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  • 特許-好中球接着促進因子の遺伝子発現抑制剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】好中球接着促進因子の遺伝子発現抑制剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9789 20170101AFI20240501BHJP
   A61K 36/736 20060101ALI20240501BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240501BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240501BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240501BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240501BHJP
   A23L 33/105 20160101ALN20240501BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61K36/736
A61P17/00
A61P43/00 105
A61P43/00 121
A61K45/00
A61Q19/00
A23L33/105
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019181926
(22)【出願日】2019-10-02
(65)【公開番号】P2021054775
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000113470
【氏名又は名称】ポーラ化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 優子
(72)【発明者】
【氏名】宍戸 まゆみ
【審査官】駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-104117(JP,A)
【文献】特開2012-072084(JP,A)
【文献】A comparison of the effects of kaempferol and quercetin on cytokine-induced pro-inflammatory status of cultured human endothelial cells,British Journal of Nutrition,Vol.100,2008年04月08日,pp.968-976,https://www.cambridge.org/core/journals/british-journal-of-nutrition/article/comparison-of-the-effects-of-kaempferol-and-quercetin-on-cytokineinduced-proinflammatory-status-of-cultured-human-endothelial-cells/280EDA165F4D12B32B49300B266CFD76
【文献】Study of Biologically Active Compounds in Prunus persica Leaves Extract,Research Journal of Pharmacy and Technology,Vol.12,2019年04月19日,pp:3273-3276,https://dspace.nuph.edu.ua/bitstream/123456789/19593/1/Prunus%20persica%20RJPT_12_7_2019.pdf
【文献】シワの原因となる酵素「好中球エラスターゼ」の働きを阻害する有効成分を開発,POLA ORBIS HOLDINGS NEWS RELEASE,2016年07月14日,https://data.swcms.net/file/po-holdings/news/news/auto_20160714450040/pdfFile.pdf
【文献】Anti-Diabetic,Anti-Oxidant and Anti-Adipogenic Potential of Quercetin Rich Ethyl Acetate Fraction of Prunus persica,Pharmacognosy Journal,2018年,Vol.10,No.3,463-469
【文献】Pharmacological basis for the use of peach leaves in constipation,Journal of Ethnopharmacology,2000年,87-93
【文献】Cosmetic potentials of Prunus domestica L. leaves,Journal of the Science of Food and Agriculture,98,2018年,726-736
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K 36/00-36/05
A61K 36/07-36/9068
A61K 38/00-38/58
A61K 41/00-45/08
A61P 1/00-43/00
A23L 5/40- 5/49
A23L 31/00-33/29
