(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】産業車両
(51)【国際特許分類】
B66F 9/22 20060101AFI20240501BHJP
【FI】
B66F9/22 G
B66F9/22 S
(21)【出願番号】P 2022098956
(22)【出願日】2022-06-20
【審査請求日】2023-06-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000232807
【氏名又は名称】三菱ロジスネクスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】仲田 真基
【審査官】山田 拓実
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-310394(JP,A)
【文献】特開2000-169099(JP,A)
【文献】特開平08-091793(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0257651(US,A1)
【文献】中国実用新案第212609352(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 9/00-11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスト装置が設けられた車両本体と、
前記マスト装置を前後方向に傾動させるティルト装置と、
前記ティルト装置を駆動させる荷役用モータと、
前記荷役用モータを制御する荷役制御部と、
オン状態の時に前記車両本体に制動力を生じさせ、オフ状態の時に前記制動力を解除するブレーキ装置と、
を備える産業車両であって、
前記荷役制御部は、前記ブレーキ装置が前記オフ状態の時に前記マスト装置のティルト速度が通常速度となり、前記ブレーキ装置が前記オン状態の時に前記ティルト速度が前記通常速度よりも遅い低速度となるように、前記荷役用モータを制御する
ことを特徴とする産業車両。
【請求項2】
前記ブレーキ装置の前記オン状態と前記オフ状態とを検出して検出信号を出力するブレーキセンサを備え、
前記荷役制御部は、前記ブレーキセンサの前記検出信号に基づいて、前記ブレーキ装置が前記オン状態か前記オフ状態かを判断する
ことを特徴とする請求項1に記載の産業車両。
【請求項3】
前記荷役制御部は、前記ティルト速度が前記低速度の場合、前記ブレーキ装置が前記オフ状態となり、かつ前記マスト装置が停止状態となるまで、前記低速度が維持されるように前記荷役用モータを制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の産業車両。
【請求項4】
乗車したオペレータが操作可能に構成されたパネル部を備え、
前記パネル部は、第1速度と前記第1速度よりも遅い第2速度とを、前記オペレータが選択可能に表示させ、
前記荷役制御部は、前記パネル部で選択された前記第1速度または前記第2速度を、前記低速度の上限値に設定する
ことを特徴とする請求項1に記載の産業車両。
【請求項5】
フォークと、
前記フォークを前記マスト装置に沿って昇降させるリフト装置と、
を備え、
前記荷役用モータは、前記リフト装置を駆動させ、
前記荷役制御部は、前記ブレーキ装置が前記オン状態の時は、前記ティルト速度および前記フォークのリフト速度のいずれか遅い方に合わせて前記荷役用モータを制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の産業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォークリフト等の産業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なフォークリフトでは、オペレータがティルトレバーを操作すると、荷役用バルブが開口するとともに、荷役制御部が荷役用インバータを介して荷役用モータを一定の回転速度で回転させる。荷役用モータに接続された荷役用ポンプは、開口した荷役用バルブを経由してティルト装置に作動油を送り出し、ティルト装置はマスト装置を傾動させる。
【0003】
フォークに荷物を積載した状態で、かつフォークが高揚高の場合、通常のティルト速度でマスト装置を傾動させると、車両本体が大きく揺れて荷崩れしたり、転倒したりする危険性がある。これを防ぐために、オペレータは、ティルトレバーの操作量を微調整し、荷役用バルブの開口度合いを調整して作動油の流量を絞ることで、ティルト速度を低速に調整している。
【0004】
ティルトレバーの操作量を微調整することは、熟練したオペレータにとっては可能であるが、不慣れなオペレータにとっては困難である。そこで、従来のフォークリフトでは、フォークが高揚高であることを検出するための揚高センサを別途追加し、揚高センサによって高揚高であることを検出すると、自動的に荷役用モータの回転速度を低速に制限している(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
