IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エシコン・インコーポレイテッドの特許一覧

<>
  • 特許-組織切除装置 図1
  • 特許-組織切除装置 図2
  • 特許-組織切除装置 図3
  • 特許-組織切除装置 図4
  • 特許-組織切除装置 図5
  • 特許-組織切除装置 図6
  • 特許-組織切除装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】組織切除装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/14 20060101AFI20240501BHJP
【FI】
A61B18/14
【請求項の数】 14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019139478
(22)【出願日】2019-07-30
(65)【公開番号】P2020018852
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2022-05-31
(31)【優先権主張番号】62/712,545
(32)【優先日】2018-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/728,170
(32)【優先日】2018-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/744,797
(32)【優先日】2018-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/749,302
(32)【優先日】2018-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/756,234
(32)【優先日】2018-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/512,616
(32)【優先日】2019-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512080321
【氏名又は名称】エシコン・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Ethicon, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム・コーン
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン・メルコール
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン・グエン
【審査官】山口 賢一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0179494(US,A1)
【文献】特開平11-244298(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0147917(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0140319(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0190764(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0254572(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織切除装置であって、
遠位端上に配設された螺旋コイルを有する外側管
前記螺旋コイルの表面上に配置されるか又は前記第1のコイルセグメントに埋め込まれている第1の電極と、
位縁部有する中央管と、
前記遠位縁部の端面上に配置された第2の電極であって、前記中央管は、前記外側管内に配設され、かつ前記第2の電極が前記第1の電極の少なくとも一部分と対向するように前記螺旋コイルに向かって前進するように構成されている、中央管と、
前記中央管内に配設された切断縁部を含む切断管であって、組織の少なくとも一部を切断するために前記螺旋コイルの少なくとも一部まで前進するように構成されている、切断管と、を備え、
前記第1及び第2の電極は、前記第1及び第2の電極の間にクランプされた組織の少なくとも一部の血管を封止するエネルギーを印可するように構成されている、組織切除装置。
