(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
E02F 3/32 20060101AFI20240501BHJP
【FI】
E02F3/32 B
(21)【出願番号】P 2018527823
(86)(22)【出願日】2018-03-27
(86)【国際出願番号】 JP2018012501
(87)【国際公開番号】W WO2019186710
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2021-02-01
【審判番号】
【審判請求日】2022-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 孝太郎
(72)【発明者】
【氏名】後藤 雄一朗
【合議体】
【審判長】住田 秀弘
【審判官】古屋野 浩志
【審判官】土屋 真理子
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-246489(JP,A)
【文献】特開2007-16417(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 3/32
E02F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
旋回軸を中心に旋回可能な旋回体と、
前記旋回体の前部に取り付けられたスイングピンに連結されるスイングブラケットを有し、前記旋回軸と平行なスイング軸を中心に揺動可能な作業機と、
前記スイングブラケットに連結されるロッドを有するスイングシリンダと、
前記旋回体に配置されるシートと、を備え、
前記スイングブラケットは、前記スイングピンの周囲に配置されるブラケット本体と、前記ブラケット本体から左に突出するスイングシリンダブラケットとを含み、
前記スイングシリンダのシリンダから外側に突出する前記ロッドの先端部は、スイングシリンダトップピンを介して前記スイングシリンダブラケットに連結され、
前記旋回軸と直交する水平面内において前後軸及び前後軸と直交する左右軸が前記旋回体に規定され、
前記シートの中心を通り前記前後軸と平行なシート中心線は、前記旋回軸を通り前記前後軸と平行な車体中心線よりも左に配置され、
前記スイング軸は、前記車体中心線よりも右に配置され、
前記シリンダから外側に突出する前記ロッドの
先端部及び前記スイングシリンダトップピンは、前記シート中心線と一致する、
作業車両。
【請求項2】
前記作業機は、前記スイングブラケットに連結されるブームを有し、
前記スイングシリンダは、前記ブームよりも左に配置される、
請求項
1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記旋回体の前部に取り付けられる前照灯を備え、
前記前照灯は、前記スイングブラケットよりも左に配置される、
請求項1
又は請求項
2に記載の作業車両。
【請求項4】
前記旋回体は、エンジンを有し、
前記シートは、前記エンジンの上方に配置される、
請求項1から請求項
3のいずれか一項に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
作業車両に係る技術分野において、特許文献1に開示されているような、スイングシリンダを備える油圧ショベルが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スイングシリンダにより作業機を揺動させるとき、運転者はスイングシリンダやスイングシリンダブラケットの状態を目視したいという要求がある。運転者がスイングシリンダやスイングシリンダブラケットの状態を目視しながら作業を実施することにより、作業性の向上が図られる。
【0005】
本発明の態様は、スイングシリンダを備える作業車両の作業性の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様に従えば、旋回軸を中心に旋回可能な旋回体と、前記旋回体の前部に取り付けられたスイングピンに連結されるスイングブラケットを有し、前記旋回軸と平行なスイング軸を中心に揺動可能な作業機と、前記スイングブラケットに連結されるロッドを有するスイングシリンダと、前記旋回体に配置されるシートと、を備え、前記旋回軸と直交する水平面内において前後軸及び前後軸と直交する左右軸が前記旋回体に規定され、前記シートの中心を通り前記前後軸と平行なシート中心線は、前記旋回軸を通り前記前後軸と平行な車体中心線よりも左に配置され、前記スイング軸は、前記車体中心線よりも右に配置され、前記ロッドの少なくとも一部は、前記シート中心線と一致する、作業車両が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の態様によれば、スイングシリンダを備える作業車両の作業性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る作業車両の一例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る作業車両の一例を示す側面図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係るキャノピーを除いた状態の作業車両の一例を示す平面図である。
