制御例に過ぎない。実施に当たっては、走行中に舵角を急変させると乗員に動揺を与える恐れがある事を考慮して、車速に応じて舵角の変化速度を制限し、スムーズに舵角を変化させて乗員が感じる加速度を抑制する様な工夫を加えるべきである事は、言うまでもない。
【0082】
図17は車速制御方法について説明するための図である。図17に示すように、車両100の左前方に先行車100Aを捉え、かつ、車両100の右前方に後続車100Bが存在しない状態では、車両100の舵角は前述した固定舵角又は適応的舵角制御で操舵される。
【0083】
車両100の車速に関しては、先行車100Aの表面の内、車両100に最も近い部分(左後方角)から車両100までの最短距離に応じて制御される。例えば、車両100が前述した所定の位置Pに停車した車両100は先行車100Aから1m離れているものとする。この状態から車両100の左前方に先行車100Aを捉え、かつ、車両100の右前方に後続車100Bが存在しない状態になると、車両100は制動を解除し、走行を開始する。例えば、障害物(この場合は先行車100A)までの最短距離が第1所定閾値(例えば1m)以上である事を条件として加速する制御にしておけば、車両100は加速しながら走行を開始する。
【0084】
走行開始後に、最短距離が、第1所定閾値よりも小さい第2所定閾値(例えば50cm)以下になった場合、車両100は減速する。また、車両100は、最短距離が第2所定閾値以下になるまでは、最短距離が1mを超えないように、先行車100Aを追尾する。ただし、車両100の車流300への合流時の車速は、例えば前述した基準速度を上限とするため、車両100は車速が基準速度を超えそうになったら加速を抑制して、車速を基準速度以下に保つ。この場合、車速が基準速度を超えない事を優先しているので、車間距離が1m以上に開く結果になりうる。
【0085】
走行開始後に、先行車100Aが減速又は停止したことによって、車両100と先行車100Aとの最短距離が第2所定閾値以下になった場合、車両100は、直ちに停車し、最短距離が第1所定閾値を超えるまで再加速をしない。このように、少なくとも、最短距離が第1所定閾値(1m)以上の場合に加速する制御と、第2所定閾値(50cm)以下の場合に減速する制御とを組み合わせれば、最短距離は概ね50cmと1mの間で変化するが、最短距離が前記の二つの閾値の間にあるときも、最短距離に応じて車速を加減する制御を加えれば、最短距離(この場合は車間距離)が安定化すると同時に、車両100の加減速の幅も抑制されるため、乗員が感じる加速度を低減することが出来る。
【0086】
図18は合流支援を開始するタイミングについて説明するための図である。合流支援は、車両100の前方の車流300に少なくとも1台の車両(先行車100A、後続車100Bなど)がある状態で開始される。そして、合流支援が開始されたときの最初の処理は、車両100を車流300に向かって直進させることである。なお、合流支援を開始する場合には前述したように、車流300から所定の距離離れた位置Pに車両100が一旦停車するため、遅くとも位置Pに車両100が停止した時点で、車両100から車流300までの距離が確定している。
【0087】
次に図19などを参照して、車両100及び車両用合流支援装置200の変形例について説明する。図19は本開示の実施の形態の変形例に係る車両の構成例を示す図である。図20は本開示の実施の形態の変形例に係る車両用合流支援装置の構成例を示す図である。図20に示す車両用合流支援装置200は、図2に示す距測群60に代えて、光学式物体検知装置である距測部6Aを備える。
【0088】
距測部6Aは、車両100の前方の一定領域を交差車両の検知範囲6aとする距測手段の一例である。距測部6Aは、図19に示すように、例えば車両100のフロントガラスの上部の内側に配置される。距測部6Aは、例えば、2つの撮像素子を備え、これらの撮像素子の対で車両100の前方を撮像することにより、図19に示す検知範囲6aの物体を検知する複眼カメラである。複眼カメラにより、所定の視差を伴う2つの前方撮影画像(視差画像)を取得できる。検知範囲6aには、右寄り検知範囲60R及び左寄り検知範囲60Lが含まれる。センサ制御装置5は2つの前方撮影画像から前述した検知情報を得ることができる。