【請求項2】
前記螺旋コイルが、第1及び第2の連続するコイルセグメントを含み、前記第2のコイルセグメントが、前記第1のコイルセグメントの遠位にある、請求項1に記載の組織切除装置。
【請求項3】
前記第1のコイルセグメントが、略平面の開放環形状である、請求項2に記載の組織切除装置。
【請求項4】
前記第1のコイルセグメントが螺旋状であり、ゼロのピッチを有する、請求項2に記載の組織切除装置。
【請求項5】
前記第2のコイルセグメントが螺旋状であり、一定のピッチを有する、請求項2に記載の組織切除装置。
【請求項6】
前記第2のコイルセグメントが可変のピッチを有する、請求項5に記載の組織切除装置。
【請求項7】
前記第1のコイルセグメントが螺旋状であり、第1のピッチを有し、前記第2のコイルセグメントが螺旋状であり、第2のピッチを有し、前記第1及び第2のピッチのうちの少なくとも1つが可変である、請求項2に記載の組織切除装置。
【請求項8】
前記第2のコイルセグメントが、鈍い先端部を含む、請求項1に記載の組織切除装置。
【請求項9】
前記第1のコイルセグメントが、(i)前記中央管の外径より小さい内径、及び、(ii)前記中央管の内径より大きい外径を有している、請求項に記載の組織切除装置。
【請求項10】
前記中央管が、前記第1のコイルセグメントの外径に略等しい外径を有する、請求項に記載の組織切除装置。
【請求項11】
前記組織切除装置は、
前記中央管の内腔に配置された肺組織の一部を封止するためにエネルギーを印可するように構成された一組の結紮電極であって、前記中央管の内面に配置された一組の結紮電極と、
前記中央管の前記内腔に配置され、前記一組の結紮電極に向かって前記中央管の前記内腔内の前記組織の少なくとも一部を引っ張るように構成されたスネア要素を更に備え、
前記スネア要素は、前記一組の結紮電極によって封止された肺組織の前記一部を切断するように更に構成されている、請求項1に記載の組織切除装置。
【請求項12】
前記スネア要素が、可撓性線を含む、請求項11に記載の組織切除装置。
【請求項13】
前記組織切除装置は、前記一組の結紮電極の各電極間の前記中央管の前記内面に溝を更に備え、前記スネア要素が、前記溝内に配設されている、請求項11に記載の組織切除装置。
【請求項14】
記鈍い先端がその中に配置された血管を貫通することなく、前記肺組織の胸膜及び実質を貫通するように構成されている、請求項8に記載の組織切除装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2018年7月31日に出願された特許仮出願番号第62/712,545号の優先権を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願は、2018年9月7日に出願された特許仮出願番号第62/728,170号の優先権を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
本出願は、2018年10月12日に出願された特許仮出願番号第62/744,797号の優先権を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0004】
本出願は、2018年10月23日に出願された特許仮出願番号第62/749,302号の優先権を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0005】
本出願は、2018年11月6日に出願された特許仮出願番号第62/756,234号の優先権を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0006】
(発明の分野)
本出願は、組織切除のためのシステム、装置、及び方法に関する。より具体的には、本発明は、病変除去のためのシステム、装置、及び方法に関する。
【背景技術】
【0007】
癌は単一の疾患ではなく、むしろ、本質的に身体のいかなる箇所においても始まり得る関連する疾患の集合である。すべての種類の癌の間で共通するのは、身体の細胞が、止め処なく分裂し始めて、増殖し、場合によっては周りの組織の中に転移することである。通常の経過では、細胞は成長及び分裂して、身体によって求められるとおりに新たな細胞を形成するか、又は細胞が損傷するか若しくは古くなると死に、新たな細胞が、損傷した若しくは古くなった細胞に取って代わる。しかしながら、癌はこの過程を妨げる。癌では、細胞が異常をきたし、死ぬべき細胞が死なず、新たな細胞が必要とされていないときに形成される。これらの新しい細胞は、止め処なく繁殖又は増殖し得、腫瘍と呼ばれる成長を形成し得る。