【
図4】
図4は、本実施形態に係るキャノピーを除いた状態の作業車両の動作の一例を示す平面図である。
【
図5】
図5は、本実施形態に係るキャノピーを除いた状態の作業車両の動作の一例を示す平面図である。
【
図6】
図6は、本実施形態に係る作業車両の一例を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、本実施形態に係る標準アイポイントからの光学像の一例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。以下で説明する実施形態の構成要素は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0010】
[構造]
図1は、本実施形態に係る作業車両1の一例を示す斜視図である。
図2は、本実施形態に係る作業車両1の一例を示す側面図である。
図3は、本実施形態に係る作業車両1の一例を示す平面図である。本実施形態において、作業車両1は、油圧ショベルである。以下の説明においては、作業車両1を油圧ショベル1と称する。
【0011】
図1、
図2、及び
図3に示すように、油圧ショベル1は、旋回軸TXを中心に旋回可能な旋回体20と、運転者が着座するシート21と、運転者に操作される操作レバー25と、旋回体20に支持される作業機10と、旋回体20を支持する走行体30と、走行体30の前部に連結されるブレード40とを備える。
【0012】
旋回体20は、走行体30の上方に配置され、走行体30に支持された状態で旋回軸TXを中心に旋回する。
【0013】
作業機10は、旋回軸TXと平行なスイング軸SXを中心に揺動可能である。油圧ショベル1は、スイング可能な作業機10を有するスイング式油圧ショベルである。
【0014】
旋回体20にローカル座標系が規定される。
図3に示すように、ローカル座標系は、前後軸Xa及び左右軸Yaを含む。前後軸Xa及び左右軸Yaは、旋回軸TXと直交する水平面に規定される。前後軸Xa及び左右軸Yaは、水平面と平行である。旋回軸TXと直交する水平面内において前後軸Xaと左右軸Yaとは直交する。また、前後軸Xa及び左右軸Yaと旋回軸TXとは直交する。
【0015】
以下の説明においては、便宜上、前後軸Xaと平行な方向を前後方向とし、左右軸Yaと平行な方向を左右方向とし、旋回軸TXと平行な方向を上下方向とする。
【0016】
前後方向の一方が前であり他方が後である。前は、シート21に着座した運転者の顔が向く方(作業機10が存在する方)である。左右方向の一方が左であり他方が右である。左は、シート21に着座した運転者の左手がある方である。
【0017】
旋回体20は、車体フレーム27を有する。シート21は、座面部21Aと背もたれ部21Bとを有する。
図3に示すように、水平面内において、車体フレーム27の前端部は、直線状である。また、水平面内において、シート21の座面部21Aの前端部は、直線状である。車体フレーム27の前端部とシート21の座面部21Aの前端部とは平行である。
【0018】
本実施形態において、左右軸Yaは、車体フレーム27の前端部及びシート21の座面部21Aの前端部と平行であることとする。
【0019】
また、シート21に着座した運転者が真っ直ぐ前を見たとき、前後軸Xaは、運転者の視線と平行であることとする。
【0020】
スイング軸SXを中心とする回転方向において、作業機10のスイング角が規定される。作業機10は、スイング角0[°]を基準に左スイング及び右スイングすることができる。また、作業機10は、ブーム回転軸WX1、アーム回転軸WX2、及びバケット回転軸WX3のそれぞれを中心に回転可能なブーム11、アーム12、及びバケット13を有する。ブーム回転軸WX1、アーム回転軸WX2、及びバケット回転軸WX3は、水平面と平行である。また、走行体30は、履帯31と、履帯31を支持する駆動輪及び従動輪とを有する。スイング角が0[°]であり、ブーム回転軸WX1、アーム回転軸WX2、及びバケット回転軸WX3と駆動輪の回転軸とが平行な状態において、前後軸Xaとブーム回転軸WX1、アーム回転軸WX2、及びバケット回転軸WX3とは、水平面内において直交する。
【0021】
本実施形態において、車体中心線CL及びシート中心線SLが旋回体20に規定される。車体中心線CLとは、旋回軸TXを通り前後軸Xaと平行な線をいう。シート中心線SLとは、シート21の中心を通り、前後軸Xaと平行な線をいう。