【0089】
図21及び図22は複眼カメラを利用した物体の位置推定方法について説明するための図である。複眼カメラを構成する二つのカメラは、基線長G離して配列され、光軸が平行になるように調整された複眼カメラモジュールの形で、基板などに実装される。各々の撮影画像は、光軸上の像が映る位置が画像中心となるよう、切り出し範囲を調整してある。
【0090】
複眼カメラで撮影された被写体が撮影画像上で映る位置(図22における画像中心からの距離:DL、DR)は、被写体の位置の光軸に対する角度(図21における入射角:θL、θR)と、レンズ光学系の像高特性(入射角θと画像中心からの距離との関係を示すもの)で決まる。レンズ光学系の像高特性は予め特定されていて既知であるので、画像中心からの距離を元に、入射角を逆算すること事ができる。
【0091】
二つのカメラには、像高特性が同じであるレンズを選別して実装しているため、被写体までの距離が無限大であれば、左カメラ画像(左画像)と右カメラ画像(右画像)に写る被写体の像の位置は同じになるが、被写体が比較的近距離ならば、左画像と右画像で被写体の像の位置が異なる。左右各画像上の像の画像中心からの距離(DL、DR)で像高特性を参照すると、光軸に対する入射角(θL、θR)が得られる。基線長Gは既知であるので、三角測量の原理により、被写体の座標とカメラからの距離を算出できる。
【0092】
なお、前述したソナーを利用した場合、個々のソナーにおいて物体までの距離を特定可能であり、個々のソナーに接続されるセンサ制御装置5は、複数のソナーの検知結果を総合する役割がある。これに対して、複眼カメラは、右画像と左画像を出力するだけであり、右画像と左画像から被写体の像を抽出して、被写体の座標と距離(つまり検知情報)を算出する過程は、センサ制御装置5の役割となる。
【0093】
なお、光学式物体検知装置である距測部6Aは、複眼カメラに限定されず、例えば、光の飛行時間を利用して三次元情報を計測可能なカメラであるTOF(Time Of Flight)カメラでもよい。
【0094】
図23及び図24は複眼カメラを利用した舵角制御方法について説明するための図である。ソナーを利用した場合、前方の物体の左右方向の位置が正確に判別できないため、車両100は、例えば図23に示すように、車両100の左前方の領域と右前方の領域に物体が存在するか否かで、舵角を制御する。具体的には、図23の上段の図に示すように、車両100の左前方の領域と右前方の領域の両方に物体が存在していない時は、車両100は、舵角を増して、図23の中段の図に示すように、車両100の左前方の領域に障害物が有って、かつ、右前方の領域に物体が存在していない状態にする。この状態から、更に車両100の進行方向が左に振れて、図23の下段の図に示すように、車両100の左前方の領域と右前方の領域の両方に物体が存在している状態になった時は、車両100は、逆に舵角を戻して、図23の中段の図に示すように、車両100の左前方の領域に障害物が有って、かつ、右前方の領域に物体が存在していない状態にする。この様に、ソナーを利用した場合、物体の検知があるか無いかで制御するので、細かな制御ができない。これに対して、複眼カメラを利用した場合、車両100の前方に存在する物体の左右方向の位置を正確に判別できるため、より細かな舵角制御が可能になる。舵角制御装置1は、複眼カメラの撮像情報に基づき、以下のように舵角を制御する。ここでは前述した舵角制御のアルゴリズムを説明した図16を参照する。
【0095】