【0008】
癌性腫瘍は悪性であり、これはすなわち、それらが周りの健康な組織の中に転移するか又はそれらに侵入し得ることを意味する。加えて、癌細胞は離脱し、血液を通して又はリンパ系内で体内の離れた領域へと移動し得る。良性腫瘍は、悪性腫瘍とは異なり、周りの組織に転移したり侵入したりしない。しかしながら、大きく成長し、損傷を引き起こすことがある。悪性腫瘍及び良性腫瘍のいずれも、切除又は処置され得る。悪性腫瘍は再び成長しがちであるのに対し、良性腫瘍は再び成長することもあるが、その可能性ははるかに低い。
【0009】
癌は、細胞が機能する、特に細胞が成長及び分裂する様を制御する遺伝子の変化によって引き起こされるという点で、遺伝子性疾患である。癌を引き起こす遺伝子の変化は受け継がれることがあり、あるいはそれらは、細胞が分裂するときに生じるエラーの結果として、又は特定の環境曝露、例えば、工業用/商業用化学物質及び紫外線によって引き起こされるDNAの損傷が原因で、個人の生涯にわたって生じることもある。癌を引き起こし得る遺伝子の変化は、3種類の遺伝子、つまり、正常な細胞増殖及び細胞分裂に関与する癌原遺伝子、同様に細胞増殖及び細胞分裂の制御に関与する癌抑制遺伝子、並びにその名が示すように損傷DNAの修復に関与するDNA修復遺伝子に影響を与える傾向がある。
【0010】
100以上の異なるタイプの癌が確認されている。癌のタイプは、癌が生じる臓器又は組織にちなんで、例えば肺癌と命名され得るか、又はそれらを形成する細胞のタイプにちなんで、例えば扁平上皮癌と命名され得る。癌は、残念ながら、米国及び全世界の両方で最も多い死因である。世界保健機関(WHO)によれば、新たな癌患者の数は今後20年間で、年間二千五百万人に増加すると見られている。
【0011】
肺癌は今日、最も一般的な癌の1つである。世界保健機関(WHO)のWorld Cancer Report 2014によれば、肺癌は1400万人に発生し、結果として全世界で880万人を死に至らしめ、男性の癌関連死の中で最も多い死因であり、女性の癌関連死の中でも2番目に多い死因となっている。肺癌又は肺癌腫は、未処置のまま放置されると、隣接する組織及び器官に転移し得る悪性肺腫瘍である。肺癌の大多数は、長期のたばこ喫煙によって引き起こされるものであるが、肺癌症例の約10%~15%はたばこに関連しないものである。これらの非たばこ症例は最も多くは、遺伝的要因と、ラドンガス、アスベスト、間接喫煙、他の形態の大気汚染、及び他の因子といった特定の環境条件への曝露との組み合わせによって引き起こされる。肺癌並びに他の形態の癌を生き抜く確率は、早期発見と治療に依存する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
肺に病変が発見されると、生検が行われ、試験に送られる。病変が癌性であると判定された場合、癌を除去するために第2の処置が行われ得る。生検によって癌が明らかにならない場合、生検は正確であり得るか、又は生検は癌細胞を拾わなかったことになる。したがって、正確な診断を行うことができるように、1回の単一処置で病変全体を除去することが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の肺病変除去を行うためのシステム、装置、及び方法は、先行技術に関連する制限を克服する。
【0014】
本発明は、肺病変除去を行うためのシステム、装置、及び方法に関する。肺針生検は、典型的には、撮像試験、例えば、X線又はCATスキャンに異常が見られるときに行われる。肺針生検では、異常細胞の存在を判定するための顕微鏡検査のために、細針を使用して肺組織の試料を除去する。小結節(<6mm)及び中間結節(6~12mm)では、組織診断は困難である。胸壁(80%)を通して、又は気管支鏡(20%)の手段によってのいずれかでは、末梢病変のCT誘導生検は、0.001~0.002cm2の診断組織しかもたらさず、そのため、癌は、存在する場合、小結節及び中間結節の60%においてしか同定に成功しない。気管支鏡技術及び技術は進化し続けているが、肺の周辺の小結節及び中間結節を扱う場合、生検精度、特異度、及び感度は常に制限されることになる。
【0015】
病変が癌性であると判定された場合、第2の処置を行って病変を除去し、次に、化学療法及び/又は放射線で追跡することができる。第2の処置は、肺手術を伴う可能性が最も高い。これらの処置は、典型的には、肋骨間の切開部を通して行われる。癌の状態に応じて、ある数の可能な処置がある。ビデオ支援胸郭手術は、特定の種類の肺癌に対する侵襲性の低い処置である。これは、内視鏡的アプローチを利用して小さな切開部を通して行われ、典型的には、肺の表面に近いより小さな病変の楔状切除を行うために利用される。楔状切除では、葉の一部分が除去される。スリーブ切除では、太い気道の一部分が除去され、それによって、より多くの肺機能が維持される。