揚高センサを備える従来のフォークリフトでは、ティルトレバーの操作量を微調整する必要がなくなり、自動的にティルト速度を低速にすることができる。しかしながら、当該フォークリフトでは、別途追加した揚高センサがコストアップにつながること、低揚高ではティルト速度を低速に調整できないこと(すなわち、オペレータが意図的にティルト速度を低速に切換えることができないこと)などの問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その課題とするところは、別途センサを追加することなく、オペレータが意図的にティルト速度を低速に切換えることが可能なフォークリフト等の産業車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る産業車両は、
マスト装置が設けられた車両本体と、
前記マスト装置を前後方向に傾動させるティルト装置と、
前記ティルト装置を駆動させる荷役用モータと、
前記荷役用モータを制御する荷役制御部と、
オン状態の時に前記車両本体に制動力を生じさせ、オフ状態の時に前記制動力を解除するブレーキ装置と、
を備える産業車両であって、
前記荷役制御部は、前記ブレーキ装置が前記オフ状態の時に前記マスト装置のティルト速度が通常速度となり、前記ブレーキ装置が前記オン状態の時に前記ティルト速度が前記通常速度よりも遅い低速度となるように、前記荷役用モータを制御することを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、荷役制御部は、ブレーキ装置がオン状態の時にティルト速度が通常速度よりも遅い低速度となるように荷役用モータを制御するので、別途センサを追加することなく、オペレータはブレーキ装置をオン状態にさせることで意図的にティルト速度を低速に切換えることができる。
【0010】
前記産業車両は、
前記ブレーキ装置の前記オン状態と前記オフ状態とを検出して検出信号を出力するブレーキセンサを備え、
前記荷役制御部は、前記ブレーキセンサの前記検出信号に基づいて、前記ブレーキ装置が前記オン状態か前記オフ状態かを判断するよう構成できる。
【0011】
前記産業車両において、
前記荷役制御部は、前記ティルト速度が前記低速度の場合、前記ブレーキ装置が前記オフ状態となり、かつ前記マスト装置が停止状態となるまで、前記低速度が維持されるように前記荷役用モータを制御するよう構成できる。
【0012】
前記産業車両において、
乗車したオペレータが操作可能に構成されたパネル部を備え、
前記パネル部は、第1速度と前記第1速度よりも遅い第2速度とを、前記オペレータが選択可能に表示させ、
前記荷役制御部は、前記パネル部で選択された前記第1速度または前記第2速度を、前記低速度の上限値に設定するよう構成できる。
【0013】
前記産業車両は、
フォークと、
前記フォークを前記マスト装置に沿って昇降させるリフト装置と、
を備え、
前記荷役用モータは、前記リフト装置を駆動させ、
前記荷役制御部は、前記ブレーキ装置が前記オン状態の時は、前記ティルト速度および前記フォークのリフト速度のいずれか遅い方に合わせて前記荷役用モータを制御するよう構成できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、別途センサを追加することなく、オペレータが意図的にティルト速度を低速に切換えることが可能なフォークリフト等の産業車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係るフォークリフトの側面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るフォークリフトの駆動系および制御系の構成を示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るフォークリフトのティルト速度制御のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る産業車両の実施形態について説明する。
【0017】
図1に、本発明の一実施形態に係るフォークリフト1(本発明の「産業車両」に相当)の側面図を示す。フォークリフト1は、カウンターバランスタイプのバッテリフォークリフトであって、車体フレームを含む車両本体2と、車両本体2の前部に設けられたマスト装置3と、マスト装置3に沿って昇降するフォーク4と、マスト装置3を前後方向に傾動させるティルト装置5と、フォーク4を昇降させるリフト装置6とを備える。
【0018】
フォークリフト1は、車両本体2に内蔵された図示しないバッテリ(例えば、鉛バッテリ)と、運転席7と、運転席7の手前に設けられたステアリング8および各種レバー(前後進レバーおよび荷役用レバー)と、パネル部9とを備える。