例えば、図24の上段の図に示すように、車両100が前進中に、車両100の正面が先行車100Aの後部中央よりも右側の領域と向き合う場合、舵角制御装置1は舵角を増す。さらに車両100が前進することで、図24の中段の図に示すように、車両100の正面が先行車100Aの後部中央と向き合うと、舵角制御装置1は、舵角を一定に保つ。さらに車両100が前進することで、図24の下段の図に示すように、車両100の正面が先行車100Aの後部中央よりも左側の領域と向き合うと、舵角制御装置1は舵角を減らす。以上の制御により、車両100は、先行車100Aの後部中央を指向して車流300に合流できる。この時、車両100の正面方向と、先行車100Aの後部中央の方向の角度差を、複眼カメラの画像から算出できるので、舵角を補正する際に、補正幅を角度差に比例して大きくする、などの適応的な舵角制御が可能である。
【0096】
次に図25及び図26を参照して、複眼カメラを利用して合流支援機能を自動的に起動する方法について、2通りの方法を説明する。
【0097】
図25は複眼カメラを利用して合流支援機能を自動的に起動する第1の方法について説明するための図である。
【0098】
複眼カメラを利用することによって、車両100の前方の先行車100Aの横方向への動き、先行車100Aの進行方向、先行車100Aの向きなどを判別できる。これにより、車両100の前方に、車両100の進行方向と交差する車列を判別できる。例えば、車両100が備える距測部6Aは、車両100の前方の物体の座標を追跡して、この物体が移動する車両である事を判別する。そして、移動する車両が複数存在し、少なくとも自車の進行方向の左側に位置する車両と、自車の進行方向の右側に位置する車両があれば、距測部6Aは、自車の進行方向を遮る車列がある、と判定する。
【0099】
距測部6Aは、この先行車100Aの進行方向と、自車の進行方向(自車が走行している車線の方向など)とが成す角θを求め、角θが所定の範囲内(例えば60度以上120度以下)であれば、前方の先行車100Aの進行方向が自車の進行方向と交差している、と判定する。
【0100】
さらに、先行車100Aの進行方向と自車の進行方向とが成す角θが所定角度以上であり、かつ、自車の予定された進行方向と前方の先行車100Aの進行方向が所定角度以内で一致していれば、走行制御部34は、合流支援機能を自動的に起動して、合流支援を開始する。
【0101】
なお、先行車100Aの進行方向と自車の進行方向とが成す角θが所定の角度(例えば120度)以上であり、かつ、自車の方向指示器により前方の先行車100Aの進行方向に自車を進行させる意思が示された場合にも、走行制御部34は、合流支援機能を自動的に起動して、合流支援を開始するように構成してもよい。
【0102】
合流支援機能を自動的に起動する機能は、距測手段としてソナーを用いる車両にも実装可能である。ナビゲーション装置(不図示)から得た情報により、自車が走行している道路と所定の範囲内の角度で交差する道路があり、交差する道路に接近した時にソナーが交差する道路上の車両を検知した場合は、合流支援機能を自動的に起動してよい。
【0103】
図26は、合流支援機能を利用している時に、側方から接近する車両に対処する手段を説明するための図である。合流支援機能を起動した時に、車両100の前方の車流300上の後続車100Bが、検知範囲に接近してくる場合もある。
【0104】
例えば、図1または、図19の様に、車両100の側方を撮影するカメラを備え、撮影画像内に写った移動物を検出し、その位置を推定できる構成を持つ場合、距測部6Aは、自車(車両100)の側方の物体の座標を追跡して、この物体が移動する車両である事を判別する。更に、この車両の進行方向と自車の進行方向とが成す角θを求め、角θが所定角度以上であれば、側方の車両が自車の進行方向と交差する他車である、と判定する。
【0105】
前述した対称軸の延長線の右側及び左側の何れかに他車が存在し、かつ、自車の予定された進行方向と前方の他車の進行方向が概ね一致するとき、走行制御部34は、前記の他車を、後続車であると判定する。
【0106】
前述した対称軸の延長線上に、自車と交差する他車が存在し、又は、前述した対称軸の延長線の右側及び左側の何れかに後続車が存在する場合、走行制御部34は、車両100が後続車とも接触しない様に制御する必要がある。具体的には、後続車が加速して車間距離を詰め、車両を割り込ませない様に行動していると推定される場合は、車両の車体が車流内に入る前に停車し、後続車を先に通過させる様にしてもよい。
