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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-30
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】ロボット制御装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 13/08 20060101AFI20240501BHJP
【FI】
B25J13/08 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019152670
(22)【出願日】2019-08-23
(65)【公開番号】P2021030364
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100163050
【弁理士】
【氏名又は名称】小栗 眞由美
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 貴之
【審査官】神山 貴行
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-001122(JP,A)
【文献】特開2019-000964(JP,A)
【文献】特開平03-213278(JP,A)
【文献】特開2016-168650(JP,A)
【文献】特開平08-132372(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットの先端に装着した第1ワークを第2ワークに対して相対移動させるロボット制御装置であって、
前記ロボットが、前記第1ワークに作用する力の大きさまたは前記ロボットに作用するトルクの大きさを検出するセンサを備え、
前記ロボットの幾何パラメータを記憶する記憶部と、
前記センサにより検出された前記力の大きさまたは前記トルクの大きさに基づいて、前記第1ワークと前記第2ワークとの接触点に作用する力および前記第1ワークに作用するモーメントを算出する算出部と、
該算出部により算出された前記力および前記モーメントが所定の力および所定のモーメントとなるよう力制御を行う制御部と、
前記ロボットの画像に重畳して、前記制御部による前記力制御の結果生じる、前記第1ワークの速度または前記第1ワークに設定された基準点回りの角速度のうち少なくとも1つを表示する表示部とを備え、
前記幾何パラメータが、ロボットのリンクの長さ寸法および質量を含み、
前記算出部が、前記記憶部に記憶されている前記幾何パラメータおよび前記制御部により算出された前記ロボットの状態変数を用いて前記力および前記モーメントを算出するロボット制御装置。
【請求項2】
前記表示部が、前記速度または前記角速度の方向を矢印の方向により表示する請求項1に記載のロボット制御装置。
【請求項3】
前記表示部が、前記速度または前記角速度の大きさを前記矢印の長さにより表示する請求項2に記載のロボット制御装置。
【請求項4】
前記表示部が、前記速度または前記角速度の大きさを前記矢印の太さにより表示する請求項2に記載のロボット制御装置。
【請求項5】
前記表示部が、前記速度または前記角速度の大きさを前記矢印の色により表示する請求項2に記載のロボット制御装置。
【請求項6】
前記表示部が、前記基準点を前記画像に重畳して表示する請求項1から請求項5のいずれかに記載のロボット制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ロボット制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
研磨やバリ取り、または複数のワークの精密な嵌め合い等の作業を、ロボットを用いて行う場合に、力センサあるいはロードセル等の力検出器を使用して、ロボットに作用する力やモーメントが検出される。そして、力検出器により検出される力やモーメントが所望の値となるようにロボットの動作が制御される(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
組立作業あるいは嵌め合い作業に失敗したり、研磨あるいはバリ取りの品質が悪かったりする場合に、状況を確認したり改善したりするために、力の大きさあるいは方向を確認したい場合がある。ロボットを用いた上記作業においては、ロボットに作用する力を確認するために、力検出器により検出された力をグラフ表示することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平6-262563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
