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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】仮想の再現印刷
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/00 20060101AFI20240501BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240501BHJP
   B41F 33/00 20060101ALN20240501BHJP
【FI】
H04N1/00 002A
B41J2/01
B41J2/01 201
B41J2/01 205
B41J2/01 401
B41J2/01 451
B41F33/00 246
B41F33/00 280
【請求項の数】 9
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018233443
(22)【出願日】2018-12-13
(65)【公開番号】P2019106707
(43)【公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-09-27
【審判番号】
【審判請求日】2023-01-04
(31)【優先権主張番号】10 2017 222 728.1
(32)【優先日】2017-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390009232
【氏名又は名称】ハイデルベルガー ドルツクマシーネン アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Heidelberger Druckmaschinen AG
【住所又は居所原語表記】Kurfuersten-Anlage 52-60, D-69115 Heidelberg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー クナーベ
(72)【発明者】
【氏名】マンフレート シュナイダー
【合議体】
【審判長】畑中 高行
【審判官】板垣 有紀
【審判官】高橋 宣博
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-64979(JP,A)
【文献】特開2011-119904(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/00
B41J 2/01
B41F 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
計算機(6)による、画像検出システムを備えた印刷機(7)の自動較正のための方法であって、前記方法は、
・所定の偏差を伴う、少なくとも1つの、印刷が施されたモデル基材(9)を前記印刷機(7)に差し込むステップと、
・前記画像検出システムによって、前記印刷が施されたモデル基材(9)のデジタル画像を作成するステップと、
・前記計算機(6)によって、印刷の質を最適化するために、前記印刷機(7)のコンフィギュレーションパラメータ(17)に対する、前記所定の偏差を含んだ実際補償値(15)を計算するステップと、
・作成された前記実際補償値(15)と、前記印刷が施されたモデル基材(9)の前記所定の偏差から既知の目標補償値(18)と、を比較するステップと、
・前記計算機(6)によって前記比較を評価することによって前記印刷機(7)の機能性を検査するステップおよび/または前記計算機(6)によって評価された前記比較を用いて前記印刷機(7)を較正するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
少なくとも1つの、前記印刷が施されたモデル基材(9)は、構造が同じ印刷機において事前に印刷されている、または、プルーフプロッター上で、少なくとも、前記印刷機(7)における解像度と同じ解像度で作成されたものである、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記所定の偏差を伴う、少なくとも1つの、印刷が施されたモデル基材(9)の差し込みを伴う第1の試行に対して、第2の試行において、前記所定の偏差を伴う、少なくとも1つのデジタルテスト画像(13)が前記画像検出システムに供給され、前記デジタルテスト画像に対して、前記計算機(6)によって、印刷の質の最適化のために、前記印刷機(7)のコンフィギュレーションパラメータ(17)に対する、前記所定の偏差を含んだ前記第2の試行の実際補償値(16)が計算され、前記第2の試行の前記実際補償値が、前記第1の試行の前記実際補償値(15)および前記目標補償値(18)と比較され、これによって、データ作成部およびデータ処理部の機能性が前記画像検出システムによって、前記印刷機(7)の印刷ユニット(4,5)までのデータ区間および補償アルゴリズムにわたって評価される、