【0019】
パネル部9は、オペレータが視認可能に構成された表示部と、オペレータが操作可能に構成された操作部とを含む。表示部は、例えば、液晶ディスプレイで構成され、バッテリの残量や、走行速度等を示す画面を表示させたり、フォークリフト1の各種設定を行う設定画面を表示させたりする。操作部は、複数の操作ボタンを含む。オペレータは、複数の操作ボタンを操作することで、設定画面に表示された各種設定を行うことができる。
【0020】
図2に示すように、フォークリフト1は、ブレーキ装置10と、ブレーキセンサ11と、アクセル装置12と、アクセルセンサ13と、ティルトレバー14と、ティルトセンサ15と、リフトレバー16と、リフトセンサ17と、走行制御部18と、走行用インバータ19と、走行用モータ20と、荷役制御部21と、荷役用インバータ22と、荷役用モータ23と、荷役用ポンプ24と、荷役用バルブ25とを備える。
【0021】
ブレーキ装置10は、運転席7の足元に設けられたブレーキペダルを含み、ブレーキペダルが踏まれた時にオン状態となり、オン状態の時に車両本体2に制動力を生じさせる一方、ブレーキペダルが踏まれていない時にオフ状態となり、オフ状態の時に制動力を解除する。ブレーキセンサ11は、ブレーキ装置10の状態(オン状態/オフ状態)を検出し、当該状態に関するブレーキ操作信号(本発明の「検出信号」に相当)を走行制御部18に出力する。ブレーキセンサ11は、図示しないブレーキランプを点灯させるために元々備えられているものである。
【0022】
アクセル装置12は、運転席7の足元に設けられたアクセルペダルを含み、アクセルペダルが踏まれた時に、操作量(本実施形態では、アクセルペダルの踏み込み量)に応じて車両本体2の走行を加速させる。アクセルセンサ13は、アクセル装置12の操作量を検出し、当該操作量に関するアクセル操作信号を走行制御部18に出力する。
【0023】
ティルトレバー14は、運転席7の手前に設けられてオペレータが操作可能に構成されるとともに、荷役用バルブ25の第1バルブに機械的に接続される。ティルトレバー14が操作されると、荷役用バルブ25の第1バルブが開口する。本実施形態では、オペレータがティルトレバー14を前傾させるとマスト装置3が前方向に傾動(前傾)し、オペレータがティルトレバー14を後傾させるとマスト装置3が後方向に傾動(後傾)する。ティルトレバー14が中立位置の時は、マスト装置3は停止する(傾動しない)。ティルトセンサ15は、ティルトレバー14の傾動角度を検出し、当該傾動角度に関するティルト操作信号を荷役制御部21に出力する。
【0024】
リフトレバー16は、運転席7の手前に設けられてオペレータが操作可能に構成されるとともに、荷役用バルブ25の第2バルブに機械的に接続される。リフトレバー16が操作されると、荷役用バルブ25の第2バルブが開口する。本実施形態では、オペレータがリフトレバー16を前傾させるとフォーク4が下降し、オペレータがリフトレバー16を後傾させるとフォーク4が上昇する。リフトレバー16が中立位置の時は、フォーク4は停止する(昇降しない)。リフトセンサ17は、リフトレバー16の傾動角度を検出し、当該傾動角度に関するリフト操作信号を荷役制御部21に出力する。
【0025】
走行制御部18は、例えば、マイコンで構成される。走行制御部18は、ブレーキセンサ11からブレーキ操作信号を取得すると、ブレーキ操作信号に基づいてブレーキ装置10がオン状態であるか否かを判定し、オン状態の間はブレーキオン信号を荷役制御部21に出力し続ける。また、走行制御部18は、ブレーキ操作信号およびアクセルセンサ13から取得したアクセル操作信号に基づいて、走行用インバータ19を介して走行用モータ20の制御を行う。走行用インバータ19は、走行制御部18の制御下で走行用モータ20を回転させる。車両本体2は、走行用モータ20の回転速度に応じた走行速度で前進または後進する。
【0026】
荷役制御部21は、例えば、マイコンで構成される。荷役制御部21は、走行制御部18から取得したブレーキオン信号、ティルトセンサ15から取得したティルト操作信号、リフトセンサ17から取得したリフト操作信号に基づいて、荷役用インバータ22を介して荷役用モータ23の制御を行う。荷役制御部21は、上記のとおり走行制御部18からブレーキオン信号を取得しているが、ブレーキセンサ11からブレーキ操作信号を直接取得し、ブレーキ操作信号に基づいてブレーキ装置10がオン状態であるか否かを判定してもよい。
【0027】
荷役用インバータ22は、走行制御部18の制御下で荷役用モータ23を回転させる。本実施形態の荷役用インバータ22は、ブレーキ装置10がオフ状態の場合、リフトレバー16が操作された時は荷役用モータ23を約3000[rpm]で回転させ、ティルトレバー14が操作された時は荷役用モータ23を約1500[rpm]で回転させる。一方、ブレーキ装置10がオン状態でティルトレバー14が操作された時、荷役用インバータ22は、荷役用モータ23を約500[rpm]で回転させる。荷役用モータ23の回転速度が約1500[rpm]から約500[rpm]へと約1/3になった場合、マスト装置3の傾動速度(ティルト速度)も約1/3になる。ティルト速度の制御については後述する。