【0016】
癌の疑いが同定されると、肺表面から2~3cmよりも深い結節は、手術前の画像誘導生検及び局在化にもかかわらず、腹腔鏡又はロボット肺の温存技術を使用して局所化及び摘出することは困難である。したがって、外科医は、肺表面から2~3cmの肺結節を除去するために、開胸術又は肺葉切除術を行う。開胸術は、葉の一部分、全葉、又は肺全体を除去する観血的手術である。肺切除術では、肺全体が除去される。この種類の手術は、明らかに最も侵攻性である。肺葉切除術では、肺の全部分又は葉が除去され、肺全体の除去よりも侵攻性が低い手術を表す。全ての胸腔鏡下の肺手術は、訓練を受けた経験豊富な胸腔の外科医、及び手術経験による手術結果の跡の好ましさを必要とする。
【0017】
これらの種類の肺手術のうちのいずれも、手術の程度並びに患者の全体的な健康に依存する合併症を伴う可能のある、大手術である。これらの処置のうちのいずれかに関連する肺機能の減少に加えて、回復は、数週から数ヶ月かかる場合がある。開胸術では、肋骨を広げることを必要とし、それによって術後疼痛が増加する。ビデオ支援胸腔手術は低侵襲性であるが、依然として相当な回復期間が存在し得る。加えて、手術が完了すると、全治療は、システム化学療法及び/又は放射線治療を必要とし得る。
【0018】
上述したように、細針生検は、完全に診断されたことを証明しない場合がある。細針生検処置は、2次元撮像下で3次元空間内に針を誘導することを伴う。したがって、医師は、病変を見逃す可能性があるか、又は正しい標的に当たる場合であっても、針を通して除去される病変の切片は、癌の悪性度を評価するために必要な癌性細胞若しくは細胞を含有しない可能性がある。針生検は、スライド上にスミアを形成するのに十分な組織を除去する。本発明の装置は、健康な肺組織の除去量を最小限に抑えながら、病変全体又はその実質的な部分を除去するように設計される。これは、いくつかの利点を提供する。第1に、サンプリング誤差、セルパッキングの損失、又は全体的な構造を悪化させることなく、より正確な診断のために、病変全体を検査することができる。第2に、病変全体が除去されるため、上記のような二次的な処置を必要としない場合がある。第3に、病変除去によって形成された空洞を介して、放射線などの局所化学療法及び/又はエネルギーベースの腫瘍摘出を導入することができる。
【0019】
少なくとも1つの実施形態では、本発明は、遠位端上に配設された螺旋コイルを有する外側管を備え、コイルが第1の電極を含む、組織切除機構を包含する。1つ以上の表面セグメントを含む遠位縁部プロファイルを有する中央管が提供され、表面セグメントのうちの少なくとも1つは第2の電極を含む。中央管は、外側管内に摺動可能に配設され、第2の電極が第1の電極の少なくとも一部分と対向するように位置付けられている。切断管は、中央管内に摺動可能に配設された切断縁部を含み、切断管は、少なくともコイルセグメントのうちの1つまで前進するように構成されている。
【0020】
別の実施形態では、本発明は、遠位端上に配設された螺旋コイルを有する外側管を備え、コイルが第1の電極を含む、組織切除機構を包含する。1つ以上の表面セグメントを含む遠位縁部プロファイルを有する中央管が提供され、表面セグメントのうちの少なくとも1つは第2の電極を含む。中央管は、外側管内に摺動可能に配設され、第2の電極が第1の電極の少なくとも一部分と対向するように位置付けられている。第1及び第2の結紮電極は、中央管内に配設され、中央管管腔に露出される。スネアは、第1の結紮電極と第2の結紮電極との間の中央管内に配設されている。切断管は、中央管内に摺動可能に配設された切断縁部を含み、切断管は、少なくともコイルセグメントのうちの1つまで前進するように構成されている。
【0021】
更に別の実施形態では、本発明は、遠位端上に配設された螺旋コイルを有する外側管を備え、コイルが第1の電極を含む、組織切除機構を包含する。1つ以上の表面セグメントを含む遠位縁部プロファイルを有する中央管が提供され、表面セグメントのうちの少なくとも1つは第2の電極を含む。中央管は、外側管内に摺動可能に配設され、第2の電極が第1の電極の少なくとも一部分と対向するように位置付けられている。第1及び第2の結紮電極は、中央管内に配設され、中央管管腔に露出されている。切断スネアが中央管内に配設され、結紮スネアが中央管内に配設されている。切断管は、中央管内に摺動可能に配設された切断縁部を含み、切断管は、少なくともコイルセグメントのうちの1つまで前進するように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本発明の上述及び他の特徴と利点は、添付図面に例証されるような、本発明の好ましい実施形態の以下のより具体的な記載から明白となるであろう。