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
Science Direct
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶媒で抽出された、油溶性モモ葉エキスを有効成分とする、好中球接着促進因子の遺伝子発現抑制剤。
【請求項2】
前記好中球接着促進因子が、血管内皮細胞における好中球接着促進因子であることを特徴とする、請求項1に記載の遺伝子発現抑制剤。
【請求項3】
前記好中球接着促進因子が、細胞間接着分子-1(intercellular adhesion molecule-1,ICAM-1)及び/又は血管細胞接着分子-1(vascular cell adhesion molecule-1,VCAM-1)であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の遺伝子発現抑制剤。
【請求項4】
抗シワ剤及び/又は抗たるみ剤として用いることを特徴とする、請求項1~の何れか一項に記載の遺伝子発現抑制剤。
【請求項5】
好中球エラスターゼの活性を阻害する成分を含む抗シワ剤及び/又は抗たるみ剤の補助剤として用いることを特徴とする、請求項1~4の何れか一項に記載の遺伝子発現抑制剤。
【請求項6】
有機溶媒で抽出された、油溶性モモ葉エキス、及び好中球エラスターゼの活性を阻害する成分を含み、
前記好中球エラスターゼの活性を阻害する成分は、下記一般式(1)で表される化合物、その異性体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩であることを特徴とする、組成物。
【化1】
[式中、R1は、カルボキシル基により置換された炭素数1~4の直鎖若しくは分岐のアルキル基、又は炭素数1~4のアルキル鎖を有するカルボン酸エステル基により置換された炭素数1~4の直鎖若しくは分岐のアルキル基を表し、R2及びR3は、それぞれ独立に、炭素数1~4の直鎖又は分岐のアルキル基を表す。]
【請求項7】
好中球の皮膚組織内への浸潤を抑制し、かつ、浸潤した好中球が放出するエラスターゼの活性を阻害するために用いられる、請求項に記載の組成物。
【請求項8】
細胞における好中球接着促進因子を構成するタンパク質をコードする遺伝子の発現量を指標とする、組成物の設計方法であって、
被験物質を添加した細胞における前記遺伝子の発現量が、被験物質を添加しなかった細胞における該遺伝子の発現量と比較して小さい場合に、前記被験物質は抗シワ作用及び/又は抗たるみ作用を有すると判定する工程と、
抗シワ作用及び/又は抗たるみ作用を有すると判定された物質を組成物に配合する工程を備える、組成物の設計方法。
【請求項9】
前記細胞が、血管内皮細胞であることを特徴とする、請求項に記載の設計方法。
【請求項10】
前記組成物が化粧料である、請求項8又は9に記載の設計方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、好中球接着促進因子の遺伝子発現抑制剤、及びこれを利用した抗シワ及び/又は抗たるみ作用を有する組成物の設計方法に関する。
【背景技術】
【0002】
真皮の構成成分であるコラーゲン及びエラスチンは、肌の張りや弾力性を保つ重要な成分である。加齢や紫外線等が原因となり、皮膚内にて皮膚細胞や好中球等からマトリックスメタロプロテアーゼや好中球エラスターゼ等のタンパク質分解酵素が分泌されることで、コラーゲン及びエラスチンの分解が生じる。これにより、皮膚の弾力性が低下し、肌のシワやたるみが生じることが、広く知られている。
【0003】
近年、好中球エラスターゼ活性を抑制する成分が発見され、様々なエラスターゼ阻害剤を有効成分として配合したシワ及びたるみの形成予防、又は改善用の化粧料が開示されている(特許文献1~4)。
本出願人も、好中球エラスターゼ阻害剤を配合し、肌のシワやたるみの形成予防、及び改善効果を発揮する化粧料や外用剤を報告している(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-205950号公報
【文献】特開2009-191043号公報
【文献】特開2013-006815号公報
【文献】特開2019-081726号公報
【文献】国際公開第2017/221973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、好中球エラスターゼ活性を抑制することにより、肌のシワ及びたるみの形成予防及び改善をもたらす仕組みはすでに知られた技術であり、このようなタンパク質分解酵素を阻害する機序による化粧料のみでなく、シワ及びたるみの形成抑制に対して、新たなアプローチも求められている。
【0006】
したがって、本発明は、新たな作用機序により、シワ及び/又はたるみの形成予防、及び改善に有効な技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
好中球は血管内を流れる免疫細胞の一種であるが、組織内に炎症性サイトカインが分泌されると、血管内壁を形成する血管内皮細胞に接着後、血管外へ浸潤し、組織内へ遊走することが知られている。
すなわち、好中球は、皮膚組織内で好中球エラスターゼを分泌する前に、血管内皮細胞に接着後、血管外へ浸潤し、皮膚組織内へ遊走する必要がある。
本発明者らは、この作用機序に着目し、好中球と血管内皮細胞との接着を抑制することができれば、皮膚組織内での好中球エラスターゼの分泌を予防することができ、シワ及び/又はたるみの形成予防、及び改善に有効であると考えた。そして、鋭意研究の結果、特定の成分が、好中球接着促進因子の遺伝子発現を抑制する作用を有することを見出した。