【0107】
なお、後続車を検知する手段は、図1または図19の様にカメラを使用する構成でも良いし、側方を検知範囲とするソナーであってもよい。但し、カメラとソナーの何れを利用する場合でも、検知可能な距離には限度がある。ソナーが検知可能な距離は高々10m程度であるし、トップビュー表示の為のカメラは、路面を写すために斜め下に向けて設置されているので、10m以上離れた位置は写らない構造であることが多い。後続車が10mまで接近した時点で接近を検知したとしても、その時点で車両の車体が車流内に入っていて、後続車に減速や進路変更の意思が無かった場合には、後続車に衝突されてしまう恐れがある。つまり、後続車を検知する手段を備えていれば安全性が増すが、安全性が十分に担保できるとは言えない。運転支援装置だけでは安全性を十分に確保できない時は、運転者の介入を求める事で安全性を積み増すことが出来る。
【0108】
合流支援の明示的な指示は、運転者がHMI装置4のボタンを操作することで行われる。ボタン操作は、例えば、タッチパネル上の所定領域をタッチすることで行われる。なお、ボタン操作で合流支援機能を起動する場合、運転者が自車前方から視線を外す必要があるので、合流支援機能は、自車が停止している事を条件として起動できるように構成することが好ましい。なお、運転者の明示的な指示は、ボタン操作に限定されず。音声コマンドでもよい。また、車両用合流支援装置200は、車速が例えば前述した基準速度未満の場合にはボタン操作による起動要求を受け付け、車速が基準速度を超えた場合には音声コマンドによる起動要求を受け付けるように構成してもよい。また、車両が自律走行を行っている時は、交差する車流に合流すべき状況である事を検知した時点で合流支援機能を自動的に起動し、合流動作を開始する事を運転者に伝える様にしても良い。運転者の介入を求めるべき時点は、合流支援機能を起動した時である。その理由は、車両の車体が車流内に入った後は、後続車との衝突回避が困難であり、より車流から離れた位置で一時停止した方が安全だからである。合流支援を開始するまでは手動操縦であった場合は、自動操縦を開始する為の報知が必要であり、安全のため、自動操縦であっても状況に応じて運転者の介入を求める事の報知も行わなければならない。
【0109】
合流支援を開始すると車速が自動制御されるので、車両用合流支援装置200は、起動時にアクセルを操作しない様に運転者へ案内するように構成してもよい。
【0110】
また、車両用合流支援装置200は、自車と後続車100Bとの車間を詰めるような運転者の操作を検知した場合、直ちにブレーキを掛けられる様に、ブレーキペダルに足を乗せておく事を運転者へ案内するように構成してもよい。ブレーキペダルに足を乗せておく事は、合流支援の終了時に、ブレーキペダルとアクセルペダルとの踏み違えによって自車が急加速する「誤踏み」の予防に役立つ。
【0111】
なお、車両用合流支援装置200は、合流支援の終了まで舵角を自動制御する構成の場合、合流支援の終了までハンドルに触れない事を運転者に指示してもよい。また、車両用合流支援装置200は、ハンドル操作を必要とする構成の場合、必要な時点で運転者にハンドル操作を行うように促してもよい。
【0112】
なお、車両用合流支援装置200は、運転者が操作をしていない事を検知できる。例えば、ブレーキペダルの遊びの範囲内でブレーキペダルに足が乗せられているとき、車両用合流支援装置200は、運転者がブレーキペダルを操作していない事を検知する。また、ハンドルに手が添えられていないとき、又はハンドルに手が添えられているが操作力が加えられていないとき、車両用合流支援装置200は、運転者がハンドルを操作していない事を検知する。
【0113】
なお、ハンドルを回転させずに自動操舵により舵角を変えることができる車両100も存在するが、このような車両100では、例えば、自動操舵が終わった時点の舵角が、車両100が直進するときの舵角であると運転者が誤解することによって、誤操作する虞がある。そのため、自動操舵の際はハンドルを連動させることが好ましい。
【0114】