【0022】
シート21の中心とは、座面部21Aの上面(座面)の中心をいう。シート中心線SLは、座面の中心を通り左右軸Yaと直交する線である。なお、左右軸Yaと平行な方向におけるシート21の中心は、座面部21Aの前端部の中心でもよい。
【0023】
旋回体20は、車体フレーム27と、車体フレーム27の上部に配置されるフロアプレート22と、車体フレーム27に支持されるシートフレーム28及び支柱フレーム29と、支柱フレーム29に支持される支柱24と、支柱24に支持されるキャノピー23とを有する。
【0024】
車体フレーム27は、作業機10を支持する。車体フレーム27の内部に、燃料タンク、油圧ポンプ、作動油タンク、及びバッテリのような複数の機器が配置される。
【0025】
フロアプレート22は、車体フレーム27の上部に配置される。フロアプレート22は、運転者が歩行可能な上面を有する。フロアプレート22の前端部は、車体フレーム27の前端部と結ばれる。フロアプレート22の左端部は、車体フレーム27の左端部と結ばれる。フロアプレート22の右端部は、車体フレーム27の右端部と結ばれる。
【0026】
シートフレーム28は、フロアプレート22よりも後方に配置される。支柱フレーム29は、シートフレーム28よりも後方に配置される。シートフレーム28及び支柱フレーム29は、フロアプレート22の上面よりも上方に突出する。
【0027】
フロアプレート22の左端部及び右端部のそれぞれに乗降空間が形成される。旋回体20において、運転者は、フロアプレート22の左端部及び右端部の両方から乗降することができる。旋回体20は、左端部及び右端部の両側に乗降空間を有するウォークスルー構造である。
【0028】
支柱24は、支柱フレーム29に支持される。支柱24は、支柱フレーム29から上方に突出する棒状の部材である。支柱24は、シート21の左側及び右側のそれぞれに1本ずつ配置される。支柱24は、キャノピー23を支持する。
【0029】
キャノピー23は、支柱24に支持された状態で、シート21の上方に配置される。
【0030】
シート21は、旋回体20に配置される。シート21は、シートフレーム28の上部に配置される。
【0031】
操作レバー25は、旋回体20に配置される。操作レバー25は、シート21に着座した運転者に操作される。操作レバー25は、作業機10の駆動のために操作される作業機レバー25Aと、走行体30の駆動のために操作される走行レバー25Bとを含む。
【0032】
作業機レバー25Aは、シートフレーム28に配置される。作業機レバー25Aは、シート21の左側に配置される左作業機レバーと、シート21の右側に配置される右作業機レバーとを含む。
【0033】
走行レバー25Bは、フロアプレート22に配置される。走行レバー25Bは、シート21よりも前方に配置される。走行レバー25Bは、左走行レバーと、左走行レバーよりも右に配置される右走行レバーとを含む。
【0034】
油圧ショベル1は、フロアプレート22の前端部に取り付けられる柵2と、旋回体20の前部に取り付けられる前照灯3とを備える。柵2は、走行レバー28Bよりも前方に配置される。前照灯3は、車体フレーム27の前端部に取り付けられる。前照灯3は、柵2よりも前方に配置される。
【0035】
作業機10は、旋回体20の前部に取り付けられたスイングピン5に連結される。スイングピン5は、上下方向に長い円柱状の部材である。スイング軸SXは、スイングピン5の中心軸を含む。スイングピン5は、支持部材6を介して車体フレーム27の前部に支持される。スイングピン5は、車体フレーム27の前端部よりも前方に配置される。作業機10は、スイングピン5を介して旋回体20に支持される。
【0036】
作業機10は、スイングピン5に連結されるスイングブラケット14と、スイングブラケット14に連結されるブーム11と、ブーム11に連結されるアーム12と、アーム12に連結されるバケット13とを有する。
【0037】
スイングブラケット14は、スイング軸SXを中心に回転可能にスイングピン5に支持される。スイングブラケット14は、スイングピン5の周囲に配置されるブラケット本体51と、ブラケット本体51から左に突出するスイングシリンダブラケット50とを含む。
【0038】
ブーム11は、ブーム回転軸WX1を中心に回転可能にスイングブラケット14に支持される。スイングブラケット14とブーム11とはピンを介して連結される。ブーム回転軸WX1は、スイング軸SXと直交する水平面と平行である。
【0039】
アーム12は、アーム回転軸WX2を中心に回転可能にブーム11に支持される。ブーム11とアーム12とはピンを介して連結される。アーム回転軸WX2は、ブーム回転軸WX1と平行である。
【0040】
バケット13は、バケット回転軸WX3を中心に回転可能にアーム12に支持される。アーム12とバケット13とはピンを介して連結される。バケット回転軸WX3は、ブーム回転軸WX1及びアーム回転軸WX2と平行である。