請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
印刷動作を伴わずに、前記第1の試行の前記実際補償値と前記第2の試行の前記実際補償値とを比較することによって、ハードウェア問題、ならびに配線エラー、アドレッシングエラー、ファームウェアエラーおよびソフトウェアエラーに関する前記印刷機(7)の検査が実行される、
請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記ハードウェア問題は、印刷基材搬送ならびにカメラアライメントまたは前記画像検出システムのレンズエラーを含んでいる、
請求項4記載の方法。
【請求項6】
異なる密度プロファイルおよび/または補償プロファイルを有する、複数の前記印刷が施されたモデル基材(9)が差し込まれ、これによって、平均化されたテスト結果を作成することができる、
請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記印刷機(7)は、インクジェット枚葉印刷機(7)であり、前記印刷が施されたモデル基材(9)は、モデル枚葉紙(9)である、
請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記インクジェット枚葉印刷機(7)の前記コンフィギュレーションパラメータ(17)は、前記インクジェット枚葉印刷機(7)の色密度および色値を制御するためのパラメータならびに枚葉紙搬送を制御するためのパラメータおよび故障している印刷ノズルに関する情報を含んでいる、
請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記インクジェット枚葉印刷機(7)をさらに較正するために、印刷ヘッドデータ(14)がシミュレートされ、ここでは正常動作からの所定の偏差を伴う仮想の印刷ヘッドが使用される、
請求項7または8記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計算機による、画像検出システムを備えた印刷機の自動較正のための方法に関する。
【0002】
本発明はテスト自動化の技術領域に属する。
【背景技術】
【0003】
従来のオフセット印刷機は、実務においては、個々のコンポーネントの製造後の組み立て後に、自身の完全な機能性に関して検査される。これは通常、テスト印刷が実行されることによって行われる。このテスト印刷は、該当する印刷機の機能のできるだけ幅の広い範囲をカバーする。したがって該当する印刷機において発見されたエラーを、製造者のもとにあるうちに、生産中に除去することができる。その後、印刷機はリリースされ、相応する顧客に引き渡される。
【0004】
匹敵するプロセスは、インクジェット印刷機においては、目下、不可能である。その理由は、再現印刷(Abdrucken)とも称されるこのような機能テストと、印刷所における顧客の側でのインクジェット印刷機の組み立ておよび始動との間に、通常は数日に及ぶ、比較的長い期間が存在するからである。このような時間の間に、インクジェット印刷機の相応する印刷ヘッドの収納によっては、印刷ノズル内に残っていたインクが乾燥し、これがインクジェット印刷機の機能性に対する大きなリスクとなってしまうことがある。さらに、非接触印刷プロセスであるインクジェット印刷では、オフセット印刷機の場合よりも、インクジェット印刷機の機械的な機能性に関するエラーの原因が格段に少ないので、製造者および顧客が印刷機の製造後の最終的な機能テストを省く気が、オフセット印刷の場合よりも格段に大きい。さらにこれに加えて、オフセット印刷機での再現印刷の際にテストされる典型的なオフセット印刷エラー画像、例えばダブリは、構造様式によって、デジタルインクジェット印刷機においては全く発生し得ない。さらに必要なアライメントに関する最適化ステップ、例えばホイールプッシュ(Raederschieben)は、事前に再現印刷が実行されている場合にのみ有意義に行われ得る。インクジェット印刷の際には、上述した理由から、これは可能ではないので、このことは、インクジェット印刷機において再現印刷が省かれる別の理由となる。インクジェット印刷機の機能性は、いずれにせよ、実質的に、印刷ヘッドおよび制御ソフトウェアの状態を介して、より詳細には例えば故障している印刷ノズルの検出および補償のための特定のソフトウェアアルゴリズムを介して特定される。