車両用合流支援装置200は、合流支援による自動運転(完全自動運転、半自動運転など)中に、運転者が自動運転に対して不安を感じないよう、ブレーキペダルに足を乗せたり、ハンドルに手を添えたりすることを、運転者に推奨するような案内を行う構成としてもよい。これにより、運転者が危険を感じて合流支援に介入する操作を早めることができる。
【0115】
運転者の操作が合流支援に介入した場合、車両用合流支援装置200は、原則として合流支援を一時中断して、当該操作の合流支援への介入が無くなったとき、合流支援を再開するが、自車の一部(例えば自車の前方の角)が先行車の後方に位置しており、合流支援を終了してもよい場合には、運転者が合流支援に介入した時点で自動運転を解除してもよい。
【0116】
次に、距測部6Aを備えた車両100において、撮像部7-1又は撮像部7-2で撮影された画像を用いて衝突予測を行う方法について説明する。
【0117】
距測部6Aを構成する複眼カメラは、物体検知可能距離がソナーによる物体検知可能距離よりも長いことが特徴である。このような特徴を備えた複眼カメラの撮像範囲を広げるために、広角の複眼カメラを採用すると、複眼カメラの物体検知可能距離は短くなる傾向がある。このため、本実施の形態の複眼カメラは、視野範囲が、全周囲表示のための広角カメラ(例えば撮像部7-1又は撮像部7-2)の視野範囲よりも狭くなるように構成される。複眼カメラの検知範囲は、例えば、車両正面を中心に左右30度程度の扇状の領域である。この場合、図19に示す車両100の前方の左右45度の範囲外は、検知範囲に入らないため、図24に示す後続車100Bが、複眼カメラの検知範囲外で加速した場合、物体検知による自動ブレーキが働かず、車両100が後続車100Bに衝突するリスクが生じる。このようなことに鑑みて、図19に示す車両100においても、撮像部7-1又は撮像部7-2で撮影された画像を用いて衝突予測を行うことが好ましい。
【0118】
衝突予測部32の判定条件は、距測部としてソナーを使う場合の条件と同じでよい。衝突予測部32は、撮像部7-1又は撮像部7-2で撮影された画像を用いて、後続車100Bの位置と動きを検出し、例えば次の様な判定を行う。
【0119】
(1)衝突予測部32は、後続車100Bの先端が、自車の右前角より右側に存在し、かつ、後続車100Bが停止している場合、衝突リスク無し、と判定する。
(2)衝突予測部32は、後続車100Bの先端が、自車の右前角より右側に存在し、かつ、後続車100Bが前進している場合、衝突リスク有り、と判定する。
(3)衝突予測部32は、後続車100Bの先端が、撮像部7-1から見て自車の右前角に隠れ、かつ、後続車100Bまでの距離が衝突判定距離以下(例えば数m以下)の場合、衝突リスク有り、と判定する。
(4)衝突予測部32は、後続車100Bの先端が、撮像部7-1から見て自車の右前角に隠れ、かつ、後続車100Bまでの距離が上記の衝突判定距離を超えている場合、衝突リスク無し、と判定する。
【0120】
なお、後続車100Bの先端が自車の右前角の前方に存在する場合、後続車100Bの先端が撮像部7-1又は撮像部7-2の視野範囲内に存在するため、自車から後続車100Bまでの距離が、物体検知による自動ブレーキが働く設定値以下になるまでは、自車を前進させても、自車が後続車100Bに衝突する虞はない。
【0121】
また、後続車100Bの先端が自車の右前角の前方よりも右側に存在していても、後続車100Bが停止していれば、自車は左に舵を切って前進するため、自車が前進しても自車が後続車100Bに衝突する虞はない。
【0122】
進路計画部33、走行制御部34などの動作は、物体検知手段としてソナーを用いるか複眼カメラを用いるかによって変わらないため、説明を割愛する。
【0123】
また、複眼カメラに代えて前述したTOFカメラを用いる場合にも、物体検知以外の制御は複眼カメラの場合と同じでよい。
【0124】
(合流支援の形態)
次に、本実施の形態に係る車両用合流支援装置200による合流支援の形態について説明する。
(1)自動運転が可能な車両100は、車流300に合流するときに自動的に合流支援を開始するように構成してもよい。この場合、運転者の操作は一切不要である。