【0008】
すなわち、前記課題を解決する本発明は、油溶性モモ葉エキスを有効成分とする、好中球接着促進因子の遺伝子発現抑制剤である。
本発明の好中球接着促進因子の遺伝子発現抑制剤は、好中球の血管内皮細胞への接着を抑制し、血管外への浸潤、及び皮膚組織内での好中球エラスターゼによる真皮構成成分の分解を間接的に抑制することで、シワ及び/又はたるみを予防し、改善する作用を有する。
【0009】
本発明の好ましい形態では、前記好中球接着促進因子が、血管内皮細胞における好中球接着促進因子である。
【0010】
本発明の好ましい形態では、前記好中球接着促進因子が、細胞間接着分子-1(intercellular adhesion molecule-1,ICAM-1)及び/又は血管細胞接着分子-1(vascular cell adhesion molecule-1,VCAM-1)である。
【0011】
本発明の好中球接着促進因子の遺伝子発現抑制剤は、抗シワ剤及び/又は抗たるみ剤として用いることができる。
また、本発明の好中球接着促進因子の遺伝子発現抑制剤は、好中球エラスターゼの活性を阻害する成分の補助剤として用いることができる。
【0012】
また、前記課題を解決する本発明は、油溶性モモ葉エキス及び好中球エラスターゼの活性を阻害する成分を含む組成物である。
本発明の組成物は、好中球エラスターゼの活性阻害作用に加え、好中球の血管内皮細胞への接着を抑制し、間接的に血管外への浸潤を抑制する作用を有するため、好中球エラスターゼの活性阻害作用と併せて、相乗的なシワ及び/又はたるみの予防及び改善作用を有する。
【0013】
また、前記課題を解決する本発明は、好中球接着促進因子のタンパク質をコードする遺伝子の発現量を指標とする、組成物の設計方法であって、被験物質を添加した細胞における前記遺伝子の発現量が、被験物質を添加しなかった細胞における該遺伝子の発現量と比較して小さい場合に、前記被験物質はシワ及び/又はたるみの予防、及び改善作用を有すると判定する工程と、抗シワ及び/又は抗たるみ作用を有すると判定された物質を組成物に配合する工程を備える、組成物の設計方法であることを特徴とする。
本発明の組成物の設計方法によれば、好中球接着促進因子を構成するタンパク質をコードする遺伝子の発現量を指標とすることで、シワ及び/又はたるみの形成予防、又は改善作用を有する組成物を、簡便に設計することができる。
【0014】
本発明の好ましい形態では、前記細胞が、血管内皮細胞である。
血管内皮細胞では、シワやたるみ形成の要因となる外部刺激等により、前記好中球接着促進遺伝子の発現量が増加することが知られているため、血管内皮細胞における前記遺伝子の発現量を指標とすることで、シワ及び/又はたるみの形成予防、又は改善に対する評価をより正確に行うことができる。
【0015】
本発明の好ましい形態では、前記組成物が、化粧料である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の好中球接着促進因子の遺伝子発現抑制剤は、好中球の血管内皮細胞への接着を抑制し、シワ及び/又はたるみの形成予防、又は改善に対し、優れた効果を発揮する。
本発明の組成物は、好中球エラスターゼの活性を阻害する成分及び好中球接着促進因子の遺伝子発現抑制成分の相乗効果により、より優れた、シワ及び/又はたるみの形成予防、又は改善作用を有する。
本発明の設計方法によれば、シワ及び/又はたるみの形成予防、又は改善作用を有する組成物を、簡便に設計することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】油溶性モモ葉エキスを血管内皮細胞に添加した場合の、ICAM-1、及びVCAM-1のmRNA発現量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<1>好中球接着促進因子の遺伝子発現抑制剤
(1)油溶性モモ葉エキス
本発明の好中球接着促進因子の遺伝子発現抑制剤(以下、単に遺伝子発現抑制剤という)は、油溶性モモ葉エキスを含む。
本発明者らは、前記油溶性モモ葉エキスが、好中球接着促進因子の遺伝子発現を抑制する作用を有することを見出した。
【0019】
前記油溶性モモ葉エキスは、水を含有できない処方への配合が可能であり、また、水への安定性が悪い成分と共に処方することも可能である。
【0020】
前記油溶性モモ葉エキスは、バラ科モモ属モモ(Rosaceae Amygdaloideae Amygdalus)の果実、及び/又は葉を、有機溶媒で抽出することで得ることができる。
【0021】
使用可能な有機溶媒として、メタノール、エタノール等の脂肪族アルコール、アセトン等の脂肪族ケトン、ジオキサン、エチルエーテル等の脂肪族エーテル、塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル等の脂肪酸エステル、ヘキサン、ベンゼン等の炭化水素類、及びこれらの溶媒の2種以上の混合物が例示できる。
油溶性モモ葉エキスとしては、上記溶媒により抽出された抽出液、減圧濃縮、又は凍結乾燥により得られる濃縮物、及びシリカゲルやイオン交換樹脂を充填したカラムクロマトグラフィー等で分画精製した分画精製物等を用いることができる。
【0022】
また、前記油性モモ葉エキスは、市販のものを用いることができる。例えば、「油溶性モモ葉エキス(香栄興業株式会社製)」を用いることができる。
【0023】