【0005】
このような機能をテストするために、従来技術においてはこれまで、再現印刷、ひいてはインクジェット印刷機における、上述したコンポーネントの機能性に関するテストが、印刷所での機械の組み立て後にはじめて、顧客のもとで実行されるという措置が取られてきた。しかしこれは、インクジェット印刷機の、生じている可能性のある損傷または問題が、顧客のもとではじめて発見され得る、という欠点を有している。ここでこれが、現場で除去することができない問題である場合には、少なくとも、インクジェット印刷機の該当するコンポーネントが交換されなければならない。これは、付加的な手間と費用、ひいては製造者のイメージダウンと結び付いている。したがって、上述した全ての欠点にもかかわらず、インクジェット印刷機に対する再現印刷を、生産中に製造業者のもとで実行するのは有利であろう。このために、例えば、インクジェット印刷機のインク供給システムの代わりに、ダミーユニットを構築することができる。このダミーユニットによって、次に相応に、テストされるべきインクジェット印刷機に対して再現印刷が実行される。しかしダミーユニットの特性は、元来使用されるインク供給ユニットの特性とは異なっているので、このようにして得られたテスト結果はそれほど有益ではない。インクジェット印刷機の元来のインク供給システムを使用することも可能ではあるが、この場合には、このインク供給システムは再現印刷の後に空にされなければならず、さらに、印刷ノズル内に残っている水分を含んだインクの乾燥を阻止するために、乾燥しない別の液体と交換されなければならない。しかし実務における経験から、このような処置も、印刷ノズルにおけるインクの乾燥を完全には阻止することができないことが判明している。インクジェット印刷機における印刷ヘッドの損傷に対する最終的な安全性は、この再現印刷のプロセスに対して、システム内にインクを入れる必要がない場合にのみ保証される。
【0006】
したがってインクを用いないこのようなプロセスは、一種のシミュレーションによってのみ行うことが可能である。ここで従来技術は、独国特許出願公開第102004040093号明細書(DE102004040093A1)および独国特許出願公開第102005015746号明細書(DE102005015746A1)において、印刷機シミュレーターを開示している。インクジェット印刷機特有にではなく、印刷機全般に対して公開されているこのようなシミュレーターは、ここでは、印刷工の教育におけるトレーニングを念頭に置いている。このシミュレーターは、印刷機のオペレーションセンターに組み込まれており、データバンクを有しており、このデータバンクによって、特定の入力時の印刷機の行動がシミュレートされ、オペレーションセンターに出力され得る。印刷機のオペレーションセンターへのこの組み込みは、ここで、見習い工ができるだけ現実に即して教育されることを保証する。しかしこのシミュレーターは、この後ろにある印刷機にアクセスすることができず、実際の印刷機の実際の印刷プロセスまたはその他の駆動制御も全く実行せず、自身の理論的な値が格納されている自身の内在するデータバンクだけを用いる。後進の印刷工の教育に対してはこのようなシステムは完全に充分であるが、実際のデータが処理されないので、このようなシミュレーターは、実際のインクジェット印刷機の機能性のテストに対して有益でない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって本発明の課題は、完全な印刷プロセスを実行することなく、印刷機の機能性を保証する、印刷機の自動較正のための方法を開示することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題は、計算機による、画像検出システムを備えた印刷機の自動較正のための方法によって解決される。この方法は、所定の偏差を伴う、少なくとも1つの、印刷が施されたモデル基材を印刷機に差し込むステップと、画像検出システムによって、印刷が施されたモデル基材のデジタル画像を作成するステップと、計算機によって、印刷の質を最適化するために、印刷機のコンフィギュレーションパラメータに対する、所定の偏差を含んだ実際補償値を計算するステップと、作成された実際補償値と、印刷が施されたモデル基材の所定の偏差から既知の目標補償値と、を比較するステップと、計算機によってこの比較を評価することによって印刷機の機能性を検査するステップおよび/または計算機によって評価された比較を用いて印刷機を較正するステップと、を含んでいる。