【0041】
作業機10は、油圧シリンダによって作動する。油圧ショベル1は、ブーム11を駆動するブームシリンダ15と、アーム12を駆動するアームシリンダ16と、バケット13を駆動するバケットシリンダ17と、スイングブラケット14を駆動するスイングシリンダ18とを有する。
【0042】
ブームシリンダ15は、スイングブラケット14に連結されるシリンダと、ブーム11に連結されるロッドとを有する。ブームシリンダ15のシリンダは、スイングブラケット14の少なくとも一部にブームシリンダボトムピン41Aを介して連結され、ブームシリンダ15のロッドは、ブームシリンダトップピン41Bを介してブーム11の少なくとも一部に連結される。ブームシリンダ15が作動すると、ブーム11の基端部がブーム回転軸WX1を中心に回転して、ブーム11の先端部が上下方向に移動する。
【0043】
アームシリンダ16は、ブーム11に連結されるシリンダと、アーム12に連結されるロッドとを有する。アームシリンダ16のシリンダは、ブーム11の少なくとも一部にアームシリンダボトムピン42Aを介して連結され、アームシリンダ16のロッドは、アームシリンダトップピン42Bを介してアーム12の少なくとも一部に連結される。アームシリンダ16が作動すると、アーム12の基端部がアーム回転軸WX2を中心に回転して、アーム12の先端部が上下方向に移動する。
【0044】
バケットシリンダ17は、アーム12に連結されるシリンダと、バケット13に連結されるロッドとを有する。バケットシリンダ17のシリンダは、アーム12の少なくとも一部にバケットシリンダボトムピン43Aを介して連結され、バケットシリンダ17のロッドは、バケットシリンダトップピン43Bを介してバケット13の少なくとも一部に連結される。バケットシリンダ17が作動すると、バケット13の基端部がバケット回転軸WX3を中心に回転して、バケット13の先端部が上下方向に移動する。
【0045】
スイングシリンダ18は、車体フレーム27に連結されるシリンダと、スイングブラケット14に連結されるロッドとを有する。スイングシリンダ18のシリンダは、車体フレーム27の少なくとも一部にピンを介して連結され、スイングシリンダ18のロッドは、スイングシリンダトップピン44を介してスイングシリンダブラケット50に連結される。スイングシリンダ18が作動すると、スイングブラケット14がスイング軸SXを中心に回転して、ブーム11がスイング軸SXを中心に揺動する。ブーム11がスイング軸SXを中心に揺動することにより、アーム12及びバケット13が、ブーム11と一緒に揺動する。
【0046】
作業機10がスイング軸SXを中心に揺動すると、ブーム回転軸WX1,WX2,WX3は、水平面内において移動する。
【0047】
図3に示すように、スイングシリンダブラケット50は、ブラケット本体51に固定され、ブラケット本体51から左に突出する。スイングシリンダブラケット50とスイングシリンダ18のロッドとは、回転軸AXを中心に相対回転する。回転軸AXとスイング軸SXとは平行である。回転軸AXは、スイング軸SXよりも左方に配置される。前後方向において、回転軸AXは、スイング軸SXよりも前方に配置される。
【0048】
回転軸AXは、車体中心線CLよりも左方に配置される。前後方向において、回転軸AXは、ブーム回転軸WX1と同一位置又はブーム回転軸WX1よりも前方に配置される。前後方向において、ブーム回転軸WX1は、スイング軸SXよりも前方に配置される。
【0049】
走行体30は、一対の履帯31を有する。履帯31が回転することにより、油圧ショベル1が走行する。
【0050】
図2及び
図3に示すように、シートフレーム28の上面は、フロアプレート22の上面よりも上方に配置される。シート21は、シートフレーム28の上面に配置される。シート21の大部分は、左右軸Yaよりも後方に配置される。
【0051】
旋回体20は、エンジン7を有する。エンジン7の一部は車体フレーム27の内部に配置され、エンジン7の一部はシートフレーム28の内部に配置される。
図2に示すように、シート21は、エンジン7の上方に配置される。水平面内において、シート21の位置とエンジン7の少なくとも一部の位置とは一致する。
【0052】
本実施形態において、作業車両1を上方から見たとき、シート中心線SLは、車体中心線CLよりも左に配置される。すなわち、シート21は、車体中心線CLよりも左にシフトした位置に配置される。本実施形態において、車体中心線CLは、シート21の右部を通過する。すなわち、シート21の少なくとも一部の位置と車体中心線CLの位置とは一致する。なお、シート21の全部が、車体中心線CLよりも左に配置されてもよい。
【0053】