本発明の遺伝子発現抑制剤全量に対し、前記油溶性モモ葉エキスの含有量は、好ましくは乾燥質量で0.01~10質量%であり、より好ましくは0.05~2質量%である。
【0024】
(2)好中球接着促進因子
好中球接着促進因子とは、好中球が血管内壁に接着することを促進する因子である。
【0025】
好中球接着促進因子としては、免疫グロブリンスーパーファミリーに属する細胞接着分子が挙げられる。好中球接着促進因子の具体例としては、細胞間接着分子-1(intercellular adhesion molecules,ICAM-1)、血管細胞接着分子-1(vascular cell adhesion molecule-1,VCAM-1)、及び粘膜アドレシン細胞接着分子-1(mucosal vascular addressin cell adhesion molecule-1,MAdCAM-1)等が挙げられる。
【0026】
本発明の遺伝子発現抑制剤は、特にICAM-1、及びVCAM-1の遺伝子発現抑制作用に優れる。
【0027】
本発明の油溶性モモ葉エキスを含む遺伝子発現抑制剤は、特に血管内皮細胞における好中球接着促進因子に適用することが好ましい。
血管内皮細胞は、好中球が皮膚組織内へ浸潤するために接着する細胞であり、当該細胞における好中球接着促進因子の遺伝子発現を抑制することで、優れた抗シワ及び/又は抗たるみ作用を得ることができる。
【0028】
(3)剤形
本発明の遺伝子発現抑制剤は、製剤化に用いられる任意の成分と適宜組み合わせて、外用剤又は経口剤の形態とすることが好ましい。
外用剤としては、例えば、化粧料、医薬部外品、皮膚外用医薬等の形態が挙げられる。また、それらの剤形は特に制限されない。
【0029】
また、本発明の遺伝子発現抑制剤を、経口剤として利用する場合には、本発明の抗シワ及び/又は抗たるみ剤を有効成分として含む食品用組成物の形態とすることが好ましい。より具体的には、一般食品、錠剤、顆粒剤、ドリンク剤等の剤形を有するサプリメントの形態とすることが好ましい。
【0030】
本発明の遺伝子発現抑制剤は、抗シワ剤及び/又は抗たるみ剤として用いることが好ましい。
抗シワ剤及び/又は抗たるみ剤として用いる場合は、継続的に使用可能な化粧料の形態が好ましい。
化粧料としては、油を含む化粧料、すなわち水中油(O/W)型の化粧料、油中水(W/O)型の化粧料、又は油性化粧料が好ましく例示できる。
また、界面活性剤等を用いることで、水性化粧料とすることもできる。
【0031】
また、本発明の遺伝子発現抑制剤は、好中球エラスターゼの活性を阻害する成分を含む抗シワ剤及び/又は抗たるみ剤と併用する、抗シワ剤及び/又は抗たるみ剤の補助剤として用いることが好ましい。
抗シワ剤及び/又は抗たるみ剤の補助剤として用いる場合も、継続的に使用可能な化粧料の形態が好ましい。
【0032】
例えば、皮膚の中でも、目尻、頬等のシワやたるみが気になる箇所に、好中球エラスターゼの活性を阻害する成分を含む抗シワ剤及び/又は抗たるみ剤を塗布する。次いで、本発明の遺伝子発現抑制剤を、同様の箇所に塗布する。皮膚に塗布する順序は、逆であっても構わない。
【0033】
このように、好中球エラスターゼの活性を阻害する成分を含む抗シワ剤及び/又は抗たるみ剤と、本発明の遺伝子発現抑制剤とを併用することで、好中球が、血管内壁へ接着し、血管外へ浸潤し、皮膚組織内に到達することを抑制することができ、皮膚組織内に到達した好中球においては、好中球エラスターゼの活性が阻害されるため、相乗的なシワやたるみの形成予防、及び改善作用を得ることができる。
【0034】
(4)その他の成分
本発明の遺伝子発現抑制剤を化粧料として用いる場合には、前述した成分に加え、美白成分、他のシワ及び/又はたるみ改善成分、抗炎症成分等を配合することができる。
【0035】
美白成分としては、一般的に化粧料に用いられているものであれば特に限定はない。
水溶性の美白成分としては、例えば、4-n-ブチルレゾルシノール、アスコルビン酸グルコシド、3-О-エチルアスコルビン酸、トラネキサム酸、エラグ酸、アルブチン、ニコチン酸アミド、パントテニルアルコール等が挙げられる。
油溶性の美白成分としては、1-トリフェニルメチルピペリジン、1-トリフェニルメチルピロリジン、2-(トリフェニルメチルオキシ)エタノール、2-(トリフェニルメチルアミノ)エタノール、2-(トリフェニルメチルオキシ)エチルアミン、トリフェニルメチルアミン、トリフェニルメタノール、トリフェニルメタン及びアミノジフェニルメタン、N-(o-トルオイル)システイン酸、N-(m-トルオイル)システイン酸、N-(p-トルイル)システイン酸、N-(p-メトキシベンゾイル)システイン酸等が挙げられる。更にその他の美白成分として、N-ベンゾイル-セリン、N-(p-メチルベンゾイル)セリン、N-(p-エチルベンゾイル)セリン、N-(p-メトキシベンゾイル)セリン、N-(p-フルオロベンゾイル)セリン、N-(p-トリフルオロメチルベンゾイル)セリン、N-(2-ナフトイル)セリン、N-(4-フェニルベンゾイル)セリン、N-(p-メチルベンゾイル)セリンメチルエステル、N-(p-メチルベンゾイル)セリンエチルエステル、N-(2-ナフトイル)セリンメチルエステル、N-ベンゾイル-O-メチルセリン、N-(p-メチルベンゾイル)-O-メチルセリン、N-(p-メチルベンゾイル)-O-アセチルセリン、N-(2-ナフトイル)-O-メチルセリン等が好ましく例示できる。
【0036】