【0009】
本発明の元来の核心部分は、実際に印刷が施されたモデル基材を印刷機に差し込み、これによって実際の印刷プロセスをシミュレートすることである。本発明による方法では、実際の印刷を行うことはできないので、印刷ヘッドは非活性化され、印刷が施されたモデル基材だけが、印刷機に差し込まれる。その後、そうでない場合には実際の印刷プロセスにおいて印刷の質が検査される画像検出システムによって、印刷が施されたモデル基材が検出および評価される。印刷が施されたモデル基材は、印刷の質ならびに印刷機のエラー機能をシミュレートするその他のパラメータに関する所定の偏差を含んでいるので、これによって、画像検出システムを介して、印刷が施されたモデル基材上のこのような所定の偏差を考慮した、印刷機のコンフィギュレーションパラメータに対する実際補償値のセットが計算される。これらの実際補償値は、所定の偏差を伴う、印刷が施されたモデル基材によってシミュレートされた、印刷機におけるエラーを相応に補償するためのものである。印刷が施されたモデル基材上の偏差は決められており、既知であるので、論理的に、当然ながら、理想的な補償値に相当し、シミュレートされたエラーをできるだけ良好に補償することができる目標補償値も既知である。作成された実際補償値を、既知の目標補償値と比較することによって、印刷機が、印刷機構もしくは印刷ヘッドの後の自身の生産経過において正しく動作しているか否かが検査される。したがって、例えば印刷機における基材搬送部の機能性が検査され、これとならんで、画像検出システムの機能を含めた印刷機の全体的な色制御が検査される。例えば、作成された実際補償値と既知の目標補償値との間の差から得られる、印刷機の状態、すなわち機能性に関する認識に基づいて、印刷機は、できるだけ正確な機能性のために相応に較正される。これは、生じている可能性のあるエラー機能が迅速に発見されることによって行われる。
【0010】
この方法の有利な発展形態は、属する従属請求項ならびに属する図面を用いた説明から明らかになる。
【0011】
本発明による方法の有利な発展形態では、少なくとも1つの、印刷が施されたモデル基材は、構造が同じ印刷機において事前に印刷されている、または別の印刷機器、例えばプルーフプロッター上で、少なくとも、上記の印刷機における解像度と同じ解像度で作成されたものである。ここで、印刷が施されたモデル基材を構造が同じ印刷機において作成するか、別の印刷機、例えばプルーフプロッター上で、印刷される画像の、相応に極めて高い解像度で作成するのかは、設けられているハードウェアに依るが、特に、どのようなテストシナリオを本発明による方法において実行したいのかに依る。できるだけ実際の再現印刷に近い結果を供給するであろう、できるだけ実際に即したテストのためには、特に、構造が同じ類似機械における印刷が適しているが、特定のパラメータが例えば色制御に関してできるだけ正確にテストされるべき場合または印刷ノズルが故障している可能性があるインクジェット印刷機の場合には、印刷が施されたモデル基材を、相応する高い画像解像度を有するプルーフプロッターにおいて作成することも合意的であり得る。
【0012】
本発明による方法の別の有利な発展形態では、所定の偏差を伴う、少なくとも1つの、印刷が施されたモデル基材の差し込みを伴う第1の試行に対して付加的に、第2の試行において、少なくとも1つのデジタルテスト画像が画像検出システムに供給され、このデジタルテスト画像に対して、計算機によって、印刷の質の最適化のために、印刷機のコンフィギュレーションパラメータに対する、所定の偏差を含んだ実際補償値が計算され、この実際補償値が、第1の試行の実際補償値および目標補償値と比較され、これによって、データ作成部およびデータ処理部の機能性が画像検出システムによって、印刷機の印刷ユニットまでのデータ区間および補償アルゴリズムにわたって評価される。