(2)自動運転が可能な車両100は、例えば、合流支援機能が動作しているとき、必要に応じて、運転者の操作が合流支援に介入するように、音声などで案内するように構成してもよい。これにより、例えば、後続車100Bが強引に詰めて来たら、運転者がブレーキで車両100を停車させることができる。また、運転者に監視と介入を求める事を前提に、後続車100Bを監視する手段を省略又は簡略化してもよい。
(3)手動運転の車両100は、車流300に合流する箇所で運転者が合流支援を開始する操作を行うことで、合流支援を起動するように構成してもよい。この場合、運転者の起動操作が必要である。合流支援機能は、起動してから合流完了まで、車両100を完全自動走行させるように構成してもよいし、半自動走行させるように構成してもよい。
(4)車両100は、合流支援機能が起動してから合流完了まで、ペダル操作は必要ないが、運転者がハンドルを操作するように、音声などで案内するように構成してもよい。
(5)上記の(2)で説明した車両100は、運転者がブレーキペダルに足を乗せている事を条件として合流支援を開始させ、合流支援開始後は、ブレーキを踏み込むと停車するが、合流支援を終了させないように構成してもよい。
(6)上記の(3)~(5)で説明した車両100は、運転者がアクセルペダルに足を乗せていない事を条件として合流支援を開始させ、合流支援開始後は、運転者がアクセルペダルを踏んだときにだけ、合流支援を終了させるように構成してもよい。すなわち、合流支援を終了させる操作としてアクセル操作以外の操作(ハンドル操作など)を必要としない構成としてもよい。
【0125】
(撮像部7-1又は撮像部7-2が後続車100Bの割込みを検知した時の中断処理)
次に、側方監視手段である撮像部7-1又は撮像部7-2が後続車100Bの割込みを検知したときに、合流支援を中断する処理について説明する。
【0126】
車両用合流支援装置200は、後続車100Bが自車の前方に割込んできたら、自動的にブレーキを作動させ、自車を停止させる。このとき、運転者もブレーキペダルを踏んでいたら、自動ブレーキが作動しているため、車両用合流支援装置200は、ブレーキペダルから足を離してよいことを、運転者に案内してもよい。
【0127】
また、車両用合流支援装置200は、後続車100Bが通過するまで、前進せず待機することを運転者に伝えるように構成してもよい。なお、車両用合流支援装置200は、後続車100Bが自車の前方に割込んできた場合には合流支援を終了させず、合流支援を終了するような明示的な操作などが運転者によって行われたときにだけ合流支援を終了させてもよい。
【0128】
後続車100Bが自車の正面まで進行してきたとき、車両用合流支援装置200は、後続車100Bを新たな先行車100A、すなわち追尾対象とした上で、合流支援を再開することを運転者に伝えて、後続車100Bが横切ったときに、自車の前進を開始する。
【0129】
(運転者の監視による側方監視手段の代替)
次に運転者が後続車100Bを監視することで、側方監視手段による後続車100Bの監視を不要とする車両用合流支援装置200の構成例について説明する。
【0130】
車両用合流支援装置200は、運転者に対して、後続車100Bが自車に接近していること、又は後続車100Bが存在することについて注意を促し、後続車100Bが自車の前方に割込んできたら、ブレーキペダルを踏むよう指示するように構成してもよい。これにより、側方監視手段を省略できる。
【0131】
また、車両用合流支援装置200は、側方監視手段を備える場合でも、運転者がブレーキペダルを踏んだときには、側方監視手段による監視よりも、手動による制動を優先するように構成してもよい。
【0132】
車両用合流支援装置200は、運転者がブレーキペダルを踏んだ場合、加速を解除し、ブレーキをホールド(自動継続)し、運転者に足を離してよい事を伝えると共に、後続車100Bが自車の前方を通過するまで待機することを運転者に伝えるように構成してもよい。
【0133】