作業車両1を上方から見たとき、スイング軸SXは、車体中心線CLよりも右に配置される。スイングブラケット14と連結されるブーム11の基端部は、車体中心線CLよりも右に配置される。左右軸Yaと平行な方向において、スイング軸SXの位置とブーム11の基端の位置とは一致する。スイングシリンダ18は、ブーム11よりも左に配置される。
【0054】
スイングシリンダ18のロッドの少なくとも一部は、シート中心線SLと一致する。本実施形態においては、スイングシリンダ18のロッドの先端部が、シート中心線SLと一致する。
【0055】
また、スイングシリンダブラケット50の少なくとも一部は、シート中心線SLと一致する。
【0056】
また、スイングシリンダトップピン44の少なくとも一部は、シート中心線SLと一致する。
【0057】
また、走行レバー25Bの少なくとも一部は、シート中心線SLと一致する。
【0058】
すなわち、シート21に着座した運転者の視線上に、スイングシリンダ18のロッドの先端部、スイングシリンダブラケット50、スイングシリンダトップピン44、及び走行レバー25Bが配置される。これにより、シート21に着座した運転者は、スイングシリンダ18のロッドの先端部及びスイングシリンダブラケット50を十分に目視することができる。
【0059】
また、前照灯3は、スイングブラケット14よりも左に配置される。これにより、シート21に着座した運転者は、前照灯3に遮られることなく、スイングシリンダ18のロッドの先端部及びスイングシリンダブラケット50を目視することができる。また、前照灯3がスイングシリンダ18のロッドの先端部及びスイングシリンダブラケット50を照明することにより、シート21に着座した運転者は、夜間においても、スイングシリンダ18のロッドの先端部及びスイングシリンダブラケット50を十分に目視することができる。
【0060】
図2に示すように、シート21に座席基準点8(Seat Index Point:SIP)が規定される。座席基準点8とは、ISO5006で定められ、理論上の運転者の胴と腿との関節の近傍に規定された座席の基準点をいう。
【0061】
本実施形態において、シート基準線LPが規定される。シート基準線LPとは、シート21の座席基準点8を通り旋回軸TXと平行な線をいう。
【0062】
シート基準線LPは、旋回軸TXよりも後に配置される。
【0063】
また、本実施形態において、シート21に着座する運転者の標準アイポイントEPが規定される。標準アイポイントEPとは、標準的な体格の運転者がシート21に着座したときに想定される運転者の眼の位置をいう。標準アイポイントEPは、例えばシート21に着座した複数の運転者の眼の位置から統計的に求められてもよい。
【0064】
標準アイポイントEPは、旋回軸TXとシート基準線LPとの間に配置される。
【0065】
旋回体20の前端部は、標準アイポイントEPとスイングブラケット14の少なくとも一部とを結ぶ仮想線VLよりも後に配置される。本実施形態において、旋回体20の前端部は、標準アイポイントEPとスイングシリンダブラケット50とを結ぶ仮想線VLよりも下方に配置される。つまり、旋回体20の前端部は、仮想線VLに干渉しない位置にある。これにより、シート21に着座した運転者は、旋回体20に遮られることなく、スイングシリンダ18のロッドの先端部及びスイングシリンダブラケット50を目視することができる。
【0066】
[動作]
図4及び
図5は、本実施形態に係る作業車両1の動作の一例を示す平面図である。
図4は、旋回体20を右旋回させるとともに、作業機10を左スイングさせて、壁近傍の地面をバケット13で掘削している例を示す。
図5は、旋回体20を左旋回させるとともに、作業機10を右スイングさせて、壁近傍の地面をバケット13で掘削している例を示す。
【0067】
本実施形態において、
図3に示したようなスイング角が0[°]の状態において、スイング軸SX及びブーム11は、車体中心線CLよりも右に配置される。スイングシリンダ18は、ブーム11よりも左に配置される。そのため、
図4に示すように、旋回体20を右旋回させ、作業機10を左スイングさせても、履帯31からのスイングブラケット14の突出量RTが抑制される。
図4に示すように、壁と履帯31とが平行な状態で、バケット13の側面が壁に接近するように作業機10及び旋回体20が操作されても、スイングブラケット14と壁との接触が抑制される。
【0068】
また、
図5に示すように、旋回体20を左旋回させ、作業機10を右スイングさせても、左旋回する旋回体20の旋回角度が抑制されることにより、履帯31からのスイングブラケット14の突出量LTが抑制される。
図5に示すように、壁と履帯31とが平行な状態で、バケット13の側面が壁に接近するように作業機10及び旋回体20が操作されても、スイングブラケット14と壁との接触が抑制される。
【0069】
[効果]