図1】本発明の実施形態による組織切除装置を図示する。
図2図1の組織切除装置の断面図を例示する。
図3】本発明の実施形態による組織切除装置の断面図を示す。
図4】本発明の実施形態による組織切除装置の断面図を図示する。
図5】本発明の実施形態による病変除去方法で用いられ得る例示的なアンカーを例示する。
図6】本発明の実施形態による病変除去方法で使用するための一連の切開刃を示す。
図7】本発明の実施形態による病変除去方法で使用するのに好適な組織拡張器を表示する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の切除装置は、標的病変に向かって組織を貫通することができるエネルギーベースの構成を備える。図1に図示される一実施形態では、組織切除装置1100は、外側管1105を含み、遠位縁部プロファイルを有し、かつ内径ID外側を有して提供される。コイル1110は外側管1105に取り付けられ、コイルの巻きは、外側管1105の遠位端から離間しており、これと対向している。コイル1110は、好ましくは、胸膜及び柔組織などの組織を貫通するのに十分に鋭い一方で、血管を貫通する可能性を最小限に抑えるために、わずかに鈍い先端部1115を有する。いくつかの実施形態では、コイル1110は、一定又は可変のピッチを有する螺旋の形態をとり得る。コイル1110はまた、可変断面形状を有し得る。電極1130は、表面上に配設されるか、又はコイル1110内に埋め込まれる。
【0024】
いくつかの実施形態では、図1に図示されるように、コイル1110は、複数の連続するコイルセグメント、例えば、コイルセグメント1120及び1125を含み得る。コイルセグメント1120は、内径IDコイル及び外径ODコイルを有する、ゼロのピッチを有する螺旋状部材、例えば、略平面の開放環構造を備える。コイルセグメント1125は、一定又は可変のピッチ及び一定又は可変の断面形状の螺旋構造を備える。この実施形態では、電極1130は、コイルセグメント1120の表面上に配設され得るか、又はその中に埋め込まれ得る。
【0025】
1つ以上の表面セグメントを備え、外径OD中央及び内径ID中央を有する縁部プロファイルを伴う遠位端を有する中央管1200が提供される。図2に例示されるように、電極1205は、表面セグメントのうちの少なくとも1つの上に配設されるか、又はその中に埋め込まれる。中央管1200は、外側管1105内に摺動可能に配設され、電極1205が電極1130の少なくとも一部分と対向し、これと重なり合うように位置付けられる。電極1205と電極1130との間の空間は、組織クランプ領域と呼ばれる。本発明の態様を踏まえて、OD中央はIDコイルより大きく、ODコイルはID中央より大きい。いくつかの実施形態では、OD中央はODコイルに略等しい。したがって、電極1205が電極1130に当接するように、中央管1200を、組織クランプ領域を通してコイル1110に向かって前進させることができる。
【0026】
切断管1300は、中央管1200内に摺動可能に配設されている。切断管1300の遠位端には、組織切断を容易にするためにナイフ縁部が提供されている。
【0027】
組織切除を可能にするために、切除装置1100を組織に挿入することができ、外側管1105を標的に向かって所定の距離前進させることができる。コイルセグメント1125は、装置がコルクスクリューと同様の様式で組織を貫通することを可能にする。コイルセグメント1125が組織を貫通すると、その経路内のいずれの血管も、平面的なコイルセグメント1120に移動されるか、又はその後の巻きのためにコイル1100から離れるように押される。コイル先端部1115は、血管を貫通する可能性を最小限にするのに十分に鈍い一方で、それでも肺胸膜及び柔組織などの特定の組織を貫通するのに十分に鋭いように作製される。次に、中央管1200を標的に向かって所定の距離前進させ得る。組織クランプ領域内に配設されたいずれの血管も、電極1130と電極1205との間にクランプ留めされることになる。次に、電極1130及び電極1205に双極エネルギーを印加することによって、血管を密封することができる。血管が密封されると、切断管1300を前進させて、外側管1105に到達した深さまで組織をコア化する。密封及び切断プロセスを繰り返して、所望のサイズのコアを形成することができる。