後続車100Bが自車の前方を通過すると、自車が前進できるようになるため、車両用合流支援装置200は、ブレーキペダルが踏まれただけでは合流支援を終了せずに、合流支援を終了するような明示的な操作などが運転者によって行われたときにだけ合流支援を終了するように構成してもよい。
【0134】
後続車100Bが自車の正面まで進行してきたとき、車両用合流支援装置200は、後続車100Bを新たな先行車100Aの追尾対象とし、合流支援を再開する。さらに、車両用合流支援装置200は、新たな後続車100Bに注意するように運転者に促して、新たな後続車100Bによる割込みが発生したとき、再度ブレーキペダルを踏むように運転者へ要請して、後続車100Bが自車を横切ったら前進を開始するように構成してもよい。
【0135】
次に図27を参照して、運転者のペダル操作又はハンドル操作が合流支援に介入したときの車両用合流支援装置200の動作について説明する。図27は運転者のペダル操作又はハンドル操作が合流支援に介入したときの動作について説明するための図である。
【0136】
(ペダル操作介入時の対応)
図27に示すように「角入れ」に成功した後であれば、車両100は後続車100Bの前進を牽制して、先行車100Aに続いて車流300の切れ目を進むことができる。従って、車両用合流支援装置200は、「角入れ」に成功した状態で、例えば運転者がアクセルペダルを操作した時点で、合流支援を終了してよい。車両用合流支援装置200は、合流支援を終了する際、例えば「合流支援を終了するのでハンドルを操作して下さい」という音声ガイダンスを出力しながら舵角を維持し、舵角を維持しているときに、ハンドルに対する操作力を検知した場合には「合流支援を終了します」という音声ガイダンスを出力し、その後に、合流支援を終了する。
【0137】
「角入れ」する前の場合には、車両用合流支援装置200は、運転者のブレーキ操作には従うが、運転者のアクセル操作は無視するように構成してもよい。この場合、前述した「誤踏み」の可能性があるため、アクセル操作があった時は強制制動し、「アクセルを操作しないで下さい。ブレーキを一度踏んで離せば合流支援を再開します」という音声ガイダンスを出力する。その後、車両用合流支援装置200は、アクセルの解放とブレーキの空踏みがあれば「合流支援を再開します」という音声ガイダンスを出力して、合流支援を再開する。空踏みとは、ブレーキの操作をしているにも拘らずブレーキ装置で液圧制動力が発生していない状態である。
【0138】
(ハンドル操作介入時の対応)
図27に示すように「角入れ」に成功した後であれば、車両100は車流300に合流できるため、車両用合流支援装置200は、ハンドル操作が合流支援に介入した時点で、合流支援を終了してよい。この場合、車両用合流支援装置200は、例えば、「ハンドル操作があったので、合流支援を終了します。」という音声ガイダンスを出力して、車両100が停車中であれば車両100の停車を維持し、車両100が走行中であれば車両100の惰力走行を維持し、最短距離が前述した第2所定閾値(例えば50cm)以下になった場合、強制制動する。
【0139】
「角入れ」する前の場合には、車両用合流支援装置200は、「ハンドル操作があったので、合流支援を中断します。」という音声ガイダンスを出力して、制動して待機する。
ハンドルに対する操作力を検知しなくなったとき、車両用合流支援装置200は、「合流支援を再開します」という音声ガイダンスを出力して、合流支援を再開する。
【0140】
なお、運転者によっては、ハンドル操作を開始した時点とアクセルペダルの操作を開始した時点との時間差があっても、所定時間内(例えば0.3秒以内)であれば、これらの操作を同時にしたとみなす場合がある。このような運転者が、ハンドル操作とアクセルペダルの操作を同時に実施したつもりでも、実際には、これらの操作の開始時点にはずれがあるため、一方のタイミングは他方のタイミングよりも遅くなるが、その場合に、操作タイミングが遅い方の操作を行うように促されると、運転者が違和感を覚えることになる。そのため、車両用合流支援装置200は、一方の操作が行われた時点から所定時間(例えば0.3秒)待ち、この間に他方の操作が行われた場合には、双方の操作が同時に操作されたとみなして、操作タイミングが遅い方の操作を促さないように構成することが好ましい。