他の抗シワ成分としては、一般的に化粧料に用いられているものであれば特に限定はない。例えば、ビタミンA又はその誘導体としてレチノール、レチナール、レチノイン酸、トレチノイン、イソトレチノイン、レチノイン酸トコフェロール、パルミチン酸レチノール、酢酸レチノールが挙げられる。また、ウルソール酸ベンジルエステル、ウルソール酸リン酸エステル、ベツリン酸ベンジルエステル、ベンジル酸リン酸エステル、及びニコチン酸アミドが挙げられる。化粧料における好中球遊走因子の遺伝子発現抑制剤の他のシワ改善成分の含有量は、通常0.0001~30質量%であり、0.001~10質量%が好ましく、0.01~5質量%がより好ましい(抽出物の場合は乾燥質量)。
【0037】
抗炎症成分としては、クラリノン、グラブリジン、グリチルリチン酸、グリチルリチン酸ジカリウム、グリチルレチン酸、グリチルレチン酸アルキル、及びパントテニルアルコール等が挙げられる。中でも、油溶性成分として、グラブリジン、グリチルレチン酸及びその塩、並びにグリチルレチン酸アルキル及びその塩が好ましく例示できる。
化粧料中における抗炎症成分の含有量は、通常0.01~30質量%であり、0.1~10質量%が好ましく、1~5質量%がより好ましい(抽出物の場合は乾燥質量)。
【0038】
また、一般的に医薬品、化粧料、食品等に用いられている動植物由来の抽出物を用いることが好ましい。例えば、アケビエキス、アスナロエキス、アスパラガスエキス、アボガドエキス、アマチャエキス、アーモンドエキス、アルニカエキス、アロニアエキス、アンズエキス、イチョウエキス、ウイキョウエキス、ウドエキス、エゾウコギエキス、エンメイソウエキス、オウバクエキス、オタネニンジンエキス、オドリコソウエキス、カキョクエキス、カッコンエキス、カモミラエキス、カロットエキス、カワラヨモギエキス、カンゾウエキス、キウイエキス、キューカンバーエキス、グアバエキス、クチナシエキス、クマザサエキス、クルミエキス、黒米エキス、クロレラエキス、クワエキス、ケイケットウエキス、ゲットウヨウエキス、ゲンチアナエキス、ゲンノショウコエキス、コメエキス、コメ発酵エキス、コメヌカ発酵エキス、コメ胚芽油、サルビアエキス、サボンソウエキス、ササエキス、サンシャエキス、サンショウエキス、シイタケエキス、ジオウエキス、シコンエキス、シソエキス、シナノキエキス、シモツケソウエキス、ショウキョウエキス、ショウブ根エキス、スギナエキス、ステビアエキス、ステビア発酵物、セイヨウニワトコエキス、セイヨウノコギリソウエキス、セイヨウハッカエキス、セージエキス、ゼニアオイエキス、センキュウエキス、センブリエキス、ソウハクヒエキス、ダイオウエキス、ダイズエキス、タイソウエキス、タイムエキス、タンポポエキス、チョウジエキス、トウガラシエキス、トウキエキス、トウキンセンカエキス、トウニンエキス、トマトエキス、納豆エキス、ニンジンエキス、ニンニクエキス、ハイビスカスエキス、バクモンドウエキス、ハスエキス、パセリエキス、バーチエキス、ハマメリスエキス、ヒキオコシエキス、ヒノキエキス、ビワエキス、フキタンポポエキス、フキノトウエキス、ブクリョウエキス、ヘチマエキス、ペパーミントエキス、ボダイジュエキス、マツエキス、ミズバショウエキス、メリッサエキス、モズクエキス、ヤグルマギクエキス、ユーカリエキス、ユリエキス、ヨクイニンエキス、ヨモギエキス、ラベンダーエキス、リンゴエキス、ルイボス茶エキス、レイシエキス、レタスエキス、レンギョウエキス、レンゲソウエキス、ローズマリーエキス、ローマカミツレエキス、ローヤルゼリーエキス、ワレモコウエキス等のエキスが好ましいものとして挙げられる。
【0039】
化粧料中における前記任意の動植物由来抽出物の含有量(乾燥質量)は、通常0.01~30質量%であり、0.1~10質量%が好ましく、0.3~3質量%がより好ましい。
食品中における前記任意の動植物抽出物の含有量(乾燥質量)は、通常0.01~80質量%であり、0.1~50質量%が好ましく、1~30質量%がより好ましい。
【0040】
また、化粧料には、前述した成分以外に通常化粧料で使用される任意成分としては、ポリエチレングリコール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、イソプレングリコール、1,2-ペンタンジオール、2,4-ヘキシレングリコール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール、シクロヘキシルグリセリン等のポリオール、脂肪酸セッケン(ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等)、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノールアミンエーテル等のアニオン界面活性剤類、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン界面活性剤類、イミダゾリン系両性界面活性剤(2-ココイル-2-イミダゾリニウムヒドロキサイド-1-カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、ベタイン系界面活性剤(アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)、アシルメチルタウリン等の両性界面活性剤類、ソルビタン脂肪酸エステル類(ソルビタンモノステアレート、セスキオレイン酸ソルビタン等)、グリセリン脂肪酸類(モノステアリン酸グリセリン等)、プロピレングリコール脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコール等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル、POEソルビタン脂肪酸エステル類(POEソルビタンモノオレエート、モノステアリン酸ポリオキエチレンソルビタン等)、POEソルビット脂肪酸エステル類(POE-ソルビットモノラウレート等)、POEグリセリン脂肪酸エステル類(POE-グリセリンモノイソステアレート等)、POE脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコールモノオレート、POEジステアレート等)、POEアルキルエーテル類(POE2-オクチルドデシルエーテル等)、POEアルキルフェニルエーテル類(POEノニルフェニルエーテル等)、プルロニック型類、POE・POPアルキルエーテル類(POE・POP2-デシルテトラデシルエーテル等)、テトロニック類、POEヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等)、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等の非イオン界面活性剤類、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム等の保湿成分類、表面処理されていても良い、マイカ、タルク、カオリン、合成雲母、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸(シリカ)、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の粉体類、表面処理されていても良い、酸化コバルト、群青、紺青、酸化亜鉛の無機顔料類、表面処理されていても良い、酸化鉄二酸化チタン焼結体等の複合顔料、表面処理されていても良い、雲母チタン、魚燐箔、オキシ塩化ビスマス等のパール剤類、レーキ化されていても良い赤色202号、赤色228号、赤色226号、黄色4号、青色404号、黄色5号、赤色505号、赤色230号、赤色223号、橙色201号、赤色213号、黄色204号、黄色203号、青色1号、緑色201号、紫色201号、赤色204号等の有機色素類、ポリエチレン末、ポリメタクリル酸メチル、ナイロン粉末、オルガノポリシロキサンエラストマー等の有機粉体類、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール類、ビタミンA又はその誘導体、ビタミンB6塩酸塩,ビタミンB6トリパルミテート,ビタミンB6ジオクタノエート,ビタミンB2又はその誘導体,ビタミンB12,ビタミンB15又はその誘導体等のビタミンB類、α-トコフェロール,β-トコフェロール,γ-トコフェロール,ビタミンEアセテート等のビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチン、ピロロキノリンキノン等のビタミン類が挙げられる。
【0041】
<2>組成物の設計方法
本発明は、好中球が炎症性因子による刺激に応答し皮膚組織内へ浸潤する際、血管内皮細胞と接着するという特徴に着目し、好中球接着促進因子の遺伝子発現量を抗シワ及び/又は抗たるみ作用の評価の指標とする、組成物の設計方法にも関する。
【0042】
本発明の組成物の設計方法には、まず、被験物質が添加された細胞の好中球接着促進因子の遺伝子発現量を測定する。
好中球接着促進因子をコードする遺伝子の発現量は、任意の方法を用いて測定することができる。例として、好中球接着促進因子の遺伝子配列に特異的なプライマーを用いて、mRNA発現量を定量的に測定する方法が挙げられる。mRNA発現量の測定方法としては、リアルタイムPCR法を用いた定量方法が好適に例示できる。
【0043】
次いで、測定した好中球接着促進因子の発現量が、被験物質を添加しなかった細胞における好中球接着促進因子の発現量と比して小さい場合に、前記被験物質がシワ及び/又はたるみの形成予防、又は改善に作用を有すると判定する。
【0044】
そして、抗シワ及び/又は抗たるみ作用を有すると判定された物質を組成物に配合する。
【0045】
遺伝子発現量を測定する対象となる前記好中球接着促進因子としては、<1>好中球接着促進因子の遺伝子発現抑制剤の(2)好中球接着促進因子で述べた事項が適用できる。
【0046】
本発明の設計方法によれば、簡便に、シワ及び/又はたるみの形成予防、又は改善作用を有する組成物を設計することが可能である。
【0047】
好中球接着促進因子の遺伝子発現量を測定する細胞は、血管内皮細胞であることが好ましい。
血管内皮細胞では、外部刺激によって組織内に分泌された炎症性因子に応答し、前記好中球接着促進因子のICAM-1、及びVCAM-1のmRNA発現量が顕著に増加する。したがって、血管内皮細胞におけるICAM-1、及びVCAM-1のmRNA発現量を測定することで、好中球の接着抑制作用をより正確に評価することができる。
【0048】
<3>油溶性モモ葉エキス、及び好中球エラスターゼ活性阻害成分を含む組成物
(1)好中球エラスターゼ活性阻害成分
また、本発明は、上述した油溶性モモ葉エキス、及び好中球エラスターゼ活性阻害成分を含む組成物に関する。
【0049】
本発明の組成物は、油溶性モモ葉エキスの好中球接着促進因子の遺伝子発現抑制作用、及び好中球エラスターゼ活性阻害成分の作用が相乗的に発現し、各成分を単独で含む組成物と比して、より優れたシワ及び/又はたるみの形成予防、又は改善作用を有する。
【0050】
本発明の組成物における油溶性モモ葉エキスの詳細は、上述した通りである。
【0051】