画像検出システムに差し込まれたデジタルテスト画像によるこのような第2の試行は、印刷機構もしくは印刷ヘッドの後にテストされる、印刷機の生産区間をより正確に精査するという意義を有している。このような第2の試行が、生産区間においてようやく、すなわち画像検出システムによる画像撮影の後にようやく投入されることによって、この第2の試行において、印刷が施されたモデル基材の画像検出と、実際補償値の計算との間に位置する領域が調べられる。モデル基材とデジタルテスト画像が同じである限り、基材搬送部における、生じている可能性のあるエラーならびに画像検出システム、例えばプロセス区間において画像検出システムにおける画像データの処理の前に位置するカメラにおけるエラーが、ここで目的に即して求められる。このために、デジタルテスト画像に基づいて作成された、第2の試行の作成された実際補償値が、実際に機械に差し込まれた、印刷が施されたモデル基材に基づいて求められた、第1の試行の実際補償値と比較される。これらが異なっている場合には、ここから、印刷機における第1の試行の開始と、印刷機における第2の試行の開始との間の印刷機の生産区間において、エラーが存在しているであろうことが推測される。第1の試行および第2の試行において、2つの作成された実際補償値をさらに、目標補償値と比較することによって、発生しているエラーの、テストされた生産プロセスにおける、印刷機内でのその発生箇所を正確に突き止めることができる。これは特にインクジェット印刷機において有利である。なぜなら、上述したように、印刷の質は実質的に、印刷ヘッドの状態に依存するが、特に、ソフトウェアおよびソフトウェアの種々の計算アルゴリズムにも依存するからである。デジタルテスト画像によるこのような第2の試行だけが行われ、印刷が施されたモデル基材による第1の試行が行われないことも可能である。このような場合には、実際補償値と目標補償値を比較することによって、印刷が施されたモデル基材の画像検出と、実際補償値の計算との間に位置する領域が調べられ、モデル基材の差し込みを省くことができる。しかしこのような場合には、プロセス区間のどの部分においてエラーが存在しているのかは求められず、画像検出システムならびに基材搬送部の作用を検査することができない。
【0013】
本発明による方法の別の有利な発展形態では、印刷動作を伴わずに、第1の試行と第2の試行を比較することによって、ハードウェア問題、ならびに配線エラー、アドレッシングエラー、ファームウェアエラーおよびソフトウェアエラーに関する印刷機の検査が実行される。実際に印刷が施されたモデル基材による第1の試行と、デジタルテスト画像の供給による第2の試行との間でテストされる生産区間においては、特にハードウェア問題がテストされる。これらは、例えば、基材の搬送ならびに、特にカメラもしくはカメラの照明等に関する画像検出システムの状態に関する。付加的に、第1の試行と第2の試行を比較することによって、配線エラー、アドレッシングエラーおよびソフトウェアエラーを発見することができる。これらのエラーは、印刷機の生産区間上の第1の試行と第2の試行の間のこの部分における相応するコンポーネントのエラーを有する機能に対して責任を有している。
【0014】
本発明による方法の別の有利な発展形態では、ハードウェア問題は印刷基材搬送ならびにカメラアライメントまたは画像検出システムのレンズエラーを含んでいる。これらのハードウェア問題は、特に、基材の搬送、ならびに特にカメラもしくはカメラの照明、カメラのレンズエラー等に関する画像検出システムの状態に関する。
【0015】
本発明による方法の別の有利な発展形態では、異なる密度プロファイルおよび/または補償プロファイルを有する、印刷が施された複数のモデル基材が差し込まれ、これによって、平均化されたテスト結果を作成することができる。できるだけ多くのテストシナリオをカバーすることを可能にするために、ならびに保証されたテスト結果も得るために、一方では、異なる印刷画像を有する、複数の異なる、印刷が施されたモデル基材を第1の試行において差し込むことが推奨され、他方では異なる密度プロファイルおよび補償プロファイルを有している複数の同じ印刷画像を第1の試行において差し込むことが推奨される。これによって、平均化されたテスト結果が作成され、これによって同様に、個々に差し込まれる、印刷が施されたモデル基材の場合と比べて、格段に改善された正確なテスト結果を得ることができる。
【0016】