精密な嵌め合い作業の場合に、力の大きさおよび方向がグラフ表示されただけでは、ロボットが正しく制御されているか否かを直感的に判断することができない。したがって、ロボットが正しく制御されていることを容易に判断することができるロボットの制御装置が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、ロボットの先端に装着した第1ワークを第2ワークに対して相対移動させるロボット制御装置であって、前記ロボットが、前記第1ワークに作用する力の大きさまたは前記ロボットに作用するトルクの大きさを検出するセンサを備え、前記ロボットの幾何パラメータを記憶する記憶部と、前記センサにより検出された前記力の大きさまたは前記トルクの大きさに基づいて、前記第1ワークと前記第2ワークとの接触点に作用する力および前記第1ワークに作用するモーメントを算出する算出部と、該算出部により算出された前記力および前記モーメントが所定の力および所定のモーメントとなるよう力制御を行う制御部と、前記ロボットの画像に重畳して、前記制御部による前記力制御の結果生じる、前記第1ワークの速度または前記第1ワークに設定された基準点回りの角速度のうち少なくとも1つを表示する表示部とを備え、前記幾何パラメータが、ロボットのリンクの長さ寸法および質量を含み、前記算出部が、前記記憶部に記憶されている前記幾何パラメータおよび前記制御部により算出された前記ロボットの状態変数を用いて前記力および前記モーメントを算出するロボット制御装置である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示の一実施形態に係るロボット制御装置を含むロボットシステムを示す全体構成図である。
図2図1のロボット制御装置を示すブロック図である。
図3図1のロボット制御装置による力制御における位置補正を説明する図である。
図4図1のロボット制御装置による力制御における姿勢補正を説明する図である。
図5図1のロボット制御装置により表示される角速度の表示例を示す図である。
図6図1のロボット制御装置により表示される速度の表示例を示す図である。
図7図5の角速度が大きい場合の表示例を示す図である。
図8図5の角速度が小さい場合の表示例を示す図である。
図9図5の角速度が大きい場合の他の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の一実施形態に係るロボット制御装置1について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係るロボット制御装置1は、例えば、図1に示されるように、柱状の第1ワークW1を把持するハンド110を備えるロボット100を制御する装置である。
【0009】
ロボット100は、作業台200に固定された第2ワークW2に設けられた孔Oに、ハンド110によって把持した第1ワークW1を嵌合させる嵌め合い作業を実施する。
但し、本開示は、作業中に力が発生する他の作業、例えば、バリ取り作業、ネジ締め作業等を作業対象である第2ワークに対して行うロボットにも適用可能である。
【0010】
ロボット100は、例えば、6軸多関節型のロボットであり、アーム120と、アーム120の先端に設けられた手首ユニット130と、手首ユニット130の先端に取り付けられたハンド110とを備えている。また、ロボット100の手首ユニット130とハンド110との間には、ハッチングによって示す位置に、ハンド110に作用する力を検出する6軸の力センサ(センサ)140が備えられている。力センサ140は、直交する3軸方向の力およびこれらの3軸回りのモーメントを検出する。
【0011】
力センサ140により検出された力の情報はロボット制御装置1に送られる。ロボット制御装置1は、第1ワークW1と第2ワークW2との間に働く力が予め設定しておいた大きさとなるように力制御を行う。力制御の制御方式としては、公知のインピーダンス制御、ダンピング制御またはハイブリッド制御等が適用可能である。
【0012】
本実施形態に係るロボット制御装置1には、図1に示されるように、ロボット100への動作プログラムの教示あるいは各種状態の確認および設定を行うための教示操作盤(表示部)2が接続されている。教示操作盤2のモニタ3には、ロボット100、作業台200、第1ワークW1および第2ワークW2を模擬した画像または動画を表示することができる。動画の場合、ロボット100の実際の動作に合わせてロボット100の画像も動作する。
【0013】
表示部として教示操作盤2を例示したが、これに代えて、ロボット制御装置1の本体に設けてもよいし、パーソナルコンピュータ、タブレット端末あるいは携帯端末等を表示部として使用してもよい。
【0014】
本実施形態に係るロボット制御装置1は、図2に示されるように、記憶部4と、算出部5と、制御部6と、画像処理部7とを備えている。
記憶部4は、ロボット100の幾何パラメータおよびロボット100の状態変数に基づいてロボット100の画像を構築するための画像情報を記憶している。
【0015】
算出部5は、力センサ140により検出された力、記憶部4に記憶されている幾何パラメータおよび制御部6において参集された状態変数に基づいて、第1ワークW1と第2ワークW2との接触点に作用する力および第1ワークW1に作用するモーメントを算出する。
【0016】
幾何パラメータは、ロボット100の各リンクの長さ寸法を含んでいる。
状態変数は、制御部6による制御において算出されるロボット100の各関節の位置、速度あるいは加速度を含んでいる。
【0017】
制御部6は、算出部5により算出された力およびモーメントが所定の値となるようにロボット100の力制御を行う。
具体的には、図3に示されるように、作業台200に固定された第2ワークW2に対して、教示プログラムによって規定される第1ワークW1の位置がずれている場合に、第1ワークW1の移動中に第2ワークW2に接触して第1ワークW1が第2ワークW2からの反力を受ける。第2ワークW2の孔Oの開口部に面取りAが設けられ、第1ワークW1が面取りAに接触した場合、ロボット制御装置1はこの反力が所定の大きさとなるようにロボット100を動作させ、第1ワークW1は面取りAに倣って破線で示される位置に移動する。
【0018】
また、図3の左右方向をX方向とすると、ダンピング制御の場合は以下の式(1)を満たすようにX方向の速度指令を算出する。
Vx=D1・(Fx-Fdx) (1)
ここで、