好中球エラスターゼ活性阻害成分は、好中球エラスターゼ活性阻害作用を有する成分であれば、特に限定されない。
【0052】
好中球エラスターゼ活性阻害成分としては、例えば、下記一般式(1)で表される化合物、その異性体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩が例示できる。
【0053】
【化1】
[式中、Rは、カルボキシル基により置換された炭素数1~4の直鎖若しくは分岐のアルキル基、又は炭素数1~4のアルキル鎖を有するカルボン酸エステル基により置換された炭素数1~4の直鎖若しくは分岐のアルキル基を表し、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1~4の直鎖又は分岐のアルキル基を表す。]
【0054】
前記Rに関し好ましいものを具体的に例示すれば、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、カルボキシプロピル基、カルボキシブチル基、メトキシカルボニルメチル基、メトキシカルボニルエチル基、メトキシカルボニルプロピル基、メトキシカルボニルブチル基、エトキシカルボニルメチル基、エトキシカルボニルエチル基、エトキシカルボニルプロピル基、エトキシカルボニルブチル基、プロピルオキシカルボニルメチル基、プロピルオキシカルボニルエチル基、プロピルオキシカルボニルプロピル基、プロピルオキシカルボニルブチル基、ブチルオキシカルボニルメチル基、ブチルオキシカルボニルエチル基、ブチルオキシカルボニルプロピル基、ブチルオキシカルボニルブチル基等が好適に例示出来、より好ましくは、カルボキシメチル基が例示できる。
前記R及びRは、それぞれ独立に、好ましいものを具体的に挙げれば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等が好適に例示出来、より好ましくは、イソプロピル基が好適に例示できる。
【0055】
より具体的に好ましい化合物としては、3-[[4-(カルボキシメチルアミノカルボニル)フェニルカルボニル]-バリル-プロリル]アミノ-1,1,1-トリフルオロ-4-メチル-2-オキソペンタン、3(RS)-[[4-(カルボキシメチルアミノカルボニル)フェニルカルボニル]-L-バリル-L-プロリル]アミノ-1,1,1-トリフルオロ-4-メチル-2-オキソペンタン又はそのナトリウム塩(KSK32)、N-[4-[[(カルボキシメチル)アミノ]カルボニル]ベンゾイル]-L-アラニル-N-[3,3,3-トリフルオロ-1-(1-メチル)-2-オキソプロピル]-L-プロリンアミド、N-[4-[[(カルボキシエチル)アミノ]カルボニル]ベンゾイル]-L-アラニル-N-[3,3,3-トリフルオロ-1-(1-メチル)-2-オキソプロピル]-L-プロリンアミド、N-[4-[[(カルボキシプロピル)アミノ]カルボニル]ベンゾイル]-L-アラニル-N-[3,3,3-トリフルオロ-1-(1-メチル)-2-オキソプロピル]-L-プロリンアミド、N-[4-[[(カルボキシブチル)アミノ]カルボニル]ベンゾイル]-L-アラニル-N-[3,3,3-トリフルオロ-1-(1-メチル)-2-オキソプロピル]-L-プロリンアミド、N-[4-[[(カルボキシメチル)アミノ]カルボニル]ベンゾイル]-L-アラニル-N-[3,3,3-トリフルオロ-1-(1-エチル)-2-オキソプロピル]-L-プロリンアミド、N-[4-[[(カルボキシエチル)アミノ]カルボニル]ベンゾイル]-L-アラニル-N-[3,3,3-トリフルオロ-1-(1-エチル)-2-オキソプロピル]-L-プロリンアミド、N-[4-[[(カルボキシプロピル)アミノ]カルボニル]ベンゾイル]-L-アラニル-N-[3,3,3-トリフルオロ-1-(1-エチル)-2-オキソプロピル]-L-プロリンアミド、N-[4-[[(カルボキシブチル)アミノ]カルボニル]ベンゾイル]-L-アラニル-N-[3,3,3-トリフルオロ-1-(1-エチル)-2-オキソプロピル]-L-プロリンアミド、N-[4-[[(カルボキシメチル)アミノ]カルボニル]ベンゾイル]-L-アラニル-N-[3,3,3-トリフルオロ-1-(1-メチルエチル)-2-オキソプロピル]-L-プロリンアミド、N-[4-[[(カルボキシエチル)アミノ]カルボニル]ベンゾイル]-L-アラニル-N-[3,3,3-トリフルオロ-1-(1-メチルエチル)-2-オキソプロピル]-L-プロリンアミド、N-[4-[[(カルボキシプロピル)アミノ]カルボニル]ベンゾイル]-L-アラニル-N-[3,3,3-トリフルオロ-1-(1-メチルエチル)-2-オキソプロピル]-L-プロリンアミド、N-[4-[[(カルボキシブチル)アミノ]カルボニル]ベンゾイル]-L-アラニル-N-[3,3,3-トリフルオロ-1-(1-メチルエチル)-2-オキソプロピル]-L-プロリンアミド、N-[4-[[(カルボキシメチル)アミノ]カルボニル]ベンゾイル]-L-バリル-N-[3,3,3-トリフルオロ-1-(1-メチル)-2-オキソプロピル]-L-プロリンアミド、N-[4-[[(カルボキシエチル)アミノ]カルボニル]ベンゾイル]-L-バリル-N-[3,3,3-トリフルオロ-1-(1-メチル)-2-オキソプロピル]-L-プロリンアミド、N-[4-[[(カルボキシプロピル)アミノ]カルボニル]ベンゾイル]-L-バリル-N-[3,3,3-トリフルオロ-1-(1-メチル)-2-オキソプロピル]-L-プロリンアミド、N-[4-[[(カルボキシブチル)アミノ]カルボニル]ベンゾイル]-L-バリル-N-