【0028】
本発明の態様を踏まえて、切除装置は、標的病変を切開し、切開点の近位で組織を密封するように更に構成され得る。切開及び密封を容易にするために、図3に例示されるように、中央管1200には、結紮スネア1230、第1の結紮電極1215及び第2の結紮電極1220、切断スネア1225及び結紮スネア1230が提供されている。本明細書で使用される場合、「スネア」という語は、可撓性線、例えば、紐又はワイヤを指す。中央管1200の内壁表面は、遠位端の近位に配設された上部周方向溝付き経路1212及び下部周方向溝付き経路1214を含む。第1の結紮電極1215及び第2の結紮電極1220は、下部周方向溝1214がそれらの間にあるように、中央管1200の内壁上に配設されている。上部溝付き経路1212は、結紮電極1215及び1220の上に軸方向に配設されている。
【0029】
結紮スネア1230は、下部周方向溝1214内に配設され、中央管1200を通して延在し、外壁表面に沿ってスネア作動機構(図示せず)まで軸方向に延在する。切断スネア1225は、上部周方向溝1212内に配設され、中央管1200を通して延在し、外壁表面に沿ってスネア作動機構(図示せず)まで軸方向に延在する。中央管1200の外側表面には、切断スネア1225、結紮スネア1230を受容し、上部周方向溝付き経路1212及び下部周方向溝付き経路1214と連通している、複数の軸方向に延在する溝付き経路が提供され得る。加えて、結紮電極1215及び1220の電極リード線は、軸方向に延在する溝付き経路を介してエネルギー源に延在し得る。
【0030】
動作中、この実施形態の切除装置は、組織コアを分離及び密封することができる。切断管1300を後退させて、好ましくは可撓性線、例えば縫合糸で作製される結紮スネア1230を露出させることができる。結紮スネア1230は、組織を根がかり組織に係合され得、第1の結紮電極1215と第2の結紮電極1220との間の内壁表面に対して組織を引っ張ることができる。次に、双極エネルギーが第1の電極1215及び第2の電極1220に印加されて、組織を密封、すなわち焼灼する。密封されると、切断管1300を更に後退させて切断スネア1225を露出させることができ、これが次に、組織が密封された点(結紮点)の上流で組織コアを切り離すように作動し得る。いくつかの実施形態では、切断スネア1225は、結紮スネア1230よりも小さい直径を有する。より小さい直径は、組織のスライスを容易にする。したがって、この実施形態による切除装置1100は、組織コアを形成することと、コアを周囲組織から係脱することとの両方を行う。
【0031】
代替的な実施形態では、本発明の切除装置には、結紮及び組織の切断の両方を行う結紮電極間に配設された単一のスネアが提供される。この実施形態では、単一のスネアは、第1に、結紮電極1215と結紮電極1220との間で中央管1200の内壁表面に対して組織を引っ張る。次に、双極エネルギーが第1の電極1215及び第2の電極1220に印加されて、組織を密封、すなわち焼灼する。密封されると、スネアが更に引っ張られて組織コアを切り離す。
【0032】
更に別の実施形態では、電極を用いずに切断及び密封を行うことができる。この実施形態では、結紮スネア1230は、例えば図4に示される荷重下で締め付ける1組の結び目1235及び1240を含む。結紮は、切断管1300を後退させて結紮スネア1210を露出させ、結紮結び目が締め付ける際に組織を輪縄させる結紮スネア1230を作動させることによって行われる。組織が輪縄されると、切断管1300が更に後退されて切断スネア1225を露出させ得、これが次に、組織が輪縄された点の蒸留で組織コアを切り離すように作動し得る。
【0033】
本発明はまた、切除装置を使用して組織病変、例えば肺病変を除去するための方法及びシステムも想到している。本方法は、概して、除去のために標的化された病変を固定することと、標的病変につながる組織内にチャネルを形成することと、固定された病変を含む組織コアを形成することと、組織コアを結紮し、周囲組織を密封することと、標的病変を含む組織コアをチャネルから除去することと、を含む。
【0034】