Vxは、X方向の速度指令、
Fxは、反力(力センサ140の検出値)、
Fdxは、X方向の目標力、
D1は、係数である。
【0019】
特に、目標力を0とすると式(1)は以下の式(2)のようになり、右向きの力Fxが発生している間はその大きさに比例した速度指令が発生し、紙面の右側へロボット100および第1ワークW1が移動する。
Vx=D1・Fx (2)
【0020】
また、図4に示されるように、作業台200に固定された第2ワークW2に対して、教示プログラムによって規定される第1ワークW1の位置および姿勢がずれている場合に、第1ワークW1の移動中に第2ワークW2に接触して第1ワークW1が第2ワークW2からの反力およびモーメントを受ける。姿勢がずれた第1ワークW1が、第2ワークW2の孔Oの開口部に設けられた面取りAに接触した場合、ロボット制御装置1はこの反力およびモーメントが所定の大きさとなるようにロボット100を動作させ、第1ワークW1は破線で示される位置に移動する。
【0021】
また、図4の左右方向をX方向、紙面垂直方向をY方向とすると、ダンピング制御の場合は式(1)および以下の式(3)を満たすように速度指令と角速度指令とを算出する。
Ay=D2・(My-Mdy) (3)
ここで、
Ayは、Y軸回りの角速度指令、
Myは、TCPを中心としたY軸回りのモーメント(力センサ140の検出値)、
Mdyは、Y軸回りの目標モーメント、
D2は、係数である。
【0022】
特に、Y軸まわりの目標モーメントを0とすると式(3)は以下の式(4)のようになり、矢印の向きのモーメントMyが発生している間はその大きさに比例した角速度指令が発生し、矢印の向きにロボット100および第1ワークW1が移動する。
Ay=D2・My (4)
同時に式(1)または式(2)の作用により、X方向への速度指令も発生するので、これらを合わせた速度および角速度でロボット100が動作する。
【0023】
画像処理部7は、記憶部4に記憶されている画像情報を用いて、制御部6から得られたロボット100の各関節の位置、速度あるいは加速度等の状態変数に基づいて、現時点におけるロボット100の画像を構築する。
【0024】
また、画像処理部7は、算出部5により算出された力、速度、モーメント、角速度の方向および大きさをロボット100の画像に重畳した合成画像Gを生成する。速度または角速度の方向および大きさは、図5または図6に示されるように、矢印および文字により、ロボット100の画像に重畳される。生成された合成画像Gは教示操作盤2のモニタ3に表示される。
【0025】
速度または角速度の表示方法としては、図5または図6に示されるように、例えば、矢印による表示方法を挙げることができる。図7および図8に示されるように、角速度の方向は、ロボット100の姿勢の変化の方向を表していて、矢印の方向により表現される。また、図6に示されるように、速度の方向は、ロボット100の位置の変化の方向を表していて、矢印の方向により表現される。また、速度または角速度の大きさは、ロボット100の移動の速さを表していて、矢印の長さにより表現されればよい。
【0026】
速度または角速度の大きさは、矢印の長さに代えて、図9に示されるように、矢印の太さにより表現してもよいし、矢印の色により表現してもよい。図9は、同じ長さを有する図7の矢印よりも太さが太く、図7よりも角速度が大きいことを示している。
色により表現する場合には、速度または角速度が所定の閾値を超える場合に、例えば、赤色等により表示すれば、作業者は直感的に速度または角速度が過大であることを判断することができる。
【0027】
このように、本実施形態に係るロボット制御装置1によれば、第1ワークW1の先端に作用する反力およびモーメントが表示されるのみならず、ロボット100の速度または角速度が矢印および文字によって表示される。これにより、ロボット100の力制御の結果生じるロボット100の移動方向および移動の速さを直感的に視認することができ、ロボット100が正しく制御されていることを容易に判断することができるという利点がある。
【0028】
また、本実施形態においては、第1ワークW1上の基準点TCPも画像G上に重畳して表示した。これにより、作業者は、角速度の中心を基準点によって容易に視認することができ、ロボット100の動作方向を容易に理解することができるという利点がある。
【0029】
なお、本実施形態においては、幾何パラメータとしてロボット100の各リンクの長さ寸法を含んでいることとしたが、これに代えて、各リンクの長さ寸法および質量を含んでいてもよい。質量を含むことにより、力センサ140により検出された力およびモーメントから慣性力の影響を除く補正を行った接触点における力およびモーメントを求めることができる。
【0030】
また、ツールとしてナットランナー等の回転動作を伴うツールが装着されている場合に、締め付けトルクを力センサ140により検出し、ロボット100の画像に重畳して表示することにしてもよい。
【0031】
また、本実施形態においては、センサとして、手首ユニット130の先端とハンド110との間に配置した6軸の力センサ140を例示したが、これに代えて、力センサ140を任意の位置に配置してもよい。例えば、各軸にトルクセンサを配置してもよいし、3軸のトルクセンサと3軸の力センサとを別々に配置してもよい。
【符号の説明】
【0032】
1 ロボット制御装置
2 教示操作盤(表示部)
4 記憶部
5 算出部
6 制御部
100 ロボット
140 力センサ(センサ)
TCP 基準点
W1 第1ワーク
W2 第2ワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9