【0028】
荷役用モータ23は、荷役用ポンプ24を介してティルト装置5および/またはリフト装置6を駆動させる。荷役用ポンプ24は、作動油が貯められたタンク(不図示)から、荷役用モータ23の回転速度に応じた量の作動油をティルト装置5の油圧シリンダ(ティルトシリンダ)および/またはリフト装置6の油圧シリンダ(リフトシリンダ)に供給したり、ティルト装置5および/またはリフト装置6の油圧シリンダ内の作動油を上記タンクに戻したりする。
【0029】
荷役用バルブ25は、少なくとも第1バルブおよび第2バルブを含む。第1バルブは、荷役用ポンプ24とティルトシリンダとを接続する油路に設けられ、第2バルブは、荷役用ポンプ24とリフトシリンダとを接続する油路に設けられる。第1バルブが開口し、作動油に応じてティルトシリンダが伸縮することで、マスト装置3が前後方向に傾動する。第2バルブが開口し、作動油に応じてリフトシリンダが伸縮することで、フォーク4がマスト装置3に沿って昇降する。本実施形態では、マスト装置3のティルト速度およびフォーク4の昇降速度(リフト速度)は、荷役用モータ23の回転速度に比例する。
【0030】
図3に、荷役制御部21が行うティルト速度制御のフロー図を示す。
図3では、リフトレバー16は操作されないものとする。
【0031】
荷役制御部21に電源が投入される(バッテリから電源電圧が供給される)と、荷役制御部21はティルト速度制御を開始させる。ティルト速度制御を開始させた荷役制御部21は、ブレーキ装置10がオン状態か否かを判定する(S1)。荷役制御部21は、ブレーキ装置10のブレーキペダルが踏まれている場合、すなわち走行制御部18からブレーキオン信号を取得している場合、ブレーキ装置10がオン状態であると判定する(S1でYES)。
【0032】
ブレーキ装置10がオン状態であると判定した荷役制御部21は、ティルト速度を低速度に設定する(S2)。なお、ティルト速度制御の開始時は、ティルト速度は通常速度に設定されている。
【0033】
ティルト速度を低速度に設定した荷役制御部21は、ティルトセンサ15から取得したティルト操作信号に基づいて、ティルトレバー14が前後傾位置(前傾位置または後傾位置)か否かを判定する(S3)。
【0034】
ティルトレバー14が前傾位置または後傾位置の場合、すなわちティルトレバー14が中立位置以外の場合(S3でYES)、荷役制御部21は、荷役用モータ23を駆動させる(S4)。具体的には、荷役制御部21は、荷役用インバータ22を介して荷役用モータ23を約500[rpm]で回転させる。その結果、ティルト速度は通常速度の約1/3の低速度となり、マスト装置3は低速度で傾動する。
【0035】
一方、ティルトレバー14が中立位置の場合(S3でNO)、荷役制御部21は、荷役用モータ23を停止させたままにする(S5)。この場合、マスト装置3は、傾動することなく停止したままである。例えば、マスト装置3の前傾中にティルトレバー14を前傾位置から中立位置に戻すと、マスト装置3は前傾状態のまま停止する。前傾状態のまま停止したマスト装置3を中立位置(路面に対して垂直になる位置)に戻すには、マスト装置3が中立位置に戻るまでティルトレバー14を後傾させる。
【0036】
荷役制御部21は、ステップS4またはステップS5の状態の後、ステップS1の状態に移行する。ステップS1の状態に移行した荷役制御部21は、ブレーキ装置10がオン状態か否かを判定する(S1)。ブレーキ装置10のブレーキペダルが踏まれていない場合、すなわち走行制御部18からブレーキオン信号を取得していない場合、荷役制御部21は、ブレーキ装置10がオフ状態であると判定する(S1でNO)。
【0037】
ブレーキ装置10がオフ状態であると判定した荷役制御部21は、ティルトセンサ15から取得したティルト操作信号に基づいて、ティルトレバー14が中立位置か否かを判定する(S6)。ティルトレバー14が中立位置の場合(S6でYES)、荷役制御部21は、ティルト速度を通常速度に戻す処理を行い(S7)、ステップS3以降の処理を行う。
【0038】
ティルト速度を通常速度に戻す処理を行った場合、ステップS4に移行した荷役制御部21は、荷役用インバータ22を介して荷役用モータ23を約1500[rpm]で回転させる。その結果、ティルト速度は通常速度となり、マスト装置3は通常速度で傾動する。
【0039】
一方、ティルトレバー14が前傾位置または後傾位置の場合(S6でNO)、荷役制御部21は、ティルト速度を通常速度に戻す処理を行うことなく、ステップS3以降の処理を行う。この場合、ステップS4に移行した荷役制御部21は、荷役用モータ23を約500[rpm]で回転させる。その結果、ブレーキ装置10がオフ状態であっても、ティルト速度は低速度となり、マスト装置3は低速度で傾動する。