【0141】
(運転者の操作の介入が遅れた場合のハンドオーバー機能)
次に、合流支援を終了したときに運転者の操作の介入が遅れた場合のハンドオーバー機能について説明する。
【0142】
例えば、車流300への車両100の合流が完了したことによって、合流支援を終了したときに、ハンドル操作が有ってもアクセル操作が無い場合、車速が低下して車流に乱れを与える虞がある。この場合、車両用合流支援装置200は、舵角のみを自動運転から手動運転へ切り替え(ハンドオーバーし)、自動運転時の車速を維持すればよい。
【0143】
また、車流300への車両100の合流が完了したことによって、合流支援を終了したときに、アクセル操作が有ってもハンドル操作が無い場合、車両用合流支援装置200は、車速のみを自動運転から手動運転へ切り替え(ハンドオーバーし)、自動運転時の舵角を維持すればよい。
【0144】
また、車両用合流支援装置200は、これらのハンドオーバーの際、一方の操作が行われた時点から所定時間(例えば0.3秒)経過するまでに、他方の操作が行われない場合には、一方の操作が行われた時点から所定時間経過したときに、他方の操作を促すように構成してもよい。
【0145】
また、合流支援終了後も、ハンドル操作だけが無い状態が続いた場合でも、自動運転時の舵角を維持することで、計画された合流経路に自車を走行させることができるため、車両用合流支援装置200は、計画された合流経路を自車が走り終えた時点で、強制制動し、合流支援の終了を通知してもよい。
【0146】
また、合流支援終了後も、アクセル操作だけが無い状態が続いた場合、自動運転時の車速を維持することができるが、手動のハンドル操作によって自車は計画された合流経路から外れて走行している。そのため、車両用合流支援装置200は、車速を制御するように促し、車速を制御するように促した時点から所定時間(例えば1秒)が経過してもアクセルペダルの操作がないとき、又は、車速を制御するように促した時点から所定の距離(例えば1m)自車が走行してもアクセル操作がないときには、強制制動し、合流支援の終了を通知してもよい。
【0147】
(「角入れ」後に一旦停車無しでハンドオーバーする機能)
次に「角入れ」後に一旦停車無しでハンドオーバーする機能について説明する。自動運転が終了した場合に自動運転から手動運転への切り替え(ハンドオーバー)は、通常、運転者がブレーキペダルを踏んで自車を一旦停車させた状態で行われる。ただし、「角入れ」に成功した場合、車流300に乱れを生じさせないため、速やかに加速させる必要がある。このため、車両用合流支援装置200は、「角入れ」に成功した自車が後続車100Bと衝突する虞が無くなった時点で、自車を一旦停車させずに、自動運転から手動運転に切り替えるように構成してもよい。これにより、車流300への自車の合流点で後続車100Bを待たせる時間が少なくなり、車流300に乱れを生じさせることなくなるため、より合流支援機能を利用しやすくなる。
【0148】
以上、図面を参照しながら各種の実施の形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。また、開示の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0149】
以上、本開示の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0150】
本開示の一実施例は、車両制御装置、車両用合流支援装置及び車両に好適である。
【符号の説明】
【0151】
1 舵角制御装置
2 速度制御装置
3 車両制御装置
5 センサ制御装置
6A 距測部
7-1 撮像部
7-2 撮像部
60 距測群
100 車両
100A 先行車
100B 後続車
200 車両用合流支援装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27