本発明による方法の別の有利な発展形態では、印刷機は、インクジェット枚葉印刷機であり、印刷が施されたモデル基材はモデル枚葉紙である。本発明による方法は当然ながら、オフセット印刷機および輪転印刷機にも使用可能であるが、冒頭部分において既に説明した、再現印刷に関するインクジェット印刷機での特有の要求に基づいて、本発明による方法を特に、インクジェット枚葉印刷機に使用することが推奨される。ここで、印刷が施されたモデル基材は論理的に、モデル枚葉紙に相当する。
【0017】
本発明による方法の別の有利な発展形態では、インクジェット枚葉印刷機のコンフィギュレーションパラメータは、インクジェット枚葉印刷機を色制御するためのパラメータ、特に色密度および色値を含んでおり、ならびに枚葉紙搬送を制御するためのパラメータ、および故障している印刷ノズルに関する情報を含んでいる。特にテストされるべき、インクジェット枚葉印刷機のコンフィギュレーションパラメータは、ここでは、上述したように、特に、インクジェット枚葉印刷機を色制御するためのパラメータであり、これは特に、色値を有する色密度、ならびに枚葉紙搬送を制御するためのコンフィギュレーションパラメータ、特に故障している印刷ノズルに関する情報でもある。印刷が施されたモデル枚葉紙が、例えば実際に故障している印刷ノズルの画像アーチファクトに相当する画像アーチファクトを含んでいることによって、これは検査可能である。印刷が施されたモデル枚葉紙が、偏差している色値を有する画像領域を含んでいることによって、色制御は、極めて容易にテストされる。エラーを有する枚葉紙搬送は、印刷が施されたモデル枚葉紙上で多くのアプローチによってシミュレートされ、例えば、印刷が施されたモデル枚葉紙の画像要素の幾何学形状的に偏差している位置によって、ならびに画像要素の相応する歪みまたはひねりによってシミュレートされる。
【0018】
本発明による方法の別の有利な発展形態では、インクジェット枚葉印刷機をさらに較正するために、印刷ヘッドデータがシミュレートされ、ここでは、正常動作からの所定の偏差を伴う仮想の印刷ヘッドが使用される。インクジェット印刷機の作用に対して極めて重要な印刷ヘッドも、相応に、仮想の再現印刷において一緒にテストすることを可能にするために、正常動作からの所定の偏差を伴う仮想の印刷ヘッドが、差し込まれた印刷ヘッドデータを介してシミュレートされ得る。このようなシミュレートされた印刷ヘッドデータは、異なるアプローチを介して、本発明による方法に導入可能である。例えば、印刷が施されたモデル枚葉紙が、故障している印刷ノズルのアーチファクトだけを含んでいるのではなく、例えば、正しく機能していない印刷ヘッドによって生じ得るその他のエラーも含んでいることが可能である。これは例えば、誤ったインク滴サイズ、幾何学形状的に偏差を伴って印刷する印刷ノズル、偏差を伴うインク滴サイズの特例である、過度に薄くまたは過度に濃く印刷する印刷ノズル、誤って配向された印刷ヘッド等である。これらのシミュレートされた印刷ヘッドエラーをここで、実際に印刷が施されたモデル枚葉上でシミュレートすることも、第2の試行のデジタルテスト画像においてシミュレートすることもできる。ここで後者の場合には、実際の印刷ヘッドによって印刷が施されたエラー枚葉紙に基づかない、純粋に理論的に作成されたエラーデータまたはテストデータ、テストパターン、テストエラーも導入することができる。差し込まれた印刷ヘッドデータの形態の仮想印刷ヘッドは、ここで、デジタル化されたもしくはデジタルの印刷画像データの評価にも用いられ、実際補償値と目標補償値との間の比較を実行する計算機にとって、当然ながら、少なくとも目標補償値に関して、エラーを伴って印刷する仮想印刷ヘッドがどのように印刷画像に作用するのかが既知であるはずである。
【0019】
本発明自体ならびに構造的かつ/または機能的に有利な本発明の発展形態を以降で、属する図面を参照して、少なくとも1つの有利な実施例に基づいて、より詳細に説明する。図面では相応する要素に、それぞれ同じ参照番号が付けられている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】インクジェット枚葉印刷機の例
図2】インクジェット枚葉印刷機の仮想の再現印刷に対する特別な適用ケース
図3】本発明による方法の概略的な流れ
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明による方法の有利な実施形態の適用領域は、インクジェット印刷機7である。このような印刷機7の基本的な構造の例が、図1に示されている。このような印刷機7は、印刷ヘッド5による印刷が行われる印刷機構4内へ印刷基材2を供給するためのフィーダ1から、デリバリ3までである。ここでこれは、枚葉インクジェット印刷機7であり、これは、制御計算機6によってコントロールされる。