【0040】
なお、ティルト速度が低速度に設定されている時に、ティルトレバー14が操作されることなくリフトレバー16が操作された場合、本実施形態では、リフト速度は低速度に制限されない。この場合、荷役制御部21は、荷役用インバータ22を介して荷役用モータ23を約3000[rpm]で回転させる。その結果、リフト速度は通常速度となり、フォーク4は通常速度で昇降する。
【0041】
上記のとおり、本実施形態に係るフォークリフト1では、荷役制御部21は、ブレーキ装置10がオン状態の時にティルト速度が通常速度よりも遅い低速度となるように、荷役用インバータ22を介して荷役用モータ23を制御する。したがって、本実施形態に係るフォークリフト1によれば、別途センサ(例えば、揚高センサ)を追加することなく、オペレータはブレーキ装置10がオン状態にさせることで意図的にティルト速度を低速に切換えることができる。
【0042】
また、本実施形態に係るフォークリフト1では、荷役制御部21は、ティルト速度が低速度の場合、ブレーキ装置10がオフ状態となり(
図3のS1でNO)、かつティルトレバーが中立位置に戻るまで(
図3のS6でYES)、低速度が維持されるように荷役用インバータ22を介して荷役用モータ23を制御する。したがって、本実施形態に係るフォークリフト1によれば、マスト装置3が停止状態となるまで低速度が維持されるので、マスト装置3の傾動中、ブレーキ装置10がオフ状態になった瞬間にティルト速度が急に加速してしまうのを回避することができる。なお、ステップS6では、ティルト操作信号に基づいてティルトレバー14が中立位置か否かを判定しているが、別の方法でマスト装置3が傾動停止中か否かを判定してもよい。
【0043】
以上、本発明に係る産業車両の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0044】
本発明に係る産業車両は、マスト装置が設けられた車両本体と、マスト装置を前後方向に傾動させるティルト装置と、ティルト装置を駆動させる荷役用モータと、荷役用モータを制御する荷役制御部と、オン状態の時に車両本体に制動力を生じさせ、オフ状態の時に制動力を解除するブレーキ装置と、を備える産業車両であって、荷役制御部は、ブレーキ装置がオフ状態の時にティルト速度が通常速度となり、ブレーキ装置がオン状態の時にティルト速度が通常速度よりも遅い低速度となるように、荷役用モータを制御するのであれば、適宜構成を変更できる。
【0045】
上記実施形態において、パネル部9は、ティルト速度制御においてティルト速度(低速度)の上限値を設定する設定画面を表示させてもよい。例えば、パネル部9は、低速度の上限値として、第1速度と当該第1速度よりも遅い第2速度(例えば、第1速度の1/2の速度)とを、オペレータが選択できるように表示させてもよい。荷役制御部21は、パネル部9で選択された第1速度または第2速度を低速度の上限値に設定し、第1速度を上限値に設定した場合、例えば、荷役用モータ23を約500[rpm]で回転させる一方、第2速度を上限値に設定した場合、例えば、荷役用モータ23を約250[rpm]で回転させてもよい。
【0046】
上記実施形態では、ブレーキ装置10がオン状態の時にティルト速度のみ低速度に制限しているが、ティルト速度に加えてリフト速度も低速度に制限してもよいし、その他の荷役速度(例えば、リーチ速度)も低速度に制限してもよい。
【0047】
ティルトレバー14の操作とリフトレバー16の操作が同時に行われた場合、荷役制御部21は、安全のためにティルト速度およびリフト速度のいずれか遅い方の速度に合わせて荷役用モータ23を回転させることが好ましい。
【0048】
本発明の産業車両について、上記実施形態ではカウンターバランスタイプのバッテリフォークリフトで説明したが、リーチタイプのバッテリフォークリフトでもよいし、その他のタイプのフォークリフトでもよい。リーチタイプのフォークリフトの場合、フットペダルがアクセル装置およびブレーキ装置に相当し、フットペダルが踏まれていない場合に、ブレーキ装置がオン状態になる。
【0049】
また、本発明の産業車両は、フォークリフト以外のものでもよく、例えば、搬送車、建設機械、または農業機械でもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 フォークリフト
2 車両本体
3 マスト装置
4 フォーク
5 ティルト装置
6 リフト装置
7 運転席
8 ステアリング
9 パネル部
10 ブレーキ装置
11 ブレーキセンサ
12 アクセル装置
13 アクセルセンサ
14 ティルトレバー
15 ティルトセンサ
16 リフトレバー
17 リフトセンサ
18 走行制御部
19 走行用インバータ
20 走行用モータ
21 荷役制御部
22 荷役用インバータ
23 荷役用モータ
24 荷役用ポンプ
25 荷役用バルブ