[3,3,3-トリフルオロ-1-(1-メチル)-2-オキソプロピル]-L-プロリンアミド、N-[4-[[(カルボキシメチル)アミノ]カルボニル]ベンゾイル]-L-バリル-N-[3,3,3-トリフルオロ-1-(1-エチル)-2-オキソプロピル]-L-プロリンアミド、N-[4-[[(カルボキシエチル)アミノ]カルボニル]ベンゾイル]-L-バリル-N-[3,3,3-トリフルオロ-1-(1-エチル)-2-オキソプロピル]-L-プロリンアミド、N-[4-[[(カルボキシプロピル)アミノ]カルボニル]ベンゾイル]-L-バリル-N-[3,3,3-トリフルオロ-1-(1-エチル)-2-オキソプロピル]-L-プロリンアミド、N-[4-[[(カルボキシブチル)アミノ]カルボニル]ベンゾイル]-L-バリル-N-[3,3,3-トリフルオロ-1-(1-エチル)-2-オキソプロピル]-L-プロリンアミド、N-[4-[[(カルボキシメチル)アミノ]カルボニル]ベンゾイル]-L-バリル-N-[3,3,3-トリフルオロ-1-(1-メチルエチル)-2-オキソプロピル]-L-プロリンアミド(3(RS)-N-[4-[[(カルボキシメチル)アミノ]カルボニル]ベンゾイル]-L-バリル-N-[3,3,3-トリフルオロ-1-(1-メチルエチル)-2-オキソプロピル]-L-プロリンアミド)、N-[4-[[(カルボキシエチル)アミノ]カルボニル]ベンゾイル]-L-バリル-N-[3,3,3-トリフルオロ-1-(1-メチルエチル)-2-オキソプロピル]-L-プロリンアミド、N-[4-[[(カルボキシプロピル)アミノ]カルボニル]ベンゾイル]-L-バリル-N-[3,3,3-トリフルオロ-1-(1-メチルエチル)-2-オキソプロピル]-L-プロリンアミド、N-[4-[[(カルボキシブチル)アミノ]カルボニル]ベンゾイル]-L-バリル-N-[3,3,3-トリフルオロ-1-(1-メチルエチル)-2-オキソプロピル]-L-プロリンアミド、N-[4-[[(カルボキシメチル)アミノ]カルボニル]ベンゾイル]-L-バリル-N-[(RS)-3,3,3-トリフルオロ-1-(1-メチルエチル)-2-オキソプロピル]-L-プロリンアミド、並びにその異性体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩が例示できる。
【0056】
好中球エラスターゼ活性阻害成分の含有量は、組成物全量に対し、好ましくは0.01~10質量%であり、より好ましくは0.05~2質量%であり、さらに好ましくは0.1~1質量%である。
【0057】
本発明の組成物における好ましい剤形、及びその他の成分については、<1>好中球接着促進因子遺伝子発現抑制剤の(3)剤形、及び(4)その他の成分で述べた事項を適用することができる。
【実施例
【0058】
<試験例1>油溶性モモ葉エキスによる血管内皮細胞における好中球接着促進因子の遺伝子発現量への影響
ヒト臍帯静脈内皮細胞を、内皮細胞増殖培地2キット(タカラバイオ株式会社製)で培養し、6ウェルプレートに3.0×10cells/ウェルとなるように播種した後、37℃、5%CO環境下で24時間培養した。
24時間培養後、プレートの各ウェルにPBSを加えて細胞を洗浄し、エタノールと混合した油溶性モモ葉エキス(香栄興業株式会社製)を、終濃度0.2質量%となるように添加した。
24時間後、培地を除いてPBSで洗浄し、QIA shredderチューブ(QIAGEN株式会社製)に溶液を入れて、遠心分離により細胞を回収した。
【0059】
得られた細胞溶解液から、RNeasy plus micro kit(QIAGEN株式会社製)を用いてRNAを抽出した。
QuantiTecT SYBR Green RT-PCR kit(QIAGEN株式会社製)を用いてRT-PCRを行い、ICAM-1、及びVCAM-1のmRNA発現量、及び内在性コントロールであるACTBのmRNA発現量を測定した。
ICAM-1、及びVCAM-1のmRNA発現量を、ACTBのmRNA発現量で除した値を求め、各サンプルのmRNA発現量とした。結果を図1に示す。
【0060】
図1に示す通り、油溶性モモ葉エキスを添加したサンプルは、ICAM-1の発現量がエタノールを添加したサンプル(溶媒対照)と比して約20%まで減少し、VCAM-1の発現量が約60%まで減少することがわかる。
以上の結果から、油溶性モモ葉エキスは好中球接着促進因子の遺伝子発現抑制作用を有することが明らかとなった。
【0061】
ICAM-1、及びVCAM-1は、好中球が組織内への浸潤を行うために、血管内皮細胞への接着を促進する接着分子であることが知られている。これら接着分子の遺伝子発現量を抑制する作用を有する本発明の遺伝子発現抑制剤は、好中球の血管内壁への接着、血管外への浸潤、及び皮膚組織内への到達を抑制するものであるから、シワ及び/又はたるみの形成を予防、又は改善作用を有すると認められる。
【0062】
また、本発明の遺伝子発現抑制剤の有効成分である油溶性モモ葉エキスと、好中球エラスターゼ活性阻害成分を含む抗シワ及び/又は抗たるみ剤は、油溶性モモ葉エキスの作用により好中球の皮膚組織内への浸潤を抑制し、好中球エラスターゼ活性阻害成分の作用により、浸潤した好中球が放出するエラスターゼの活性を阻害するものであるから、好中球に起因するシワ及び/又はたるみ形成メカニズムの上流、及び下流において効果を発揮し、より高い抗シワ及び/又は抗タルミ作用を有すると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、医薬品、化粧料及び食品等に応用できる。
図1