固定は、装置を肺に固定するための任意の好適な構造によって行うことができる。病変が固定されると、切除装置1100の挿入を容易にするためにチャネルを形成することができる。チャネルは、肺領域内に切開部を作製し、組織拡張器及びポートを切開部内に挿入することによって形成され得る。固定された病変を含む組織コアが形成され得る。本発明を踏まえて、切除装置1100をチャネル内に挿入し、組織コアを作製するために使用して、組織コアを結紮し、組織コアを密封し、本明細書の上記に記載されるように周囲組織から組織コアを切り離すことができる。次に、組織コアがチャネルから除去され得る。本発明を踏まえて、化学療法及び/又は放射線などのエネルギーベースの腫瘍曝露を通した標的病変部位のその後の治療を容易にするために、チャネル内に空洞ポートを挿入することができる。
【0035】
図5に図示されるアンカーは、本明細書に記載される組織病変を除去するための方法を行う際に使用するのに好適である。アンカーは、過剰な損傷を引き起こすことなく胸腔組織及び肺を穿孔するために十分に鋭い縁部を有する外側管1422と、外側管1422内に配設された内側管1424とを備える。予め形成された、形状記憶材料、例えばニチノールから形成された1つ以上の歯部又は指部1426が、内側管1424の端部に取り付けられる。外側管1422は、外側管1422が後退したときに、歯部1426が示されているそれらのプリフォーム形状をとるように、内側管1424の上に後退可能に配設されている。本発明を踏まえて、外側管1422は、肺病変を穿孔した後に後退し、それによって歯部1426が肺病変と係合する。他の好適なアンカーは、コイル及び吸引ベースの構造を含み得る。
【0036】
図6に図示される切開刃は、本明細書に記載される組織病変を除去するための方法を行う際に使用するのに好適である。アンカー1400が設定されると、胸壁組織拡張器の挿入を容易にするために小さな切り込み又は切開部を形成することが好ましい。切開刃1605は、より幅広い切り込みを作製するために使用される。連続する切開刃1605は、それらをアンカー針1405に沿って同軸上に前進させて、胸壁内により幅広い切り込みを形成することを可能にする中央開口部を含み、各連続する刃は前の刃よりも大きく、それによって切開部の幅を増加させる。
【0037】
図7に図示される組織拡張器は、本明細書に記載される組織病変を除去するための方法を行う際に使用するのに好適である。組織拡張器は、有機組織内にチャネルを形成するための任意の好適な装置を備え得る。例示的な一実施形態では、組織拡張器アセンブリは、丸みを帯びた端部1510を有する単一の円筒状ロッド、又は丸みを帯びた端部を有する円筒状ロッド、及び剛性スリーブ構成1515を含む。連続する組織拡張器は、アンカー針に沿って同軸上に前進され、胸壁内に組織管又はチャネルを形成し、各連続する拡張器は、前の拡張器よりも大きく、それによってチャネルの直径を増加させる。剛性スリーブを有する最終拡張器が展開されると、肋骨間の肋間腔内に剛性スリーブを残しながら内側ロッド1505が除去され、肺胸膜への直接通路が形成される。
【0038】
肺組織を貫通し、標的病変を含む組織コアを形成することができる任意の組織切除装置は、本明細書に記載される組織病変を除去するための方法を行う際に使用するのに好適である。本明細書の先に記載される組織切除装置1100が好ましい。
【0039】
組織切除装置1100が除去されると、標的病変が除去された場所に肺内の小さなチャネルが出る。このチャネルを利用して、組織診断の結果に応じて、エネルギーベースのアブレーション装置及び/又は局所化学療法を導入することができる。したがって、本発明の方法及びシステムを利用して、有効な生検が行われることを確実にすることができるだけでなく、健康な肺組織の除去を最小限に抑えて病変を完全に除去することもできる。
【0040】
ここで図示及び説明した実施形態は、最も実用的で好適な実施形態と考えられるが、当業者であれば、ここに図示及び開示した特定の設計及び方法からの変更はそれ自体当業者にとって自明であり、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく使用できることは明らかであろう。例えば、肺から病変を除去するための本明細書に記載されるシステム、装置、及び方法。当業者であれば、本明細書に記載される装置及び方法は、肺に限定されず、身体の他の領域における組織切除及び病変除去のために使用することができることが理解されるであろう。本発明は、説明し例証した特定の構成に限定されないが、添付の特許請求の範囲に含まれ得る全ての修正と一貫するように構成されているべきである。
【0041】
実施態様
1.組織切除装置であって、
遠位端上に配設された螺旋コイルを有する外側管であって、コイルが第1の電極を含む、外側管と、