【0022】
このようなインクジェット枚葉印刷機7を組み立てた際もしくは組み立てた後に、構築されたばかりのインクジェット枚葉印刷機7の較正による、発見されたエラーの除去を含めた完全な機能テストを行うことが望まれている。このような適用ケースは、有利な実施形態において、図2に開示されている。これはオフセット印刷機の場合のように、実際の再現印刷を介して実行することができないので、使用者8が、本発明による方法をトリガすることによって行われる。この方法では、モデル枚葉紙2ならびにデジタル画像データ13がテストされ、特別な場合として、印刷ヘッド5がシミュレートされる。デジタル画像データ13はここで、印刷前段階10を介して供給される、もしくはテスト画像として存在している。このテスト画像は、印刷前段階10によって、このような仮想の再現印刷のために特別に作成されたものである。印刷が施されたモデル枚葉紙9は、構造が同じテスト印刷機12によってまたはプルーフプロッター12によって作成される。印刷ヘッド5のシミュレーションは、データバンク11内に格納されている印刷ヘッドデータによって行われる。自身の有利な発展形態における本発明による方法の流れは、図3に示されている。まずはここで、印刷が施されたモデル枚葉紙2が、印刷機7に差し込まれ、画像検出システムによって検出され、このようにして作成された、印刷が施されたモデル基材のデジタル画像データが画像検出システムにおいて評価される。次のステップでは、計算機6によって、デジタル画像データ13が、枚葉インクジェット印刷機7に供給され、詳細には直接的に、画像検出システムに供給される。この画像検出システムは次に同様に、このデジタル画像データ13を評価する。次のステップでは、インクジェット印刷ヘッド5がシミュレートされる。このようなステップは、特に有利な実施形態において、印刷が施されたモデル枚葉紙9もしくはデジタル画像データ13の差し込みおよびテストの、最初の2つのステップに組み込まれていてもよい。印刷が施されたモデル枚葉紙9、デジタル画像データ13ならびにシミュレートされたインクジェット印刷ヘッド14の作成された評価結果によって、次に、印刷が施されたモデル枚葉紙9、デジタル画像データ13ならびにシミュレートされたインクジェット印刷ヘッド14が有している所定の偏差に対する実際補償値15、16が計算される。これは、枚葉インクジェット印刷機7の制御計算機6によって実行されてよい。しかし有利な実施形態では、画像検出システムの評価計算機によってこれが実行される。別の実施形態では、この計算は、別の外部の計算機によっても実行可能である。次のステップでは、この計算された実際補償値15、16が、既知の目標補償値18と比較される。この目標補償値18は、差し込まれたデータ9、13、14の既知の所定の偏差に基づいて割り当てられた、このような所定の偏差に対する、理想的な補償に相当する。次に、これらの3つの異なる補償値15、16、18、すなわち目標補償値18、印刷が施されたモデル枚葉紙に対する実際補償値15、デジタル画像データに対する実際補償値16、および別個に存在する場合には、シミュレートされたインクジェット印刷ヘッドに対する実際補償値が相互に比較される。このような比較の結果に基づいて、次に、テストされるべき枚葉インクジェット印刷機7の相応する機能エラーが求められる。この求められた機能エラーに対して、次に、相応するコンフィギュレーションデータ17が作成され、これによって、さらなるステップにおいて、枚葉インクジェット印刷機7が較正される。
【符号の説明】
【0023】
1 フィーダ
2 印刷基材
3 デリバリ
4 インクジェット印刷機構
5 インクジェット印刷ヘッド
6 計算機
7 枚葉インクジェット印刷機
8 使用者
9 所定の偏差を伴うテストモデル枚葉紙
10 印刷前段階システム
11 仮想の印刷ヘッドデータが格納されているデータバンク
12 プルーフプロッター/テスト印刷機
13 所定の偏差を伴うデジタルテスト画像データ
14 所定の偏差を伴う仮想の/シミュレートされた印刷ヘッドデータ
15 テストモデル枚葉紙に対する実際補償値
16 デジタルテスト画像データに対する実際補償値
17 較正のためのコンフィギュレーションデータ
18 理想的な目標補償値
図1
図2
図3