以上説明したように、本実施形態よれば、シート中心線SLが車体中心線CLよりも左に配置され、スイング軸SXが車体中心線CLよりも右に配置され、左右方向において、スイングシリンダ18のロッドの少なくとも一部がシート中心線SLと一致する。これにより、シート21に着座した運転者の視線上に、スイングシリンダ18のロッドの先端部が配置され、シート21に着座した運転者は、スイングシリンダ18のロッドの先端部及びスイングシリンダブラケット50を十分に目視することができる。
【0070】
図6は、本実施形態に係る油圧ショベル1の一例を示す斜視図である。
図6に示すように、例えば旋回体20が左旋回した状態においても、シート21に着座した運転者の視線上に、スイングシリンダ18のロッドの先端部が配置される。これにより、運転者は、スイングシリンダ18の状態を目視しながら作業を実施することができる。したがって、作業性の向上が図られる。
【0071】
また、左右方向において、スイングシリンダブラケット50の少なくとも一部がシート中心線SLと一致する。これにより、シート21に着座した運転者の視線上に、スイングシリンダ18のロッドの先端部、スイングシリンダブラケット50、及びスイングシリンダトップピン44が配置される。そのため、運転者は、スイングシリンダ18の状態及びスイングシリンダブラケット50に対するスイングシリンダ18のロッドの角度を目視しながら作業を実施することができる。したがって、作業性の向上が図られる。
【0072】
また、スイング軸SX及びブーム11の基端部は、車体中心線CLよりも右に配置され、スイングシリンダ18は、ブーム11よりも左に配置される。これにより、
図4及び
図5を参照して説明したように、壁際の地面を掘削するときにおいて、スイングブラケット14と壁との接触が抑制される。
【0073】
前照灯3は、スイングブラケット14よりも左に配置される。これにより、シート21に着座した運転者は、前照灯3に遮られることなく、スイングシリンダ18のロッドの先端部及びスイングシリンダブラケット50を目視することができる。また、スイングシリンダ18のロッドの先端部及びスイングシリンダブラケット50が前照灯3で照明されることにより、シート21に着座した運転者は、夜間においても、スイングシリンダ18のロッドの先端部及びスイングシリンダブラケット50を十分に目視することができる。
【0074】
また、シート21は、エンジン7の上方に配置される。フロアプレート22の上面に対してシート21が十分に高い位置に配置されるため、
図6に示したように、シート21に着座した運転者は、スイングシリンダ18のロッドの先端部及びスイングシリンダブラケット50を上から見下ろすように、十分に視認することができる。
【0075】
また、旋回体20の前端部は、標準アイポイントEPとスイングブラケット14の少なくとも一部とを結ぶ仮想線VLよりも下方に配置される。これにより、シート21に着座した運転者は、旋回体20に遮られることなく、スイングシリンダ18のロッドの先端部及びスイングシリンダブラケット50を目視することができる。
【0076】
図7は、本実施形態に係る標準アイポイントEPからの光学像の一例を模式的に示す図である。
図7に示すように、左右方向において、走行レバー25Bの少なくとも一部、及び柵2がシート中心線SLと一致する。標準アイポイントEPとスイングシリンダブラケット50との間において、運転者の視線を妨げる物体は、走行レバー25B及び柵2のみである。また、運転者は、姿勢を少し変えるだけで、スイングシリンダ18のロッドの先端部も視認することができる。運転者はスイングシリンダ18のロッドの先端部及びスイングシリンダブラケット50を十分に目視することができるので、作業性の低下が抑制される。
【符号の説明】
【0077】
1…油圧ショベル(作業車両)、2…柵、3…前照灯、5…スイングピン、6…支持部材、7…エンジン、8…座席基準点、10…作業機、11…ブーム、12…アーム、13…バケット、14…スイングブラケット、15…ブームシリンダ、16…アームシリンダ、17…バケットシリンダ、18…スイングシリンダ、20…旋回体、21…シート、21A…座面部、21B…背もたれ部、22…フロアプレート、23…キャノピー、24…支柱、25…操作レバー、25A…作業機レバー、25B…走行レバー、27…車体フレーム、28…シートフレーム、29…支柱フレーム、30…走行体、31…履帯、40…ブレード、41A…ブームシリンダボトムピン、41B…ブームシリンダトップピン、42A…アームシリンダボトムピン、42B…アームシリンダトップピン、43A…バケットシリンダボトムピン、43B…バケットシリンダトップピン、44…スイングシリンダトップピン、51…ブラケット本体、50…スイングシリンダブラケット、AX…回転軸、CL…車体中心線、EP…標準アイポイント、LP…シート基準線、SL…シート中心線、SX…スイング軸、TX…旋回軸、VL…仮想線、WX1…ブーム回転軸、WX2…アーム回転軸、WX3…バケット回転軸。