1つ以上の表面セグメントを含む遠位縁部プロファイルを有する中央管であって、表面セグメントのうちの少なくとも1つが第2の電極を含み、中央管は、外側管内に摺動可能に配設され、かつ第2の電極が第1の電極の少なくとも一部分と対向するように位置つけられている、中央管と、
中央管内に摺動可能に配設された切断縁部を含む切断管であって、少なくともコイルセグメントのうちの1つまで前進するように構成されている、切断管と、を備える、組織切除装置。
2.コイルが、第1及び第2の連続するコイルセグメントを含み、第1のコイルセグメントが第1の電極を含む、態様1に記載の組織切除装置。
3.第1のコイルセグメントが、略平面の開放環を備える、態様2に記載の組織切除装置。
4.第1のコイルセグメントが螺旋状であり、ゼロのピッチを有する、態様2に記載の組織切除装置。
5.第2のコイルセグメントが螺旋状であり、一定のピッチを有する、態様2に記載の組織切除装置。
6.第2のコイルセグメントが可変のピッチを有する、態様5に記載の組織切除装置。
7.第1のコイルセグメントが螺旋状であり、第1のピッチを有し、第2のコイルセグメントが螺旋状であり、第2のピッチを有し、第1及び第2のピッチのうちの少なくとも1つが可変である、態様2に記載の組織切除装置。
8.第2のコイルセグメントが、鈍い先端部を含む、態様1に記載の組織切除装置。
9.第1及び第2の電極が、実質的に整合する表面プロファイルを有する、態様1に記載の組織切除装置。
10.第1のコイルセグメントが内径及び外径を有し、中央管が内径及び外径を含み、中央管の外径が第1のコイルセグメントの内径よりも大きく、第1のコイルセグメントの外径が中央管の内径よりも大きい、態様2に記載の組織切除装置。
11.第1のコイルセグメントが外径を有し、中央管が、第1のコイルの外径に略等しい外径を有する、態様2に記載の組織切除装置。
12.組織切除機構であって、
遠位端上に配設された螺旋コイルを有する外側管であって、コイルが第1の電極を含む、外側管と、
1つ以上の表面セグメントを含む遠位縁部プロファイルを有する中央管であって、表面セグメントのうちの少なくとも1つが第2の電極を含み、中央管は、外側管内に摺動可能に配設され、かつ第2の電極が第1の電極の少なくとも一部分と対向するように位置付けられている、中央管と、
中央管内に配設され、中央管管腔に露出された第1及び第2の結紮電極と、
第1の結紮電極と第2の結紮電極との間の中央管内に配設されたスネアと、
中央管内に摺動可能に配設された切断縁部を含む切断管であって、少なくともコイルセグメントのうちの1つまで前進するように構成されている、切断管と、を備える、組織切除機構。
13.中央管が、周方向溝付き経路を有する内側表面を含み、スネアが、周方向溝付き経路内に配設されている、態様12に記載の組織切除機構。
14.中央管が、複数の軸方向に延在する溝付き経路を有する外側表面を含み、軸方向に延在する溝付き経路のうちの少なくとも1つが、周方向溝付き経路と連通し、スネアが、周方向溝付き経路から複数の軸方向に延在する溝付き経路のうちの1つに沿って軸方向に延在する、態様13に記載の組織切除機構。
15.流体管を収集、圧縮、及び密封する組織切除機構であって、
遠位端上に配設された螺旋コイルを有する外側管であって、コイルが第1の電極を含む、外側管と、
1つ以上の表面セグメントを含む遠位縁部プロファイルを有する中央管であって、表面セグメントのうちの少なくとも1つが第2の電極を含み、中央管が、外側管内に摺動可能に配設され、かつ第2の電極が第1の電極の少なくとも一部分と対向するように位置付けられている、中央管と、
中央管内に配設され、中央管管腔に露出された第1及び第2の結紮電極と、
中央管内に配設された切断スネアと、
中央管内に配設された結紮スネアと、
中央管内に摺動可能に配設された切断縁部を含む切断管であって、少なくともコイルセグメントのうちの1つまで前進するように構成されている、切断管と、を備える、組織切除機構。
16.結紮スネアが、第1の結紮電極と第2の結紮電極との間に配設されている、態様15に記載の組織切除機構。
17.結紮スネアが、第1の直径を有する可撓性線である、態様15に記載の組織切除機構。
18.切断スネアが、結紮スネアの近位に配設されている、態様16に記載の組織切除機構。
19.切断スネアが、第1の直径よりも小さい第2の直径を有する可撓性線を含む、態様19に記載の組織切除機構。
20.中央管が、第1及び第2の周方向溝付き経路を有する内側表面を含み、結紮スネアが第1の周方向溝付き経路内に配設され、切断スネアが第2の周方向溝付き経路内に配設されている、態様15に記載の組織切除機構。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7